JP3937108B2 - ロボットの制御方法およびロボット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンプライアンスを持ったロボットアームとエンドエフェクタのコンプライアンス制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロボットによって対象物あるいは外界との物理的な接触を伴う作業を行う場合、エンドエフェクタ自体にコンプライアンスを持たせることが一般的である。この場合、エンドエフェクタにRCCデバイスのような機械的なコンプライアンス機構を設ける、あるいはエンドエフェクタ自体をコンプライアンス制御する、あるいはロボットア−ムをコンプライアンスアンス制御することが考えられる。
ロボットアームのコンプライアンス制御とは、ロボットアーム先端の位置と姿勢、およびアーム先端にかかる力を用いて、ロボットの軟らかい動きをさせる力制御手法である。この手法は、弾性・粘性・慣性の各パラメータを仮想的に設定したモデルの運動をロボットの動きで実現するもので、パラメータの値を変えることによりロボットの見かけ上の応答特性を自由に設定することができる。コンプライアンス制御は、
【0003】
【数1】
【0004】
という特性方程式で表される。ここで、Mは仮想慣性係数、Dは仮想粘性係数、Kは仮想弾性係数、Fはアーム先端が受ける力、Fdは目標力、xはアーム先端の現在位置、xdは目標位置を表す。アーム先端に加わる外力Fを力センサによって計測し、(1)または(2)式を満足するようにロボットを制御する。一般によく利用される手法として、図3または図4に示すように、コンプライアンスのモデルにしたがってロボットが追従すべき値をコンプライアンス計算部2Aまたは2Bで(1)または(2)式より求め、その位置に対応するロボットの各関節角度を逆キネマティクス計算部3によって求め、これをロボットへの位置指令とする制御方法がある。エンドエフェクタの一つとして多指ハンドを考えた場合、特開平5ー177566にて開示されているように、コンプライアンス制御を用いた協調制御により外乱が加わっても安定して把持できることが示されている。
【0005】
物体の接触を伴う作業をロボットアームにより行う場合、アーム自体をコンプライアンス制御する手法やアーム先端にコンプライアンス制御されたツールを取り付ける手法およびそれらを組み合わせた手法を用いることにより、環境の誤差などを吸収し高精度な作業の実現が期待できる。
ここでは操作対象物のある面を環境のある面に押しつける動作を、エンドエフェクタとしてコンプライアンス制御された多指ハンドを持つロボットアームに行わせる例を示す。図5および6はその制御ブロック図で、目標指令決定部1B又は2Bとコンプライアンス計算部4A又は4Bと逆キネマティクス計算部5を備えたものである。押しつけ動作は、押しつける面同士が平行になるように操作対象物の姿勢を保ちながら環境へ接近させることで実現される。ここで操作対象物の回転に関するコンプライアンスが軟らかくなるように(1)式または(2)式のパラメータを設定することによって、押しつける環境と操作対象物との相対的な位置および姿勢が不確定な場合にも対象に倣う形で押しつけ動作が達成される。予想される環境面16にコンプライアンス制御された多指ハンド13によって把持された対象14をロボットアーム11によって押しつける作業において、予想される環境面16と実際の環境面15との誤差がある場合、図7のように目標とは異なる形で操作対象物14と環境面15の接触が生じる。操作対象物14と環境面15との接触によって生じる力とモーメントがハンドの力覚センサ12によって計測され、制御システム内でコンプライアンス中心17における力19とモーメント20へと変換され、(1)式または(2)式のFとして利用される。ここで、コンプライアンス中心17の回りの回転の仮想弾性係数Kを軟らかく設定しておけば、操作対象物は加わったモーメント20の方向に回転し姿勢を変える。また、コンプライアンス中心17の位置は設定されているKと外力18の平衡点へ移動する。このためパラメータの設置が適当ならば図8に示すように環境面15に対して操作対象物14の押しつけが達成される。
【0006】
多指ハンドはアームと比較して外部からの力やモーメントに対し高い応答性を得られる。そのため多指ハンドのコンプライアンス制御を利用することにより、アームのみを用いた場合よりも環境の変化や誤差に対して高速かつ柔軟に対応することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の方法では、環境面の誤差の大部分をより応答性の高い多指ハンドで吸収することとなるため、押しつけ動作が終了した時点で図8のように多指ハンドの姿勢がハンドのベースに対して大きく傾く場合がある。このため、この後さらにハンドによって物体の位置姿勢を操作する場合に操作可能な範囲が限られてしまうという問題があった。これは多指ハンドに限らずコンプライアンス制御されたエンドフェクタを利用する場合に常に生じる問題である。また、目標姿勢からのずれが生じた状態で(2)式が成立するために外力と目標が一致しない。これらは多指ハンドに限らずコンプライスアンス制御されたエンドフェクタを持つアームを利用する場合に常に生じる問題である。
【0009】
本発明の目的は、ロボットアームとコンプライアンス制御されたエンドエフェクタによる操作対象物の環境との接触を伴う動作において、操作対象物の姿勢が変化してもエンドエフェクタの位置や姿勢の偏りを小さくする、ロボットのコンプライアンスの制御方法およびロボットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1のロボットの制御方法は、アームの先端にエンドエフェクタが取り付けられたロボットの制御方法において、
該エンドエフェクタは該アーム先端からの位置あるいは姿勢を変更するための自由度を少なくとも1自由度持ち、それらの自由度のうち一つ以上は機械的あるいは制御によるコンプライアンスが付与されており、
外界からエンドエフェクタの操作対象物に加わる力である外力によって操作対象物の姿勢が変化するような動作を行う場合に、前記操作対象物の位置、姿勢の変化をエンドエフェクタで計測し、計測結果に基づいて、操作対象物の位置、姿勢が、エンドエフェクタの座標系での操作対象物の予め決められた位置、姿勢に保たれるようにアームの位置、姿勢を変更するものである。
【0011】
したがって、コンプライアンス制御によって操作対象物が環境へ倣うようにエンドエフェクタが操作対象物に加わる外力にしたがって姿勢を変えるのと同時に、操作対象物にかかる外力が目標力と等しくなるようにアームがその位置、姿勢を変更するならば、図8のように操作対象物の姿勢変化によってエンドエフェクタの姿勢の偏った状態から、外力と目標力の等しい状態、すなわち図2のように操作対象物を操作しやすい姿勢になる。これによって、この後のエンドエフェクタによる操作対象物の正確な位置や姿勢の操作が容易になる。
本発明のロボットは、
多指ハンド、アーム先端にそれぞれ取り付けられた力覚センサと、
ハンドベース座標系での各指先端位置の目標指令と各指の力覚センサからの力情報に基づいてコンプライアンス計算を行い、各指先位置を決定するコンプライアンス計算部と、各指毎に逆キネマティクスを解き、前記各指先位置を関節角度指令に変換し、前記多指ハンドへ送る逆キネマティクス計算部を含むハンド制御部と、
操作対象物を環境に押しつける動作をロボットアームで行う場合、操作対象物のハンドベース座標系での目標位置と目標姿勢が動作開始時に与えられ、これら目標位置、目標姿勢と操作対象物の現在位置および現在姿勢から目標指令を作成し、動作時、ハンド制御部のコンプライアンス計算部において求められた、操作対象物のハンドベース座標系における位置、姿勢と予め与えられた操作対象物の目標位置、目標姿勢との差をとり、これをアームの座標系における値に変換してアームの目標位置、目標姿勢に加えて、これに基づいて目標指令を生成する目標指令決定部と、前記目標指令とアームの力覚センサからの力情報に基づいて、アームの目標位置、目標姿勢を計算するコンプライアンス計算部と、前記目標位置、目標姿勢を実現するアームの関節角度を求め、これをロボットアームへの指令とする位置制御を行う逆キネマティクス計算部を含むアーム制御部と
を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態のロボットのブロック図である。
これはコンプライアンス制御されたロボットアームの先端にコンプライアンス制御された多指ハンド8を取り付けたものである。アーム制御部では目標指令決定部1Aがアーム先端を最終的な目標位置および姿勢へ移動させるための目標指令xdを時系列的にコンプライアンス計算部2Aへ渡す。コンプライアンス計算部2Aではこの目標指令xdと力覚センサ6からの力情報Fから特性方程式(1)に基づいてアーム先端の目標位置、姿勢を計算し、これを実現するアームの関節角度を逆キネマティクス計算部3で求め、これをロボットアームへの指令とする位置制御を行う。ハンド制御部も同様に操作対象物を把持するためのハンドベース座標系での各指先端位置の目標指令xdと各指の力覚センサ7からの力情報に基づいてコンプライアンス計算部4Aが協調も含めたコンプライアンス計算を行い、各指先位置xd'を決定する。これを逆キネマティクス計算部5で各指毎に逆キネマティクスを解き、関節角度指令θを多指ハンド8へ送る。
【0017】
操作対象物を環境に押しつける動作をこのロボットアームで行う場合、本実施形態では予めハンドが操作対象物を最も動作しやすくなるような操作対象物のハンドベース座標系での目標位置、姿勢を動作開始時にアームの目標指令決定部1Aに与え、この目標とアームの目標位置、姿勢、操作対象物の現在位置姿勢情報に基づいて目標指令xdを作成する。動作時に、コンプライアンス計算部4Aにおいて、各指の先端位置の情報より操作対象物のハンドベース座標系における位置、姿勢を計算する。本実施形態ではこの操作対象物の位置、姿勢情報をアームの目標指令決定部1Aへ逐次送る。目標指令決定部1Aではこの操作対象物の位置、姿勢と予め与えられた操作対象物の目標位置姿勢との差を取り、これをアームの座標系へ変換してアームの目標位置、姿勢へ加え、これに基づいて目標指令xdを生成し、コンプライアンス計算部2Aへ送る。これによって押しつけ動作中のハンドの最適な姿勢からのずれを補償するようにアームの位置、姿勢が制御される。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は下記のような効果がある。
請求項1と2の発明は、コンプライアンスを持つエンドエフェクタを先端に持つロボットアームを用いた操作対象物の環境への接触を伴う動作において、操作対象物の位置、姿勢の変化に合わせてアームの目標指令を変更するようにしたことにより、エンドエフェクタの最適な姿勢からの偏りを減少させ、その後のエンドエフェクタによる操作対象物の操作性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明を用いて押し付けが達成された時点でのアームとハンドの姿勢を示す図で
ある。
【図3】第1の従来例のブロック図である。
【図4】第2の従来例のブロック図である。
【図5】第3の従来例のブロック図である。
【図6】第4の従来例のブロック図である。
【図7】押しつけ動作時に操作対象物が環境と接触した時点での力関係を示す図である。
【図8】押しつけが達成された時点でのアームとバンドの姿勢を示す図である。
【符号の説明】
1A、1B 目標指令決定部(アーム)
2A、2B コンプライアンス計算部(アーム)
3 逆キネマティクス計算部(アーム)
4A、4B コンプライアンス計算部(ハンド)
5 逆キネマティクス計算部(ハンド)
6,7 力覚センサ
8 多指ハンド
11 ロボットアーム
12 力覚センサ
13 多指ハンド
14 操作対象物
15 実際の環境面
16 予想される環境面
17 コンプライアンス制御中心
18 操作対象物が環境から受ける力
19 コンプライアンス中心の受ける力
20 コンプライナアンス中心の受けるモーメント
Claims (2)
- アームの先端にエンドエフェクタが取り付けられたロボットの制御方法において、
該エンドエフェクタは該アーム先端からの位置あるいは姿勢を変更するための自由度を少なくとも1自由度持ち、それらの自由度のうち一つ以上は機械的あるいは制御によるコンプライアンスが付与されており、
外界からエンドエフェクタの操作対象物に加わる力である外力によって該操作対象物の姿勢が変化するような動作を行う場合に、前記操作対象物の位置、姿勢の変化をエンドエフェクタで計測し、計測結果に基づいて、前記操作対象物の位置、姿勢が、前記エンドエフェクタの座標系での前記操作対象物の予め決められた位置、姿勢に保たれるように前記アームの位置、姿勢を変更することを特徴とする、ロボットの制御方法。 - アームの先端にコンプライアンス制御された多指ハンドが取り付けられたロボットにおいて、
多指ハンド、アーム先端にそれぞれ取り付けられた力覚センサと、
ハンドベース座標系での各指先端位置の目標指令と各指の前記力覚センサからの力情報に基づいてコンプライアンス計算を行い、各指先位置を決定するコンプライアンス計算部と、各指毎に逆キネマティクスを解き、前記各指先位置を関節角度指令に変換し、前記多指ハンドへ送る逆キネマティクス計算部を含むハンド制御部と、
操作対象物を環境に押しつける動作をロボットアームで行う場合、前記操作対象物のハンドベース座標系での目標位置と目標姿勢が動作開始時に与えられ、これら目標位置、目標姿勢と操作作対象物の現在位置および現在姿勢から目標指令を作成し、動作時、前記ハンド制御部のコンプライアンス計算部において求められた、操作対象物のハンドベース座標系における位置、姿勢と予め与えられた操作対象物の目標位置、目標姿勢との差をとり、これを前記アームの座標系における値に変換して前記アームの目標位置、目標姿勢に加えて、これに基づいて目標指令を生成する目標指令決定部と、前記目標指令と前記アームの前記力覚センサからの力情報に基づいて、前記アームの目標位置、目標姿勢を計算するコンプライアンス計算部と、前記目標位置、目標姿勢を実現するアームの関節角度を求め、これをロボットアームへの指令とする位置制御を行う逆キネマティクス計算部を含むアーム制御部と
を有することを特徴とするロボット。
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