JP3934273B2 - シートベルト用ショルダーアジャスタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車のフロントシート等に装着される3点式シートベルト用のショルダーアジャスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のフロントシート等に装着される3点式のシートベルト装置においては、一般に、シートベルトはその一端が車室内側壁の下方に設けられたラップアウタカウンタに一端が固着されるとともに、その上方に設けられたショルダーアンカーに支持されたサッシュガイド(アンカープレート)内を通された後、他端はこれらの中間部に固定されたベルト巻取り装置に取り付けられる。
【0003】
また、着席状態における乗員の肩の高さに応じて、ショルダーアンカーの位置を調整する機能を備えたものにおいては、ショルダーアンカーにガイドレールを設け、そのガイドレールに摺動自在に支持され、かつ、任意の摺動位置で固定することのできる固定手段を備えたスライダーに、サッシュガイドを支持するためのアンカーボルトを固着してなる、ショルダーアジャスタと称される装置が設けられる。
【0004】
ところで、3点式のシートベルト装置においては、ショルダーアンカーショルダーアジャスタが車室内で乗員の頭部近傍に突出するため、事故時等において乗員の頭部等が衝突する可能性がある。この衝突時における衝撃を緩和するため、従来、サッシュガイドとそれを支持するアンカーボルトの表面を衝撃吸収機能を持つカバーで覆うことが提案され、実用化されている。
【0005】
例えば特開平9−76875号においては、スリップジョイント(サッシュガイド)を支持して車室内側壁に固定されたアンカーボルトの頭部を、一定の間隔を開けて室内側から覆うガーニッシュアッパーを設け、そのガーニッシュアッパーの側壁への対向面には複数のリブを設け、更に、アンカーボルトの頭部を、一定の間隔を開けて側壁側から覆うガーニッシュロアを設け、このガーニッシュロアにも側壁との間にリブを設けたショルダアンカー構造が開示されている。この構造においては、車室内側からショルダーアンカーに衝撃荷重が加わったとき、まず、ガーニッシュアッパーが変形してそのリブがスリップジョイントを側壁側に押し込んでガーニッシュロアに衝突させ、以後、ガーニッシュアッパーのリブと、ガーニッシュロア自体並びにそのリブが変形することによって、衝撃を吸収するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上の提案技術においては、側壁からアンカーボルト頭部までの寸法よりも、ボルト頭部からガーニッシュアッパーまでの寸法を長くしておかなければ、ガーニッシュロア側のリブが変形するまでにガーニッシュアッパー自体がアンカーボルト頭部に接触してしまうため、ガーニッシュアッパーとガーニッシュロアの双方のリブがそれぞれ変形して所期の衝撃吸収効果を発揮させるためには車室内側への突出量を大きくする必要があり、それに伴ってガーニッシュアッパ自体の強度が弱くなるという問題がある。また、ガーニッシュアッパーのリブはアンカーボルト頭部ではなく、スリップジョイントに接触させるため、衝撃吸収の開始が遅れ、しかもガーニッシュアッパーが変形してスリップジョイントを移動させている間は実質的に衝撃吸収が殆ど行われず、従って衝撃吸収時間が短いという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、車室内側への突出量が少なく、しかも素早く衝撃吸収を開始して、その衝撃荷重の吸収量を大きくすることのできるシートベルト用ショルダーアジャスタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のシートベルト用ショルダーアジャスタは、乗員の肩部近傍に配置されてシートベルトを貫通させるサッシュガイドの上下方向位置を設定するためのシートベルト用ショルダーアジャスタであって、ガイド方向を略上下方向に沿わせた状態で車室内に固定され、かつ、そのガイド方向に複数の係合孔が形成されたガイドレールと、そのガイドレールに摺動自在に支持されるスライダと、このスライダに対してその表面を覆った状態で固着され、かつ、少なくとも当該スライダの上端よりも上方に延出してガイドレールを覆う延出部を備えた樹脂製のスライドカバーと、そのスライドカバーを貫通して上記スライダに固定されて上記サッシュガイドを支持するアンカーボルトと、頂部に操作用の樹脂製ノブを備えるとともに、上記スライダを貫通した状態でガイドレール側に付勢され、上記各係合孔のいずれかに挿入されることにより当該スライダをガイドレールに対して位置決め固定するためのロックピンと、上半部が上記ノブの周囲を囲んだ状態で上記スライドカバーに固着されるとともに、下半部が上記アンカーボルトの頭部を所定の空隙を介して覆うように張り出した樹脂製のサッシュガイドカバーを備え、このサッシュガイドカバーは、上端部近傍に形成された爪部が上記スライドカバーの延出部に係合しているとともに、当該サッシュガイドカバーの上下方向略中央部に位置する、上半部の下端部近傍に上記スライドカバーの表面に当接する支持部が形成されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0009】
ここで、本発明においては、サッシュガイドカバーのアンカーボルト頭部との対向面に、変形可能なリブを突出形成した構成(請求項2)を採用することが好ましい。
【0010】
また、本発明においては、サッシュガイドカバーのサッシュガイドに対向する側の面に、当該アンカーボルトの頭部外周を非接触で囲み、かつ、先端がサッシュガイドに対向するように筒状に突出した変形可能なリブを形成した構成(請求項3)を採用することもできる。
【0011】
本発明は、アンカーボルト頭部を庇状に覆う樹脂製のサッシュガイドカバーの変形と、スライダおよびガイドレールを覆う樹脂製のスライドカバーの曲げ方向への変形を利用して衝撃吸収を行うものであり、サッシュガイドカバーの変形と同時にスライドカバーの曲げ変形を開始させることで、サッシュガイドへの頭部等の接触開始直後から実効的な衝撃吸収を開始させ、所期の目的を達成しようとするものである。
【0012】
すなわち、本発明のショルダーアジャスタにおいては、ノブを操作することによりロックピンをガイドレールの係合孔から離脱させ、その状態でスライダを摺動させて適宜の係合孔にロックピンを挿入することによって、アンカーボルトとそれに支持されているサッシュガイドの位置を任意に設定し得るのであるが、サッシュガイドおよびアンカーボルト近傍を覆うサッシュガイドカバーは、スライダおよびガイドレールを覆うスライドカバーに対して固着されて、その下半部を庇状、つまり自由端として所定の空隙を開けてアンカーボルト頭部を覆っているため、衝撃荷重が加わることによって直ちに変形を開始する。そして、このサッシュガイドカバーはその上端部に形成された爪によりスライドカバーの延出部に係合し、また、サッシュガイドカバーの上下方向略中央部に位置する、上半部の下端部近傍の支持部においてスライドカバーに当接しているから、サッシュガイドカバーの上記の変形に際しては、支持部を支点として上端部の爪がスライドカバーの延出部をガイドレールから引き離す向きに力を伝達する。従って、サッシュガイドカバーに衝撃荷重が加わった直後から、このサッシュガイドカバーの自由端の変形とスライドカバーの曲げ変形が始まり、素早く実効的な衝撃吸収を開始することができる。
【0013】
しかも、スライドカバーの曲げによる衝撃吸収は、前記提案のリブの座屈変形のように側壁側へのストロークを要さないため、車室内側への突出量を大きくする必要がなく、少ない突出量のもとに大きな衝撃吸収機能を持たせることができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明の特徴的構成を併用することにより、上記のサッシュガイドカバーの自由端部の変形とスライドカバーの曲げ変形による衝撃吸収に加えて、若干の時間遅れの後にサッシュガイドカバーのリブがアンカーボルト頭部に接触して変形を開始するため、トータルの衝撃荷重の吸収量はより一層大きなものとなる。
【0015】
更に、請求項3に係る発明の特徴的構成を採用した場合には、上記と同様に、サッシュガイドカバーの自由端部の変形とスライドカバーの曲げ変形による衝撃吸収に加えて、若干の時間遅れの後に、サッシュガイドカバーのリブがサッシュガイド自体に接触して変形を開始するため、トータルの衝撃吸収量は一層大きなものとなる。そして、この請求項3におけるリブは、アンカーボルト頭部の外周面を覆った状態でサッシュガイドに当接するため、アンカーボルト頭部に対して当接する請求項2におけるリブとの併用が可能であり、これら2種のリブを併せ持つ構成の採用により、トータルの衝撃荷重の吸収量は更に一層大きなものとなる。しかも、この請求項3に係る発明における特徴的構成である筒状に突出したリブは、アンカーボルトの頭部外周を囲んだ状態でサッシュガイドカバーから筒状に突出しているため、アンカーボルト頭部の外部からの視認を防ぐ役割も果たし、製品外観の向上にも効果的である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の分解斜視図で、図2は組立状態における正面図であり、図3はそのA−A断面図である。なお、図1の分解斜視図および図2の正面図においては、図面の煩雑を避けるためにアンカーボルト5およびサッシュガイド6の図示を省略している。
【0017】
ガイドレール1には、そのガイド方向(長手方向)に複数の係合孔1aが形成されており、ガイド方向を略上下方向に沿わせた状態で、例えばセンターピラー等の車室内の側壁に固着される。スライダ2はそのガイドレール1に沿って摺動自在に支持される。なお、21はスライダ2とガイドレール1との間の摺動をスムーズなものとするための樹脂薄片である。
【0018】
スライダ2にはその表面を覆う樹脂製のスライドカバー3が装着される。このスライドカバー3は、スライダ2の上下両端部およびその中間部に対応してそれぞれ形成された合計3箇所の爪3a〜3cにおいてスライダ2に対して固着されている。また、このスライドカバー3は、スライダ2の上側および下側の双方において、ガイドレール1の表面を覆うように延出した延出部3dおよび3eが一体形成されている。
【0019】
スライダ2には、ロックピン4を貫通させるための貫通孔2aと、後述するアンカーボルト5の固着用のナット51を貫通させるための貫通長孔2bが形成されている。ロックピン4は、スライドカバー3に形成された起立部3f内に収容された状態でスライダ2の貫通孔2aに挿入され、また、起立部3fの天井部との間に挿入された圧縮コイルバネ41によってガイドレール1側に付勢され、その先端部が係合孔1a内に挿入されるようになっている。このロックピン4の頂部にはフランジ部4aが形成されており、そのフランジ部4aは、スライドカバー3の起立部3fの側面開口部から突出して、起立部3fの上から被せられる操作用ノブ42に係合される。従って、操作用ノブ42を掴んで引っ張ることにより、圧縮コイルバネ41の弾性力に抗してロックピン4をガイドレール1の係合孔1aから離脱させることができる。
【0020】
アンカーボルト5は、スライダ2の貫通長孔2b内に挿入されて回り止め状態となるナット51に対しスライドカバー3を貫通してねじ込まれることにより、スライダ2に対して固定される。このアンカーボルト5にサッシュガイド6が揺動自在に支持される。サッシュガイド6は、その先端部にシートベルト(図示せず)を挿入するためのスリット6aが形成されているとともに、基部にはアンカーボルト5が挿入される透孔6bが形成され、また、この透孔6bの近傍を除く部分は樹脂によってモールドされている。
【0021】
アンカーボルト5とそれに支持されているサッシュガイド6の基部は、樹脂製のサッシュガイドカバー7によってカバーされている。サッシュガイドカバー7は、図4(A)にガイドレール1側から見た裏面図を、同図(B)にはそのA−A断面図を示すように、その上半部に前記した操作用ノブ42の周囲を囲んだ状態で車室内側に露出させるための開口部7aが形成されているとともに、その上半部の下端部分にはガイドレール1側に突出してスライドカバー3の表面に当接する、比較的剛性の高い支持部7bが形成されている。また、その上端部には、スライドカバー3の上側の延出部3dに形成された角孔3gに挿入されて結合される第1の爪7cが形成されているとともに、上半部の下端部近傍には、スライドカバー3の起立部3fに隣接して設けられた爪保持部3hに挿入される第2の爪7dが形成されており、サッシュガイドカバー7は、支持部7bの先端がスライドカバー3の表面に当接した状態で、第1および第2の爪7c,7dによってスライドカバー3に対して固着される。
【0022】
また、サッシュガイドカバー7の下半部は、庇状の自由端となってアンカーボルト5およびサッシュガイド6の基端部を覆っている。このサッシュガイドカバー7の下半部の裏面とアンカーボルト5の頭部5aとの間には空隙Gが形成されている。そして、そのサッシュガイドカバー7の下反部の裏面の、アンカーボルト5の頭部5aとの対向部位には、複数のリブ7eが突出形成されている。そして、このリブ7eの先端面とアンカーボルト5の頭部5aとの間には数mm程度のクリアランスCが形成されている。
【0023】
以上の本発明の実施の形態においては、前記したように操作用ノブ42を掴んで引っ張ることによりロックピン4をガイドレール1の係合孔1aから離脱させることができ、その状態でスライダ2を摺動させて所望の係合孔にロックピン4を挿入することによって、スライダ2の位置、従ってアンカーボルト5およびサッシュガイド7の位置を任意に設定することができる。
【0024】
さて、このショルダーアジャスタは、車室内の乗員の頭部のやや上方に設けられるため、事故等の衝撃により乗員の頭部等がサッシュガイドカバー7の下半部に衝突する可能性がある。この衝突による衝撃荷重は以下のように緩和される。図5にその衝撃吸収過程を側面図で示す。図5(A)は衝撃が加わらない状態を示し、この状態でサッシュガイドカバー7の下半部に衝撃荷重Fが加わると、庇状のサッシュガイドカバー7の下半部が、同図(B),(C)に示すようにガイドレール1側に接近する向きに変形する。このとき、サッシュガイドカバー7は全体としての略中央部分である上半部の下端部に形成されている支持部7bを支点として、上端部に形成されてスライドカバー3の上側の延出部3dに係合している第1の爪7cをガイドレール1から離隔する向きに変位させるため、サッシュガイドカバー7の変形開始と同時にスライドカバー3の延出部3dに対してガイドレール1から離隔する向きに曲げ応力が作用して、この延出部3dが曲げ変形を開始する。従って、サッシュガイドカバー7の下半部に作用する衝撃荷重は、その発生直後から生じるサッシュガイドカバー7の変形とスライドカバー3の曲げ変形の双方によって吸収される。
【0025】
また、サッシュガイドカバー7とスライドカバー3の変形がある程度進行した後には、サッシュガイドカバー7の裏面に形成されているリブ7eがアンカーボルト5の頭部5aに当接することになるが、その当接後にはリブ7eが座屈変形することにより、衝撃荷重を更に吸収することができる。
【0026】
以上の実施の形態において特に注目すべき点は、サッシュガイドカバー7の変形と同時にスライドカバー3の曲げ変形が開始する点であり、これにより、サッシュガイドカバー7に対して衝撃荷重が作用したときに、無駄時間が介在することなくその直後から、実効的な衝撃荷重の吸収機能を発揮することができ、衝撃荷重の吸収量も大となる。しかも、スライドカバー3の曲げ変形による衝撃吸収は、リブの座屈変形による衝撃吸収に比して、車室内への突出量を大きくする必要がないため、全体としての突出量を少なくしても衝撃荷重の吸収量を大きくすることができる。
【0027】
ここで、サッシュガイドカバー7の裏面側に形成して衝撃吸収を補助するリブとしては、上記のようにアンカーボルト5の頭部5aに対して当接して変形するもののほか、サッシュガイド6自体に当接して変形するものを用いることができる。図6はそのサッシュガイド6自体に当接して変形するリブと、先の例におけるアンカーボルト5の頭部5aに対して当接して変形するリブ7eとを併用したサッシュガイドカバー7′を用いた本発明の他の実施の形態の断面図であり、図7(A)および(B)はそれぞれそのサッシュガイドカバー7′のガイドレール1側から見た裏面図およびそのA−A断面図である。なお、これらの図6および図7においては、先の例において説明した各部材や各部位と同等の機能を持つものについては、図1〜図5に示した符号と同じ符号を記し、これらの詳細な説明を省略する。
【0028】
この例におけるサッシュガイドカバー70は、先の例と同様にその下半部が庇状に下方に張り出してアンカーボルト5の頭部5aを覆っているとともに、このサッシュガイドカバー70には、そのアンカーボルト5に対向する側の面に、アンカーボルト5の頭部5aの外周を非接触のもとに囲むように筒状に突出するリブ7fが形成されており、そのリブ7fの先端は、アンカーボルト5によって支持されたサッシュガイド6に対して所定のクリアランスC′を介して対向している。このリブ7fにより、図6に示すように、使用中においてアンカーボルト5の頭部5aが覆われ、外部から視認されることが防止される。また、このリブ7fの内側に、アンカーボルト5の頭部5aにクリアランスCを介して対向する前記したリブ7fが形成されている。
【0029】
また、この例におけるサッシュガイドカバー70の下半部における本体部分(リブ7e,7fを除く外殻部分)のガイドレール1側に向かう寸法は、後述するリブ7fの座屈変形代を稼ぐために、下側に向かうほど短くなっている。
【0030】
以上の実施の形態によれば、乗員の頭部等がサッシュガイドカバー70の下半部に衝突したとき、先の実施の形態と同様に、庇状のサッシュガイドカバー70の下半部がガイドレール1側に接近する向きに変形し、その上半部の下端部に形成されている支持部7bを支点として、第1の爪7cを介してガイドレール1から離隔する向きに変位させ、サッシュガイドカバー70自体の変形開始と同時にスライドカバー3の延出部3dをガイドレール1から離隔する向きに曲げ変形させて衝撃荷重を吸収する。そして、サッシュガイドカバー70とスライドカバー3の変形がある程度進行した後には、サッシュガイドカバー70の裏面に形成されているリブ7eがアンカーボルト5の頭部a5に当接するとともに、同じくサッシュガイドカバー70の裏面に形成されているリブ7fがサッシュガイド6自体に当接し、これらの各リブ7eおよび7fがそれぞれ座屈変形して、衝撃荷重を更に吸収することができる。
【0031】
なお、以上の各実施の形態においては、サッシュガイドカバー7または70の裏面側に、衝撃荷重の作用時にアンカーボルト頭部5aに対して当接して座屈変形するリブ7eおよび/またはサッシュガイド6自体に当接して座屈変形するリブ7fを形成して衝撃吸収能力をより大きなものとした例を示したが、サッシュガイドカバー7または70の材質並びにその厚さ、およびスライドカバー3の材質並びに厚さを適宜に選定して、サッシュガイドカバー7または70の自由端部における変形とスライドカバー3の曲げ変形によって予期される衝撃荷重を吸収できるならば、リブ7e,7fは必ずしも設ける必要はない。
【0032】
また、アンカーボルト頭部5aとサッシュガイドカバー7の下面部の裏面との間に設けるべき空隙Gの大きさは、サッシュガイドカバー7,70とスライドカバー3の変形範囲を規定してこれらの変形による荷重吸収量を規定するものであり、この空隙Gの大きさについても、各カバーの材質と厚さ等に応じて適宜に設定することができる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明によればシートベルトのサッシュガイドを支持するアンカーボルトの位置を変化させるためのショルダーアジャスタのスライダに、その表面を覆い、かつ、少なくともスライダの上側に延出する延出部を有するスライドカバーを固着するとともに、そのスライドカバーに、アンカーボルト頭部をオーバーハング状に張りだして覆うサッシュガイドカバーを固着し、このサッシュガイドカバーにはその上端部にスライドカバーの延出部に係合する爪を形成し、当該サッシュガイドカバーの上下方向略中央部に位置する、上半部の下端部にスライドカバー表面に当接する支持部を形成しているから、サッシュガイドカバーに衝撃荷重が作用すると、直ちにこのサッシュガイドカバーが変形すると同時にスライドカバーが曲げ応力が作用して変形し、これら両者の変形によって、素早く実効的な衝撃吸収を開始させることができる。また、スライドカバーは曲げ変形により衝撃を吸収するため、リブの座屈を利用する場合に比して車室内への突出量を大きくする必要がないため、本発明によると、全体としての車室内への突出量を従来に比して少なくしても、衝撃荷重の吸収量を大きくすることができる。
【0034】
また、上記の構成に加えて、サッシュガイドカバーのアンカーボルト頭部への対向面にリブを形成した構成を追加すると、そのリブの変形による衝撃吸収能力が加わる結果、トータルの衝撃荷重の吸収量を更に大きくすることができる。
【0035】
更に、サッシュガイドカバーのサッシュガイドに対向する側の面に、上記のリブに代えて、もしくは上記のリブに加えて、アンカーボルト頭部を非接触で囲み、かつ、サッシュガイドに対向するように筒状に突出したリブを形成した場合には、そのリブの変形による衝撃吸収能力が付かさされ、トータルの衝撃荷重の吸収量を更に大きくすることができると同時に、アンカーボルト頭部を隠蔽して製品デザインの向上にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の組立状態における正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に用いられているサッシュガイドカバー7の説明図で、図4(A)はガイドレール1側から見た裏面図、図4(B)はそのA−A断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の衝撃吸収過程を(A)〜(C)の順でそれぞれ側面図を用いて示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の縦断面図である。
【図7】図6の実施の形態に採用したサッシュガイド70の説明図で、図7(A)はガイドレール1側から見た裏面図、図7(B)はそのA−A断面図である。
【符号の説明】
1 ガイドレール
1a 係合孔
2 スライダ
2a 貫通孔
2b 貫通長孔
3 スライドカバー
3d,3e 延出部
3f 起立部
3g 角孔
3h 爪保持部
4 ロックピン
41 圧縮コイルバネ
42 操作用ノブ
5 アンカーボルト
5a 頭部
6 サッシュガイド
7,70 サッシュガイドカバー
7a 開口部
7b 支持部
7c 第1の爪
7d 第2の爪
7e リブ(アンカーボルト頭部5a当接用)
7f リブ(サッシュガイド6当接用)
G 空隙
C,C′ クリアランス
Claims (3)
- 乗員の肩部近傍に配置されてシートベルトを貫通させるサッシュガイドの上下方向位置を設定するためのシートベルト用ショルダーアジャスタであって、
ガイド方向を略上下方向に沿わせた状態で車室内に固定され、かつ、そのガイド方向に複数の係合孔が形成されたガイドレールと、そのガイドレールに摺動自在に支持されるスライダと、このスライダに対してその表面を覆った状態で固着され、かつ、少なくとも当該スライダの上端よりも上方に延出してガイドレールを覆う延出部を備えた樹脂製のスライドカバーと、そのスライドカバーを貫通して上記スライダに固定されて上記サッシュガイドを支持するアンカーボルトと、頂部に操作用の樹脂製ノブを備えるとともに、上記スライダを貫通した状態でガイドレール側に付勢され、上記各係合孔のいずれかに挿入されることにより当該スライダをガイドレールに対して位置決め固定するためのロックピンと、上半部が上記ノブの周囲を囲んだ状態で上記スライドカバーに固着されるとともに、下半部が上記アンカーボルトの頭部を所定の空隙を介して覆うように張り出した樹脂製のサッシュガイドカバーを備え、このサッシュガイドカバーは、上端部近傍に形成された爪部が上記スライドカバーの延出部に係合しているとともに、当該サッシュガイドカバーの上下方向略中央部に位置する、上半部の下端部近傍に上記スライドカバーの表面に当接する支持部が形成されていることを特徴とするシートベルト用ショルダーアジャスタ。 - 上記サッシュガイドカバーのアンカーボルト頭部との対向面に、変形可能なリブが突出形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用ショルダーアジャスタ。
- 上記サッシュガイドカバーのサッシュガイドに対向する側の面に、上記アンカーボルトの頭部外周を非接触で囲み、かつ、先端がサッシュガイドに対向するように筒状に突出した変形可能なリブが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルト用ショルダーアジャスタ。
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