JP3940340B2 - シリンダの衝撃吸収装置、および、それを用いたスクラップボーラ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、作動流体を用いてピストンを往復動作させるシリンダの衝撃吸収装置に関する。
例えば、鋼帯のエッジを切り落としたトリム屑を巻き取るスクラップボーラに使用されるスクラップの押えロールの跳ね上がり防止(追従性向上)と着地衝撃の緩衝による故障を防止する衝撃吸収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
作動流体を用いてピストンを往復動作させるシリンダは、フォークリフトなどの昇降装置やスポット溶接機における溶接ガンなど、様々な用途に使用されており、その衝撃吸収装置に関しては、従来から種々の提案がなされている。
まず、シリンダが衝撃を受ける直前の位置で、▲1▼排出される流体を絞る、または▲2▼より高圧の流体と接続することで、排出される室に背圧を持たせて衝撃を緩衝する装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開平5−161977号公報には、加圧室と減圧室とを有するスポット溶接機のエアシリンダに、加圧室と減圧室とを連通するバイパス路を設けることにより、溶接物を挟圧するときの衝撃を抑制する装置が開示されている。
しかし、この従来技術は、意図的な単発動作に対する衝撃緩衝装置であり、シリンダロッドが受ける連続的衝撃の緩衝はできなかった。
また、衝撃を緩衝できる位置が固定であり、衝撃を受けるピストン位置が変わる場合に対応できないうえ、往路・復路の両方向の衝撃にも対応できなかった。
【0004】
また、特開平7−214341号公報には、高圧エアで加圧シリンダを伸縮駆動するとき、ストローク位置検出手段により溶接アームが端部に接近したことを検出して、切換弁によって加圧シリンダの伸縮速度を低下させる溶接ロボットガンが開示されている。
しかし、この装置は、衝撃を緩衝するタイミングは電磁弁を切替えで対応するため、衝撃緩衝位置は可変であるが、弁切換えを繰り返す速度に限界があり、不規則な衝撃や小刻みな衝撃には対応できないうえ、往路および復路の両方向の衝撃にも対応できないという問題点があった。
【0005】
<スクラップボーラとトリム屑>
鋼帯は製造サイズと注文サイズを合わせるために、通板ラインにて耳切(トリム)を実施しているが、製造・注文各々のサイズに併せてトリム屑の厚みや幅は不規則に変化する。
このトリム屑はスクラップボーラに巻き取られるが、トリム作業は酸洗やメッキ優先の通板に併せて実施されるため、屑の払い出しは不規則で、垂れ落ちるトリム屑はボーラに巻付く手前で、弛んで絡まったり、引張られてちぎれたりする。
そのため巻き取られるトリム屑の形状は、きれいな円柱ではなく、一般的に太鼓状で楕円の歪んだ円柱形となる。一般的に屑の巻取り密度と形状を良くする方法として、巻取リールにロールを押付けているが、ロールが屑形状の歪みに追従できないために押えロールが跳ね続け、屑形状が更に悪くなり、装置故障を発生させるという悪循環であった。
【0006】
従来、このスクラップボーラの衝撃吸収方法としては、衝撃を受ける装置をシリンダで支えて、衝撃を受ける際に圧縮される流体の圧縮性で衝撃を吸収する方法が採用されていた。
しかし、この圧縮性を利用した衝撃緩衝は圧縮後の膨張反力が大きいため、押付力を常に持たせる装置に対して連続的に利用すると、反力+押付力によって装置全体にダメージが発生するという問題点があり、さらに、押し付けロールを常時押付けておくことができなかった。
【0007】
図3および図4に、従来のスクラップボーラにおける衝撃吸収装置を示す。
図3は、従来のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける初期状態を示す図である。
図3において、エア本管から供給される圧縮空気は、1.5気圧程度(押付力1500kg相当)に減圧されて、方向切換弁を介して、エアシリンダに供給される。このとき、圧縮空気は、エアシリンダの伸びる方向のみに供給され、これに伴って、押えロールがトリム屑を押し付ける動作を行う。
【0008】
図4は、従来のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける途中および終了状態を示す図である。
圧縮空気はエアシリンダが伸びる方向にみに供給されるため、押えロールは、凹凸したトリム屑の表面に追従できず、跳ね上がりと着地を繰り返し、その際の衝撃が非常に大きい。
そこで、これを緩和するために圧縮空気の供給配管に急速排気弁を設けることにより、押えロールの跳ね上がりは若干緩和されたが、着地時の衝撃は抑制できなかった。
また、油圧など非圧縮性流体を利用する場合は、アキュムレータを用いて圧縮性を持たせて衝撃を吸収する方法が考えられるが、油圧回路は装置が複雑となりコストが高くなるうえ、シリンダから吸収するアキュムレータまで距離がある場合、衝撃が伝播せず効果が少なかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−161977号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】
特開平7−214341号公報(第1頁、図1)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、シリンダによる押圧力を維持しながら、シリンダの往路方向および復路双方からの連続的な衝撃を吸収できる衝撃吸収装置を提供することを課題とする。
特に、鋼帯トリムのスクラップボーラに関しては、スクラップの押えロールの跳ね上りが防止され、スクラップへの追従性が向上し、頻発していた衝撃による装置損傷を低減することができるスクラップボーラを提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決する手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)作動流体を用いてピストンを往復動作させるシリンダの衝撃吸収装置において、前記シリンダは、前記ピストンを往路方向に動作させる作動流体が供給される第1の作動流体室と、該ピストンを復路方向に動作させる作動流体が供給される第2の作動流体室とを有しており、
前記第1の作動流体室および第2の作動流体室には、それぞれ異なる圧力の作動流体が供給されており、
前記第1の作動流体室および第2の作動流体室のそれぞれに作動流体を供給する配管には、それぞれの供給圧を設定する減圧弁、それぞれの作動流体の急速排気弁、および、該供給圧および排気圧を設定する設定弁が設けられていることを特徴とするシリンダの衝撃吸収装置。
(2)前記作動流体が、圧縮空気であることを特徴とする(1)に記載のシリンダの衝撃吸収装置。
(3)(1)または(2)に記載のシリンダの衝撃吸収装置を、鋼帯のエッジを切り落としたトリム屑を巻き取る際の押えロールに用いることを特徴とするスクラップボーラ。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1および図2により詳細に説明する。
図1は、本発明のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける初期状態を示す図である。
図1において、エア本管から供給される圧縮空気は、5気圧程度に減圧されて、方向切換弁を介して、エアシリンダに供給される。
このとき、圧縮空気は、エアシリンダが伸びる方向(往路方向)の第1の作動流体室、および、エアシリンダが縮む方向(復路方向)の第2の作動流体室の双方に供給される。
【0013】
この作動流体は、第1の作動流体室と、第2の作動流体室とで異なる圧力に設定されており、例えば、第1の作動流体室の圧力を4.5気圧、第2の作動流体室の圧力を3.0気圧に設定することによって、その1.5気圧(押付力1500kg相当)の差圧によって押えロールがトリム屑を押し付ける動作を行う。
図2は、本発明のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける途中および終了状態を示す図である。
圧縮空気はエアシリンダが伸びる方向、および、縮む方向の双方に供給されるため、押えロールが凹凸したトリム屑の表面を押える際に、シリンダの伸縮の双方向に対して圧縮空気による反発力が生じてエアクッションの役割を果たすので、押えロールは凹凸したトリム屑の表面に追従でき、従来のような跳ね上がりと着地を繰り返す現象を著しく緩和することができる。
【0014】
さらに、第1の作動流体室、および、第2の作動流体室に圧縮空気を供給するそれぞれの配管に排気圧設定弁(A,B)および急速排気弁(A,B)が設けられている。
例えば、排気圧設定弁Aの設定圧力を4.5気圧とし、排気圧設定弁Bの設定圧力を3.0気圧とすることによって、第1の作動流体室と第2の作動流体室との差圧を1.5気圧(押付力1500kg相当)に保つことができる。
なお、前記急速排気弁には減圧機能が含まれており、排気圧設定弁で供給
圧と排気圧の両方を設定することができる。本実施形態においては、排気と減圧の両方の機能を前記急速排気弁で満たされているが、排気と減圧の機能を有する個別の弁を組合せてもよい。
【0015】
また、急速排気弁を、第1の作動流体室と第2の作動流体室の双方に圧縮空気を供給するそれぞれの配管に設置することによって、押えローラの跳ね上がりだけでなく、着地方向の衝撃についても、衝撃を受ける際の背圧を、急速排気弁から繰返し連続的に排出させることで高周波の連続的衝撃を吸収することができるうえ、衝撃を受ける時と反力で戻る時の両方向の衝撃を吸収できる。
このように、本発明によれば、単発かつ連続で、不規則な、シリンダーストローク位置が変化しながら受ける衝撃に対して、▲1▼押付力を維持しながら、▲2▼衝撃による跳上りを防止し、▲3▼押付力・自重・跳上り反力による着地時の衝撃を和らげることが可能な衝撃緩衝装置を、簡便なエア機器だけを用いて実現することができる。
【0016】
【実施例】
本発明における衝撃吸収装置を、下記条件にて、実際の鋼帯の酸先ラインにおけるトリム屑を巻き取るスクラップボーラの押えロールに採用した。
<実施条件>
・板幅:580〜1905mm
・板厚:1.2〜6.0mm、
・ライン速度:310m〜420mpm、
・トリム幅:25mm、
・ボーラ外形:1050mmφ、
・ボーラ内径:20mmφ、
・シリンダ:250mmφ×380mmL×2本
【0017】
上記の条件にて実施し、押えロール振動衝撃を加速度で評価したところ、従来の10g(g:重力加速度)超から3gに低減し、衝撃による機器破損トラブルが無くなった。
このように、本発明によれば、極めて不均一な(いびつな)形状である巻き取ったトリム屑に対して、▲1▼押付け力を常に維持しつつ、▲2▼押えロールの跳ね上がり防止(常に巻付け物に追従、ロール着地衝撃の吸収)を、▲3▼どの位置(どの巻取り径)でも、▲4▼連続的に(巻取り開始から完了まで)発揮することができた。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、シリンダによる押圧力を維持しながら、シリンダの往路方向および復路双方からの連続的な衝撃を吸収できる衝撃吸収装置を提供することが、油圧回路に比べて簡便で安価なエア回路により実現することができ、特に本発明の衝撃吸収装置を、鋼帯のスクラップボーラに用いる押えロールに適用することによって、押えロールの跳ね上りが防止され、トリム屑への追従性が向上し、頻発していた衝撃による装置損傷も無くなった。
具体的には以下のような、産業上有用な著しい効果を奏する。
▲1▼ 常時押付力が必要な装置が受ける、連続・不規則な振動や衝撃を緩衝できる。
・押えロールの振動加速度を10g→3gに低減することができる。
・装置故障を著しく低減できる。
・過振動による駆動モータトリップが無くなる。
・過振動が共振して増幅状態になった時の手動介入(速度調整)作業が無くなる。
・大振動による騒音問題が解決できる。
▲2▼ ▲1▼の結果、跳ね上りが無くなり(押付け時間が長くなり)、巻取り形状が良くなる。
▲3▼ 油圧に比べて簡便で安価なエア機器のみで構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける初期状態を示す図である。
【図2】本発明のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける途中および終了状態を示す図である。
【図3】従来のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける初期状態を示す図である。
【図4】従来のスクラップボーラにトリム屑を巻付ける途中および終了状態を示す図である。
Claims (3)
- 作動流体を用いてピストンを往復動作させるシリンダの衝撃吸収装置において、
前記シリンダは、前記ピストンを往路方向に動作させる作動流体が供給される第1の作動流体室と、該ピストンを復路方向に動作させる作動流体が供給される第2の作動流体室とを有しており、
前記第1の作動流体室および第2の作動流体室には、それぞれ異なる圧力の作動流体が供給されており、
前記第1の作動流体室および第2の作動流体室のそれぞれに作動流体を供給する配管には、それぞれの供給圧を設定する減圧弁、それぞれの作動流体の急速排気弁、および、該供給圧および排気圧を設定する設定弁が設けられていることを特徴とするシリンダの衝撃吸収装置。 - 前記作動流体が、圧縮空気であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダの衝撃吸収装置。
- 請求項1または請求項2に記載のシリンダの衝撃吸収装置を、鋼帯のエッジを切り落としたトリム屑を巻き取る際の押えロールに用いることを特徴とするスクラップボーラ。
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