JP2023537325A - 化合物を殺細菌活性についてスクリーニングし、細菌サンプルの感受性を決定するための方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、耐熱性ルシフェラーゼを用い、リアルタイムのバイオルミネセンス測定に基づいて化合物を殺細菌活性についてスクリーニングするための方法に関するものである。本発明はさらに、細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性を決定するための方法、及び殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を評価する方法に関する。
Description
本発明は、化合物を殺細菌活性についてスクリーニングするための、容易で、簡単で、信頼性が高く、非常に迅速な方法に関する。本発明はまた、細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性を決定するための、同様に容易で、簡単で、信頼性が高く、非常に迅速な方法に関する。最後に、本発明は、殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を評価するための迅速な方法に関する。
抗菌薬の創薬及び感受性試験においては、製薬業者からの化合物や溶液の膨大なライブラリーをリアルタイムで解析する能力が不可欠である。また、細菌感染症に罹患している患者の治療においては、入手可能で感染症に感受性のある殺細菌性化合物とその適切な最小発育阻止濃度を迅速に決定することが、感染症を食い止めるために極めて重要である。未曾有の細菌感染症のパンデミックなどの状況においては、有効な薬剤を迅速にスクリーニングすることが極めて重要である。
しかしながら、新規の有力な殺細菌性化合物をスクリーニングしたり、既知の抗生物質に対する細菌サンプルの感受性を試験したりするための現行の試験は、満足のいくものではない。特に、そのほとんどは煩雑で、結果が出るまでに何時間も要する。また、既知のアッセイのほとんどは、増殖中の細菌を使用してのみ実施可能であり、定常期又はバイオフィルムの細菌を使用することはできない。多数の患者を検査する場合、抗生物質への感受性試験は簡便で、迅速で、かつ信頼性の高い結果を得られるものでなければならない。
例えば、Lingら(Nature. 2015 Jan 22;517(7535):455-9)は、20時間のインキュベーションを必要とするステップを含む方法によって、10,000の細菌単離株からの抽出物を用い、それらの細菌の増殖を阻害する能力について試験している。この増殖阻害アッセイはまた、寒天プレート上で細菌を成長させ菌叢とすることを含む。そのため、このアッセイは非常に時間がかかり、増殖の定常期にある細胞やバイオフィルム内の細胞では、実施することができない。また、抗生物質の感受性試験も、ほとんどが時間のかかる細菌の増殖阻害アッセイに依存するものである。
しかしながら、新規の有力な殺細菌性化合物をスクリーニングしたり、既知の抗生物質に対する細菌サンプルの感受性を試験したりするための現行の試験は、満足のいくものではない。特に、そのほとんどは煩雑で、結果が出るまでに何時間も要する。また、既知のアッセイのほとんどは、増殖中の細菌を使用してのみ実施可能であり、定常期又はバイオフィルムの細菌を使用することはできない。多数の患者を検査する場合、抗生物質への感受性試験は簡便で、迅速で、かつ信頼性の高い結果を得られるものでなければならない。
例えば、Lingら(Nature. 2015 Jan 22;517(7535):455-9)は、20時間のインキュベーションを必要とするステップを含む方法によって、10,000の細菌単離株からの抽出物を用い、それらの細菌の増殖を阻害する能力について試験している。この増殖阻害アッセイはまた、寒天プレート上で細菌を成長させ菌叢とすることを含む。そのため、このアッセイは非常に時間がかかり、増殖の定常期にある細胞やバイオフィルム内の細胞では、実施することができない。また、抗生物質の感受性試験も、ほとんどが時間のかかる細菌の増殖阻害アッセイに依存するものである。
アデノシン-5’-三リン酸(ATP)は、重要な生体分子であり、その定量的な検出は、特に抗菌薬の発見や感受性試験の分野で重要であり、重要な開発の対象になっている。実際、細胞溶解に伴う細胞膜の破壊は、細胞内のATPストックの放出によって特徴づけられる。そのため、細胞培養培地中に放出されるATP量を測定することで、殺細菌性化合物による細菌細胞の溶解を測定することが可能なはずであることを提案する研究者も存在した。
これは2つのグループによって試みられてきた。90年代には、de Rautlin de la Royら(J. Biolumin. Chemilumin. 6, 193-201 (1991))が、ルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイを用いて抗生物質の殺細菌活性の動態を測定することを試みている。この試験において、抗生物質の殺細菌効果は徐々にしか検出されず、時には細菌サンプルへの添加後10時間経過しなければ検出されない。そのため、この試験は、新規の有力な殺細菌性化合物の迅速かつ効率的なスクリーニングには適していない。さらに、蒸留水に希釈する際に細菌を浸透圧ショックにかけるが、これは細菌膜を変化させ、抗生物質以外によるATP放出にもつながると予想されるため、結果が不明確となり、この試験は信頼できないものとなる。
これは2つのグループによって試みられてきた。90年代には、de Rautlin de la Royら(J. Biolumin. Chemilumin. 6, 193-201 (1991))が、ルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイを用いて抗生物質の殺細菌活性の動態を測定することを試みている。この試験において、抗生物質の殺細菌効果は徐々にしか検出されず、時には細菌サンプルへの添加後10時間経過しなければ検出されない。そのため、この試験は、新規の有力な殺細菌性化合物の迅速かつ効率的なスクリーニングには適していない。さらに、蒸留水に希釈する際に細菌を浸透圧ショックにかけるが、これは細菌膜を変化させ、抗生物質以外によるATP放出にもつながると予想されるため、結果が不明確となり、この試験は信頼できないものとなる。
最近では、Hellerら(2019. PLoS ONE 14(1): 1-13 (2019))が、細胞溶解により放出されるATPをバイオルミネセンス ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応により測定することを含むATP/OD600比法という方法に基づく細菌感受性試験を開示している。この方法で、著者らは、増殖期がほぼ終了し、細菌が定常期に達したときにのみ抗生物質を添加することを推奨している。定常期の細胞を用いるのは、この方法の感度が低いためである。定常期を待つまでに時間がかかるため、この提案される方法では時間がかかり過ぎる。さらに、国際的な抗生物質感受性試験ガイドラインでは、アミノグリコシドのような一部の抗生物質が、定常期の細胞に対して有効性が低いため、定常期の細胞の使用は推奨されていない。著者らはまた、細胞外ATP濃度の測定値を培養菌の光学濃度(OD)により調整することを推奨しているが、これは試験の信頼性を損なう可能性がある。さらに、この試験では、バイオルミネセンスを測定する前に、試験サンプルを氷上でしばらく静置するが、このステップは、試験サンプルに存在するATPの分解を誘発する可能性があり、これも試験の信頼性及び感度に影響する。実際、この方法ではシグナルが非常に弱く、アミノグリコシドであるゲンタマイシンに対する感受性菌の感受性の検出でさえも失敗している。さらに、試験サンプル中に存在するATPを測定する前に、サンプルから細菌を除去するために遠心分離のステップが採用されるが、これは細菌の細胞壁を変化させ、ATPをさらに放出させ、スクリーニング化合物に対するいくつかの細菌の測定感度を人為的に増加させる可能性がある。このため、提案された方法は時間がかかり過ぎるのに加え、感度及び信頼性が十分でない。
WO2019/162301は、第1及び第2のペプチドを含む医薬組成物に関する発明を開示している。第1のペプチドは、バクテリオシンPLNC8αβのペプチドである。また、PLNC8αβによって誘導される細胞溶解を実証するための、古典的なATP流出測定に基づく方法が開示されている。この方法は、28℃を超える温度では不安定な古典的なホタルルシフェラーゼを使用するものである。この不安定性は、MIC又は2×MICのペプチド濃度に対してATP放出がないことによって示されるように、測定試験の信頼性及び感度に影響を与える。
ATP流出測定における古典的なルシフェラーゼFLE-50の使用は、Lennart NILSSONによっても開示されている("New Rapid Bioassay of Gentamicin Based on Luciferase Assay of Extracellular ATP in Bacterial Cultures", ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY, vol. 14, no. 6, 1 January 1978)。以上のように、この不安定性により、高感度なATP測定は得られない。また、Nilssonによって開示された方法では、ATPの流出をリアルタイムで測定することが不可能である。すなわち、低い感度及びシグナルの振幅により、バイオルミネセンス測定を行うまでに最低でも1時間30分の遅延を余儀なくするため、この方法は最適ではない。
以上のことから、現在利用可能な殺細菌剤のスクリーニング方法や、既知の薬剤に対する細菌の感受性を試験する方法は、時間がかかり、感度や信頼性が低いものであるため、迅速性、感受性、信頼性が改善された方法に対するニーズが明らかに存在する。
本発明の文脈において、本発明者らは、ルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイを用いて、新規な候補殺細菌性化合物又は既知の抗生物質に曝露した後の生細菌からのATP又はそのアナログの流出をリアルタイムで検出する方法を開発した。なお、本発明の方法によって検出されるATP又はそのアナログの流出は、必ずしも細菌全体の細胞溶解や細菌細胞壁の破壊を伴う細胞溶解(βラクタム系などの一部の抗生物質で知られている現象)の結果ではないことに留意すべきである。以上説明したように、ATPは迅速に加水分解される脆弱な生体分子である。この不安定性は、ATP加水分解酵素が存在する可能性のある培養培地中では重要な意味を持つ。ルシフェラーゼとATPの反応を、菌体から離れた時点でリアルタイムにモニタリングすることは、ATPの分解を回避し、検出感受性を最大限に高め、測定の信頼性を保証するものである。また、リアルタイム測定の採用のため、細菌に物理的(高速遠心分離など)、化学的(浸透圧ショックなど)なストレスを与える必要がない。細菌は、単に600nmの最小光学密度(OD600)まで増殖し、ルシフェリン-ルシフェラーゼ試薬と、候補殺細菌性化合物又は既知の抗生物質と、を添加され、リアルタイムでバイオルミネセンスが測定されるため(図1参照)、細菌の細胞壁の変化や培地交換による細胞生理の変化(図4参照、このようにATPの人工的放出がもたらされる)により結果が歪められることはない。このように、リアルタイム測定の採用は、先行技術の方法と比較して、本発明による方法の感度及び信頼性を顕著に向上させるものである。
さらに、本発明者らは、ルシフェラーゼと、同じくルシフェラーゼによって光に変換されるATP又はそのアナログとの反応を、リアルタイムでモニタリングすることにより、抗生物質のファミリーごとに特徴的な時間的特徴及びATP漏出の振幅を初めて発見した(図8参照)。驚くべきことに、本発明者らは、最小発育阻止濃度(MIC)付近の濃度では、一般に抗生物質との接触後数分でATPの漏出が始まることを明らかにし(表2参照)、細菌が生きている間であっても、ATPの漏出は必ずしも細胞溶解の結果ではないことが見出された(図8参照)。この発見は、先行技術の方法よりもはるかに迅速で、一般にわずか数分後に結果が得られる方法の基礎となるものである。
さらに、本発明者らは、本方法が、精製形態(特に図8、10、11参照)としての、又は細菌上清などの複合混合物としての、広範囲の抗生物質に使用でき(図12参照)、また広範囲の細菌株(例えば多剤耐性細菌、図20参照)及び形態(浮遊細胞又はバイオフィルムなど、図8、20参照)に使用できることを明らかにした。
さらに、本発明者らは、本方法が、精製形態(特に図8、10、11参照)としての、又は細菌上清などの複合混合物としての、広範囲の抗生物質に使用でき(図12参照)、また広範囲の細菌株(例えば多剤耐性細菌、図20参照)及び形態(浮遊細胞又はバイオフィルムなど、図8、20参照)に使用できることを明らかにした。
全体として、本発明者らによって設計された方法は、このように非常に迅速で(一般に数分で十分であろう)、感度(MIC以下の感度)及び信頼性が高く、(試験する化合物/組成物及び細菌の種類について)広く適用できる。本方法はさらに、マイクロプレートで実施することができ、容易に自動化することができ、したがって産業的にも有用である。また、本方法は、超ハイスループットスクリーニング用のマイクロ流体ツールで実施することも可能である。したがって、本発明の方法は、創薬のための新規な候補殺細菌性化合物の大規模ライブラリーの試験や、細菌の耐性に関連する迅速な抗生物質感受性試験に適している。
最後に、本発明者らはまた、ルシフェラーゼとATP又はそのアナログとの反応をリアルタイムでモニタリングすることにより、抗生物質濃度を変化させても、抗生物質の添加からATP漏出の検出までのタイムラグを測定し、所定の細菌サンプルに対する化合物の最小阻害濃度(MIC)を迅速かつ確実に評価することができることを明らかにした(図22及び23を参照)。
第1の態様によれば、本発明はすなわち、化合物を殺細菌活性についてスクリーニングするための方法であって、
a)培養培地中に生細菌を含む1つ又は複数の試験細菌サンプルを用意することと、
b)前記試験細菌サンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
c)前記試験細菌サンプルに候補組成物を添加することと、
d)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び候補組成物が添加された試験細菌サンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)及びc)が実行された後の試験細菌サンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップd)において試験細菌サンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、ステップc)において試験細菌サンプルに添加された候補組成物が、殺細菌活性を有する少なくとも1つの化合物を含むことを示す、方法に関する。
a)培養培地中に生細菌を含む1つ又は複数の試験細菌サンプルを用意することと、
b)前記試験細菌サンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
c)前記試験細菌サンプルに候補組成物を添加することと、
d)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び候補組成物が添加された試験細菌サンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)及びc)が実行された後の試験細菌サンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップd)において試験細菌サンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、ステップc)において試験細菌サンプルに添加された候補組成物が、殺細菌活性を有する少なくとも1つの化合物を含むことを示す、方法に関する。
第2の態様によれば、本発明はまた、細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性を決定するための方法であって、
a)細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルを培養培地に接種し、任意に、サンプル中の細菌を増幅させることと、
b)ステップa)の細菌サンプルを、試験される既知の抗生物質の数と少なくとも同数のサンプルとなるよう、いくつかのサブサンプルに分割することと、
c)各サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
d)1つ又は複数のサブサンプルに既知の抗生物質の群又は抗生物質の組み合わせのそれぞれを添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び既知の抗生物質が添加されたサブサンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃の温度でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)、c)及びd)が実施された後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップe)においてサブサンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する細菌サンプルが、ステップd)においてサブサンプルに添加された既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す、方法に関する。
a)細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルを培養培地に接種し、任意に、サンプル中の細菌を増幅させることと、
b)ステップa)の細菌サンプルを、試験される既知の抗生物質の数と少なくとも同数のサンプルとなるよう、いくつかのサブサンプルに分割することと、
c)各サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
d)1つ又は複数のサブサンプルに既知の抗生物質の群又は抗生物質の組み合わせのそれぞれを添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び既知の抗生物質が添加されたサブサンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃の温度でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)、c)及びd)が実施された後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップe)においてサブサンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する細菌サンプルが、ステップd)においてサブサンプルに添加された既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す、方法に関する。
第3の態様によれば、本発明はまた、殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を評価するための方法であって、
a)培養培地中に生細菌を含む少なくとも1つの試験細菌サンプルを用意することと、
b)ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割することと、
c)前記サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
d)前記サブサンプルに様々な濃度の殺細菌性化合物を添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼと殺細菌性化合物の混合物が添加されたサブサンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することであって、ステップa)、b)、c)及びd)が行われた後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002である、測定することと、
f)試験した殺細菌性化合物の各濃度について、殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを測定することと、
g)殺細菌性化合物濃度の関数としてラグタイムを表すことと、
h)殺細菌性化合物濃度の関数として、ラグタイムの測定点にフィットする指数関数的減衰曲線を作成することと、
i)指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度を決定することと、
j)指数関数的減衰フィッティング曲線のラグタイム振幅を決定することと、
k)MICを評価することであって、MICが、
・指数関数的減衰フィッティング曲線上で、又は(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度と
の間に含まれるとして評価されることと
を含む、方法。
a)培養培地中に生細菌を含む少なくとも1つの試験細菌サンプルを用意することと、
b)ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割することと、
c)前記サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
d)前記サブサンプルに様々な濃度の殺細菌性化合物を添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼと殺細菌性化合物の混合物が添加されたサブサンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することであって、ステップa)、b)、c)及びd)が行われた後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002である、測定することと、
f)試験した殺細菌性化合物の各濃度について、殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを測定することと、
g)殺細菌性化合物濃度の関数としてラグタイムを表すことと、
h)殺細菌性化合物濃度の関数として、ラグタイムの測定点にフィットする指数関数的減衰曲線を作成することと、
i)指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度を決定することと、
j)指数関数的減衰フィッティング曲線のラグタイム振幅を決定することと、
k)MICを評価することであって、MICが、
・指数関数的減衰フィッティング曲線上で、又は(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度と
の間に含まれるとして評価されることと
を含む、方法。
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」(及び「comprise」及び「comprises」などのcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(及び「have」及び「has」などのhavingの任意の形態)、「包含する(including)」(及び「includes」及び「include」などのincludingの任意の形態)又は「含有する(containing)」(及び「contains」、「contain」などcontainingの任意の形態)は、オープンエンドであり、追加の記載されない要素又は方法ステップを除外しないことを意味する。「から本質的になる」という表現は、本質的な意味を持つ他の成分又はステップを除外することを意味する。したがって、記載された成分から本質的になる組成物は、微量成分、汚染物質及び薬学的に許容される担体を除外しないであろう。「からなる」とは、他の成分又はステップの微量要素以上のものを除外することを意味するものとする。本明細書において、用語「含む(comprising)」(又は「comprise」及び「comprises」などのその派生語のいずれか)が用いられるときは、本発明はまた、「含む(comprising)」(又は「comprise」及び「comprises」などのその派生語のいずれか)が、「から本質的になる」又は「からなる」で置き換えられる同じ実施形態にも関する。
化合物を殺細菌活性についてスクリーニングするための方法(スクリーニング方法)
上述のように、本発明者らは、ルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイを用いて、新規な候補殺細菌性化合物又は既知の抗生物質に曝露した後の生細菌からのATP又はそのアナログの流出をリアルタイムで検出する方法を開発した。本発明の方法は、非常に迅速(一般に数分で十分であろう)であり、(リアルタイム測定のおかげで、脆弱なATP分解による歪みが防止され、細菌細胞の物理的及び化学的ストレスがないため)感度及び信頼性が高く、また(組成物の種類及び試験される細菌に関して)広く適用できる。さらに、マイクロプレートに実装することにより、容易に自動化することができ、したがって工業的に有用であるか、又は超ハイスループットスクリーニングのためのマイクロ流体ツールに実装することができる。したがって、本発明の方法は、新規な候補殺細菌性化合物の大規模なライブラリーをスクリーニングすることを可能にする。
上述のように、本発明者らは、ルシフェリン-ルシフェラーゼアッセイを用いて、新規な候補殺細菌性化合物又は既知の抗生物質に曝露した後の生細菌からのATP又はそのアナログの流出をリアルタイムで検出する方法を開発した。本発明の方法は、非常に迅速(一般に数分で十分であろう)であり、(リアルタイム測定のおかげで、脆弱なATP分解による歪みが防止され、細菌細胞の物理的及び化学的ストレスがないため)感度及び信頼性が高く、また(組成物の種類及び試験される細菌に関して)広く適用できる。さらに、マイクロプレートに実装することにより、容易に自動化することができ、したがって工業的に有用であるか、又は超ハイスループットスクリーニングのためのマイクロ流体ツールに実装することができる。したがって、本発明の方法は、新規な候補殺細菌性化合物の大規模なライブラリーをスクリーニングすることを可能にする。
第1の態様によれば、本発明はすなわち、化合物を殺細菌活性についてスクリーニングするための方法であって、
a)培養培地中に生細菌を含む1つ又は複数の試験細菌サンプルを用意することと、
b) 試験細菌サンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
c)試験細菌サンプルに候補組成物を添加することと、
d)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び候補組成物が添加された試験細菌サンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)及びc)が実行された後の試験細菌サンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップd)において試験細菌サンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、ステップc)において試験細菌サンプルに添加された候補組成物が、殺細菌活性を有する少なくとも1つの化合物を含むことを示す、方法に関する。
a)培養培地中に生細菌を含む1つ又は複数の試験細菌サンプルを用意することと、
b) 試験細菌サンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
c)試験細菌サンプルに候補組成物を添加することと、
d)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び候補組成物が添加された試験細菌サンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)及びc)が実行された後の試験細菌サンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップd)において試験細菌サンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、ステップc)において試験細菌サンプルに添加された候補組成物が、殺細菌活性を有する少なくとも1つの化合物を含むことを示す、方法に関する。
ステップa):培養培地中の生細菌を含む少なくとも1つの試験細菌サンプルの提供
試験細菌サンプルの光学密度
本発明者らは、ATP漏出シグナルの振幅が、最終サンプル(ステップa)、b)及びc)が行われた後の試験細菌サンプル)中の培養培地中の生細菌(本明細書では「レポーター細胞」とも称する)の量に相関することを明らかにした。ATP漏出の検出のためには、細菌は、最終サンプル中の600nmにおける光学密度(OD600)が少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.015、さらに好ましくは少なくとも0.1であるものを用いなければならない。最初に、本発明者らは、黒色のマイクロプレートを用いて、最終OD600が0.3又は0.15ではATP漏出シグナルは許容できるが、最終OD600が0.015ではATP漏出シグナルは弱く、このようなマイクロプレートでは結果の信頼性が低く、最終OD600が0.0015ではATP漏出のシグナルは非常に弱く使用できないことを見出した。白色マイクロプレート(Greiner Bio-one、655075)を用いてスクリーニング法の感受性を向上させるための補助的なアッセイを行ったところ、本発明者らは、最終サンプル中の細菌濃度が非常に低くても、ATP漏出シグナルが許容できる場合があることを見出した。本発明者らはゆえに、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003のOD600で、ATP漏出シグナルが検出可能であることを見出した(図25)。したがって、ステップa)、b)及びc)が行われた後の試験細菌サンプル中の生細菌のOD600は、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.015、好ましくは0.0002~0.5、0.0003~0.5、0.0005~0.5、0.001~0.5、0.005~0.5、0.01~0.5、また0.015~0.5、0.03~0.5、0.05~0.5、又は0.1~0.5である。さらに、最終OD600が0.3又は0.15で得られる結果は特に満足できるものであるため、本発明のスクリーニング方法の好ましい実施態様に従うと、最終サンプル中の生細菌のOD600は、0.1~0.3、又は0.1~0.2で構成される。好ましくは、最終サンプル中の生細菌のOD600は、0.15である。
試験細菌サンプルの光学密度
本発明者らは、ATP漏出シグナルの振幅が、最終サンプル(ステップa)、b)及びc)が行われた後の試験細菌サンプル)中の培養培地中の生細菌(本明細書では「レポーター細胞」とも称する)の量に相関することを明らかにした。ATP漏出の検出のためには、細菌は、最終サンプル中の600nmにおける光学密度(OD600)が少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.015、さらに好ましくは少なくとも0.1であるものを用いなければならない。最初に、本発明者らは、黒色のマイクロプレートを用いて、最終OD600が0.3又は0.15ではATP漏出シグナルは許容できるが、最終OD600が0.015ではATP漏出シグナルは弱く、このようなマイクロプレートでは結果の信頼性が低く、最終OD600が0.0015ではATP漏出のシグナルは非常に弱く使用できないことを見出した。白色マイクロプレート(Greiner Bio-one、655075)を用いてスクリーニング法の感受性を向上させるための補助的なアッセイを行ったところ、本発明者らは、最終サンプル中の細菌濃度が非常に低くても、ATP漏出シグナルが許容できる場合があることを見出した。本発明者らはゆえに、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003のOD600で、ATP漏出シグナルが検出可能であることを見出した(図25)。したがって、ステップa)、b)及びc)が行われた後の試験細菌サンプル中の生細菌のOD600は、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.015、好ましくは0.0002~0.5、0.0003~0.5、0.0005~0.5、0.001~0.5、0.005~0.5、0.01~0.5、また0.015~0.5、0.03~0.5、0.05~0.5、又は0.1~0.5である。さらに、最終OD600が0.3又は0.15で得られる結果は特に満足できるものであるため、本発明のスクリーニング方法の好ましい実施態様に従うと、最終サンプル中の生細菌のOD600は、0.1~0.3、又は0.1~0.2で構成される。好ましくは、最終サンプル中の生細菌のOD600は、0.15である。
したがって、ステップa)の試験細菌サンプル中の生細菌の初期OD600(ステップb)及びc)を実行する前)は、0.03より高く、好ましくは0.05より高く、0.1より高く、より好ましくは0.3より高い。好ましくは、ステップb)で添加されるルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及びステップc)で添加される候補組成物の体積は、(ステップb)及びc)の後の)最終体積が、試験細菌サンプルの初期体積の1.5~3倍、例えば2倍になる。この場合、ステップa)の試験細菌サンプル中の生細菌の初期OD600は、したがって、0.0002より1.5~3倍(例えば、2倍)高く、好ましくは0.0003より高く、0.0005より高く、0.001より高く、0.005より高く、0.01より高く、0.015より高く、より好ましくは0.05より1.5~3倍(2倍など)高く、0.1より1.5~3倍(2倍など)高く、さらにより好ましくは0.15より1.5~3倍高くする。ステップb)及びc)で添加される必要量と、ステップd)で培養される最終サンプル中の生細菌の目標最終OD600に応じて、ステップa)の最初の試験細菌サンプルの初期OD600をどのようにするかは、当業者であれば容易に選択できるであろう。ステップb)及びc)における添加が、ステップa)の試験細菌サンプルの初期体積の2倍である最終体積をもたらすとき、ステップa)の試験細菌サンプル中の生細菌の初期OD600は、好ましくは少なくとも0.0004、少なくとも0.0006、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.1、より好ましくは0.2~0.6、又は0.2~0.4、最も好ましくは約0.3である。
本発明の文脈では、「600nmの光学密度(OD600)」という用語は、600nmの光学密度による細菌増殖の測定に関するものである。この測定は、吸光検出モードに基づき、基本的に、細菌のサンプルを通過する光の一部を測定する。溶液中の粒子は光を散乱させ、溶液中に粒子(細菌)が多く存在するほど、より多くの光が粒子によって散乱される。したがって、細菌の集団が複製されると、光の散乱が増大し、吸光度の測定値が増加する。同時にこれは、吸光モードが、吸収分子による光エネルギーの物理的な吸収を測定する代わりに、光散乱の程度を測定するためにのみ利用されることを意味する。OD600は、このように光散乱を測定するものであり、OD600値は、微生物の数に直接相関させることができる。
機械的及び化学的ストレスがないことが望ましい
さらに、本発明のスクリーニング方法は、好ましくは、生細菌の操作を避けることを強調することが重要である。特に、該方法は、好ましくは、生細菌の生理を撹乱する又は損傷を与える可能性のある化学的又は機械的な操作、すなわち、サンプル中の生細菌に化学的又は機械的ストレスを誘発する可能性のある操作を除外するものである。機械的・化学的ストレスは、殺細菌性化合物と同様に、細菌の構造、特に細菌膜とその機能にダメージを与える。そのため、以前に化学的及び/又は機械的ストレスが与えられた細菌の細胞を分析すると、測定された抗生物質化合物に対する細菌の感受性が人為的に高くなり、結果が歪んでしまう(図4参照)。
さらに、本発明のスクリーニング方法は、好ましくは、生細菌の操作を避けることを強調することが重要である。特に、該方法は、好ましくは、生細菌の生理を撹乱する又は損傷を与える可能性のある化学的又は機械的な操作、すなわち、サンプル中の生細菌に化学的又は機械的ストレスを誘発する可能性のある操作を除外するものである。機械的・化学的ストレスは、殺細菌性化合物と同様に、細菌の構造、特に細菌膜とその機能にダメージを与える。そのため、以前に化学的及び/又は機械的ストレスが与えられた細菌の細胞を分析すると、測定された抗生物質化合物に対する細菌の感受性が人為的に高くなり、結果が歪んでしまう(図4参照)。
機械的ストレスは、例えば、細菌サンプルの移送や保存(例えば、氷上保存)、又は遠心分離に供する際に、サンプル中の生細菌を物理的に操作することによって生じるストレスと定義され得る。緑膿菌(Pseudomonas Aeruginosa)のようないくつかの株は、遠心分離に敏感であることが明らかに示されている(Gilbert et al., 1991, Centrifugation injury of Gram-negative Bacteria)。したがって、殺細菌性化合物のスクリーニング方法に使用する細菌に機械的ストレスを与えるステップを含めることは、信頼性の低い結果をもたらす原因となり得る。
化学的ストレスとは、細菌の培養培地中に、生細菌とその環境との生理的バランスを変化させる濃度の試薬を添加することによって、細菌の周囲の溶質濃度を急激に変化させ、細胞膜を通過する水の動きを急激に変化させる(すなわち、浸透圧ショックを与える)ことなどを指す。例えば、培養培地中に含まれる細菌を蒸留水中で強く希釈することは、Raulin de la Royら(J. Biolumin. Chemilumin. 6, 193-201 (1991))の知見のように、結果として浸透圧ショックが生じ、細菌の構造、特に細菌膜とその機能を変化させ、抗生物質化合物に対する細菌の測定感度を人為的に増加させる可能性が生じる。
したがって、本発明のスクリーニング方法の一実施形態によれば、ステップa)において提供される試験サンプル中の生細菌は、ステップa)の前に、特に2時間未満、好ましくは4時間未満、より好ましくは6時間未満、機械的又は化学的ストレスを受けていない。具体的には、ステップa)において用意された試験サンプル中の生細菌は、好ましくは、遠心分離又は浸透圧ショックに供されていない。より具体的には、ステップa)において提供される試験サンプル中の生細菌は、ステップa)の前に、2時間未満、好ましくは4時間未満、より好ましくは6時間未満、遠心分離又は浸透圧ショックに供されていない。
より好ましい実施形態によれば、細菌サンプルは、本発明のスクリーニング方法の間、機械的又は化学的なストレスに供されない。
より好ましい実施形態によれば、細菌サンプルは、本発明のスクリーニング方法の間、機械的又は化学的なストレスに供されない。
細菌の試験サンプルに含まれる細菌の種類
上記で示したように、本発明のスクリーニング方法の利点は、広範囲な細菌株及び増殖状態に対して殺細菌性化合物をスクリーニングできることである。一実施形態によれば、該試験サンプル中の生細菌は、多剤耐性細菌を含む抗生物質耐性細菌、病原性細菌、浮遊性細胞及びバイオフィルム中の細菌の細胞からなる群から選択される。
本発明の文脈において、「抗生物質耐性細菌」という表現は、抗生物質の殺細菌効果及び/又は静菌効果に打ち勝つ能力を発達させた細菌株を指す。その結果、細菌は、殺細菌性及び/又は静菌性化合物の存在下でも死滅せず、増殖し続ける。
抗生物質耐性細菌は、1種類以上の抗生物質に耐性を示し得る。複数の抗生物質に耐性を有する細菌は、「多剤耐性細菌」と呼ばれる。
本発明の文脈において、用語「病原性細菌」とは、生体、特に動物、より詳細には哺乳類、さらに詳細にはヒトの対象に、損傷及び/又は病理を引き起こし得るすべての細菌株を指す。
さらに、本明細書で使用する場合、「浮遊性細胞」という用語は、懸濁液中で自由に流動する細菌に関するものである。浮遊性細胞は、自己産生されたポリマーマトリックスに包まれ、不活性表面又は生活表面に付着した細菌細胞の構造化されたコミュニティとして定義され得る「バイオフィルムの細胞」とは対照的である。
上記で示したように、本発明のスクリーニング方法の利点は、広範囲な細菌株及び増殖状態に対して殺細菌性化合物をスクリーニングできることである。一実施形態によれば、該試験サンプル中の生細菌は、多剤耐性細菌を含む抗生物質耐性細菌、病原性細菌、浮遊性細胞及びバイオフィルム中の細菌の細胞からなる群から選択される。
本発明の文脈において、「抗生物質耐性細菌」という表現は、抗生物質の殺細菌効果及び/又は静菌効果に打ち勝つ能力を発達させた細菌株を指す。その結果、細菌は、殺細菌性及び/又は静菌性化合物の存在下でも死滅せず、増殖し続ける。
抗生物質耐性細菌は、1種類以上の抗生物質に耐性を示し得る。複数の抗生物質に耐性を有する細菌は、「多剤耐性細菌」と呼ばれる。
本発明の文脈において、用語「病原性細菌」とは、生体、特に動物、より詳細には哺乳類、さらに詳細にはヒトの対象に、損傷及び/又は病理を引き起こし得るすべての細菌株を指す。
さらに、本明細書で使用する場合、「浮遊性細胞」という用語は、懸濁液中で自由に流動する細菌に関するものである。浮遊性細胞は、自己産生されたポリマーマトリックスに包まれ、不活性表面又は生活表面に付着した細菌細胞の構造化されたコミュニティとして定義され得る「バイオフィルムの細胞」とは対照的である。
いくつかの細菌属及び特にいくつかの細菌株は、特に医学的に興味深いものであり、したがって、本発明によるスクリーニング方法において好適に使用され得る。これらには、例えば、世界保健機関(WHO)によって定義される抗生物質耐性「優先病原体」のESKAPEグループが含まれる。ESKAPEは、以下のグラム陽性種及びグラム陰性種を設計するための頭字語である:エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanni)、緑膿菌、エンテロバクター(Enterobacter)属の各菌種。WHOはまた、ヒトの健康にとって最大の脅威となる12科の細菌のカタログを公表している。これらは以下の通りである:ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(クラリスロマイシン耐性)、カンピロバクター属種(Campylobacter spp.)(フルオロキノロン耐性)、サルモネラ属(Salmonellae)(フルオロキノロン耐性)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)(セファロスポリン耐性、フルオロキノロン耐性)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(ペニシリン非感受性)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(アンピシリン耐性)、赤痢菌属種(Shigella spp.)(フルオロキノロン耐性)。また、例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(staphylococci)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、多くのレンサ球菌属(Streptococcus)(肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)など)及びシュードモナス属(Pseudomonas)(緑膿菌など)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、セラチア菌(Serratia marcescens)、シトロバクター・フロインディイ(Citrobacter freundii)などが興味深いものである。
他の細菌属/株は、(例えば、病原性がなく、高い安全性のバイオコンテインメントを必要としないため)特に操作が容易であり、また、本発明によるスクリーニング方法において好ましく用い得る(一旦このような細菌を用いて新しい殺細菌性化合物が確認されると、病原性の有無を問わず、他の細菌に対する殺細菌効果が確認され得る)。これらには、大腸菌の非病原性株、レンサ球菌属、枯草菌(Bacillus subtilis)、弱毒化サルモネラ属株が挙げられる。
いくつかの細菌は、多くの抗生物質に特に感受性が高く、例えばグラム陽性株のルテウス菌(Micrococcus luteus)のように、抗菌性スクリーニングに特に有用であり得る。
いくつかの細菌は、多くの抗生物質に特に感受性が高く、例えばグラム陽性株のルテウス菌(Micrococcus luteus)のように、抗菌性スクリーニングに特に有用であり得る。
培養培地
上記のように、試験サンプルでは、生細菌が培養培地中に存在する。
該培養培地は、測定期間にわたって細菌細胞の生存能力を維持できるべきであるが、多くの異なる培養培地を使用することができ、当業者であれば、スクリーニング方法に用いる細菌レポーター細胞の種類に応じて、いずれの培地を選択できるかを理解するであろう。
特に、精製された化学物質(後述)をスクリーニングする場合には、富栄養培地(ルリアブロス(LB)、カチオン調整ミュラーヒントン(MH)など)、及びグルコースなどの炭素源が補充された最少培地(MOPS-グルコースなど)のいずれも用いることが可能である。
上記のように、試験サンプルでは、生細菌が培養培地中に存在する。
該培養培地は、測定期間にわたって細菌細胞の生存能力を維持できるべきであるが、多くの異なる培養培地を使用することができ、当業者であれば、スクリーニング方法に用いる細菌レポーター細胞の種類に応じて、いずれの培地を選択できるかを理解するであろう。
特に、精製された化学物質(後述)をスクリーニングする場合には、富栄養培地(ルリアブロス(LB)、カチオン調整ミュラーヒントン(MH)など)、及びグルコースなどの炭素源が補充された最少培地(MOPS-グルコースなど)のいずれも用いることが可能である。
しかしながら、細菌上清のような複雑な混合物をスクリーニングする場合、グルコースなどの炭素源が補充された最少培地(MOPS-グルコースなど)が好ましくは使用されるであろう。このことは、本発明者らが驚くべきことに、富栄養培地(例えばルリアブロス(LB))と細菌上清との組み合わせが、細菌レポーター細胞(図13及び14を参照)がない場合であっても、ルシフェリンからのルシフェラーゼによるバイオルミネセンスの発生を誘発したが、この効果が、グルコースが補充された最少培地(MOPS-グルコースなど、図15参照)を使用した場合には観察されないことを発見したことによるものである。
本発明の文脈において、「最少培地」とは、対象となる細菌の増殖に最低限必要なものを含む培地を指す。一般に、無機塩、炭素源、及び水のみを含む。グルコースなどの炭素源が補充される場合、本発明で使用され得る最少培地の例には、MOPS及びM9が含まれる。MOPS培地は、モルホリノプロパン酸スルホン酸カリウム、ハイドロリン酸カリウム、水及びチアミンの混合物を含み、好ましくは約pH7に調整され、これに他の成分(硫酸第一鉄、塩化アンモニウム、硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム)が添加される。培地の調製方法は、当業者であれば理解するであろう。本明細書に記載の最少培地(MOPS)は、Teknova,Inc 2290 Bert Drive Hollister、CA 95023 USAから市販品を購入できる。Teknovaはまた、LBなどの富栄養培地で得られるものと同様の高い増殖速度を再現するために濃縮された同じ最少培地を提供している。
最少培地を使用する場合、グルコースなどの炭素源が補充されることが好ましく、グルコースが0.4~2%含む濃度で使用される。
最少培地を使用する場合、グルコースなどの炭素源が補充されることが好ましく、グルコースが0.4~2%含む濃度で使用される。
本発明において、「富栄養培地」とは、細菌が最大限の速度で増殖することができる培地を指す。一般に、最少培地の成分に加えて、さらなる成分、具体的には塩化ナトリウム、複合栄養素(ペプチドの混合物(トリプトン)及び酵母エキスなど)を含む。本発明で使用し得る富栄養培地の例としては、ルリアブロス(LB)(溶原ブロス(LB)とも呼ばれる)、カチオン調整ミュラーヒントン(MH)などが挙げられる。LB培地は、主に細菌の増殖に使用される栄養豊富な培地である。その組成は、提供者によって若干異なる場合があるが、常に以下を含む:ペプチド及びカゼインペプトン、ビタミン(ビタミンBを含む)、微量元素(窒素、硫黄、マグネシウムなど)及びミネラル。好ましい実施形態によれば、高い再現性のため、カチオン調整ミュラーヒントン(MH)培地が使用される。これは、細菌膜の重要な構成要素であるマグネシウム及びカルシウムの調整されたレベルを含む。これは、Merck社から市販されており、牛肉エキス、カゼイン及びデンプンの酸加水分解物を含む。
ステップb):ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物の上記サンプルへの添加
「ルシフェラーゼ」とは、バイオルミネセンスを行う酸化酵素の総称である。ルシフェラーゼは、外部からの光源を必要としないが、基質となるルシフェリンの添加が必要である。ルシフェラーゼは、酸素分子とルシフェリンを結合させてオキシルシフェリンを形成する化学反応を促進させ、同時に光子を放出する。この反応は、アデノシン三リン酸(ATP)又はその特定のアナログ(ルシフェラーゼ及びデヒドロルシフェリンと弱く反応するジアデノシン四リン酸(Ap4A)など)によって提供されるエネルギーを必要とし(Garrido et al., J. Biochem. Biophys. Methods 30 (1995) 191-198)、光(バイオルミネセンス)を放出する。バイオルミネセンスは、ルシフェラーゼによって加水分解可能なATP及びATPアナログの濃度に比例し、したがって、この濃度を測定することができる。したがって、ルシフェラーゼは、細胞生存率アッセイ又はキナーゼ活性アッセイにおいて、細胞のATP及び特定のATPアナログのレベルを検出するために使用され得る。古典的に使用されるホタルルシフェラーゼは、ルシフェリンを基質として使用し、それは分子状酸素とATP(又は上記のような特定のATPアナログ)を利用する反応でオキシルシフェリンに酸化され、560nmの光を放出する。この反応の発生には、場合によってはマグネシウムイオンも必要となる(使用するルシフェラーゼ/ルシフェリンの特異的対に依存する)。酸素及びマグネシウムイオンは、ステップa)で添加された細菌サンプル中に既に存在しているので、殺細菌性化合物によるATPとATPアナログの漏出を測定するためには、ステップb)で添加するのはルシフェラーゼ及びルシフェリンだけでよい。
「ルシフェラーゼ」とは、バイオルミネセンスを行う酸化酵素の総称である。ルシフェラーゼは、外部からの光源を必要としないが、基質となるルシフェリンの添加が必要である。ルシフェラーゼは、酸素分子とルシフェリンを結合させてオキシルシフェリンを形成する化学反応を促進させ、同時に光子を放出する。この反応は、アデノシン三リン酸(ATP)又はその特定のアナログ(ルシフェラーゼ及びデヒドロルシフェリンと弱く反応するジアデノシン四リン酸(Ap4A)など)によって提供されるエネルギーを必要とし(Garrido et al., J. Biochem. Biophys. Methods 30 (1995) 191-198)、光(バイオルミネセンス)を放出する。バイオルミネセンスは、ルシフェラーゼによって加水分解可能なATP及びATPアナログの濃度に比例し、したがって、この濃度を測定することができる。したがって、ルシフェラーゼは、細胞生存率アッセイ又はキナーゼ活性アッセイにおいて、細胞のATP及び特定のATPアナログのレベルを検出するために使用され得る。古典的に使用されるホタルルシフェラーゼは、ルシフェリンを基質として使用し、それは分子状酸素とATP(又は上記のような特定のATPアナログ)を利用する反応でオキシルシフェリンに酸化され、560nmの光を放出する。この反応の発生には、場合によってはマグネシウムイオンも必要となる(使用するルシフェラーゼ/ルシフェリンの特異的対に依存する)。酸素及びマグネシウムイオンは、ステップa)で添加された細菌サンプル中に既に存在しているので、殺細菌性化合物によるATPとATPアナログの漏出を測定するためには、ステップb)で添加するのはルシフェラーゼ及びルシフェリンだけでよい。
本発明の文脈において、本発明者らは、まず、古典的に使用されているホタルルシフェラーゼ(Invitrogen Molecular Probes、A22066として参照)を用いて、富栄養培地及び最少培地でATP又はそのアナログを検出する能力を評価した。ルシフェリン/ルシフェラーゼ試薬を含む富栄養培地(ルリアブロス(LB))又は最少培地(グルコースが補充されたMOPS)にATP又はそのアナログを添加すると、発光が誘発された。最初に、本発明者らは、富栄養LB培地では試薬の安定性が比較的高いと判断し、ホタルルシフェラーゼをATPシグナルの検出に使用できる可能性があると結論付けた。このアッセイは、28℃で行った。しかしながら、同じ温度で、グルコースが補充された最少MOPS培地では、試薬は急速に失活し、得られたATPシグナルは不安定で、検出が困難であった。本発明者らは、通常細菌の増殖に使用される温度で、古典的に使用されるホタルルシフェラーゼがATPの高感度で信頼性の高い測定を可能にするか否かを決定するために、37℃の富栄養培地及び最少培地で補足的なアッセイを実施した。図24に示す結果は、37℃では、従来のホタルルシフェラーゼを用いた最少培地及び富栄養培地での信頼できる高感度のATP検出を得るのは最適でないことを示す。本発明者らは、驚くべきことに、この問題は、耐熱性ルシフェラーゼでは発生しないことを見出した。したがって、本発明のスクリーニング方法は、本方法のステップa)において用意されたサンプルに添加される耐熱性ルシフェラーゼを使用する。
本発明の文脈において、用語「耐熱性ルシフェラーゼ」は、30℃を超える温度での安定性が改善されたルシフェラーゼ酵素、特にホタルルシフェラーゼに関連する。特に、耐熱性ルシフェラーゼは、好ましくは、従来のルシフェラーゼと比較して、特にアクセッション番号AAA29795.1でGenBankリリース243に公表されているフォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis)の野生型ホタルルシフェラーゼと比較して、30℃超の温度、特に37℃での活性が改善されている。ルシフェラーゼの耐熱性の向上は、ルシフェラーゼのアミノ酸配列に種々の変異を挿入したり、種々のルシフェラーゼの配列を組み合わせてキメラ体を作製したりすることにより得ることができる。例えば、キッコーマン社の耐熱性ルシフェラーゼは、フォティヌス・ピラリスルシフェラーゼとゲンジボタル(Luciola cruciata)ルシフェラーゼの耐熱性変異体との遺伝子キメラ化と、触媒性能向上のための変異との組み合わせによって作製されている(Hirokawa et al., Biochimica et Biophysica Acta 1597 (2002) 271- 279)。安定性が改善された数種類の変異ルシフェラーゼが開示されており(例えば、EP0524448、US5229285A及びUS6074859(すべてキッコーマン株式会社)、Promega社製のNanoLuc(登録商標)(NLuc)(Hall et al., ACS Chem Biol. 2012 Nov 16;7(11):1848-57. doi: 10.1021/cb3002478、England et al., Bioconjug Chem. 2016 May 18; 27(5):1175-1187. doi:10.1021/acs.bioconjchem.6b00112)参照)、本発明のスクリーニング方法において用いることができる。
本発明のスクリーニング方法の一実施形態によれば、耐熱性ルシフェラーゼは、キッコーマン株式会社製の耐熱性ホタルルシフェラーゼ(例えば、EP052448A1又はUS5229285に開示されているもの、CheckLite AT100キットの耐熱性ホタルルシフェラーゼを含む)、又はPromega社製のルシフェラーゼNanoluc(「NLuc」ともいう)(Hall MP, Unch J, Binkowski BF, et al. Engineered luciferase reporter from a deep sea shrimp utilizing a novel imidazopyrazinone substrate. ACS Chem Biol. 2012;7(11):1848-1857. doi:10.1021/cb3002478参照、Nanolucの配列は図S6に開示されており、GenBankリリース243AF179290にアクセッション番号を有する)、又はスクリーニングに使用する培地で耐熱性の他のルシフェラーゼからなる群から選択される。特に、スクリーニングに使用する培地中でのルシフェラーゼの活性を試験する。好ましくは、耐熱性ルシフェラーゼは、キッコーマン株式会社からの耐熱性ホタルルシフェラーゼ(例えば、EP0524448A1、US522985A又はUS6074859に開示されているもので、US6074859の配列番号7に対応する、CheckLite AT100キットの耐熱性ホタルルシフェラーゼ(GenBankリリース243 AAE43251.1のアクセッション番号を有する)にT219I及びV239Iの置換を追加したもの)、又はPromega社製の改変ルシフェラーゼNanoLuc(登録商標)である。
本発明のスクリーニング方法において、ルシフェラーゼの耐熱性は、有利には、数種類の培地で試験を行うことを可能にし、長期間の反応をモニタリングする際にルシフェラーゼの分解を防ぎ、調製時の酵素の取り扱いを容易にする。
本明細書において、「ルシフェリン」とは、バイオルミネセンスを生じさせる生物に存在する化合物であって、ルシフェラーゼによる酸化後に発光するものの総称として使用される。ルシフェリンは、通常、酵素触媒による酸化を受け、得られた励起状態中間体が基底状態に崩壊することで発光する。このようにルシフェリンは、ルシフェラーゼ酵素の基質となる低分子化合物である。ルシフェリン(D-ルシフェリン及びその誘導体、CycLuc1、AkaLumine-HClなど、セレンテラジン(coelentarazin)及びその誘導体、ジフェニルテラジン及びセレノテラジンなど、フリマジン)及びその誘導体/アナログ(例えば、D-ルシフェリン誘導体/アナログ:CycLuc1及びAkaLumine-HCl、コエレンタラジン誘導体/アナログ:ジフェニルテラジン及びセレンオテラジン)には、様々な種類がある。また、ルシフェリン誘導体/アナログも使用することができる。特に、ルシフェラーゼ変異体と反応して599、607、675、706nmなどの560nm以外の波長で発光するルシフェリンアナログが作製されている(Jathoul et al., Angew Chem Int Ed Engl. 2014 Nov 24;53(48):13059-63. doi: 10.1002/anie.201405955)。アナログのAkaLumine-HClは、近赤外波長域(677nm)でバイオルミネセンスを生じさせる(Kuchimaru et al., Nat Commun. 2016 Jun 14;7:11856. doi: 10.1038/ncomms11856)。また他の新規ルシフェリンを操作されたルシフェラーゼと組み合わせた場合も、460nm(Hall et al., ACS Chem Biol. 2012 Nov 16;7(11):1848-57. doi: 10.1021/cb3002478)又は677nm(Yeh et al., Nat Methods.2017 Oct;14(10):971-974. doi: 10.1038/nmeth.4400)で光を生成する。したがって、様々なタイプのルシフェリン/ルシフェラーゼ反応を使用することができるが、これらの反応は、常に分子酸素及びATP又はそのアナログの存在を必要とする。本発明で使用できるルシフェリンの例としては、ルシフェラーゼが耐熱性であれば、任意のルシフェリン-ルシフェラーゼ対におけるルシフェリンアナログが含まれる。フリマジン-Nanolucのような対の例は、Yeh et al., Nat Methods. 2017 Oct;14(10):971-974. doi: 10.1038/nmeth.4400の表1に記載されている。
本明細書において、「ルシフェリン」とは、バイオルミネセンスを生じさせる生物に存在する化合物であって、ルシフェラーゼによる酸化後に発光するものの総称として使用される。ルシフェリンは、通常、酵素触媒による酸化を受け、得られた励起状態中間体が基底状態に崩壊することで発光する。このようにルシフェリンは、ルシフェラーゼ酵素の基質となる低分子化合物である。ルシフェリン(D-ルシフェリン及びその誘導体、CycLuc1、AkaLumine-HClなど、セレンテラジン(coelentarazin)及びその誘導体、ジフェニルテラジン及びセレノテラジンなど、フリマジン)及びその誘導体/アナログ(例えば、D-ルシフェリン誘導体/アナログ:CycLuc1及びAkaLumine-HCl、コエレンタラジン誘導体/アナログ:ジフェニルテラジン及びセレンオテラジン)には、様々な種類がある。また、ルシフェリン誘導体/アナログも使用することができる。特に、ルシフェラーゼ変異体と反応して599、607、675、706nmなどの560nm以外の波長で発光するルシフェリンアナログが作製されている(Jathoul et al., Angew Chem Int Ed Engl. 2014 Nov 24;53(48):13059-63. doi: 10.1002/anie.201405955)。アナログのAkaLumine-HClは、近赤外波長域(677nm)でバイオルミネセンスを生じさせる(Kuchimaru et al., Nat Commun. 2016 Jun 14;7:11856. doi: 10.1038/ncomms11856)。また他の新規ルシフェリンを操作されたルシフェラーゼと組み合わせた場合も、460nm(Hall et al., ACS Chem Biol. 2012 Nov 16;7(11):1848-57. doi: 10.1021/cb3002478)又は677nm(Yeh et al., Nat Methods.2017 Oct;14(10):971-974. doi: 10.1038/nmeth.4400)で光を生成する。したがって、様々なタイプのルシフェリン/ルシフェラーゼ反応を使用することができるが、これらの反応は、常に分子酸素及びATP又はそのアナログの存在を必要とする。本発明で使用できるルシフェリンの例としては、ルシフェラーゼが耐熱性であれば、任意のルシフェリン-ルシフェラーゼ対におけるルシフェリンアナログが含まれる。フリマジン-Nanolucのような対の例は、Yeh et al., Nat Methods. 2017 Oct;14(10):971-974. doi: 10.1038/nmeth.4400の表1に記載されている。
本発明のスクリーニング方法に用いられるルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの組み合わせは、選択されたルシフェリンが、選択された耐熱性ルシフェラーゼにとって適切な、或いは最適な基質であるよう選択される。適切な(ルシフェリン/耐熱性ルシフェラーゼ)の組み合わせの例としては、(ホタルルシフェリン/耐熱性ホタルルシフェラーゼ)、フリマジン-Nlucルシフェラーゼ、フリマジン-Antaresルシフェラーゼ、ジフェニルテラジン(DTZ)-teLuc、ジフェニルテラジン(DTZ)-Antares2、セレンテラジン(STZ)-yeLucが挙げられる。
ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼを適切な比率で混合してなる溶液を含むキットは、当技術分野で入手可能である。そのようなキットの例としては、キッコーマン社から入手可能なCheckLite AT100キット、Promega社製のNanolucが挙げられる。
ステップb)において添加されるルシフェリン及びルシフェラーゼの濃度又はストックルシフェリン及びルシフェラーゼ溶液の対応する希釈倍率は、候補組成物がステップc)においてさらに添加された後の最終濃度が、選択した市販のルシフェリン/ルシフェラーゼキットに付属する説明書に記載された推奨最終ルシフェリン及びルシフェラーゼ濃度のいずれかに対応するか、又はこの目的で当技術分野において既知の従来の方法を使用して選択されたルシフェリン/ルシフェラーゼの最適濃度に予備的測定に基づいて適合するよう、当業者が調整するであろう。
耐熱性ルシフェラーゼキット「CheckLite AT100」(キッコーマン社)又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する本発明のスクリーニング方法の好ましい実施形態(実施例に記載)において、ステップa)~c)が(すべての試薬を含む最終サンプルにおいて)行われた後のルシフェリンとルシフェラーゼの混合物は、キッコーマン社のキットから当技術分野及びメーカーのガイドラインに従って調製される最初のストック溶液と比較して6~9倍に希釈することが望ましい。
ステップc):上記少なくとも1つのサンプルへの候補組成物の添加
培養培地中の生細菌を含むサンプルにルシフェリン/耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加するステップb)の後、ステップc)において候補組成物(殺細菌効果についてスクリーニングした少なくとも1つの化合物を含む)を添加する。
本発明の方法により、構造及び起源が異なる複数種の候補組成物をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法の一実施形態によれば、候補組成物は、精製された化合物である。この精製化合物は、化学化合物であっても生物学的化合物であってもよい。
本発明の文脈において、「精製化合物」とは、目的とする化学物質を夾雑物や汚染物質から物理的に分離して得られる化合物に関するものである。本発明の方法によってスクリーニングされた精製化合物は、公知の精製方法のいずれか1つによって得られ得る。精製化合物は、候補組成物の少なくとも90%w/w、好ましくは少なくとも95%w/w、少なくとも96%w/w、少なくとも97%w/w、少なくとも98%w/w、又は少なくとも99%w/wを表す。
培養培地中の生細菌を含むサンプルにルシフェリン/耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加するステップb)の後、ステップc)において候補組成物(殺細菌効果についてスクリーニングした少なくとも1つの化合物を含む)を添加する。
本発明の方法により、構造及び起源が異なる複数種の候補組成物をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法の一実施形態によれば、候補組成物は、精製された化合物である。この精製化合物は、化学化合物であっても生物学的化合物であってもよい。
本発明の文脈において、「精製化合物」とは、目的とする化学物質を夾雑物や汚染物質から物理的に分離して得られる化合物に関するものである。本発明の方法によってスクリーニングされた精製化合物は、公知の精製方法のいずれか1つによって得られ得る。精製化合物は、候補組成物の少なくとも90%w/w、好ましくは少なくとも95%w/w、少なくとも96%w/w、少なくとも97%w/w、少なくとも98%w/w、又は少なくとも99%w/wを表す。
本明細書において、「化合物」という用語は、2種類以上の異なる原子(化学元素)が一定の化学量論的割合で存在する物質を意味する。本発明の方法によってスクリーニングされる化学化合物は、天然物由来、すなわち自然界にそのまま存在するものであっても、化学合成によって得られた人工的なものであってもよい。
本明細書で使用する場合、「生物学的化合物」という用語は、有機化合物、すなわち炭素を含む化合物を意味する。生物学的化合物は、生物から得られても、化学合成によって合成されてもよい。本発明の方法の好ましい実施形態では、候補組成物に含まれる生物学的化合物は、DNA(一本鎖DNA、二本鎖DNA、ヘアピンDNA、線形又は環状DNAなどを含む任意のタイプのDNA)、RNA(mRNA、miRNA、siRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、ヘアピンRNAなどを含む任意のタイプのRNA)、タンパク質(酵素、抗体、毒素など)、ペプチド、ホルモン、代謝物、微生物(ウイルス、特にファージを含む)、から選択され得る。本発明の方法の好ましい実施形態では、候補組成物に含まれる生物学的化合物は、ファージである。ここで、「ファージ」又は「バクテリオファージ」という用語は、細菌に感染し、細菌内で複製するウイルスに関するものである。
別の実施形態によれば、本発明の方法のステップc)において添加される候補組成物は、複合混合物、好ましくは細菌上清又は抽出物である。
本明細書で使用する場合、「生物学的化合物」という用語は、有機化合物、すなわち炭素を含む化合物を意味する。生物学的化合物は、生物から得られても、化学合成によって合成されてもよい。本発明の方法の好ましい実施形態では、候補組成物に含まれる生物学的化合物は、DNA(一本鎖DNA、二本鎖DNA、ヘアピンDNA、線形又は環状DNAなどを含む任意のタイプのDNA)、RNA(mRNA、miRNA、siRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、ヘアピンRNAなどを含む任意のタイプのRNA)、タンパク質(酵素、抗体、毒素など)、ペプチド、ホルモン、代謝物、微生物(ウイルス、特にファージを含む)、から選択され得る。本発明の方法の好ましい実施形態では、候補組成物に含まれる生物学的化合物は、ファージである。ここで、「ファージ」又は「バクテリオファージ」という用語は、細菌に感染し、細菌内で複製するウイルスに関するものである。
別の実施形態によれば、本発明の方法のステップc)において添加される候補組成物は、複合混合物、好ましくは細菌上清又は抽出物である。
本発明の文脈において、用語「細菌上清」は、細菌培養物の沈降、沈殿又は遠心分離によって堆積した固体状の細菌物質の上にある液体に関する。したがって、細菌上清は、培養培地に加えて、培養された細菌によって分泌された生成物を含む。さらに、用語「細菌抽出物」は、細菌培養物から1つ又は複数の細菌成分(タンパク質、脂質、代謝物及び/又は糖を含む)を抽出することによって得られる生成物に関するものである。好ましくは、細菌抽出物を本発明のスクリーニング方法に使用する場合、スクリーニングを開始する前に、抽出物中に存在する可能性のあるATPを加水分解する。この不活性化は、当該技術分野で知られている異なる様式で行うことができる。例えば、ATPは、細菌サンプルを37~50℃の温度で加熱することにより不活性化してもよい。当業者であれば、次の測定で試験される細菌抽出物の他の化合物を変化させることなく、ATPを不活性化するよう、加熱温度を決定することができるであろう。スクリーニングされた化合物を添加する前にサンプル中に存在するATPを不活性化するための別の方法としては、ATPを消化することができる酵素の使用が挙げられる。例えば、ATPアーゼ(ATPをADP(アデノシン二リン酸)に変換し、それをAMP(アデノシン一リン酸)に変換する)やアデノシン一リン酸デアミナーゼ(アミノ基を除去する)などが挙げられる。一般に、酵素によるATPの消化後、スクリーニング対象化合物を添加した後に放出されるATPを消化しないように、これらの酵素を被検サンプルから除去すべきである。そのためには、上記で開示したキッコーマン株式会社のキットで使用されているような界面活性剤を使用することができる。また、これらの酵素は、濾過により除去してもよい。タンパク質の濾過では、従来から用いられている任意の方法を用い得る。特に、上清の濾過には、本発明で使用する限外濾過装置(VivaSpinTM 500 GE HealthCare)を使用し得る。
本発明の方法の実施形態において、候補組成物は、ステップc)におけるその添加の前に、好ましくは最大15000ダルトン、好ましくは2000~15000ダルトン、3000~10000ダルトン、4000~8000ダルトン、例えば5000ダルトンで構成されるカットオフを有する膜を使用して濾過される。このような濾過ステップは、候補組成物が、細菌上清又は細菌抽出物のような複合混合物である場合に、特に有用である。実際、本発明者らは、細菌上清中に存在する大きな分子が、ルシフェラーゼがATP又はそのアナログをバイオルミネセンスに変換する反応を妨害し、5000Daのカットオフを有する膜による細菌上清の以前の濾過が、ルシフェラーゼによるATP又はそのアナログのバイオルミネセンスへの最適な変換を回復することを示している(図19bを参照)。したがって、候補組成物が細菌上清又は細菌抽出物のような複合組成物である場合、ステップc)におけるその添加の前に、好ましくは最大15000ダルトンの、好ましくは2000~15000ダルトン、3000~10000ダルトン、4000~8000ダルトン、例えば5000ダルトンで構成されるカットオフを有する膜で濾過する。
いずれにしても、候補組成物が少なくとも1つの殺細菌性化合物を含む場合、ATPの漏出をもたらすと予想される濃度で添加されることが好ましい。
いずれにしても、候補組成物が少なくとも1つの殺細菌性化合物を含む場合、ATPの漏出をもたらすと予想される濃度で添加されることが好ましい。
殺細菌性化合物とみなされる化合物は、一般に、少なくとも0.002μg/mL、最大でも1024μg/mLのMICを有する。したがって、候補組成物(特に精製された化合物を含むとき)は、好ましくは、ステップc)において、ステップd)における最終濃度(ルシフェリン及び耐熱性ルシフェラーゼの混合物と候補組成物の両方の試験細菌サンプルへの添加後)が少なくとも0.002μg/mL、好ましくはステップd)の開始時における候補組成物の濃度が0.002μg/mL~1024μg/mLとなる濃度で、添加されるであろう。
好ましくは、ステップa)、b)及びc)が行われた後、生細菌、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び候補組成物について上記に開示された好ましい濃度を考慮して、
・生細菌のOD600は、少なくとも0.1であり、好ましくは0.1~0.3の間、より好ましくは0.1~0.2の間に含まれ、特に0.15である。
・ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である)。
・耐熱性ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である)。及び/又は
・候補組成物の濃度は、少なくとも0.002μg/mL、好ましくは0.002μg/mL~1024μg/mLである。
・生細菌のOD600は、少なくとも0.1であり、好ましくは0.1~0.3の間、より好ましくは0.1~0.2の間に含まれ、特に0.15である。
・ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である)。
・耐熱性ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である)。及び/又は
・候補組成物の濃度は、少なくとも0.002μg/mL、好ましくは0.002μg/mL~1024μg/mLである。
ステップd):サンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃でインキュベートし、リアルタイムでバイオルミネセンスを測定する(測定ステップ)
ステップb)及びc)の後、サンプルは次にステップd)の間、20~60℃(ルシフェラーゼの熱安定性パラメータと一致して選択する温度)、好ましくは30~40℃、より好ましくは35~37℃の温度でインキュベートされる。このような条件は、殺細菌性化合物の非存在下でサンプルの細菌を生存させるために実に適切な条件である。このようにして、候補組成物中の殺細菌性化合物の存在に起因するATPの漏出のみが検出される。これらの温度条件は、本発明のスクリーニング方法の好ましい実施形態に従って使用される耐熱性ルシフェラーゼに対して最適であると考えられるが、温度は、各ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致するよう適合させることが可能である。
ステップb)及びc)の後、サンプルは次にステップd)の間、20~60℃(ルシフェラーゼの熱安定性パラメータと一致して選択する温度)、好ましくは30~40℃、より好ましくは35~37℃の温度でインキュベートされる。このような条件は、殺細菌性化合物の非存在下でサンプルの細菌を生存させるために実に適切な条件である。このようにして、候補組成物中の殺細菌性化合物の存在に起因するATPの漏出のみが検出される。これらの温度条件は、本発明のスクリーニング方法の好ましい実施形態に従って使用される耐熱性ルシフェラーゼに対して最適であると考えられるが、温度は、各ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致するよう適合させることが可能である。
このステップの間、バイオルミネセンスはリアルタイムで測定される。測定されるバイオルミネセンスの増加が検出されることは、ステップc)においてサンプルに添加された候補組成物が、殺細菌活性を有する少なくとも1つの化合物を含むことを示す。
バイオルミネセンスは、そのような測定を行うために当業者に知られている任意の手段によってリアルタイムで測定され得る。特に、バイオルミネセンスは、以下のいくつかの例のようなルミノメーターと呼ばれる器具の群から選択される手段によって測定され得る:単一管ルミノメーター(Luminescencer Octa、ATTO、Lumat 3、Berthold Technologies、Sirius L、TiterTek Bertholdなど)、多管ルミノメーター(AutoLumat LB 953、Berthold Technologies)、リアルタイム培養用ルミノメーター(Kronos Dio、ATTO)、ハイスループット型スクリーニングシステム(FDSS7000EX、浜松)、特にマイクロタイタープレートを用いたリーダー(例えば、InfinitePro200、TECAN、FDSS/RayCatcher、浜松、Plate Chameleon V、Hidex、Synergy H1、BioTec)など。
本明細書で使用する「リアルタイムで測定する」とは、時間の関数としてのシグナルの変化の記録を十分な時間分解能で提供するために、同じサンプルの複数の測定を所定の期間(測定期間)中に実施することを意味する。この期間は、20分~180分、好ましくは20分~60分、より好ましくは15分~40分とし得る。測定期間の持続時間に応じて、個々のサンプルは、20~200回、より好ましくは20~75回、さらに好ましくは15~50回測定し得る。上記に示したように、本発明のスクリーニング方法の主な利点は、測定がリアルタイムで行われることである(すなわち、サンプルの複数の測定が短時間の間に行われ得、これにより、最大の検出感度、十分な時間分解能での、時間の関数としてのシグナルの変化の記録が得られ、測定値の信頼性が保証される)。1回の測定は、0.5~5秒の間、特に1~3秒の間、より特に1~2秒の間に含まれ得る。同じ個別のサンプルの2つの測定間の時間間隔は、1秒~100秒の間、具体的には1秒~90秒の間、より具体的には10秒~80秒の間又は10秒~60秒の間に含まれ得る。複数の個別サンプルからなるマイクロプレートと、すべてのマイクロプレートウェルを(すべて同時にではなく)順次に測定する測定装置を使用する場合、同じ個別サンプルの2つの測定間の時間間隔は、測定されるサンプルの総数に依存することになる。しかしながら、Tecan Infinite M200 Proプレートリーダーにおいて、1回の測定と次のサンプルへの移動の持続時間は0.2秒より短くできないことを考慮すると、同じ個々のサンプルの2回の測定間の時間間隔は、完全な96ウェルのマイクロプレートでは20秒、384ウェルのマイクロプレートでは30秒より短くすべきではない。これらのデータに基づいて、当業者は、他の種類のプレートリーダーが使用される場合、同じ個々のサンプルの2つの測定の間の時間間隔を計算することができるであろう。
一実施形態によれば、すべてのサンプルの2回の測定の間に、測定されたサンプルは、その内容物を均質化するために穏やかな撹拌に付される。撹拌のパラメータは、当業者が、自らの一般的な知識に基づいて、及び/又は、いくつかの従来の試験を行った後に、決定することができる。特に、撹拌のパラメータのうち、振とうの様式、振幅及び振動数を決定することが必要である。
一実施形態によれば、すべてのサンプルの2回の測定の間に、測定されたサンプルは、その内容物を均質化するために穏やかな撹拌に付される。撹拌のパラメータは、当業者が、自らの一般的な知識に基づいて、及び/又は、いくつかの従来の試験を行った後に、決定することができる。特に、撹拌のパラメータのうち、振とうの様式、振幅及び振動数を決定することが必要である。
一実施形態によれば、サンプルがマイクロプレート内にある場合、振とうのモードは、軌道振とう又は直線振とう、横方向振とう又はX-Y軸振とうから選択され得る。撹拌の振幅は、0.1mm~10mm、好ましくは1mm~5mm、より好ましくは、約3mmで構成され得る。振動数は、50rpm~500rpm、好ましくは100rpm~300rpm、より好ましくは200rpm~250rpmから選択し得る。
本発明のスクリーニング方法の好ましい実施形態では、サンプルがマイクロプレート内にある場合、撹拌は以下のパラメータで行われる:振とうモード:軌道、振幅:3mm、振動数:218.3rpm。
本発明者らは、十分な濃度の殺細菌性化合物の存在下で、ATP又はそのアナログの漏出が数分以内に始まる可能性があることを示したことから、ステップd)は、好ましくは、ステップc)が行われた直後に、すなわち、候補組成物(又はいくつかの陰性及び陽性対照のそれぞれとしての培養培地又は既知の殺細菌性化合物)が細菌サンプル、ルシフェリン及び耐熱ルシフェラーゼの混合物に添加されるとすぐに開始される。
本発明のスクリーニング方法の好ましい実施形態では、サンプルがマイクロプレート内にある場合、撹拌は以下のパラメータで行われる:振とうモード:軌道、振幅:3mm、振動数:218.3rpm。
本発明者らは、十分な濃度の殺細菌性化合物の存在下で、ATP又はそのアナログの漏出が数分以内に始まる可能性があることを示したことから、ステップd)は、好ましくは、ステップc)が行われた直後に、すなわち、候補組成物(又はいくつかの陰性及び陽性対照のそれぞれとしての培養培地又は既知の殺細菌性化合物)が細菌サンプル、ルシフェリン及び耐熱ルシフェラーゼの混合物に添加されるとすぐに開始される。
上記から明らかなように、本発明によるスクリーニング方法は、細菌サンプルを用意し(ステップa))、さらなる成分を添加し(ステップb)及びc))、ステップd)において最終サンプルのインキュベーション中にリアルタイムでバイオルミネセンスを測定するだけである。したがって、本方法は、細菌サンプルに化学的(水中での過酷な希釈を行わない)又は機械的(遠心分離を行わない)ストレスを誘発するような細菌サンプルの取り扱いや、ATP又はそのアナログを分解するような待機ステップを一切必要としない。このため、本発明のスクリーニング方法は、より迅速で、より高感度かつより信頼性の高いものとなる。
ステップの順序
まず、ステップa)が行われる。
ステップb)及びc)は、ステップa)の後、ステップd)の前に実施される。ただし、ステップa)とd)の間に行うことを条件として、ステップb)とc)は(ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼの混合物と候補組成物が予め混合されていれば)、ステップc)の前にステップb)を、ステップb)の前にステップc)を、又はステップb)とc)を同時に行うなど、いかなる順序で行っても良い。
まず、ステップa)が行われる。
ステップb)及びc)は、ステップa)の後、ステップd)の前に実施される。ただし、ステップa)とd)の間に行うことを条件として、ステップb)とc)は(ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼの混合物と候補組成物が予め混合されていれば)、ステップc)の前にステップb)を、ステップb)の前にステップc)を、又はステップb)とc)を同時に行うなど、いかなる順序で行っても良い。
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、ステップc)は、ATP流出のリアルタイム測定を改善するために、ステップb)の後又はそれと同時に行われる。実際、ステップc)がステップb)の前に行われる場合、ルシフェラーゼ/ルシフェリンが添加される前にATP流出が始まり、その結果、ATP流出の初期段階が見逃される可能性がある。より好ましくは、ステップc)は、ステップb)の後、好ましくはステップb)の2~15分後、より好ましくはステップb)の3~10分後、さらに好ましくはステップb)の4~6分後、特に約5分後に実施される。ステップb)とc)の間のこの遅延は、ルシフェラーゼ/ルシフェリン混合物が、細菌の培養物中に存在し得、それにより、ステップd)の間のバイオルミネセンスシグナルの最初の読み取りに影響を与えるかも知れないATPの痕跡を消費することを可能にする。
それにもかかわらず、ステップb)の前にステップc)を行う場合、ステップb)は、ステップc)の後できるだけ早く、例えば、ステップc)の後1分未満、好ましくは30秒未満に行うべきである。
陰性及び陽性対照
スクリーニング方法の信頼性を向上させるために、該スクリーニング方法は、好ましくは、陰性及び/又は陽性対照サンプルにおけるバイオルミネセンスもリアルタイムで測定する。好ましくは、該方法は、特にステップc)の最後に、試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼとの混合物、及び候補組成物からなる一組のスクリーニングサンプルについて、以下について、さらにリアルタイムでバイオルミネセンスを測定する:
・試験菌サンプル、ルシフェリン及び耐熱性ルシフェラーゼの混合物を含むが、候補組成物も既知の殺細菌性組成物も含まない少なくとも1つの陰性対照サンプル、及び/又は
・試験菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の殺細菌性組成物を含む、少なくとも1つの陽性対照サンプル。
スクリーニング方法の信頼性を向上させるために、該スクリーニング方法は、好ましくは、陰性及び/又は陽性対照サンプルにおけるバイオルミネセンスもリアルタイムで測定する。好ましくは、該方法は、特にステップc)の最後に、試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼとの混合物、及び候補組成物からなる一組のスクリーニングサンプルについて、以下について、さらにリアルタイムでバイオルミネセンスを測定する:
・試験菌サンプル、ルシフェリン及び耐熱性ルシフェラーゼの混合物を含むが、候補組成物も既知の殺細菌性組成物も含まない少なくとも1つの陰性対照サンプル、及び/又は
・試験菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の殺細菌性組成物を含む、少なくとも1つの陽性対照サンプル。
陰性対照サンプルは、殺細菌効果のある化合物を含まないはずであるため、陰性対照サンプルでのバイオルミネセンスの測定がないことが予想され、実験が信頼できるものであり、かつ、候補組成物を含む任意のスクリーニングサンプルで測定されたバイオルミネセンスの増加が、実際に候補組成物における少なくとも1つの殺細菌性化合物の存在を示し、偽陽性の結果でないことを確認することができる。
陽性対照サンプルは、既知の殺細菌効果を有する化合物又はATPを含むと想定され、該陽性対照サンプルにおけるバイオルミネセンスの増加が期待されるため、実験が信頼できるものであり、かつ、候補組成物を含むスクリーニングサンプルで測定されたバイオルミネセンスの増加がないことは、実際に候補組成物に少なくとも1つの殺細菌性化合物がないことを示し、偽陰性の結果ではないと確認することができる。さらに、バイオルミネセンスの増加が陽性対照サンプルとスクリーニングサンプルの両方で測定される場合、両方のサンプルで測定されたバイオルミネセンスの比較は、試験濃度における候補組成物の殺細菌力についての考察を与えることとなる。
陽性対照サンプルは、既知の殺細菌効果を有する化合物又はATPを含むと想定され、該陽性対照サンプルにおけるバイオルミネセンスの増加が期待されるため、実験が信頼できるものであり、かつ、候補組成物を含むスクリーニングサンプルで測定されたバイオルミネセンスの増加がないことは、実際に候補組成物に少なくとも1つの殺細菌性化合物がないことを示し、偽陰性の結果ではないと確認することができる。さらに、バイオルミネセンスの増加が陽性対照サンプルとスクリーニングサンプルの両方で測定される場合、両方のサンプルで測定されたバイオルミネセンスの比較は、試験濃度における候補組成物の殺細菌力についての考察を与えることとなる。
マイクロプレートでのスクリーニング方法の実施
好ましい実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、マイクロプレートで行われる。マイクロプレートのウェルにさらなる成分を同時に添加できる装置や、マイクロプレートバイオルミネセンスリーダーが当技術分野では多く存在するため、マイクロプレートを用いることは特に実用的であり、本方法を容易に自動化することが可能となる。
本実施形態において、マイクロプレートは、スクリーニング方法において古典的に使用される任意のマイクロプレートであり得る。特に、マイクロプレートは、プラスチック又はポリスチレンで製造され得る。さらに、マイクロプレートは、発光検出性を向上させるために、二酸化チタンを添加することにより白色に着色し得る。好ましい実施形態によれば、マイクロプレートは黒色又は暗色ではなく、より好ましくは、マイクロプレートは明色(例えば、ライトグレー、アイボリー、ライトベージュなど)であり、さらに好ましくは、マイクロプレートは白色である。明色のマイクロプレート(好ましくは白色)を使用すると、光を反射させ、一方、暗い色(黒色など)は放出された光の一部を吸収するため、試験サンプル中の細菌の最終OD600に基づく感受性の観察された差を説明することができる。
好ましい実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、マイクロプレートで行われる。マイクロプレートのウェルにさらなる成分を同時に添加できる装置や、マイクロプレートバイオルミネセンスリーダーが当技術分野では多く存在するため、マイクロプレートを用いることは特に実用的であり、本方法を容易に自動化することが可能となる。
本実施形態において、マイクロプレートは、スクリーニング方法において古典的に使用される任意のマイクロプレートであり得る。特に、マイクロプレートは、プラスチック又はポリスチレンで製造され得る。さらに、マイクロプレートは、発光検出性を向上させるために、二酸化チタンを添加することにより白色に着色し得る。好ましい実施形態によれば、マイクロプレートは黒色又は暗色ではなく、より好ましくは、マイクロプレートは明色(例えば、ライトグレー、アイボリー、ライトベージュなど)であり、さらに好ましくは、マイクロプレートは白色である。明色のマイクロプレート(好ましくは白色)を使用すると、光を反射させ、一方、暗い色(黒色など)は放出された光の一部を吸収するため、試験サンプル中の細菌の最終OD600に基づく感受性の観察された差を説明することができる。
本発明のスクリーニング方法に用いられるマイクロプレートは、スクリーニングする候補組成物の数に応じて、6、12、24、48、96、384、1536ウェルなど、様々な数のウェルを有することができる。該ウェルは、平底、丸底又はV字底を有し得る。各ウェルの総量(ウェルの上端まで)及び推奨作業体積(こぼれ落ちたり、ウェル間の汚染を防ぐために製造者が推奨する最大体積)は、マイクロプレートのウェル数によって異なるであろう。特に、96ウェルマイクロプレートは一般的に25μL~200μLの間に含まれる推奨作業体積を有し、384ウェルマイクロプレートは一般的に5μL~80μLの間に含まれる推奨作業体積を有する。
ほとんどの場合、多くの候補組成物がスクリーニングされることになり、したがって、本発明のスクリーニング方法に使用するための好ましいマイクロプレートは、96又は384ウェルのような多数のウェルを有し、それぞれ25μL~200μL及び5μL~80μLの推奨作業体積/ウェルを有している。
好ましくは、ステップc)の終了時に、マイクロプレートは、
i)試験細菌サンプル、ルシフェリンと熱性ルシフェラーゼの混合物、並びに候補組成物を含む少なくとも1つのスクリーニングウェル、
ii)試験菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を含むが、候補組成物も既知の殺細菌性組成物も含まない少なくとも1つの陰性対照ウェル、及び/又は
iii)試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の殺細菌性組成物又はATPを含む、少なくとも1つの陽性対照ウェル
を含む。
好ましくは、ステップc)の終了時に、マイクロプレートは、
i)試験細菌サンプル、ルシフェリンと熱性ルシフェラーゼの混合物、並びに候補組成物を含む少なくとも1つのスクリーニングウェル、
ii)試験菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を含むが、候補組成物も既知の殺細菌性組成物も含まない少なくとも1つの陰性対照ウェル、及び/又は
iii)試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の殺細菌性組成物又はATPを含む、少なくとも1つの陽性対照ウェル
を含む。
好ましくは、マイクロプレートは、ステップc)の終了時に、上記で定義した少なくとも1つのスクリーニングウェルi)、上記で定義した少なくとも1つの陰性対照ウェルii)、及び上記で定義した少なくとも1つの陽性対照ウェルiii)、を含む。また、マイクロプレートは、同じ成分を有する複数のウェルを含み得る。特に、候補組成物の殺細菌効果を様々な濃度で試験するため、及び/又は結果の信頼性を向上させるために同じ濃度で測定を再現する(二重又は三重)ために、細菌サンプルとルシフェリン及び耐熱ルシフェラーゼの混合物を含むいくつかの異なるウェルに同じ候補組成物を添加し得る。
別の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法は、超ハイスループットスクリーニングのためのマイクロ流体ツールにおいても実施し得る。
別の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法は、超ハイスループットスクリーニングのためのマイクロ流体ツールにおいても実施し得る。
細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性を決定するための方法(抗生物質感受性の決定方法)
また、本発明者らは、本発明のスクリーニング方法の原理に基づいて、細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性をリアルタイムで決定する方法を開発した。この方法の目的は、試験サンプル中の病原性細菌に対して効率的な殺細菌効果を示す抗生物質を臨床的に迅速に決定することである。
また、本発明者らは、本発明のスクリーニング方法の原理に基づいて、細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性をリアルタイムで決定する方法を開発した。この方法の目的は、試験サンプル中の病原性細菌に対して効率的な殺細菌効果を示す抗生物質を臨床的に迅速に決定することである。
したがって、第2の態様によれば、本発明は、細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性を決定するための方法であって、
a)細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルを培養培地に接種し、任意に、サンプル中の細菌を増幅させることと、
b)ステップa)の細菌サンプルを、試験される既知の抗生物質の数と少なくとも同数のサンプルとなるよう、いくつかのサブサンプルに分割することと、
c)各サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
d)1つ又は複数のサブサンプルに既知の抗生物質の群のそれぞれを添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び既知の抗生物質が添加されたサブサンプルを20~60℃(ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致するよう選択された温度)、好ましくは35~37℃の温度でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)、c)及びd)が実施された後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップe)においてサブサンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する細菌サンプルが、ステップd)においてサブサンプルに添加された既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す、方法に関する。
a)細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルを培養培地に接種し、任意に、サンプル中の細菌を増幅させることと、
b)ステップa)の細菌サンプルを、試験される既知の抗生物質の数と少なくとも同数のサンプルとなるよう、いくつかのサブサンプルに分割することと、
c)各サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加することと、
d)1つ又は複数のサブサンプルに既知の抗生物質の群のそれぞれを添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び既知の抗生物質が添加されたサブサンプルを20~60℃(ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致するよう選択された温度)、好ましくは35~37℃の温度でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定することと
を含み、
ステップa)、b)、c)及びd)が実施された後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップe)においてサブサンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する細菌サンプルが、ステップd)においてサブサンプルに添加された既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す、方法に関する。
ステップa):細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルを培養培地に接種し、任意に、サンプル中の細菌を増幅させること
本発明の抗生物質感受性の決定方法のステップa)は、細菌感染症に罹患している対象に由来する、予め得られたサンプルを用いて行われる。前記サンプルは、具体的には、血液サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、糞便サンプル、便サンプル、喀痰サンプル、気管支肺胞洗浄液サンプル、気管内吸引サンプル、口腔咽頭又は鼻咽頭サンプル、皮膚サンプル、傷サンプル、体液(例えば、脳脊髄液、胆汁液、胸水)、膣又は腹腔膿瘍分泌物又は組織サンプルであり得る。
本発明の抗生物質感受性の決定方法のステップa)は、細菌感染症に罹患している対象に由来する、予め得られたサンプルを用いて行われる。前記サンプルは、具体的には、血液サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、糞便サンプル、便サンプル、喀痰サンプル、気管支肺胞洗浄液サンプル、気管内吸引サンプル、口腔咽頭又は鼻咽頭サンプル、皮膚サンプル、傷サンプル、体液(例えば、脳脊髄液、胆汁液、胸水)、膣又は腹腔膿瘍分泌物又は組織サンプルであり得る。
ステップa)では、前記サンプルを培養培地に接種する。前記培養培地は、試験中、細菌細胞の生存能力を維持できるものであることが好ましい。かかる培地は、当該技術分野において周知であり、特に、本発明のスクリーニング方法に関して定義され、上記で開示されたように、富栄養培地(カチオン調整ミュラーヒントン(MH)及び溶原ブロス(LB)等)、及びグルコースなどの炭素源が補充された最少培地(MOPS-グルコース等)が挙げられる。抗生物質感受性試験のための国際的なガイドラインにおける参照培地は、非選好性生物の試験のための非補充カチオン調整MHブロス、及び選好性生物の試験のためのMH-F(5%の機械的に脱線維したウマの血液と20mg/Lのβ-NADが補充されたカチオン調整MHブロス)である。EUCASTは、欧州臨床微生物学・感染症学会(ESCMID)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)の後援のもと、定期的に更新されるガイドラインを提供している。
必要に応じて、サンプルに含まれる細菌は、本発明に従う殺細菌性化合物のスクリーニング方法の文脈で本明細書で開示するように、ステップd)の終了時(ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物と既知の抗生物質の両方を添加した後)の最終OD600が、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.015、好ましくは0.0002~0.5、0.0003~0.5、0.0005~0.5、0.001~0.5、0.005~0.5、0.01~0.50.015~0.5、0.1~0.5、0.1~0.3、さらに好ましくは0.1~0.2、特に0.15と、十分な600nmでの光学密度(OD600)に達するよう増幅される。好ましくは、ステップc)及びd)において添加された体積が約2の希釈倍率をもたらす(すなわち、両方の添加後の体積が、ステップb)におけるサブサンプルの初期体積の約2倍である)とき、病原細菌は、OD600が、少なくとも0.0004、少なくとも0.0006、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、好ましくは0.0004~0.6、0.0006~0.6、0.001~0.6、0.002~0.6、0.01~0.6、0.03~0.6、0.1~0.6、0.2~0.6、より好ましくは0.2~0.4、最も好ましくは約0.3に達するように増幅される。培養培地中の細菌の増幅は、当該技術分野において公知の任意の方法に従って行うことができる。
本発明のスクリーニング方法としての、抗生物質感受性決定方法は、好ましくは、試験サンプル中の病原性細菌に対して、その生理機能を乱したり、損傷を与えたりするような、化学的又は機械的操作、すなわち、サンプル中の生細菌に化学的又は機械的ストレスを誘発するような操作の一切を除外するものである。したがって、本発明の抗生物質感受性決定方法の一実施形態によれば、ステップa)における試験サンプルの細菌は、特に細菌の構造及び/又は細菌膜及びその機能を損傷する可能性のある機械的(特に遠心分離)又は化学的(特に浸透圧ショック)ストレスに曝されていない。機械的ストレス及び化学的ストレスは、本発明のスクリーニング方法について上記で定義した通りである。
本発明の抗生物質感受性決定方法のいくつかの実施形態において、細菌サンプル中に存在する細菌の種類が未知であっても、これは本発明の抗生物質感受性決定方法の実施を妨げない。次いで、いくつかの異なるクラスの抗生物質が、細菌サンプルの感受性について試験され得る。
他の実施形態では、細菌サンプル中に存在する細菌のタイプ(種又は少なくとも属)は、他の分析方法から既知である。これは、細菌サンプル中に存在するタイプの非耐性細菌に対して有効であることが当該技術分野で知られている、特定のクラスの抗生物質の試験に有利であり得る。具体的には、細菌のいくつかの種及び属は、動物、より詳細にはヒトを含む哺乳動物における細菌感染症に特に関連することが知られており、特に医学的に興味深いものである。したがって、かかる細菌は、好ましくは、本発明による抗生物質感受性決定方法において試験され得る。これらには、例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、結核菌、多くのレンサ球菌属(肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌など)及びシュードモナス属(緑膿菌など)、エンテロコッカス・フェカリス、大腸菌、ミラビリス変形菌、セラチア菌、シトロバクター・フロインディイなどが含まれる。また、世界保健機関(WHO)が定義する抗生物質耐性「優先病原体」であるESKAPEグループも非常に興味深い。ESKAPEは、以下のグラム陽性種及びグラム陰性種を意味するための頭字語である:エンテロコッカス・フェシウム、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、エンテロバクター属の各菌種。WHOは、ヒトの健康にとって最大の脅威となる12科の細菌のカタログを公表している。これらは以下の通りである:ヘリコバクター・ピロリ(クラリスロマイシン耐性)、カンピロバクター属(フルオロキノロン耐性)、サルモネラ属(フルオロキノロン耐性)、淋菌(セファロスポリン耐性、フルオロキノロン耐性)、肺炎レンサ球菌(ペニシリン非感受性)、インフルエンザ菌(アンピシリン耐性)、赤痢菌属種(フルオロキノロン耐性)。
ステップb):ステップa)の細菌サンプルを、試験される既知の抗生物質の数と少なくとも同数のサンプルとなるよう、いくつかのサブサンプルに分割すること
本発明の抗生物質感受性決定方法のステップb)では、ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割し、その数は試験される既知の抗生物質の数に少なくとも相当する。すべてのサブサンプルは、好ましくは同量の培養培地を含み、少なくとも0.1、好ましくは0.15~0.5、より好ましくは約0.3の同じOD600を有する。
本発明の抗生物質感受性決定方法のステップb)では、ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割し、その数は試験される既知の抗生物質の数に少なくとも相当する。すべてのサブサンプルは、好ましくは同量の培養培地を含み、少なくとも0.1、好ましくは0.15~0.5、より好ましくは約0.3の同じOD600を有する。
ステップc):各サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加すること
本発明の抗生物質感受性決定方法は、本発明のスクリーニング方法と同じ原理、すなわち、殺細菌性化合物に曝された細菌が漏出したATP又はそのアナログをルシフェラーゼによってバイオルミネセンスに変換することに基づいて行われるものである。したがって、本発明の第2の態様による抗生物質感受性決定方法においても、本発明のスクリーニング方法の文脈で上述したのと同じ耐熱性ルシフェラーゼ及びルシフェリンを、同じ条件で使用し得る。
本発明の感受性検出方法の一実施形態によれば、ステップd)の前に、短いプレインキュベーションステップ(3~10分、例えば3、4、5、6、7、8分、特に4~6分、好ましくは5分)を、インキュベーション温度に徐々に達するように、かつ(抗生物質の添加前にルシフェラーゼによる変換によって)既に存在している可能性のある細胞外ATPを除去するために、実施する。
本発明の抗生物質感受性決定方法は、本発明のスクリーニング方法と同じ原理、すなわち、殺細菌性化合物に曝された細菌が漏出したATP又はそのアナログをルシフェラーゼによってバイオルミネセンスに変換することに基づいて行われるものである。したがって、本発明の第2の態様による抗生物質感受性決定方法においても、本発明のスクリーニング方法の文脈で上述したのと同じ耐熱性ルシフェラーゼ及びルシフェリンを、同じ条件で使用し得る。
本発明の感受性検出方法の一実施形態によれば、ステップd)の前に、短いプレインキュベーションステップ(3~10分、例えば3、4、5、6、7、8分、特に4~6分、好ましくは5分)を、インキュベーション温度に徐々に達するように、かつ(抗生物質の添加前にルシフェラーゼによる変換によって)既に存在している可能性のある細胞外ATPを除去するために、実施する。
ステップd):少なくとも1つのサブサンプルに既知の抗生物質の群のそれぞれを添加すること
ステップc)でルシフェリン/耐熱性ルシフェラーゼを添加した後、ステップd)において、細菌サンプルの感受性を決定するために、少なくとも1つのサブサンプルに試験された既知の抗生物質の群の各抗生物質を添加する。
少なくとも一部の細菌(すなわち、非耐性細菌)に対して殺細菌効果(すなわち、細菌を殺す感受性)を有することが知られている任意の抗生物質は、感受性について試験され、したがってステップd)において少なくとも1つのサブサンプルに添加され得る。好ましくは、感受性のために試験される抗生物質は、以下からなる群から選択される既知の殺細菌性抗生物質である:
・アミノグリコシド系(ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ネチルミシンなど)。
・ペナム系(ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリンなど)を含むβラクタム系、カルバペナム系、クラバム系(クラブラン酸など)、ペネム系、カルバペナム系、セフェム系(セファレキシン、セフポドキシムなど)、カルバセフェム系、オキサセフェム系、モノバクタム系。
・フルオロキノロン系を含むキノロン系(オフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンなど)。
・ポリペプチド(ポリミキシンBなど);糖ペプチド及びリポ糖ペプチド(バンコマイシン、テイコプラニン、オリタバンシン、ダルババンシン、テラバンシンなど)。
・トリメトプリム単独又はスルファメトキサゾールとの併用
トリメトプリムは、富栄養培地において殺細菌性を示す。200μg/mL以上超の濃度では、この薬剤がルシフェラーゼ反応を阻害することを発明者らが見出したことから、この抗生物質による結果は注意して分析する必要がある。
・オキサゾリジノン系、リネゾリド(通常静菌剤に分類されるが、殺細菌作用を有することがある)、テディゾリド。
・マクロライド系では、エリスロマイシン、テリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシンが殺細菌・静菌作用を有すると報告されている。
ステップc)でルシフェリン/耐熱性ルシフェラーゼを添加した後、ステップd)において、細菌サンプルの感受性を決定するために、少なくとも1つのサブサンプルに試験された既知の抗生物質の群の各抗生物質を添加する。
少なくとも一部の細菌(すなわち、非耐性細菌)に対して殺細菌効果(すなわち、細菌を殺す感受性)を有することが知られている任意の抗生物質は、感受性について試験され、したがってステップd)において少なくとも1つのサブサンプルに添加され得る。好ましくは、感受性のために試験される抗生物質は、以下からなる群から選択される既知の殺細菌性抗生物質である:
・アミノグリコシド系(ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ネチルミシンなど)。
・ペナム系(ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリンなど)を含むβラクタム系、カルバペナム系、クラバム系(クラブラン酸など)、ペネム系、カルバペナム系、セフェム系(セファレキシン、セフポドキシムなど)、カルバセフェム系、オキサセフェム系、モノバクタム系。
・フルオロキノロン系を含むキノロン系(オフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンなど)。
・ポリペプチド(ポリミキシンBなど);糖ペプチド及びリポ糖ペプチド(バンコマイシン、テイコプラニン、オリタバンシン、ダルババンシン、テラバンシンなど)。
・トリメトプリム単独又はスルファメトキサゾールとの併用
トリメトプリムは、富栄養培地において殺細菌性を示す。200μg/mL以上超の濃度では、この薬剤がルシフェラーゼ反応を阻害することを発明者らが見出したことから、この抗生物質による結果は注意して分析する必要がある。
・オキサゾリジノン系、リネゾリド(通常静菌剤に分類されるが、殺細菌作用を有することがある)、テディゾリド。
・マクロライド系では、エリスロマイシン、テリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシンが殺細菌・静菌作用を有すると報告されている。
公知の殺細菌性抗生物質のうち、本発明の抗生物質感受性判定方法によって細菌サンプルの感受性が決定される抗生物質が選択される好ましいリストとしては、以下のものが挙げられる:アモキシシリン、アモキシシリン-クラブラン酸、アンピシリン、チカルシリン、ピペラシリン-タゾバクタム、エルタペネム、セフォキシチン、セフィキシム、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフタジジム、ゲンタマイシン、アミカシン、ナリジクス酸、オフロキサシン、シプロフロキサシン、ホスホマイシン及びトリメトプリム-サルファメトキサゾール。
一実施形態によれば、本発明の感受性判定方法はまた、既知の抗生物質の組み合わせの感受性を判定するためにも実施し得る。例えば、かかる抗生物質の組み合わせは、1つ又は複数の細菌によって引き起こされる疾患を治療するために通常組み合わせて使用される(同時に又は順次投与される)抗生物質に対応するものである。
また、あまり好ましくはないが、本発明の抗生物質感受性検出方法は、少なくとも一部の細菌に対して静菌効果を有することが知られている抗生物質(すなわち、細菌を殺すことなく、細菌の成長及び増殖を阻止する抗生物質)の試験にも実施することができる。実際、本発明者らによって得られたデータは、静菌性化合物の存在下で細菌によってATP又はアナログが漏出しないことを示しているが、一部の化合物は、低濃度で静菌性、高濃度で殺細菌性である可能性がある。少なくとも一部の細菌には静菌性を示すことが知られている抗生物質が、別の細菌株や高濃度では殺細菌性を示すことがある。本発明の抗生物質感受性決定方法において試験され得る、主に静菌剤として知られるそのような抗生物質は、具体的には、マクロライド系(アジスロマイシン、エリスロマイシン、テリスロマイシン、ロキシスロマイシンなど)、オキサゾリジノン系(リネゾリドなど)、スルホンアミド系、テトラサイクリン系(ドキシサイクリンなど)からなる群から選択され得る。
ステップd)の終了時(すなわち、反応の全成分が添加された後)、各サブサンプル中の試験済み抗生物質の最終濃度は、2倍連続希釈(20の値)として、好ましくは0.002μg/mL~1024μg/mLの間に含まれる。簡略化のため、2倍連続希釈によって得られる濃度の範囲は、使用する培養培地中の既知の感受性細菌株に対する既知の抗生物質のMICの1/500~1000/1、好ましくは1/4~4/1で構成することができ、1024μg/mL未満とすることが好ましい。様々な培養培地における既知の抗生物質のMICは、当技術分野で周知であるか、又は当業者によるルーチン的な実験によって容易に決定することができる。
好ましくは、ステップd)の終わりに(すなわち、反応の全成分が添加された後に):
・生細菌のOD600は、少なくとも0.1であり、好ましくは0.1~0.3、より好ましくは0.1~0.2、特に0.15で構成する。
・ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である);
・耐熱性ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である);及び/又は
・既知の抗生物質の濃度は、0.002μg/mL~1024μg/mL、好ましくは、使用する培養培地中の既知の感受性細菌株に対する既知の抗生物質のMICの1/4~4/1であり、好ましくは1024μg/mL未満に維持される。
上記のルシフェリン及びルシフェラーゼ溶液の希釈の値は、ルシフェリン/ルシフェラーゼキットに付属の説明書によって、調整することができる。
・生細菌のOD600は、少なくとも0.1であり、好ましくは0.1~0.3、より好ましくは0.1~0.2、特に0.15で構成する。
・ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である);
・耐熱性ルシフェリンの溶液は、ルシフェリンメーカーの推奨する濃度又は予備実験に基づいて最適な濃度に希釈される(キッコーマン社の「CheckLite AT100」キット又はNanoLuc(登録商標)(NLuc)を使用する場合は6倍~9倍である);及び/又は
・既知の抗生物質の濃度は、0.002μg/mL~1024μg/mL、好ましくは、使用する培養培地中の既知の感受性細菌株に対する既知の抗生物質のMICの1/4~4/1であり、好ましくは1024μg/mL未満に維持される。
上記のルシフェリン及びルシフェラーゼ溶液の希釈の値は、ルシフェリン/ルシフェラーゼキットに付属の説明書によって、調整することができる。
ステップe):撹拌下、20~60℃、好ましくは35~37℃の温度でサブサンプルをインキュベートし、リアルタイムでバイオルミネセンスを測定すること(測定ステップ)
サブサンプルを20~60℃(ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致して選択される温度)、好ましくは30~40℃、より好ましくは35~37℃で撹拌下でのインキュベートにより、リアルタイムでバイオルミネセンスを測定することを含む、本発明の抗生物質感受性決定方法の測定ステップe)は、本発明のスクリーニング方法の測定ステップd)に対応する。
サブサンプルを20~60℃(ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致して選択される温度)、好ましくは30~40℃、より好ましくは35~37℃で撹拌下でのインキュベートにより、リアルタイムでバイオルミネセンスを測定することを含む、本発明の抗生物質感受性決定方法の測定ステップe)は、本発明のスクリーニング方法の測定ステップd)に対応する。
したがって、スクリーニング方法の測定ステップd)について上記で提供されたすべての技術的特徴及び技術的定義は、本発明の抗生物質感受性決定方法の測定ステップe)に適用され得る。
特に、バイオルミネセンスは、前述したようにリアルタイムで測定される。サブサンプルで測定されるバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する細菌サンプルが、ステップc)においてサブサンプルに添加された既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す。
特に、バイオルミネセンスは、前述したようにリアルタイムで測定される。サブサンプルで測定されるバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する細菌サンプルが、ステップc)においてサブサンプルに添加された既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す。
ステップの順序
ステップa)を第一に行い、ステップb)を第二に行う。
ステップc)とd)は、ステップa)とb)の後、かつステップe)の前に実施される。ただし、ステップb)とe)の間に行うことを条件として、ステップc)とd)は、(ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼと既知の抗生物質の混合物が予め混合されていれば)ステップd)の前にステップc)を、ステップc)の前にステップd)を、又はステップc)とd)を両方同時に行うなど、いずれの順序で行っても良い。
ステップa)を第一に行い、ステップb)を第二に行う。
ステップc)とd)は、ステップa)とb)の後、かつステップe)の前に実施される。ただし、ステップb)とe)の間に行うことを条件として、ステップc)とd)は、(ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼと既知の抗生物質の混合物が予め混合されていれば)ステップd)の前にステップc)を、ステップc)の前にステップd)を、又はステップc)とd)を両方同時に行うなど、いずれの順序で行っても良い。
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、ステップd)は、ATP流出のリアルタイム測定を改善するために、ステップc)の後又はそれと同時に行われる。実際、ステップd)がステップc)の前に行われる場合、ルシフェラーゼ/ルシフェリンが添加される前にATP流出が始まり、その結果、ATP流出の初期段階が見逃される可能性がある。好ましくは、ステップd)は、ステップc)と同時に、又はステップc)の後に実施される。より好ましくは、ステップd)は、ステップc)の後、好ましくはステップc)の2~15分後、より好ましくはステップc)の3~10分後、さらに好ましくはステップc)の4~6分後、特にステップc)の約5分後に実施される。ステップc)とd)の間のこの遅延は、ルシフェラーゼ/ルシフェリン混合物が、細菌の培養物中に存在し得、それにより、ステップd)の間のバイオルミネセンスシグナルの最初の読み取りに影響を与えるかも知れないATPの痕跡を消費することを可能にする。
それにもかかわらず、ステップc)の前にステップd)を行う場合、ステップc)は、ステップd)の後できるだけ早く、例えば、ステップd)の後1分未満、好ましくは30秒未満に行うべきである。
それにもかかわらず、ステップc)の前にステップd)を行う場合、ステップc)は、ステップd)の後できるだけ早く、例えば、ステップd)の後1分未満、好ましくは30秒未満に行うべきである。
陰性及び陽性対照
抗生物質感受性決定方法の信頼性を向上させるために、上記抗生物質感受性決定方法はまた、陰性及び/又は陽性対照サンプルにおけるバイオルミネセンスをリアルタイムで測定することも好ましい。
陰性対照サンプルの第1のタイプは、ステップd)の終わり(すなわち、インキュベーション及びリアルタイムバイオルミネセンス測定の直前)に、細菌サブサンプルの代わりに培養培地、ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼの混合物、及び既知の抗生物質を含むサンプルである。実際、細菌のサンプルがない場合、バイオルミネセンスは期待できない。
陰性対照サンプルの第2のタイプは、ステップd)の終わり(すなわち、インキュベーション及びリアルタイムバイオルミネセンス測定の直前)に、細菌サブサンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物の代わりに培養培地、及び既知の抗生物質を含むサンプルである。実際、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物がない場合、バイオルミネセンスは期待できない。
陰性対照サンプルの第3のタイプは、ステップd)の最後(すなわち、インキュベーション及びリアルタイムのバイオルミネセンス測定の直前)に、細菌サブサンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の抗生物質の代わりに培養培地を含むサンプルである。実際、抗生物質がない場合、バイオルミネセンスは期待できない。
既知の抗生物質に対する細菌サンプルの感受性が不明であるので、従来の陽性対照(細菌に対して殺細菌的であることが知られている化合物を用いたもの)は不可能である。代わりに、例えば純粋なATPを用いた代替的な陽性対照を任意に使用し得る。この場合、ATPは抗生物質の代わりに添加され、バイオルミネセンスの測定はその直後に行われる。当業者であれば、製造業者のガイドライン(例えば5~50nMの範囲)から、使用すべきATPの濃度を知ることができるであろう。
抗生物質感受性決定方法の信頼性を向上させるために、上記抗生物質感受性決定方法はまた、陰性及び/又は陽性対照サンプルにおけるバイオルミネセンスをリアルタイムで測定することも好ましい。
陰性対照サンプルの第1のタイプは、ステップd)の終わり(すなわち、インキュベーション及びリアルタイムバイオルミネセンス測定の直前)に、細菌サブサンプルの代わりに培養培地、ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼの混合物、及び既知の抗生物質を含むサンプルである。実際、細菌のサンプルがない場合、バイオルミネセンスは期待できない。
陰性対照サンプルの第2のタイプは、ステップd)の終わり(すなわち、インキュベーション及びリアルタイムバイオルミネセンス測定の直前)に、細菌サブサンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物の代わりに培養培地、及び既知の抗生物質を含むサンプルである。実際、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物がない場合、バイオルミネセンスは期待できない。
陰性対照サンプルの第3のタイプは、ステップd)の最後(すなわち、インキュベーション及びリアルタイムのバイオルミネセンス測定の直前)に、細菌サブサンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の抗生物質の代わりに培養培地を含むサンプルである。実際、抗生物質がない場合、バイオルミネセンスは期待できない。
既知の抗生物質に対する細菌サンプルの感受性が不明であるので、従来の陽性対照(細菌に対して殺細菌的であることが知られている化合物を用いたもの)は不可能である。代わりに、例えば純粋なATPを用いた代替的な陽性対照を任意に使用し得る。この場合、ATPは抗生物質の代わりに添加され、バイオルミネセンスの測定はその直後に行われる。当業者であれば、製造業者のガイドライン(例えば5~50nMの範囲)から、使用すべきATPの濃度を知ることができるであろう。
マイクロプレートによる抗生物質感受性決定方法の実施
また、本発明の抗生物質感受性決定方法の場合、マイクロプレートを用いて行うことが好ましく、このマイクロプレートは、スクリーニング方法に関する上記の項で述べた任意の特徴又は特徴の組み合わせを有し得る。
また、本発明の抗生物質感受性決定方法の場合、マイクロプレートを用いて行うことが好ましく、このマイクロプレートは、スクリーニング方法に関する上記の項で述べた任意の特徴又は特徴の組み合わせを有し得る。
この場合、本発明の抗生物質感受性決定方法のステップb)では、ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割し、その数は少なくとも試験すべき既知の抗生物質の数に対応し、マイクロプレートのいくつかの異なるウェルに分注される。ここでも、すべてのサブサンプルは好ましくは同じ体積の培養培地を含み、同じOD600を有する(反応のすべての成分が添加された後の最終OD600が、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0003、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.005、少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.015、より好ましくは0.0002~0.5、0.0003~0.5、0.0005~0.5、0.001~0.5、0.005~0.5、0.01~0.5、0.015~0.5、0.1~0.5、0.1~0.3、さらに好ましくは0.1~0.2、特に約0.15となるよう計算される)。第1のタイプの陰性対照を有するために、マイクロプレートの一部のウェルは、細菌を含まない培養培地で分注され得る。
ステップc)では、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を、細菌サブサンプルを含むマイクロプレートのウェルに、任意で、細菌を含まない培養培地を含むマイクロプレートのウェルに分注する。第2の陰性対照を有するために、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合液の代わりに、予め細菌のサブサンプルを分注したマイクロプレートのいくつかのウェルに培養培地を分注し得る。
ステップd)では、細菌サンプルの感受性を試験する抗生物質を、異なるマイクロプレートのウェルに添加する。同じ抗生物質を複数の異なるウェルに添加してよいのは、異なる濃度の抗生物質に対する細菌サンプルの感受性を試験し、及び/又は測定を再現し(二重又は三重)、結果の信頼性を向上させるためである。同様に、同じ陰性対照を有するいくつかのウェルを、マイクロプレート内に存在させてもよい(例えば、二重又は三重)。第3のタイプの陰性対照を有するために、細菌サブサンプルとルシフェリン及び耐熱性ルシフェラーゼの混合物を予め分注したマイクロプレートのいくつかのウェルに、既知の抗生物質の代わりに培養培地を分注し得る。
マイクロプレートは、上記に開示したように、陽性対照サンプルからなる1つ又は複数のウェルを含み得る。
マイクロプレートは、上記に開示したように、陽性対照サンプルからなる1つ又は複数のウェルを含み得る。
殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)の評価方法(MIC評価方法)
本発明者らはまた、ルシフェラーゼとATP又はそのアナログとの反応をリアルタイムにモニタリングすることにより、抗生物質濃度を変化させつつ、抗生物質の添加からATPの流出の検出までのタイムラグを測定することにより、与えられた細菌サンプルに対する化合物の最小阻害濃度(MIC)を評価することが可能となることを明らかにした。
本発明の文脈において、用語「最小発育阻止濃度(MIC)」は、一晩インキュベートした後に微生物の目に見える増殖を抑制することができる抗菌化合物の最低濃度を意味する。
したがって、第3の態様によれば、本発明は、以下を含む殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を評価するための方法に関する:
a)600nMの光学密度(OD600)が少なくとも0.0002である、培養培地中の生細菌を含む少なくとも1つの試験細菌サンプルを提供することと、
b)ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割することと、
c)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を該サブサンプルに添加することと、
d)該サブサンプルに様々な濃度の殺細菌性化合物を添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び殺細菌性化合物が添加されたサブサンプルを20~60℃(ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致して選択される温度)、好ましくは35~37℃でインキュベートし、リアルタイムでバイオルミネセンスを測定することであって、ステップa)、b)、c)及びd)が行われた後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002、好ましくは0.15である、測定することと、
f)試験された殺細菌性化合物の各濃度について、殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを決定することと、
g)殺細菌性化合物濃度の関数としてラグタイムを表すことと、
h)殺細菌性化合物濃度の関数として、ラグタイムの測定点にフィットする指数関数的減衰曲線を作成することと、
i)指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度を決定することと、
j)指数関数的減衰フィッティング曲線のラグタイム振幅を決定することと、
k)MICを評価することであって、MICが、
・ 指数関数的減衰フィッティング曲線上で、(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・ 指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度と
の間に含まれるとして評価されること。
本発明者らはまた、ルシフェラーゼとATP又はそのアナログとの反応をリアルタイムにモニタリングすることにより、抗生物質濃度を変化させつつ、抗生物質の添加からATPの流出の検出までのタイムラグを測定することにより、与えられた細菌サンプルに対する化合物の最小阻害濃度(MIC)を評価することが可能となることを明らかにした。
本発明の文脈において、用語「最小発育阻止濃度(MIC)」は、一晩インキュベートした後に微生物の目に見える増殖を抑制することができる抗菌化合物の最低濃度を意味する。
したがって、第3の態様によれば、本発明は、以下を含む殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を評価するための方法に関する:
a)600nMの光学密度(OD600)が少なくとも0.0002である、培養培地中の生細菌を含む少なくとも1つの試験細菌サンプルを提供することと、
b)ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割することと、
c)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を該サブサンプルに添加することと、
d)該サブサンプルに様々な濃度の殺細菌性化合物を添加することと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び殺細菌性化合物が添加されたサブサンプルを20~60℃(ルシフェラーゼの耐熱性パラメータと一致して選択される温度)、好ましくは35~37℃でインキュベートし、リアルタイムでバイオルミネセンスを測定することであって、ステップa)、b)、c)及びd)が行われた後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002、好ましくは0.15である、測定することと、
f)試験された殺細菌性化合物の各濃度について、殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを決定することと、
g)殺細菌性化合物濃度の関数としてラグタイムを表すことと、
h)殺細菌性化合物濃度の関数として、ラグタイムの測定点にフィットする指数関数的減衰曲線を作成することと、
i)指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度を決定することと、
j)指数関数的減衰フィッティング曲線のラグタイム振幅を決定することと、
k)MICを評価することであって、MICが、
・ 指数関数的減衰フィッティング曲線上で、(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・ 指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度と
の間に含まれるとして評価されること。
ステップa)からe)
本発明のMIC評価方法のステップa)~e)は、本発明の抗生物質感受性決定方法のステップa)~e)に対応し、同様に実施される。特に、本発明のMIC評価方法においては、上記殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを決定できるように、測定ステップe)は、好ましくは、ステップd)が行われた直後に、すなわち、細菌サブサンプル、ルシフェリン及び耐熱ルシフェラーゼの混合物に殺細菌性化合物が添加された直後に開始される。
ステップa)を第一に行い、ステップb)を第二に行う。
ステップc)とd)は、ステップa)とb)の後、かつステップe)の前に実施される。ただし、ステップb)とe)の間に行うことを条件として、ステップc)とd)は、(ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼと既知の抗生物質の混合物が予め混合されていれば)ステップd)の前にステップc)を、ステップc)の前にステップd)を、又はステップc)とd)を両方同時に、行うなど、いずれの順序で行っても良い。
本発明のMIC評価方法のステップa)~e)は、本発明の抗生物質感受性決定方法のステップa)~e)に対応し、同様に実施される。特に、本発明のMIC評価方法においては、上記殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを決定できるように、測定ステップe)は、好ましくは、ステップd)が行われた直後に、すなわち、細菌サブサンプル、ルシフェリン及び耐熱ルシフェラーゼの混合物に殺細菌性化合物が添加された直後に開始される。
ステップa)を第一に行い、ステップb)を第二に行う。
ステップc)とd)は、ステップa)とb)の後、かつステップe)の前に実施される。ただし、ステップb)とe)の間に行うことを条件として、ステップc)とd)は、(ルシフェリンと耐熱ルシフェラーゼと既知の抗生物質の混合物が予め混合されていれば)ステップd)の前にステップc)を、ステップc)の前にステップd)を、又はステップc)とd)を両方同時に、行うなど、いずれの順序で行っても良い。
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、ステップd)は、ATP流出のリアルタイム測定を改善するために、ステップc)の後又はそれと同時に行われる。実際、ステップd)がステップc)の前に行われる場合、ルシフェラーゼ/ルシフェリンが添加される前にATP流出が始まり、その結果、ATP流出の初期段階が見逃される可能性がある。好ましくは、ステップd)は、ステップc)と同時に、又はステップc)の後に実施される。より好ましくは、ステップd)は、ステップc)の後、好ましくはステップc)の2~15分後、より好ましくはステップc)の3~10分後、さらに好ましくはステップc)の4~6分後、特にステップc)の約5分後に行われる。ステップc)及びd)の間のこの遅延は、ルシフェラーゼ/ルシフェリン混合物が、細菌の培養物に存在し得、それにより、ステップd)の間のバイオルミネセンスシグナルの最初の読み取りに影響を与え得るATPの痕跡を消費することを可能にする。
それにもかかわらず、ステップc)の前にステップd)を行う場合、ステップc)は、ステップd)の後できるだけ早く、例えば、ステップd)の後1分未満、好ましくは30秒未満に行うべきである。
ステップf):試験された殺細菌性化合物の各濃度について、殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを決定すること
本発明の文脈では、用語「ラグタイム」は、2つの関連する事象間の期間、ここでは、殺細菌性化合物の添加時からバイオルミネセンスの増加が最初に検出されるまでの時間に関連する。
本発明者らは、殺細菌性化合物を添加してから、ATP又はそのアナログの漏出のルシフェラーゼによる変換によるバイオルミネセンスの増加が最初に検出されるまでに遅延があり、この遅延が殺細菌性化合物の濃度が高くなると短くなることを観察した。
殺細菌性化合物の添加時間は既知である。ステップe)において、同じ殺細菌性化合物の様々な濃度についてバイオルミネセンスを測定した後、各濃度について得られたバイオルミネセンス曲線を解析し、各曲線において、バイオルミネセンスの増加が最初に検出される時間を決定する。バイオルミネセンス曲線において、この時間は、シグナルが前の時点と比較して増加し、この増加が継続する動力学の最初の時点に対応し、殺細菌性抗生物質の効果による急激な増加を示している。より正確には、場合によっては、ベースラインが動態の初期にわずかに増加することがあるため、最初の増加を主な特徴的なピークとみなすべきである。この時点は、目視又は数学的解析によって特定することができる。曲線の解析は、ノイズ除去(フーリエ変換、指数平滑化、移動平均など)により、遅延を正確に定義することができる。このような解析は、例えばExcel Microsoft(登録商標)を使用して行うことができる。
そして、殺細菌性化合物を添加した時刻を、最初にバイオルミネセンスの増加が検出された時刻から差し引くことで、試験した各濃度の殺細菌性化合物について得られたラグタイムを算出する。
本発明の文脈では、用語「ラグタイム」は、2つの関連する事象間の期間、ここでは、殺細菌性化合物の添加時からバイオルミネセンスの増加が最初に検出されるまでの時間に関連する。
本発明者らは、殺細菌性化合物を添加してから、ATP又はそのアナログの漏出のルシフェラーゼによる変換によるバイオルミネセンスの増加が最初に検出されるまでに遅延があり、この遅延が殺細菌性化合物の濃度が高くなると短くなることを観察した。
殺細菌性化合物の添加時間は既知である。ステップe)において、同じ殺細菌性化合物の様々な濃度についてバイオルミネセンスを測定した後、各濃度について得られたバイオルミネセンス曲線を解析し、各曲線において、バイオルミネセンスの増加が最初に検出される時間を決定する。バイオルミネセンス曲線において、この時間は、シグナルが前の時点と比較して増加し、この増加が継続する動力学の最初の時点に対応し、殺細菌性抗生物質の効果による急激な増加を示している。より正確には、場合によっては、ベースラインが動態の初期にわずかに増加することがあるため、最初の増加を主な特徴的なピークとみなすべきである。この時点は、目視又は数学的解析によって特定することができる。曲線の解析は、ノイズ除去(フーリエ変換、指数平滑化、移動平均など)により、遅延を正確に定義することができる。このような解析は、例えばExcel Microsoft(登録商標)を使用して行うことができる。
そして、殺細菌性化合物を添加した時刻を、最初にバイオルミネセンスの増加が検出された時刻から差し引くことで、試験した各濃度の殺細菌性化合物について得られたラグタイムを算出する。
ステップg):殺細菌性化合物の濃度の関数としてラグタイムを表すこと
ステップg)において、殺細菌性化合物の試験濃度を変化させて得られたラグタイムを、試験された殺細菌性濃度の関数で模式的に表すことができる。x軸に添加した殺細菌性化合物の濃度(μg/mL)、y軸にステップf)で決定したラグタイム、をとってグラフを作成する。グラフには、試験した殺細菌性化合物の濃度の数と同数の実験点を表記する。
ステップg)において、殺細菌性化合物の試験濃度を変化させて得られたラグタイムを、試験された殺細菌性濃度の関数で模式的に表すことができる。x軸に添加した殺細菌性化合物の濃度(μg/mL)、y軸にステップf)で決定したラグタイム、をとってグラフを作成する。グラフには、試験した殺細菌性化合物の濃度の数と同数の実験点を表記する。
ステップh):殺細菌性化合物濃度の関数として、ラグタイムの測定点にフィットする指数関数的減衰曲線を作成すること
すべての試験された殺細菌性化合物(実施例、特に図22~23参照)について、本発明者らは、試験された殺細菌剤の濃度の関数でラグタイムを表すグラフの様々な点が、指数減衰曲線によってフィットされ得ることを見出した。
具体的には、GraphPad PrismやExcel Microsoft(登録商標)などのソフトウェアに各実験点のx、y座標を入力し、単一の指数関数的減衰フィット関数を選択してフィットを行えばよい。フィットの品質を示すパラメータを判定する必要がある。フィットの結果、シグナルのプラトーの値やラグタイムの振幅(スパン)にアクセスすることができる。これらのパラメータは、MICの評価に必要である。
すべての試験された殺細菌性化合物(実施例、特に図22~23参照)について、本発明者らは、試験された殺細菌剤の濃度の関数でラグタイムを表すグラフの様々な点が、指数減衰曲線によってフィットされ得ることを見出した。
具体的には、GraphPad PrismやExcel Microsoft(登録商標)などのソフトウェアに各実験点のx、y座標を入力し、単一の指数関数的減衰フィット関数を選択してフィットを行えばよい。フィットの品質を示すパラメータを判定する必要がある。フィットの結果、シグナルのプラトーの値やラグタイムの振幅(スパン)にアクセスすることができる。これらのパラメータは、MICの評価に必要である。
ステップi):指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度を決定すること
プラトーは、殺細菌性化合物の濃度がさらに上昇してもラグタイムがそれ以上減少しない限界を示す。指数関数的減衰曲線では、プラトーは曲線の水平な部分に相当する。プラトーは、フィットの結果パラメータに記載される。
実験点の1つ又は複数が、指数関数的減衰曲線のプラトー部に位置し得る。指数関数的減衰曲線のプラトー部に1つの実験点のみが位置する場合、この点の殺細菌性化合物濃度を、指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトー部における最低の殺細菌性化合物濃度とする。指数関数的減衰曲線のプラトー部に複数の実験点が位置する場合、殺細菌性化合物の濃度が最も低い点を選択し、この点の殺細菌性化合物の濃度を指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトー部における最低の殺細菌性化合物濃度として採用する。
プラトーは、殺細菌性化合物の濃度がさらに上昇してもラグタイムがそれ以上減少しない限界を示す。指数関数的減衰曲線では、プラトーは曲線の水平な部分に相当する。プラトーは、フィットの結果パラメータに記載される。
実験点の1つ又は複数が、指数関数的減衰曲線のプラトー部に位置し得る。指数関数的減衰曲線のプラトー部に1つの実験点のみが位置する場合、この点の殺細菌性化合物濃度を、指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトー部における最低の殺細菌性化合物濃度とする。指数関数的減衰曲線のプラトー部に複数の実験点が位置する場合、殺細菌性化合物の濃度が最も低い点を選択し、この点の殺細菌性化合物の濃度を指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトー部における最低の殺細菌性化合物濃度として採用する。
ステップj):指数関数的減衰フィッティング曲線のラグタイム振幅を決定すること
「ラグタイム振幅」は、指数関数的減衰のフィット曲線のy軸との切片におけるラグタイムの値と、指数関数的減衰のフィット曲線のプラトー部におけるラグタイムの値との差と定義される。ラグタイムの振幅(スパン)は、フィットの結果パラメータに記載される。
「ラグタイム振幅」は、指数関数的減衰のフィット曲線のy軸との切片におけるラグタイムの値と、指数関数的減衰のフィット曲線のプラトー部におけるラグタイムの値との差と定義される。ラグタイムの振幅(スパン)は、フィットの結果パラメータに記載される。
ステップk):MIC濃度の評価
この最終ステップでは、殺細菌性化合物のMIC濃度が、
・指数関数的減衰フィッティング曲線上で、(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・上記手順i)で決定された、指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度と
の間に含まれるとして評価される。
この最終ステップでは、殺細菌性化合物のMIC濃度が、
・指数関数的減衰フィッティング曲線上で、(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・上記手順i)で決定された、指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度と
の間に含まれるとして評価される。
材料及び方法
細菌株及び増殖条件
大腸菌MG1655及びルテウス菌を、抗生物質感受性試験に使用した。培養は、富栄養ルリアブロス(LB)(10g NaCl、10gトリプトン、5g酵母エキス/L)又は0.4%グルコース補充MOPS最少培地で37℃にて実施した。黄色ブドウ球菌USA300株は、トリプティックソイブロス(0.25%グルコース添加)中で37℃にて培養した。
細菌株及び増殖条件
大腸菌MG1655及びルテウス菌を、抗生物質感受性試験に使用した。培養は、富栄養ルリアブロス(LB)(10g NaCl、10gトリプトン、5g酵母エキス/L)又は0.4%グルコース補充MOPS最少培地で37℃にて実施した。黄色ブドウ球菌USA300株は、トリプティックソイブロス(0.25%グルコース添加)中で37℃にて培養した。
抗生物質及び試薬
ネオマイシン(N6386)、アプラマイシン(A2024)、アジスロマイシン(PHR1088)、カナマイシン(K1377)、スペクチノマイシン(S4014)、アンピシリン(A9518)、テトラサイクリン(T7660)、ストレプトマイシン(S9137)、セファレキシン(C4895)、ポリミキシンB(P4932)、エリスロマイシン(E6376)、プロマイシン(P7255)、オフロキサシン(O8757)、アモキシシリン(31586)、アミカシン(PHR1654)、セフィキシム(CDS021590)、セフォキシチン(C4786)、セフタジジム(CDS020667)、セフトリアキソン(C5793)、シプロフロキサシン(PHR1167)、ホスホマイシン(P5396)、ニトロフラントイン(46502)、ピペラシリン(93129)、スルファメホキサゾール(31737)は、Sigma Aldrich社から購入した。クロラムフェニコール(018043)は、Eurobio社から購入した。3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS、M3183)は、Sigma Aldrich社から購入した。グルコース(24379.294)は、VWR BDH Chemicals社から入手した。Bacto(商標)トリプトン(211705)及びBacto(商標)イーストエキスは、BD Biosciences Advanced Bioprocessing社から、塩化ナトリウム(06404.1000)は、Merck社から、それぞれ購入した。Bacto Tryptic(Trypic) Soy Broth(Ref0370-17-3)は、Difco社から購入した。
ネオマイシン(N6386)、アプラマイシン(A2024)、アジスロマイシン(PHR1088)、カナマイシン(K1377)、スペクチノマイシン(S4014)、アンピシリン(A9518)、テトラサイクリン(T7660)、ストレプトマイシン(S9137)、セファレキシン(C4895)、ポリミキシンB(P4932)、エリスロマイシン(E6376)、プロマイシン(P7255)、オフロキサシン(O8757)、アモキシシリン(31586)、アミカシン(PHR1654)、セフィキシム(CDS021590)、セフォキシチン(C4786)、セフタジジム(CDS020667)、セフトリアキソン(C5793)、シプロフロキサシン(PHR1167)、ホスホマイシン(P5396)、ニトロフラントイン(46502)、ピペラシリン(93129)、スルファメホキサゾール(31737)は、Sigma Aldrich社から購入した。クロラムフェニコール(018043)は、Eurobio社から購入した。3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS、M3183)は、Sigma Aldrich社から購入した。グルコース(24379.294)は、VWR BDH Chemicals社から入手した。Bacto(商標)トリプトン(211705)及びBacto(商標)イーストエキスは、BD Biosciences Advanced Bioprocessing社から、塩化ナトリウム(06404.1000)は、Merck社から、それぞれ購入した。Bacto Tryptic(Trypic) Soy Broth(Ref0370-17-3)は、Difco社から購入した。
リアルタイムバイオルミネッセンスアッセイ
古典的ルシフェラーゼは、Molecular Probes社製(ATP Determination Kit(A22066))のものを使用した。耐熱性ルシフェラーゼは、「CheckLite AT100」(キッコーマン社製)を使用した。ルシフェリン-ルシフェラーゼ試薬は、メーカーの説明書に従って調製した。黒色96マイクロタイタープレート(Greiner Bio-one、655076)の各ウェル(60μl/ウェル)に、指数関数的に増殖する培養培地からの細菌(OD600=0.3)を添加し、ルシフェリン-ルシフェラーゼ試薬溶液を20μl添加した。マイクロタイタープレートを37℃で5分間インキュベートしてルシフェラーゼと反応させ、細胞外のATPのトレースを消失させた。その後、培養培地で調製した抗生物質溶液(3倍濃縮)40μlを添加した。各ウェルのバイオルミネセンスを、振とう下(218rpm)、実験に応じて28℃又は37℃で4時間モニターした(図の凡例参照)。抗生物質の存在下又は非存在下での試薬の安定性は、細菌を含まないが4pモルのATPを含む対照実験で確認した。試験は、384マイクロタイタープレート(Greiner Bio-one、784076)でも行った。
古典的ルシフェラーゼは、Molecular Probes社製(ATP Determination Kit(A22066))のものを使用した。耐熱性ルシフェラーゼは、「CheckLite AT100」(キッコーマン社製)を使用した。ルシフェリン-ルシフェラーゼ試薬は、メーカーの説明書に従って調製した。黒色96マイクロタイタープレート(Greiner Bio-one、655076)の各ウェル(60μl/ウェル)に、指数関数的に増殖する培養培地からの細菌(OD600=0.3)を添加し、ルシフェリン-ルシフェラーゼ試薬溶液を20μl添加した。マイクロタイタープレートを37℃で5分間インキュベートしてルシフェラーゼと反応させ、細胞外のATPのトレースを消失させた。その後、培養培地で調製した抗生物質溶液(3倍濃縮)40μlを添加した。各ウェルのバイオルミネセンスを、振とう下(218rpm)、実験に応じて28℃又は37℃で4時間モニターした(図の凡例参照)。抗生物質の存在下又は非存在下での試薬の安定性は、細菌を含まないが4pモルのATPを含む対照実験で確認した。試験は、384マイクロタイタープレート(Greiner Bio-one、784076)でも行った。
上清中における市販の殺細菌性化合物の検出
本発明者らが開発したATP測定のプロトコルを調整・最適化し、試験感度を高めた。ホタルルシフェリンとルシフェラーゼを用いた同キット「CheckLite AT100」を使用した。
最少培地(MOPS-グルコース0.4%)で指数関数的に増殖させた培養培地(OD600=0.6)中の細菌を使用した。黒色マイクロタイタープレート(黒色壁・黒色底)の各ウェルに60μLの菌体懸濁液を加え、ルシフェリン・ルシフェラーゼ試薬溶液を各ウェルに10μLずつ添加した。細菌が放出した細胞外ATPのトレースの可能性を排除するため、プレートを振とう(218rpm)しながら37℃で5分間インキュベートした。その後、20μLのストレプトマイセス・フラディエ上清(待機中は氷上に保管)を各ウェルに添加した。各ウェルのバイオルミネセンスを、マイクロタイタープレートリーダー(InfinitePro200、TECAN)により、振とう(218rpm)下、37℃で4時間観察した。
本発明者らが開発したATP測定のプロトコルを調整・最適化し、試験感度を高めた。ホタルルシフェリンとルシフェラーゼを用いた同キット「CheckLite AT100」を使用した。
最少培地(MOPS-グルコース0.4%)で指数関数的に増殖させた培養培地(OD600=0.6)中の細菌を使用した。黒色マイクロタイタープレート(黒色壁・黒色底)の各ウェルに60μLの菌体懸濁液を加え、ルシフェリン・ルシフェラーゼ試薬溶液を各ウェルに10μLずつ添加した。細菌が放出した細胞外ATPのトレースの可能性を排除するため、プレートを振とう(218rpm)しながら37℃で5分間インキュベートした。その後、20μLのストレプトマイセス・フラディエ上清(待機中は氷上に保管)を各ウェルに添加した。各ウェルのバイオルミネセンスを、マイクロタイタープレートリーダー(InfinitePro200、TECAN)により、振とう(218rpm)下、37℃で4時間観察した。
耐性細菌株及びバイオフィルム
バイオフィルムは、標準的なプロトコルに従って作製した。簡潔には、黄色ブドウ球菌USA300をトリプティックソイブロス(0.25%グルコース含有)中で37℃、180rpmの条件で一晩インキュベートした。FLUOTRAC(商標)マイクロプレート(予め滅菌)のウェルに、予め平均濃度が105~106CFU/mlとなるよう希釈した接種済みブロスを150μl充填した。マイクロプレートに蓋をし、37℃で18時間インキュベートした。その後、バイオフィルムを150μlのMOPSで2回洗浄した。洗浄液の80μlは廃棄せずに隣のウェルに入れ、含まれるATPの量を観察した。次に、バイオルミネセンスアッセイのために本発明者らによって開発された最適化されたプロトコルに従った。
バイオフィルムは、標準的なプロトコルに従って作製した。簡潔には、黄色ブドウ球菌USA300をトリプティックソイブロス(0.25%グルコース含有)中で37℃、180rpmの条件で一晩インキュベートした。FLUOTRAC(商標)マイクロプレート(予め滅菌)のウェルに、予め平均濃度が105~106CFU/mlとなるよう希釈した接種済みブロスを150μl充填した。マイクロプレートに蓋をし、37℃で18時間インキュベートした。その後、バイオフィルムを150μlのMOPSで2回洗浄した。洗浄液の80μlは廃棄せずに隣のウェルに入れ、含まれるATPの量を観察した。次に、バイオルミネセンスアッセイのために本発明者らによって開発された最適化されたプロトコルに従った。
抗生物質のMIC測定
抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)は、ATPアッセイキットを用いて試験と同じ培養条件で測定した。LB又はMOPSグルコース0.4%培地で試験抗生物質の2倍連続希釈液を調製した。試験濃度の抗生物質(40μl/ウェル)を含む滅菌済みマイクロタイタープレートの各ウェル(60μl/ウェル)に、指数関数的に増殖する培養物(OD600=0.3)を添加した。培地で120μlまで体積を調整し、37℃で17時間、マイクロタイタープレートリーダー(Infinite 200 PRO、TECAN)を用いてOD600nm測定を実施した。
抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)は、ATPアッセイキットを用いて試験と同じ培養条件で測定した。LB又はMOPSグルコース0.4%培地で試験抗生物質の2倍連続希釈液を調製した。試験濃度の抗生物質(40μl/ウェル)を含む滅菌済みマイクロタイタープレートの各ウェル(60μl/ウェル)に、指数関数的に増殖する培養物(OD600=0.3)を添加した。培地で120μlまで体積を調整し、37℃で17時間、マイクロタイタープレートリーダー(Infinite 200 PRO、TECAN)を用いてOD600nm測定を実施した。
結果
ATP漏出をリアルタイムで検出するバイオルミネッセンスアッセイ
このアッセイの原理を図1に示す。
ATP漏出をリアルタイムで検出するバイオルミネッセンスアッセイ
このアッセイの原理を図1に示す。
本発明者らは、まず、古典的なホタルルシフェラーゼを用いて、富栄養及び最少培地におけるATPの検出の可能性を評価した。ルシフェリン/ルシフェラーゼ試薬を含む富栄養培地であるルリアブロス(LB)又は最少培地(MOPS)にATPを添加すると、発光が誘発されることが確認された。試薬の安定性はLB培地が優れていた(図2a)。MOPSでは、試薬は培地とプレインキュベートすると急速に失活した(図2a)。次に、本発明者らは、小分子(アミノ酸、ヌクレオチド、カリウム)の漏出を引き起こすことが知られているアミノグリコシドであるネオマイシンによる抗生物質ショック後の生きたレポーター大腸菌細胞の反応を評価した。発光測定により、このアッセイが抗生物質依存的なATPの漏出をリアルタイムで報告することが実証された(図2b)。本発明者らは、このアッセイの性能を、富栄養(LB)又は最少(MOPS)培地でも評価した。最少培地では、図2aで観察されたように、1つ又はいくつかの試薬の不安定性のために、発光シグナルは検出されなかった(図2b)。まず、本発明者らは、この結果について、富栄養増殖培地のいくつかの成分が、おそらくバイオルミネセンスアッセイにおいてルシフェラーゼの安定化剤として作用することを示すと結論付けた。しかしながら、このアッセイは28℃(通常細菌の増殖に用いられる37℃より低い温度)で行われたことから、本発明者らは、37℃でのアッセイを再度行った。その結果、37℃では、古典的なルシフェラーゼの富栄養培地及び最少培地における安定性が低く、その活性が急速に低下するため、得られた結果は満足のいくものではなかった。抗生物質を添加しない対照サンプルについては、ATP放出が抗生物質に依存していることを示すシグナルを与えなかったようである(図2b)。
ホタルルシフェラーゼの安定性を向上させることで、最少培地及び富栄養培地での測定が改善されるか否かを調べるために、本発明者らは、耐熱性ホタルルシフェラーゼを用いて同じアッセイを行った(図2c)。抗生物質依存的な発光シグナルを、最少培地と富栄養培地の両方で記録することができ、生きた大腸菌のリアルタイムATPアッセイの条件が確立された(図2c)。ATP、ルシフェリン、ルシフェラーゼは、接触すると直ぐに発光するため、このアッセイではATP(又はアナログ)の外膜への流出がリアルタイムで報告される。本発明者らは、富栄養培地(LB)と比較し、最少培地(MOPS)において耐熱性ルシフェラーゼの性能が優れていることに注目した(図2d)。耐熱性ルシフェラーゼは、富栄養培地と最少培地で試験を行うことができるため、この酵素を用いた方法のさらなる開発を行った。
本発明者らは、従来のルシフェラーゼと耐熱性ルシフェラーゼで得られた結果を確認するために、比較アッセイを実施した。
本発明者らは、従来のルシフェラーゼと耐熱性ルシフェラーゼで得られた結果を確認するために、比較アッセイを実施した。
このアッセイを行うために、古典的なルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ、Molecular Probes ATP測定キット、A22066)と耐熱性ルシフェラーゼ(CheckLite kit、キッコーマン、AAE43251.1)をメーカーの説明書に従って使用した。両タイプのルシフェラーゼを37℃に予熱した富栄養LB又は最少MOPS-グルコース培地に添加した。インキュベーション中の様々な時間に、溶液のアリコートを採取し、試薬を補充し、0.8ピコモルのATPと混合して、バイオルミネセンスを読み取った。混合の直後に、InfinitePro200、TECANプレートリーダーを用いて、384ウェルのマイクロタイタープレート(Greiner Bio-one、784076)上の総体積12μLで37℃にてバイオルミネセンス測定を行った。
図24に示す結果から、古典的なホタルルシフェラーゼは、富栄養(LB)培地及び最少(MOPS-G)培地の両方で、37℃において非常に不安定であることが確認された。LB培地では、酵素は、わずか12分のインキュベーションでその活性の70%を失った。最少MOPS-G培地では、酵素は30分でその活性の80%以上を失った。これらの結果は、従来の(非熱安定性)ルシフェラーゼは、細菌の増殖に最も適した温度である37℃でATPの流出を検出するリアルタイムアッセイの実施に適していないことを示す。
一方、耐熱性ルシフェラーゼ(キッコーマン社)を用いて同様のアッセイを行ったところ、本酵素は、LB中37℃で5時間インキュベーション後に50%の活性を、MOPS-G中7時間インキュベーション後に90%の活性を保持していた(図24)。MOPS-Gでは、20時間インキュベーション後でも80%以上の活性を保持し、極めて安定な酵素であることがわかった。
これらの結果から、ほとんどの細菌種の増殖に最適な温度である37℃において、耐熱性ルシフェラーゼは、感度と信頼性の高いリアルタイムATP漏出アッセイを行うことができる唯一の酵素であると結論付けられた。
レポーター細胞(試験サンプル中の細菌)の量は、アッセイにとって重要である。バイオルミネセンスシグナルは、レポーター細胞の濃度に依存することがわかった。バクテリアの量を減らすと、バイオルミネセンスシグナルは減少した(図3)。また、シグナルの振幅は、細胞のODの関数として変化した。本発明者らは、まず、細胞の量が少ない場合(OD600=0.0015及び0.015)、低い濃度の薬剤でバイオルミネセンスシグナルが発生するが、これらのシグナルは薬剤濃度に応じて緩やかに増加するのみであることを見出した。OD600が0.15であれば、大きな振幅を持つシグナルが得られるため、アッセイに選択した。
レポーター細胞(試験サンプル中の細菌)の量は、アッセイにとって重要である。バイオルミネセンスシグナルは、レポーター細胞の濃度に依存することがわかった。バクテリアの量を減らすと、バイオルミネセンスシグナルは減少した(図3)。また、シグナルの振幅は、細胞のODの関数として変化した。本発明者らは、まず、細胞の量が少ない場合(OD600=0.0015及び0.015)、低い濃度の薬剤でバイオルミネセンスシグナルが発生するが、これらのシグナルは薬剤濃度に応じて緩やかに増加するのみであることを見出した。OD600が0.15であれば、大きな振幅を持つシグナルが得られるため、アッセイに選択した。
そこで、本発明者らは、臨床ASTに多用されるカチオン調整ミュラーヒントン培地を用いた場合において、レポーター細胞の量を変化させて本発明のスクリーニング方法を試みた。白色マイクロタイタープレートを用いた方法の感度が向上し、EUCASTの接種量推奨値に到達した(図25)。細胞を、ミュラーヒントン培地でOD600=0.6まで増殖させた後、ミュラーヒントン培地でOD600=0.00055まで希釈し、その後ルシフェリン-ルシフェラーゼを添加し、続いてtATPバイオルミネセンス測定に用いる直前に抗生物質を添加した(OD600=0.00055の細菌60μL+試薬(ルシフェリン-ルシフェラーゼ)20μL+抗生物質40μL)。細菌の最終的なOD600は0.000275である。様々な薬剤濃度でアッセイを実施した。白色96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner Bio-one、655075)を使用した。ラグタイムの同定の精度を上げるため、特にシグナルが弱い条件では、ATP漏出のトレースの短期間の変動を、5点移動平均法を用いて平滑化した。これにより、MICの推定に必要なATP漏出の発生前のラグタイムの同定が容易になった。ラグタイムの解析結果、この培地での標準的な増殖アッセイから得られたMICと同様のMIC推定値が得られた(図25)。
細胞外の微量のATPは、薬剤添加前の5分間のプレインキュベーション中に細胞培養培地中に検出され、ルシフェラーゼによって消費された。本発明者らは、培養培地を新鮮な培地と交換するために、遠心分離によって細胞を洗浄する必要がないことを見出した。実際、本発明者らは、遠心分離とその後の細胞操作により、アミノグリコシド系抗生物質の取り込みが促進され得ることを示した(図4A)。したがって、結果にバイアスが生じるのを防ぐために、レポーター細胞の操作は避けるべきである。
本発明者らはまた、遠心分離によるストレスから細菌を回復させるために、細菌の遠心分離の有無で、また遠心分離を行う場合はその後の様々な時点(数分、5分、15分、30分など、最大120分)後にのみ薬剤(ネオマイシン)を添加する、というアッセイを行った。その結果、本発明者らは、ネオマイシンの殺細菌効果が非遠心分離サンプルと同程度に戻るには、遠心分離後約2時間(120分)かかることを見出した(図4B)。
本発明者らはまた、遠心分離によるストレスから細菌を回復させるために、細菌の遠心分離の有無で、また遠心分離を行う場合はその後の様々な時点(数分、5分、15分、30分など、最大120分)後にのみ薬剤(ネオマイシン)を添加する、というアッセイを行った。その結果、本発明者らは、ネオマイシンの殺細菌効果が非遠心分離サンプルと同程度に戻るには、遠心分離後約2時間(120分)かかることを見出した(図4B)。
本発明者らは、試験した異なる抗生物質の存在が、バイオルミネセンスアッセイの活性に影響を及ぼさないことを確認した(図5)。したがって、30nMのATPを添加する前に、LB中で、この試験で使用される最大濃度の抗生物質とルシフェラーゼ-ルシフェリン試薬をプレインキュベーションした後に(細菌非存在下で)バイオルミネセンスを測定した。アミノアシル化tRNAのアデノシン含有3’末端アナログであるピューロマイシン(図5)については、バイオルミネセンスの著しい阻害が観察されたが、それは大腸菌で測定された最小阻害濃度(MIC)を超える濃度で認められただけであった(図5及び表1)。同様の観察を、アクチノマイシンD、ノボビオシン、トリメトプリムについても行った。
最適化の結果、バイオルミネセンスアッセイ用の試薬の量は、全体積の17%未満となり、細胞の生存率に生じる可能性のある摂動を最小限に抑えた。実際、本発明者らは、これらの実験条件下で、細胞が生存可能であることを実証した(図6)。最後に、本発明者らは、アミノグリコシド耐性を有する大腸菌株を用いてATP漏出アッセイを実施した。アミノグリコシドO-リン酸転移酵素APH(3’)-IIaを発現させると、ネオマイシン添加時のATP漏出を検出できなくなり、薬剤によるATP漏出が薬剤の細菌に対する殺細菌活性によるものであることが示された(図7)。このことは、本方法が低濃度の抗生物質(MIC又はそれ以下)を用いて、特定の細菌サンプルの感受性/耐性を検出できることをさらに実証している。生きている細菌のATP漏出を報告する高感度バイオルミネセンスアッセイ(図1)を得た本発明者らは、様々な抗生物質へのショック後の反応を調べることに着手した。
殺細菌性抗生物質が引き金となるATPの漏出が重要なサインである
以下のすべての実験において、温度、OD600及び装置などのパラメータは、バイオルミネセンスアッセイに使用したものと同じとし、各抗生物質のMIC値を測定した。
以下のすべての実験において、温度、OD600及び装置などのパラメータは、バイオルミネセンスアッセイに使用したものと同じとし、各抗生物質のMIC値を測定した。
アミノグリコシドは殺細菌性抗生物質であり、翻訳ミスコーディングを引き起こし、細胞に致命的な影響を与える。アミノグリコシドショックに伴う小分子の漏出は、これまで放射標識を含む様々な方法で確認されている。そこで、本発明者らは、アミノグリコシドストレスに対する生細胞の反応を調べた。OD600が0.3(最終0.15)の高速で増殖する細胞を、プレートリーダーに短時間入れて熱平衡化し、LB培地中でMIC前後の異なる濃度で抗生物質を添加した。ネオマイシンの濃度を上げると、MICを超える濃度では、最初のATP放出が急速で強く、二相性のシグナルが明らかになった(図8)。この条件では、抗生物質の添加から数分以内に漏出が起こり、以前に報告されたアミノ酸/ヌクレオチド/K+の漏出と一致する結果であった。MIC値は細胞生存率を報告するものではないため、本発明者らはネオマイシン濃度を変えて生存率アッセイを行った(図8)。最初の90分間のコロニー形成単位(CFU)の数は一定であり、細胞がこの期間中にネオマイシン処理において生存したことを実証した。したがって、本発明者らは、観察された二相性のATP流出が、未だ生きている細胞からのものであると結論付けた。同様の二相性トレースが、他の5つのアミノグリコシド、すなわちストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、アプラマイシン及びアミカシンについても観察された(図8)。本発明者らは、6種類のアミノグリコシドのすべてについて、MIC濃度又はその近辺でシグナル強度が低下することに注目し、これは、ATP放出の動態の変化と相関があった。また、試験した6種類のアミノグリコシド系抗生物質において、抗生物質濃度の上昇に伴い、発光を検出するまでのタイムラグが短縮された(表2)。
最大濃度では、ネオマイシンでは約9.4分、カナマイシンでは4.7分、ストレプトマイシンでは10分、アプラマイシンでは10.9分というこれ以上不可能という値までラグが短縮された。MIC未満では、結果を注意深く分析するべきである。長いラグと弱いシグナルは、薬剤を添加した瞬間にすべての細胞が抗生物質を蓄積したわけではないことを示唆している。さらに、MIC以下の薬剤濃度では、試験中に細胞が増殖し続けたため、トレースは残りの増殖の影響をわずかに受けている可能性がある。MICより高い濃度では反応は明瞭で、類似しており、ほとんどの細胞が薬剤接触後、非常に迅速に影響を受けたことが示された(図8)。これらのミスコーディング剤で観察された特徴、すなわち最初の急速で強いバースト及びそれに続く緩やかだが大きなフェーズは、MIC濃度で明確に識別可能であった。
アンピシリンは、βラクタム系の殺細菌性抗生物質で、細胞壁の合成を速やかに阻害し、ゆっくりとした細胞溶解をもたらす。濃度を上げて添加すると、ATP放出までのラグが9分と短くなった。同様に、ミスコーディング剤についても、MIC(25μg/mL)より高い濃度で、強く明確なシグネチャーが得られた(図8)。ここでは、ATP放出は多相性で、非常に弱い強度の初期フェーズがあった後、はるかに大きな振幅を持つ約2時間の第2フェーズがあった。
ポリミキシンは、主に膜透過性を変化させることでグラム陰性菌に作用する殺細菌性抗生物質である。ポリミキシンBは、MICの2分の1の濃度(4μg/mL)でも明確で強い二相性反応を引き起こした。薬物添加後、強く速い初期フェーズとそれに続く大きな振幅の第2フェーズが生じた。4μg/mLより高い濃度では、ポリミキシンB添加後すぐにATP放出が始まった(ラグが2.4分より短く、測定不能)(図8)。興味深いことに、最初のバーストの振幅は4μg/mLの用量で最大となり、高濃度では徐々に減少した(図8)。逆に、第2フェーズの振幅は、濃度と共に増加した(図8)。
セファロスポリン系のβラクタム系殺細菌性抗生物質であるセファレキシンを添加すると、多相性の反応が引き起こされた(図8)。8.8及び17.5μg/mLの抑制濃度以下の濃度では、50~250分の間に3つの同期したフェーズが生じた。35μg/mLでは、アンピシリンやポリミキシンBと同様にミスコーディング剤で検出された初期バーストを彷彿とさせる、高濃度ほど振幅の増大するバーストが検出された。ポリミキシンBとは異なり、初期バーストの振幅はこれ以上短縮できないラグ3.6分後に(図8)、濃度依存的に増加した(図8)。50~250分の間に続く3つの同期したフェーズの振幅は様々であった。
オフロキサシンは、フルオロキノロン系に属し、細菌のDNAジャイレースを阻害し、増殖中の細菌のDNA複製を阻害する。それは殺細菌作用のある抗生物質である。ATP放出に対する作用は、試験した最大濃度で77分後に流出が観察されたため、かなり遅かった(図8及び表2)。ATP放出は単相性のようであり、その振幅は使用した薬剤の濃度によって変化した。
試験した殺細菌性抗生物質に関するデータを、図10Aにまとめる。結論として、試験したすべての殺細菌性抗生物質について、本発明者らは、単相性又は多相性のATP漏出を観察した。
これらのデータは、上記に開示されたものと同じ実験条件に従って新規のアッセイを行うことによって確認された。これらのアッセイの結果を図10Bに要約するが、それらは殺細菌性化合物を迅速に同定する本発明による方法の性能を確認するものである。
試験した殺細菌性抗生物質に関するデータを、図10Aにまとめる。結論として、試験したすべての殺細菌性抗生物質について、本発明者らは、単相性又は多相性のATP漏出を観察した。
これらのデータは、上記に開示されたものと同じ実験条件に従って新規のアッセイを行うことによって確認された。これらのアッセイの結果を図10Bに要約するが、それらは殺細菌性化合物を迅速に同定する本発明による方法の性能を確認するものである。
静菌性抗生物質はATPの漏出を促進する作用が弱い
次に本発明者らは、タンパク質合成を阻害するいくつかの静菌性抗生物質を調べた。リボソームを標的とする抗生物質であるエリスロマイシン及びスペクチノマイシンは、非常に弱い振幅のATP放出を引き起こした。これは、本発明者らが殺細菌性薬物について観察したものと比較にならない(図9及び図10)。同じくリボソームを標的とするテトラサイクリンとアジスロマイシンについては、ATP放出が観察されたのは、それぞれMICの4倍及び2.5倍という高用量のみでであった(図9)。リボソームを標的とするもう一つの静菌薬であるピューロマイシンでは、MIC以下の濃度で非常に弱い漏出が観察された(図9)。これらの濃度ではピューロマイシンがバイオルミネセンスアッセイを阻害するため、MICを超える濃度で測定されたシグナルは、過小評価しても良いであろう(図5b)。MICの2倍又は4倍の高濃度のクロラムフェニコールに曝露すると、時間経過と共に直線的と思われる顕著な漏出が生じた(図9)。これは、本発明者らがテトラサイクリンやアジスロマイシンで観察した結果を想起させるものである。リファンピシンは、転写開始阻害剤であり、大腸菌に静菌的な結果をもたらす急速なmRNAの崩壊を誘発する。本発明者らは、約30分のタイムラグで弱いATPの漏出を観察した。シグナルはMIC(50μg/mL)以上の濃度でより強くなった。MIC以下では、トレースは単相性であった(図9)。
本発明者らは、静菌性抗生物質が静菌活性を持つ濃度で使用された場合、非常に弱いATP流出が引き起こされると結論付けた。したがって、殺細菌性薬物で観察されるATPの漏出は、薬物の致死作用の重要なサインである(図10)。
次に本発明者らは、タンパク質合成を阻害するいくつかの静菌性抗生物質を調べた。リボソームを標的とする抗生物質であるエリスロマイシン及びスペクチノマイシンは、非常に弱い振幅のATP放出を引き起こした。これは、本発明者らが殺細菌性薬物について観察したものと比較にならない(図9及び図10)。同じくリボソームを標的とするテトラサイクリンとアジスロマイシンについては、ATP放出が観察されたのは、それぞれMICの4倍及び2.5倍という高用量のみでであった(図9)。リボソームを標的とするもう一つの静菌薬であるピューロマイシンでは、MIC以下の濃度で非常に弱い漏出が観察された(図9)。これらの濃度ではピューロマイシンがバイオルミネセンスアッセイを阻害するため、MICを超える濃度で測定されたシグナルは、過小評価しても良いであろう(図5b)。MICの2倍又は4倍の高濃度のクロラムフェニコールに曝露すると、時間経過と共に直線的と思われる顕著な漏出が生じた(図9)。これは、本発明者らがテトラサイクリンやアジスロマイシンで観察した結果を想起させるものである。リファンピシンは、転写開始阻害剤であり、大腸菌に静菌的な結果をもたらす急速なmRNAの崩壊を誘発する。本発明者らは、約30分のタイムラグで弱いATPの漏出を観察した。シグナルはMIC(50μg/mL)以上の濃度でより強くなった。MIC以下では、トレースは単相性であった(図9)。
本発明者らは、静菌性抗生物質が静菌活性を持つ濃度で使用された場合、非常に弱いATP流出が引き起こされると結論付けた。したがって、殺細菌性薬物で観察されるATPの漏出は、薬物の致死作用の重要なサインである(図10)。
殺細菌性抗生物質が最少増殖培地でATPの放出を促進する
本発明者らは、最少培地でATP放出アッセイを実施した。指数増殖期の細胞を使用した。
本発明者らは、最少培地でATP放出アッセイを実施した。指数増殖期の細胞を使用した。
ATP放出を、MIC値、又は抗生物質の連続希釈でモニターした(図11)。すべての抗生物質について、ATP放出シグナルの強度は、富栄養培地と比較して、最少培地では弱かった。例えば、アンピシリンとポリミキシンでは、それぞれ10分の1と3分の1に値が低下した。以上のように、本アッセイは、最少培地でより高感度にATPを検出することがわかった。この結果は、最少培地では、ATPの漏出がより顕著でないことを示した。また、本発明者らは、ポリミキシン及びセファレキシンについて、単相性のトレースが、富栄養培地においてこれらの薬剤についてそれぞれ観察された二相性又は多相性のトレースとは対照的であることを指摘した。この観察は、アミノグリコシド系、ネオマイシン、ゲンタマイシン、アプラマイシンにも当てはまる(図11)。ATP放出のラグタイムは、2分の1に減少したオフロキサシンを除いて、変化しないか、わずかに増加した(図11)。本発明者らは、富栄養培地における殺細菌性抗生物質のATP漏出の観察結果が、最少培地においても同様であると結論付けた。
殺細菌性化合物の同定に特化したATP漏出アッセイ
ストレプトマイセス属が多くの二次代謝産物、特に抗生物質を産生できることは周知である。ストレプトマイセス属の細菌は、現代医学で使用される抗生物質の約60%を供給している。本発明の目的は、病原体、多剤耐性細菌、又はバイオフィルムを形成する細菌など、医学的に関連性のある様々なレポーター株で実施可能なアッセイを開発することであった。本発明者らは、ストレプトマイセス属細菌が、本明細書で記載した試験で検出可能な抗生物質を産生できるかどうかを調べるために、ネオマイシン生産菌であるストレプトマイセス・フラディエとレポーター細菌である大腸菌を用いた(図19)。
また、本発明者らは、レポーター株であるルテウス菌(グラム陽性)が使用可能であることを確認した(図12)。産生株の培養は、3連で行った。その目的は、化学成分やバクテリア、シアノバクテリア、菌類の培養上清のみを用いて、かなりの量のライブラリーを試験するための堅牢なアッセイを作製することであった。ストレプトマイセス・フラディエの培養上清を添加すると、強い単相性のATP漏出シグナルが測定された(図13)。しかしながら、レポーター細菌を入れない場合にも、顕著なシグナルが観測された。また、ストレプトマイセス・フラディエの2種類の変異株である、非産生多変異株(DSM41550)又は単一変異株(Δneo6)の上清でも、同様のことが観察された(データ示さず)。この結果は、上清の成分の一部が発光試薬と反応して発光するため、当初のプロトコルを最適化すべきであることを示した。
ストレプトマイセス属が多くの二次代謝産物、特に抗生物質を産生できることは周知である。ストレプトマイセス属の細菌は、現代医学で使用される抗生物質の約60%を供給している。本発明の目的は、病原体、多剤耐性細菌、又はバイオフィルムを形成する細菌など、医学的に関連性のある様々なレポーター株で実施可能なアッセイを開発することであった。本発明者らは、ストレプトマイセス属細菌が、本明細書で記載した試験で検出可能な抗生物質を産生できるかどうかを調べるために、ネオマイシン生産菌であるストレプトマイセス・フラディエとレポーター細菌である大腸菌を用いた(図19)。
また、本発明者らは、レポーター株であるルテウス菌(グラム陽性)が使用可能であることを確認した(図12)。産生株の培養は、3連で行った。その目的は、化学成分やバクテリア、シアノバクテリア、菌類の培養上清のみを用いて、かなりの量のライブラリーを試験するための堅牢なアッセイを作製することであった。ストレプトマイセス・フラディエの培養上清を添加すると、強い単相性のATP漏出シグナルが測定された(図13)。しかしながら、レポーター細菌を入れない場合にも、顕著なシグナルが観測された。また、ストレプトマイセス・フラディエの2種類の変異株である、非産生多変異株(DSM41550)又は単一変異株(Δneo6)の上清でも、同様のことが観察された(データ示さず)。この結果は、上清の成分の一部が発光試薬と反応して発光するため、当初のプロトコルを最適化すべきであることを示した。
アッセイの最適化
さらに検討した結果、予備測定で使用した富栄養培地(LB又はTSB)が上清と反応し、レポーター細菌がない場合に偽陽性シグナルを発生させることがわかった(図14)。富栄養培地LB(又はTSB)を最少培地MOPS-グルコース0.4%に置き換えると、この偽陽性シグナルはなくなった(図15)。これは、富栄養LB培地中の成分が前駆体からのATP産生を触媒するか、利用可能なATP分子をルシフェラーゼ-ルシフェリン試薬と反応させたものと思われる。
さらに検討した結果、予備測定で使用した富栄養培地(LB又はTSB)が上清と反応し、レポーター細菌がない場合に偽陽性シグナルを発生させることがわかった(図14)。富栄養培地LB(又はTSB)を最少培地MOPS-グルコース0.4%に置き換えると、この偽陽性シグナルはなくなった(図15)。これは、富栄養LB培地中の成分が前駆体からのATP産生を触媒するか、利用可能なATP分子をルシフェラーゼ-ルシフェリン試薬と反応させたものと思われる。
次に、試験の感度を上げるための調整を行い、MIC以下の濃度でも殺細菌成分の存在を検出できるようにした。調整したパラメータは以下の通りである:OD600及びレポーター細胞の体積、バイオルミネセンス試薬の体積、アッセイの総体積。本発明者らは、総体積を減らすことにも成功した。ストレプトマイセス・フラディエは運動性のない細菌であるため、環境中で生存するために多くの細胞外プロテアーゼを産生する。さらに、これらのプロテアーゼは変動的に産生されることを踏まえ、本発明者らは、この変動源を排除し、感受性を向上させるために、プロテアーゼがルシフェラーゼを分解する可能性があるという理由から、上清中のプロテアーゼを排除することを選択した。まず、本発明者らは、セリンプロテアーゼ阻害剤であるフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)でプロテアーゼの作用を阻害することを試みた。実際、ストレプトマイセス・フラディエはセリンプロテアーゼを産生できる。PMSFを添加しても、結果に大きな改善は見られなかった(図16)。本発明者らは、他のプロテアーゼ(セリンプロテアーゼに限らない)及び/又は上清中の他の分子がシグナル取得を阻害していると結論付けた。
ストレプトマイセス・フラディエが産生する二次代謝産物の測定におけるプロテアーゼによる悪影響に対処するため、本発明者らは、5,000Daのカットオフを有する膜を用いて上清を濾過することとした。上清を濾過する際、2つの主要な観察結果を強調する必要がある(図16)。まず、本発明者らは、ネオマイシン産生株の上清を濾過したときに、シグナルが2倍増加することを確認した。さらに、上清を濾過したときに観察されたパターンは、純粋なネオマイシンで観察されたパターンをいくらか想起させるものであり、最初のATP放出の強い二相性シグナルではあったが、動態は遅いものであった(図16)。観察された遅れは、富栄養TSB培地に由来する(図17)。本発明者らは、濾過によって、アッセイの性能を妨害するタンパク質や大きな分子を除去することができると結論付けた。さらに、384ウェルマイクロタイタープレートのアッセイ量を9μLまで減らしても、感度は落ちなかった(図18)。培地の改良、体積減少、濾過の利用により、本発明者らは、ストレプトマイセス・フラディエ上清中の殺細菌成分ネオマイシンを検出・同定する高感度な技術を提供することに成功した。
ストレプトマイセス・フラディエの二次代謝産物の産生におけるばらつきを検出するアッセイ
本発明者らは、本明細書に記載される本試験がハイスループットなスクリーニングに十分耐えうることを確認するために、ネオマイシンを生産できないストレプトマイセス・フラディエの変異体の上清を試験した。本発明者らは、ネオマイシン産生に関わる遺伝子を含む複数の遺伝子を変異させたDSM41550株と、ネオマイシン合成に関わる遺伝子を欠失させたΔNeo6株を用いた。野生型産生株と同様に、変異型ストレプトマイセス・フラディエの培養はすべて3重で実施し、2つの培養培地の上清を試験した。予想通り、野生型株と変異型株は同じ結果を示さなかった。野生型産生株の上清では、図19cに示すように、強い二相性のシグナルが発生した。しかし、非生産株である多変異株(DSM41550)又は単一変異株(Δneo6)の上清では、シグナルは観測されなかった(図19c)。この結果は、ネオマイシンの生合成経路が変異により不活性化されていることを示すものであった。本発明者らは、最適化されたアッセイを用いることにより、薬剤生産菌の培養上清中の殺細菌性化合物を検出することが可能であると結論付けた。
本発明者らは、本明細書に記載される本試験がハイスループットなスクリーニングに十分耐えうることを確認するために、ネオマイシンを生産できないストレプトマイセス・フラディエの変異体の上清を試験した。本発明者らは、ネオマイシン産生に関わる遺伝子を含む複数の遺伝子を変異させたDSM41550株と、ネオマイシン合成に関わる遺伝子を欠失させたΔNeo6株を用いた。野生型産生株と同様に、変異型ストレプトマイセス・フラディエの培養はすべて3重で実施し、2つの培養培地の上清を試験した。予想通り、野生型株と変異型株は同じ結果を示さなかった。野生型産生株の上清では、図19cに示すように、強い二相性のシグナルが発生した。しかし、非生産株である多変異株(DSM41550)又は単一変異株(Δneo6)の上清では、シグナルは観測されなかった(図19c)。この結果は、ネオマイシンの生合成経路が変異により不活性化されていることを示すものであった。本発明者らは、最適化されたアッセイを用いることにより、薬剤生産菌の培養上清中の殺細菌性化合物を検出することが可能であると結論付けた。
レポーター細胞としての抗生物質耐性株又はバイオフィルム
現在使用されている薬剤に耐性を獲得した病原株に対して有効な、新規な殺細菌剤のファミリーを特定することに強い関心が持たれている。また、多剤耐性株が形成するバイオフィルムに対して非常に有効な薬剤を発見することも、利点となるであろう。そこで、本発明者らは、本明細書に記載の試験が、バイオフィルム上での薬剤依存的なATP漏出を報告するものか否かを試験した。薬剤に依存し、物理的操作に起因することが判明した多剤耐性黄色ブドウ球菌USA300株による最初のATP放出(図20a)の後、薬剤ネオマイシンによってATP放出が誘発された(図20b)。この反応は、ネオマイシン生産菌ストレプトマイセス・フラディエの濾過上清を使用した場合にも観察されたが、未濾過溶液では観察されず、本明細書で開示した最適化プロトコルをさらに検証した(図20b)。また、本発明者らの以前の知見と一致して、ストレプトマイセス・フラディエ変異体DSMで得られた上清は、陽性反応を生じなかった(図20b)。これらの結果は、バイオフィルムの形態で存在する場合であっても、多剤耐性株に対して活性を有するであろう新規殺細菌性化合物を薬剤産生菌の上清中で探索することが可能であることを示している(図21)。
現在使用されている薬剤に耐性を獲得した病原株に対して有効な、新規な殺細菌剤のファミリーを特定することに強い関心が持たれている。また、多剤耐性株が形成するバイオフィルムに対して非常に有効な薬剤を発見することも、利点となるであろう。そこで、本発明者らは、本明細書に記載の試験が、バイオフィルム上での薬剤依存的なATP漏出を報告するものか否かを試験した。薬剤に依存し、物理的操作に起因することが判明した多剤耐性黄色ブドウ球菌USA300株による最初のATP放出(図20a)の後、薬剤ネオマイシンによってATP放出が誘発された(図20b)。この反応は、ネオマイシン生産菌ストレプトマイセス・フラディエの濾過上清を使用した場合にも観察されたが、未濾過溶液では観察されず、本明細書で開示した最適化プロトコルをさらに検証した(図20b)。また、本発明者らの以前の知見と一致して、ストレプトマイセス・フラディエ変異体DSMで得られた上清は、陽性反応を生じなかった(図20b)。これらの結果は、バイオフィルムの形態で存在する場合であっても、多剤耐性株に対して活性を有するであろう新規殺細菌性化合物を薬剤産生菌の上清中で探索することが可能であることを示している(図21)。
バイオルミネセンスデータからのMIC値(最小発育阻止濃度)の推定
本発明者らは、抗生物質を添加した瞬間と、ATP(又はアナログ)の漏出を報告するバイオルミネセンスシグナルの検出との間に遅延があることに気付いた。この遅延は、抗生物質の濃度が高くなるにつれて短くなる。ほとんどの抗生物質において、濃度とラグタイムの相関は指数関数的減衰でフィットさせることができる。今回のデータでは、MICの値は常にエントリーフェーズから遅延が短くなるプラトーまで見出された。このプラトーは、抗生物質濃度を上げてもラグタイムがあまり変化しない限界を表す。この観察結果を説明するために、本発明者らは、ある抗生物質のラグタイムの値のプラトー値を、この薬剤の既知のMICのラグタイムから差し引いた。この差を、次に、ラグタイムの変化の総振幅と比較し、図22にXで示されるパーセントとして表す。本発明者らは、試験した抗生物質のセットについて、Xの値が常に観察された全振幅の307%未満であることを見出した(図22及び以下の表3)。
本発明者らは、抗生物質を添加した瞬間と、ATP(又はアナログ)の漏出を報告するバイオルミネセンスシグナルの検出との間に遅延があることに気付いた。この遅延は、抗生物質の濃度が高くなるにつれて短くなる。ほとんどの抗生物質において、濃度とラグタイムの相関は指数関数的減衰でフィットさせることができる。今回のデータでは、MICの値は常にエントリーフェーズから遅延が短くなるプラトーまで見出された。このプラトーは、抗生物質濃度を上げてもラグタイムがあまり変化しない限界を表す。この観察結果を説明するために、本発明者らは、ある抗生物質のラグタイムの値のプラトー値を、この薬剤の既知のMICのラグタイムから差し引いた。この差を、次に、ラグタイムの変化の総振幅と比較し、図22にXで示されるパーセントとして表す。本発明者らは、試験した抗生物質のセットについて、Xの値が常に観察された全振幅の307%未満であることを見出した(図22及び以下の表3)。
この観察について可能な一つの説明は、この濃度の抗生物質では、プラトーに達したとき、ほとんどすべての細菌が抗生物質の影響を受け、同時に反応するということである。抗生物質の投与量を増やしても、薬物がほとんどすべての細菌に既に作用しているため、遅延をそれ以上短縮することはできないのである。したがって、ある菌株の抗生物質に対する感受性を調べる場合、MICはセグメントXに対応する低濃度の範囲にあると推定することができる。
Claims (15)
- 化合物を殺細菌活性についてスクリーニングするための方法であって、
a)培養培地中に生細菌を含む1つ又は複数の試験細菌サンプルを用意するステップと、
b)前記試験細菌サンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加するステップと、
c)前記試験細菌サンプルに候補組成物を添加するステップと、
d)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの前記混合物及び前記候補組成物が添加された前記試験細菌サンプルを20~60℃(ルシフェラーゼ耐熱性パラメータと一致させて選択される温度)、好ましくは35~37℃でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定するステップと
を含み、
ステップa)、b)及びc)が実行された後の前記試験細菌サンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップd)において試験細菌サンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、ステップc)において試験細菌サンプルに添加された候補組成物が、殺細菌活性を有する少なくとも1つの化合物を含むことを示す、方法。 - ステップa)において用意された前記試験サンプルの前記生細菌が、機械的又は化学的ストレスを受けておらず、特に、ステップa)において用意された前記試験サンプルの前記生細菌が、遠心分離又は浸透圧ショックを受けていない、請求項1に記載の方法。
- 前記試験サンプル中の前記生細菌が、多剤耐性細菌を含む抗生物質耐性細菌、病原性細菌、浮遊性細胞及びバイオフィルム中の細菌細胞からなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
- 前記試験サンプル中の前記生細菌が、
- ESKAPEグループの抗生物質耐性「優先病原体」
- ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター属種(Campylobacter spp.)、サルモネラ属(Salmonellae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、レンサ球菌属種(Streptococcus sp.)、インフルエンザ菌(Haemophilus infulenzae)、赤痢菌属種(Shigella spp.)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococci)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Escherichia coli)、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、セラチア菌(Serratia marcescens)及びシトロバクター・フロインディイ(Citrobacter freundii)
からなる群において選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。 - ステップa)で使用される前記培養培地が、好ましくは炭素源、より好ましくはグルコースが補充された最少培地である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
- ステップa)、b)及びc)が行われた後の前記試験細菌サンプル中の生細菌のOD600が、0.1~0.3、好ましくは0.1~0.2の間に含まれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
- ステップb)において、前記耐熱性ルシフェラーゼが、GenBankリリース243アクセッション番号AAE43251.1を有する改変ルシフェラーゼ又はGenBankリリース243アクセッション番号AF179290を有する改変ルシフェラーゼから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記候補組成物が、精製された化合物、好ましくは化学的化合物又は生物学的化合物、例えばファージである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記候補組成物が、複合混合物、好ましくは細菌上清又は抽出物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複合混合物が、ステップc)において添加される前に濾過される、請求項9に記載の方法。
- 前記方法が、マイクロプレートで行われ、ステップc)の終了時に、前記マイクロプレートが、好ましくは、
i)試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び候補組成物、を含む少なくとも1つのスクリーニングウェルと、
ii)少なくとも2つの陰性対照ウェルであって、一方のウェルが、試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を含むが、候補組成物も既知の殺細菌性組成物も含まず、他方のウェルが、培養培地を含むが、試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、候補組成物及び既知の殺細菌性組成物のいずれも含まない、陰性対照ウェル、並びに/或いは
iii)少なくとも1つの陽性対照ウェルであって、試験細菌サンプル、ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物、及び既知の殺細菌性組成物又はATPを含む、陽性対照ウェルと
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。 - 細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルの、既知の抗生物質の群に対する感受性を決定するための方法であって、
a)細菌感染症に罹患している対象に由来する細菌サンプルを培養培地に接種し、任意に、前記サンプル中の前記細菌を増幅させるステップと、
b)ステップa)の前記細菌サンプルを、試験される既知の抗生物質の数と少なくとも同数のサンプルとなるよう、いくつかのサブサンプルに分割するステップと、
c)各サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加するステップと、
d)1つ又は複数のサブサンプルに既知の抗生物質の群のそれぞれを添加するステップと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び前記既知の抗生物質が添加された前記サブサンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃の温度でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定するステップと
を含み、
ステップa)、b)、c)及びd)が実施された後の前記サブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002であり、
ステップe)においてサブサンプル中で測定されたバイオルミネセンスの増加は、対象に由来する前記細菌サンプルが、ステップd)において前記サブサンプルに添加された前記既知の抗生物質の添加濃度に対して感受性であることを示す、方法。 - ステップa)において、
i)前記サンプルの前記生細菌が、機械的又は化学的ストレスを受けておらず、特に前記生細菌が、遠心分離又は浸透圧ショックを受けておらず、及び/又は、
ii)前記培養培地が、グルコースが補充された最少培地である、請求項12に記載の方法。 - ステップb)において、前記耐熱性ルシフェラーゼが、GenBankリリース243アクセッション番号AAE43251.1を有する改変ルシフェラーゼ又はGenBankリリース243アクセッション番号AFI79290を有する改変ルシフェラーゼから選択される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
- 殺細菌性化合物の最小発育阻止濃度(MIC)を評価するための方法であって、
a)培養培地中に生細菌を含む少なくとも1つの試験細菌サンプルを用意するステップと、
b)ステップa)の細菌サンプルをいくつかのサブサンプルに分割するステップと、
c)前記サブサンプルにルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物を添加するステップと、
d)前記サブサンプルに様々な濃度の殺細菌性化合物を添加するステップと、
e)ルシフェリンと耐熱性ルシフェラーゼの混合物及び殺細菌性化合物が添加されたサブサンプルを20~60℃、好ましくは35~37℃の温度でインキュベートし、バイオルミネセンスをリアルタイムで測定するステップであって、ステップa)、b)、c)及びd)が行われた後のサブサンプル中の生細菌の600nmにおける光学密度(OD600)が、少なくとも0.0002である、ステップと、
f)試験された殺細菌性化合物の各濃度について、前記殺細菌性化合物が添加された時点と、バイオルミネセンスシグナルの増加が検出された時点との間のラグタイムを決定するステップと、
g)前記殺細菌性化合物濃度の関数としてラグタイムを表すステップと、
h)前記殺細菌性化合物濃度の関数として、ラグタイムの測定点にフィットする指数関数的減衰曲線を作成するステップと、
i)指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度を決定するステップと、
j)指数関数的減衰フィッティング曲線のラグタイム振幅を決定するステップと、
k)MICを評価するステップであって、MICが、
・指数関数的減衰フィッティング曲線上で、(プラトーでのラグタイム+0.3×ラグタイム振幅)に等しいラグタイムに対応する抗生物質濃度と、
・指数関数的減衰フィッティング曲線のプラトーにおける最低の殺細菌性化合物濃度
と
の間に含まれるとして評価されるステップと
を含む、方法。
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