JP3935755B2 - 溶液製膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液製膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレート、特に57.5ないし62.5%の平均酢化度を有するセルロースアセテートは、その強靭性と難燃性から、フィルムの形状にして写真感光材料の支持体として利用されている。また、セルロースアシレートフィルムは、光学的等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板や偏光板保護フィルム、カラーフィルタの用途に適している。
【0003】
一般に、セルロースアシレートフィルムは溶液製膜法により製造されている。溶液製膜法は、メルトキャスト法などの他の製造方法と比較して、光学的性質や物性が優れたフィルムを製造することができる。この溶液製膜法では、以下のようにフィルムが形成される。始めに、セルロースアシレートを溶剤中に溶解した溶液(以下、ドープと称する)を調製する。ドープには製造されるフィルムの目的に応じて、様々な添加剤が付与される。次に、ドープをドラムやスチールバンドなどの支持体上に流延した後に乾燥して、フィルムが得られる。
【0004】
前記支持体から剥離した後のフィルムは、ピンテンタなどのテンタによりフィルムの幅方向に引っ張られて乾燥された後に、多数のローラを有する乾燥室に送られ、ここで各ローラに巻き付いて乾燥が更に促進される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ピンテンタを用いる場合に、延伸する際にピンが差し込まれる部分に裂けが発生したり、またはフィルム中の揮発成分によってピンの周辺部分に発泡が生じることがある。なお、発泡の問題は乾燥温度を下げることにより改善されるが、乾燥温度を下げると乾燥工程を長くせざるを得ず、設備コストが増大するという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、裂けと発泡との発生を抑制するようにした溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、セルロースエステル溶液を流延ダイにより支持体に流延し、支持体上で冷却ゲル化してなるウェブを前記支持体からはぎ取った後に、ピンテンターのピンを前記ウェブの幅方向両端の耳部に差し込んで幅方向に延伸し、前記ピンテンターからのウェブを乾燥した後に、前記耳部の内側にナーリングを付与し、このナーリングを付与したウェブの前記耳部を切断し、前記耳部を切断したウェブをロール状に巻き取って製膜する溶液製膜方法において、前記耳部を除いた乾燥後の製品部分の平均厚みを30μm以上120μm以下としたときに、前記ピンが差し込まれる耳部の乾燥後の厚みを、前記平均厚みよりも厚く形成して、前記製品部分の平均厚みと前記耳部の厚みとの間に第1の厚み差を設け、前記ナーリングよりも内側の幅方向厚み分布において、前記両端を結んだ直線を基線としたときに、この基線を超えない厚みとし、最も厚い部分と薄い部分の差である第2の厚み差を前記第1の厚み差よりも小さくして設け、前記第2の厚み差の最大値がウェブ幅方向のほぼ中央部にあり、前記中央部に向かうに従い次第に厚みが減るように、前記流延ダイのリップのクリアランスを前記ウェブの幅方向の各部において調節することを特徴とする。また、本発明は、前記第1の厚みさを、前記平均厚みが30μmのときに5μm、前記平均厚みが120μmのときに70μmとなるように、前記平均厚みに対して5μm以上70μm以下の範囲とし、前記第2の厚み差を0.3μm以上4μm以下の範囲とすることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
[フィルム]
本発明のフィルムは、溶液製膜法によって形成されるものであれば特に限定されない。特に好ましくは、偏光板保護フィルムなどに用いられるセルロースアシレートフィルムである。セルロースアシレートフィルムは、種々のエステルのセルロースアシレートを用いることが可能である。しかしながら、偏光板保護フィルムとしての機能から、寸法の安定性に優れた57.5から62.5%の平均酢化度のセルロースアセテートを用いることが好ましい。もっとも好ましくは、平均酢化度が58.0から62.5%のセルロースアセテートである。
【0010】
[溶剤]
本発明の溶液製膜フィルムは、公知の溶剤を使用したドープから製造することができる。フィルムの原料にセルロースアシレートを用いた場合、溶剤には、メチレンクロライド(ジクロルメタン)などのハロゲン化炭化水素、エステル、エーテル、アルコールなどを使用することができる。また、これら溶剤を複数混合させた溶剤から製膜したフィルムも本発明には含まれる。
【0011】
溶解したドープは濾過により異物を除去することが一般的である。濾過には濾紙、濾布、不織布、金属メッシュ、焼結金属、多孔板等、公知の各種濾材を用いることが可能である。濾過することにより、ドープ中の異物、未溶解物を除去 することができ、製品フィルム中の異物による欠陥を軽減することができる。
【0012】
また、一度溶解したドープを加熱して、さらに溶解度の向上を図ることもできる。ドープは種々の方法で加熱してよく、例えば、静置したタンク内で撹拌しながら加熱する方法、多管式、静止型混合器付きジャケット配管等の各種熱交換器を用いてドープを移送しながら加熱する方法などを用いてよい。また、加熱工程の後に冷却工程を設け、装置の内部を加圧することにより、ドープの沸点以上の温度に加熱することも可能である。これらの加熱処理を施すことにより、完全に溶解されていなかった微小な未溶解物を溶解することができ、製品フィルムの異物の減少、濾過の負荷軽減が図れる。
【0013】
[添加剤]
さらに、公知の添加剤をドープに添加させることも可能である。添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤などが挙げられるがこれらに限定されない。また、ドープ中には、他の添加剤としてシリカ、カオリン、タルクなどを添加することも可能である。これらの添加剤は、ドープを調製する際に同時に混合してもよく、また、ドープを調製した後に、移送する際に静止型混合器などを用いてインラインで混合してもよい。
【0014】
図1はセルロースアシレートフィルムの製膜ラインの一例を示している。セルロースアシレートと溶媒とはミキシングタンク10内に注入され、撹拌翼11で撹拌されてドープ12が調製される。この時、ドープ12には、疎水性可塑剤及び紫外線吸収剤などの添加剤を混合してもよい。ドープ12は、ポンプ13により濾過装置14に送られて不純物が除去される。さらに、ドープ12は、一定の流量で流延ダイ15に送られ、ベルト16上に流延される。そして、図示しない駆動装置により回転駆動されるベルト16上で徐々に溶剤が揮発し、フィルム17が形成される。なお、ベルトに代えてドラムに流延してもよい。
【0015】
図2に示すように、流延ダイ15のリップ15aには、そのクリアランスCを調整するための調整ボルト25が設けられており、これを回動することにより、クリアランスCの調整が可能になる。この調整ボルト25は、流延ダイ15の幅方向に適宜間隔で設けられており、本実施形態ではピッチpは30mmピッチにしてある。この調整ボルト25の回動によってダイリップ15bが回転変位して、クリアランスCは300〜3000μmの範囲で調整可能にされる。このクリアランスCを変更することにより、後に説明するように、フィルム17の厚みむらの発生を抑えることができる。なお、調整ボルト25のピッチpは、好ましくは10〜100mmである。また、調整ボルト25は等間隔で配置する必要はなく、各調整ボルト25の間隔を適宜変更してよい。また、調整ボルト25は、流延ダイ15の流延方向に配置し、調整ボルト25の回動によりダイリップ15bを僅かに回転変位させることで、クリアランスCを変更するようにしているが、このクリアランスの変更は上記の方法に限定されるものではなく、他の種々の方法で行ってよい。
【0016】
図1に示すように、フィルム17がテンタ18に導入される時の、フィルム17中の揮発分Xは、10〜250重量%であることが好まく、15〜120重量%が特に好ましい。250重量%を超えるとフィルムの自己支持性がなくなり、テンタ18による延伸が困難になる。また、反対に10重量%より小さい時には、フィルム17の乾燥が進んでいるためフィルム17の延伸が困難になる。なお、フィルムの乾量を基準とした揮発分Xは、
揮発分X(%)={(フィルムサンプルの重量(g)−B)/B}×100
から求めている。フィルムサンプルの重量は、テンタに導入する前のフィルムの一部をフィルムサンプルとして取り出して測定した値である。また、Bは、そのサンプルフィルムを115℃で空気恒温槽にて1時間乾燥した後に測定した重量(g)である。
【0017】
テンタ18では、図3に示すように、無端チェーン30に多数のピンプレート31が取り付けられている。ピンプレート31には多数のピン32が植設されており、このピン32がフィルム17の両耳部17aに差し込まれる。この後に、ピンプレート31は乾燥経路を移動しながら、牽引機構33によりフィルム17の幅方向に牽引される。これにより、フィルム17は幅方向に延伸されながら乾燥される。
【0018】
なお、延伸時の幅方向におけるフィルム17の張力は、フィルム17の組成や延伸率によって異なるが250〜5000N/cm2 が好ましい。また、フィルムの延伸率は2〜40%が好ましい。延伸率が2%未満であるとフィルム17を平面にする延伸が困難になり、逆に40%を超えるとピン孔などから裂けてしまうため、好ましくない。
【0019】
図1に示すように、ピンテンタ18を出たフィルム17はローラ23、24により乾燥ゾーン20に送られて多数のローラ19で搬送されながら乾燥されたのち、冷却ゾーン21を通過して常温まで冷却されて巻取り機22で巻き取られる。この巻き取りの前にナーリング処理と耳切り処理とが行われる。ナーリング処理では、刻印ローラ26によりフィルム17の両端部に微細なエンボスによるナーリングが付与される。また、耳切り処理では、耳切り装置27により、ピン32が差し込まれた耳部17aが切り落とされる耳切りが行われる。ナーリング処理と耳切り処理とが行われて巻取り機22で巻き取られたフィルムは、別の工程に送られ、ここで、光学補償フィルムや偏光板が製造される。
【0020】
図4は、前記フィルム17の幅方向における厚み分布を示しており、乾燥後のものであり、両耳部を切り落とさない状態のものを示している。符号A1は製品となるフィルム17の範囲を示しており、符号A2,A3は耳部17aとなる範囲を示している。本発明では、乾燥後の製品としてのフィルム17の厚みよりも、耳部17aの厚みがその厚み差さΔt1が50μmとなるように、厚くされる。なお、この厚み差Δt1は5〜70μmあればよく、乾燥後の製品としてのフィルム(耳部を除いたもの)の平均厚みts1を基準にして決定される。例えば、製品としてのフィルム平均厚みts1が30μmの場合には5μmの厚み差となり、120μmの場合には70μmの厚み差となる。
【0021】
なお、厚み差Δt1が5μm未満の場合には、幅方向にピンテンタ18で延伸する際に、ピン32の差し込み部分からフィルム耳部17aに裂けが発生する。また、厚み差Δt1が70μmを超えると、フィルム17中の揮発成分が増えるため、テンタ18内の乾燥工程においてピン32の周辺に発泡が発生してしまう。したがって、厚み差Δt1を5〜70μmの範囲にするとこにより、耳部17aに裂けもなく、また、製品側にピン32による温度上昇に起因した発泡の発生も抑えられる。
【0022】
図5は、ナーリング処理後に両耳部17aを切り落としたときの、フィルム17の幅方向における厚み分布を示しており、同様に乾燥後のものである。フィルム17の両端部には、微細な凹凸部分からなるナーリング28が付与される。また、ナーリング28の内側の端部同士を結んだ直線からなる基線L1に対して、厚み分布はこの基線L1から突出することがないようにされている。また、最も厚い部分と薄い部分の第2の厚み差Δt2を0.3μm以上4μm以下にしている。なお、この差Δt2は好ましくは0.4μm以上3.5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3.0μm以下である。また、フィルム17の厚みは30μm以上200μm以下が好ましく、幅は500mm以上3000mm以下が好ましく、より好ましくは1500mm以上2000mm以下である。
【0023】
図6に示すように、この差Δt2が0.3μm未満の従来例の場合には、ロール状にフィルムを巻き取った時にフィルム同士で弱い接着が発生してしまう。また、図7に示すように、差Δt2が4μmを超えると、ロール状にフィルムを巻き取ったときにロール状フィルムの上面が経時により陥没し、フィルム17が変形してしまう。
【0024】
前記厚み分布は、図5に示すように、差Δt2がフィルム幅方向のほぼ中央部にあり、中央部に向かうに従い次第に厚みが減るような下方に湾曲した分布となることが好ましい。このように、下方に湾曲した厚み分布とすることにより、図6に示すフィルムの厚み分布のように部分的に前記基線L1から突出した部分D1,D2,D3がなくなり、ロール状に巻き取ったときに、この突出部分D1〜D3でフィルム17同士が接着してしまうことがなくなる。したがって、次のマット剤などの塗布工程において、接着した部分が剥離されるときの帯電ムラの発生がなくなり、帯電ムラに起因するハジキを無くして、マット剤を均一に塗布することができる。
【0025】
図4及び図5に示すようなフィルム幅方向における厚み分布を得るためには、流延時における流延ダイのリップのクリアランスCをその幅方向で変更する。例えば、フィルム17を厚くしたい場合にはその厚くしたい部位に対応する流延ダイのリップ部分のクリアランスCを広くする。また、フィルムを薄くしたい場合には薄くしたい部位に対応する流延ダイ15のリップ15aのクリアランスCを狭くする。クリアランスCは、図2に示すようにクリアランス調整ボルト25を回動することにより変更する。なお、調整ボルト25に代えて、他の押圧部材によりリップを押圧して変位または変形させクリアランスCを変更してもよい。
【0026】
上記実施形態では、単層のフィルムを製膜する際に用いる流延ダイ15を用いたが、この他に、マルチマニフォールド型の共流延ダイを用いて複層構成のフィルムを製造する場合にも、本発明を適用することができる。同様にして、フィードブロック型の共流延ダイを用いてもよい。さらには、2個の流延口を用いて、第1の流延ダイから支持体に成型したフィルム上に第2の流延ダイから流延を行なう製造方法においても、総厚みが本発明の範囲に入るように各流延ダイを調節して、本発明を適用してもよい。なお、各流延ダイはコートハンガーダイを使用しているが、これに限定されるものではなく、Tダイ等の他の形状であってもよい。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0028】
[原料ドープの調製]
まず、セルローストリアセテート(置換度2.8)89.3重量%、トリフェニルフォスフェート7.1重量%、ビフェニルジフェニルフォスフェート3.6重量%からなる固形分100重量部に対して、シリカ微粒子分散液を適宜添加した。さらに、ジクロルメタン92重量%、メタノール8重量%の混合溶媒を適宜添加し、撹拌して固形分を溶解し、ドープを調製した。ドープの固形分濃度は18.5重量%であった。
【0029】
(実施例)
上記ドープを図1の製膜ラインで流延し、ドープが自己支持性を持つまでベルト16上で乾燥した後にフィルム17としてはぎ取って、テンタ18に導入した。テンタ18への導入時のフィルム17の揮発分Xは55%であった。テンタ18で延伸率を7%として幅方向にフィルムを延伸した。テンタ離脱直後から100N/mのテンションでロール搬送を行ない、さらに乾燥して巻き取った。この時のフィルムの乾燥厚みは80μmであり、また、流延ダイ15のリップ15aのクリアランスCを調整ボルト25を回動して、幅方向の各部において変更し、図4及び図5に示すような乾燥後の厚み分布を得た。
【0030】
本実施例では第1の厚み差Δt1が40μmであり、耳部17aに裂けもなく、また、製品側にピン32による温度上昇に起因した発泡の発生も無かった。また、耳部17aを切り落とした後の幅方向の厚み分布においても、部分的に突出したところがなく、ロール状に巻き取ったときにこの突出部分で接着が発生することがなかった。このため、次のマット剤塗布工程において、突出部分に起因する接着による剥離時の帯電むらが発生することがなく、ほぼ均一にマット剤を塗布することができた。さらに、ロール状に巻き取った時に経時による陥没がなく、フィルム17の変形の発生が抑えられた。
【0031】
(比較例1)
図8に示すような厚み分布が得られるように、流延ダイ15のリップ15aのクリアランスCを制御した以外は、実施例と同様にして製膜した。この場合には、乾燥後のフイルム幅方向における厚み分布が図8に示すように、厚み差Δt1が75μmとなった。この実施形態では、フィルム中の揮発成分の増加によって、テンター内の乾燥工程においてピンの周辺に発泡が発生した。
【0032】
(比較例2)
図9に示すような厚み分布が得られるように、流延ダイ15のリップ15aのクリアランスCを制御した以外は、実施例と同様にして製膜した。この場合には、乾燥後のフイルム幅方向における厚み分布が図9に示すように、厚み差Δt1が3μmとなった。この比較例2では、ピン孔から裂けが発生した。
【0033】
(比較例3)
図6に示すような厚み分布が得られるように、流延ダイ15のリップ15aのクリアランスCを制御した以外は、実施例と同様にして製膜した。この場合には、乾燥後のフイルム幅方向における厚み分布が図6に示すように、製品フィルム17には、部分的に突出した部分D1,D2,D3が発生し、しかもこの突出部分D1〜D3が基線L1を超えて突出していた。このため、ロール状に巻き取った時にこの突出部分D1〜D3で接着が発生し、次のマット剤塗布工程で、フイルム17を引き出す際に、接着部分の剥離により帯電ムラが発生し、これに起因してマット剤の塗布ムラが発生した。
【0034】
(比較例4)
図7に示すような厚み分布が得られるように、流延ダイ15のリップ15aのクリアランスCを制御した以外は、実施例と同様にして製膜した。この場合には、乾燥後のフイルム幅方向における厚み分布が図7に示すように、第2の厚み差Δt2が5μmとなった。この場合には、ロール状にフィルムを巻き取ったときにロール状フィルムの上面が経時により陥没し、フィルム17が変形してしまった。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、セルロースエステル溶液を流延ダイにより支持体に流延し、支持体上で冷却ゲル化してなるウェブを前記支持体からはぎ取った後に、ピンテンターのピンを前記ウェブの幅方向両端の耳部に差し込んで幅方向に延伸して製膜する溶液製膜方法において、前記ピンが差し込まれる耳部の乾燥後の厚みを、前記耳部を除いた乾燥後の製品部分の平均厚みに対して5〜70μm厚くし、第1の厚み差を設けたから、耳部に裂けもなく、また、ピンによる温度上昇に起因した発泡の発生が抑制される。
【0036】
セルロースエステルフィルムであって、このフィルムの両端部に設けられたナーリングよりも内側の幅方向厚み分布において、前記両端部を結んだ直線を基線としたときに、この基線を超えない厚みとし、かつ最も厚い部分と薄い部分の差を0.3μm以上4μm以下にしたから、製品フィルムとしてロール状に巻き取ったときにフィルム同士が接着してしまうことがなくなり、次のマット剤等の塗布工程において、接着部分の剥離による帯電むらが発生することがなく、マット剤等を均一に塗布することができる。したがって、マット剤等の塗布むらのないフィルムが得られ、光学補償フィルム、偏光板用保護フィルム等の光学部材として用いて好適なものとなる。また、前記厚み分布は、前記差の最大値がフィルム幅方向のほぼ中央部にあり、前記中央部に向かうに従い次第に厚みが減るようにしたから、厚み分布において部分的な突出部分がより一層なくなり、塗布むらの発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶液製膜方法を説明するための概略図である。
【図2】フィルムの幅方向における厚み分布を変えるための、流延ダイの概略を示す斜視図である。
【図3】本発明で用いられるピンテンタの要部を示す斜視図である。
【図4】本発明により得られるフィルムの幅方向における厚み分布を示す線図であり、横軸は幅方向位置を示し、縦軸は厚みを示している。
【図5】本発明により得られる製品フィルムの幅方向における厚み分布を示す線図であり、耳切り処理後のものを示している。
【図6】比較例1でのフィルム幅方向における厚み分布を示す線図である。
【図7】比較例2でのフィルム幅方向における厚み分布を示す線図である。
【図8】比較例3でのフィルム幅方向における厚み分布を示す線図である。
【図9】比較例4でのフィルム幅方向における厚み分布を示す線図である。
【符号の説明】
12 ドープ
15 流延ダイ
15a リップ
16 ベルト
17 フィルム
17a 耳部
18 テンタ
25 クリアランス調整ボルト
30 無端チェーン
31 ピンプレート
32 ピン
C クリアランス
Claims (2)
- セルロースエステル溶液を流延ダイにより支持体に流延し、支持体上で冷却ゲル化してなるウェブを前記支持体からはぎ取った後に、ピンテンターのピンを前記ウェブの幅方向両端の耳部に差し込んで幅方向に延伸し、前記ピンテンターからのウェブを乾燥した後に、前記耳部の内側にナーリングを付与し、このナーリングを付与したウェブの前記耳部を切断し、前記耳部を切断したウェブをロール状に巻き取って製膜する溶液製膜方法において、
前記耳部を除いた乾燥後の製品部分の平均厚みを30μm以上120μm以下としたときに、前記ピンが差し込まれる耳部の乾燥後の厚みを、前記平均厚みよりも厚く形成して、前記製品部分の平均厚みと前記耳部の厚みとの間に第1の厚み差を設け、
前記ナーリングよりも内側の幅方向厚み分布において、前記両端を結んだ直線を基線としたときに、この基線を超えない厚みとし、最も厚い部分と薄い部分の差である第2の厚み差を前記第1の厚み差よりも小さくして設け、
前記第2の厚み差の最大値がウェブ幅方向のほぼ中央部にあり、前記中央部に向かうに従い次第に厚みが減るように、
前記流延ダイのリップのクリアランスを前記ウェブの幅方向の各部において調節することを特徴とする溶液製膜方法。 - 前記第1の厚み差を、前記平均厚みが30μmのときに5μm、前記平均厚みが120μmのときに70μmとなるように、前記平均厚みに対して5μm以上70μm以下の範囲とし、
前記第2の厚み差を0.3μm以上4μm以下の範囲とすることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
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