JP3939180B2 - 磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報を記録するための情報記録媒体に関し、特にハードディスクその他の磁気ディスクとその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気ディスク装置では、停止時には磁気ヘッドを磁気ディスクに接触させておき、起動時には磁気記録媒体を高速回転させることによって、磁気ヘッドを一定間隔で浮上させ、この状態で情報の記録再生を行うCSS(Contact Start Stop)方式が採用されていた。
このCSS方式の磁気ディスク装置では、起動のときに磁気ヘッドの浮上量が所定の値に達するまでの間、該磁気ヘッドが磁気記録媒体面上の所定の領域を摺動する。また、磁気ヘッドが磁気記録媒体に軟着下するときにも磁気ヘッドと磁気記録媒体とが接触する。
【0003】
そこで、磁気ヘッドと磁気記録媒体との接触摺動による破損を防止するために、例えば特開昭60-223030号公報に記載されてあるように、磁気記録媒体上に潤滑剤をオーバーコートした後、これを一定温度で加熱焼成する技術が提案された。この技術によれば、潤滑剤が磁気記録媒体の表面に拡散し、結果として磁気ヘッドと磁気記録媒体との摩擦係数を低減できる。
【0004】
一方、単に磁気記録媒体の主表面に潤滑層を形成するだけでは、停止時において磁気ヘッドが潤滑層に粘着してしまい、起動障害が発生する場合がある。
そこで、CSS方式においては、磁気記録媒体の主表面にテクスチャと称される一定の表面粗さの凹凸形状を設けることにより、かかる問題を回避してきた。
【0005】
ところで、近年では磁気ディスク装置において、CSS方式に代えてLUL(Load UnLoad)方式が採用され始めている。
このLUL方式は、停止状態においては、磁気ヘッドを磁気記録媒体の外側に配置されたランプと称される傾斜台に退避させておき、起動時には、磁気記録媒体を回転させた後に磁気ヘッドをランプから該磁気記録媒体面上へ滑動させ、これを一定間隔で浮上させながら情報の記録再生を行うものである。
【0006】
このLUL方式では、磁気記録媒体面上に、磁気ヘッドが接触摺動する領域を確保する必要がないので、CSS方式に比べて記録容量を増やせる。
また、LUL方式では、起動時や停止時には磁気ヘッドがランプに退避しているので、磁気ヘッドの粘着防止用のテクスチャを設ける必要がない。従って、磁気記録媒体を平滑化できると共に、磁気ヘッドの浮上量をCSS方式の場合よりも低下(例えば15[nm]以下)させることができ、結果として磁気記録媒体の記録密度を向上できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CSS方式からLUL方式へ移行するに伴い、磁気ディスク装置にて再生信号が不規則に変動してしまうと云った障害が発生する場合が生じてきた。本発明者の研究によれば、その障害が発生するメカニズムは次の如くであると考えられる。すなわち、磁気ヘッドにおいては、浮上量制御の容易なNPABスライダ(負圧スライダ)が採用されているが、これによると磁気ヘッドが浮上走行しているときにスライダ面に負圧が発生する。従って、この負圧により、磁気記録媒体面上に存在する微量な有機或いは無機系の付着物等や、流動性の高い潤滑層などが磁気ヘッドのスライダ面に吸引され、そこで濃縮し堆積する。
このようにして、付着物や潤滑層などが磁気ヘッドに移着堆積した結果、記録再生時において該磁気ヘッドの浮上姿勢や浮上量に変調をきたし、再生信号が不規則に変動してしまうのである。このような現象をフライスティクションと呼んでいる。
【0008】
さらに本発明者の研究によれば、次のようなことも分かっている。すなわち、従来のCSS方式においは磁気ヘッドと磁気記録媒体とが接触摺動するので、これにより磁気ヘッドの移着堆積物を除去するクリーニング作用が得られる。従って、CSS方式においては、特にフライスティクションが問題となる事態は発生しなかったものと考えられる。
【0009】
これに対し、LUL方式では磁気記録媒体と磁気ヘッドの摺動動作がないので、磁気ヘッドに移着した付着物や潤滑剤などをクリーニングする作用が得られない。そのためLUL方式では、フライスティクションが発生し易く、場合によっては、磁気ヘッドに移着した堆積物が磁気記録媒体の表面に落下し、磁気記録媒体の保護膜に損傷を与え、記録再生が不可能となる事態が発生する場合もある。
また、CSS方式からLUL方式への移行に伴い、磁気ヘッドの浮上量が一段と低下してきた為、フライスティクションの問題がいっそう深刻化してきた。
このように、フライスティクションは従来のCSS方式にはない、LUL方式に特有の課題であると考えられる。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑み、フライスティクションを有効に防止するための技術を提供する事を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、フライスティクション現象と、潤滑層の成分、層厚、若しくは密着性、保護層、又は磁気記録ヘッドの形状若しくは浮上量などとの因果関係について研究したところ、フライスティクションの発生と磁気記録媒体面上の潤滑層の層厚分布とに何らかの相関があり、潤滑層の層厚分布にムラがある場合には、フライスティクションの発生頻度が高くなることを見出した。本発明は、このような知見を基本として成されたものである。
【0012】
〔第1の態様〕
すなわち本発明の第1の態様は、基板上に潤滑層を備える情報記録媒体の製造方法であって、前記基板上における前記潤滑層の層厚のばらつき度合いを表す層厚分布値とフライスティクションの発生率との相関関係を求め、該求めた相関関係に基づいてフライスティクションの発生率が所望の値以下となる前記層厚分布値を特定し、該特定した層厚分布値を有するように前記潤滑層を形成することを特徴とする。
【0013】
ここに云う層厚分布値としては、潤滑層の層厚の分散若しくは標準偏差、又は該標準偏差を潤滑層の層厚の平均値で割った値(規格化標準偏差)などが挙げられる。
【0014】
〔第2の態様〕
また、本発明の第2の態様は、基板上に潤滑剤からなる潤滑剤膜を成膜する成膜工程を含む情報記録媒体の製造方法であって、前記潤滑剤膜の膜厚を均一化する潤滑剤膜均一化工程を含むこと特徴とする。
【0015】
ここに云う潤滑剤膜とは、最終的に得られる潤滑層の中間生成体を総称したものである。
本発明によれば、潤滑剤膜均一化工程において潤滑剤膜の膜厚を均一化するので最終的にムラの無い潤滑層を形成できる。これにより、フライスティクションを有効に防止できる。
【0016】
さらに本発明者は、潤滑層の層厚分布に着目して研究した結果、従来の潤滑層の形成方法では、フライスティクションを防止できる程度にまで膜厚分布を抑制することが困難であると考えた。この点につき以下詳細に説明する。
【0017】
従来より、潤滑層の形成においては先ず、PFPE(パーフルオロポリエーテル)系の固体又は液体の潤滑剤を、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、PFC(パーフルオロカーボン)、又はHFE(ハイドロフルオロエーテル)などの溶媒に分散溶解させた溶液を作成し、この溶液を磁気記録媒体の主表面に成膜する。成膜には、例えばディップ法、スプレイ法、スピンコート法、又はベーパー法などが用いられる(成膜工程)。
【0018】
次いで、主表面上に形成された溶媒を含む潤滑剤からなる潤滑剤膜を自然的或いは強制的に乾燥させる(乾燥工程)。
【0019】
次いで、潤滑剤膜と磁気記録媒体との密着性を向上させる為に、該潤滑剤膜を加熱する。この加熱工程では、所定の温度に固定された恒温炉の中に潤滑剤膜の形成された磁気記録媒体を一定時間保管する(加熱工程)。
以上のような工程を経て、潤滑剤膜から潤滑層を形成し、磁気記録媒体が完成する。
【0020】
ところで、上記乾燥工程において、潤滑剤膜は自然或いは人為的な手段によって乾燥されるが、本発明者は、この乾燥工程を経てもなお、潤滑剤膜中においては微視的な領域に僅かに溶媒が残存しており、しかも残存溶媒の分布は磁気記録媒体の主表面上において一様でないことを見出した。
【0021】
そして本発明者は、潤滑層の層厚が不均一となるメカニズムを次のように考察した。すなわち、従来の加熱工程では、最初から溶媒の沸点よりも高い温度に固定して潤滑剤膜を加熱するので、主表面上における残留溶媒分子と潤滑剤の低分子量成分とが極めて急激に蒸発する。このとき、上述のように残留溶媒分子は主表面上で一様に存在しないので、仮に主表面上の全領域が均等に昇温したとしても潤滑層の層厚が乱れてしまう。
【0022】
しかも、基板の熱容量は見かけ上、該基板の領域によって異なるので、これを恒温加熱した場合、基板の主表面上において昇温速度にバラツキが発生するのが実情である。従って、この事が上記の要因をさらに助長してしまい、結果としてムラのある潤滑層が形成されてしまうのである。
しかして本発明者は、以上のような知見と考察とに基づき、潤滑層の層厚分布を低減させるべくさらなる鋭意研究の結果、本発明の具体低的な態様を完成させたものである。
【0023】
〔第3の態様〕
すなわち本発明の第3の態様は、上記第2の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記潤滑剤は溶媒を含有するものであり、前記潤滑剤膜厚均一化工程には、前記成膜工程の後に前記潤滑剤膜中における前記溶媒の蒸発速度を調整する蒸発速度調整工程が含まれることを特徴とする。
【0024】
この第3の態様によれば、仮に潤滑剤膜中に溶媒分子が不均一に残留していても、溶媒の蒸発速度を調節することにより、潤滑剤膜の膜厚を乱す作用を緩和でき、結果として実質的にムラのない潤滑層を得ることができる。これにより、フライスティクションを有効に防止できる。
なお、潤滑層の均一化からフライスティクション防止に至るまでの微視領的域におけるダイナミックな力学現象は必ずしも定かではないが、潤滑層を実質的に均一化することにより、第1に磁気ヘッドその他の読取/書込手段を潤滑層上にて非接触且つ低浮上量(例えば、5乃至10ナノメートル以下)の状態で安定させることができ、第2に仮に読取/書込手段が潤滑層と接触したとしてもその時に該潤滑層が読取/書込手段に移着することを防止でき、第3に負圧によって潤滑層が読取/書込手段に吸引される量を低減できる等の理由により、フライスティクションが防止されるものと考えられる。
【0025】
〔第4の態様〕
本発明の第4の態様は、第3の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記溶媒の蒸発速度が時間的に増大するように当該蒸発速度を調整することを特徴とする。
【0026】
〔第5の態様〕
本発明の第5の態様は、第3又は第4の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記溶媒が前記基板上で略均等に蒸発するように当該蒸発速度を調整することを特徴とする。
【0027】
本発明のより具体的な態様によれば、第3乃至第5の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜の膜厚減少率が毎分1パーセント以上、10パーセント以下となるように前記溶媒の蒸発速度を調整することを特徴とする情報記録媒体の製造方法も提供される。
なお、膜厚減少率が毎分11パーセントを超える場合、潤滑剤膜の蒸発速度が速すぎるため、残存溶媒分子及び低分子量成分を含んだ潤滑剤分子の蒸発が不均一になり、好ましくない。
【0028】
〔第6の態様〕
本発明の第6の態様は、第3乃至第5の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜の加熱温度に基づいて、前記溶媒の蒸発速度を調整することを特徴とする。
【0029】
〔第7の態様〕
本発明の第7の態様は、第6の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記溶媒の沸点以下の温度で加熱を開始することを特徴とする。
【0030】
このように、溶媒の沸点以下の温度で加熱を開始することにより、主表面上における残留溶媒分子と潤滑剤の低分子量成分とが急激に蒸発してしまうことが回避される。
【0031】
ここで、前記加熱を開始する温度は、室温から前記溶媒の沸点近傍までの範囲内とするのが好ましい。
具体的には、前記溶媒としてDuPont社製のVertrel-XFを用いる場合は、その沸点が摂氏55度であるので加熱開始温度は室温〜摂氏55度程度が好ましい。また溶媒として3M社製のPF5060を用いる場合は、その沸点が摂氏56度であるので加熱開始温度は室温〜摂氏56度程度が好ましい。また溶媒として3M社製のHFE7100を用いる場合はその沸点が摂氏60度であるので、加熱開始温度は室温〜摂氏60度程度が好ましい。
【0032】
本発明のより具体的な態様によれば、第7の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記溶媒の沸点以下の温度で加熱を開始した後、前記潤滑剤の熱分解温度以下の範囲内で当該加熱温度を調整することを特徴とする情報記録媒体の製造方法も提供される。
ここで、前記潤滑剤の熱分解温度とは、当該潤滑剤の一部が熱分解を起こし、分解生成した低分子量成分が熱蒸発することにより、実質的に重量減少し始める温度を云う。
【0033】
具体的には、潤滑剤としてAusimont社製のフォンブリンZ-DOLを用いる場合は、加熱による熱分解と蒸発により摂氏170度付近で重量減少が始まるので、摂氏170度以下の範囲内で当該加熱温度を調整するとよい。
また、潤滑剤としてAusimont社製のフォンブリンZ-TETRAOLを用いる場合は、加熱による熱分解と蒸発により摂氏190度付近で重量減少が始まるので、摂氏190度以下の範囲内で当該加熱温度を調整するとよい。
いずれの場合においても加熱温度の上限は潤滑剤の熱分解温度以下であるが、潤滑剤膜の膜厚均一化を促進するためには、加熱温度の上限を摂氏150度と以下、好ましくは摂氏130度以下とするのが望ましい。
【0034】
本発明のさらに具体的な態様によれば、第7の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記溶媒の沸点以下の温度で加熱を開始した後、その加熱開始温度から前記潤滑剤の熱分解温度未満の温度にわたって当該加熱温度を連続的及び/又は段階的に昇温させることを特徴とする情報記録媒体の製造方法も提供される。
【0035】
ここで、加熱開始温度から加熱終了温度(前記潤滑剤の熱分解温度未満の温度を云う。以下同じ。)までの昇温時間は、潤滑剤膜の膜厚減少率を毎分1%以上10%以下に維持するために10分から120分までの範囲内とするのが好ましい。
【0036】
このように、潤滑剤膜の加熱温度を連続的及び/又は段階的に昇温させることにより、潤滑剤膜中における残存溶媒分子と低分子量の潤滑剤分子とが均一に蒸発すると共に、主表面上で昇温速度にムラができてしまうことを抑制できる。これにより、均一な潤滑層を得ることができる。
【0037】
また、本発明において前記溶媒の蒸発速度は、前記潤滑剤膜へ照射する電磁波の強度に基づいて調整することもできる。電磁波としては、紫外線を採用するのが好ましい。
【0038】
〔第8の態様〕
すなわち本発明の第8の態様は、第3乃至第7の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜へ照射する紫外線の強度に基づいて、前記溶媒の蒸発速度を調整することを特徴とする。
【0039】
ここで、紫外線としては、その波長150から400ナノメートルの紫外線が好ましい。また、紫外線の光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、又は超高圧水銀ランプ等を用いることができる。
【0040】
また、第8の態様においては、紫外線の光源の照度を30から300[cmW/cm2]までの範囲内で連続的及び/又は段階的に強めるのが好ましい。
このように、照度を連続的及び/又は段階的に強めることにより、潤滑剤膜に与えられるエネルギの面内バラツキが低減するので、該潤滑剤膜中における残存溶媒分子と低分子量の潤滑剤分子とが均一に蒸発することとなり、潤滑剤膜の膜厚を乱す作用を充分に抑制できる。
なお、紫外線を照射する期間は10分以内が望ましい。また、紫外線の照射と加熱とを併用することとしてもよいのは勿論である。
また、溶媒の蒸発速度は、潤滑剤膜へ照射する紫外線の波長λに基づいて調整することもできる。
【0041】
また、本発明の第8の態様において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜に対しオゾン処理をさらに施すのが好ましい。
ここで、オゾン処理としては、水蒸気を加える湿潤オゾン処理が好ましい。
【0042】
〔第9の態様〕
本発明の第9の態様は、第3乃至第8の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜が配置されている空間の真空度に基づいて、前記溶媒の蒸発速度を調整することを特徴とする。
【0043】
〔第10の態様〕
本発明の第10の態様は、第9の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記溶媒の蒸気圧以上の圧力の範囲内で前記真空度を調整することを特徴とする。
【0044】
ここで、前記溶媒の蒸気圧について具体的に説明すると、DuPont社製のVertrel-XFを用いる場合は、その蒸気圧が摂氏25度で218[mmHg]である。また、3M社製のPF5060を用いる場合は、その蒸気圧が摂氏25度で232[mmHg]である。また、3M社製のHFE7100を用いる場合は、その蒸気圧が摂氏25度で210[mmHg]である。
【0045】
本発明の具体的な態様によれば、第10の態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、大気圧から、当該大気圧未満で且つ前記溶媒の蒸気圧以上の所定の圧力にわたって前記潤滑剤膜が配置されている空間内を連続的及び/又は段階的に減圧することを特徴とする情報記録媒体の製造方法も提供される。
【0046】
ここで、前記所定の圧力(以下、最終圧力という。)は、前記溶媒の蒸気圧又はその近傍の圧力であることが好ましい。
【0047】
このように、潤滑剤膜が配置されている空間内を連続的及び/又は段階的に減圧することにより、潤滑剤膜中における残存溶媒分子と低分子量の潤滑剤分子とが均一に蒸発するので、ムラのない潤滑層を形成できる。
【0048】
また、前記蒸発速度調整工程においては、前記潤滑剤膜が配置されている空間内の雰囲気を清浄に保つのが好ましい。雰囲気中のパーティクルや、無機化合物又は有機化合物等が溶媒の均一な蒸発を妨げてしまうからである。
ここに云う清浄な雰囲気とは、クリーンルーム環境、特にClass100以下であることが望まれる。また、Arその他の不活性ガス雰囲気によって清浄化しても良い。
【0049】
本発明のさらに具体的な態様によれば、第3乃至第10の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜の平均膜厚に対する標準偏差が15パーセント以下となるように前記溶媒の蒸発速度を調整することを特徴とする。
【0050】
このように、潤滑剤膜の平均膜厚に対する標準偏差を15パーセント以下とすることにより、フライスティクションの発生率を所定の許容範囲内(例えば20%以下)に抑えることができる。好ましくは、潤滑剤膜の平均膜厚に対する標準偏差を10パーセント以下とすることにより、フライスティクションの発生率を一層確実に抑制できる。
【0051】
本発明においては、前記潤滑剤膜の平均膜厚が20オングストローム以下、好ましくは15オングストローム以下、さらに好ましくは10オングストローム以下であることが望ましい。潤滑剤膜の平均膜厚が20オングストロームを超えると、潤滑剤の非密着成分が増加し、フライスティクションが発生しやすくなるので好ましくない。
また、前記潤滑剤膜の平均膜厚は5オングストローム以上であることが好ましい。潤滑剤膜の平均膜厚が5オングストローム未満の場合は、潤滑剤の被覆率が低下し、磁気ディスクのクラッシュ障害などが発生しやすくなり、信頼性が低下するので好ましくない。
【0052】
本発明の別の態様によれば、第3乃至第10の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜の膜厚の標準偏差が1.3オングストローム以下となるように前記溶媒の蒸発速度を調整することを特徴とする情報記録媒体の製造方法も提供される。
【0053】
このように、潤滑剤膜の膜厚の標準偏差を1.3オングストローム以下とすることにより、フライスティクションの発生率を所定の許容範囲内(例えば20%以下)に抑えることができる。好ましくは、潤滑剤膜の膜厚の標準偏差を0.9オングストローム以下とすることにより、フライスティクションの発生率を一層確実に抑制できる。
【0054】
〔第11の態様〕
本発明の第11の態様は、第1乃至第10の何れかの態様による情報記録媒体の製造方法において、前記成膜工程では、前記基板上に形成された保護層の上に前記潤滑剤膜を成膜することを特徴とする。
【0055】
この第11の態様における前記蒸発速度調整工程では、前記潤滑剤膜が配置されている空間内の雰囲気を清浄な雰囲気とするのが好ましい。また、この潤滑剤膜が配置されている空間内の雰囲気は窒素雰囲気とするのが好ましい。窒素が前記保護層内に進入するのを助長し、当該保護層表面の窒化を促進するので、前記潤滑剤膜の密着度(ボンデットレシオ)を向上できるからである。
【0056】
〔第12の態様〕
本発明の第12の態様は、基板と、この基板上に形成された情報記録層と、この情報記録層上に形成された潤滑層と、を少なくとも備える情報記録媒体であって、前記潤滑層の平均層厚に対する標準偏差が15パーセント以下とされていることを特徴とする。
【0057】
この第12の態様のように、潤滑層の平均層厚に対する標準偏差を15パーセント以下とすることにより、フライスティクションの発生率を所定の許容範囲内(例えば20%以下)に抑えることができる。好ましくは、潤滑層の平均層厚に対する標準偏差を10パーセント以下とすることにより、フライスティクションの発生率を一層確実に抑制できる。
【0058】
ここで、前記潤滑層の平均層厚は、20オングストローム以下、好ましくは15オングストローム以下、さらに好ましくは10オングストローム以下であることが望ましい。潤滑層の平均層厚が20オングストロームを超えると、この潤滑層中の非密着成分が増加し、フライスティクションが発生しやすくなるので好ましくない。
また、前記潤滑層の平均層厚は5オングストローム以上であることが好ましい。潤滑層の平均層厚が5オングストローム未満の場合は、この潤滑層の被覆率が低下し、磁気ディスクのクラッシュ障害などが発生しやすくなり、信頼性が低下するので好ましくない。
【0059】
本発明の別の態様によれば、基板と、この基板上に形成された情報記録層と、この情報記録層上に形成された潤滑層と、を少なくとも備える情報記録媒体であって、前記潤滑層の層厚の標準偏差が1.3オングストローム以下とされていることを特徴とする情報記録媒体も提供される。
【0060】
このように、潤滑層の層厚の標準偏差を1.3オングストローム以下とすることにより、フライスティクションの発生率を所定の許容範囲内(例えば20%以下)に抑えることができる。好ましくは、潤滑層の層厚の標準偏差を0.9オングストローム以下とすることにより、フライスティクションの発生率を一層確実に抑制できる。
【0061】
また、前記潤滑層の密着度(ボンデットレシオ)は、70パーセント以上とするのが好ましい。また、前記潤滑層の被覆率(カバレッジ)は90パーセント以上とするのが好ましい。これにより、フライスティクションを抑制する作用が高まる。
【0062】
また、潤滑層の材料は特に限定されないが、例えばPFPE系の潤滑剤、特に前述したフォンブリンZ-DOL若しくはフォンブリンZ-TETRAOL、又はフォンブリンZ-DOLとフォンブリンZ-TETRAOLとの混合物を用いるのが好ましい。
また、溶媒については前述したVertrel-XFを用いるのが好ましい。
【0063】
なお、潤滑剤については、所望の分子量分布となるよう、事前に分子量精製による分画を施しても良い。分子量分画の方法としては、GPC法、超臨界法など公知の手段を用いることができる。分子量分画を施した潤滑剤を用いると、潤滑剤膜の均一化を促すので好ましい。
また、溶媒については、前述したHFC(ハイドロフルオロカーボン)系溶媒が好ましい。HFC系溶媒は、各種潤滑剤の分散溶媒に優れており、潤滑剤膜の膜厚均一性を高める作用を発揮する。HFC系溶媒としては、例えば前述のVertrel-XFなどが挙げられる。
【0064】
〔第13の態様〕
本発明の第13の態様は、第12の態様による情報記録媒体において、前記潤滑層は、前記情報記録層を保護する保護層を介して当該情報記録層上に形成されていることを特徴とする。
【0065】
この第13の態様において、前記保護層はカーボン系保護膜とするのが好ましい。特に、水素化カーボン膜や、窒素化カーボン膜、又は水素窒素化カーボン膜等が好ましく、これを用いることにより潤滑剤との密着度を向上できる。
また、カーボン系保護層の形成方法については特に限定されないが、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法その他のスパッタ法や、P-CVD法等によれば、カーボン系保護膜を緻密に構成できる為、前記情報記録層を保護する機能を向上できる。
【0066】
ここで、前記保護層の層厚について言及すると、CSS方式では、磁気ヘッドと磁気記録媒体とが摺動するので保護層に高い耐久性が求められる。従って、CSS方式では保護層の層厚の下限が実際上60〜70Å程度とされていた。
一方、磁気ヘッドと磁気記録媒体とが摺動しないLUL方式への移行に伴い、前述した下限が取り払われたのであるが、その反面、低膜厚化に伴う保護層の付着力低下がフライスティクションの原因の一つになっていた。
これに対し、本発明においては、前述したように潤滑層の層厚分布を低減できるので、保護層を薄く形成してもフライスティクションを抑制する作用を充分に担保できる。すなわち、本発明によれば、フライスティクションが発生するまでのマージンを大きく確保できるために、その分、保護層を薄くできる。保護層を薄くすることによりスペーシングロスの低減に貢献し、結果として情報記録媒体の記録密度を向上できる。
【0067】
具体的には、本発明において保護層(カーボン系保護層)の層厚の上限は、60Å以下とするのが好ましく、より好ましくは50Å以下である。
また、この保護層の層厚の下限は、30Å以上とするのが好ましい。保護層の層厚が30Å未満の場合は、当該保護層の被覆率が低下してしまい、クラッシュの原因となる場合があるので好ましくない。
【0068】
〔第14の態様〕
本発明の第14の態様は、第12又は第13の態様による情報記録媒体において、前記情報記録層が磁性層からなることを特徴とする。
【0069】
ここで、前記磁性層の材料は特に限定されないが、例えばCo系又はFe系の合金を用いることができる。Co系の合金としてはさらに、CoCr系合金、CoPt系合金、CoNi系合金、CoCrPt系合金、CoCrPtTa系合金、CoCrPtB系合金、又はCoCrPtTaB系の合金が挙げられる。
【0070】
なお、また基板と磁性層との間に、公知のシード層、下地層、中間層などを設けて、磁性層の結晶粒やその分布と配向性を制御して高記録密度化を図ってもよい。
【0071】
また、前記基板としては、特に限定されないが例えば、アモルファスガラス、結晶化ガラスその他のガラス基板、アルミニウム合金基板、カーボン基板、シリコン基板、又はプラスチック基板などが挙げられる。特に、ガラス基板は高い平滑性(表面粗さ)が得られるので、高記録密度媒体用基板として好ましい。ガラス基板は、化学強化により強度を高め、高記録密度化を助けることができる。
【0072】
なお、基板の表面粗さは、Rmaxで5[nm]以下、Raで0.5[nm]以下であることが好ましい。これにより、潤滑剤膜中に残存する溶媒の量とその分布そのものを小さくできる。
ここで、RmaxやRa等の表面粗さは、日本工業規格(JIS)のB0601規定のものを指す。
【0073】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の情報記録媒体としての磁気ディスクの層構成を模式的に示す断面図である。この磁気ディスク10は、基板(非磁性基板)1と、この基板1上に形成された磁性層3と、この磁性層3上に形成された保護層(カーボン系保護層)4と、この保護層4上に形成された潤滑層5とを少なくとも備えてなる。基板1と磁性層3との間には、シード層2aと下地層(非磁性下地層)2bとからなる金属層2が形成されている。
以上のように構成される磁気ディスク10について、以下実施例により具体的に説明する。
【0074】
〔実施例1〕
以下のようにして実施例1の磁気ディスク10を製造した。
先ず、アルミノシリケートガラスを、2.5インチ型(内径20[mm]、外径65[mm]、板厚0.635[mm])のディスク状に成型してガラスディスクブランクを得、得られたガラスディスクブランクの表面に対して研削、精密研磨、精密洗浄を順次施すと共に、このガラスディスクブランクを化学強化することにより、表面が平坦でかつ清浄なガラス基板1を得た。
【0075】
次いで、Class100以下のクリーンルーム内において、枚葉式スパッタリング成膜装置(サーキュラスM-12型)を用い、ガラス基板1上に、シード層2a、下地層2b、及び磁性層3をこの順に積層した。
【0076】
次いで、アルゴンガスに対する水素ガスの含有量を30%とした雰囲気中で、炭素ターゲットを用いてスパッタリングを行い、磁性層3の上に、カーボン系保護層4としての炭素水素保護層を40[Å]形成した。
なお、この炭素水素保護層はプラズマCVD法により形成することもできる。
【0077】
次いで、以下のようにして炭素水素保護層4上に潤滑剤膜を形成した。
先ず、デュポン社製のフッ素系(ハイドロフルオロカーボン系)溶媒であるVertrel-XFに対して、アウジモント社製PFPE系潤滑剤フォンブリンZ-TETRAOLを0.5g/Lの濃度で溶解させた溶液を用意し、この溶液中に、炭素水素保護層4まで形成された磁気ディスクの中間生成体を浸漬させた後、これを10cm/minの引き上げ速度で引き上げて、炭素水素保護層4上に潤滑剤膜を成膜した(成膜工程)。ここで、潤滑剤膜の成膜には、ディップ法以外にもスプレイ法、スピンコート法、ベーパ法などを用いることができる。
なお、潤滑剤膜の形成に使用した溶媒及び潤滑剤の種類は、それぞれ次の表1の「溶媒」、「潤滑剤」の欄にまとめている。
【表1】
Figure 0003939180
次に、成膜した潤滑剤膜を自然乾燥させた(乾燥工程)。
なおVertrel-XFの沸点は55℃であり、蒸気圧は25℃のときに218mmHgである。
【0078】
ここで、ディスクの半径12mm,13mm,14mm,18mm,22mm,26mm,30mm,31mm,32mm位置の各トラック上における潤滑剤膜の膜厚を、そのトラックの周方向に沿って10度間隔毎にESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)法で測定した。このようにして、ディスク上の324箇所において潤滑剤膜の膜厚を測定し、これら324点の測定結果の平均値を潤滑剤膜の膜厚として求めた。
さらに、これら324点の測定結果から標準偏差σ[Å]を求め、その標準偏差σを前記潤滑剤の膜厚(平均値)で規格化した規格化標準偏差を求めた。
以上の求めた潤滑剤の膜厚(平均値)、標準偏差σ[Å]、及び規格化標準偏差をそれぞれ表2の「加熱処理前」の欄に掲げる。
【表2】
Figure 0003939180
【0079】
次いで、自然乾燥させた潤滑剤膜中に残留している溶媒成分と、潤滑剤に含まれる低分子量成分の蒸発を促進させるために、以下の蒸発速度調整工程を実施した。
【0080】
蒸発速度調整工程では、図2(a)に模式的に例示するトンネル式加熱処理炉(連続オーブン)20を用いた。このトンネル式加熱処理炉20は、それぞれ独立に温度制御が可能な第1〜第5の5つの加熱領域21,22,23,24,25を備えてなる。第1加熱処理領域21から第5加熱領域25までは順に接合されており、これによって一貫した連続オーブンを構成している。
すなわち、このトンネル式加熱処理炉20に投入された磁気ディスクが加熱領域21,22,23,24,25にわたってこの順に所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0081】
先ず、このトンネル式加熱処理炉では、各加熱処理領域を予め所定の温度に設定しておく。すなわち、第1加熱領域21は溶媒(ここではVertrel-XF)の沸点以下の温度(加熱開始温度)に設定する。第5加熱領域21は溶媒の熱分解温度に未満の温度(加熱終了温度)に設定する。中間の第2〜第4加熱領域22,23,24は、加熱開始温度から加熱終了温度にわたって加熱温度が段階的に上がるように適宜に設定する。
【0082】
このように各加熱領域の温度を設定することにより、磁気ディスクが当該各加熱領域を搬送される過程で、潤滑剤膜中の余剰な溶媒分子及び低分子量成分を含んだ潤滑剤分子が均一に蒸発気化する。
具体的には、第1加熱領域21を55℃、第2加熱領域22を80℃、第3加熱領域23を90℃、第4加熱領域24を105℃、第5加熱領域25を110℃に設定した(図2(b)参照)。なお、ここで設定した各加熱領域の温度の組み合わせは、表1の「温度」の欄に掲げている。
【0083】
次に、磁気ディスクを第1加熱領域21にセットした。その後、磁気ディスクは、この第1加熱領域21内から順に、第2、第3、第4、第5加熱領域内に搬送され、第5加熱領域25を通過すると蒸発速度調整工程を終了する。
なお、この間、磁気ディスクがオーブン20外の雰囲気に曝される事は無い。オーブン20内は、クリーンブースであり、HEPAフィルターによりClass100以下の清浄な雰囲気を保たれている。
【0084】
図2(b)は、トンネル式加熱処理炉(連続オーブン)20における温度プロファイルを示す。同図に示すように、本実施例では、磁気ディスクが各加熱処理領域内に保持される時間を12分間とし、加熱開始から加熱終了までの時間を60(=12×5)分とした。
以上のような蒸発速度調整工程を経ることにより、潤滑剤膜から潤滑層5を形成し、実施例1による磁気ディスクを完成した。
【0085】
そして、形成した潤滑層5の層厚(平均値)、標準偏差(σ)、及び規格化標準偏差を前述と同様にして求めた。結果は表2の「加熱処理後」の欄に掲げる。
【0086】
次に、得られた磁気ディスクについてフライスティクション試験を行なった。
この試験では、同様の磁気ディスクを100枚製作し、フライングハイトが10[nm]の磁気ヘッドで、これら100の磁気ディスクの全面グライド検査を行った。フライスティクションが発生すると、磁気ヘッドに設置されたAEセンサ(ピエゾ素子)でモニタしているグライド信号が磁気ディスクの全トラックで突然発散するので、オッシロスコープによる観察でその発生を判別できる。また、フライスティクションが発生した場合、グライド検査の通過率が激減するので、フライステクションの発生傾向は、グライド検査の通過率によってわかる。
なお、フライスティクション試験の通過率(歩留まり)は、高ければ高い程、低コストとなるので望ましいが、90%以上であれば問題とされない。フライスティクション試験通過率が80%の場合、コストの上昇はあるが、許容範囲内である。
フライスティクション試験の結果は表2の「フライスティクション試験通過率」の欄に掲げている。
【0087】
〔実施例2〕
上記蒸発速度調整工程において、第1〜第5加熱領域21、22、23、24、25の温度をそれぞれ、50℃、80℃、90℃、105℃、110℃とした以外は、実施例1と同様の条件で実施例2の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0088】
〔実施例3〕
上記蒸発速度調整工程において、第1〜第5加熱領域21、22、23、24、25の温度をそれぞれ、40℃、70℃、90℃、105℃、110℃とした以外は、実施例1と同様の条件で実施例3の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0089】
〔実施例4〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5加熱領域21、22、23、24、25の温度をそれぞれ、75℃、85℃、95℃、105℃、110℃とした以外は、実施例1と同様の条件で実施例4の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0090】
〔比較例1〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5加熱領域21、22、23、24、25の温度を総て110℃とした以外は、実施例1と同様の条件で比較例1の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0091】
〔比較例2〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5加熱領域21、22、23、24、25の温度を総て60℃とした以外は、実施例1と同様の条件で比較例2の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0092】
比較例1、2においては、潤滑剤膜を恒温加熱することとしたが、この場合、表2に掲げるように、フライスティクション試験通過率が悪化した。
なお、比較例1、2において、フライスティクションを起こした磁気ヘッドを観察したところ、それに多量の潤滑剤が付着していることが確認された。
【0093】
〔実施例5〕
成膜工程において、実施例1と同じ溶媒(Vertrel-XF)に対して、アウジモント社製PFPE系潤滑剤フォンブリンZ-DOLを0.87g/Lの濃度で溶解させた溶液中に、保護層まで形成された磁気ディスクを浸漬させ、浸漬させた磁気ディスクを、10cm/minの引き上げ速度で引き上げ、自然乾燥させて潤滑剤膜を形成した。それ以外は実施例1と同様の条件で実施例5の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0094】
〔比較例3〕
蒸発速度調整工程において、第1加熱領域から第5加熱領域の温度を総て110℃に設定した以外は、実施例5と同様の条件で比較例3の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0095】
〔比較例4〕
蒸発速度調整工程において、第1加熱領域から第5加熱領域の温度を総て60℃に設定した以外は、実施例5と同様の条件で比較例4の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0096】
〔実施例6〕
成膜工程において、アウジモント社製のPFPE系潤滑剤であるフォンブリンZ-DOLとフォンブリンZ-TETRAOLとを等重量比(1:1)となるように混合し、この混合潤滑剤を、溶媒Vertrel-XFに対して0.3g/Lの濃度で溶解させた溶液を用意し、この溶液中に保護層まで形成された磁気ディスクを浸漬させた後、これを10cm/minの引き上げ速度で引き上げて、潤滑剤膜を成膜した。
それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例6の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクの諸元は表1及び表2に掲げている。
表2に掲げるように、実施例6の磁気ディスクはフライステクション試験通過率が99%と極めて良好であり、本実施例で採用した条件が好ましいことを示している。
【0097】
〔比較例5〕
蒸発速度調整工程において、第1加熱領域から第5加熱領域の温度を総て110℃に設定した以外は、実施例6と同様の条件で比較例5の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0098】
〔比較例6〕
蒸発速度調整工程において、第1加熱領域から第5加熱領域の温度を総て60℃に設定した以外は、実施例6と同様の条件で比較例6の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表1及び表2に掲げている。
【0099】
〔実施例7〕
実施例1の蒸発速度調整工程に代えて、以下の蒸発速度調整工程を実施した。
図3(a)に示すような紫外線照射装置30を用いた。この紫外線照射装置30は、搬送コンベア36に沿って直列に配された第1〜第5の5つの照射領域(紫外線ランプ)31,32,33,34,35を、当該搬送コンベア36をはさんで相対向するように並列に備えてなり、これによって一貫した連続照射装置を構成している。第1〜第5の照射領域の各々はそれぞれ独立に照度設定が可能になっている。
この紫外線照射装置30に投入された磁気ディスクは、搬送コンベア36によって相対向する一対の照射領域間を順次通過するように所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0100】
このような紫外線照射装置30において、第1照射領域31の照射強度を30cmW/cm2、第2照射領域32の照射強度を50cmW/cm2、第3照射領域33の照射強度を100cmW/cm2、第4照射領域34の照射強度を200cmW/cm2、第5照射領域35の照射強度を300cmW/cm2に設定した。
【0101】
このように各照射領域の照度を設定することにより、磁気ディスクが当該各照射領域を搬送される過程で、潤滑剤膜に照射される紫外線の強度が連続的に強まることとなり、該潤滑剤膜中の余剰な溶媒分子及び低分子量成分を含んだ潤滑剤分子が均一に蒸発気化するように当該蒸発速度が調節される。
【0102】
磁気ディスクは、まず第1照射領域31にセットされ、表面に紫外線照射を受ける。この第1照射領域31内から順に、第2、第3、第4、第5照射領域内に搬送され、第5照射領域を通過するとこの工程を終了する。
なお、この間、磁気ディスクが紫外線照射装置外の雰囲気に曝される事は無い。紫外線照射装置30内は、クリーンブースであり、HEPAフィルターによりClass100以下の清浄な雰囲気を保たれている。
【0103】
図3(b)は、紫外線照射装置30における紫外線強度(照度)プロファイルを示す。同図に示すように、本実施例では、磁気ディスクが各照射処理領域内に保持される時間を1分間とし、第1照射処理領域での工程開始から第5照射処理領域での工程終了までを5(1×5)分とした。
【0104】
以上のような蒸発速度調整工程を経ることにより、潤滑剤膜から潤滑層5を形成し、実施例7による磁気ディスクを完成した。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例7の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は次の表3及び表4に掲げる。なお、上記各紫外線照射領域における紫外線強度の組み合わせは、表3の「紫外線強度」の欄にまとめている。
【表3】
Figure 0003939180
【表4】
Figure 0003939180
【0105】
〔実施例8〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5照射領域31、32、33、34、35の紫外線照射強度をそれぞれ、30cmW/cm2、100cmW/cm2、150cmW/cm2、200cmW/cm2、300cmW/cm2とした以外は、実施例7と同様の条件で実施例8の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表3及び表4に掲げている。
【0106】
〔実施例9〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5照射領域31、32、33、34、35の紫外線照射強度をそれぞれ、30cmW/cm2、60cmW/cm2、100cmW/cm2、200cmW/cm2、300cmW/cm2とした以外は、実施例7と同様の条件で実施例9の磁気記録媒体を製造した。この磁気ディスクについての諸元は表3及び表4に掲げている。
【0107】
〔比較例7〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5照射領域31、32、33、34、35の紫外線照射強度を総て300cmW/cm2に設定した以外は、実施例7と同様の条件で比較例7の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表3及び表4に掲げている。
【0108】
〔比較例8〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5照射領域31、32、33、34、35の紫外線照射強度を総て30cmW/cm2に設定した以外は、実施例7と同様の条件で比較例8の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表3及び表4に掲げている。
【0109】
表4に掲げるように、実施例7〜9を比較すると、実施例7の磁気ディスクが最もフライスティクション試験通過率が良好であり、この実施例7で採用した条件が好ましいものであることを示している。
なお、蒸発速度調整工程においては、紫外線照射装置30と前述したトンネル式加熱処理炉20とを併用してもよい。その場合は、紫外線照射装置30のみを用いた場合25℃(室温)で5分を要していた蒸発速度調整工程を、1分以内に短縮できる効果が確認されている。
【0110】
〔実施例10〕
実施例1の蒸発速度調整工程に代えて、以下の蒸発速度調整工程を実施した。
図3(a)に示すような減圧装置40を用いた。この減圧装置40は、図示しない搬送コンベアに沿って直列に配された第1〜第5の5つの減圧領域(減圧チャンバ)41,42,43,44,45を備えてなり、これによって一貫した連続減圧装置を構成している。
第1減圧領域41から第5減圧領域45までは順に接合されているが、各減圧領域間は図示しないシャッター及び予備室で区切られており、当該各減圧領域はそれぞれ独立に真空度の設定が可能となっている。
この減圧装置40に投入された磁気ディスクは、搬送コンベアによって各減圧領域を順次通過するように所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0111】
このような減圧装置40においは、第1〜第5の総ての減圧領域における圧力を溶媒の蒸気圧以上の圧力に設定する。具体的には、第1減圧領域41は大気圧に設定するのが好ましい。また、第5減圧領域45の圧力は最終圧力となるので、溶媒の蒸気圧又はその近傍の圧力に設定する。中間の第2〜第4減圧領域42,43,44の圧力は、第1〜第5減圧領域にわたって気圧が段階的に減少するように適宜に圧力を設定する。
【0112】
より具体的には、第1減圧領域41の真空度を760mmHg、第2減圧領域42の真空度を600mmHg、第3減圧領域43の真空度を450mmHg、第4減圧領域44の真空度を300mmHg、第5減圧領域45の真空度を230mmHgに設定した。
【0113】
このように各減圧領域の真空度を設定することにより、磁気ディスクが当該各減圧領域を搬送される過程で、潤滑剤膜が配置されている空間内の気圧が段階的に減少することとなり、該潤滑剤膜中の余剰な溶媒分子及び低分子量成分を含んだ潤滑剤分子が均一に蒸発気化するように当該蒸発速度を調節できる。
【0114】
この減圧装置40では、まず第1減圧領域41に磁気ディスクをセットし、当該領域が所定の真空度になるまで減圧を受ける。所定時間の減圧処理の後に、第1減圧領域41と第2減圧領域42との境界のシャッターが開放され、磁気ディスクは第2減圧領域42に搬送される。次に、そのシャッターが閉鎖され、第2減圧領域42が所定の真空度まで減圧される。
これを繰り返しながら、磁気ディスクが第2、第3、第4、第5減圧領域内に順に搬送され、第5減圧領域を通過するとこの工程を終了する。
なお、この間磁気ディスクが減圧装置外の雰囲気に曝される事は無い。
【0115】
図4(b)は、減圧装置40における真空度のプロファイルを示す。同図に示すように、本実施例では、磁気ディスクが各減圧領域内に保持される時間を12分間とし、第1減圧領域41での工程開始から第5減圧領域45での工程終了までを60(=12×5)分とした。
【0116】
以上のような蒸発速度調整工程を経ることにより、潤滑剤膜から潤滑層5を形成し、実施例10による磁気ディスクを完成した。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例10の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は次の表5及び表6に掲げる。なお、上記各減圧領域における圧力(真空度)の組み合わせは、表5の「真空度」の欄にまとめている。
【表5】
Figure 0003939180
【表6】
Figure 0003939180
【0117】
〔実施例11〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5減圧領域41、42、43、44、45の真空度をそれぞれ、760mmHg,600mmHg,400mmHg,230mmHg,230mmHgとした以外は、実施例10と同様の条件で実施例11の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表5及び表6に掲げている。
【0118】
〔実施例12〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5減圧領域41、42、43、44、45の真空度をそれぞれ、760mmHg,400mmHg,300mmHg,230mmHg,230mmHgとした以外は、実施例10と同様の条件で実施例12の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表5及び表6に掲げている。
【0119】
〔比較例9〕
蒸発速度調整工程において、第1〜第5減圧領域41、42、43、44、45を総て230mmHgに設定した以外は、実施例10と同様の条件で比較例9の磁気ディスクを製造した。この磁気ディスクについての諸元は表5及び表6に掲げている。
【0120】
表6に掲げるように、実施例10〜12を比較すると、標準偏差及びフライスティクション試験通過率の観点からは、実施例10で採用した条件が好ましいものであることを示している。
なお、蒸発速度調整工程においては、減圧装置装置40と前述したトンネル式加熱処理炉20とを併用してもよい。その場合は、減圧装置40のみを用いた場合25℃(室温)で60分を要していた蒸発速度調整工程を、30分以内に短縮できる効果が確認されている。
【0121】
表2、4、6に掲げるように、フライスティクション試験の通過率が97パーセント以上で、かつ規格化標準偏差が9%未満となったのは、蒸発速度調整工程で加熱処理を行うこととした実施例1、5、6の磁気ディスクである。従って、潤滑剤膜中における溶媒の蒸発速度は、該潤滑剤膜の加熱温度に基づいて調整するのが好ましいと考えられる。
【0122】
図5は、上記加熱処理、紫外線照射処理、又は減圧処理を施した後における潤滑剤膜の膜厚の標準偏差σ(=分散の平方根)と、フライスティクション試験通過率(%)との関係について、表2、4、6から読み取れる値をプロットしたものである。
同様に図6は、潤滑剤膜の膜厚の規格化標準偏差と、フライスティクション試験通過率(%)との関係について、表2、4、6から読み取れる値をプロットしたものである。
これら図5及び図6から明らかなように、フライスティクションの発生と標準偏差又は規格化標準偏差とに相関があり、標準偏差又は規格化標準偏差が大きい程、すなわち潤滑層の層厚のばらつき度合いが大きい程、フライスティクションの発生頻度が高くなることが判る。
【0123】
従って予め、潤滑層の層厚の分散、標準偏差、又は規格化標準偏差その他の潤滑層の層厚のばらつき度合いを表す層厚分布値とフライスティクションの発生率との相関関係を求め、該求めた相関関係に基づいてフライスティクションの発生率が所望の値以下となる層厚分布値を特定しておき、該特定した層厚分布値を有するように前記潤滑層を形成することで、フライスティクションを有効に防止できる。
【0124】
具体的には、図5、6及び表2、4、6に示すように、潤滑剤膜の膜厚の標準偏差σが1.3[Å]以下の場合、又はその規格化標準偏差が15[%]以下の場合には、フライスティクション試験通過率を許容範囲内(80%以上)とすることができる。さらに、潤滑剤膜の膜厚の標準偏差σが0.9[Å]以下の場合、又はその規格化標準偏差が10[%]以下の場合には、フライスティクション試験通過率を90%以上とすることができる。
【0125】
実施例によれば、次のような効果が得られる。
(1)蒸発速度調整工程において、潤滑剤膜中の残留溶媒を徐徐に蒸発させることとしたので、実質的にムラのない潤滑層が得られた。これにより、フライスティクションの発生を防止する効果が得られる。従って、実施例による磁気ディスクはLUL方式用の磁気ディスクとして用いて好適である。
【0126】
(2)現在、高記録密度化の方途の一つとして、磁気ヘッドと、磁気ディスクの磁性層との間の距離による記録再生特性の劣化(スペーシングロス)を抑えるため、これらの間に介在する保護層及び潤滑層をより薄く形成することが望まれている。具体的には、例えば潤滑層の層厚は10Å〜20Å以下であることが望ましい。しかしながら従来、潤滑層を10Åよりも薄くした場合、これを均一にするのが困難である課題があった。
本実施例によれば、表1〜3に掲げるように各潤滑層の層厚を10Å以下としながら、その規格化標準偏差が15%以下となる程度に実質的に均一化することが実現された。これにより、スペーシングロスの問題を抑制でき、記録密度を向上できる。
【0127】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限られない。
例えば、本発明の蒸発速度調整工程においては、トンネル式加熱処理炉20、紫外線照射装置30、及び減圧装置装置40の3者を同時に併用することとしてもよい。
【0128】
また、潤滑剤膜中における溶媒の蒸発速度を調整するためのパラメータとしては、加熱温度、紫外線強度、及び真空度に限定されない。潤滑剤膜をスピンドライ法により乾燥させる場合には、そのスピン回転数によっても溶媒の蒸発速度を調整できる。また、潤滑剤膜を清浄ガスのダウンフローにより乾燥させる場合には、そのフローの強度やガスの種類で溶媒の蒸発速度を調整できる。また、潤滑剤膜が配置される処理室内をパージする場合には、そのパージガスの種類によっても溶媒の蒸発速度を調整できる。
【0129】
また、潤滑剤膜の加熱温度に基づいて蒸発速度を調整する場合には、情報記録媒体の熱容量を見かけ上均一にするような形状の保持具によって該情報記録媒体を保持しながら加熱処理を行うのが好ましい。
【0130】
【発明の効果】
本発明によれば、潤滑層をムラ無く形成できるので、フライスティクションを有効に防止できる。また、本発明によれば、潤滑層を20[Å]以下の層厚で形成できるので、情報記録媒体の記録密度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による磁気ディスクの層構成を示す断面概略図である。
【図2】(a)はトンネル式加熱処理炉の構成を模式的に示す図であり、(b)はそのトンネル式加熱処理炉における加熱処理のプロファイルの一例を示す図である。
【図3】(a)は紫外線照射装置の構成を模式的に示す図であり、(b)はその紫外線照射装置におけるUV処理のプロファイルの一例を示す図である。
【図4】(a)は減圧装置の構成を模式的に示す図であり、(b)はその減圧装置における減圧処理のプロファイルの一例を示す図である。
【図5】潤滑剤膜の膜厚の標準偏差とフライスティクションの発生率の相関関係を示す図である。
【図6】潤滑剤膜の膜厚の規格化標準偏差とフライスティクションの発生率の相関関係を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
3 磁性層(情報記録層)
4 炭素水素保護層(保護層)
5 潤滑層
10 磁気ディスク(情報記録媒体)

Claims (7)

  1. 基板上に少なくとも磁性層を形成する磁性層形成工程と、この磁性層上に保護層を形成する保護層形成工程と、この保護層上に潤滑層を形成する潤滑層形成工程とを有する磁気ディスクの製造方法であって、
    前記潤滑層形成工程は、前記保護層上に溶媒と潤滑剤とを含む潤滑剤膜を成膜する潤滑剤膜成膜工程と、前記潤滑剤膜を乾燥させる乾燥工程と、この乾燥工程を経た潤滑剤膜を加熱する加熱工程とを有し、
    前記加熱工程は、その加熱温度を前記潤滑剤の熱分解温度以下の温度範囲内において、前記溶媒の沸点以下の温度から連続的及び/又は段階的に温度を上昇させて潤滑剤膜の膜厚を均一化する膜厚均一化工程であることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  2. 基板上に少なくとも磁性層を形成する磁性層形成工程と、この磁性層上に保護層を形成する保護層形成工程と、この保護層上に潤滑層を形成する潤滑層形成工程とを有する磁気ディスクの製造方法であって、
    前記潤滑層形成工程は、前記保護層上に溶媒と潤滑剤とを含む潤滑剤膜を成膜する潤滑剤膜成膜工程と、前記潤滑剤膜を乾燥させる乾燥工程と、この乾燥工程を経た潤滑剤膜に紫外線を照射する紫外線照射工程とを有し、
    前記紫外照射工程は、前記潤滑剤膜に照射する紫外線の照度を連続的及び/又は段階的に強めていって潤滑剤膜の膜厚を均一化する膜厚均一化工程であることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  3. 基板上に少なくとも磁性層を形成する磁性層形成工程と、この磁性層上に保護層を形成する保護層形成工程と、この保護層上に潤滑層を形成する潤滑層形成工程とを有する磁気ディスクの製造方法であって、
    前記潤滑層形成工程は、前記保護層上に溶媒と潤滑剤とを含む潤滑剤膜を成膜する潤滑剤膜成膜工程と、前記潤滑剤膜を乾燥させる乾燥工程と、この乾燥工程を経た潤滑剤膜を減圧下に置く減圧工程とを有し、
    前記減圧工程は、前記潤滑剤を減圧下に置くとともにその減圧度を連続的及び/又は段階的に増すことにより潤滑剤膜の膜厚を均一化する膜厚均一化工程であることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の磁気ディスクの製造方法であって、
    前記膜厚均一化工程は、前記基板上における前記潤滑剤膜の膜厚の分布を、平均膜厚に対する標準偏差が15パーセント以下となるようにする工程であることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  5. 請求項乃至請求項のいずれかに記載の磁気ディスクの製造方法であって、
    前記磁気ディスクは、LUL(Load Unload)方式の磁気ディスク装置対応の磁気ディスクであることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の磁気ディスクの製造方法であって、
    前記膜厚均一化工程は、前記基板上における前記潤滑剤膜の膜厚の分布を、膜厚の標準偏差が1.3オングストローム以下となるようにする工程であることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の磁気ディスクの製造方法であって、
    前記磁気ディスクは、NPAB負圧スライダーを備える磁気ヘッド対応の磁気ディスクであることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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