JP3939866B2 - ヘッドライトの光軸調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、下向きヘッドランプからの光を投光したスクリーン面上の配光パターン画像において、明暗境界線であるカットラインを構成する水平カットラインと斜めカットラインとの交点が所定の検査合格領域内に収まっているか否かで光軸調整を行うヘッドライトの光軸調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の組み立てラインにおいて、ヘッドラインの組付け後にそのロービームを前方スクリーンに照射し、そのロービームによる明暗境界線(以下、カットラインとよぶ)が所定の規格範囲に収まっているか否かでヘッドラインの光軸を調整する作業が知られている。
【0003】
例えば図6において、ヘッドライトのロービームを前方スクリーンに照射したときの配光パターン(Lが等照度曲線、Mが最高照度を示す)Pと、この配光パターンに対する上記規格範囲Kの一例とを示す。この図が示すように、明部Bと暗部Dとの境界を示すカットラインC(水平カットラインC1と斜めカットラインC2とからなる)が規格範囲K(斜線で示す)に入るようにヘッドラインの光軸調整をする。
【0004】
このような光軸調整作業は、従来目視により行っていたが、調整精度の向上に限界があり、また作業者の目に多大な疲労・負担をもたらすといった問題から、機械的に光軸調整を行う方法も提案され開発されている。
【0005】
例えば、特開昭63−113339号公報に開示されているように、スクリーンに投光したヘッドライトのロービームでの配光パターンを撮像するとともに、この撮像画像を画像処理して等照度閉曲面の重心位置を求め、この重心位置を通る鉛直軸方向に沿って微分して鉛直軸方向での明暗境界点を求め、この点の輝度を閾値として前記撮像画像を2値化し、カットラインを検出する。
さらに、このカットラインの水平線部と斜線部との交点と、重心位置との相対距離を求め、光軸調整段階では重心位置を検出するだけで、この重心位置と前記相対距離とからカットラインの想像線を求め、この想像線が規格範囲Kに収まっているか否かを検出する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では、僅か1点の明暗境界点の輝度からカットラインを検出しているために、カットラインが正確に検出されずに検査ミスを起こす等の問題がある。そこで、特公平7−92423号(特願平2−131038号)公報に記載された光軸調整方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法では、例えば図7に示すように、カットラインを構成する水平線部HL1と斜線部HL2とから構成された仮想線HLがうまく規格範囲K(ハッチングで示す領域)内に収まらねば不合格となる。換言すれば、水平線と斜線との2本の(2次元的な)直線についての検査・調整のため、導出する仮想線の形状によっては規格領域Kから一部はみ出すことがある。この場合にはその度に何度も検査をやり直さねばならない場合も考えられ、ヘッドライトの光軸検査及び調整が厄介なものとなっている。
また、このような方法では、複雑な画像処理作業(工程)及び多くの演算処理を行っているから、検査に多くの時間を要している。
【0008】
そこで、この発明は、上記した事情に鑑み、簡単な処理方法によって、容易に検査・調整をおこなうことができ、ひいては検査時間の短縮化を図ることが可能なヘッドライトの光軸調整方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、この請求項1に係る発明は、下向きヘッドランプからの光を投光したスクリーンS面上の配光パターン像について、明暗境界線であるカットラインを構成する水平線と角度線とを求め、これらの交差したエルボーポイントが所定の規格領域内に収まるか否かで光軸の検査・調整を行うヘッドライトの光軸調整方法であって、前記配光パターン画像のエルボーポイント付近若しくは重心付近において或いは水平カットラインの安定した位置付近に設定したA検査領域において前記配光パターンを複数の鉛直線に沿って分割・切断した切断面上での照度曲線において最大傾きを与える各Y座標値をそれぞれ測定し、これらのY座標値の平均値を第1検出地点の座標として求めるとともに、その平均値を通過する水平線を予め設定した検査座標上に描き、前記水平線よりも上方において設定したB検査領域において前記配光パターンを複数の鉛直線に沿って切断した切断面での照度曲線において最大傾きを与える各X,Y座標値をそれぞれ測定し、これらの各X,Y座標値の平均値をX成分及びY成分ごとにそれぞれ求め、この平均値成分を第2検出地点の座標として前記検査座標上に描き、前記第2検出地点を通る所定傾きの角度線と、前記水平線との交点をエルボーポイントとして特定するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施例について添付図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明に係るヘッドライトの光軸調整方法を示すものであり、この光軸調整方法は、第1ステップS1〜第12ステップS12で構成されている。なお、この実施例では、普通カットラインのものを検査対象としているが、Z型のカットラインのものも同様の検査作業で行える。
【0011】
第1ステップS1では、下向きヘッドランプの光を投光したスクリーン面上の配光パターン像を撮像して得た画像(画像処理画面上で)において、検査座標(X,Y)を設定し、この検査座標においてA検査領域を設定する。
例えば、この実施例では、図2に示すように、左右側ヘッドライトについて説明すると、初めに基準点(この実施例ではこれをエルボーポイント付近としたが、配光パターンの重心位置でもよい)を決め、このエルボーポイントEPよりも例えば1度右方向(ヘッドライトの光軸を基準として1度だけ水平方向右へずれた方向)にずらした領域における所定の左右横幅Wを検査領域Aとして設定する。なお、このA検査領域を設定するのに用いる基準点として、水平ラインの安定した位置を設定し、その位置からスタートする所定の横幅をA検査領域としてもよい。
【0012】
第2ステップS2では、検査座標(X,Y)上の同領域内において等間隔で設定した各鉛直線X1,X2,・・・,Xn(但し、nは整数であるが、最大10程度までとしてよい)が切断する各切断面での照度曲線(以下、切断面照度曲線という)を求める。この実施例では、鉛直線の間隔を画素間隔に対応させてあるが、特にこれに限定されない。
なお、ここで、この切断面照度曲線とは、例えば図3において、適宜の配光パターンPで投光されるヘッドライトからの光を先の鉛直線Xnで切断したときに、その鉛直線が形成する切断面Sx上に形成される仮想上の配光パターンを描く曲線のことをいう。なお、ここではこの曲線を与える関数をF=F(Y,Z)とする。
【0013】
第3ステップS3では、各切断照度曲線の最大傾斜を与える地点のY座標(以下、最大A座標とよぶ)の値y1,y2,・・・,ynを求める。
この最大傾斜点の具体的算出方法としては、例えばこの実施例では、先の関数F=F(Y,Z)をYについて偏微分して、つまり、∂F(Y,Z)/∂Yから曲線の接線の傾き、即ち、傾斜角度が得られるから、この2階微分、即ち∂2F(Y,Z)/∂Y2=0によって最大傾斜点を与えるYの値が算出される。
【0014】
第4ステップS4では、これら各切断面での最大傾斜点を与える最大A座標の値の平均値を求め、即ち、
y=(y1+y2+・・・+yn)/n
この値yを第1検出地点のY座標、A´(Y)として、予め設定した検査座標(X,Y)上にプロットするとともに、この検査座標(X,Y)上で第1検出地点A´(Y)を通るX軸の平行な水平線αを描く。
【0015】
第5ステップS5では、先の水平線αよりも所定の投影角度(この実施例では、検査車両のヘッドライトの光軸を基準として仰角角度0.3°)上方において所定の上下幅H(この実施例では、検査車両のヘッドライトを基準として+/−0.1°)で、かつ、左右横幅W´(A検査領域と同一幅でなくともよい)の範囲でB検査領域を設定する。
【0016】
第6ステップS6では、B検査領域で前記配光パターンで投光されるヘッドライトからの光を、先に設定しておいた検査座標(X,Y)上において、同様にして、即ち、画素間隔に対応して等間隔で設けた複数の鉛直線、X1´,X2´,・・・,Xm´(但し、mは整数であるが、最大10程度までとしてよい)が切断する各切断面照度曲線を求める。なお、ここではこの曲線を与える関数をG=G(Y,Z)とする。
【0017】
第7ステップS7では、各切断照度曲線の最大傾斜を与える地点のX座標及びY座標(以下、最大B座標よぶ)の値(x1,y1),(x2,y2),・・・,(xm,ym)を求める。
【0018】
第8ステップS8では、これら各最大B座標でのX座標及びY座標の値の平均値を求め、即ち、
x=(x1+x2+・・・+xm)/m
y=(y1+y2+・・・+ym)/m
これらの(x,y)座標値を第2検出地点B´として、予め設定した検査座標(X,Y)上にプロットするとともに、この検査座標(X,Y)上で第2検出地点B´(x,y)を通る適宜傾き(この実施例では15°)の直線、即ち角度線βを描く。なお、この角度線βの傾斜角度については、この実施例のような普通カットラインでは、通常、12°、15°、17°(但し、これらの角度に限定しなくともよい)のいずれかの傾斜角度が設定され、また図4に示すZ型カットラインでは30°(同様に、この角度に限定しなくともよい)に設定されている。
【0019】
第9ステップS9では、第2検出地点B´を通る所定傾きの角度線βと、水平線αとの交点が初等数学的に簡単に、かつ、一義的に求められるから、この交点をエルボーポイント(EP)として特定する。
【0020】
第10ステップS10では、このエルボーポイント(EP)が所定の規格範囲内にあるか否かを判別する。なお、この実施例では、この規格範囲Kを、従来のものとは大きく異なり、図2に一点鎖線で示す矩形領域Kに収まっているか否かで合格の良否を判断する。
【0021】
第11ステップS11では、エルボーポイント(EP)が所定の規格範囲K内にあると判断された場合には、その検査車両のヘッドライトの光軸調整が合格であると判断される。
【0022】
第12ステップS12では、エルボーポイント(EP)が所定の規格範囲K内にないと判断された場合には、その検査車両のヘッドライトの光軸調整が不合格であると判断され、再度光軸調整がやり直しされる。
【0023】
従って、この実施例によれば、切断面照度曲線の傾きの最大値を与える複数の座標値の平均値を求めることによってカットラインを検出するようになっているが、外光の影響、光の粒子の運動等のよってある程度ばらつきのある鋸状の線として導出されても、統計的な処理、即ち平均値を求めるといった手法で直線的に近似させることができ、検査精度の向上が図れる。
【0024】
次に、この発明に係る光軸調整方法に使用する光軸調整装置について説明する。
図5は、この発明に係る光軸調整装置を示すものであり、この光軸調整装置は、ヘッドライトの光軸C上に設けた結像レンズ1と、この結像レンズ1の後方に配置したハーフミラー2と、このハーフミラー2の後方に配置したスクリーン3と、ハーフミラー2の直上に配置した光度基板4と、スクリーン3の投光像を撮像するCCDカメラ5とをレンズユニット6内部に設置している。
【0025】
結像レンズ1は、焦点距離が1mのものを使用しており、ヘッドライトから1m前方に設置されている。また、スクリーン3は、縦、横がそれぞれ10m、10mの大きさのものが使用されている。
【0026】
光度基板4は、ハーフミラー2を介して偏向・入射するヘッドライトからの光について、照度を測定し、最高照度点がどの位置にあってもセンサー間演算法によって照度の測定が可能となっている。CCDカメラ5は、画素数が縦、横それぞれ256×256個(この個数に限定されない)を有する。即ち、およそ26万画素の構成からなり、先のスクリーンの場合には、1画素につき4mm(0.23度)間隔に相当する。
【0027】
レンズユニット6は、例えば所望の鉛直線で切断される切断面での切断照度曲線を検出しようとする場合には、このユニット6全体を鉛直方向に昇降させながら光度基板4で若しくはCCDカメラ5で照度を逐次検出することで、所定の切断照度曲線に関するデータが得られる。従って、各鉛直線についてこの切断照度曲線を求める場合には、このユニット6を水平(X)方向に毎回移動させながら、各移動位置上で鉛直方向に昇降させて検出するようにすればよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明によれば、配光パターン画像のエルボーポイント付近若しくは重心付近において或いは水平カットラインの安定した位置付近に設定した検査領域において配光パターンを複数の鉛直線に沿って分割・切断した切断面上での照度曲線において最大傾きを与える各Y座標値をそれぞれ測定し、これらのY座標値の平均値を第1検出地点として求めるとともに、その平均値を通過する水平線を予め設定した検査座標上に描き、水平線よりも上方において設定したB検査領域において配光パターンを複数の鉛直線に沿って切断した切断面での照度曲線において最大傾きを与える各X,Y座標値をそれぞれ測定し、これらの各X,Y座標値の平均値をX成分及びY成分ごとにそれぞれ求め、これらの平均値座標を第2検出地点として検査座標上に描き、第2検出地点を通る所定傾きの角度線と、水平線との交点をエルボーポイントとして特定するので、換言すれば、僅か1点のみを検査対象としているので、2次元的な部位を検査対象とした従来の調整方法に比べて、検査・調整作業が格段と明瞭・容易になり、その分作業能率の向上、検査・調整コストの削減が大幅に可能となる。
【0029】
また、この発明によれば、画像処理に基づき、数学的に、かつ、統計学的に処理した極めて信頼度の高い点を導出し、これを基にして光軸調整の良否を判断しているから、従来の単純な1点を求めて検査対象としたものに比べて、検査精度の向上が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のヘッドライトの光軸調整方法を示すフローチャート。
【図2】この発明の光軸調整方法を示す説明図。
【図3】切断面照度曲線において傾きを示す説明図。
【図4】この発明の他の光軸調整方法を示す説明図。
【図5】この発明に使用する光軸調整装置を示す概略断面図。
【図6】従来例を示す説明図。
【図7】他の従来例を示す説明図。
【符号の説明】
1 結像レンズ
2 ハーフミラー
3 スクリーン
4 光度基板
5 CCDカメラ
α 水平線
β 角度線
A´ 第1検出地点
B´ 第2検出地点
EP エルボーポイント
Claims (2)
- 下向きヘッドランプからの光を投光したスクリーンS面上の配光パターン像について、明暗境界線であるカットラインを構成する水平線と角度線とを求め、これらの交差したエルボーポイント(EP)が所定の規格領域(K)内に収まるか否かで光軸の検査・調整を行うヘッドライトの光軸調整方法であって、
前記配光パターン画像のエルボーポイント(EP)付近若しくは重心付近において或いは水平カットラインの安定した位置付近に設定したA検査領域において前記配光パターンを複数の鉛直線(x1、x2、・・・、xn)に沿って分割・切断した切断面上での照度曲線において最大傾きを与える各Y座標値をそれぞれ測定し、
これらのY座標値の平均値を第1検出地点(A´)の座標として求めるとともに、その平均値を通過する水平線(α)を予め設定した検査座標(X、Y)上に描き、
前記水平線(α)よりも上方において設定したB検査領域において前記配光パターンを複数の鉛直線(x1´、x2´、・・・、xm´)に沿って切断した切断面での照度曲線において最大傾きを与える各X、Y座標値をそれぞれ測定し、
これらの各X、Y座標値の平均値をX成分及びY成分ごとにそれぞれ求め、
この平均値成分を第2検出地点(B´)の座標として前記検査座標(X、Y)上に描き、
前記第2検出地点(B´)を通る所定傾きの角度線(β)と、前記水平線(α)との交点をエルボーポイント(EP)として特定することを特徴とするヘッドライトの光軸調整方法。 - 所定の矩形領域からなる規格範囲を設定し、エルボーポイント(EP)がこの規格範囲内に収まっているか否かによって光軸調整の良否を判断することを特徴とする請求項1に記載のヘッドライトの光軸調整方法。
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