JP3936089B2 - 発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減圧下での発泡成形を行う発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発泡熱可塑性樹脂シート(以下、単にシートと称することもある)を製造する従来の方法としては、熱可塑性樹脂と発泡剤とを押出機にて溶融、混練した後、ダイスより大気圧中に押し出す方法が知られている。しかしながら、この製造方法にて高発泡シートを得るには、多量の発泡剤が必要であり、また、高発泡化に伴って気泡が粗くなり、それに伴ってシートの強度が減少するといった不具合があった。
【0003】
そこで、このような不具合を解決するものとして、押出機を出た発泡性熱可塑性樹脂体を減圧装置中に通すことによって、発泡性熱可塑性樹脂体をさらに発泡させて高発泡化する方法が実施されている。
【0004】
例えば、特公昭58−29328号(特許第1199174号)公報や、特公平2−54215号(特許第1639854号)公報には、減圧室を構成する隔壁に吸引口を設け、この吸引口を真空ポンプに接続し、真空引きする構成が記載されている。
【0005】
なお、本明細書中、減圧下でさらに発泡される、一次発泡段階の熱可塑性樹脂を「発泡性熱可塑性樹脂」と定義し、この発泡性熱可塑性樹脂を減圧下でさらに発泡させた、固化後および固化直前の最終的な発泡状態のものを「発泡熱可塑性樹脂」と定義する。また、減圧下で発泡されている状態の熱可塑性樹脂は、前者の「発泡性熱可塑性樹脂」に含める。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の製造装置のように、隔壁に吸引口を設け、この吸引口を真空ポンプに接続して真空引きする構成では、発泡性熱可塑性樹脂体が発泡しても壁面に接触しない程度の大きな減圧室が必要となる。これは、発泡性熱可塑性樹脂体が減圧化で大きく発泡して内壁に接触し、内壁に設けられた吸引口を塞いでしまうと所望の真空度が得られなくなるためである。
【0007】
したがって、従来の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置の構成では、小型化を図ることができないといった問題があった。
【0008】
また、壁面に接触させない構成では、発泡熱可塑性樹脂体を冷却する際の冷却効率も低くなり、確実に冷却するためには冷却のための区間を長くとる必要があり、ますます装置の大型化を招来していた。
【0009】
本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置は、上記課題に鑑み成されたもので、その目的は、小型化が可能な発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置は、上記の課題を解決するために、熱可塑性樹脂と発泡剤とを溶融・混練する押出機と、該押出機先端に設けられ、押出機にて溶融・混練された発泡性熱可塑性樹脂体をシート状に加工するダイスと、該ダイスより押し出された発泡性熱可塑性樹脂体をさらに発泡させるための減圧室とを備えた発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置において、上記減圧室を囲む壁部の少なくとも一部が複数の真空引き孔を有する部材からなり、該部材を介して真空引きが行われることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、減圧室の真空引きが、複数の真空引き孔を有する部材である、例えば、複数の真空引き孔を有する多孔質部材を介して行われるので、たとえ減圧室の壁面に発泡性熱可塑性樹脂体や発泡熱可塑性樹脂体が接触しても、従来の吸引口を介して行っていた製造装置のように真空に引けなくなるようなことがなく、かつ、冷却効果も上がる。なお、複数の真空引き孔を有する部材としては、上記した多孔質部材以外に、微細なスリット幅のスリットが多数設けられた部材なども考えられる。
【0012】
したがって、減圧室の容積を、製造したい発泡熱可塑性樹脂シートの寸法に合わせて限界まで小さくでき、ひいては発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置の小型化が可能となる。
【0013】
また、本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置においては、多孔質部材の真空引き孔の径が、100μm以下であることが望ましく、このような構成とすることで、真空引き孔に、発泡性熱可塑性樹脂体を形成する樹脂中の添加剤、溶融樹脂および分解した樹脂が詰まるような不具合を伴うことなく、目的の真空度を実現することができる。なお、多孔質部材の真空引き孔の径は、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
【0014】
また、本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置において、多孔質部材を、多孔性の電鋳殻から構成することができる。
【0015】
また、本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置において、多孔質部材を、焼結合金から構成することができる。
【0016】
多孔性の電鋳殻や、焼成合金は、孔径が100μm以下で、かつ必要な強度を有しているので、このような材料を多孔質部材として用いることで、本発明に係る発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置を、容易に実現できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る実施の一形態を、図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0018】
本実施の形態の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置は、図1(a)に示すように、押出機1、ヘッド部2、ダイス3、減圧室4および引取機5を備えている。減圧室4は、成形部9の内部に形成されている。
【0019】
押出機1は、用いる熱可塑性樹脂や発泡剤に応じて予め設定された温度で、発泡剤と熱可塑性樹脂とを溶融・混練し、混練物をヘッド部2の方向へと押し出すものである。押出機1は、発泡剤と熱可塑性樹脂との混練を低温で行う必要がある場合は、単軸構造が望ましい。
【0020】
また、押出機1の設定温度としては、用いる熱可塑性樹脂が、例えばポリプロピレン系樹脂の場合、押出機1出口付近における発泡性熱可塑性樹脂体であるポリプロピレン系樹脂(混練物)の溶融体の温度が180℃以下となるように設定される。これは、ポリプロピレン系樹脂の溶融体の温度が180℃を超えるとガス抜けが起こるためである。
【0021】
ヘッド部2は、押出機1の出口に配設され、通常の押出成形に用いられるスクリーンメッシュを使用するものである。但し、用いる熱可塑性樹脂が剪断発熱の著しい樹脂である場合は、スクリーンメッシュを使用しない。
【0022】
ダイス3は、ヘッド部2を介して押出機1より押し出された発泡性熱可塑性樹脂体をシート状に加工するシートダイスである。通常、シートダイスは、温度調整と圧力調整が可能な構造となっている。このダイス3は樹脂の吐出口となるダイリップ3aを有する。
【0023】
引取機5は、減圧室4の出口側から発泡熱可塑性樹脂シート6を引き取るものであり、減圧室4の出口側に配設されている。引取機5は、ベルトなどであってもよいが、好ましくはロールが使用される。ロールを使用する場合には、発泡熱可塑性樹脂シート6をニップ可能な互いに対向する一対以上のロール5aで構成されている。対をなして対向するロール5a・5a同士は、それらの間隔を狭める方向、および広げる方向へ移動可能となっている。例えば、これらロール5a・5aは、後述する可動上壁部12および可動下壁部13の移動に伴って移動するように構成されている。なお、上記ロール5aは、冷却水によって温度を調整し得る構成が望ましい。
【0024】
引取機5の引取り速度は、発泡熱可塑性樹脂シート6の発泡倍率や厚み、樹脂組成などによって適宜設定されるものであるが、通常は1〜3m/minである。
【0025】
減圧室4は、ダイス3より押し出されたシート状の発泡性熱可塑性樹脂体(以下、最終発泡状態の発泡熱可塑性樹脂シート6と区別するために、これをシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aとする)、つまり、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを、減圧下に曝してさらに発泡させるものである。この減圧室4は、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aをさらに発泡させた後に、このシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを冷却させることが可能な構造である。
【0026】
減圧室4の入口側は、ダイス3から押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを減圧下で発泡させる領域である発泡ゾーン7となっており、減圧室4の出口側は、発泡ゾーン7で発泡したシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを冷却固化する領域である冷却ゾーン8となっている。なお、発泡ゾーン7と冷却ゾーン8とは仕切り板などで厳密に仕切る必要はない。発泡ゾーン7は、冷却ゾーン8以上の減圧度とするのが好ましく、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを高発泡させた後に冷却する機能も有している。冷却ゾーン8はシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを固化させるゾーンである。
【0027】
減圧室4の真空引きは、発泡ゾーン7部分に接続された真空ポンプ17にて、発泡ゾーン7および冷却ゾーン8にそれぞれ設けられた後述する真空引き孔を有する内壁部14を介して行われる。減圧度の調整は、調圧弁15と真空破壊弁16とで行われる。なお、減圧度の調整には、調圧弁15と真空破壊弁16との両者を併用してもよく、あるいは何れか一方のみを使用してもよい。また、ここでは、1つの真空ポンプ17にて、発泡ゾーン7と冷却ゾーン8とを同時に真空引きするようになっているが、冷却ゾーン8にも別途真空ポンプを設け、両ゾーン7・8の減圧度をそれぞれ別々に調整できる構成としてもよい。また、真空引きラインの各々に圧力調整弁を設け、減圧度を調整できる構成とすることが好ましい。上記の圧力調整弁としては、通常使用されるもの、例えば、真空ポンプ17の吸入圧力を圧力検出器・伝送器を介して弁の開度を変えながら制御するタイプや、圧力ゲージをモニターしながら自力で圧力制御するタイプなどが使用可能である。
【0028】
減圧室4の減圧度は、一般には100mmHg以上(大気圧との差圧)であるが、用いる熱可塑性樹脂が、例えばポリプロピレン系樹脂の場合は、200mmHg程度の差圧(大気圧との差)が必要であり、好ましくは300mmHg以上、より好ましくは350〜700mmHgの差圧とすることである。但し、最適な減圧度は、用いる熱可塑性樹脂や発泡剤によって異なり、また所望する発泡熱可塑性樹脂シート6の発泡倍率によっても異なる。
【0029】
次に、成形部9および減圧室4について詳細に説明する。成形部9は、図1(a)と、図1(b)におけるA−A線矢視断面図である図2(シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを省略した状態)とに示すように、筐体となる外壁部11の内部に、上下動可能な可動上壁部12と可動下壁部13とを有している。これら可動上壁部(壁部)12、可動下壁部(壁部)13および外壁部(壁部)11に囲まれた空間が前記の減圧室4となっている。本実施の形態において、可動上壁部12の下面である壁面12aおよび可動下壁部13の上面である壁面13aは平坦面となっている。可動上壁部12および可動下壁部13は、減圧室4側の面に内壁部14を有し、この内壁部14により上記壁面12aおよび壁面13aが形成されている。
【0030】
成形部9は、上記可動上壁部12および可動下壁部13を移動させるための可動壁駆動装置23を備えている。この可動壁駆動装置23を構成するために、可動上壁部12の上面には、外壁部11を上下方向に貫通して設けられた複数のネジ24の下端部が接続されている。これらネジ24における外壁部11から突出している部分は、スプロケット25に形成された雌ねじ部(図示せず)に螺着されている。これらスプロケット25は、外壁部11の上面に回転自在に設けられている。また、外壁部11の上面には、回転可能なハンドル26が設けられ、このハンドル26によりスプロケット27を回転可能となっている。上記スプロケット25・27には、図1(b)にも示すように、例えば歯付きのベルト28が掛けられている。なお、このベルト28に代えてチェーンであってもよい。
【0031】
同様に、可動下壁部13の下面側にも、上記ネジ24、スプロケット25、スプロケット27およびベルト28が設けられている。但し、この下面側にはハンドル26が設けられておらず、上面側のハンドル26の回転が図示しない駆動伝達機構により、下面側のスプロケット27に伝達される。なお、下面側にも上面側と同様の独立した可動壁駆動装置23が設けられ、可動上壁部12と可動下壁部13とを個別のハンドル26すなわち可動壁駆動装置23にて移動させる構成としてもよい。
【0032】
上記の構成により、ハンドル26を回転させると、可動上壁部12および可動下壁部13を同時に上下動させることができる。この場合、可動上壁部12と可動下壁部13とは逆方向へ移動する。これにより、可動上壁部12の壁面12aと可動下壁部13の壁面13aとの間隔、即ち発泡熱可塑性樹脂シート6の厚みに相当する減圧室4の高さが調整可能となる。
【0033】
なお、上記可動上壁部12および可動下壁部13の移動は、可動上壁部12および可動下壁部13が発泡熱可塑性樹脂シート6の押出し方向および幅方向の何れの方向にも傾かず、互いに平行を維持した状態で行われることが好ましい。
【0034】
また、本実施の形態においては、ダイリップ3aにおける発泡熱可塑性樹脂シート6の厚み方向の中心位置に対する、可動上壁部12の壁面12aと可動下壁部13の壁面13aとの移動距離は、一般には略同一となっているが、条件によって異なっていてもよい。
【0035】
また、上記可動壁駆動装置23としては、上記のねじ式の構成に限らず、例えば油圧シリンダを使用したもの等、周知の構成を適宜使用可能である。上記ねじ式の可動壁駆動装置23は小型の製造装置に適し、油圧シリンダ式のものは大型の製造装置に適する。
【0036】
また、本実施の形態においては、可動上壁部12と可動下壁部13とが設けられた構成としているが、これらのうちの何れか一方のみが可動なものとして設けられていてもよい。
【0037】
上記の可動上壁部12と可動下壁部13とにおける減圧室4の出口側端部には、それぞれブレード形状のシール部材31が設けられている。これらシール部材31は、可動上壁部12および可動下壁部13における例えば左右の一端から他端に渡って設けられている。これらシール部材31は、これらシール部材31・31間にシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aまたは発泡熱可塑性樹脂シート6を介在させた状態でそれらの搬送方向に湾曲あるいは屈曲し、減圧室4を減圧可能にシールするものである。シール部材31は柔らかくかつ可撓性を有し、例えばゴムにて形成されているものが好ましく用いられる。
【0038】
シール部材31は、上記範囲に加えて発泡熱可塑性樹脂シート6の両側の厚み方向に設けられていてもよい。この厚み方向のシール部材31は外壁部11に設けられる。さらに、シール部材31は、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aまたは発泡熱可塑性樹脂シート6の上または下の幅方向の何れか一方のみに対応して設けられていてもよい。
【0039】
減圧室4において、まず、発泡ゾーン7は、ダイス3より発泡に適した温度に調整されて押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを高発泡させるためのゾーンであり、このゾーン内は減圧される。発泡ゾーン7は、連続的な発泡熱可塑性樹脂シート6の製造動作中において、ダイリップ3aの開口厚さに対し、一気に両壁面12a・13aの間隔W2に広がった状態となる。
【0040】
発泡ゾーン7の真空引きは、発泡ゾーン7を囲む壁の一部、或いは全面に配設された、真空引き孔を有する部材を介して行われる。
【0041】
上記の真空引きは、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの厚み方向に減圧するもの、上記厚み方向に垂直な方向(幅方向)に減圧するもの、さらにこれら両方向に減圧するものであってもよく、好ましくは上記厚み方向に減圧するものである。
【0042】
さらに好ましくは、例えば可動上壁部12における上記幅方向の両端に、直径20mm以下の真空引き孔を設け、上記厚み方向に減圧することである。真空引き孔の直径が20mm以上の場合、溶融樹脂などが詰まり易くなり、この場合には引取機5による発泡熱可塑性樹脂シート6の引取動作が停止してしまうことにもなる。
【0043】
本実施の形態においては、可動上壁部12および可動下壁部13の内壁部14が真空引き孔を有する部材にて形成されている。この部材としては、特に焼結合金や多孔性の電鋳殻などの多孔質部材が好ましく用いられる。
【0044】
多孔質部材の一つである多孔性の電鋳殻としては、ポーラス電鋳(登録商標)があり、図3(a)(b)にポーラス電鋳からなる内壁部14の断面を模式的に示す。ポーラス電鋳において、通気孔Hは裏に大きく広がる構造をしており、目詰まりが起こり難く、ガス抜き抵抗も低いといった特徴を有している。ポーラス電鋳は、モデルにニッケルなどの金属を厚肉メッキすることによって金属反転を行う電鋳型である。
【0045】
同図(b)に示すものは、同図(a)に示すものに比べ、表側の面が厚肉であるので、表面加工が容易になり、耐圧強度が上がるなどの利点がある。ポーラス電鋳の孔数は、通常3〜7個/cm2であり、好ましくは3〜5個/cm2である。それ以上では、徐々に強度に問題が生じる。
【0046】
上記内壁部14の真空引き孔(図示せず)は、少なくとも100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下にすることが必要である。真空引き孔が大きい場合は、用いる熱可塑性樹脂中の添加剤、溶融樹脂および分解した樹脂が内壁部14の真空引き孔に詰まり、目的の減圧度を保つために、真空ポンプ17として、大掛かりなものが必要となる。
【0047】
また、発泡ゾーン7に位置する内壁部14は、この内壁部14に埋め込まれた冷却水流路18を流れる冷却水によって、所定の温度に維持されている。内壁部14の材料として熱伝導性の高い金属を使用した場合には、冷却効果が大きくなる。冷却水流路18としては、発泡ゾーン7全体を一つのラインで冷却するものであってもよい。しかしながら、減圧下でのシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの発泡状態を良好に維持するには、各々独立してシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの幅方向に延びる複数のラインを押出し方向に並ぶように設けた構成が好ましい。
【0048】
なお、発泡ゾーン7の温度を調整する手段としては、その温度調整が可能であれば特に制約がなく、例えば発泡ゾーン7にエアーを吹き込む構成も可能である。この構成を採用する場合、発泡ゾーン7においてエアーの吹き込みに優る真空引きを行えば、減圧室4全体の減圧度は維持可能である。
【0049】
ここでは、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面の全面あるいはほぼ全面が発泡ゾーン7の内壁部14に接触するので、内壁部14の温度がシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aに十分に伝わり、温度調整効果が高くなっている。
【0050】
このような発泡ゾーン7の構成では、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aは、発泡ゾーン7に位置する内壁部14に接触しながら引きずられるため、接触面積が大きいとシート状発泡性熱可塑性樹脂体6a表面に傷を付けたり、流れ難くなったりする。
【0051】
そこで、発泡ゾーン7に位置する内壁部14の表面、即ち壁面12a・13aには、図3(a)(b)に示すように、小さい凸部21が多数形成されている。同図(a)(b)に示す凸部21は、表面が湾曲面となり、各々独立した形状となっている。このような凸部21が設けられた結果として、壁面12a・13aは凹凸構造を有するものとなっている。この凹凸構造により、壁面12a・13aに凹凸を付けることで、壁面12a・13aとシート状発泡性熱可塑性樹脂体6a(例えばシート状発泡性ポリプロピレン系樹脂体)との接触面積を小さくし、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを滑り易くしている。即ち、壁面12a・13aは、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6a(例えばシート状発泡性ポリプロピレン系樹脂体)との接触面積を小さくするために、平坦面ではなく、高さが不均一な面であればよい。
【0052】
上記凹凸によって、壁面12a・13aとシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aとの接触面積を、凹凸なしの場合の10%以上、80%以下とすることが好ましい。接触面積が10%未満では、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aと壁面12a・13aとの接触面積が小さ過ぎるため、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを十分に冷却し難い。また、接触面積が80%よりも大きい場合には、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの引き取りが困難となることがある。
【0053】
さらに望ましくは、上記凸部21または凸部21を有する壁面12a・13aにメッキ処理、例えばテフロン(登録商標)メッキを施すことである。これにより、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの流れがさらに良好となり、その表面に傷を付けたりする虞れがさらになくなる。
【0054】
図3(a)(b)に示した上記凸部21による凹凸模様は一例であり、この模様については特に制約がなく、例えばしぼ模様、梨地模様が好適に使用される。この凹凸模様の形成およびメッキ処理は、発泡ゾーン7の壁面12a・13aに加えて、発泡ゾーン7を囲む外壁部11(図2参照)の側壁面にも行うとさらに好ましいものの、これらの一部のみに行ってもよい。また、真空引きに多孔質部材を用いる場合、発泡ゾーン7の内壁を形成する金属面と多孔質部材の両方に凹凸模様の形成およびメッキ処理を行うことが好ましいものの、形成箇所はどちらか一方だけでもかまわない。
【0055】
また、図3(a)(b)には、大きさの異なる凸部21を有する構成を示したが、凸部21は、図4(a)(b)に示すように、同一の大きさのものが並設されている構成であってもよい。さらに、凸部21の形状としては、表面が湾曲したもの(図3(a)、図4(a))が好ましいものの、これに限らずほぼ角錐形もしくは円錐形(図4(b))のものであってもよい。
【0056】
壁面12a・13aに凹凸模様の形成と例えばテフロン(登録商標)メッキ処理とを行うことにより、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aと壁面12a・13aとの見かけの摩擦係数kは、0.4以下とすることが好ましい。ここで、見かけの摩擦係数kとは、以下の式で定義される値である。
【0057】
(減圧室4内の圧力と大気圧との差圧)×(壁面12a(または壁面13a)の面積)×見かけ摩擦係数k=引張り力
また、上記見かけの摩擦係数kは、好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.32以下である。これは、上記見かけの摩擦係数kが0.4より大きい場合、引取機5による発泡熱可塑性樹脂シート6の引き取りが停止してしまう場合があることによる。
【0058】
一方、冷却ゾーン8は、発泡ゾーン7において厚み方向に発泡した発泡熱可塑性樹脂シート6を冷却固化させるゾーンである。冷却ゾーン8における真空引きするための構成は、前記発泡ゾーン7の場合と同様であり、真空引き孔を有する部材を介して真空引きが行われるようになっている。この真空引き孔を有する部材としては、ここでも多孔質部材が望ましく、その場合の、真空引き孔径の条件や配置条件、好適に用いられる材料などは、発泡ゾーン7にて記載したものと同じである。但し、冷却ゾーン8では、真空引き孔の数は発泡ゾーン7の場合よりも少なくてもよい。また、多孔質部材としてポーラス電鋳を用いる場合、ポーラス電鋳の孔数はどのようなものであってもよいものの、好ましくは3個/cm2以下である。
【0059】
冷却ゾーン8は、発泡ゾーン7よりも減圧度を低くする(大気圧に近い圧力とする)ことが好ましい。このようにした場合には、引取機5による発泡熱可塑性樹脂シート6の引き取りが容易になるという利点が得られる。
【0060】
冷却ゾーン8においても発泡熱可塑性樹脂シート6の表面の全面あるいはほぼ全面が冷却ゾーン8に位置する内壁部14に接触するので、内壁部14の温度が発泡熱可塑性樹脂シート6に十分に伝わり、冷却効果が高くなっている。
【0061】
また、この冷却ゾーン8においても、発泡ゾーン7と同様に、発泡熱可塑性樹脂シート6は引きずられることとなるので、その内壁に例えば凸部21による凹凸が形成されている。そして、さらに望ましくは、これにメッキ処理が施されている。
【0062】
なお、冷却ゾーン8の温度を調整する手段としては、その温度調整が可能であれば特に制約はなく、例えば冷却ゾーン8にエアーを吹き込む構成も可能である。この構成を採用する場合、冷却ゾーン8においてエアーの吹き込みに優る真空引きを行えば、減圧室4全体の減圧度は維持可能である。特に、この構成を採用した場合、発泡熱可塑性樹脂シート6と内壁との接触が緩和され、発泡熱可塑性樹脂シート6の引き取りがより容易になるといった利点もある。
【0063】
冷却ゾーン8の出口では、発泡熱可塑性樹脂シート6の中心温度が、ダイス3出口でのシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの中心温度より50℃以上低くすることが好ましい。これによって、減圧下で発泡熱可塑性樹脂シート6の厚み方向に成長した気泡を維持することが可能となる。
【0064】
上記のような構成を有する発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置を用いた場合、以下に示す方法で発泡熱可塑性樹脂シート6を得ることができる。
【0065】
まず、押出機1にて発泡剤と熱可塑性樹脂とを溶融、混練した後、この混練物をダイス3より、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aとして、シート状に押し出す。このとき、製造装置は、図5(a)に示すように、予め、可動壁駆動装置23により可動上壁部12が上昇しかつ可動下壁部13が降下した状態に可動上壁部12および可動下壁部13を配置し、壁面12a・13aの間隔をシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの厚みよりも広げた状態としておく。
【0066】
ダイス3から押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aは、減圧室4を経て引取機5に到達させ、引取機5により引き取り可能な状態とする。このとき、対向するロール5aは、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの厚みにあわせて、間隔を狭めた状態となっている。
【0067】
次に、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの連続的な押出しを行いながら、可動壁駆動装置23により、図5(b)に示すように、壁面12a・13a同士の間隔がW1まで狭まるように可動上壁部12および可動下壁部13を移動させる。上記の間隔W1は、減圧室4を減圧していない状態において、ダイス3から押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの厚みに対応するものである。この状態では、シール部材31の端部がシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面に十分に達し、減圧室4の出口を覆うので、減圧室4が減圧可能な状態となる。このとき、シール部材31は、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの移動方向側へ湾曲あるいは折曲した状態で、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面と接することができる。
【0068】
その後、減圧室4を大気圧に対して100mmHg以上の減圧量で減圧するとともに、可動壁駆動装置23により、図1(a)に示すように、壁面12a・13a同士の間隔がW2まで広がるように可動上壁部12および可動下壁部13を移動させる。上記の間隔W2は、製造する発泡熱可塑性樹脂シート6の所望する厚みに対応するものであり、この間隔W2は任意に変更可能である。なお、上記減圧量の上限は、700mmHg以下とすることが好ましい。このような設定とした場合には、減圧室4からの発泡熱可塑性樹脂シート6の引き取りを円滑に行うことができる。
【0069】
上記の減圧動作により、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aは発泡ゾーン7を通過することでさらに発泡し、発泡熱可塑性樹脂シート6となる。この発泡熱可塑性樹脂シート6は、続く冷却ゾーン8を通過することで、冷却固化され、その後引取機5によって引き取られる。なお、連続して発泡熱可塑性樹脂シート6を製造する場合には、減圧室4を上記のように減圧するとともに、壁面12a・13aの間隔をW2に固定した状態での製造動作が連続して行われる。
【0070】
上記のように、本製造装置では、可動壁駆動装置23により、発泡熱可塑性樹脂シート6の連続製造時における壁面12a・13aの間隔W2を任意に設定できるので、所望の厚みの発泡熱可塑性樹脂シート6を製造可能である。したがって、種々の厚みの発泡熱可塑性樹脂シート6の製造に対応可能であり、高い汎用性を備えたものとなっている。
【0071】
また、可動壁駆動装置23により、可動上壁部12の壁面12aと可動下壁部13の壁面13aとの間隔は、減圧室4の減圧開始前であってシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aが減圧により発泡していない厚みが薄いときに狭め、減圧室4の減圧開始後であってシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aが減圧により発泡して厚みが厚くなるとき、即ち発泡熱可塑性樹脂シート6となるときに広げることができる。したがって、減圧室4の減圧開始前と開始後とにおいて、壁面12a・13aとシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aあるいは発泡熱可塑性樹脂シート6との間隔、即ちシール部材31とシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aあるいは発泡熱可塑性樹脂シート6とのシート状発泡性熱可塑性樹脂体6a(シート6)厚み方向の位置関係をほぼ一定に保持することができる。
【0072】
これにより、減圧室4のシール部材31による減圧可能なシール状態を維持しながら、シール部材31の押圧力により発泡熱可塑性樹脂シート6の表面が傷付けられ、あるいは発泡熱可塑性樹脂シート6の気泡が押し潰される事態を防止することができる。この結果、表面状態が良好であり、かつ減圧による気泡成長の効果が十分に得られ、厚み方向に十分に気泡が成長した発泡熱可塑性樹脂シート6を容易に得ることができる。
【0073】
なお、本製造装置においては、ダイス3のダイリップ3aが、図6に示すように、減圧室4の入口部分に突出している構成としてもよい。このような構造とすれば、図5(b)に示したように壁面12a・13aの間隔を狭くした状態において、ダイス3、即ちダイリップ3aから押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの一部が、例えば可動上壁部12あるいは可動下壁部13とダイス3との間の隙間に入り込み、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの引き出しに支障を来す事態を防止することができる。
【0074】
なお、発泡熱可塑性樹脂シート6の材料として使用可能な熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、一般に押出成形や射出成形に使用される樹脂が適用される。例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、およびこれら各樹脂の共重合体などである。特にポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、単独重合体、ブロック共重合体、またはランダム共重合体の何れであっても良い。さらに、これらと他のオレフィン樹脂とを混合したものでもよい。この場合、混合するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテンなど、炭素数10以下のポリオレフィンが好ましく、ポリエチレン樹脂がより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂と他のポリオレフィン樹脂とを混合する場合、ポリプロピレンの割合は50wt%以上とする。
【0075】
さらに好ましいポリプロピレン系樹脂としては、溶融強度の改良されたプロピレン系重合体を上げることができる。このようなプロピレン系重合体は例えば分子量の異なる成分を多段で重合する方法、特定の触媒系を用いる方法、またはプロピレン系重合体に架橋などの後処理を行う方法などによって得られる。この中でも、分子量の異なる成分を多段で重合する方法が生産性の面から好ましい。
【0076】
上記の熱可塑性樹脂はタルクなどの充填剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤など、通常使用される各種添加剤を含有してもよい。本発明に適用される発泡剤については特に制限はなく、物理発泡剤、化学発泡剤など各種発泡剤を用いることができる。
【0077】
また、発泡熱可塑性樹脂シート6の製造装置は、図7および図8に示す構成であってもよい。この製造装置は、成形部9の減圧室4を形成する上壁部と下壁部が、前部側の固定上壁部41および固定下壁部42と後部側の可動上壁部12および可動下壁部13とからなっている。固定上壁部41と固定下壁部42との互いに対向する壁面41a・42a間は、発泡ゾーン7となっている。壁面41a・42aは、発泡ゾーン7の入口から出口にかけてその間隔が漸次広がるように、緩やかに湾曲あるいは傾斜している。壁面41a・42aの間隔は、入口側がW1に設定され、出口側がW3に設定されている。この間隔W3は、例えば製造頻度の高い幾つかの厚みの発泡熱可塑性樹脂シート6のうち、最も薄いものの厚みに対応している。したがって、この場合、この最も薄い厚みの発泡熱可塑性樹脂シート6を製造するとき、間隔W3は間隔W2と等しくなる。なお、前述のように、間隔W2は、製造する発泡熱可塑性樹脂シート6の所望する厚みに対応するものである。
【0078】
ダイス3から押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aは、発泡ゾーン7において減圧下に曝されることで、この壁面41a・42aの形状に沿って緩やかに厚み方向に発泡する。そして、発泡ゾーン7の終端部において上記の間隔W3の厚みとなり、冷却ゾーン8の入口において上記の間隔W2の厚みとなる。
【0079】
可動上壁部12と可動下壁部13との互いに対向する壁面12a・13aは、冷却ゾーン8となっている。これら壁面12a・13aは、前述のとおり、平坦面であり、かつ可動壁駆動装置23に駆動されて、互いの接近方向および離間方向に移動可能である。
【0080】
発泡熱可塑性樹脂シート6の製造の際の可動上壁部12と可動下壁部13の動作、シール部材31の動作および減圧動作等は、前記の図1(a)(b)に示した製造装置の場合と同様であり、図7の状態は図1(a)の状態に対応し、図8(a)および図8(b)の状態はそれぞれ図5(a)および図5(b)の状態に対応する。
【0081】
本製造装置では、壁面41a・42aの漸次広がった構成により、ダイス3から押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aが円滑に案内され、引取機5による引き取りを良好に行うことができる。その他、壁面12a・13aが可動であること、およびシール部材31を設けていることによる機能等は、前述のとおりである。
【0082】
また、発泡熱可塑性樹脂シート6の製造装置は、さらに図9および図10に示す構成であってもよい。この製造装置は、図9に示すように、成形部9の内部であって減圧室4の前段に温度調整ゾーン51を備えている。温度調整ゾーン51を形成する固定上壁部52と固定下壁部53は、熱伝導性の高い金属からなる内壁部57を有している。この内壁部57の内部もしくは外側には、温度調整流体が流れる温度調整媒体流路54が設けられている。
【0083】
温度調整ゾーン51は、ダイス3より押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面温度を、所定の温度域内に調整するためのゾーンである。即ち、上記の温度調整媒体流路54からの熱により、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aは予め定める設定温度に温められる。この温度調整ゾーン51により、発泡ゾーン7における発泡時の温度を調整することが可能となり、より安定的に発泡熱可塑性樹脂シート6を製造することができる。
【0084】
上記の設定温度は、使用する熱可塑性樹脂や発泡剤に応じて決定され、この熱可塑性樹脂が例えば結晶性樹脂の場合、使用樹脂の結晶化温度以上、ダイス3出口におけるシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの温度以下に設定される。
【0085】
例えば、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いた場合、温度調整ゾーン51は、130℃〜180℃内に設定され、この設定温度の±2℃程度の範囲に属するようにシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面温度を調整する。
【0086】
なお、内壁部57を加熱する手段としては、上記の温度調整媒体流路54に限るものではなく、一般に温度調整が可能で、内壁部57を設定温度に保持させ得る構成であれば、特に制約はない。
【0087】
また、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面全体が内壁部57に接触する方が、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの表面温度を正確に調整し得るため、温度調整ゾーン51の両内壁部57の壁面52a・53aの間隔は、ダイス3より押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの厚みとほぼ同じW1程度であることが望ましく、できれば壁面52a・53aの間隔の調整が可能な構成とすることが望ましい。但し、必ずしも温度調整ゾーン51の内壁にシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの全面が接触する構成である必要はない。
【0088】
また、上記製造装置は、図10(a)(b)に示すように、温度調整ゾーン51を備える成形部9とダイス3とを離して設けるとともに、温度調整ゾーン51の入口に、少なくとも一対のロール55・55を設け、ダイス3から押し出されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aが上記ロール55・55を介して温度調整ゾーン51に取り込まれる構成としてもよい。また、この製造装置においては、図10(b)に示すように、温度調整ゾーン51の入口のシート幅方向の両側に、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの幅を調整するための一対のカッター56・56が設けられていてもよい。
【0089】
上記のロール55・55を設けた構成では、減圧室4に入る前のシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの厚みを調整することが可能となり、これによってシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを温度調整ゾーン51内に引き込み易くなる。
【0090】
上記一対のロール55・55は温度調整可能な構成であることが望ましく、設定温度は、用いる熱可塑性樹脂や発泡剤、発泡熱可塑性樹脂シート6の厚みなどによって適宜設定されるものである。但し、ダイス3出口でのシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aの温度以下であり、温度調整ゾーン51の設定温度以上であることが好ましい。
【0091】
なお、上記カッター56・56は、必ずしも設ける必要はないが、下記の点から設けることが望ましい。即ち、上記カッター56・56でシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aのシート幅を温度調整ゾーン51内の通路幅に合わせて切断することにより、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを温度調整ゾーン51内に引き込み易くなる。
【0092】
また、発泡熱可塑性樹脂シート6の製造装置は、図11(a)(b)に示す構成であってもよい。この製造装置は、ヘッド部2を介して押出機1より押し出された発泡性熱可塑性樹脂体をシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aに加工するダイス3、即ちシートダイスに代えて、サーキュラーダイス61を備えている。このサーキュラーダイス61は、ヘッド部2を介して押出機1より押し出された発泡性熱可塑性樹脂体を筒状発泡性熱可塑性樹脂体6bに加工するものである。
【0093】
上記サーキュラーダイス61の後段には、サーキュラーダイス61を介して大気中に押し出された筒状発泡性熱可塑性樹脂体6bをその押し出し方向に切断して、展開されたシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aに切り開くカッター62が設けられている。従って、筒状発泡性熱可塑性樹脂体6bは、カッター62により切り開かれてシート状発泡性熱可塑性樹脂体6aとなり、ロール55・55により減圧室4内に取り込まれる。
【0094】
なお、筒状発泡性熱可塑性樹脂体6bを切り開く手段としては、上記カッター62に限定されることなく、上記切り開き処理が可能な手段であればよい。
【0095】
また、本製造装置は、減圧室4の前段に前記温度調整ゾーン51を備えている。この前記温度調整ゾーン51の機能は前述の通りである。さらに、温度調整ゾーン51の入口には前述のロール55およびカッター56が設けられ、シート状発泡性熱可塑性樹脂体6aを減圧室4に取り込む上で好ましい構成となっているものの、これらは必須のものではない。
【0096】
以上に示した各製造装置は、押出機1、ダイス3および減圧室4が水平方向に一直線上に配置された構成となっているが、これに代えて、ダイス3を押出し方向が下向きとなるように配置するとともに、この押出し方向の延長線上に減圧室4を配置する構成としてもよい。
【0097】
ここで、上記の各製造装置を用いて製造した発泡熱可塑性樹脂シート6の気泡形状を観察した結果を示す。この観察の結果、発泡倍率は2.5倍以上であって、得られた発泡熱可塑性樹脂シート6の厚み方向断面において、シート6の両表面から全厚みの20%を超え、かつシート6の両側面からシート幅の15%を超える内部位置に存在する気泡形状は、下記条件式(1)および(2)を満足することがわかった。
【0098】
0.5≦D/C≦0.9 …(1)
0.5≦E/C≦0.9 …(2)
但し、条件式中Cは発泡熱可塑性樹脂シート6の厚み方向の平均気泡径、Dは発泡熱可塑性樹脂シート6の押出し方向の平均気泡径、Eは発泡熱可塑性樹脂シート6のシート幅方向の平均気泡径である。
【0099】
【実施例】
本発明の一実施例を図12に基づいて以下に説明する。本実施例では、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物を用い、その混合比は、ポリプロピレン:ポリエチレン=70:30wt%とした。また、発泡剤および発泡助剤として、重曹/アゾジカルボン酸アミド/酸化亜鉛の重量比が9/0.5/0.5である複合発泡剤の30wt%マスターバッチ(ポリエチレンベース)を3.5重量部添加した。
【0100】
ここでの発泡熱可塑性樹脂シート6の製造には、図1に示した装置を使用した。この装置における各部の設定を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
このような発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置を用いて製造された発泡熱可塑性樹脂シート6の断面を観察し、気泡径を測定したところ、上記した条件(条件式(1)(2))を満たしていることが確認できた。その結果を表2に示す。比較例には、実施例と同じ樹脂組成、発泡剤、押出機1およびダイス3を使用し、大気中に押し出された発泡熱可塑性樹脂シートの断面観察結果を示す。
【0103】
なお、各気泡径の値は、図12に示すように、発泡熱可塑性樹脂シートの厚み方向、押出し方向および幅方向の、各気泡に対する接線の最大接線間隔を採用した。
【0104】
また、(発泡熱可塑性樹脂シートの押出し方向の平均気泡径)/(発泡熱可塑性樹脂シートの厚み方向の平均気泡径)、即ちD/Cは、次の方法で測定した。
【0105】
まず、発泡熱可塑性樹脂シートの両側面からシート幅の15%を超える内部位置において、20(シート幅方向)cm×20(押出し方向)cmの領域を選び、この領域内の3箇所で、シートの押出し方向と厚み方向に平行な断面と、シートの幅方向と厚み方向に平行な断面とを有するサンプルを切り出した。次に、これら各サンプルについて、発泡熱可塑性樹脂シートの両表面(表裏面)から全厚みの20%を超える内部位置に当たる領域におけるシートの押出し方向に平行な断面の顕微鏡拡大写真を撮影した。この写真から、発泡熱可塑性樹脂シートの1mm2の正方形領域内に存在する気泡のうちの半数以上の各気泡について、c(厚み方向の径)とd(押出し方向の径)を図12に示した方法で測定した。こうして得られた全ての領域毎のc1、c2、…、cn並びにd1、d2、…、dnの値から、c、dの平均値であるC、Dを得、さらにD/Cを得た。ここで、n≧30である。
【0106】
また、(発泡熱可塑性樹脂シートの幅方向の平均気泡径)/(発泡熱可塑性樹脂シートの厚み方向の平均気泡径)、即ちE/Cは、次の方法で測定した。
【0107】
まず、上記の3つのサンプルについて、発泡熱可塑性樹脂シートの両表面(表裏面)から全厚みの20%を超える内部位置に当たる領域におけるシートの幅方向に平行な断面の顕微鏡拡大写真を撮影した。この写真から、発泡熱可塑性樹脂シートの1mm2の正方形領域内に存在する気泡のうちの半数以上の各気泡について、c(厚み方向の径)とe(幅方向の径)を図12に示した方法で測定した。こうして得られた全ての領域毎のc1、c2、…、cn並びにe1、e2、…、enの値から、c、eの平均値であるC、Eを得、さらにE/Cを得た。ここで、n≧30である。
【0108】
なお、このシートの両側面からシート幅の15%を超える内部が20cmの長さに満たない場合には、適宜上記の面積が400cm2となるようにサンプリングを行い、上記と同様にしてD/C、E/Cを求める。
【0109】
また、発泡熱可塑性樹脂シート6の表面平滑性は、中心線平均表面粗さRaで評価した。中心線平均表面粗さRaは、JIS B0601に準じて測定した。但し、測定条件は、カットオフ値0.8mm、測定長さ10mm、駆動速度0.3mm/Sであり、5点の測定値の平均値である。
【0110】
【表2】
【0111】
中心線平均表面粗さRa(mm) ○:Ra≦0.4
△:0.4<Ra≦0.8
×:0.8<Ra
C:厚み方向の平均気泡径
D:押出し方向の平均気泡径
E:幅方向の平均気泡径
上記のような気泡形状を有する本実施例の発泡熱可塑性樹脂シート6は、発泡倍率が高く、厚みが厚いことが確認できた。
【0112】
【発明の効果】
本発明に係る発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置は、以上のように、減圧室を囲む壁部の少なくとも一部が複数の真空引き孔を有する部材からなり、該部材を介して真空引きが行われる構成である。
【0113】
本発明に係る発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置は、さらに、上記複数の真空引き孔を有する部材が多孔質部材であるという構成を有する。
【0114】
これにより、発泡性熱可塑性樹脂体や発泡熱可塑性樹脂体(発泡熱可塑性樹脂シート)が減圧室の壁面に接触しても、従来の吸引口を介して行っていた製造装置のように、真空を引けなくなるようなことがない。
【0115】
その結果、発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置の小型化が可能になるという効果を奏する。
【0116】
本発明に係る発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置は、さらに、上記多孔質部材の真空引き孔の径が、100μm以下であるという構成を有する。
【0117】
これにより、真空引き孔に、発泡熱可塑性樹脂体を形成する樹脂中の添加剤、溶融樹脂および分解した樹脂が詰まるような不具合を伴うことなく、発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置の小型化が可能になるという効果を得ることができる。
【0118】
また、本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置において、多孔質部材を、多孔性の電鋳殻から構成することができる。
【0119】
また、本発明の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置において、多孔質部材を、焼結合金から構成することができる。
【0120】
これにより、本発明に係る発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置を、容易に実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)は、本発明の実施の一形態における発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置を示す概略の縦断面図、図1(b)は、同平面図である。
【図2】 図1(b)における概略のA−A線矢視断面図である。
【図3】 図3(a)は、図1(a)に示した発泡ゾーンおよび冷却ゾーンにおいて多孔質部材として使用可能なポーラス電鋳の形状およびその表面の凹凸加工を示す概略の縦断面図、図3(b)は、図3(a)に示した構造の他の例を示す概略の縦断面図である。
【図4】 図4(a)は、図3(a)に示した凹凸加工の他の例を示す概略の縦断面図、図4(b)は、図3(a)に示した凹凸加工のさらに他の例を示す概略の縦断面図である。
【図5】 図5(a)は、図1(a)に示した製造装置において、シート状発泡性熱可塑性樹脂体の押出し開始時の状態を示す概略の縦断面図、図5(b)は、図5(a)に示した状態の後であって、減圧室の減圧開始前の状態を示す概略の縦断面図である。
【図6】 図1(a)に示した製造装置において、ダイリップが減圧室内に突出しているダイスを備えた例を示す概略の縦断面図である。
【図7】 図1(a)に示した発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置の他の例を示す概略の縦断面図である。
【図8】 図8(a)は、図7に示した製造装置において、シート状発泡性熱可塑性樹脂体の押出し開始時の状態を示す概略の縦断面図、図8(b)は、図8(a)に示した状態の後であって、減圧室の減圧開始前の状態を示す概略の縦断面図である。
【図9】 図1(a)に示した発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置のさらに他の例を示す概略の縦断面図である。
【図10】 図10(a)は、図1(a)に示した発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置のさらに他の例を示す概略の縦断面図、図10(b)は、同平面図である。
【図11】 図11(a)は、図1(a)に示した発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置のさらに他の例を示す概略の縦断面図、図11(b)は、同平面図である。
【図12】 本発明の一実施例における、図1に示した製造装置により製造された発泡熱可塑性樹脂シートの気泡径の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1 押出機
2 ヘッド部
3 ダイス
3a ダイリップ
4 減圧室
5 引取機
6 発泡熱可塑性樹脂シート
6a シート状発泡性熱可塑性樹脂体(発泡性熱可塑性樹脂体)
6b 筒状発泡性熱可塑性樹脂体(発泡性熱可塑性樹脂体)
7 発泡ゾーン
8 冷却ゾーン
9 成形部
11 外壁部(壁部)
12 可動上壁部(壁部)
12a 壁面
13 可動下壁部(壁部)
13a 壁面
14 内壁部(壁部)
18 冷却水流路
21 凸部
23 可動壁駆動装置
31 シール部材
61 サーキュラーダイス
62 カッター
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂と発泡剤とを溶融・混練する押出機と、該押出機先端に設けられ、押出機にて溶融・混練された発泡性熱可塑性樹脂体をシート状に加工するダイスと、該ダイスより押し出された発泡性熱可塑性樹脂体をさらに発泡させるための減圧室とを備えた発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置において、
上記減圧室を囲む壁部の少なくとも一部が複数の真空引き孔を有する部材からなり、上記複数の真空引き孔を有する部材は多孔質部材であり、上記多孔質部材の真空引き孔の径は100μm以下であり、該部材を介して真空引きが行われることを特徴とする発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置。 - 上記多孔質部材が、多孔性の電鋳殻からなることを特徴とする請求項1記載の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置。
- 上記多孔質部材が、焼結合金からなることを特徴とする請求項1記載の発泡熱可塑性樹脂シートの製造装置。
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1998
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