JP3935256B2 - 熱交換器、電気防食装置および熱交換器の電気防食方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護する電気防食装置、当該電気防食装置を付加した熱交換器および電気防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタン、プロパン、ブタン、石油、灯油などの燃料を燃焼させた際に生じる熱を吸収して、給水等の被加熱流体を加熱する熱交換器では、排気の潜熱を吸収する際に生じる凝縮水が熱交換器の表面に生じることがある。この凝縮水は、燃焼空気が高温で酸化して生成された窒素酸化物(NOx)やガス漏れ検知のために燃焼ガスに添加された付臭剤が酸化することで生成された硫黄酸化物(SOx)等が溶解し、硝酸と硫酸との溶融したpH2〜3の酸性の水滴になっている。
【0003】
このような結露した酸性の凝縮水によって熱交換器が腐食され、内部の流体が漏れ出るような事態を防止するために、従来の熱交換器では、その表面を耐酸性の塗料などで被覆したり、熱交換器の近傍に電極を配置し、当該電極が陽電極に、熱交換器が陰電極になるように電圧をかけて電気防食するなどの対策を施していた。このほか、熱交換器に付着した凝縮水を水で洗い流すようなことも行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐酸性の塗膜にピンホールなどの欠落部分が生じたり、長年の使用によって塗膜が劣化して欠落部分が生じることがあり、被膜で被覆したのみでは、熱交換器を凝縮水による腐食から十分に保護することができなかった。
【0005】
また、熱交換器は複雑な形状を成しているので、すみずみまで完全に洗い流すことは難しかった。さらにpH6以上まで希釈して初めて腐食性が低下するので、結露時に約pH2の凝縮水をpH6以上に希釈するには、残留する凝縮水10ミリリットルに対して約100リットルの水が必要になり、洗浄によって防食するものでは多量の水を要してしまうという問題があった。
【0006】
一方、電気防食を施したものでは、燃焼停止後、器具が長時間使用されないと、前回の燃焼中に結露した凝縮水中の水分が蒸発して減少し、電極と熱交換器との間に防食電流は流れないが、熱交換器の表面にはまだ凝縮水が付着しているという状態が生じる。凝縮水に含まれる腐食成分である酸は蒸発しないので、残留している凝縮水は濃縮した腐食性の高いものになっている。このように、燃焼停止後、長時間が経過して蒸発が進むと、電気防食を行うことができなくなり、酸性度の高い残留している濃縮された凝縮水によって熱交換器が腐食されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、燃焼停止後に長時間が経過して結露した凝縮水中の水分の蒸発が進んでも、電気防食が有効に機能する熱交換器およびその電気防食方法および電気防食装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を、前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護する電気防食装置において、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極(60)と、前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源(81)と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極(60)とに散水する散水手段(84、72、70)とを有し、
前記電源(81)は、燃焼停止後も前記電極(60)と前記防食箇所の間に電圧を印加し、
前記散水手段(84、72、70)は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする電気防食装置。
【0009】
[2]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器であって前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護するための電気防食装置を付加したものにおいて、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極(60)と、前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源(81)と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極(60)とに散水する散水手段(84、72、70)とを有し、
前記電源(81)は、燃焼停止後も前記電極(60)と前記防食箇所の間に電圧を印加し、
前記散水手段(84、72、70)は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器。
【0010】
[3]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器であって前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護するための電気防食装置を付加したものにおいて、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極(60)と、前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源(81)と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極(60)とに散水する散水手段(84、72、70)とを有し、
前記防食箇所は、前記凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)であって電気的絶縁性を有するもので被覆され、
前記電源(81)は、燃焼停止後も前記電極(60)と前記防食箇所との間に電圧を印加し、
前記散水手段(84、72、70)は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器。
【0011】
[4]前記電極(60)と前記防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段(82)を備え、前記散水手段(84、72、70)は、前記導電率検知手段(82)によって検知された導電率が所定の範囲から外れたとき散水することを特徴とする[1]記載の電気防食装置または[2]、[3]記載の熱交換器。
【0012】
[5]前記電極(60)と前記防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段(82)を備え、前記散水手段(84、72、70)は、散水を間欠的に行うとともに各回の散水直後における前記電極(60)と前記防食箇所との間の導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止することを特徴とする[1]、[4]記載の電気防食装置または[2]、[3]、[4]記載の熱交換器。
【0013】
[6]前記熱交換器は、排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用の熱交換器(40)とこれよりも排気通路の下流側に配置され排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用の熱交換器(50)との双方を有するものにおける前記潜熱回収用の熱交換器(50)であることを特徴とする[1]、[4]、[5]記載の電気防食装置または[2]、[3]、[4]、[5]記載の熱交換器。
【0014】
[7]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を前記排気の潜熱を吸収することで結露した凝縮水による腐食から保護する熱交換器の電気防食方法において、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に電極(60)を配置し、
前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加するとともに当該電圧の印加を燃焼停止後も継続して行い、
燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器の電気防食方法。
【0015】
前記本発明は次のように作用する。
燃料を燃焼させた際に生じる排気からその潜熱を熱交換器によって回収すると、酸性の凝縮水が結露する。熱交換器の防食箇所とその近傍に配置された電極(60)との間には、防食箇所が陰電極に、電極(60)が陽電極になるように電源(81)から電圧が印加されているので、結露した凝縮水が防食箇所と電極(60)との間に付着している間は、当該凝縮水を通じて電流が流れ、熱交換器の電気防食が行われる。
【0016】
燃焼が停止すると、燃焼中に結露した凝縮水中の水分は蒸発して次第に減少するが、散水手段(84、72、70)によって防食箇所と電極(60)とに散水を行い、これらを濡れた状態に維持し、防食電流の流れ得る状態を形成する。これにより、燃焼停止後に長時間が経過して凝縮水中の水分の蒸発が進んでも、電気防食が有効に機能し、凝縮水による腐食から熱交換器を適切に保護することができる。
【0017】
また、熱交換器の防食箇所を凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)であって電気的絶縁性を有するもので被覆しているので、当該被膜(53)で覆われている部分については、この被膜(53)によって凝縮水による腐食から保護することができる。一方、ピンホールなど被膜(53)の欠落している部分については電気防食によって保護することができる。
【0018】
このように被膜(53)で被覆することにより、被膜(53)の欠落部分だけに電気防食が作用するので、供給すべき電流量が少なくなり電源(81)の小型化を図ることができる。また欠落箇所だけに電流が流れるので、電極(60)から比較的遠い箇所に欠落部分があっても、十分な防食効果を得ることができる。
【0019】
電極(60)と防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段(82)を設け、散水手段(84、72、70)は、検知される導電率が所定範囲から外れたときに、散水する。蒸発により凝縮水が濃縮されると、凝縮水の導電率が上昇し所定範囲から外れる。また、防食箇所と電極(60)間に存在していた凝縮水がすべて蒸発して無くなると、電極(60)間の導電率は急激に低下して所定範囲から外れる。
【0020】
たとえば、定電圧電源(81)から一定電圧を印加した場合には、凝縮水の濃縮が進むにつれて導電率が上昇して電流量が増加する。また電極(60)間の凝縮水が完全に蒸発して無くなると、導電率は急激に低下して電流が流れなくなる。定電流電源(81)を用いた場合には、蒸発が進むにつれて防食箇所と電極(60)との間の電圧が低下し、凝縮水が完全に蒸発した時点で、電源(81)から供給可能な最大電圧まで急激に電圧が上昇する。
【0021】
そこで、電極(60)間の導電率(定電圧電源(81)の場合は電流量、定電流電源(81)の場合は電圧値)が所定範囲から外れたときに散水することで、凝縮水の濃縮が一定以上進んだときや蒸発して無くなったときなど、電気防食を継続するために必要とされるタイミングで散水を行うことができる。また、常時散水せずに、必要なときだけ散水するので節水することができる。
【0022】
さらに、散水直後における導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止する。散水を繰り返すことで腐食成分は次第に洗い流されるので、腐食性がほとんど無くなった後は、電気防食を行う必要がなくなり、散水を継続しなくてもよい。
【0023】
ところで、蒸発が進むと凝縮水は極限まで濃縮されるので、電極(60)と受熱管(51)等との間に付着している凝縮水が完全に蒸発して無くなる直前における導電率は、散水を繰り返してもほとんど変わらない。一方、散水直後は、電極(60)と受熱管(51)との間に水が十分存在するので、残存する腐食成分の絶対量が、凝縮水の濃度、すなわち導電率にほぼ反映される。そこで、散水直後の導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、腐食成分の絶対量が許容値以下になったと判定し、以後の散水を中止している。さらに、最後に散水を行った後、あるいは最後に散水した水が蒸発してなくなった後は、電源(81)からの電圧印加を停止するようにするとよい。
【0024】
なお、排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用の熱交換器(40)とこれよりも排気通路の下流側に配置され排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用の熱交換器(50)の双方から構成される熱交換器においては、潜熱回収用の熱交換器(50)側に多量の凝縮水が発生するので、先に述べた電気防食および散水を、当該潜熱回収用の熱交換器(50)側に施すようにすればよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態は、本発明にかかる熱交換器を給湯器10に適用したものである。図2に示すように、給湯器10は、排気中の顕熱を主として吸収する顕熱回収用熱交換器40と、これよりも排気の流れで下流側に配置され、主として排気の潜熱を吸収する潜熱回収用熱交換器50とを備えている。このうち外部電源による電気防食および散水は潜熱回収用熱交換器50側に対して行われる。また顕熱回収用熱交換器40での熱交換効率は、約75パーセントに、潜熱回収用熱交換器50での熱交換効率は約15パーセントになるようにそれぞれフィンの枚数やその大きさ等が設定されている。
【0026】
給湯器10は、燃焼室11を備えており、当該燃焼室11の下部には、バーナー12が配置されている。バーナー12の上方には、顕熱回収用熱交換器40が、さらに上方には潜熱回収用熱交換器50が配置されている。潜熱回収用熱交換器50のフィン52に開設された穴には、電気防食を行うための電極部60が挿入され取り付けられている。
【0027】
顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50の間には、潜熱回収用熱交換器50に生成する凝縮水を受け止め、凝縮水が顕熱回収用熱交換器40に落下するのを防止するための受け皿13が取り付けられている。受け皿13は、燃焼室11を右端の一部を除いて上下に仕切るものであり、顕熱回収用熱交換器40を経由した後の排気は、受け皿13が無い燃焼室11右端の開口部14を通じて潜熱回収用熱交換器50の配置されている排気通路部15に流れるようになっている。
【0028】
受け皿13は、開口部14側から燃焼室11の左端側に向けて下り傾斜しており、傾斜の下端部分には、受け皿13によって回収された凝縮水を一時的に溜めるドレン受け16が設けられている。ドレン受け16の底部には、凝縮水の排出通路17が接続され、当該排出通路17の途中には、酸性の凝縮水を中和するための中和処理器18が取り付けられている。
【0029】
潜熱回収用熱交換器50の入側には給水の流入する給水水管21が接続され、潜熱回収用熱交換器50の出側は、連結水管22によって顕熱回収用熱交換器40の入側と接続されている。顕熱回収用熱交換器40の出側には、加熱後の給水の流れ出る給湯水管23が接続されている。
【0030】
給水水管21の入口部近傍には、供給される給水の温度を検知するための入水サーミスタ24が、またその下流側には、通水の有無や通水量を検知するための水量センサー25が取り付けられている。給湯水管23には、その出口部近傍に、出湯される湯の温度を検知するための出湯サーミスタ26が、またその下流側には、出湯される湯の流量を制限するための水量制御弁27が設けられている。
【0031】
潜熱回収用熱交換器50の上方には、潜熱回収用熱交換器50に向けて散水する水の放出口となる散水ノズル70が配置されている。散水ノズル70には、給水水管21から分岐した散水用分岐管71が接続されており、その途中には、給水水管21からの給水を散水ノズル70から散水するか否かを切り替えるための止水弁72が取り付けられている。
【0032】
燃焼室11の左下方には、給気をバーナー12に向けて送り込むための燃焼ファン28が配置されている。またバーナー12に燃焼ガスを送り込むガス供給管31の途中には、燃焼ガスの供給をオンオフ制御するガス電磁弁32、元ガス電磁弁33と、バーナー12へ供給する燃焼ガスの供給量を調整するガス比例弁34が取り付けられている。
【0033】
給湯器10は、給湯器10の動作を統括制御する回路部品を収めた電装基板80を有し、当該電装基板80には、たとえば、台所等に配置され、湯温の設定操作等の受け付けや、各種の状態表示を行うリモコン36が接続されている。なお、電気防食を行うための回路部分および散水を制御するための回路部分は電装基板80に搭載されており、電極部60と電装基板80の間、および止水弁72と電装基板80の間には、それぞれ所定の電気配線が施されている。
【0034】
図3は、潜熱回収用熱交換器50をより詳細に示したものである。潜熱回収用熱交換器50は、加熱すべき給水の通る上下2段に配置された受熱管51と、熱の回収効率を高めるための多数のフィン52とを備えている。ここでは、受熱管51およびフィン52を、それぞれ銅で形成している。このほか受熱管51やフィン52を、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはこれらの合金で形成してもよい。
【0035】
受熱管51およびフィン52は、排気と触れる表面部(防食箇所)を耐酸性を有し、かつ電気的に絶縁性のある被膜53でコーティングしてある。被膜53として、エポキシ、テフロン、アクリル等の有機塗料またはシリコン、セラミックなどを用いることができる。
【0036】
上段の受熱管と下段の受熱管の間には、棒状の電極部60が各受熱管51の延びる方向に沿うように配置されている。電極部60は、チタンを白金でメッキした電極棒61と、電極棒61の周囲を覆うガラス繊維膜62とから構成されている。電極部60は、酸性の凝縮水によって腐食の生じ難い金属であれば良く、たとえばステンレス系の材料で形成してもよい。
【0037】
ガラス繊維膜62は、電極棒61が直接フィン52と電気的に接触して導通してしまうことを防止する機能を果たすものである。ガラス繊維膜62は、網目状になっており、網目の隙間を通じて凝縮水が電極棒61と接触し得るようになっている。電気防食を行う際には、電極棒61が正電位に、潜熱回収用熱交換器50の受熱管51やフィン52等が負電位になるように直流電圧が印加される。
【0038】
なお、被膜53は、親水性を備えたものであっても、撥水性を備えたものであってもよい。親水性を有する場合には、少量の凝縮水が残留する状態になった場合であっても、電極棒61と受熱管51やフィン52との間に広がって、長く導通を確保することができる。一方、撥水性を有するものの場合には、散水によって凝縮水を効率良く洗い流すことができるという効果が得られる。
【0039】
図1は、電気防食および散水の制御を行うための防食散水用回路を示している。防食散水用回路は、直流1ボルトの定電圧を発生する定電圧電源81と、電流検知器82と、電圧印加制御部83と、散水制御部84とから構成されている。定電圧電源71の負極側は受熱管51に接続され、正極側は各電極棒61に接続されている。酸性の凝縮水が受熱管51やフィン52と電極棒61との間に結露したとき、当該凝縮水を介してフィン52等と電極棒61との間が導通し、閉回路が形成され、定電圧電源71から電流が流れることになる。
【0040】
電流検知器72は、凝縮水を介して形成される閉回路に流れる電流を検出するようになっている。電圧印加制御部73は、定電圧電源71から電圧を印加するか否かを切り替える制御回路である。電圧印加制御部73は、燃焼信号85を基にしてバーナー12が燃焼中か否かを判別し、燃焼を開始した時点から、燃焼終了後に、もはや電気防食を施す必要がないと判定されるまでの間、定電圧電源81によって電圧を印加するようになっている。
【0041】
散水制御部84は、潜熱回収用熱交換器50を常に濡れた状態、すなわち、電極棒61と受熱管51やフィン52の間に水の存在する電気防食可能な状態を維持するように止水弁72の開閉を制御する回路部分である。具体的には、燃焼停止後に電流検知器82の検知する電流値が予め定めた所定範囲から外れたとき(ここでは、予め定めた散水基準値を越えた)止水弁72を一定時間(数秒から数十秒程度)開くとともに、散水後の電流値が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を停止させる機能を備えている。より具体的には、次回の燃焼を終了し、燃焼中に結露した凝縮水が濃縮して電流値が再び所定範囲から外れるまでの間、散水動作を停止させるようになっている。
【0042】
次に作用を説明する。
図4は、電気防食を行う際の動作の流れを示している。バーナー12の燃焼が開始すると(ステップS101;Y)、電圧印加制御部83はこれを燃焼信号85によって認識し、定電圧電源81から電極棒61と受熱管51の間に一定の電圧を印加する(ステップS102)。この電圧は約1ボルトに設定されている。
【0043】
バーナー12からの熱は、まず、バーナー12の近傍に配置された顕熱回収用熱交換器40によって吸収される。この際、顕熱回収用熱交換器40の熱交換効率が約75〜80パーセント程度に抑えられているので、顕熱回収用熱交換器40ではほとんど結露が生じない。顕熱回収用熱交換器40によって顕熱の回収された排気は、開口部14を通って潜熱回収用熱交換器50に到達する。
【0044】
潜熱回収用熱交換器50に到達した排気は、200℃〜280℃程度までその温度が低下しているので、潜熱回収用熱交換器50は、主として排気の潜熱を回収し、多量(毎分50mmlほど)の凝縮水が潜熱回収用熱交換器50に結露する。この凝縮水は、燃焼空気が高温で酸化して生成された窒素酸化物(NOx)やガス漏れ検知のために燃焼ガスに添加された付臭剤が酸化することで生成された硫黄酸化物(SOx)等が溶解し、硝酸と硫酸の溶融したpH2〜3の酸性の水滴になっている。
【0045】
結露した凝縮水は、潜熱回収用熱交換器50から落下して受け皿13に受け止められ、ドレン受け16、排出通路17、中和処理器18を通じて排出される。潜熱回収用熱交換器50に結露した凝縮水を受け皿13によって受け止めるので、顕熱回収用熱交換器40の上に凝縮水が落下せず、自身で結露しないことと相まって、顕熱回収用熱交換器40が凝縮水によって腐食されることはほとんどない。
【0046】
一方、潜熱回収用熱交換器50の受熱管51やフィン52は、被膜53によって被覆されているので、当該被膜53にピンホール等の欠落部分が無い限り、酸性の凝縮水によって腐食されることはない。また、バーナー12の燃焼が開始された以後は、受熱管51と電極棒61との間に、定電圧電源81から一定の電圧が印加されているので、被膜53に欠落部分があっても、電気防食が働き、被膜53の欠落部分から腐食することはない。
【0047】
すなわち、受熱管51やフィン52のうち被膜53の欠落部分と電極棒61との間に凝縮水が結露しているときは、受熱管51やフィン52が陰電極になっているので、当該陰電極側で凝縮水中の水素イオンと電子とが結合して水素ガスの発生する反応が起きる。これにより、水素イオンによって受熱管51やフィン52が酸化されて腐食することはない。
【0048】
一方、受熱管51やフィン52等の陰電極から凝縮水中に流れ出た電子あるいは、凝縮水中の硝酸イオンなどの陰イオンは、陽電極である電極棒61側に集まり、その電子が奪われる等して電極棒61から定電圧電源81側へと流れ込む。このようにして、凝縮水を通じて電子、あるいは陰イオンが移動して閉回路が形成されるので、電極棒61と受熱管51やフィン52との間に凝縮水が結露している間は、電流検知器82によって電流が検知される。
【0049】
バーナー12の燃焼が終了すると(ステップS103;Y)、その後、あらたな凝縮水の結露はほとんど起こらなくなるとともに、潜熱回収用熱交換器50に付着している凝縮水の中の水分が次第に蒸発して濃縮され、検知される電流値が次第に増加する。水分の蒸発がさらに進み、電流検知器82によって検知される電流値が、予め定めた散水基準値91を越えると(ステップS104;Y)、散水制御部84は、止水弁72を開き、所定量の水を潜熱回収用熱交換器50の上方から散水する(ステップS106)。
【0050】
これにより、潜熱回収用熱交換器50は、濡れた状態、すなわち、電気防食が有効に機能する状態に維持される。なお、散水基準値91を越える前に、燃焼が再開したときは(ステップS104;N、ステップS105;Y)、新たに結露が始まるので、ステップS102に戻って電気防食が継続される。
【0051】
図5は、燃焼停止後の時間の経過と電流値の変化との関係、および散水の行われるタイミングの関係を示している。燃焼中は、多量の凝縮水が結露するので、ほぼ一定の電流が流れる状態にある。燃焼を停止した時刻T1以後は、凝縮水に含まれる水分のみが除々に蒸発し、腐食成分(硝酸イオン等)は残留するので、濃縮が進み、pH値がさらに低下する。これに従い、電流検知器82の検知する電流値92も徐々に増加する。
【0052】
そして、電流検知器82の検知する電流値が散水基準値91を越えた時点T2から所定時間の経過する時刻T3までの間、止水弁72が開かれて散水が行われる。散水によって腐食成分の濃度が低下するとともに、腐食成分がある程度洗い流されるので、散水の開始と同時に電流値は急激に低下し、散水終了直後には、電流値93等まで低下する。
【0053】
散水終了後は、再び蒸発が進行し、時間の経過とともに電流検知器82の検知する電流値が上昇し、散水基準値91を越えたとき、再び散水が行われる。このような動作を繰り返すうちに、潜熱回収用熱交換器50の表面に残留する腐食成分の絶対量が次第に減少するので、散水直後における電流値94、95等は、散水を行うたびに少しずつ低下する。
【0054】
散水制御部84は、散水直後に検知された電流値が予め定めた終了基準値以下に低下したとき(ステップS107;Y)、これ以上、散水する必要がないと判断し、以後の散水を中止する。また、電圧印加制御部83は、散水制御部84が以後の散水を中止すると判断したとき、電圧の印加を停止するようになっている(ステップS108)。なお、最後に散水した水分が完全に蒸発してなくなったとき、すなわち、電流検知器82の検知する電流値がほぼ「0」に低下したときに電圧の印加を停止するようにしてもよい。
【0055】
散水する水にも、元々ある程度のイオンが溶けているので、凝縮水に含まれていた腐食成分をすべて洗い流しても、散水直後には一定の電流が流れる。また散水する水と同じものが受熱管51の中に存在するので、終了基準値まで電流値が低下した後に電気防食を施しても、内部からの腐食を防ぐことはできず、これ以後、電気防食を施すことにほとんど意味がない。
【0056】
そこで、散水する水に元々溶けているイオンによって導通する程度の電流値を、終了基準値として設定し、凝縮水に含まれていた腐食成分をほぼ完全に洗い流した以後の散水および電圧の印加を停止している。これにより、水が無駄に消費されることがない。なお、電流値が終了基準値以下に低下する前に、燃焼が再開されたときは、ステップS102に戻って電気防食が継続される。
【0057】
このように、濃縮が進む前に散水によって希釈するとともに、潜熱回収用熱交換器50を濡れた状態に維持するので、電気防食を長期間に渡って有効に作用させることができ、濃縮の進んだ凝縮水によって受熱管51やフィン52が腐食されることはない。また、散水は、電気防食を有効に継続できる程度に行えば良いので、電気防食を施さず、腐食成分を単に洗い流して防食するような場合に比べて、散水する水の量を大幅に少なくすることができる。たとえば、pH2程度の凝縮水をpH6まで薄めるためには、凝縮水10ミリリットルに対して約100リットルの水を要するが、電気防食を併用することで極めて少量の水で確実に防食することができる。
【0058】
以上説明した実施の形態では、定電圧電源81によって一定の電圧を印加し、流れる電流値を基にして散水を制御したが、定電流電源から一定の電流を流し、その際の電圧値によって散水を制御してもよい。すなわち、電圧値が散水基準電圧以下に低下したとき、散水を行い、さらに散水直後の電圧が終了基準電圧以上に上昇したとき、以後の散水を停止するようにしてもよい。
【0059】
また、実施の形態では、散水基準値91を越えたとき散水を開始するようにしたが、電極棒61と受熱管51やフィン52との間の水分が完全に無くなり、電流が流れなくなったとき、散水を行うようにしてもよい。ただし、濃縮がある程度進んだ段階で散水を行う方が、濃縮の進んだ凝縮水による腐食を的確に防止することができる。さらに、1回の散水は、一定量、あるいは一定時間で停止しても良いし、電流値が一定値まで低下したとき、あるいは電圧値が一定値まで上昇したときに停止するようにしてもよい。
【0060】
なお、散水を繰り返すごとに、散水基準値91の値を少しずつ低下させるようにしてもよい。すなわち、潜熱回収用熱交換器50に付着している水が減少すれば、電気防食の効かない箇所、つまり、電極棒61に触れることなく、受熱管51やフィン52上に孤立した凝縮水の存在する確率が高まる。したがって、付着量が一定以下に低下したときに散水することが望ましいが、潜熱回収用熱交換器50に付着する水分が同程度まで減少しても、残留する腐食成分の絶対量が少ないほど、電流値は小さくなる。そこで、散水を行うごとに、次回、散水する際の散水基準値91を下げるようにすれば、潜熱回収用熱交換器50に付着している水が一定量まで低下したとき、散水することができ、より適切に電気防食を行うことができる。
【0061】
また、実施の形態では、電流値が散水基準値91以下に低下したとき、散水するようにしたが、予め定めた時間の経過するごとに、定期的に散水するようにしてもよい。また、散水の打ち切りは、散水直後の電流値に基づいて判断することが望ましいが、予め定めた上限回数に達したとき、以後の散水を止めるようにしてもよい。
【0062】
このほか、実施の形態では、顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50の双方を備えた給湯器10において、潜熱回収用熱交換器50側に電気防食および散水を施すようにしたが、たとえば、熱交換器を1つだけ備え、これによって排気の顕熱と潜熱の双方を回収するものに、電気防食および散水を施すようにしても良い。なお、実施の形態では、燃料として燃焼ガスを用いたが、石油や灯油などの液体燃焼を燃焼させるものであってもよい。
【0063】
【発明の効果】
本発明にかかる熱交換器、電気防食装置および熱交換器の電気防食方法によれば、蒸発によって水分が減少して濃縮した凝縮水を、散水手段からの散水によって希釈するととも、防食箇所と電極との間を散水によって濡れた状態に維持するので、燃焼停止後に長時間が経過しても、電気防食が有効に作用し、凝縮水による腐食から熱交換器を適切に保護することができる。
【0064】
また、散水直後における導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止するので、腐食成分がほぼ洗い流された後も散水が継続されて、水を無駄に消費するようなことを防ぎ、節水することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る熱交換器の有する防食散水用回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る熱交換器を用いた給湯器を示す説明図である。
【図3】図2に示した給湯器の有する潜熱回収用熱交換器および電極部を示す斜視図である。
【図4】電気防食および散水を行う際の動作の流れを示す流れ図である。
【図5】燃焼停止後の時間の経過と電流量の変化との関係、および散水の行われるタイミングを関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10…給湯器
12…バーナー
13…受け皿
21…給水水管
40…顕熱回収用熱交換器
50…潜熱回収用熱交換器
51…受熱管
52…フィン
53…被膜
60…電極部
61…電極棒
62…ガラス繊維膜
70…散水ノズル
71…散水用分岐管
72…止水弁
81…定電圧電源
82…電流検知器
83…電圧印加制御部
84…散水制御部
85…燃焼信号
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護する電気防食装置、当該電気防食装置を付加した熱交換器および電気防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタン、プロパン、ブタン、石油、灯油などの燃料を燃焼させた際に生じる熱を吸収して、給水等の被加熱流体を加熱する熱交換器では、排気の潜熱を吸収する際に生じる凝縮水が熱交換器の表面に生じることがある。この凝縮水は、燃焼空気が高温で酸化して生成された窒素酸化物(NOx)やガス漏れ検知のために燃焼ガスに添加された付臭剤が酸化することで生成された硫黄酸化物(SOx)等が溶解し、硝酸と硫酸との溶融したpH2〜3の酸性の水滴になっている。
【0003】
このような結露した酸性の凝縮水によって熱交換器が腐食され、内部の流体が漏れ出るような事態を防止するために、従来の熱交換器では、その表面を耐酸性の塗料などで被覆したり、熱交換器の近傍に電極を配置し、当該電極が陽電極に、熱交換器が陰電極になるように電圧をかけて電気防食するなどの対策を施していた。このほか、熱交換器に付着した凝縮水を水で洗い流すようなことも行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐酸性の塗膜にピンホールなどの欠落部分が生じたり、長年の使用によって塗膜が劣化して欠落部分が生じることがあり、被膜で被覆したのみでは、熱交換器を凝縮水による腐食から十分に保護することができなかった。
【0005】
また、熱交換器は複雑な形状を成しているので、すみずみまで完全に洗い流すことは難しかった。さらにpH6以上まで希釈して初めて腐食性が低下するので、結露時に約pH2の凝縮水をpH6以上に希釈するには、残留する凝縮水10ミリリットルに対して約100リットルの水が必要になり、洗浄によって防食するものでは多量の水を要してしまうという問題があった。
【0006】
一方、電気防食を施したものでは、燃焼停止後、器具が長時間使用されないと、前回の燃焼中に結露した凝縮水中の水分が蒸発して減少し、電極と熱交換器との間に防食電流は流れないが、熱交換器の表面にはまだ凝縮水が付着しているという状態が生じる。凝縮水に含まれる腐食成分である酸は蒸発しないので、残留している凝縮水は濃縮した腐食性の高いものになっている。このように、燃焼停止後、長時間が経過して蒸発が進むと、電気防食を行うことができなくなり、酸性度の高い残留している濃縮された凝縮水によって熱交換器が腐食されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、燃焼停止後に長時間が経過して結露した凝縮水中の水分の蒸発が進んでも、電気防食が有効に機能する熱交換器およびその電気防食方法および電気防食装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を、前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護する電気防食装置において、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極(60)と、前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源(81)と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極(60)とに散水する散水手段(84、72、70)とを有し、
前記電源(81)は、燃焼停止後も前記電極(60)と前記防食箇所の間に電圧を印加し、
前記散水手段(84、72、70)は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする電気防食装置。
【0009】
[2]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器であって前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護するための電気防食装置を付加したものにおいて、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極(60)と、前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源(81)と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極(60)とに散水する散水手段(84、72、70)とを有し、
前記電源(81)は、燃焼停止後も前記電極(60)と前記防食箇所の間に電圧を印加し、
前記散水手段(84、72、70)は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器。
【0010】
[3]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器であって前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護するための電気防食装置を付加したものにおいて、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極(60)と、前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源(81)と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極(60)とに散水する散水手段(84、72、70)とを有し、
前記防食箇所は、前記凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)であって電気的絶縁性を有するもので被覆され、
前記電源(81)は、燃焼停止後も前記電極(60)と前記防食箇所との間に電圧を印加し、
前記散水手段(84、72、70)は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器。
【0011】
[4]前記電極(60)と前記防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段(82)を備え、前記散水手段(84、72、70)は、前記導電率検知手段(82)によって検知された導電率が所定の範囲から外れたとき散水することを特徴とする[1]記載の電気防食装置または[2]、[3]記載の熱交換器。
【0012】
[5]前記電極(60)と前記防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段(82)を備え、前記散水手段(84、72、70)は、散水を間欠的に行うとともに各回の散水直後における前記電極(60)と前記防食箇所との間の導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止することを特徴とする[1]、[4]記載の電気防食装置または[2]、[3]、[4]記載の熱交換器。
【0013】
[6]前記熱交換器は、排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用の熱交換器(40)とこれよりも排気通路の下流側に配置され排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用の熱交換器(50)との双方を有するものにおける前記潜熱回収用の熱交換器(50)であることを特徴とする[1]、[4]、[5]記載の電気防食装置または[2]、[3]、[4]、[5]記載の熱交換器。
【0014】
[7]燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を前記排気の潜熱を吸収することで結露した凝縮水による腐食から保護する熱交換器の電気防食方法において、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に電極(60)を配置し、
前記電極(60)が陽電極(60)に前記防食箇所が陰電極(60)になるようにこれらの間に所定の電圧を印加するとともに当該電圧の印加を燃焼停止後も継続して行い、
燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極(60)とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器の電気防食方法。
【0015】
前記本発明は次のように作用する。
燃料を燃焼させた際に生じる排気からその潜熱を熱交換器によって回収すると、酸性の凝縮水が結露する。熱交換器の防食箇所とその近傍に配置された電極(60)との間には、防食箇所が陰電極に、電極(60)が陽電極になるように電源(81)から電圧が印加されているので、結露した凝縮水が防食箇所と電極(60)との間に付着している間は、当該凝縮水を通じて電流が流れ、熱交換器の電気防食が行われる。
【0016】
燃焼が停止すると、燃焼中に結露した凝縮水中の水分は蒸発して次第に減少するが、散水手段(84、72、70)によって防食箇所と電極(60)とに散水を行い、これらを濡れた状態に維持し、防食電流の流れ得る状態を形成する。これにより、燃焼停止後に長時間が経過して凝縮水中の水分の蒸発が進んでも、電気防食が有効に機能し、凝縮水による腐食から熱交換器を適切に保護することができる。
【0017】
また、熱交換器の防食箇所を凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)であって電気的絶縁性を有するもので被覆しているので、当該被膜(53)で覆われている部分については、この被膜(53)によって凝縮水による腐食から保護することができる。一方、ピンホールなど被膜(53)の欠落している部分については電気防食によって保護することができる。
【0018】
このように被膜(53)で被覆することにより、被膜(53)の欠落部分だけに電気防食が作用するので、供給すべき電流量が少なくなり電源(81)の小型化を図ることができる。また欠落箇所だけに電流が流れるので、電極(60)から比較的遠い箇所に欠落部分があっても、十分な防食効果を得ることができる。
【0019】
電極(60)と防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段(82)を設け、散水手段(84、72、70)は、検知される導電率が所定範囲から外れたときに、散水する。蒸発により凝縮水が濃縮されると、凝縮水の導電率が上昇し所定範囲から外れる。また、防食箇所と電極(60)間に存在していた凝縮水がすべて蒸発して無くなると、電極(60)間の導電率は急激に低下して所定範囲から外れる。
【0020】
たとえば、定電圧電源(81)から一定電圧を印加した場合には、凝縮水の濃縮が進むにつれて導電率が上昇して電流量が増加する。また電極(60)間の凝縮水が完全に蒸発して無くなると、導電率は急激に低下して電流が流れなくなる。定電流電源(81)を用いた場合には、蒸発が進むにつれて防食箇所と電極(60)との間の電圧が低下し、凝縮水が完全に蒸発した時点で、電源(81)から供給可能な最大電圧まで急激に電圧が上昇する。
【0021】
そこで、電極(60)間の導電率(定電圧電源(81)の場合は電流量、定電流電源(81)の場合は電圧値)が所定範囲から外れたときに散水することで、凝縮水の濃縮が一定以上進んだときや蒸発して無くなったときなど、電気防食を継続するために必要とされるタイミングで散水を行うことができる。また、常時散水せずに、必要なときだけ散水するので節水することができる。
【0022】
さらに、散水直後における導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止する。散水を繰り返すことで腐食成分は次第に洗い流されるので、腐食性がほとんど無くなった後は、電気防食を行う必要がなくなり、散水を継続しなくてもよい。
【0023】
ところで、蒸発が進むと凝縮水は極限まで濃縮されるので、電極(60)と受熱管(51)等との間に付着している凝縮水が完全に蒸発して無くなる直前における導電率は、散水を繰り返してもほとんど変わらない。一方、散水直後は、電極(60)と受熱管(51)との間に水が十分存在するので、残存する腐食成分の絶対量が、凝縮水の濃度、すなわち導電率にほぼ反映される。そこで、散水直後の導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、腐食成分の絶対量が許容値以下になったと判定し、以後の散水を中止している。さらに、最後に散水を行った後、あるいは最後に散水した水が蒸発してなくなった後は、電源(81)からの電圧印加を停止するようにするとよい。
【0024】
なお、排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用の熱交換器(40)とこれよりも排気通路の下流側に配置され排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用の熱交換器(50)の双方から構成される熱交換器においては、潜熱回収用の熱交換器(50)側に多量の凝縮水が発生するので、先に述べた電気防食および散水を、当該潜熱回収用の熱交換器(50)側に施すようにすればよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態は、本発明にかかる熱交換器を給湯器10に適用したものである。図2に示すように、給湯器10は、排気中の顕熱を主として吸収する顕熱回収用熱交換器40と、これよりも排気の流れで下流側に配置され、主として排気の潜熱を吸収する潜熱回収用熱交換器50とを備えている。このうち外部電源による電気防食および散水は潜熱回収用熱交換器50側に対して行われる。また顕熱回収用熱交換器40での熱交換効率は、約75パーセントに、潜熱回収用熱交換器50での熱交換効率は約15パーセントになるようにそれぞれフィンの枚数やその大きさ等が設定されている。
【0026】
給湯器10は、燃焼室11を備えており、当該燃焼室11の下部には、バーナー12が配置されている。バーナー12の上方には、顕熱回収用熱交換器40が、さらに上方には潜熱回収用熱交換器50が配置されている。潜熱回収用熱交換器50のフィン52に開設された穴には、電気防食を行うための電極部60が挿入され取り付けられている。
【0027】
顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50の間には、潜熱回収用熱交換器50に生成する凝縮水を受け止め、凝縮水が顕熱回収用熱交換器40に落下するのを防止するための受け皿13が取り付けられている。受け皿13は、燃焼室11を右端の一部を除いて上下に仕切るものであり、顕熱回収用熱交換器40を経由した後の排気は、受け皿13が無い燃焼室11右端の開口部14を通じて潜熱回収用熱交換器50の配置されている排気通路部15に流れるようになっている。
【0028】
受け皿13は、開口部14側から燃焼室11の左端側に向けて下り傾斜しており、傾斜の下端部分には、受け皿13によって回収された凝縮水を一時的に溜めるドレン受け16が設けられている。ドレン受け16の底部には、凝縮水の排出通路17が接続され、当該排出通路17の途中には、酸性の凝縮水を中和するための中和処理器18が取り付けられている。
【0029】
潜熱回収用熱交換器50の入側には給水の流入する給水水管21が接続され、潜熱回収用熱交換器50の出側は、連結水管22によって顕熱回収用熱交換器40の入側と接続されている。顕熱回収用熱交換器40の出側には、加熱後の給水の流れ出る給湯水管23が接続されている。
【0030】
給水水管21の入口部近傍には、供給される給水の温度を検知するための入水サーミスタ24が、またその下流側には、通水の有無や通水量を検知するための水量センサー25が取り付けられている。給湯水管23には、その出口部近傍に、出湯される湯の温度を検知するための出湯サーミスタ26が、またその下流側には、出湯される湯の流量を制限するための水量制御弁27が設けられている。
【0031】
潜熱回収用熱交換器50の上方には、潜熱回収用熱交換器50に向けて散水する水の放出口となる散水ノズル70が配置されている。散水ノズル70には、給水水管21から分岐した散水用分岐管71が接続されており、その途中には、給水水管21からの給水を散水ノズル70から散水するか否かを切り替えるための止水弁72が取り付けられている。
【0032】
燃焼室11の左下方には、給気をバーナー12に向けて送り込むための燃焼ファン28が配置されている。またバーナー12に燃焼ガスを送り込むガス供給管31の途中には、燃焼ガスの供給をオンオフ制御するガス電磁弁32、元ガス電磁弁33と、バーナー12へ供給する燃焼ガスの供給量を調整するガス比例弁34が取り付けられている。
【0033】
給湯器10は、給湯器10の動作を統括制御する回路部品を収めた電装基板80を有し、当該電装基板80には、たとえば、台所等に配置され、湯温の設定操作等の受け付けや、各種の状態表示を行うリモコン36が接続されている。なお、電気防食を行うための回路部分および散水を制御するための回路部分は電装基板80に搭載されており、電極部60と電装基板80の間、および止水弁72と電装基板80の間には、それぞれ所定の電気配線が施されている。
【0034】
図3は、潜熱回収用熱交換器50をより詳細に示したものである。潜熱回収用熱交換器50は、加熱すべき給水の通る上下2段に配置された受熱管51と、熱の回収効率を高めるための多数のフィン52とを備えている。ここでは、受熱管51およびフィン52を、それぞれ銅で形成している。このほか受熱管51やフィン52を、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはこれらの合金で形成してもよい。
【0035】
受熱管51およびフィン52は、排気と触れる表面部(防食箇所)を耐酸性を有し、かつ電気的に絶縁性のある被膜53でコーティングしてある。被膜53として、エポキシ、テフロン、アクリル等の有機塗料またはシリコン、セラミックなどを用いることができる。
【0036】
上段の受熱管と下段の受熱管の間には、棒状の電極部60が各受熱管51の延びる方向に沿うように配置されている。電極部60は、チタンを白金でメッキした電極棒61と、電極棒61の周囲を覆うガラス繊維膜62とから構成されている。電極部60は、酸性の凝縮水によって腐食の生じ難い金属であれば良く、たとえばステンレス系の材料で形成してもよい。
【0037】
ガラス繊維膜62は、電極棒61が直接フィン52と電気的に接触して導通してしまうことを防止する機能を果たすものである。ガラス繊維膜62は、網目状になっており、網目の隙間を通じて凝縮水が電極棒61と接触し得るようになっている。電気防食を行う際には、電極棒61が正電位に、潜熱回収用熱交換器50の受熱管51やフィン52等が負電位になるように直流電圧が印加される。
【0038】
なお、被膜53は、親水性を備えたものであっても、撥水性を備えたものであってもよい。親水性を有する場合には、少量の凝縮水が残留する状態になった場合であっても、電極棒61と受熱管51やフィン52との間に広がって、長く導通を確保することができる。一方、撥水性を有するものの場合には、散水によって凝縮水を効率良く洗い流すことができるという効果が得られる。
【0039】
図1は、電気防食および散水の制御を行うための防食散水用回路を示している。防食散水用回路は、直流1ボルトの定電圧を発生する定電圧電源81と、電流検知器82と、電圧印加制御部83と、散水制御部84とから構成されている。定電圧電源71の負極側は受熱管51に接続され、正極側は各電極棒61に接続されている。酸性の凝縮水が受熱管51やフィン52と電極棒61との間に結露したとき、当該凝縮水を介してフィン52等と電極棒61との間が導通し、閉回路が形成され、定電圧電源71から電流が流れることになる。
【0040】
電流検知器72は、凝縮水を介して形成される閉回路に流れる電流を検出するようになっている。電圧印加制御部73は、定電圧電源71から電圧を印加するか否かを切り替える制御回路である。電圧印加制御部73は、燃焼信号85を基にしてバーナー12が燃焼中か否かを判別し、燃焼を開始した時点から、燃焼終了後に、もはや電気防食を施す必要がないと判定されるまでの間、定電圧電源81によって電圧を印加するようになっている。
【0041】
散水制御部84は、潜熱回収用熱交換器50を常に濡れた状態、すなわち、電極棒61と受熱管51やフィン52の間に水の存在する電気防食可能な状態を維持するように止水弁72の開閉を制御する回路部分である。具体的には、燃焼停止後に電流検知器82の検知する電流値が予め定めた所定範囲から外れたとき(ここでは、予め定めた散水基準値を越えた)止水弁72を一定時間(数秒から数十秒程度)開くとともに、散水後の電流値が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を停止させる機能を備えている。より具体的には、次回の燃焼を終了し、燃焼中に結露した凝縮水が濃縮して電流値が再び所定範囲から外れるまでの間、散水動作を停止させるようになっている。
【0042】
次に作用を説明する。
図4は、電気防食を行う際の動作の流れを示している。バーナー12の燃焼が開始すると(ステップS101;Y)、電圧印加制御部83はこれを燃焼信号85によって認識し、定電圧電源81から電極棒61と受熱管51の間に一定の電圧を印加する(ステップS102)。この電圧は約1ボルトに設定されている。
【0043】
バーナー12からの熱は、まず、バーナー12の近傍に配置された顕熱回収用熱交換器40によって吸収される。この際、顕熱回収用熱交換器40の熱交換効率が約75〜80パーセント程度に抑えられているので、顕熱回収用熱交換器40ではほとんど結露が生じない。顕熱回収用熱交換器40によって顕熱の回収された排気は、開口部14を通って潜熱回収用熱交換器50に到達する。
【0044】
潜熱回収用熱交換器50に到達した排気は、200℃〜280℃程度までその温度が低下しているので、潜熱回収用熱交換器50は、主として排気の潜熱を回収し、多量(毎分50mmlほど)の凝縮水が潜熱回収用熱交換器50に結露する。この凝縮水は、燃焼空気が高温で酸化して生成された窒素酸化物(NOx)やガス漏れ検知のために燃焼ガスに添加された付臭剤が酸化することで生成された硫黄酸化物(SOx)等が溶解し、硝酸と硫酸の溶融したpH2〜3の酸性の水滴になっている。
【0045】
結露した凝縮水は、潜熱回収用熱交換器50から落下して受け皿13に受け止められ、ドレン受け16、排出通路17、中和処理器18を通じて排出される。潜熱回収用熱交換器50に結露した凝縮水を受け皿13によって受け止めるので、顕熱回収用熱交換器40の上に凝縮水が落下せず、自身で結露しないことと相まって、顕熱回収用熱交換器40が凝縮水によって腐食されることはほとんどない。
【0046】
一方、潜熱回収用熱交換器50の受熱管51やフィン52は、被膜53によって被覆されているので、当該被膜53にピンホール等の欠落部分が無い限り、酸性の凝縮水によって腐食されることはない。また、バーナー12の燃焼が開始された以後は、受熱管51と電極棒61との間に、定電圧電源81から一定の電圧が印加されているので、被膜53に欠落部分があっても、電気防食が働き、被膜53の欠落部分から腐食することはない。
【0047】
すなわち、受熱管51やフィン52のうち被膜53の欠落部分と電極棒61との間に凝縮水が結露しているときは、受熱管51やフィン52が陰電極になっているので、当該陰電極側で凝縮水中の水素イオンと電子とが結合して水素ガスの発生する反応が起きる。これにより、水素イオンによって受熱管51やフィン52が酸化されて腐食することはない。
【0048】
一方、受熱管51やフィン52等の陰電極から凝縮水中に流れ出た電子あるいは、凝縮水中の硝酸イオンなどの陰イオンは、陽電極である電極棒61側に集まり、その電子が奪われる等して電極棒61から定電圧電源81側へと流れ込む。このようにして、凝縮水を通じて電子、あるいは陰イオンが移動して閉回路が形成されるので、電極棒61と受熱管51やフィン52との間に凝縮水が結露している間は、電流検知器82によって電流が検知される。
【0049】
バーナー12の燃焼が終了すると(ステップS103;Y)、その後、あらたな凝縮水の結露はほとんど起こらなくなるとともに、潜熱回収用熱交換器50に付着している凝縮水の中の水分が次第に蒸発して濃縮され、検知される電流値が次第に増加する。水分の蒸発がさらに進み、電流検知器82によって検知される電流値が、予め定めた散水基準値91を越えると(ステップS104;Y)、散水制御部84は、止水弁72を開き、所定量の水を潜熱回収用熱交換器50の上方から散水する(ステップS106)。
【0050】
これにより、潜熱回収用熱交換器50は、濡れた状態、すなわち、電気防食が有効に機能する状態に維持される。なお、散水基準値91を越える前に、燃焼が再開したときは(ステップS104;N、ステップS105;Y)、新たに結露が始まるので、ステップS102に戻って電気防食が継続される。
【0051】
図5は、燃焼停止後の時間の経過と電流値の変化との関係、および散水の行われるタイミングの関係を示している。燃焼中は、多量の凝縮水が結露するので、ほぼ一定の電流が流れる状態にある。燃焼を停止した時刻T1以後は、凝縮水に含まれる水分のみが除々に蒸発し、腐食成分(硝酸イオン等)は残留するので、濃縮が進み、pH値がさらに低下する。これに従い、電流検知器82の検知する電流値92も徐々に増加する。
【0052】
そして、電流検知器82の検知する電流値が散水基準値91を越えた時点T2から所定時間の経過する時刻T3までの間、止水弁72が開かれて散水が行われる。散水によって腐食成分の濃度が低下するとともに、腐食成分がある程度洗い流されるので、散水の開始と同時に電流値は急激に低下し、散水終了直後には、電流値93等まで低下する。
【0053】
散水終了後は、再び蒸発が進行し、時間の経過とともに電流検知器82の検知する電流値が上昇し、散水基準値91を越えたとき、再び散水が行われる。このような動作を繰り返すうちに、潜熱回収用熱交換器50の表面に残留する腐食成分の絶対量が次第に減少するので、散水直後における電流値94、95等は、散水を行うたびに少しずつ低下する。
【0054】
散水制御部84は、散水直後に検知された電流値が予め定めた終了基準値以下に低下したとき(ステップS107;Y)、これ以上、散水する必要がないと判断し、以後の散水を中止する。また、電圧印加制御部83は、散水制御部84が以後の散水を中止すると判断したとき、電圧の印加を停止するようになっている(ステップS108)。なお、最後に散水した水分が完全に蒸発してなくなったとき、すなわち、電流検知器82の検知する電流値がほぼ「0」に低下したときに電圧の印加を停止するようにしてもよい。
【0055】
散水する水にも、元々ある程度のイオンが溶けているので、凝縮水に含まれていた腐食成分をすべて洗い流しても、散水直後には一定の電流が流れる。また散水する水と同じものが受熱管51の中に存在するので、終了基準値まで電流値が低下した後に電気防食を施しても、内部からの腐食を防ぐことはできず、これ以後、電気防食を施すことにほとんど意味がない。
【0056】
そこで、散水する水に元々溶けているイオンによって導通する程度の電流値を、終了基準値として設定し、凝縮水に含まれていた腐食成分をほぼ完全に洗い流した以後の散水および電圧の印加を停止している。これにより、水が無駄に消費されることがない。なお、電流値が終了基準値以下に低下する前に、燃焼が再開されたときは、ステップS102に戻って電気防食が継続される。
【0057】
このように、濃縮が進む前に散水によって希釈するとともに、潜熱回収用熱交換器50を濡れた状態に維持するので、電気防食を長期間に渡って有効に作用させることができ、濃縮の進んだ凝縮水によって受熱管51やフィン52が腐食されることはない。また、散水は、電気防食を有効に継続できる程度に行えば良いので、電気防食を施さず、腐食成分を単に洗い流して防食するような場合に比べて、散水する水の量を大幅に少なくすることができる。たとえば、pH2程度の凝縮水をpH6まで薄めるためには、凝縮水10ミリリットルに対して約100リットルの水を要するが、電気防食を併用することで極めて少量の水で確実に防食することができる。
【0058】
以上説明した実施の形態では、定電圧電源81によって一定の電圧を印加し、流れる電流値を基にして散水を制御したが、定電流電源から一定の電流を流し、その際の電圧値によって散水を制御してもよい。すなわち、電圧値が散水基準電圧以下に低下したとき、散水を行い、さらに散水直後の電圧が終了基準電圧以上に上昇したとき、以後の散水を停止するようにしてもよい。
【0059】
また、実施の形態では、散水基準値91を越えたとき散水を開始するようにしたが、電極棒61と受熱管51やフィン52との間の水分が完全に無くなり、電流が流れなくなったとき、散水を行うようにしてもよい。ただし、濃縮がある程度進んだ段階で散水を行う方が、濃縮の進んだ凝縮水による腐食を的確に防止することができる。さらに、1回の散水は、一定量、あるいは一定時間で停止しても良いし、電流値が一定値まで低下したとき、あるいは電圧値が一定値まで上昇したときに停止するようにしてもよい。
【0060】
なお、散水を繰り返すごとに、散水基準値91の値を少しずつ低下させるようにしてもよい。すなわち、潜熱回収用熱交換器50に付着している水が減少すれば、電気防食の効かない箇所、つまり、電極棒61に触れることなく、受熱管51やフィン52上に孤立した凝縮水の存在する確率が高まる。したがって、付着量が一定以下に低下したときに散水することが望ましいが、潜熱回収用熱交換器50に付着する水分が同程度まで減少しても、残留する腐食成分の絶対量が少ないほど、電流値は小さくなる。そこで、散水を行うごとに、次回、散水する際の散水基準値91を下げるようにすれば、潜熱回収用熱交換器50に付着している水が一定量まで低下したとき、散水することができ、より適切に電気防食を行うことができる。
【0061】
また、実施の形態では、電流値が散水基準値91以下に低下したとき、散水するようにしたが、予め定めた時間の経過するごとに、定期的に散水するようにしてもよい。また、散水の打ち切りは、散水直後の電流値に基づいて判断することが望ましいが、予め定めた上限回数に達したとき、以後の散水を止めるようにしてもよい。
【0062】
このほか、実施の形態では、顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50の双方を備えた給湯器10において、潜熱回収用熱交換器50側に電気防食および散水を施すようにしたが、たとえば、熱交換器を1つだけ備え、これによって排気の顕熱と潜熱の双方を回収するものに、電気防食および散水を施すようにしても良い。なお、実施の形態では、燃料として燃焼ガスを用いたが、石油や灯油などの液体燃焼を燃焼させるものであってもよい。
【0063】
【発明の効果】
本発明にかかる熱交換器、電気防食装置および熱交換器の電気防食方法によれば、蒸発によって水分が減少して濃縮した凝縮水を、散水手段からの散水によって希釈するととも、防食箇所と電極との間を散水によって濡れた状態に維持するので、燃焼停止後に長時間が経過しても、電気防食が有効に作用し、凝縮水による腐食から熱交換器を適切に保護することができる。
【0064】
また、散水直後における導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止するので、腐食成分がほぼ洗い流された後も散水が継続されて、水を無駄に消費するようなことを防ぎ、節水することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る熱交換器の有する防食散水用回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る熱交換器を用いた給湯器を示す説明図である。
【図3】図2に示した給湯器の有する潜熱回収用熱交換器および電極部を示す斜視図である。
【図4】電気防食および散水を行う際の動作の流れを示す流れ図である。
【図5】燃焼停止後の時間の経過と電流量の変化との関係、および散水の行われるタイミングを関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10…給湯器
12…バーナー
13…受け皿
21…給水水管
40…顕熱回収用熱交換器
50…潜熱回収用熱交換器
51…受熱管
52…フィン
53…被膜
60…電極部
61…電極棒
62…ガラス繊維膜
70…散水ノズル
71…散水用分岐管
72…止水弁
81…定電圧電源
82…電流検知器
83…電圧印加制御部
84…散水制御部
85…燃焼信号
Claims (7)
- 燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を、前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護する電気防食装置において、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極と、前記電極が陽電極に前記防食箇所が陰電極になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極とに散水する散水手段とを有し、
前記電源は、燃焼停止後も前記電極と前記防食箇所の間に電圧を印加し、
前記散水手段は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする電気防食装置。 - 燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器であって前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護するための電気防食装置を付加したものにおいて、前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極と、前記電極が陽電極に前記防食箇所が陰電極になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極とに散水する散水手段とを有し、
前記電源は、燃焼停止後も前記電極と前記防食箇所の間に電圧を印加し、
前記散水手段は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器。 - 燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器であって前記排気の潜熱を吸収することで結露する凝縮水による腐食から保護するための電気防食装置を付加したものにおいて、前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に配置された電極と、前記電極が陽電極に前記防食箇所が陰電極になるようにこれらの間に所定の電圧を印加する電源と、前記熱交換器の前記防食箇所と前記電極とに散水する散水手段とを有し、
前記防食箇所は、前記凝縮水による腐食から保護するための被膜であって電気的絶縁性を有するもので被覆され、
前記電源は、燃焼停止後も前記電極と前記防食箇所との間に電圧を印加し、
前記散水手段は、燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器。 - 前記電極と前記防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段を備え、前記散水手段は、前記導電率検知手段によって検知された導電率が所定の範囲から外れたとき散水することを特徴とする請求項1記載の電気防食装置または請求項2、3記載の熱交換器。
- 前記電極と前記防食箇所との間の導電率を検知する導電率検知手段を備え、前記散水手段は、散水を間欠的に行うとともに各回の散水直後における前記電極と前記防食箇所との間の導電率が予め定めた終了基準値以下に低下したとき、以後の散水を中止することを特徴とする請求項1、4記載の電気防食装置または請求項2、3、4記載の熱交換器。
- 前記熱交換器は、排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用の熱交換器とこれよりも排気通路の下流側に配置され排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用の熱交換器との双方を有するものにおける前記潜熱回収用の熱交換器であることを特徴とする請求項1、4、5記載の電気防食装置または請求項2、3、4、5記載の熱交換器。
- 燃料を燃焼させた際に生じる排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する金属製の熱交換器を前記排気の潜熱を吸収することで結露した凝縮水による腐食から保護する熱交換器の電気防食方法において、
前記熱交換器のうち前記凝縮水による腐食から保護すべき防食箇所の近傍に電極を配置し、
前記電極が陽電極に前記防食箇所が陰電極になるようにこれらの間に所定の電圧を印加するとともに当該電圧の印加を燃焼停止後も継続して行い、
燃焼停止後に蒸発する水分を散水によって補給して前記防食箇所と前記電極とを電気防食の可能な濡れた状態に維持することを特徴とする熱交換器の電気防食方法。
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