JP3936225B2 - 回転センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
2つの回転体(ロータ)と、励磁コイルを有する固定体とを備え、相対回転する2本の軸間におけるトルクを検出する回転センサとして、例えば、トーションバーを介して相対回転する2本の回転軸が連結された自動車のハンドルシャフトにおけるトルクを検出し、ステアリング装置の円滑な電子制御に利用する回転センサが知られている(例えば、特公平7−21433号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した従来の回転センサは、外部からの電磁波ノイズを遮蔽したり、外部へ電磁波ノイズの影響を及ぼさないように電磁環境適合性(EMC: electromagnetic compatibility)の観点から電磁波シールドの対策を採る必要がある。この場合、電磁波をシールドする遮蔽部材としては、導電性の金属が最適である。
【0004】
しかし、回転センサは、例えば、熱可塑性の合成樹脂を用いて回転体の本体を形成し、電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂に軟磁性材粉を混合したプラスチックマグネットを用いて回転子を形成し、前記回転体としてこの回転子と前記本体とを組み合わせたものが使用されている。このため、回転センサは、摺動部が合成樹脂で形成されているので、遮蔽部材として金属を用いると、金属と合成樹脂との間の摩擦が大きいことから、使用に伴って回転体と遮蔽部材との摩擦によって合成樹脂が磨耗し、合成樹脂の粉が発生することがある。このため、回転センサにおいては、このような粉が原因となって回転体の円滑な回転が阻害されることがある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、電磁波をシールドしても回転体の円滑な回転が阻害されることがない回転センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明においては上記目的を達成するため、(a)絶縁磁性材から筒状に成形され、周方向に配置される導体層を有し、回転する第1のシャフトに取り付けられる第1のロータと、(b)励磁コイルを有し、前記第1のロータと半径方向に間隔を置いて固定部材に固定される固定コア12と、(c)前記導体層と対応させて周方向に配置される非磁性金属体を有し、前記第1のロータに隣接し、前記第1のシャフトに対して相対回転する第2のシャフトに取り付けられ、前記第1のロータと前記固定コア12との間に配置され、合成樹脂から成るフランジ12aを有する第2のロータ13とを備え、(d)前記第1及び第2のロータの相対回転による前記励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて、前記両シャフトの回転角度或いは相対回転角度を検出する回転センサにおいて、
(i)前記固定コアを電磁波を遮蔽する導電性金属から成る第1の遮蔽部材で覆うと共に、該第1の遮蔽部材を電磁波を遮蔽する導電性の合成樹脂から成る第2の遮蔽部材である合成樹脂ケース14で覆い、
(ii)前記固定コア12の合成樹脂ケース14と前記第2のロータの合成樹脂フランジ13aとが当接して摺動部を構成する、ことを特徴としたのである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回転センサに係る一実施形態として、例えば、自動車において変換ジョイント(トーションバー)を介して主動シャフトから従動シャフトへ伝達されるステアリングシャフトのトルクを検出する回転センサを図1乃至図6に基づいて説明する。
【0009】
先ず、本発明の回転センサの第1の実施形態について説明すると、回転センサ10は、図1に示すように、第1ロータ11、固定コア12、第2ロータ13及び樹脂ケース14を備えている。ここで、ステアリングシャフト5は、主動シャフト5aがトーションバー5bを介して従動シャフト5cと連結され、主動シャフト5aは、従動シャフト5cに対して、例えば±8°の範囲内で相対回転するように設けられている。
【0010】
第1ロータ11は、電気絶縁性を有するナイロン,ポリプロピレン(PP),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の熱可塑性の合成樹脂に、Ni−ZnやMn−Zn系のフェライトからなる軟磁性材粉を、軟磁性材の含有量が10〜70体積%で混合した軟磁性材によって円筒状に形成され、回転する従動シャフト5cの軸線方向所定位置に取り付けられる。第1ロータ11は、円筒状の本体11aの外周に所定間隔、例えば、中心角30°間隔で6枚の銅箔11b(図1参照)が周方向に設けられている。第1ロータ11は、本体11aの下部に半径方向外方へ向けてフランジ部11cが形成されている。ここで、銅箔11bは、導体層であれば、例えば、アルミニウム,銀等の素材を使用することができ、銅箔11bを含むこれら導体層は絶縁磁性材の内部に埋め込んでもよい。
【0011】
固定コア12は、第1ロータ11の外側に本体11aとの間に半径方向に数mm程度の僅かなギャップをおいて配置され、ステアリングシャフト5の近傍に位置する固定部材(図示せず)に固定される。固定コア12は、図1及び図2に示すように、第1ロータ11と同一の絶縁磁性材からなる2つのコア本体12aと、各コア本体12a内に収容される励磁コイル12bと、各コア本体12aを収容する2つの遮蔽ケース12c及び2つのコア本体12a間に配置される遮蔽板12dとを有している。
【0012】
コア本体12aは、第1ロータ11と同一の絶縁磁性材からリング状に成形されている。励磁コイル12bは、遮蔽ケース12cから外部へ延出させた電線(図示せず)によって図示しない信号処理回路と接続され、この信号処理回路から交流電流が流されている。
遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dは、電磁波を遮蔽するもので、それぞれ導電性に優れ、電触のおそれのない銅,真鍮等の金属が用いられる。遮蔽ケース12cは、コア本体12aを収容する収容部12eを有するカップ状に成形され、遮蔽板12dと共に中央に開口12fが形成されている。各遮蔽ケース12cは、フランジ部12gの外径が遮蔽板12dの外径と等しくなるように成形されている。ここで、遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dは、各励磁コイル12bに流される交流電流の周波数に基づく表皮効果以上の厚みを有していれば、最低の周波数帯域の電磁波を遮蔽することができる。例えば、各励磁コイル12bに流される交流電流の周波数が100kHzで、遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dの素材として銅を使用した場合、遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dは、厚さが0.2mm以上あればよい。従って、遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dは、上記金属素材をプレス絞り加工して製造される。
【0013】
第2ロータ13は、図1に示すように、フランジ13aと、第1ロータ11と固定コア12との間に配置される複数の羽板13bとを有し、主動シャフト5aにカップリングCpを介して取り付けられる。フランジ13aは、樹脂ケース14との摩擦が小さいポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリフェニレンスルフィド(PPS),液晶プラスチック(LCP)I,II型,ポリアセタール(POM)ポリカーボネート(PC)等の合成樹脂が使用される。複数の羽板13bは、交流磁界の遮蔽性を有するアルミニウム,銅等の非磁性金属によって製造され、フランジ13aに、複数の銅箔11bに対応して中心角60°の間隔で周方向に均等に配置して下方に向かって形成されている。
【0014】
ここで、本発明の回転センサに係る第1及び第2ロータ11,13は、導体層及び非磁性金属体が後述するように単数であっても、両ロータ11,13の相対回転による励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて、シャフトSF1,SF2の回転角度或いは相対回転角度を検出することができる。
樹脂ケース14は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)にカーボンを混練した導電性の合成樹脂が使用され、図1に示すように、上ケース14aと下ケース14bによって遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dを覆っている。ここで、樹脂ケース14は、PPSの代わりに液晶プラスチック(LCP)I,II型、ポリエーテルイミド(PEI)、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアリルサルフォン(PASF)等を使用してもよい。
【0015】
そして、回転センサ10は、図1に示すように、上ケース14aの上部と下ケース14bの下部に、それぞれ上蓋15及び下蓋16が被せられる。
以上のように構成される回転センサ10は、第1ロータ11を従動シャフト5cに、第2ロータ13をカップリングCpを介して主動シャフト5aに、それぞれ取り付けると共に、固定コア12を前記固定部材に固定してステアリング装置に組み付けられる。
【0016】
組み立てられた回転センサ10においては、励磁コイル12bを流れる交流電流による磁束がコア本体12aと第1ロータ11の絶縁磁性材からなる磁気回路に沿って流れる。これにより、第1ロータ11の複数の銅箔11bを交流磁界が横切るため、銅箔11b内に渦電流が誘起される。このとき、渦電流によって励起される交流磁界の方向は、励磁コイル12bを流れる交流電流による交流磁界の方向と逆になる。結果として、銅箔11bが存在するコア本体12aと第1ロータ11との間のギャップ部分に生ずる励磁コイル12bの交流励磁電流による磁束と上記渦電流による磁束の方向とが逆になるため、トータルの磁束密度が小さくなる。この反対に、銅箔11bが存在しなかった上記ギャップ部分では、励磁コイル12bの交流励磁電流による磁束と上記渦電流による磁束の方向とが同じになるため、トータルの磁束密度が大きくなる。即ち、コア本体12aと第1ロータ11との間のギャップ部分に不均一磁界が形成される。
【0017】
従って、第2ロータ13が第1ロータ11に対して相対回転すると、第2ロータ13に中心角60°間隔で周方向に形成された羽板13bが上記不均一磁界を横切り、その際、第1ロータ11と第2ロータ13との相対回転によって、羽板13bが横切るトータルの磁束の量が変化するので、羽板13bに生ずる渦電流の大きさが変化する。このため、回転センサ10においては、励磁コイル12bのインピーダンスは第1ロータ11と第2ロータ13との相対回転角度によって変動する。
【0018】
回転センサ10は、励磁コイル12bのインピーダンス変動を検出し、第1ロータ11と第2ロータ13との相対回転角度を検出する。例えば、パルス波もしくは正弦波を励磁コイル12bに印加し、位相シフト量を測定してもよく、また、振幅変化量を測定してもよい。
このとき、回転センサ10は、各コア本体12aが導電性の遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dによって遮蔽されているうえ、更に導電性の樹脂ケース14によって遮蔽されている。
【0019】
このため、回転センサ10は、外部からの電磁波ノイズの侵入並びに外部への電磁波の漏れ出しがないように電磁波シールドの対策を採っているにも拘わらず、上ケース14aは、合成樹脂から成形され、内縁部が第2ロータ13の合成樹脂製のフランジ13aと当接する。従って、回転センサ10は、上ケース14aとフランジ13aとが互いに当接しても、合成樹脂の粉が発生することなく、第2ロータ13が円滑に回転する。しかも、回転センサ10は、遮蔽ケース12c、遮蔽板12d及び樹脂ケース14で電磁波を遮蔽しているので、遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dのみで遮蔽する場合に比べて、軽量となる。更に、回転センサ10は、前記のように遮蔽ケース12c及び遮蔽板12dをプレス絞り加工で製造しているので、±50μm程度の加工精度が得られるので、加工精度のうえからも問題はない。
【0020】
ここで、上記実施形態は、固定コア12が、2つの励磁コイル12bを有する場合について説明した。しかし、図3に示す固定コア22のように、励磁コイル22bが収容されたコア本体22aを上下同じ形の2つの遮蔽ケース22cで遮蔽すると共に、遮蔽ケース22cを上ケース24aと下ケース24bとを有する樹脂ケース24で覆う構成としてもよい。
【0021】
更に、図4に示す固定コア32のように、励磁コイル32bが収容されたコア本体32aを遮蔽ケース32cと遮蔽板32dとで覆って遮蔽する構成としてもよい。
ここで、本発明の回転センサは、図5に示す回転センサ40のように構成しても、第1及び第2のロータの相対回転による励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて、シャフトSF1,SF2の回転角度或いは相対回転角度を検出することができる。
【0022】
ここにおいて、以下に説明する回転センサ40は、第1ロータ41及び第2ロータ43の構成が回転センサ10と若干異なるだけで、その他は回転センサ10と構成が同一である。従って、以下の説明並びに図5,6においては、回転センサ20は、固定コア12、樹脂ケース14、上蓋15及び下蓋16については同一の符号を用いることで重複した説明を省略し、第1ロータ41と第2ロータ43について説明する。
【0023】
第1ロータ41は、図5及び図6(a)に示すように、第1ロータ11と同一の素材から半円筒状に成形される本体41aの外周に、銅箔41b(図1参照)が周方向に半周に亘って配置され、下部には半径方向外方へ向けてフランジ部41cが形成されている。ここで、銅箔41bは、導体層であれば、例えば、アルミニウム,銀等の素材を使用することができ、銅箔41bを含むこれら導体層は絶縁磁性材の内部に埋め込んでもよい。
【0024】
第2ロータ43は、図5及び図6(b)に示すように、フランジ43aと、第1ロータ41と固定コア12との間に配置される羽板43bとを有し、主動シャフト5aにカップリングCpを介して取り付けられる。フランジ43aは、フランジ13aと同じ合成樹脂が使用される。羽板43bは、交流磁界の遮蔽性を有するアルミニウム,銅等の非磁性金属によって製造され、フランジ43aに、銅箔41bに対応させて周方向に沿って下方に向かって配置されている。
【0025】
尚、本発明の回転センサは、上記実施形態で説明した自動車のステアリングシャフトの他、例えば、ロボットアームのように、互いに回転する回転軸間の相対回転角度,回転角度,トルクを求めるものであれば、どのようなものにも使用できる。
【0026】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、電磁波をシールドしても回転体の円滑な回転が阻害されることがない回転センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転センサの一実施形態を示す回転センサの断面正面図である。
【図2】図1の回転センサで用いる固定ケースの断面正面図である。
【図3】回転ケースの他の実施形態を示す断面正面図である。
【図4】回転ケースの更に他の実施形態を示す断面正面図である。
【図5】本発明の回転センサの他の実施形態を示す回転センサの断面正面図である。
【図6】図5の回転センサで用いる第1のロータの斜視図(a)及び第2のロータの斜視図(b)である。
【符号の説明】
5 ステアリングシャフト5a主動シャフト5b トーションバー5c 従動シャフト10回転センサ11 第1ロータ11a円筒状本体11b 導体層12 固定コア12aコア本体12b 励磁コイル12c 遮蔽ケース(第1の遮蔽部材)12d 遮蔽板(第1の遮蔽部材)13 第2ロータ13a合成樹脂製フランジ13b 非磁性金属体14 樹脂ケース(第2の遮蔽部材)14a 上ケース14b 下ケース22 固定コア22aコア本体22b励磁コイル22c 遮蔽ケース(第1の遮蔽部材)24 樹脂ケース(第2の遮蔽部材)24a 上ケース24b 下ケース32固定コア32aコア本体32b 励磁コイル32c 遮蔽ケース(第1の遮蔽部材)32d 遮蔽板(第1の遮蔽部材)40 回転センサ41 第1ロータ41a半円状本体41b 導体層43 第2ロータ43a合成樹脂フランジ43b 非磁性金属体
Claims (1)
- (a)絶縁磁性材から筒状に成形され、周方向に配置される導体層を有し、回転する第1のシャフトに取り付けられる第1のロータと、(b)励磁コイルを有し、前記第1のロータと半径方向に間隔を置いて固定部材に固定される固定コアと、(c)前記導体層と対応させて周方向に配置される非磁性金属体を有し、前記第1のロータに隣接し、前記第1のシャフトに対して相対回転する第2のシャフトに取り付けられ、前記第1のロータと前記固定コアとの間に配置され、合成樹脂から成るフランジを有する第2のロータとを備え、(d)前記第1及び第2のロータの相対回転による前記励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて、前記両シャフトの回転角度或いは相対回転角度を検出する回転センサにおいて、
(i)前記固定コアを電磁波を遮蔽する導電性金属から成る第1の遮蔽部材で覆うと共に、該第1の遮蔽部材を電磁波を遮蔽する導電性の合成樹脂から成る第2の遮蔽部材である合成樹脂ケースで覆い、
(ii)前記固定コアの合成樹脂ケースと前記第2のロータの合成樹脂フランジとが当接して摺動部を構成する、
ことを特徴とする回転センサ。
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