JP3935241B2 - 制動装置付き移動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制動装置を備えた移動装置に関し、特に、自走式のスケートボードのような簡易な移動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自転車やバイクのような簡易な移動装置は手で操作可能なブレーキを備えており、操作レバーを手で握ってブレーキをかけている。
【0003】
ローラーに支持されたボード上に足を載せて乗員(ユーザー)が立って乗り、バランスを取りながら適当な方向に移動できるスケートボードが知られており、このスケートボードには手で操作可能なブレーキは装着されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
スケートボードにエンジンなどの駆動装置を搭載して自走可能とし、平地でも楽に移動できるようにした移動装置や、簡易な構成のフレームにエンジンを搭載して自走できるようにした移動装置など、個人ベースの移動手段や、スポーツやレジャー用の装置として使用可能な簡易な移動装置が開発されつつある。これらの移動装置を安全に使用するためには制動装置を設けることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明においては、これらの簡易な移動装置に適した、簡易な構成で、安全性の高い制動装置の付いた移動装置を提供することを目的としている。さらに、乗員が体重の移動を誤ったり、操作ミスで移動装置から離れざるをえないような状態になったときに暴走を未然に防止できる制動装置付きの移動装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の移動装置においては、制動装置を制御可能な制御レバーであって、制御レバーを握ったときにブレーキが解除され、制御レバーを放すとブレーキがかかる従来の自転車などのブレーキレバーと反対に動作する制御レバーを設けるようにしている。すなわち、本発明の移動装置の一態様は、前後に配置された複数の車輪と、これらの車輪によって支持された少なくとも1人の乗員を搭載可能なフレーム体と、車輪の少なくとも1つの回転を制動可能なディスクブレーキと、車輪の少なくとも1つを、伝達装置を介して駆動可能な駆動装置と、ディスクブレーキおよび駆動装置を制御可能な1つの制御レバーと、1つの制御レバーによりディスクブレーキおよび駆動装置を連動させた制御をするための、ディスクブレーキおよび駆動装置に共通した制御経路とを有し、この1つの制御レバーを握るとディスクブレーキが解除され駆動装置の回転数が上昇し、1つの制御レバーを放すとディスクブレーキが働き駆動装置の出力が低下することを特徴としている。従って、本発明の移動装置は、スケートボードで体重移動に失敗したときなどのようにユーザーが移動装置から離れざるを得なくなって乗員(ユーザー)が制御レバーを放すと自動的にブレーキがかかるので、ユーザーに制御されない状態で移動装置が暴走するのを未然に防止できる。従って、自走式のスケートボードなどのようなスポーツ性あるいはレジャー性の高い簡易な移動装置や、悪路および急斜面などの走行を楽しむ移動装置に適しており、より安全に走行を楽しむことができる。
【0007】
また、ユーザーが制御レバーを放すと自動的に制動装置が働くので、ユーザーが移動装置から離れた付近で移動装置は自動的に停止する。従って、移動装置の回収が容易であり、追跡などのために無駄な労力をかけずに済む。特に、3輪車や4輪車などの簡易型の移動装置は、自転車などの2輪車と異なりの姿勢が安定しているのでユーザーが乗っていなくても自走する可能性が高い。従って、本発明の制御レバーを放すと働く制動装置(ブレーキシステム)を設けておくことにより、暴走を未然に防止することができる。
【0008】
さらに、本発明の移動装置は、制御レバーから手を放すとブレーキがかかった状態となる制動装置(ブレーキシステム)を採用しているので、斜面などにおいても制御レバーを握らない限り動きだすことはなく、パーキングブレーキとしても使用することができる。
【0009】
本発明の他の態様は、前後に配置された複数の車輪と、これらの車輪によって支持された少なくとも1人の乗員を搭載可能なフレーム体と、車輪の少なくとも1つを伝達装置を介して駆動可能な駆動装置と、駆動装置から駆動力を伝達する伝達経路に設置された制動装置と、制動装置および駆動装置を制御可能な1つの制御レバーと、1つの制御レバーにより制動装置および駆動装置を連動させた制御をするための、制動装置および駆動装置に共通した制御経路とを有し、1つの制御レバーを握ると制動装置が解除され駆動装置の回転数が上昇し、1つの制御レバーを放すと制動装置が働き駆動装置の出力が低下することを特徴とする制動装置付き移動装置である。制御レバーは、車輪の少なくとも1つを駆動可能な駆動装置の調速制御用として使用することも可能であり、制御レバーを握ると駆動装置の回転数が上昇する。これにより、制御レバーを握るとブレーキが解除されて駆動装置の回転数が上昇するスタート時の一連の操作が可能となる。また、制御レバーを放すと、駆動装置の回転数が低下し、ブレーキがかかる停止時の一連の操作が可能となる。さらに加速や減速は、制御レバーが適当な位置になるように握ることによって制御することができる。従って、制御レバー1本で、加速、減速および停止といった操作を全て行うことができ、簡易な移動装置に適した制動装置および駆動装置の制御システムを形成できる。
【0010】
制動装置は、個々の車輪に設けてももちろん良いが、駆動装置から駆動力を車輪に伝達する伝達経路に設置することも可能であり、できるだけ駆動装置に近い位置に制動装置を配置することにより、車輪回りの構成が複雑になるのを防止できる。また、制動装置を分散させずに駆動装置の近くに配置できるので、これらを一括した制御も行い易くなる。
【0011】
傾斜面を走行する機会の多い移動装置などには、ワンウェイクラッチを伝達経路に設置することが有効であり、その場合は、制動装置に対し駆動装置の側にワンウェイクラッチを設置し、制動装置の機能を阻害しないようにすることが望ましい。また、制動装置に対し駆動装置の側の伝達経路に遠心クラッチを設けることにより、制御レバーを握って駆動装置の回転数を上げたときにスムーズに駆動力を車輪に伝えることができる。
【0012】
このような移動装置のフレーム体に足載部を設けることにより、立ち乗りができ、乗員が体重を移動することによってフレーム体の進行方向を制御することが可能となる。従って、制御レバーもフレーム体の上方に延びたフレキシブルな部材により支持することにより、立ち乗りしたユーザーが自然な姿勢で制御レバーを握り、ブレーキおよびエンジンの制御ができるようにすることが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明に係る移動装置の概要を示し、図2に本例の移動装置1にユーザーが乗って走行する様子を示してある。さらに、図3に、本例の移動装置1の概略構成を展開して示してある。本例の移動装置1は、前後に配置された2組の車輪2aおよび2b、3aおよび3bと、これらの車輪をそれぞれ接続するパイプ状のシャフト4および5と、これらのシャフト4および5を接続するパイプ状のフレーム6とを備えており、これら2本のシャフト4および5とフレーム6とがほぼH字型に組み合わさってフレーム体7を形成している。さらに、フレーム6には、ユーザー(乗員)が足を載せて立って乗ることができる足載板10aおよび10bが取り付けられており、ユーザーが体重を移動することによって方向を定めながら走行できるようになっている。
【0014】
本例の移動装置1の後方のシャフト5には、30〜50cc程度の小型のガソリンエンジン30が搭載されており、このエンジン30の回転力が駆動ベルト40を介して後方の車輪3bに伝達され、エンジン30の駆動力によって移動装置1が自走できるようになっている。さらに、エンジン30の上方には、フレキシブルチューブや他のコイル状に巻かれた金属製の部材などによってフレキシブルに可動する支持部材50が延びており、その先端に制御用のレバー50が取り付けられ、ユーザーがフレーム6に立ち乗った状態でエンジン30の操作ができるようになっている。
【0015】
これらのシャフト4および5の中央部に接続された前後に延びたフレーム6は、中央部6aが水平に延びたパイプ状の部材で形成され、その前後の端6bおよび6cが水平な中央部6aからほぼ45度の角度で鉛直上方に向かって傾きシャフト4および5に繋がる接続部分となっている。従って、図4に本例の移動装置1の側方断面で示してあるように、フレーム6はシャフト4および5に対し下方に位置して重心が低く安定したフレーム体7を構成できるようになっている。また、フレーム6に対しシャフト4および5を上方にセットできるので、フレーム体の重心を高くせずに径の大きな車輪を装着することが可能であり、凹凸の乗り越え性が良く、細かな凹凸にそれほど左右されずに悪路でも走行できるようになっている。
【0016】
フレーム6の中央部6aの前後に取り付けられた2枚の足載板10aおよび10bには、適当な位置にユーザー70の脚部71をホールドできるホルダー12を取り付けられるようになっており、このため、ホルダー12を適当な角度で装着できる位置に取り付け孔11が用意されている。従って、各ユーザーは、自己の操作に適した角度でホルダー12を足載板10aおよび10bに取り付け、そのホルダー12の内部に脚部71をセットして搭乗することができる。そして、足載台10aおよび10bに立ち乗った状態で、左右あるいはその他の適当な方向に自己の体重を移動(シフト)して、フレーム6およびシャフト4および5に印加される荷重バランスを調整するができ、これによって適当な方向に移動装置1の進行方向を変えられるようになっている。
【0017】
このため、本例の移動装置1は、フレーム6の動きをシャフト4および5にスムーズに伝達できるように弾性的な動きを行う接合部20aおよび20bを介して接続されており、シャフト4および5が体重のシフトに伴って適当な角度で旋回できるようになっている。フレーム6をシャフト4および5に接続する本例の接合部20aおよび20bは同じ構造が採用されており、フレーム6の左右にバネ21とダンパー(ショックアブソーバー)22が配置され、これらを介してシャフト4および5とフレーム6が接続されている。従って、フレーム6の足載板10aおよび10bに乗ったユーザーが体重を左右に動かしてフレーム6が捩じられると、ほぼ45度方向に延びたフレーム6の接続部分6bが旋回し、これに伴ってバネ21の一方が縮み他方が延びる。そして、これらのバネ21の力に呼応してシャフト4および5は荷重された側(体重のかけられ側)に寄るように旋回し、所望の方向にフレーム体7の進行方向を制御することができる。このように、本例の移動装置1は、スケートボードやスノーボードと同様に体重を移動することにより進行方向を変えることできる。さらに、体重の移動に伴うバネ21の揺れ戻しはダンパー22によって防止することができ、左右にカーブが連続する場合でもスムーズに方向を変えることができる。
【0018】
この接合部20aおよび20bは、路面の凹凸などによる衝撃を吸収する機能も果たしており、バネ21とダンパー22との組合せによって柔軟に、そして、揺れが少ないように吸収できる。従って、悪路や段差、さらにカーブする場所を走行しても足載板10aおよび10bに立ち乗っているユーザーに対する影響は少なく、安定した走行を楽しむことができる。これらのバネ21およびダンパー22の特性は、バネ21およびダンパー22を取り付けるボルト25で調整することができ、フレーム6と接合部20aおよび20bの接続状態も、フレーム6の先端を接合部20aおよび20bに取り付ける部分にゴムパッキンなどの慴動部材を入れて調整することができる。従って、本例の移動装置1の走行特性は、調整用のボルト25などを動かすことによって調整することが可能であり、ユーザーの好みや路面の状態に合わせてセットすることができる。
【0019】
図5に、本例の移動装置1に装着されたエンジン30の周囲の構成を模式的に示してある。本例の移動装置1は、ガソリンエンジン30が採用され、そのエンジン30がサポート板31によって後方のシャフト5に支持されている。このエンジン30の回転力は、回転数が上昇すると繋がる遠心クラッチ61と、前方への駆動力のみ伝達するワンウェイクラッチ62と、ディスクブレーキ63と、駆動ベルト40とを備えた伝達装置60を介してシャフト5の一方の車輪3bに伝達される。これら遠心クラッチ61、ワンウェイクラッチ62、ディスクブレーキ63、駆動ベルト40、および駆動ベルト40を回転駆動するプーリー41を備えた伝達装置(伝達経路)60もサポート板32によって後方のシャフト5に支持されている。さらに、このシャフト5をエンジン30の排気口39と接続して消音用マフラーとして使用できるようになっており、シャフト5に設けられた接続口5aとエンジンの排気口39がビニールパイプ38によって接続されている。シャフト5には細い内管5bが挿入されており、チャンバーとしての機能が付加され、消音効率が上げられている。
【0020】
このように、本例の移動装置1は、エンジン30および伝達系統60が共に後方のシャフト5に取り付けられ、後方のシャフト5の車輪3bを動力輪として駆動できるようにしている。従って、フレーム6に乗ったユーザーが体重を移動してシャフト5が旋回すると、車輪3bと共にエンジン30および伝達系統60もシャフト5に追従して動き、車輪3bとエンジン30および伝達系統60との相対的な位置関係は変わらないので、車輪3bに対しエンジン30の駆動力を安定して伝達することができる。また、車輪3bに取り付けられた受動プーリー42に駆動ベルト40を装着して車輪3bを回転駆動するようにしているので、車輪3bとシャフト5はベアリング8を介して極めてシンプルに接続することが可能であり、シャフト5自体はドライブシャフトのように回転駆動する必要がない。従って、シャフト5にエンジン30および伝達系統60を搭載することが可能であり、また、シャフト5とフレーム6とを上述したような接合部20bで繋いで、シンプルで操作感が良く、軽く、低コストのフレーム体7を構成することができる。
【0021】
さらに、本例の移動装置1は、ブレーキ63を車輪3bへ設けるのではなく、伝達経路60のワンウェイクラッチ62からの動力を駆動ベルト40に伝達する経路に設けてある。従って、車輪3bの周囲の構成をシンプルに保ったまま制動機能を付加できており、操作性能を犠牲にすることなく、低コストで安全な移動装置1を提供することができる。すなわち、駆動装置に近い動力の伝達経路60にブレーキ63(制動装置)を配置することにより、フレーム体7、車輪回りなどにブレーキ装置やワイヤーを新たに配置することなく制動機能を付加することが可能である。従って、このような動力伝達系統に制動装置を装着する手法は、本例の移動装置1のような簡易な移動装置に適している。本例に限らず、スケートボード自体にエンジンユニットをアドオンしたような簡易型の移動装置においても、付加するエンジンユニット側の伝達経路に制動装置を設けることが可能であり、簡単に制動機能を用いることができる。また、ワンウェイクラッチ62の下流側にブレーキを設けることにより、確実に車輪3bを制動することができ、伝達経路60にワンウェイクラッチと制動装置を共存させることも可能である。
【0022】
本例の移動装置1のディスクブレーキ63の操作は、エンジン30の上方にフレキシブル部材50によって支持された制御レバー51からブレーキパッド64に延びた制御ワイヤー52を介して行われるようになっている。制御レバー51を放した状態ではブレーキ63が働いて停止し、制御レバー51を握るとブレーキ63が開放されて車輪3bが動きだすようになっている。従って、ユーザーが制御レバー51を操作しない限りブレーキ63は外れず、勝手に移動装置1が動きだすことがない。また、斜面などに単に置いてもフレーム体7が自らは動きださないので、本例のブレーキ63はパーキングブレーキとしての機能も備えている。また、操作しないかぎりブレーキ63が働くので、ブレーキの欠け忘れも防止できる。さらに、フレーム6に立ち乗りしているユーザーがバランスを崩したり操作を誤って、移動装置1を離脱する際に制御レバー51から手を放すと制御ワイヤー52が開放され、ブレーキパッド64がバネなどの力によって働き自動的にブレーキがかかる。従って、本例の移動装置1は、制御されない状態で移動装置1が暴走するのを未然に防止できるので、スポーツやレジャー用品として使用しても安全であり、悪路や急な斜面などの不安定な状態になりやすい場所でも安心して走行を楽しむことができる。さらに、ユーザーがバランスを崩すなどの原因により移動装置1から離れると、その地点の近傍で移動装置1はブレーキが働いて停止するので移動装置1の回収も容易である。
【0023】
このように、本例の制動装置63は、握るとブレーキが開放される制御レバー51を採用することにより、通常の停止あるいは減速する機能と、パーキングブレーキとしての機能と、さらに、非常用ブレーキとしての機能を兼ね備えることができる。1つの制動システムでこれらの機能をカバーできるので、ブレーキシステムを簡易化することが可能であり、簡易な移動装置に適した低コストで高機能のブレーキシステムを実現することができる。もちろん、ディスクブレーキを2重化するなどの処理により信頼性をさらに高めることも可能である。
【0024】
制御レバー51から延びた制御ワイヤー52は、エンジン30の調速制御機構であるスロットルコントロールレバー35にも接続されており、制御レバー51を握るとエンジン30の回転数が上昇し、一方、制御レバー51を放すとエンジンの回転数が低下するようになっている。従って、本例の移動装置1は、制御レバー51を握ると、ブレーキ63が開放されると共にエンジン30の回転数が上昇し、遠心クラッチ61が繋がって動力が車輪3bに伝達される。このため、移動装置1が動きだす。一方、制御レバー51を放すと、エンジン30の回転数が低下して遠心クラッチ61が離れて動力が車輪3bに伝達されなくなり、ブレーキ63が働いて移動装置1は停止する。従って、ユーザーが移動装置から投げ出されたような場合には、制御レバー51から手を放すことによって、自動的にエンジン30の出力が低下しブレーキ63が働くので、確実に移動装置を停止させることができる。
【0025】
本例の移動装置1は、上述したように、伝達経路60に制動装置(ブレーキ)63が設置されており、エンジン30とブレーキ63が接近して配置されている。従って、これらを1つの制御レバーから共通した制御経路をそれぞれの近傍まで設置できるので、1つの制御レバーで連動した制御をするのに適した配置となっている。例えば、本例のように制御レバー51に繋がった1つの制御ワイヤー52でブレーキ63とエンジンのスロットルコントロールレバー35を接続し、簡単な機構でこれらを制御レバー51で連動して制御することができる。もちろん、適当なリンクなどを介してブレーキ63とエンジン30の制御機構を接続することも可能である。さらに、エンジン30および伝達経路60を制動機構63も含めてユニット化できるので、追設(アドオン)可能な動力ユニットとして提供することも可能であり、これらを制御レバー51で一括制御できるのでアドオンされた動力ユニットの制御も非常に簡単である。
【0026】
図6に、本例のブレーキシステム(制動装置、制動システム)における制御レバー51の操作量に対するブレーキ63およびエンジン30の応答を模式的に示してある。制御レバー51が操作されていないとき、すなわち、ユーザーが移動装置1に乗っていないとき、あるいは、制御レバー51を握っていてもレバーに力が入っていないときは、100%の制動力が得られるようになっている。そして、制御レバー51の操作量を増すと、徐々にブレーキ63の制動力が減少する。一方、エンジン30は、制御レバー51が操作されていないときはアイドリング状態であり、遠心クラッチ61によって伝達経路60に動力が伝達されないようになっている。そして、制御レバー51の操作量を増すと、エンジン30の回転数が上昇し、適当な操作量のところで遠心クラッチ61が繋がり伝達経路60に動力が伝達される。
【0027】
さらに制御レバー51の操作量を増すと、ブレーキ63の制動力が0%になり、その後は制御レバー51を操作量に応じてエンジン30の出力が増すので、適当な速度で移動装置1を駆動することができる。このように、制御レバー51の握り量(操作量)によって、ブレーキ63の効き具合やエンジン30の回転数(エンジン出力)を自由に制御することができ、本例の移動装置1は制御レバー51だけでアクセルおよびブレーキ系統の簡単が操作できる。従って、一方の手をエンジンおよびブレーキの操作に使い、他方の手を体重のシフトや体のバランスを取るためなどに利用できるので、体重をシフトしながら走行方向を制御する本例のような移動装置には特に適している。また、制御レバー51は立ち乗りしたときに手で保持できる適当な高さにフレキシブルな部材50によって支持されているので、ユーザーは制御レバー51を握りながら立った状態で体重を移動することが可能であり、さらに、制御レバー51もある程度の範囲で自由に動かせるので、楽な姿勢で移動装置1を自由に制御することができる。また、制御レバー51は、その荷重がフレキシブル部材50によって支持されているので、腕の負担も少なく、疲労も軽減できる。
【0028】
このような制御レバーを用いたブレーキおよびアクセルの操作は、本例のような体重シフトを伴う簡易な移動装置に限らず、他の移動装置においても有用である。例えば、ハンドル操作で走行方向を定める移動装置においては、上述した制御レバーをハンドルに装着しておけば、片手でブレーキ、アクセルおよび走行方向の制御を行うことができる。また、制御レバーとブレーキおよびアクセルの応答特性は図6に示したものに限定されることはなく、操作量に対しブレーキおよびアクセルの特性もリニアに変化するものに限られない。図6では、制動力と駆動力が同時に得られる領域を設けてスムーズな発進が行い易いようにしてあるが、このような領域を無くすことももちろん可能であり、ワンウェイクラッチを用いて斜面を滑走する場合などには適している。この他にも制動レバーの操作量に対するブレーキおよびエンジンの応答特性は自由に変えることができる。
【0029】
このように、本例の移動装置1は、スケートボードやスノーボードと同様に体重移動によって走行方向を自由に制御でき、また、制御レバー51によって駆動力および制動力を制御することができる。従って、平面や上り傾斜でも体重を移動しながら自由に走行することができる。さらに、制御レバー51が開放されるとブレーキが働くシステムを採用しているので、急な傾斜や悪路、あるいは荒れ地などの不安定な場所をスポーツやレジャー的に乗り回しても移動装置1が暴走することはなく、そのような場所でも安全に走行を楽しむことができる。従って、本例の移動装置1は、冬季にスノーボードを楽しむユーザーなどが夏季に楽しめるレジャー用装置あるいはスポーツ用装置として利用できる。また、足載板10aおよび10bに立って乗り適当な距離を楽に移動でき、小型で収納場所や移動場所を取らず、さらに安全で簡単にブレーキおよびエンジンを操作できる制御レバーを採用してるので遊園地や空港ビル内などの適当な広さのエリア内を移動する個人ベースや少人数ベースの輸送手段などとしても広く利用することができる。
【0030】
なお、本例ではエンジンが搭載された移動装置を例に説明しているが、液体燃料を燃焼するタイプのエンジンの変わりにバッテリーなどの電源で動作するモーターを駆動装置とする移動装置に対しても本発明を適用できることはもちろんである。また、本例は、パイプ状のシャフトおよびフレームが組み合わされたフレーム体を用いた移動装置を例にしているが、板状の部材を主にフレーム体が構成されたスケートボードにエンジンをマウントしたような移動装置であってももちろん良い。さらに、立ち乗りタイプの移動装置に限らず、シートが搭載されたフレーム体を備えた移動装置にも本発明を適用することも可能である。さらに、1人用の移動装置に限らず、複数人が乗車可能な移動装置にも本発明を適用できる。また、駆動装置が搭載されていない移動装置に対しても本例のブレーキシステムは効果が高い。
【0031】
また、伝達経路も本例に限定されることはなく、駆動ベルトの変わりにドライブシャフトを用いた伝達経路などを備えた移動装置にも本発明を適用することができる。さらに、伝達経路からワンウェイクラッチを除くことも可能であり、また、遠心クラッチの変わりに同等の制御を行う装置を用いることも可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の移動装置は、制御レバーを握ると解除される制動装置を採用しており、移動装置を停止するために利用できると共に、パーキングブレーキとして利用することができる。従って、本発明の移動装置は、制御レバーを操作しないかぎり動かないので安全であり、また、ブレーキのかけ忘れも防止できる。さらに、荒れ地などを乗り回した際に移動装置から落ちて制御レバーを放すと自動的にブレーキが作用し、また、エンジン出力も低下するようになっているので、移動装置を確実に停止することができ、暴走を未然に防止することが可能である。このように、本発明により、平坦な面や上り坂、さらには悪路などを走破でき、安全に走行を楽しむことができる移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る立ち乗り式の移動装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す移動装置に乗員(ユーザー)が乗った状態を示す図である。
【図3】図1に示す移動装置の主な部材を展開して示す展開斜視図である。
【図4】図1に示す移動装置を側方から見た断面図である。
【図5】図1に示す移動装置のエンジンの周囲の構成を模式的に示す図である。
【図6】制御レバーとブレーキおよびエンジンの応答の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 移動装置
2、3 車輪
4、5 シャフト
6 フレーム
7 フレーム体
8 ベアリング
10 足載台(ボード)
20 接合部
21 バネ
22 ダンパー
30 エンジン
40 駆動ベルト
50 制御レバーを支持するフレキシブル部材
51 制御レバー
52 制御ワイヤー
60 伝達装置
61 遠心クラッチ
62 ワンウェイクラッチ
63 ディスクブレーキ
Claims (7)
- 前後に配置された複数の車輪と、
これらの車輪によって支持された少なくとも1人の乗員を搭載可能なフレーム体と、
前記車輪の少なくとも1つの回転を制動可能なディスクブレーキと、
前記車輪の少なくとも1つを、伝達装置を介して駆動可能な駆動装置と、
前記ディスクブレーキおよび前記駆動装置を制御可能な1つの制御レバーと、
前記1つの制御レバーにより前記ディスクブレーキおよび前記駆動装置を連動させた制御をするための、前記ディスクブレーキおよび前記駆動装置に共通した制御経路とを有し、
前記1つの制御レバーを握ると前記ディスクブレーキが解除され前記駆動装置の回転数が上昇し、前記1つの制御レバーを放すと前記ディスクブレーキが働き前記駆動装置の出力が低下することを特徴とする制動装置付き移動装置。 - 請求項1において、前記制御経路は、前記1つの制御レバーから延びた制御ワイヤーを含み、この制御ワイヤーは、前記ディスクブレーキに対し、前記1つの制御レバーを放すと、前記ディスクブレーキのブレーキパッドがバネの力により働いてブレーキがかかるように接続され、
さらに、前記制御ワイヤーは、前記1つの制御レバーを放すと前記駆動装置の回転数が低下するように、前記駆動装置の調速制御機構に接続されている、制動装置付き移動装置。 - 前後に配置された複数の車輪と、
これらの車輪によって支持された少なくとも1人の乗員を搭載可能なフレーム体と、
前記車輪の少なくとも1つを伝達装置を介して駆動可能な駆動装置と、
前記駆動装置から駆動力を伝達する伝達経路に設置された制動装置と、
前記制動装置および前記駆動装置を制御可能な1つの制御レバーと、
前記1つの制御レバーにより前記制動装置および前記駆動装置を連動させた制御をするための、前記制動装置および前記駆動装置に共通した制御経路とを有し、
前記1つの制御レバーを握ると前記制動装置が解除され前記駆動装置の回転数が上昇し、前記1つの制御レバーを放すと前記制動装置が働き前記駆動装置の出力が低下することを特徴とする制動装置付き移動装置。 - 請求項3において、前記制動装置に対し前記駆動装置の側の前記伝達経路にワンウェイクラッチが設置されていることを特徴とする制動装置付き移動装置。
- 請求項3において、前記制動装置に対し前記駆動装置の側の前記伝達経路に遠心クラッチが設置されていることを特徴とする制動装置付き移動装置。
- 請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記フレーム体は、足載部を備えており、乗員が体重を移動することによって前記フレーム体の進行方向を制御可能であることを特徴とする制動装置付き移動装置。
- 請求項6において、前記1つの制御レバーは、前記フレーム体の上方に延びたフレキシブルな部材により支持されており、前記フレキシブルな部材は、前記1つの制御レバーの荷重を支持するものである、制動装置付き移動装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15191897A JP3935241B2 (ja) | 1997-06-10 | 1997-06-10 | 制動装置付き移動装置 |
US09/059,337 US5927735A (en) | 1997-06-10 | 1998-04-14 | Transportation device |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15191897A JP3935241B2 (ja) | 1997-06-10 | 1997-06-10 | 制動装置付き移動装置 |
Publications (2)
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