JP3939890B2 - 複合樹脂材料、その製造方法、および当該複合樹脂材料から得られる電子機器筐体 - Google Patents

複合樹脂材料、その製造方法、および当該複合樹脂材料から得られる電子機器筐体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂に、エラストマーを分散させた複合樹脂材料、その製造方法、およびその複合樹脂材料を用いて得られるノートパソコンや携帯電話などの電子機器筐体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、電子機器筐体などの成形材料としては、ポリカーボネート(PC)樹脂やアクリルニトリルブタジエンスチレン共重合(ABS)樹脂が用いられている。これらの樹脂は、衝撃的な荷重が加わった場合に容易にミクロクレーズを発生し、または塑性変形を起こして衝撃エネルギーを吸収するため、電子機器筐体に高い耐衝撃性を付与できる。このため、PC樹脂やABS樹脂を使用した電子機器筐体筐体は、破壊が起こりにくいといった利点がある。しかしながら、携帯電話やノート型パソコンに代表されるように、近年における携帯型電子機器の普及に伴い、高い衝撃強度だけでなく、軽量で、高剛性であることも要求される。そこで、近年では、ポリマーアロイ化や各種充填剤の添加などを行い、筐体成形材料である熱可塑性樹脂組成物の様々な改良が行われている。
【0003】
引張強度や曲げ強度などの剛性を向上させる方法としては、熱可塑性樹脂に、ガラス繊維やタルクなどの無機充填剤を添加する方法が汎用されている。しかしながら、この場合には耐衝撃性が低下する。そのため、熱可塑性樹脂の耐衝撃性をさらに向上させるべく、熱可塑性樹脂に、ポリマーアロイ化でエラストマー成分を分散させる方法がある。
【0004】
このような方法については、たとえば特開平6−200084号公報に開示されている。この公報には、熱可塑性樹脂に、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレン共重合体(ERM)、あるいはエチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)などのエラストマー成分を添加することが記載されている。そして、エラストマー成分としては、熱可塑性樹脂との親和性を図る目的で、熱可塑性樹脂との親和性の有る各種のモノマーをグラフト重合したものを使用することができるとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
確かに、エラストマー成分の添加によって耐衝撃性が改善され、また熱可塑性樹脂との親和性が高いモノマーをグラフト重合させることによりエラストマー成分の分散性が改善される。しかしながら、上記公報を含めて、添加すべきエラストマー成分の粒径に対しては何らの配慮もされていないため、エラストマー成分を均一に、しかも微粒子状態で分散させるのが困難であり、そのため混練条件が難しく、溶融時の流動性が低下するといった問題があるばかりか、耐衝撃性やエラストマー成分の分散性の改善が十分であるとは言い難い。また、エラストマー成分の分散性の改善が不十分であれば、エラストマー成分の偏在により、局所的に剛性が低下するといった問題も生じる。このように、耐衝撃性および剛性の双方を高い水準で維持するのは困難である。
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、成形性に優れるとともに、軽量で、しかも耐衝撃性および剛性に優れる電子機器筐体などの成形品を提供できるようにすることをその課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、熱可塑性樹脂に添加するエラストマー成分の粒径に着目し、鋭意検討した結果、サブミクロンオーダーの微粒子状で熱可塑性樹脂中にエラストマー成分であるスチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体(SAN−EPDM)を分散させれば、SAN−EPDMが熱可塑性樹脂内に均一に分散でき、また二軸押出機を利用した溶融混練により、サブミクロンオーダーの微粒子状で熱可塑性樹脂中にSAN−EPDMを分散させることができるのを見い出し、本発明をするに至った。
【0008】
すなわち、本願発明の第1の側面により提供される複合樹脂材料は、熱可塑性樹脂に、サブミクロンオーダーの微粒子状のスチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体(SAN−EPDM)を分散させたことを特徴としている。
【0009】
この複合樹脂材料では、ゴム弾性に優れるSAN−EPDMを含んでいるから、複合樹脂材料自体の耐衝撃性が向上し、ひいてはこの複合樹脂材料から得られる樹脂成形品の耐衝撃性も向上する。
【0010】
また、SAN−EPDMは、ゴムの中では極めて比重が小さく(0.8〜0.9g/cm3 程度)、一般的な熱可塑性樹脂に比べても比重が小さいため、SAN−EPDMを添加することにより、複合樹脂材料の全体としての比重が小さくなる。これにともない、本発明の複合樹脂材料から得られる樹脂成形品は、軽量化が図れるといった利点がある。
【0011】
さらに、SAN−EPDMをサブミクロンオーダーの微粒子状で分散させているから、熱可塑性樹脂中でのSAN−EPDMの偏在を防止することができるばかりか、成形時の流動性を損なうこともない。すなわち、SAN−EPDMの粒径が小さいため、熱可塑性樹脂中においてSAN−EPDMを均一に分散されやすく、SAN−EPDMの偏在も防止できる。これにより、SAN−EPDMの偏在による局所的な剛性の低下を回避して、高い剛性を有する樹脂成形品を提供できるようになる。
【0012】
以上のような効果を好適に得るためには、SAN−EPDMを、0.1〜0.9μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜0.5μmの範囲の粒径で、熱可塑性樹脂中に分散させるのが好ましい。
【0013】
ここで、SAN−EPDMの添加量は、複合樹脂材料の全体重量において、たとえば0.1〜50wt%の範囲、さらに好ましくは10〜40wt%の範囲とされる。これは、SAN−EPDMの添加量が余りに少なければ、耐衝撃性を十分に改善することができない一方、 余りに多ければ複合樹脂材料を溶融させたときの粘度が大きくなって流動性が損なわれ、成形性が悪化するからである。
【0014】
本発明の複合樹脂材料には、SAN−EPDMの分散性を高めるべく、シリコーンオイルをさらに添加してもよい。そうすれば、熱可塑性樹脂中でSAN−EPDMが均一かつ微粒子状で分散しやすくなる。このシリコーンオイルの添加量は、複合樹脂材料の全体重量において、たとえば0.1〜1.0wt%の範囲、さらに好ましくは0.2〜0.5wt%の範囲とされる。
【0015】
また、シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、およびストレートシリコーンオイルに各種の官能基を導入した変成シリコーンオイルの他、ストレートシリコーンオイルや変成シリコーンオイルに耐熱性向上剤などの添加材を添加したものが使用される。
【0016】
使用するシリコーンオイルは、液状のものばかりでなく、金属石鹸や種々の添加剤を加えて非流動化したものや、二酸化ケイ素の微粉末や添加剤を加えてペースト状にしたものであってもよい。
【0017】
本発明において使用する熱可塑性樹脂としては、アクリルニトリルブタジエン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、芳香族ポリアミド(PA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンサルフォン(PES)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂などが挙げられる。
【0018】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ABS樹脂が最も好ましく使用され、ABS樹脂を単独で使用してもよく、またABS樹脂に例示した他の樹脂から選ばれる1以上の樹脂単体をプレンドしたポリマーアロイであってもよい。ところで、SAN−EPDMは、スチレンとアクリロニトニルで変成されたものであるから、熱可塑性樹脂として、AS樹脂をマトリックス樹脂とするABS樹脂を含むものを使用すれば、SAN−EPDMの分散性がさらに高まることとなる。
【0019】
また、熱可塑性樹脂として、たとえば炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維(チラノなど)、窒化ケイ素、およびアルミナ繊維などの無機フィラー、あるいはアラミド繊維(ケブラーなど)、ポリエチレン繊維、ポリアクリレート繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維などの有機フィラーを添加して強化したもの(FRTP:fiber reinforced thermoplastic)を使用してもよい。FRTPにおける繊維の割合は、複合樹脂材料の全重量において、たとえば10〜50wt%の範囲とされる。
【0020】
本発明の複合樹脂材料は、剛性向上などの目的で無機充填材を添加したものであってもよい。無機充填材としては、たとえば炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、クレーなどが挙げられる。
【0021】
無機充填材としては、その平均粒径が0.01〜50μmの範囲のもの、さらに好ましくは0.1〜5μmの範囲のものが使用される。また、無機充填材の添加量は、複合樹脂材料の全重量において、たとえば0.1〜20wt%の範囲とされる。無機充填材の平均粒径や添加量を上記した範囲とするのは、無機充填材の粒径が余りに大きく、また添加量が多過ぎる場合には、複合樹脂材料を用いて成形する際の流動性を損なわれるなどの弊害が生じる一方、その添加量が余りに少なければ無機充填材を添加する目的を達成できないからである。
【0022】
無機充填剤を添加する場合には、樹脂成分中での無機充填剤の分散性を高めるべく、複合樹脂材料中にカップリング剤を添加し、あるいは予め無機充填剤をカップリング剤により表面処理しておくのが好ましい。カップリング剤としては、シラン系のものおよびチタネート系のもののいずれであってもよく、添加する無機充填剤の種類によって適宜選択される。
【0023】
シラン系カップリング剤としては、たとえばビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、あるいはγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
チタネート系カップリング剤としては、たとえばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、あるいはイソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートなどが挙げられる。
【0025】
本発明の複合樹脂材料には、たとえば消泡剤、離型剤、着色剤、あるいは粘度調整剤などといった種々の副資材を添加してもよい。
【0026】
本発明の第2の側面においては、上述した本発明の第1の側面で記載した複合樹脂材料の製造方法が提供される。すなわち、熱可塑性樹脂に、スチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体を添加し、二軸押出機により、180〜300℃の温度で、スクリュウの回転数を150〜300rpmとして溶融混練して、熱可塑性樹脂中に、サブミクロンオーダーの微粒子状で、スチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体を分散させることを特徴とする、複合樹脂材料の製造方法が提供される。
【0027】
本発明の第3の側面では、上述した本発明の第1の側面に記載した複合樹脂材料を成形して得られる電子機器筐体も提供される。
【0028】
かかる電子機器筐体は、比重が小さく、弾性に富む微粒子状(サブミクロンオーダー)のSAN−EPDMが添加された複合樹脂材料から得られるため、軽量で、しかも耐衝撃性に優れるといった利点がある。また、上記複合樹脂材料には、SAN−EPDMが微粒子状に均一に分散しているから、電子機器筐体の成形時における流動性も良く、成形性に優れるといった利点がある。もちろん、電子機器筐体内においても、SAN−EPDMが均一に分散しているから、SAN−EPDMの偏在により局所的に剛性が低下するといった問題も生じない。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0030】
実施例1
本実施例では、スチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体(SAN−EPDM)(白石カルシウム(株)製;「ロイヤルタフ372P20」) とABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)とを表1に示した重量比(0.1〜50wt%)で添加し、これを二軸押出機(東洋精機製;「30C150」)を用いて、約220℃においてスクリュウの回転数を250rpmとして溶融混練を行い、本実施例の複合樹脂材料を得た。次いで、この複合樹脂材料を用いて、試験片を作成してアイゾット衝撃試験により、図1に示す電子機器筐体(携帯電話用)を作成して落錘試験により衝撃強度をそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0031】
(アイゾット衝撃試験)
本衝撃試験は、JIS K 711に準じて行った。なお、試験片は、射出成形機(新潟鉄鋼製;「100ton」)により、幅3mm、厚さ12.7mm、長さ51.2mmに作成した。また、本衝撃試験は、溶融した複合樹脂材料を1方向から金型内に充填して成形した試験片(フロー)と、互いに対向する2方向のそれぞれから溶融した複合樹脂材料を金型内に充填して成形した試験片(ウエルド)との2種類について行った。
【0032】
(落錘試験)
本試験は、射出成形機(新潟鉄鋼製;「100ton」)により図1に示す形態とされた電子機器筐体(厚さ0.8〜1.2mm)を複数の作成し、これらの電子機器筐体を用いてJIS K 7211に準じて行った。なお、電子機器筐体に落下させる重錐としては、100g剛球を使用し、電子機器筐体の数の50%が破壊するときの高さ(50%破壊高さ)により衝撃強度を評価した。
【0033】
比較例1
本比較例では、SAN−EPDMを添加せずに、熱可塑性樹脂としてのABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)のみにより、実施例1と同様にして試験片および電子機器筐体を作成するとともに、アイゾット試験および落錐試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
本比較例では、熱可塑性樹脂として、ABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)70wt%、エラストマーとして、変成していないエチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)30wt%を添加し、実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料から、実施例1と同様にして試験片を作成し、アイゾット試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
比較例3
本比較例では、エラストマー成分としてのSAN−EPDMに代えて、エチレンプロピレン共重合体(EPR)(日本合成ゴム(株);「セビアン520SF」)を使用した。そして、このEPRの添加量を表1に示した量(10〜30wt%)とし、実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料を用いて、試験片および電子機器筐体を作成し、アイゾット試験および落錐試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
本実施例においては、ABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)に、複合樹脂材料の全体重量において10wt%となるようにして平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株);「ナノックス♯30」)を添加するとともに、SAN−EPDM(白石カルシウム(株)製;「ロイヤルタフ372P20」) を表1に示す割合となるように添加し、実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして試験片および電子機器筐体を作成し、アイゾット試験および落錐試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
比較例4
本比較例においては、SAN−EPDMを添加せずに、ABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)に、複合樹脂材料の全体重量において10wt%となるように炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株);「ナノックス♯30」)を添加して実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして試験片および電子機器筐体を作成し、アイゾット試験および落錐試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0038】
実施例3
本実施例においては、ABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)に、複合樹脂材料の全体重量において30wt%となるようにして、繊維長が30mm、太さ5〜10μmのガラス繊維(日本板硝子(株);「マイクログラスロービング」)を添加するとともに、SAN−EPDM(白石カルシウム(株)製;「ロイヤルタフ372P20」) を表1に示す割合となるよう添加し、実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして試験片および電子機器筐体を作成し、アイゾット試験および落錐試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
比較例5
本比較例においては、SAN−EPDMを添加せずに、ABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)に、複合樹脂材料の全体重量において30wt%となるようにガラス繊維(日本板硝子(株);「マイクログラスロービング」)を添加し、実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして試験片および電子機器筐体を作成し、アイゾット試験および落錐試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例4
本実施例においては、SAN−EPDM(白石カルシウム(株)製;「ロイヤルタフ372P20」) とABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)の重量比を7:3とし、複合樹脂材料の全体重量において、表1に示す割合になるようにしてシリコーンオイル(東レダウコーニングシリコーン;「SRX310」)を添加して、実施例1と同様にして複合樹脂材料を調整した。この複合樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして試験片(フロー)を作成し、アイゾット試験により衝撃強度を評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003939890
【0042】
表1から明らかなように、ABS樹脂にSAN−EPDMを添加した実施例1−a〜gと、SAN−EPDMを添加していない比較例1とでは、明らかにSAN−EPDMを添加した場合のほうが、アイゾット衝撃試験および落錐試験の双方において優れている。とくに、SAN−EPDMの割合を10〜40wt%とした実施例1−c〜fにおいて、耐衝撃性の改善が著しい。このように、ABS樹脂にSAN−EPDMを添加することにより、耐衝撃性が改善されることが確認された。
【0043】
エラストマー成分とABS樹脂との重量比を3:7とした場合に、エラストマー成分としてSAN−EPDM(実施例1−e)、変成していないEPDM(比較例2)、およびEPR(比較例3−c)を使用した場合をそれぞれ比較すれば分かるように、SAN−EPDMを使用した場合が最も耐衝撃性の改善の効果が著しい。なお、EPRを使用する場合には、比較例3−a〜cから分かるように、その添加量を代えても、耐衝撃性の改善の効果はほとんど変わらない。
【0044】
炭酸カルシウムを添加した場合(実施例2−a〜gおよび比較例4)やガラス繊維を添加した場合(実施例3−a〜gおよび比較例5)においても、SAN−EPDMを添加することにより、耐衝撃性が改善されることが確認された。つまり、得られる成形品の曲げ強度や引っ張り強度などを向上させる目的で、繊維や無機充填材を添加すれば耐衝撃性が低下するが、この場合でも、SAN−EPDMを添加すれば高い耐衝撃性が確保される。
【0045】
SAN−EPDMとともにシリコーンオイルを添加した実施例4−a〜dにおいては、SAN−EPDMおよびシリコーンオイルともに添加されていない比較例1に比べて、著しく耐衝撃性が改善されている。そればかりか、実施例4と略同量のSAN−EPDMを添加した実施例1−eと比べても、さらに耐衝撃性が改善されている。このように、SAN−EPDMとともにシリコーンオイルを添加することで、得られる成形品の耐衝撃性がさらに改善されることが確認された。
【0046】
実施例5
本実施例では、耐衝撃性の面で良好な結果が得られた実施例1−c〜fの複合樹脂材料について、SAN−EDPMの分散状態および粒径を透過型電子顕微鏡(日立製;「H−600」)により確認した。その結果、SAN−EDPM粒子は、ABS樹脂中に均一に分散しており、その粒径は、大部分が0.1〜0.9μmであり、そのうち0.1〜0.5μmの範囲のものが多かった。したがって、熱可塑性樹脂に添加するSAN−EDPMは、粒径を0.1〜0.9μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜0.5μmの範囲として分散させるのが好ましい。
【0047】
比較例6
本実施例では、まず、SAN−EPDM(白石カルシウム(株)製;「ロイヤルタフ372P20」) とABS樹脂(ダイセル化学(株)製;「セビアン520SF」)とを重量比3:7で添加し、これを一軸押出機(テクノベル製;「SZW−5」)を用いて、約220℃においてスクリュウの回転数を250rpmとして溶融混練を行い、複合樹脂材料を得た。この複合樹脂材料を用いて、実施例1と同様にして試験片を作成し、アイゾット衝撃試験により衝撃強度を評価した。その結果、フローの試験片では398.86J/cm、ウエルドの試験片では110.74J/cmであった。この結果は、配合割合が同様とされ、二軸押出機で溶融混練された実施例1−eと比べれば明らかなように、ウエルドの試験片での耐衝撃性が著しく小さくなっていることを示している。このようなウエルドの試験片の耐衝撃性の悪化は、ABS樹脂中におけるSAN−EPDMの分散状態や粒径に起因しているものと考えられる。
【0048】
そこで、本比較例ではさらに、先に得られた複合樹脂材料について、EDPMの分散状態および粒径を透過型電子顕微鏡(日立製;「H−600」)により確認した。その結果、SAN−EPDM粒子は、ABS樹脂中において、局所的に凝集しており、その粒径は、大部分が1.0〜2.0μmの範囲内にあった。この結果からも、熱可塑性樹脂に添加するSAN−EDPMは、サブミクロンオーダーの微粒子状で分散させるのが好ましいのが分かる。また、熱可塑性樹脂中に、サブミクロンオーダーの微粒子状でSAN−EPDMを分散させるには、二軸押出機を使用するのが好ましいことが分かる。
【0049】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明では,得られる樹脂成形品、たとえば電子機器筐体の耐衝撃性が向上するとともに、繊維や無機充填材の添加により剛性の向上を図る場合であっても、高い衝撃性を維持することができ、しかも樹脂成形品の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】落錐試験用の電子機器筐体の外観構成を示す図である。

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂に、粒径が0.1〜0.9μmである微粒子状のスチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体を分散させたことを特徴とする、複合樹脂材料。
  2. さらに無機フィラー又は有機フィラーを含む、請求項1に記載の複合樹脂材料。
  3. スチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体の添加量は、0.1〜50wt%である、請求項1または2に記載の複合樹脂材料。
  4. 0.1〜1.0wt%のシリコーンオイルをさらに含んでいる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の複合樹脂材料。
  5. 熱可塑性樹脂は、ABS樹脂のみにより、あるいはABS樹脂に、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンサルフォン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、および液晶ポリマー樹脂から選ばれる1以上の樹脂をブレンドしたポリマーアロイにより構成されている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の複合樹脂材料。
  6. 熱可塑性樹脂に、スチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体を添加し、二軸押出機により、180〜300℃の温度で、スクリュウの回転数を150〜300rpmとして溶融混練して、熱可塑性樹脂中に、粒径が0.1〜0.9μmである微粒子状で、スチレンアクリロニトリル変性エチレンプロピレンジエン共重合体を分散させることを特徴とする、複合樹脂材料の製造方法。
  7. 請求項1ないし5のいずれか1つに記載した複合樹脂材料を成形して得られることを特徴とする、電子機器筐体。
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