JP3936660B2 - 迅速な抗生物質感受性試験法 - Google Patents
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Description
(緒言)
本発明は、一般的に、微生物学、生化学、病理学、組織化学、薬学、および医学に関する。より具体的には、本発明は、酵素阻害を組織化学的に検出する方法を用いる、抗生物質感受性を迅速に判定する新しい方法に関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2000年9月28日に出願された仮特許出願第60/236,901号に基づくものであり、その優先権を主張するものである。この仮出願は、その全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
(背景技術)
以下は背景技術の説明であって、本発明の先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
ベーターラクタム類、マクロライド類、キノロン類、テトラサイクリン類、およびアミノグリコシド類などの強力な抗生物質類が細菌の耐性という現象の餌食になっているため、感染症を治療するために医師が利用できる薬剤の備蓄量は急速に減少しつつある。例えば、1995年の研究でFishらは、14,000人を上回る患者、8種類の抗生物質、および225種類の各養生法を含む173の研究を検討した(Pharmacotherapy,1995, 15(3):279−291)。彼等は全生物の4%と治療した感染症の5.6%において耐性が報告されていることを見いだした。さらに、ある一つの抗生物質に耐性の細菌が、構造的にも異なる他の一種類以上の抗生物質にも抵抗できるという交差耐性の出現も増加している。細菌細胞はいくつかの方法で抗生物質耐性を獲得することができる。その一つは、単純に自然選択による方法である。同一種の細菌のグループ内には、特定の抗生物質に対する耐性を付与する変異遺伝子を一つ以上もつ個体がしばしば見られる。これらの変異遺伝子は、自然突然変異の結果として、または、接合などの過程を経て、既に耐性の他の細菌に由来する遺伝子を蓄積させることによって生じることがある。
【0005】
一つの種の細菌に抗生物質を投与すると、感受性の細菌は死滅し、耐性の細菌は生残し増殖して、その耐性を後代に伝える。多種の抗生物質に曝されるほど、細菌が抗生物質に対する広範な耐性を発達させる可能性が高くなる。このように、抗生物質を無差別に使用することは、最後には、非常に耐性の強い菌株となる細菌を効果的にスクリーニングする機構として働くことがある。しかし、患者が未知の感染症に罹っているのを直面したとき、臨床医にはしばしば選択の余地がない。治療を開始する速さが患者の健康にとって決定的に重要であることが多いため、臨床医は、実際の病原生物が同定されて、より目標を絞った治療法を開始できるようになるまでの間、どのような治療法を試みるべきかについて、しばしば知識に基づく推測を行なわなければならない。必然的に選ばれる最初の治療法は、大抵、最も広いスペクトルで、最も強力な利用可能な抗生物質を使用することを含むが、それは、残念なことに、上記の選抜過程によって超耐性菌株を発生させる完全なレシピになってしまうのである。
【0006】
臨床上重要な細菌のいくつかにおいて、既に耐性は充分に確認されており、もっとも普通に処方されている抗生物質の有用性を瞬く間に制限している。特に、シュードモナス属、エシェリキア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、エンテロコッカス属、腸内細菌科、マイコバクテリア属、クレブシエラ属、およびヘモフィルス属の耐性菌株が発生しており、別な方法では成功する抗生物質治療法の多くを脅かしている。
【0007】
耐性の出現を抑える方法の一つは、特定の感染原因菌の抗生物質感受性をできるだけ早期に判定することである。このことは、患者の健康にとって重要であるだけでなく、抗生物質治療を選択的かつ標的を絞って適用することによって、細菌株間において抗生物質耐性が増えるのを抑制するのに役立つ。しかし、現在利用可能で最も汎用されている技術は、このような判定を行なうための充分に迅速な方法を備えていない。
【0008】
最も適切な抗生物質治療法を判定するための標準的な方法は、まず、原因である細菌種を同定して、その細菌種に有効なことが知られている抗生物質を処方することである。これには、細菌細胞を単離して、それらを培養培地で増殖させてその数を増やしてから、それらの遺伝的特徴、形態、染色パターンなどによって種(できれば菌株も)を同定することが含まれる。培養法を採ることには、微生物そのものを大量に生み出すという利益があり、それによって、同定することが比較的簡単になる。しかし、この技術には、第一に、同定するのに十分な量の細菌を増殖させるのにかなり時間がかかり、第二に、積極的な同定を行なうのに必要な生理学的特性の範囲を実際に評価するのにもかなり時間がかかるという難点がある。一方、患者は、完全に効果があるとはいえない広域薬剤治療を受けることもできるが、上記したように、耐性菌株の出現を激化する可能性がある。さらに、たとえ感染生物の種が同定されたとしても、従来の抗生物質では治療できず、より特別な治療法を必要とする耐性菌株かもしれない。残念ながら、そのような特別な治療法は、標的となる細菌の性質に大きく依存するため、それを実施することは困難である。従って、治療を開始する前に実際の感染細菌の感受性を正確に測定できることが望ましい。
【0009】
Bochnerらに付与された米国特許第5,989,853号(発行日:1999年11月23日)は、微生物を同定する迅速な方法を開示すると主張している。この方法には、指示薬、および、炭素源や抗菌剤などの試験物質を含んだゲル基質に生物が懸濁されているマルチ試験フォーマットが伴う。炭素源には、細菌を区別することができるものが選ばれる。すなわち、ある細菌には用いられるが、他の細菌では用いられないような炭素源が選ばれる。抗菌剤も同様に選ばれる。すなわち、ある種の細菌種に特異的なものが選ばれるため、それらも種間を区別するのに有用となる。しかしながら、この方法では、それを行なうために従来通りの培養を行ない、十分な規模の細菌集団を得る必要がある。
【0010】
2000年3月28日に発行されたJohnsonらの米国特許第6,043,048号には、標的である細菌株のベーターラクタム系抗生物質感受性を特異的に判定する方法が記載されている。この細菌株を、β−ラクタム解毒酵素(β−ラクタマーゼ)の産生を誘導する抗生物質とベーターラクタム指標抗生物質(β−ラクタマーゼを産生できない細菌を殺すか、それらの増殖を阻害する物質)を含む増殖用培地上に置く。必須栄養素を含む蛍光発生化合物もまた増殖用培地に添加される。感受性細菌株、すなわち、ベーターラクタマーゼ産生を誘導することができない菌株は、栄養素を含む化合物を代謝するため、蛍光発生剤の放出が起こらなくなる。従って、感受性細菌の培養液中では、蛍光の増加は見られない。その一方で、耐性細菌は、栄養素/フルオルフォア(fluorphor)化合物を代謝して蛍光の増加をもたらす。この方法は、耐性の基礎としてβ−ラクタマーゼに依存する細菌に関する感受性/耐性情報しか提供できない点で有用性が限定されている。
【0011】
別の開示文献、Robinsonらに付与された米国特許第5,925,884号(発行日:1999年7月20日)には、原因病原体の同定および抗生物質感受性の判定を行うために細菌感染症を分析する自動装置が記載されている。分析する試料を、細菌株特異的増殖用培地またはさまざまな濃度の異なった抗生物質を予め搭載させた試験用カードの中に置く。このカードをインキュベートし、一定時間毎に透過解析装置(濁度による同定を行うため)または蛍光解析装置(フルオロフォアの解離による抗生物質感受性を調べるため)に入れて読み取る。この特許は、細菌に必要なインキュベーション時間によって異なるが、2から18時間内に結果が得られるとしている。しかしながら、別の文献では、その時間は4から16時間の範囲でより長くなることが記載されている。
【0012】
細菌を同定し、抗菌剤の最小阻害濃度(MIC)値を測定する方法が、Wertzに付与された米国特許第4,448,534号(1984年5月15日)に開示されている。この方法は、基本的には、培養液中での増殖を解析する計器による方法を含む。すなわち、培地で増殖できる細菌は、それができない細菌よりも高い濁度読み取り値をもたらす。特許権者によれば、光学的方法を用いることによって、より早く、またより正確に濁度を測定することができるため、より迅速かつ正確にMICを測定することができるということである。しかし、それにもかかわらず、この方法は、増殖用培地で細菌を増殖させることに依存しているため、上記したように、ほとんどの感受性試験がもつ時間がかかるという特徴をもつ。
【0013】
上記の技術または他の類似技術を用いて、抗生物質感受性の検出を自動化するためにいくつかの装置が導入されてきた。例えば、オートメイティド・ラボラトリー・ダイアグノスティクス社(Automated Laboratory Diagnostics)のアラジン(Aladin)およびユニセプト(Uniscept)装置、ならびにベクトン・ディキンソン社(Becton Dickinson)のオートセプター(AutoSceptor)は18から24時間で抗生物質感受性を判定することができるそうである。ビオメリュー社(bioMerieux)のビテック(Vitek)装置は、2から8時間で(別の文献によれば、必要とされる時間は4から16時間の範囲でさらに長くなる)抗生物質感受性を決めることができると記載されている。ラジオメータ・アメリカ社(Radiometer America)のセンシタイター(Sensititre)(登録商標)は、5から8時間で感受性を測定することができるといわれ、バクスター・ダイアグノスティクス社(Baxter Diagnostics)のウォーカウェイ96(Walkaway 96)(登録商標)、ウォーカウェイ−40(Walkaway−40)(登録商標)、およびオートスキャン−4(Autoscan−4)(登録商標)は3.5から7時間で感受性を測定することができるといわれている。
【0014】
必要とされているのは、治療するための患者を認知してから最初の1時間、長くても2時間で抗生物質に対する未知の細菌の感受性を明確かつ正確に測定する方法、すなわち、長時間のインキュベーション時間を必要としないで行なうことができる方法である。
【0015】
(発明の概要)
本発明は、抗生物質に対する細胞の反応を組織化学的に検出することに基づいた、抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する迅速な手段を提供することによって上記の需要を満たすものである。
【0016】
従って、一つの態様において、本発明は、抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する方法であって、細菌細胞を含む試験材料を提供すること、この試験材料を、細菌の生化学的経路に作用する酵素を阻害することが知られている抗生物質を含む増殖用培地と接触させて試験基質を形成させること、この試験基質をインキュベートすること、該作用酵素が該抗生物質によって阻害されなければ該生化学的経路との相互作用の結果として発色性化合物を生成することができる組織化学試薬を試験基質に加えること、および、試験基質中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む方法に関するものである。
【0017】
別の態様において、本発明は、さらに、細菌細胞を含む試験材料の等量液を、抗生物質を含まない増殖用培地と接触させて対照用の基質を形成させること、対照用基質をインキュベートすること、対照用基質に組織化学試薬を加えること、および、対照用基質中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む、上記の方法に関するものである。
【0018】
任意に、一連の試験過程の適当な段階で、本明細書に別記されているようにして、細菌細胞を固定することができる。ここで、適当な段階は、当業者であれば本明細書の開示内容に基づいて容易に識別することができる。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、細菌細胞が、シュードモナス属、エシェリキア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、エンテロコッカス属、腸内細菌科、マイコバクテリア属、クレブシエラ属、およびヘモフィルス属からなる群より選択される、上記の方法に関するものである。
【0020】
さらに別の態様において、本発明は、作用酵素が、トランスペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、テトラヒドロプテロイン酸シンセターゼ、およびジヒドロ葉酸還元酵素からなる群より選択される、上記の方法に関するものである。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、抗生物質が、β−ラクタム、テトラサイクリン、アミノグリコシド、スルホンアミド、マクロライド、フルオロキノロン、およびトリメトプリム抗生物質からなる群より選択される、上記の方法に関する。特に、抗生物質は、アンピシリン、セファゾリン、セファロチン、セフタジジム、ゲンタマイシン、メズロシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、およびトリメトプリムからなる群より選択される。
【0022】
また、上記方法において、試験基質、および使用されるのであれば対照用基質を約1から約120分間インキュベートすることも本発明の一態様である。
【0023】
本発明の別の態様では、試験基質、および使用されるのであれば対照用基質を約30から約90分間インキュベートする。
【0024】
本発明の現在好ましい態様では、試験基質、および使用されるのであれば対照用基質は約10から約40分間インキュベートされる。
【0025】
試験材料が体液を含むことも、本発明の一態様である。
【0026】
本発明の別の態様では、体液は、血清、血漿、痰、唾液、脊髄液、鼻汁、眼漏、および膿からなる群より選択される。
【0027】
また、試験材料が、組織および糞便からなる群より選択されるのも本発明の一態様である。
【0028】
発色性化合物は、裸眼、または、何でもよいが光学顕微鏡などの計器による方法で観察することができるものである。
【0029】
本発明の更なる態様では、抗生物質はメトプリムである。
【0030】
抗生物質がメトプリムであるとき、本発明の更なる態様では、酵素によって触媒される生化学的経路は葉酸合成経路である。
【0031】
抗生物質がメトプリムであるとき、本発明の一態様では、組織化学試薬と接触させる前に、試験基質をpH6のリン酸緩衝液で洗浄する。
【0032】
抗生物質がメトプリムであるとき、本発明の別の態様では、組織化学試薬は、TNBT(テトラニトロブルーテトラゾリウム)、塩化マグネシウム、アジ化ナトリウム、ニコチンアミド二リン酸(NADP)、およびジヒドロ葉酸を含む。
【0033】
本発明の一態様は、細菌の生化学的経路の作用酵素が抗生物質によって阻害されなければ、該酵素と相互作用することによって、それぞれが発色性化合物を生成することができる一種類以上の組織化学試薬を含む、一種類以上の抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定するキットである。
【0034】
本発明の別の態様は、さらに、細菌の生化学的経路の作用酵素が抗生物質によって阻害されなければ、一種類以上の組織化学試薬と相互作用して発色性化合物を生成することができる該作用酵素の活性を阻害することが知られている抗生物質を一種類以上含む上記キットである。
【0035】
本発明の別の態様では、上記キットは増殖用培地をさらに含む。
【0036】
本発明の別の態様では、上記キットは固定剤をさらに含む。
【0037】
本発明の一態様は、複数の抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する方法であって、細菌細胞を含む試験材料を提供すること、各ウェルが増殖用培地と、それぞれが細菌の生化学的経路に作用する酵素を阻害することが知られているさまざまな抗生物質とを含む複数のウェルを有する試験用プレートを提供すること、細胞を含む試験材料の等量液を各ウェルの中に入れること、試験用プレートをインキュベートすること、各ウェルに、そのウェルの中にある抗生物質によって生化学的経路の作用酵素が阻害されなければ、該生化学的経路との相互作用の結果として発色性化合物を生成することができる組織化学試薬を加えること、および、各ウェル中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む方法に関するものである。
【0038】
本発明の別の態様は、抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する方法であって、細菌細胞を含む試験材料を提供すること、各ウェルが増殖用培地と、細菌の生化学的経路に作用する酵素を阻害することが知られている抗生物質を異なった濃度で含む複数のウェルを有する試験用プレートを提供すること、細胞を含む試験材料の等量液を各ウェルの中に入れること、試験用プレートをインキュベートすること、各ウェルに、そのウェルの中の抗生物質濃度によって生化学的経路の作用酵素が阻害されなければ、該生化学的経路との相互作用の結果として発色性化合物を生成することができる組織化学試薬を加えること、および、各ウェル中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む方法に関するものである。
【0039】
(発明の詳細な説明)
ここで「感受性」とは、細菌細胞が抗生物質による作用を受ける程度を意味する。すなわち、細胞は全然影響を受けないこともあり、死滅することはなくても、その成長や増殖が遅滞したり停止したりすることもあり、また、死滅することもある。また、感受性は、ある細菌種や菌株の集団が抗生物質による作用を受ける程度も意味する。この場合、集団中の非常に感受性の高い細胞は非常に敏感で、抗生物質の濃度が非常に低くても死滅することがあるが、より感受性の低い他の細胞ではその成長や増殖が遅くなるかと思えば、別の細胞は全然影響を受けないこともある。
【0040】
ここで「抗生物質」とは、何でもよいが、例えば、菌類や酵母などの微生物によって産生される、感染症を治療する上で有用な天然物質を意味する。また、抗生物質は、微生物によって産生された分子を、所望の性質となるようにその後改変した半合成物質も意味する。
【0041】
ここで「細菌細胞」とは、細菌の特定の属、種、または菌株のことである。本発明の現在好ましい態様において、細菌細胞は同一菌株のものである。
【0042】
ここで「試験材料」とは、患者の身体から採取された固体または液体の材料を意味する。この材料は、血清、血漿、血液、脊髄液、粘液、膣帯下、鼻汁、眼漏、脊髄液、または唾液などであるが、制限はない。または、この材料は、組織や糞便などの固体でもよい。
【0043】
ここで使用される「増殖用培地」とは、何でもよいが、栄養素、炭素源、酸素、塩類、金属など、細菌が増殖するのに必要な要素をすべて含む、液体、半固形、または固形の材料を意味する。当技術分野で知られている増殖用培地の例には、ミューラ−ヒントン(Mueller−Hinton)培地、セイヤーマーチン(Thayer−Martin)培地、コンラディ−ドリガルスキー(Conradi−Drigalski)培地、ガルニエリ(Guarnienri’s)のゼラチン培地などがあるが、制限はない。
【0044】
ここで使用される「接触させる」とは、細菌を含む材料を、増殖用培地と、それに含まれる化学物質とに接触させて、抗生物質が存在しないか、または、細胞が耐性であれば、抗生物質存在下で細菌細胞が増殖し、細胞が感受性であれば、抗生物質によって死滅または阻害されるようにすることを意味する。「阻害される」とは、細菌の成長および/または増殖が遅滞または停止することを意味するが、後者の場合は、抗生物質が存在している間だけのことである。
【0045】
ここで使用される「インキュベートする」とは、何でもよいが、例えば、培地の温度、培地を置く環境(空気、二酸化炭素など)、および光条件など、細菌の増殖に必要な物理的要素を維持することを意味する。
【0046】
ここで使用される「酵素」とは、生細胞における特異的な化学反応を触媒する天然のタンパク性高分子を意味する。酵素は、それらが触媒する反応において消費されないという点で真の触媒である。
【0047】
ここで使用される「細菌の生化学的経路」とは、特定の化学変化をもたらすために細菌細胞の中で起きる特異的な生化学反応、または一連の生化学反応であって、細胞が生存する、すなわち、細胞が成長したり増殖できるのに必須の化学反応を意味する。生化学的経路には、制限はないが、代謝経路、発生経路、シグナル伝達経路、または遺伝子調節回路などがある。生化学的経路の具体例には、制限はないが、葉酸生合成経路、メチオニン生合成、ピリミジン生合成、ペプチドグリカンおよびリピドA前駆体の合成経路、デオキシピリミジンヌクレオチド/ヌクレオシドの代謝などがある。これら、および他の生化学的経路は当該技術で既知である。
【0048】
ここで使用される「固定する」とは、一つの意味では、古典的な固定、すなわち、細胞中の組織要素を速やかに殺して、それらが生細胞中で持っていたのとできるだけ同一の関係を維持するように保存および硬化することを意味する。細胞を固定するのには多くの方法があることが当該技術で知られており、それらすべてが本発明の範囲に含まれるが、本発明の一態様において、細胞をアセトン、エタノール、またはそれらを一緒にしたものと接触させることによって固定を行なう。別の意味では、ここで「固定する」というのは、何でもよいが、細胞を安定化させるなど、細胞を殺すのには不十分な活性を意味し、それによって、生化学的に、例えば、細胞全体の生存には大きく悪影響を及ぼしつつ、一定の生化学的処理を操作し続けたり、または、物理的に、例えば、試験するために表面上に細胞を固定したりすることを意味する。さらに、固定とは、当業者に既知である、さまざまな形の組織化学的固定を意味することもある。最後に、制限はないが、固定とは、細胞の中にある酵素を変性させることを意味することもある。
【0049】
ここで使用される「組織化学試薬」とは、相互作用の結果として直接に、または、間接的に、すなわち、最初の相互作用の生成物が二次的に相互作用する結果として検出可能な発色性化合物が生成されるように、特異的な生化学的経路と相互作用する化合物、または化合物の混合物を意味する。組織化学的試薬は、発色性化合物、またはその前駆体とともに、補助因子、酵素活性化因子、および電子の受容体または供与体などであるが、これらに限定されない成分を含むことも可能である。
【0050】
発色性化合物の「直接的生成」とは、発色性化合物の前駆体で、無色か第一の色をもつもの(例えば、酸化型で無色または第一の色をもち、還元型になると着色したり、第二の色に変わる染色剤)が、酸化還元サイクルなどであるが、これに限定されない生化学的経路におけるある段階と相互作用し、その結果として、染色剤が変化して着色するか、別の色に変化することを意味する。
【0051】
発色性化合物の「間接的生成」とは、発色性化合物の前駆体が、生化学的経路の酵素に対する代替基質に結合することを意味する。代替基質が酵素と相互作用すると、前駆体分子は切断され、それによって始めて別の分子に結合して発色性化合物を形成することができるようになる。また、間接的生成は、活性のある生化学的経路の生成物と相互作用して発色性化合物を形成することができる発色性化合物前駆体も意味する。
【0052】
生化学的経路と「相互作用する」または「相互作用」とは、生化学的経路における化学的または物理的なプロセスによって化合物が変化して異なった形になることを意味する。異なった形とは、例えば、制限はないが切断、カルボキシル化、加水分解など、酵素触媒による化合物の反応によって作り出される異なった種類の化学物質、生化学的経路の酸化還元サイクルにおいて電子が交換される結果、異なった酸化状態になること、または、化合物が、生化学的経路の天然生成物に共有結合している形態などであるが、これらに限定されない。
【0053】
組織化学試薬の性質によっては、試験基質に試薬の成分を一度に、または所定の順序で加えて、発色性化合物を生成させる必要があるかもしれない。
【0054】
ここで「作用酵素」という語句は、その触媒活性が、標的となる生化学的経路を含む反応、または一連の反応にとって必須である酵素、すなわち、その酵素を阻害すると、その生化学的経路も作動しなくなる酵素を意味する。
【0055】
ここで、作用酵素を「阻害する」または「阻害」とは、酵素がその通常の触媒活性を行なう能力を妨害することを意味する。
【0056】
ここで「発色性化合物」とは、それが吸光または発光できる結果として検出することができる化合物を意味する。吸光によって、可視領域が発色したり、変色する、すなわち、裸眼で、または、何でもよいが光学顕微鏡またはレーザースキャナーなどの機器を用いて見ることのできる色または色の変化を生じることがある。さらに、例えば、スペクトルの紫外光領域、または赤外光領域など、スペクトルの不可視領域において吸光が生じることがあるが、その場合、吸光は分光光度計を用いて計器により検出される。発光には、ある波長の光を吸光しつつ、別の波長の光を放出する蛍光発光、または、化合物が、入射光が消えた後一定時間、ある波長の光を吸収して、異なった波長の光を放出するという燐光発光などがある。
【0057】
細菌細胞を「観察する」とは、ただ裸眼で細胞を見て、細胞の中に何かの色が見られるかを調べることを意味する。場合によって、細胞を前または後ろから照らすと、観察しやすくなることがある。また、観察とは、光学顕微鏡、レーザースキャナー、またはUV分光光度計などの計器を用いて見ることも意味する。
【0058】
「患者」とは、魚類、爬虫類、鳥類、および哺乳類など、細菌感染に感受性をもつあらゆる生命体を意味する。特に、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジなどの哺乳動物が、本発明に関連する患者である。本発明の現在好ましい態様において、患者は人間である。
【0059】
ほとんどの抗生物質は、細胞の機能に必要な一種類以上の酵素の活性を妨害することによって、細菌を死滅させるか阻害する。一般的な抗生物質とそれらが阻害する酵素のいくつかの例は次の通りである。すなわち、ベーターラクタムは、トランスペプチダーゼの活性を阻害し、ゲンタマイシンは、ペプチジルトランスフェラーゼ活性を妨害し、スルファメトキサゾールは、テトラヒドロプテロイン酸シンセターゼ活性を阻害し、また、トリメトプリムは、ジヒドロ葉酸還元酵素活性を妨害する。抗生物質の種類と、それらが阻害する酵素のより完全なリストは、Fishら、前掲に記載されており、この文献は、図面を含め、その全部が完全に提示されているものとして、本明細書に組み入れられる。
【0060】
抗生物質による酵素活性の阻害は、標的酵素に抗生物質が接触した直後に起きる。この阻害は、ほとんどの場合、はっきりとした静菌作用または殺菌作用が観察されるよりもずっと前に検出することが可能である。従って、本発明の一態様は、細胞における生化学的経路であって、その経路において作用する酵素が抗生物質の標的であるために選択された経路と相互作用する結果として検出可能な発色性化合物を生成する組織化学試薬を用いて、抗生物質感受性を早期に検出する方法である。特定の抗生物質に対して耐性をもつ細胞では、酵素は阻害されず、経路が作動しなくなるということはなく、組織化学試薬は、この経路と相互作用して発色性化合物を生成させる。しかし、感受性の細胞では、抗生物質によって酵素が阻害され、生化学的経路は作動しなくなり、組織化学試薬はこの経路と相互作用できず発色性化合物は生成されない。
【0061】
本発明の方法にとっては、特定の抗生物質の具体的作用様式、すなわち、生化学的経路、およびその経路において抗生物質が阻害する酵素が分かっている必要がある。幸いにも、臨床的に重要な抗生物質のほとんどすべてはそのようなものである。この知見と本明細書の開示内容に基づいて、特定の生化学的経路と相互作用して、発色性化合物を生成させることができる組織化学試薬を調製することができる。例えば、制限はないが、発色性化合物を生成させる化合物の反応を酵素に触媒させるため、標的酵素に対する天然の基質を模倣した化合物を含む組織化学試薬を調製することなどができる。あるいは、酸化状態では無色であり(または第一の色をもち)、別の酸化状態では着色する(または、異なった色になる)化合物を含む組織化学試薬を調製することができる。その後、この化合物は、生化学的経路において、酸化還元サイクルと相互作用し、その結果、その酸化状態、ひいてはその色が変化することがある。さらに別の例は、生化学的経路において、発色性化合物である、酵素反応の生成物と反応することができる化合物を含む組織化学試薬であろう。その他同様の組織化学試薬は、本明細書の開示内容に基づき、当業者に明らかである。
【0062】
酵素によって触媒される生化学的経路に特異的な組織化学試薬が調製されると、細菌細胞を抗生物質と接触させ、その後、短時間インキュベートしてから組織化学試薬と接触させることにより、細菌株の感受性を迅速に判定することができる。もし、細菌細胞が抗生物質に対して耐性であれば、細胞が死滅したり、その増殖が阻害されたことが明白になる(これには、細胞を培養することが必要である)よりもずっと前に発色性化合物が産生され、それを検出することができる。
【0063】
本明細書に記載した方法は、当然、一度に一種類の抗生物質に対する細菌細胞の感受性を判定するために用いることができる。しかし、本発明の好ましい態様として複数の抗生物質を、そのすべての抗生物質に対する細菌細胞の感受性を同時に判定することができる一つのフォーマットにして提供することができる。例えば、何でもよいが、一連の抗生物質、またはさまざまな濃度の抗生物質であって、一つの生化学的経路における一つの酵素を阻害する抗生物質を、増殖用培地とともに、標準的な96ウェル滴定用プレートの各ウェルに入れる。細菌を含む材料の等量液を各ウェルの中に入れ、プレートをインキュベートする。インキュベートした後、組織化学試薬を各ウェルに加える。その後、それらウェル中の細菌細胞における発色性化合物の有無からも分かるように、顕微鏡下で各ウェルを観察して、どの抗生物質に対して細菌が耐性または感受性であるかを判定する。
【0064】
(実施例)
1.一般的方法
目的とする細菌を含む材料の等量液を、抗生物質を含む増殖用培地と混合する。細菌を含む材料を使用することもできるが、本発明の好ましい態様では、材料は患者から、通常、体液という形で採取する。材料の別の等量液を、同じ増殖用培地であるが、抗生物質を含まない培地と混合し、この等量液を対照用の試料とする。そして、両方の等量液を約10分から約2時間、好ましくは、約30分から約1.5時間インキュベートする。この時点で、等量液を任意に処理して、組織化学試薬と相互作用して偽陽性または偽陰性の結果を生じさせるかもしれない内生物質を除去することができる。また、組織化学試薬を加える前に、選択的に等量液を固定剤で処理して、細胞を固定することもできる。最後に、組織化学試薬を等量液に加える。発色性化合物が存在するか、すなわち、発色しているか細菌細胞を調べる。これは、しばしば裸眼で観察することができるが、光学顕微鏡、レーザースキャナー、またはUV分光光度計などの計器(制限はない)による方法を用いることもできる。対照(抗生物質を添加していない等量液)では、発色性化合物が生成されるはずである。なぜなら、組織化学試薬が相互作用するように設計された生化学的経路を妨害する抗生物質が存在しないからである。細菌が抗生物質に対して耐性であれば、抗生物質を含む等量液中の細胞も同様に染色されるはずである。他方、細菌が抗生物質に感受性であれば、細胞は染色されない。
【0065】
2.β−ラクタム系抗生物質感受性
β−ラクタム系抗生物質は、ペニシリン結合タンパク質またはPBPとしても知られているD−ala−D−alaトランスペプチダーゼおよびD−ala−D−alaカルボキシペプチダーゼの酵素活性を阻害することによって機能する。これら酵素の天然の基質は、NacMur−L−ala−D−gin−X(−NH2)−D−ala−D−alaという配列をもつペンタペプチドである。Xは、L−リシン(L−lys)またはm−ヂアミノピメリン酸のいずれかである。D−ala−D−alaカルボキシペプチダーゼが、D−ala−D−alaという配列のところでペンタペプチドを切断することが知られている。従って、この酵素の活性部位に結合するのに十分な類似性をもつが、D−ala−D−ala配列に結合した発色性化合物または化合物前駆体を含む合成基質は、この酵素によって切断され、発色性化合物を解離するはずである。ペンタペプチド模倣物として可能なものに以下のものがある。
【0066】
D−ala−D−ala−1−ナフチルアミド一水和物
D−ala−D−ala−γ−(4−メトキシ−β−ナフチルアミド)
L−lys−D−ala−D−ala1−ナフチルアミド一水和物
L−lys−D−ala−D−ala−γ−(4−メトキシ−β−ナフチルアミド)
D−gln−L−lys−D−ala−D−ala−1−ナフチルアミド一水和物
D−gln−L−lys−D−ala−D−ala−γ−(4−メトキシ−β−ナフチルアミド)
L−ala−D−gln−L−lys−D−ala−D−ala−1−ナフチルアミド一水和物
L−ala−D−gln−L−lys−D−ala−D−ala−γ−(4−メトキシ−β−ナフチルアミド)
ナフチルアミドまたは4−メトキシ−β−ナフチルアミドは、酵素によってペプチド鎖から離されると、染色剤前駆体と相互作用して、検出可能な発色性化合物を生成させることができる。例えば、ガ−ネットGBC(Garnet GBC)またはファーストガーネットGBC(Fast Garnet GBC)は、1−ナフチルアミド一水和物をもつ発色した生成物をもたらし、ファーストブルーB(Fast Blue B)またはファーストブルーBB(Fast Blue BB)は、4−メトキシ−β−ナフチルアミドをもつ生成物をもたらす。
【0067】
2.トリメトプリム感受性
トリメトプリムは、葉酸合成をもたらす生化学的経路における一過程であるジヒドロ葉酸還元酵素の活性を阻害することによって作用する。この酵素反応に必要な補因子はNADPまたはNADHである。塩化マグネシウムが、この酵素の活性化因子である。従って、組織化学的反応を用いてトリメトプリムに対する細菌株の感受性を測定することが可能か否かを判定するための試験では、大腸菌ATCC25922の細胞をpH6のリン酸緩衝(PB)溶液、または、過酸化水素を含むpH6のPBで洗浄して、誤った結果、すなわち、実際には抗生物質によって実際の生化学的経路が阻害されているのに、耐性を示す染色細菌細胞という結果を生じさせるおそれのある、細胞中に存在する内生的な基質および補因子を除去した。次に、細胞を0.01MのpH6 PBの中に入れて、0.003mM、0.03mM、および0.3mMという3種類の異なる濃度のトリメトプリム、酸化された状態では無色の酸化型テトラニトロブルーテトラゾリウム塩(TNBT)、塩化マグネシウム、およびアジ化ナトリウム(呼吸鎖遮断薬)の混合液と接触させた。30分後、ジヒドロ葉酸(0.03mM)およびNADP(0.08mM)を加え、細胞をさらに30分間放置した。顕微鏡で見ると、0.003mMのトリメトプリムで処理した細胞は濃く染色し、0.03mMで処理した細胞は薄く染色し、0. 3mMで処理した細胞は全く染色しなかった。このことは、細胞においてジヒドロ葉酸還元酵素によって触媒される反応は、0.3mMのトリメトプリムで完全に阻害され、0.03mMでは部分的に阻害され、0.003mMのトリメトプリムでは影響がないことを示していた。
【0068】
TNBTを還元できなくなったことが、実際に、ジヒドロ葉酸還元酵素に対するトリメトプリムの効果によるものであったか否かを判定するため、トリメトプリムの代わりに、ジヒドロ葉酸還元酵素のインヒビターでないメトトレキサート(アメトプテリン)を用いてこの方法を反復した。すなわち、洗浄した大腸菌細胞を0.01MPBの中に入れて、TNBT、塩化マグネシウム、アジ化ナトリウム、および0.15mM、0.3mMという2種類の異なる濃度のメトトレキサートとの混合液に30分間接触させてから、細胞をジヒドロ葉酸(0.03mM)とNADP(0.08mM)に30分間接触させた。顕微鏡で見ると、どちらの濃度でも、すべての大腸菌細胞が染色し、予想通り、メトトレキサートはジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することができず、組織化学試薬が設計された生化学的経路はそのままで、また、TNBTは還元されて着色された形になったことを示した。
【0069】
結論
以上、本発明が、抗生物質に対する細菌の感受性を迅速に判定する方法であって、細菌感染症のより特異的な初期治療を可能にする方法を提供するものであることが理解されよう。
【0070】
本発明の他の態様を以下の請求の範囲に記載する。
Claims (22)
- 抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する方法であって、
細菌細胞を含む試験材料を提供すること、
試験材料を細菌の生化学的経路の作用酵素を阻害することが既知の抗生物質を含む増殖用培地と接触させて、試験基質を形成させること、
試験基質をインキュベートすること、
作用酵素が抗生物質によって阻害されなければ、生化学的経路との相互作用の結果として発色性化合物を生成することができる組織化学試薬を試験基質に加えること、および、
試験基質中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む方法。 - 細菌細胞を含む試験材料の等量液を、抗生物質を含まない増殖用培地と接触させて対照用の基質を形成させること、
対照用基質をインキュベートすること、
対照用基質に組織化学試薬を加えること、および、
対照用基質中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることをさらに含む、請求項1記載の方法。 - 細菌細胞が、シュードモナス属、エシェリキア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、エンテロコッカス属、腸内細菌科、マイコバクテリア属、クレブシエラ属、およびヘモフィルス属からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 作用酵素が、トランスペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、テトラヒドロプテロイン酸シンセターゼ、およびジヒドロ葉酸還元酵素からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 抗生物質が、β−ラクタム、テトラサイクリン、アミノグリコシド、スルホンアミド、マクロライド、フルオロキノロン、およびトリメトプリム抗生物質からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 抗生物質が、アンピシリン、セファゾリン、セファロチン、セフタジジム、ゲンタマイシン、メズロシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、およびトリメトプリムからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 試験基質、および使用されるのであれば対照用基質を約1から約120分間インキュベートする、請求項1記載の方法。
- 試験基質、および使用されるのであれば対照用基質を約30から約90分間インキュベートする、請求項7記載の方法。
- 試験基質、および使用されるのであれば対照用基質を約10から約40分間インキュベートする、請求項7記載の方法。
- 試験材料が体液を含む、請求項1記載の方法。
- 体液が、血清、血漿、脊髄液、痰、唾液、鼻汁、眼漏、および膿からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
- 試験材料が、組織および糞便からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 発色性化合物を裸眼で観察することができる、請求項1記載の方法。
- 発色性化合物を、計器による手段で観察する、請求項1記載の方法。
- 計器による手段が、光学顕微鏡、UV分光光度計、またはレーザースキャナーを含む、請求項14記載の方法。
- 抗生物質がトリメトプリムであり、
酵素によって触媒される生化学的経路が葉酸合成経路であり、
試験基質酵素を、組織化学試薬と接触させる前にpH 6のリン酸緩衝液で洗浄し、および、
組織化学試薬が、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、塩化マグネシウム、アジ化ナトリウム、ニコチンアミド二リン酸(NADP)、およびジヒドロ葉酸を含む、請求項1記載の方法。 - 一種類以上の抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定するキットであって、細菌の生化学的経路の作用酵素が抗生物質によって阻害されなければ、生化学的経路と相互作用することによって、それぞれが発色性化合物を生成することができる一種類以上の組織化学試薬を含むキット。
- 作用酵素が抗生物質によって阻害されなければ一種類以上の組織化学試薬が相互作用して発色性化合物を生成することができる生化学的経路の作用酵素の活性を阻害することが知られている抗生物質を一種類以上さらに含む、請求項17記載のキット。
- 増殖用培地をさらに含む、請求項17記載のキット。
- 固定剤をさらに含む、請求項17記載のキット。
- 複数の抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する方法であって、
細菌細胞を含む試験材料を提供すること、
各ウェルが増殖用培地と、それぞれが細菌の生化学的経路の作用酵素を阻害することが知られているさまざまな抗生物質とを含む複数のウェルを有する試験用プレートを提供すること、
細胞を含む試験材料の等量液を各ウェルの中に加えること、
試験用プレートをインキュベートすること、
各ウェルに、該ウェルの中にある抗生物質によって生化学的経路の作用酵素が阻害されなければ、該生化学的経路との相互作用の結果として発色性化合物を生成することができる組織化学試薬を加えること、および、
各ウェル中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む方法。 - 抗生物質に対する細菌細胞の感受性を測定する方法であって、
細菌細胞を含む試験材料を提供すること、
各ウェルが増殖用培地と、細菌の生化学的経路に作用する酵素を阻害することが既知の抗生物質を異なった濃度で含む複数のウェルを有する試験用プレートを提供すること、
細胞を含む試験材料の等量液を各ウェルの中に加えること、
試験用プレートをインキュベートすること、
各ウェルに、該ウェル中の抗生物質濃度によって生化学的経路の作用酵素が阻害されなければ、該生化学的経路との相互作用の結果として発色性化合物を生成することができる組織化学試薬を加えること、および、
各ウェル中の細菌細胞を観察して発色物質の有無を調べることを含む方法。
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