JP3937722B2 - 圧電デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電振動素子を収容したベース部に、このベース部を密封するための蓋体を接合して構成される圧電デバイスとその製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図16は、圧電デバイスの一例としての一般的な圧電振動子を示す一部切断斜視図である。
【0003】
この圧電振動子1は、板状の圧電振動素子3を収容する内部空間2aが形成された箱状のベース2と、内部空間2aを密封するようにベース2に接合された板状の蓋体4を備えている。圧電振動素子3は、一端部3aが内部空間2a内に一体に設けた段部に配設されている電極6上に導電性接着剤7,7を介して接続固定され、他端部3bが自由端とされている。ベース2と蓋体4は、シームリング5を介して接合されている。
【0004】
ここで、圧電振動素子3の材料としては、例えば水晶が用いられ、ベース2の材料としては、アルミナ等のセラミックが用いられる。
【0005】
蓋体4は、圧電振動素子3を収容したベース2を塞いで内部空間2aを密閉するために、例えば、図17に示すような平たい板状に形成されており、コバール等の金属が用いられる。また、シームリング5の材料としては、コバールが用いられるが、その他の封止方法としては、EB(電子ビーム)による方法、あるいは蓋体またはセラミックベースに銀ロウや半田、AuSnあるいはニッケル等を用い加熱する方法がある。
【0006】
すなわち、圧電振動子1は、具体的には、図18のフローチャートに示されている工程により、製造される。
【0007】
図において、先ず、アルミナ等のセラミック材料により、ベース2が形成され、圧電振動子1に対応するように、電極部が例えばメッキ等により形成される(ST1)。
【0008】
励振電極や接続電極が予め形成された圧電振動素子3が、上記ベース2の電極部に、図16に示すように導電性接着剤7,7を介してマウントされる(ST2)。次に、圧電振動素子3の表面の励振電極にレーザビーム等を当てて、重さ調整することにより、周波数調整を行う(ST3)。
【0009】
次いで、上記ベース2上に図16に示すように蓋体4を載せて、例えば、蓋体4を介してシームリング5に電流を印加して溶融させて、封止を行う(ST4)。
【0010】
封止完了後には、蓋体4の表面等に印刷等の手段により必要な文字等を記入するマーキングを行い(ST5)、検査工程へ送られる(ST6)。そして、必要な検査により合格判定されることで、圧電振動子または圧電発振器が完成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような圧電振動子1では、以下のような問題がある。
【0012】
図19は、図16の圧電振動子1の概略断面図であり、シームリング5の箇所が図16よりも大きく示されている点を除き図16と同じ構造である。図において、圧電振動子1は、これが実装される各種機器の小型化にともない、極めて小型化されており、例えば、圧電振動子1の高さS1は、0.7ないし0.9mm、内部空間2aの高さ方向の距離S2は、0.35mm程度とされている。
【0013】
そして、この内部空間2aに収容される圧電振動素子3は、電極6に導電性接着剤7を介して接合される際に、自由端である他端部3bが図示されているように下がった状態で、全体が傾斜して固定される傾向にあり、このため、内部空間内2a内で、蓋体4までの間隙が一番小さい箇所である一端部3aの箇所では、間隙S3は0.10mm程度となっている。
【0014】
このような超小型の圧電振動子1では、外部から衝撃が加わった場合において、その衝撃がそのまま圧電振動素子3に伝わり、圧電振動素子3が矢印方向に撓んで、内部空間2aの高さ方向の距離S2が上述のように極めて小さいために、他端部3bが蓋体4の裏面4aに容易に接触し、衝撃により、圧電振動素子3自体もしくは導電性接着剤7が破壊される場合がある。
【0015】
そして、圧電振動素子3が矢印方向に撓んで、他端部3bが蓋体4の裏面4aに接触すると、圧電振動素子3の他端部3bには電極が形成されているので、金属製の蓋体4の裏面4aに接触すると、シームリング5を介してアースされてしまったり、金属製の蓋体4に接触し、圧電振動素子3が音叉型の振動片であると発振が停止してしまう場合がある。
【0016】
また、圧電振動素子3が矢印方向に大きく撓んで、他端部3bの先端が蓋体4の裏面4aに接触すると、衝撃により欠けが生じる場合がある。
【0017】
本発明の目的は、上記課題を解消して、外部からの衝撃が加えられても、ベース内で圧電振動素子が撓みにくく、蓋体に接触したりすることがないようにすることによって、耐衝撃性を向上させることができる圧電デバイスとその封止方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1の発明によれば、前記圧電振動素子を収容するためのベースと、前記圧電振動素子がベース内の電極部に接合されて収容された状態で前記ベースを密封するための蓋体とを備える圧電デバイスにおいて、前記蓋体が、前記ベースに収容された圧電振動素子に向かって突出する凸部を有し、前記凸部は、前記圧電振動素子の先端部よりも前記接合箇所に近い位置に対応して設けられるとともに、この凸部の中心に貫通孔が形成されている、圧電デバイスにより、達成される。
【0019】
請求項1の構成によれば、この発明が適用される圧電デバイスは、少なくともベース内に収容される圧電振動素子を備えており、このベースが蓋体により封止されるものである。
【0020】
この蓋体には、ベースに収容された圧電振動素子に向かって突出する凸部が形成されているので、外部から衝撃が加えられた場合には、圧電振動素子がある程度撓んでも、この凸部に当接するので、それ以上大きく撓むことがない。これにより、弾性変形の限界を越えて破損したり、圧電振動素子の接合部に大きな力が集中して、接合部が破断したりすることがない。また、従来のように、大きく撓んだ圧電振動素子の先端が蓋体の裏面に衝突して欠けが生じることが防止される。
【0021】
ここで、前記凸部とは、蓋体のベースに収容された圧電振動素子に対向する位置に一体もしくは別体に配置されるもので、突起状に形成されたり、膨出部とされたりして形成されるあらゆる形態の突出部を含むものである。前記凸部は、前記圧電振動素子の先端部よりも前記接合箇所に近い位置に対応して設けられるとともに、この凸部の中心に貫通孔が形成されている。
【0023】
本発明によれば、凸部の中心の貫通孔に例えばレーザビームを通過させることにより、ベースに収容された圧電振動素子の先端よりも接合箇所に近い位置の電極に、このレーザビームを照射することができる。これにより、ベースに蓋体を固定する封止後に、封止した環境において、精密に周波数調整をすることができるし、この周波数調整は、封止作業にひき続き容易に行うことができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0039】
図1は、本発明の圧電デバイスの第1の実施形態に対応した圧電振動子を示す概略断面図である。
【0040】
この圧電振動子10は、板状の圧電振動素子13を収容する内部空間12aが形成された箱状のベース12と、内部空間12aを密封するようにベース12に接合された板状の蓋体14を備えている。
【0041】
ベース12には、電極16が設けられており、圧電振動素子13は、一端部13aが内部空間12a内に配設されている電極16上に導電性接着剤17を介して接続固定されていて、他端部13bは自由端となっている。これにより、電極16から印加される駆動電圧によって、所定の振動数で振動できるようになっている。
【0042】
ベース12と蓋体14は、シームリング15を介して接合されている。ここで、圧電振動素子13の圧電材料としては、例えば、水晶,リチウムタンタレート,LBO等の単結晶基板やZnO/Si等の多層膜基板等が用いられるが、本実施形態では、矩形状のATカット水晶片が使用されている。シームリング15は、例えばコバールであり、その厚みは、例えば、150μm程度である。ベース12の材料としては、例えばアルミナ等のセラミックが図示するような所定形状に焼成されて使用される。
【0043】
上記蓋体14は、金属材料で形成されており、好ましくは、例えばコバールや42アロイ等により形成される。また、アルミナ等のベース12と線膨張係数が近いセラミックでもよい。但し、この場合は、封止方法がAu−Sn封止、低融点ガラス封止となる。この実施形態では、例えば、コバールの蓋体14をシームリングで封止する例を説明する。
【0044】
ベース12と蓋体14は、シームリング15を介して接合するが、例えば、ベース12の上端面である接合面上に、金属被覆層を設ける。この金属被覆層は複数種類の金属を層状に積層して形成され、例えば、順次下からタングステン層、ニッケルメッキ層、金メッキ層等でなる複数金属層を設けて、銀ロウでシームリング15を固定しコバールの蓋体14を載置し、コバールの蓋体14に電流を流してシームリング15と蓋体14との接合部に発生するジュール熱でシームリング15と蓋体14にメッキされたニッケル及び金を溶融することで封止することができる。また、別の方法として、光ビームや電子ビームを蓋体14周縁に照射することでも封止することができる。
【0045】
また、好ましくは、圧電振動素子13は、他端部13bが、この他端部13bが蓋体14から遠ざかる方向に傾斜して、すなわち、図1では、下に下がるように傾斜した状態で、一端部13aがベース12内の電極16上に導電性接着剤17により接合固定されている。これは、一方向に長い圧電振動素子13の一端部13aを片持ち式に固定することで、導電性接着剤17の粘度や硬化時間を制御することにより、自由端である他端部13bがベース12の内部底面に触れない程度にやや下がった状態で固定されるものである。
【0046】
図2は、蓋体14の概略斜視図である。
【0047】
蓋体14は、上述したように、好ましくは、コバール等の金属材料で形成されており、ベース12に載置されて封止された場合に、ベース12の内部空間12aに露出する面に凸部21を備えている。
【0048】
この凸部21は、金属製の蓋体14の図2における上面に対して、例えば、営利な先端を有するポンチ等の治具を強く当てることにより、下面に突出する凸部が形成される。この凸部21は、このように蓋体14に一体に形成されても、別体により設けてもよいし、突起状に形成されたり、膨出部とされたりして形成されるあらゆる形態の突出部を含むものである。
【0049】
また、好ましくは、図1に示されているように、凸部21の中心には、貫通孔21aが開口している。
【0050】
図3は、図1の圧電振動子10の蓋体14を除去して、ベース12内を露出した概略平面図である。図示されているように、ベース12に蓋体14を被せたときの凸部21の位置は、圧電振動素子13の先端部よりも接合箇所である一端部13aに近い位置であって、好ましくは、励振電極13cの先端部付近に位置するように設けられ、貫通孔21aの位置も励振電極13cの先端部付近になるようにされる。
【0051】
本実施形態は以上のように構成されており、圧電振動子10の蓋体14には、ベース12に収容された圧電振動素子13に向かって突出する凸部21が形成されている。このため、この圧電振動子10が、例えば、所定の実装機器に実装された状態等において、この機器をユーザが落としたりして、圧電振動子10に外部から衝撃が加えられた場合、その衝撃は、内蔵された、圧電振動素子13に加わる。これにより、圧電振動素子13が図1の矢印A方向にある程度撓んでも、圧電振動素子13の先端よりもやや内側が、蓋体14の内面に凸部21に当接するので、それ以上大きく撓むことがなく、従来のように、大きく撓んだ圧電振動素子の先端が蓋体の裏面に衝突して欠けが生じ、振動性能に悪影響を生じることが有効に防止される。
【0052】
また、弾性変形の限界を越えて大きく撓むことにより圧電振動素子13が破損したり、圧電振動素子13の接合部の導電性接着剤17に大きな力が集中して、硬化した接着剤が破断したりすることがないので、耐久性が向上する。
【0053】
また、凸部21に貫通孔21aが形成されている場合には、後述するように、圧電振動素子13の周波数調整の際に、電子ビームやレーザ等の光ビームを通過させて、蓋体14のベースに対する封止後に周波数調整することができる。
【0054】
図4は、圧電デバイスの第2の実施形態としての圧電振動子30の要部である蓋体34を示す部分断面図であり、圧電振動子30の全体の概略断面図は、図6及び図8に示されている。
【0055】
図において、圧電振動子30では、蓋体34の構成のみが第1の実施形態と異なっており、図6及び図8において、圧電振動子10と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0056】
図4に示されているように、蓋体34は、本体38の部分と、本体38に形成した絶縁膜32とを有している。すなわち、蓋体34は、第1の実施形態と同様の材料により本体38が形成されている。本体38の図6において少なくともベース12の内部空間12aに露出する領域に、絶縁膜32が形成されている。この絶縁膜32は、少なくとも、電気的絶縁作用を備える被膜であり、例えば、酸化膜として、SiO2により形成されている。あるいは、さらに好ましくは、絶縁膜32に電気的絶縁作用と、衝撃を緩和する緩衝作用をもたせるために、電気絶縁性と弾性を備えた材料,例えば、シリコーン等により形成してもよい。
【0057】
また、蓋体34には、第1の実施形態と同様に凸部が形成されているが、図4に示すように、この凸部31には中心に貫通孔33が形成されており、貫通孔33の内径は、図示されているように、内側(下側)に向かって徐々に縮径する傾斜面37を備えており、下端の孔径33aが最も小さくなっている。
【0058】
本実施形態は以上のように構成されているので、第1の実施形態の奏する作用効果を全て発揮するだけでなく、以下のような利点がある。
【0059】
この利点について、圧電振動子30の製造方法の説明とともに説明する。図5は、圧電振動子30の製造方法における特徴ある工程について示している。
【0060】
図において、ステップ10で従来と同様にして、所定の水晶ウエハからカットした水晶片に励振電極や接続電極を蒸着等により形成し、圧電振動素子13を形成する(ST10)。
【0061】
これと平行して、アルミナ等のセラミック材料により、ベース12が形成され、圧電振動素子13に対応するように、電極部が例えばメッキ等により形成される。
【0062】
次に、このベース12の電極部16に、電極や接続電極が予め形成された圧電振動素子13が、導電性接着剤17,17を介してマウントされる(ST12)。
【0063】
次いで、第1の周波数調整が行われる(ST13)。この第1の周波数調整は、ベース12に圧電振動素子13をマウントした状態において、蓋体14を接合する前に、圧電振動素子13に駆動電圧を印加して振動周波数をモニタして行う。周波数調整は、圧電振動素子の励振電極13c(図3参照)の材料を蒸着により増やすことで膜厚を増加させ、圧電振動素子13の振動周波数を低く調整する質量増加方式によっても、圧電振動素子の励振電極13cにレーザ等の光ビームや電子ビーム(イオンビーム)等を照射して、電極材料を表面から蒸散させ、振動周波数を高く調整する質量減少方式によってもよい。
【0064】
ステップ13に続いて、ST14の第1の封止を行う。第1の封止は、例えば真空中において、ニッケルメッキで覆われたコバール製の蓋体34をベース12に被せて、シームリング15にメッキされているニッケル及び金を溶融させることにより蓋体34をベース12に接合して、ベース12の内部空間12aを密閉する。ここで、封止は、シームリング15についているニッケル及び金を溶かす封止方法をとっているが、他の封止方法でもよく、低融点ガラスやAn−Sn等を封止材とした封止方法でもよい。
【0065】
ここで、ST14にて、シームリング15にメッキされているニッケル及び金を溶融させるので熱が発生し、その熱により導電性接着剤17の成分等が蒸発して、アウトガスが発生する。このガス成分が圧電振動素子13に付着すると、振動周波数にズレが生じる。また、封止工程を真空雰囲気中で行うと、封止後に真空度に変化が生じた場合には、圧電振動子30のCI(クリスタルインピーダンス)値にズレを生じる。
【0066】
そこで、この第1の封止後に、ひき続いて、そのままの環境,例えば、真空中において、蓋体34の凸部31の貫通孔33を通して、図6に示すように、ビーム発生手段36を用いて、レーザ等の光ビームや電子ビーム(イオンビーム)等(以下、「ビーム」と言う。)を照射して、第2の周波数調整を行う。
【0067】
ここで、凸部31は、図3で示した位置と同じ位置に形成されているから、貫通孔33を通過したビームB1は、ベース12内にマウントされている圧電振動素子13の励振電極13cの表面に当たり、照射箇所の電極膜成分を蒸散させることで、圧電振動素子13の振動周波数を高い方へ調整し、より精密に周波数の合わせ込みを行う(ST15)。
【0068】
次に、図7及び図8に示すように、蓋体34の凸部31の貫通孔33に、図において、上から封止用金属材料として、円盤状や円柱,角柱状等のペレット以外に、好ましくは、小さな金属球35を配置し、ST15と同じ雰囲気下において、ビーム発生手段36をそのまま用いて、第2の封止を行う(ST16)。
【0069】
この場合、図7の部分拡大図に示されているように、金属球35は、凸部31の貫通孔33のベース12側開口33aよりも大きく、外側開口33bよりも小さな外径の金属球を使用する。また、金属球35は、金すず(Au−Sn)を用いることができる。
【0070】
これにより、金属球35は、所定の治具等を用いて、供給されることで、転動させる等して、図7に示されているように、凸部31の貫通孔33内に容易に入り込んで、しかも、傾斜面37上で保持されるから、図8に示すように、第2の周波数調整と全く同じ手法により、ビーム発生手段36をそのまま用いて、ビームB2を金属球35に照射し、これを溶融させることによって、貫通孔33を容易に塞ぐことができる。
【0071】
次いで、図18で説明した従来のST6と同様にして、検査を行い、圧電振動子30の製造が完了する(ST17)。
【0072】
尚、必要により、ST17の前工程において、従来と同様にマーキングを行ってもよい。
【0073】
このように、上述の製造方法によれば、真空中等の条件下で、第1の封止を行い(ST14)、ひき続き、蓋体34の凸部31の貫通孔33を介して、圧電振動素子13の電極13cにビームを照射して周波数調整をする(ST15)ことが可能となるので、第1の周波数調整(ST13)の後で、第1の封止工程(ST14)の工程に起因して、圧電振動素子13の振動周波数がズレてしまった場合にも、より精密な周波数調整を行うことができる。しかも、この第2の周波数調整にひき続いて、凸部31の貫通孔33に保持させた金属球35にビームを照射して、第2の封止を行う(ST16)ことで、周波数調整と第2の封止作業を一連の作業として行うことができ、作業性が良く、しかも、従来よりもより精密な周波数性能を付与することができる。
【0074】
尚、このような工程は、図1で説明した圧電振動子10でも可能であることは言うまでもない。
【0075】
図9は、蓋体に設けられる凸部の構成の変形例を示している。図9(a)は、凸部の第1の変形例である。図において、凸部41の貫通孔44は、傾斜面42と、この傾斜面42に続く水平な底部43を有している。傾斜面42の上側は比較的大きな上側開口44aが形成され、底部43の中心には比較的小さく開いた下側開口44bが形成されている。
【0076】
これにより、凸部41は、傾斜面42と底部43とで構成されたバネ手段を備えることとなり、外部から衝撃が加わって、圧電振動素子13が撓むことで、この凸部41に当接すると、凸部41が変形して、そのバネ弾性により衝撃を吸収することができる。このため、圧電振動素子13が凸部41と当接して破損する事態がより確実に防止される。
【0077】
また、凸部に弾性を付与する構成としては、図9(a)の構成に限らず、蓋体34と一体の他の構成としてもよいし、凸部を蓋体34と別体の弾性材料により形成してもよい。
【0078】
図9(b)は、蓋体に設ける凸部の第2の変形例を示しており、凸部に形成する貫通孔の他の構成を示している。すなわち、この場合は、図6ないし図8で説明した凸部31に設ける貫通孔45を長孔とし、この長孔の一端に金属球35を配置する。
【0079】
これにより、図6で説明した周波数調整の際には、貫通孔45の金属球35が存在しない貫通部45aにビームを通過させるようにし、次いで、図8の第2の封止の際に、このビームを相対的に矢印方向に移動させることで、金属球35を溶融させて、貫通孔45を塞ぐようにする。したがって、第2の周波数調整から第2の封止への作業がビームの照射位置を変えるだけの簡単な作業により行われるので、作業効率が一層向上する。
【0080】
図10ないし図12は、圧電デバイスの第3の実施形態としての圧電振動子50を説明するための図面である。
【0081】
図において、圧電振動子50では、第1の実施形態または第2の実施形態と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0082】
図10は、図12に示す圧電振動子50の蓋体54の平面図である。この圧電振動子50は、音叉型圧電振動素子53を収容しており、これに対応して、蓋体54は2つの凸部51,51を備えている。
【0083】
蓋体54は、第1の実施形態における蓋体14と同じ材料で形成されており、ベース内に露出される領域には、絶縁膜32を備えている。各凸部51,51は、図11に示されているように、貫通孔33,33を備えており、第2の実施形態の凸部31と同じ構成であるが、蓋体54に形成されている位置と個数が異なる。
【0084】
図12に示すように、ベース12内には、圧電振動素子53が収容されており、この圧電振動素子53は、二股にわかれた先端側である自由端側が2つの振動腕55,56とされており、各振動腕55,56は、それぞれ図12の矢印に示す方向に沿って振動するようになっている。
【0085】
このため、凸部51,51は、図12に示す位置に対応して設けられている。すなわち、この圧電振動素子53では、自由端側は2つの振動腕55,56を備えていることから、これが外部からの衝撃を受けて撓んだときに当接すべき凸部51,51も、各振動腕55,56に対応させて、それぞれ設けられている。
【0086】
以上の点以外の構成は、第1及び第2の実施形態とほぼ同じであるから、この実施形態においては、音叉型圧電振動素子53を使用した場合にも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0087】
図13及び図14は、圧電デバイスの第4の実施形態としての圧電振動子60を説明するための図面である。
【0088】
図において、圧電振動子60では、第1の実施形態の圧電振動子10と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0089】
図13においては、第1の実施形態の圧電振動子10と比較すると、圧電振動素子63の構成が一部相違している。圧電振動素子63では、図において、少なくとも蓋体14に対向する面の電極13cの表面に、絶縁膜13dが被覆されている。
【0090】
この絶縁膜13dは、少なくとも、電気的絶縁作用を備える被膜であり、例えば、酸化膜として、SiO2 により形成されている。あるいは、さらに好ましくは、絶縁膜13dに電気的絶縁作用と、衝撃を緩和する緩衝作用をもたせるために、電気絶縁性と弾性を備えた材料,例えば、シリコーン等により形成してもよい。
【0091】
本実施形態は以上のように構成されており、第1の実施形態と同様の作用効果に加えて、外部からの衝撃により、圧電振動素子13が撓んで、凸部21に当接した場合には、圧電振動素子13の蓋体14に対向する面には、上記した絶縁膜13dが被覆されているので、この絶縁膜13dが凸部21に接触することとなる。このため、金属製の蓋体14と導通して、短絡等が生じるおそれがない。
【0092】
図15は、圧電デバイスの第5の実施形態としての圧電発振器70を説明するための図面である。
【0093】
図において、第1の実施形態の圧電振動子10と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0094】
図15は、圧電発振器70の概略断面図であり、図において、圧電発振器70のベース12では、図1のベース12と異なり、内部に段部を設けて、一段低い内部空間72aが設けられている。そして、ベース12の上面に形成した導電パターン上に集積回路71を実装して、上記内部空間72aに収容し、電極部73と接続している。これにより、圧電振動素子13に所定の駆動電圧を与えて、振動させ、その出力を上記集積回路71に入力することにより、所定の周波数の信号を取り出すようになっている。
【0095】
この圧電発振器70においても、蓋体14の圧電振動素子13に対向する面に凸部21が形成されている。
【0096】
本実施形態は以上のように構成されており、圧電発振器70の蓋体14には、ベース12に収容された圧電振動素子13に向かって突出する凸部21が形成されている。このため、この圧電発振器70が、例えば、所定の実装機器に実装された状態等において、この機器をユーザが落としたりして、圧電発振器70に外部から衝撃が加えられた場合、その衝撃は、内蔵された、圧電振動素子13に加わる。これにより、圧電振動素子13が図15の矢印A方向にある程度撓んでも、圧電振動素子13の先端よりもやや内側が、蓋体14の内面に凸部21に当接するので、それ以上大きく撓むことがなく、従来のように、大きく撓んだ圧電振動素子の先端が蓋体の裏面に衝突して欠けが生じ、振動性能に悪影響を生じることが有効に防止される。
【0097】
また、弾性変形の限界を越えて大きく撓むことにより圧電振動素子13が破損したり、圧電振動素子13の接合部の導電性接着剤17に大きな力が集中して、硬化した接着剤が破断したりすることがないので、耐久性が向上する。
【0098】
また、凸部21に貫通孔21aが形成されている場合には、上述したように、圧電振動素子13の周波数調整の際に、電子ビームやレーザ等の光ビームを通過させて、蓋体14のベースに対する封止後に周波数調整することができる。
【0099】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、外部からの衝撃が加えられても、ベース内で圧電振動素子が撓みにくく、蓋体に接触したりすることがないようにすることによって、耐衝撃性を向上させることができる圧電デバイスとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電デバイスの第1の実施形態である圧電振動子を示す概略断面図。
【図2】図1の圧電振動子の蓋体の概略斜視図。
【図3】図1の圧電振動子の蓋体を除去した概略平面図。
【図4】図1の圧電振動子の蓋体の要部概略断面図。
【図5】本発明の圧電デバイスの実施形態である圧電振動子の製造方法を示すフローチャート。
【図6】本発明の圧電デバイスの第2の実施形態である圧電振動子を示す概略断面図。
【図7】図6の圧電振動子の蓋体の要部概略断面図。
【図8】本発明の圧電デバイスの第2の実施形態である圧電振動子を示す概略断面図。
【図9】図6及び図8の圧電振動子の蓋体の変形例を示し、(a)は第1の変形例を示し、蓋体の要部の概略断面図、(b)は第2の変形例を示し、蓋体の凸部の貫通孔の形状を示す概略平面図。
【図10】本発明の圧電デバイスの第3の実施形態である圧電振動子の蓋体を示す概略平面図。
【図11】図10のC−C線断面図。
【図12】本発明の圧電デバイスの第3の実施形態である圧電振動子の蓋体を除去した概略平面図。
【図13】本発明の圧電デバイスの第4の実施形態である圧電振動子を示す概略断面図。
【図14】図13の圧電振動素子の要部概略断面図。
【図15】本発明の圧電デバイスの第5の実施形態である圧電発振器を示す概略断面図。
【図16】従来の圧電デバイスの概略斜視図。
【図17】図16の圧電デバイスの蓋体の概略斜視図。
【図18】図16の圧電デバイスの製造工程の概略を示すフローチャート。
【図19】図16の圧電デバイスの概略断面図。
【符号の説明】
10,30,50,60 圧電振動子
13,53,63 圧電振動素子
12 ベース(収容部)
12a 内部空間
16 電極
17 導電性接着剤
21,31,41,51 凸部
Claims (1)
- 圧電振動素子と、
前記圧電振動素子を収容するためのベースと、
前記圧電振動素子がベース内の電極部に接合されて収容された状態で前記ベースを密封するための蓋体とを備える圧電デバイスにおいて、
前記蓋体が、前記ベースに収容された圧電振動素子に向かって突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記圧電振動素子の先端部よりも前記接合箇所に近い位置に対応して設けられるとともに、この凸部の中心に貫通孔が形成されている
ことを特徴とする、圧電デバイス。
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