JP3940025B2 - 間仕切式の半開放個室装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天井に届かない高さで且つ一般成人の背丈よりも高い程度の高さの壁群によって構成される間仕切式の半開放型個室装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建物の広い空間を壁群で仕切って個室化する場合、建物の天井まで届く高さの壁群を使用することによって完全遮蔽型個室と成す場合と、天井に届かない高さの壁群を使用することによって上面が開放された半開放型個室と成す場合とがある。いずれにしても、出入り口には一般にドアを設けている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
完全遮蔽型個室の場合は、防音性は高いという利点を有する反面、施工に手間がかかるためにコストが嵩むという点や、例えば体育館のような天井が高いスペースには設置することができないと言った欠点がある。
【0004】
他方、半開放型個室の場合は、長所と欠点が完全遮蔽型個室と逆になり、施工は容易でコストも抑制でき、かつ、天井の高さが高い建物内にも設置できる利点を有するが、音や光の遮断機能が低いという欠点がある。
【0005】
本願発明は、間仕切式の半開放個室装置において、その利点は保持しつつ欠点を補うことを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明の半開放個室装置は、空間を個室状に仕切る壁群を備えている。そして、前記壁群は室の天井まで届かない高さであり、前記壁群のうち全部又は一部の上端に、当該壁群で囲われた個室の内部に向けて張り出す庇状部材を、壁の上端に沿って適宜範囲にわたって延びるように設けている。
【0007】
加えて、前記庇状部材において個室内に向いた面は側断面凹状に湾曲した凹曲面となっており、この庇状部材が取り付けられた壁の上部に、光を庇状部材の凹曲面に向けて照射する照明装置が取り付けられており、更に、前記庇状部材は吸音構造になっており、その凹曲面に、前記灯具から照射された光を室内に向けて反射させる間接照明用の反射部が部分的に設けられている。
【0008】
請求項3の発明は、室の空間を個室に仕切る壁群を備えており、前記壁群は室の天井まで届かない高さであり、この壁群のうち全部又は一部の上端に、当該壁群で囲われた個室の内部に向けて張り出す庇状部材を、壁の上端に沿って適宜範囲にわたって延びるように設けている、という間仕切式の半開放個室装置において、前記庇状部材において個室内に向いた面は側断面凹状に湾曲した凹曲面となっており、更に、前記庇状部材は吸音構造になっており、前記庇状部材の凹曲面に、灯具から照射された光を室内に向けて反射させる間接照明用の反射部が部分的に設けられている。
【0009】
本発明に係る半開放個室装置は様々の用途に使用できる。例えば、オフィスに設置して事務用個室と成しても良いし、病院や診療所などの医療施設に設置して診察室や病室として使用したり、或いは、倉庫のような広い建物の内部に設置して簡易事務所等として使用することも可能である。
【0010】
また、各種災害や大規模事故が発生した場合に体育館や大型テントのような広い空間内に設置し、簡易診察室や簡易病室、簡易手術室、簡易宿泊室等の緊急援助施設として使用することも可能である。半開放個室装置は間仕切式であって組み立て式となっているため、運搬・組み立ても簡単に行える。
【0011】
【発明の作用・効果】
ところで、単に壁で空間を仕切っただけの半開放型個室の場合、個室内で照明装置を使用すると、その光が壁を超えて上方に拡散することにより、隣の部屋で照明を消していても明るいままとなって、隣の個室の使用者に迷惑をかけることがある。
【0012】
これに対して本願発明によると、個室内に設けた照明装置で発した光が拡散することを庇状部材によって抑制することができるため、半開放型の個室でありながら、室内での照明装置の使用によって隣の個室に迷惑をかけることを防止又は著しく抑制することができる。また、庇状部材が個室にアクセントをつける装飾的効果を発揮することも期待される。
【0013】
また、庇状部材が吸音機能を持っているため、半開放個室装置でありながら、室内で発生した音が外部に漏れることを抑制して静粛性を向上することができる。加えて、庇状部材が光反射機能を持っているため、室内を間接照明することができて、室内の雰囲気を和らげることができる。
【0014】
更に、庇状部材を吸音手段と間接照明手段とに兼用できるため、吸音機能と間接照明機能とを併有した半開放個室装置でありながら、構造を簡単化できる利点がある。
【0015】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(1).第1実施形態(図1〜図6)
図1〜図6では第1実施形態を示している。このうち図1は外側から見た概略斜視図、図2は室内を全体的に見た概略斜視図、図3及び図4は室内の部分的な斜視図、図5は要部の一部破断平面図、図6は図5のVI−VI視断面図である。
【0017】
本実施形態の半開放個室装置は、病院や診療所のような医療施設における空間の個室化に適用したもので、例えば2.5m前後×3.5m前後程度の面積の個室1に仕切って、各個室1を診察室や病室等の各種用途に使用できるようにしたものである。なお、本実施形態では複数の個室1を連続させているが、単一の個室1のみでも良いことはいうまでもない。
【0018】
(1)-1.概要
各個室1は、平面視で個室1の並び方向に沿って平行に延びるフロント壁2及びバック壁3と、これらフロント壁2及びバック壁3の相互間に接続された複数のサイド壁4とを備えている。隣合った個室1は1つのサイド壁4を共用している。
【0019】
各壁2,3,4は、主要部材としてそれぞれ複数枚のパネル5を備えており、フロント壁2とバック壁3とには出入り口を設けて、これを水平回動自在なドア6で塞いでいる。符号7は笠木、符号8は巾木を示している。
【0020】
なお、ドア6はフロント壁2とバック壁3とのうち片方だけに設けても良いし、いずれか一方又は両方の出入り口をドア無しのオープン構造とすることも可能である。
【0021】
サイド壁4において、隣合ったパネル5は支柱9に接続されており、この支柱9を天井10に突っ張らせている。他方、フロント壁2及びバック壁3も支柱(縦フレーム)9を備えており、各支柱9をパネル5よりも上方に突出させてその上端を上桟12で連結することにより、フロント壁2及びバック壁3の上端に開放式のランマ部を設けている。
【0022】
なお、フロント壁2及びバック壁3における上桟12を天井10に固定しても良い。また、各壁2,3,4は互いに連結されることによって自立しているので、サイド壁4の支柱9は必ずしも天井10に突っ張らせる必要はないが、天井10に突っ張らせると安定性を向上させることができる。
【0023】
詳細は略すが、各壁2,3,4の支柱9には、個室1の内部に露出した係合穴が上下適宜間隔で多数形成されており、この係合穴に取り付けたブラケット13によって例えば机天板14を支持することができる(図2,3参照)。もちろん、棚板のような他の部材を取付けることも可能である。
【0024】
また、例えば図2に示すように、各壁2,3,4は、上下に隣接したパネル5の間から個室1の内部に部分的に露出する横桟15を内蔵しており、この横桟15に、ハンガー掛け具16や絵画17などの各種の物品・部材類を取り付けることができる。
【0025】
机天板14を取付けているサイド壁4には、机天板14よりもやや高い高さで水平状に延びる配線ダクト18を装着しており、この配線ダクト18に、照明用のスイッチ類や電源コンセント、或いは電話のコネクタなどの配電操作部19(図3参照)を設けている。
【0026】
また、図3に示すように、サイド壁4のうち机天板14の上方部位には、押しピンで書類を止めることのできるピンナップボード20や、小物入れ21aを着脱自在に取り付けできるハンガーボード21が配置されている。
【0027】
本実施形態では、個室1を診察室に使用した例を示しており、このため、個室1には診察台22を設けている。診察台22が設置されている側のサイド壁4には、横桟15を利用して患者の寝起き補助用掴みバー23を取り付けている。敢えて述べるまでもないが、個室1の内部には、例えば図2に示すように、袖キャビネット24やワゴン25など、必要に応じて各種の家具や装置、器材類を設置できる。
【0028】
各サイド壁4は例えば一般成人の背丈と同じ程度かそれよりもやや高い程度の高さ(例えば1.6〜1.8m程度)に設定されており、また、フロント壁2及びバック壁3はサイド壁4よりもやや高い高さ(例えば2.0〜2.4m程度)になっている。
【0029】
そして、これら各サイド壁4の上端に、個室1の内部に向けて張り出した庇状部材26をねじ止め等の適宜の手段で取り付けている。庇状部材26はサイド壁4の略全長にわたって延びており、フロント壁2及びバック壁3の上端からはみ出ないように設定されている。
【0030】
(1)-2.庇状部材及び照明
庇状部材26のうち個室1の内部に向いた面は側断面円弧状の凹状面となっている。また、庇状部材26は吸音機能を備えている。
【0031】
庇状部材26に吸音機能を持たせる手段としては、無数の吸音穴を設けた吸音板で全体を構成したり、基板や機枠に吸音材を貼着又は装着するなど、様々の構造を採用することができる。また、庇状部材26は必ずしも板状である必然性はなく、例えばブロック状とすることも可能である。
【0032】
この庇状部材26は、吸音効果を期待できると共に、人に圧迫感を与えない張り出し寸法に設定すべきであり、本実施形態の場合、例えば、30〜100cm程度の寸法が想定される。
【0033】
庇状部材26は、高さがある程度以上に高い場合は人に圧迫感を与えることは少ないので、張り出し寸法を大きくしても良い。また、庇状部材26はねじ等によってサイド壁4に固定しても良いし、支柱9に取り付けたブラケットを介して倒れ不能に保持しても良い。
【0034】
各サイド壁4の上部には照明装置27を取り付けている。この照明装置27は、水平状に延びる灯具(蛍光灯)28と、灯具28を下方から覆うシェード29とを備えており、サイド壁4の支柱9を利用して取付けている。そして、庇状部材26の凹曲面には、灯具28の光を反射させて個室1の内部を間接照明するための帯状の反射材30を部分的に設けている。
【0035】
反射材30は、適当な幅寸法で庇状部材26の長手方向に長く延びており、庇状部材26の円弧方向に沿った複数の箇所に複数条配置している。反射材30の素材としては、例えば薄いステンレス板、アルミ層を蒸着した合成樹脂板又は金属板、或いは、アルミ箔のような金属箔を張った合成樹脂又は金属等の板など、様々のものを選択することができる。
【0036】
庇状部材26への反射材30の取り付け手段としては、接着材による接着、粘着材による粘着、両面テープによる接着、ねじ止め、磁石による固定、嵌め込み、フックを利用した引っ掛け係止など様々の手段を採用できる。
【0037】
反射材30が過度に反射し過ぎて人に眩しさを感じさせる場合は、艶消しされたものを使用することも可能である。シェード29を半透明な合成樹脂製とすることも可能である。特に、机天板14の上方に配置されたシェード29を半透明とすると、机上を明るく照らすことができて好ましい。
【0038】
(1)-3.まとめ
以上の構成において、個室1は半開放型でありながら、個室1の内部で発生した人の話し声などの音の一部が庇状部材26で吸音されるため、個室1間に音が伝わることを抑制して、静粛性を高めることができる。個室1の壁面の全部又は一部を吸音性パネルで構成すると、静粛性を一層向上させることができる。
【0039】
また、庇状部材26を間接照明用の反射材として兼用できるため、構造を複雑化することなく個室1の内部を間接照明することができる。
【0040】
また、庇状部材26は個室1に向いた面が円弧状に形成されているため、吸音機能が高くなると共に、灯具28の光を個室1の内部に満遍なく反射させることができる。
【0041】
更に、庇状部材26を設けていない場合、サイド壁4に灯具28を設けていると、その灯具28の光が拡散して隣の個室1に漏れてしまい、このため、隣の個室1の患者等に不愉快な思いをさせることがあるが、庇状部材26を設けると、灯具28の光が隣の個室1の室内に漏れることを大幅に抑制できるため、照明に起因した不愉快さを防止または著しく抑制することができる。
【0042】
ところで、病院や診療所では、カーテンや衝立だけで空間を仕切って診察スペースとしていることがあるが、この場合、カーテンや衝立は遮蔽機能が低いため、患者に不愉快な思いをさせることがある。これに対して本願発明に係る半開放個室装置を診察室として使用すると、設置が簡単な間仕切式でありながら、診察スペースの遮蔽性を高めて患者のプライバシー保護に寄与できる。
【0043】
本実施形態のように、庇状部材26が取り付けられたサイド壁4の高さをフロント壁2及びバック壁3よりも低くして、庇状部材26がフロント壁2及びバック壁3よりも突出しないように設定すると、サイド壁4を必要以上に高くしてコストをかけることなく、照明装置27からの光がフロント壁2及びバック壁3から外側(例えば廊下)に漏れることを抑制できる利点がある。
【0044】
(2).第2〜第4実施形態(図7〜図9)
図7〜図9では、反射材30の配置態様の別例を示している。これら各図は庇状部材26を展開して斜め下方から見た状態の図であり、このうち図7で示す第2実施形態では、帯状に形成された反射材30の群を縦縞の状態で庇状部材26の下面に多条に設けている。
【0045】
また、図8に示す第3実施形態では、帯状に形成された多数の反射材30の群を傾斜状の姿勢にして庇状部材26に設けており、更に、図9に示す第4実施形態では、反射材30の群を水玉模様状にして庇状部材26に設けている。これらの各実施形態から容易に推測できるように、反射材30の形状や配置態様などは自由に選択することができる。
【0052】
(3).第5実施形態(図10)
図10では、照明装置27の別例である第5実施形態を示している。(A)は側断面図、(B)は(A)の平面図である。この実施形態では、シェード29を蝶番31によって下向き回動自在に構成するか、又は二点鎖線で示すように取り外し式としたもので、このため灯具(球)28の交換を簡単に行える。
【0054】
(4). 第6実施形態(図 11 )
図11に示す第6実施形態は、図示しないガイド手段(レール手段)によって反射材30を庇状部材26の下面に上下動自在に取り付けたもので、反射材30は、当該反射材30から下向きに延びる操作部材(図示せず)によって上下移動させることができる。
【0055】
個室1を例えば診察室に適用した場合、患者の診察に際しては明るく照明してデスクワークのときは照明を落としたいというように、室内の明るさを変えたい場合があるが、この図11のように構成すると、反射材30を移動調節することにより、個室1の室内の明るさを調節することができる。
【0056】
(5).第7実施形態(図12)
図12に示す第7実施形態は、個室1を1人用の病室に適用した例であり、この例では、個室1の間口が狭いことから、ベッド33の上方にだけ庇状部材26を配置している。壁3,4の高さがドア6よりもかなり高い場合は、両サイド壁4に庇状部材26を設けても差し支えない。
【0059】
(7).その他
本発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化することができる。例えば全ての壁に庇状部材を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の半開放個室装置を外側から見た概略斜視図である。
【図2】室内を全体的に見た概略斜視図である。
【図3】室内の部分的な斜視図である。
【図4】室内の部分的な斜視図である。
【図5】要部の一部破断平面図である。
【図6】図5のVI−VI視断面図である。
【図7】第2実施形態を示す図である。
【図8】第3実施形態を示す図である。
【図9】第4実施形態を示す図である。
【図10】第5実施形態を示す図である。
【図11】第6実施形態を示す図である。
【図12】第7実施形態を示す図である。
【符号の簡単な説明】
1 個室
2,3,4 壁
5 パネル
6 ドア
9 支柱
26 庇状部材
27 照明装置
28 灯具(蛍光灯)
29 シェード
30 反射材
Claims (1)
- 空間を個室状に仕切る壁群を備えており、
前記壁群は室の天井まで届かない高さであり、前記壁群のうち全部又は一部の上端に、
当該壁群で囲われた個室の内部に向けて張り出す庇状部材を、壁の上端に沿って適宜範囲にわたって延びるように設けている、
という間仕切式の半開放個室装置であって、
前記庇状部材において個室内に向いた面は側断面凹状に湾曲した凹曲面となっており、この庇状部材が取り付けられた壁の上部に、光を庇状部材の凹曲面に向けて照射する照明装置が取り付けられており、更に、前記庇状部材は吸音構造になっており、その凹曲面に、前記灯具から照射された光を室内に向けて反射させる間接照明用の反射部が部分的に設けられている、
間仕切式の半開放個室装置。
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