JP3934177B2 - フレキシブルソーラパドル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
例えば人工衛星等の宇宙機などに用いられるフレキシブルソーラパドルに関する。
【0002】
【従来の技術】
人工衛星等の宇宙機などに用いられるソーラパドルには、従来よりアルミハニカム構造を中心としたリジッドなパドルや軽量で剛性に富む格子型パドルが用いられてきたが、最近ではさらなる軽量化を達成するためにポリイミドブランケットなどを核とするフレキシブルソーラパドルが主流になっている。
【0003】
フレキシブルソーラパドルは、一般に、ポリイミドフィルムをフレキシブルエポキシ樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせたポリイミドブランケットを基体とし、このポリイミドブランケットにソーラパネルを貼り付けて構成されている。
【0004】
またポリイミドブランケットの背面には、フレキシブルOSR(Optical Solar Reflector Radiator:太陽光反射放射器)が粘着剤を用いて貼り付けられる。
このようなフレキシブルソーラパドルでは、接着剤層からガスが発生し、ポリイミドブランケットを形成するポリイミドフィルムが剥離してしまう恐れがある。また、ポリイミドフィルム間の内圧の上昇とともにフィルム面が凸面になりソーラセルが剥離する恐れがある。さらには、粘着剤から発生するガスによりポリイミドブランケットからフレキシブルOSRが剥離する恐れがある。
【0005】
そこでこれらの不具合を回避するために従来は、予め、真空もしくは大気中にて低温度(60℃程度)下で、接着剤や粘着剤をそれぞれ単独で全面的に暴露させることが行なわれていた。すなわち、接着剤や粘着剤を予め老化させる方法が従来より採られていた。
【0006】
しかし接着剤や粘着剤を老化させるべく熟成(エージング)や真空加熱(ベーキング)を直接施す方法は、材料の寿命を短くさせるばかりでなく、接着の初期強度を落とす原因ともなっていた。また、温度をかけるとポリマー間の未反応低分子は蒸発されるが、表面のタックが無くなって乾燥し、接着や粘着が行ないずらくなる。このため接着や粘着のためにより大きな接着荷重が必要になってしまう。
【0007】
なお、軽量でEI積(ヤング率×慣性モーメント)が大きいという特徴から宇宙きの構造材料として多用されているハニカムコア材は、表皮材を取り付けてサンドイッチ構造とすると密閉状態になり圧力差によりコアが膨らむことから、コアの側壁にパーフォレーションと呼ぶ穴を開けてコアの内部と外部とを通気することが一般に行なわれている。しかしながらこの技術は、あくまでも構造体の内部空間と外部空間とを連通させるだけのものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来のフレキシブルソーラパドルは、接着剤や粘着剤からのガスの発生によりポリイミドブランケットなどの基体を構成するポリイミドフィルムなどのフィルムや、基体に貼り付けられたフレキシブルOSRが剥離してしまうことを防止するために、接着剤や粘着剤を予め老化させて接着剤や粘着剤からのガスの発生を防止していたために、材料の寿命を短縮、接着や粘着の初期強度の低下および接着や粘着のために必要な接着荷重の増大を招くという不具合があった。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、接着剤や粘着剤を予め老化させることなしに、接着剤や粘着剤にて発生したガスによって基体を構成するフィルムや、基体に貼り付けられたフレキシブルOSRが剥離してしまうことを防止することができるフレキシブルソーラパドルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために第1の発明は、例えばポリイミドフィルムなどの複数のフィルム材をそれぞれ接着剤を用いて接着して形成された基体と、この基体の第1の面に所定の間隔で配置された複数のソーラセルと、前記基体の第1の面の側から、前記ソーラセルを避け、かつ前記接着剤まで到達するように形成された例えば穴などの第1の凹部とを備えた。
【0011】
第2の発明は、例えばポリイミドフィルムなどの複数のフィルム材をそれぞれ接着剤を用いて接着して形成された基体と、この基体の第1の面に所定の間隔で配置された複数のソーラセルと、前記基体の第2の面に粘着剤を用いて粘着された例えばフレキシブルOSRなどの熱制御板と、前記基体の第1の面の側から、前記ソーラセルを避け、かつ前記接着剤まで到達するように形成された例えば穴などの第1の凹部と、前記基体の第2の面の側から、前記粘着剤まで到達するように形成された例えばスリットなどの第2の凹部とを備えた。
【0012】
第3の発明は、前記第1の発明または前記第2の発明における第1の凹部を、各ソーラセルの周囲に複数個ずつ形成するようにした。
第4の発明は、前記第1乃至第3の発明における基体を形成する複数のフィルム材の間に例えば銅箔などのハーネスが配置されているとき、第1の凹部の深さを前記ハーネスの表面までとした。
【0013】
さらに第5の発明は、前記第4の発明における第1の凹部の形成位置にハーネスが存在しない場合には、前記第1の凹部を前記ハーネスの表面の位置よりも深い位置まで到達させるようにした。
【0014】
これらの手段を講じたことにより、複数のフィルム材をそれぞれ接着する接着剤や、基体に対して熱制御板を粘着する粘着剤からガスが発生したとしても、このガスは第1の凹部または第2の凹部を通って外部へと放出され、ガスによって内圧が上昇することが防止される。
【0015】
また第3の発明によればさらに、ソーラセルの熱によりソーラセルの周辺にて活発に発生するガスが効率良く外部に放出される。
また第4の発明によればさらに、第1の凹部を形成する際にハーネスを傷付けることがない。
【0016】
また第5の発明によればさらに、第1の凹部を形成する際にハーネスを傷付けることを防止した上で可能な限り接着剤がなす層の深くまで第1の凹部が形成され、ガスが効率良く外部に放出される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態につき説明する。
なおここでは、本実施形態のフレキシブルソーラパドルの構造を、そのを追いながら説明する。
【0018】
本実施例のフレキシブルソーラパドルを製造するに当たっては、まず最初にポリイミドフィルムを準備する。このフィルムをカバーレイと呼ぶ。
(1) 図1に示すように、カバーレイ1の一方の面に接着剤2を塗布する。このように接着剤2を塗布したカバーレイ1を、1枚のパドル当たり2セット分製作する。接着剤2は、一般にタックがないものを使用するが、硬化するとフレキシブルに動くタイプ(市販のフレキシブルエポキシ樹脂と呼ばれるものは多くがこのタイプである)を用いる。
【0019】
(2) 図2に示すように、2セットのカバーレイ1(1-1 ,1-2 )のうちの一方(ここではカバーレイ1-2 )に、接着剤2をはさんで銅箔3を接着する。銅箔3の厚みは35μmである。この銅箔3はソーラセルパネル同士をハーネスとして接続する役目を果たす。銅箔3は所定のサイズに配線用としてケミカルエッチングし、短冊状のパターンを作る。
【0020】
(3) 図3に示すように、銅箔3を接着してないカバーレイ1-1 を銅箔3が接着されているカバーレイ1-2 に重ね合わせて接着する。
(4) 図4に示すように、カバーレイ1-2 をベースとして表面にアクリルの粘着剤4をつけてフレキシブルOSR5を粘着する。粘着剤4を用いて固定するのはカバーレイ1-2 とフレキシブルOSR5とをフレキシブルに固定して柔軟にカバーレイ1-2 およびフレキシブルOSR5を動かし、これによりしわの発生を防止するためである。
【0021】
(5) 図5に示すように、カバーレイ1-1 にシリコーン系の接着剤6を用いてソーラセル7を接着する。その際ソーラセル7同士を直列あるいは並列に配線するために、インターコネクタ(接続片)8を用いる。さらにソーラセル7を保護するべく、同じシリコーン系の接着剤9を用いてカバーガラス10を接着する。この接着剤9を用いるのは発生する応力が少なく、温度サイクルの環境下に強いことが要求されるためである。
【0022】
(6) 図6に示すように、フレキシブルOSR5の上からカッタナイフを用いて粘着剤4が暴露されるまでスリット11を入れる。スリット11の幅は1〜2mm で、間隔は10〜20mm程度である。スリット11の深さは80.2μmであり、粘着剤の厚み60μmの約半分まで到達する。
【0023】
(7) 図6に示すように、ソーラセル7とソーラセル7との中間をねらい、かつインターコネクタ8を避けて、エキシマレーザまたはYAGレーザを用いてφ0.2mm の穴12を10mm間隔で4箇所開ける。穴12の深さは、銅箔3を傷つけることのないように銅箔3の表面までとし、例えばカバーレイ1-1 から30μmである。ただし、穴12の位置が銅箔3の配置されていない場所であれば、図6に示すように接着剤2がなす層の約半分まで到達させてガスの放出効率を高める。
【0024】
(8) 以上のようにして形成されたフレキシブルソーラパドルは、まず最初に恒温槽に入れて70℃、4時間保持する。次に真空チャンバ中で10-6torr、常温または-120℃から昇温し60℃、48時間保持してベーキングする。この保持時間にガスが放出される。この工程でフレキシブルソーラパドルが完成される。
【0025】
なお以上では、インターコネクタ8のマウント、溶着および内部配線の接続工程については説明を省略している。
以上のような構造とすることにより、接着剤2で発生するガスは穴12を通って、また粘着剤4で発生するガスはスリット11を通ってそれぞれ外部に放出されることになり、カバーレイ1-1 ,1-2 やフレキシブルOSR5を剥離させるほどに内圧が上昇してしまうことが防止される。また、カバーレイ1-1 が凸面になってしまうこともなく、ソーラセル7が剥離してしまうことも防止される。
【0026】
また本実施形態によれば、接着剤2や粘着剤4でガスが発生しても、これを穴12やスリット11によって外部に放出することができるので、接着剤2および粘着剤4を予め老化させる必要がない。従って、接着剤2の接着力や粘着剤4の粘着力を十分に発揮させることができ、十分な強度と長寿命を得ることができる。
【0027】
以上のことから、信頼性が高く、かつ長寿命なフレキシブルソーラパドルが実現される。
なお本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、スリット11に代えて、きりやレーザを用いて穴を開けるようにしても良い。
【0028】
また前記実施形態では、2枚のカバーレイ1-1 ,1-2 によって基体を形成するものとなっているが、3枚以上のカバーレイを互いに接着して基体を形成しても良い。
【0029】
また、カバーレイ1、接着剤2,6および粘着剤4の具体的な材質は、前記実施形態に挙げたものには限定されない。
また前記実施形態では、熱制御板としてフレキシブルOSRを用いているが、放熱フィルムなどのフレキシブルOSR以外のタイプのものを用いることもできる。
このほか、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0030】
【発明の効果】
第1の発明は、例えばポリイミドフィルムなどの複数のフィルム材をそれぞれ接着剤を用いて接着して形成された基体と、この基体の第1の面に所定の間隔で配置された複数のソーラセルと、前記基体の第1の面の側から、前記ソーラセルを避け、かつ前記接着剤まで到達するように形成された例えば穴などの第1の凹部とを備えた。
【0031】
第2の発明は、例えばポリイミドフィルムなどの複数のフィルム材をそれぞれ接着剤を用いて接着して形成された基体と、この基体の第1の面に所定の間隔で配置された複数のソーラセルと、前記基体の第2の面に粘着剤を用いて粘着された例えばフレキシブルOSRなどの熱制御板と、前記基体の第1の面の側から、前記ソーラセルを避け、かつ前記接着剤まで到達するように形成された例えば穴などの第1の凹部と、前記基体の第2の面の側から、前記粘着剤まで到達するように形成された例えばスリットなどの第2の凹部とを備えた。
【0032】
第3の発明は、前記第1の発明または前記第2の発明における第1の凹部を、各ソーラセルの周囲に複数個ずつ形成するようにした。
第4の発明は、前記第1乃至第3の発明における基体を形成する複数のフィルム材の間に例えば銅箔などのハーネスが配置されているとき、第1の凹部の深さを前記ハーネスの表面までとした。
【0033】
さらに第5の発明は、前記第4の発明における第1の凹部の形成位置にハーネスが存在しない場合には、前記第1の凹部を前記ハーネスの表面の位置よりも深い位置まで到達させるようにした。
【0034】
これらにより、接着剤や粘着剤を予め老化させることなしに、接着剤や粘着剤にて発生したガスによって基体を構成するフィルムや、基体に貼り付けられたフレキシブルOSRが剥離してしまうことを防止することができるフレキシブルソーラパドルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るフレキシブルソーラパドルの製造手順を説明する図。
【図2】本発明の一実施例に係るフレキシブルソーラパドルの製造手順を説明する図。
【図3】本発明の一実施例に係るフレキシブルソーラパドルの製造手順を説明する図。
【図4】本発明の一実施例に係るフレキシブルソーラパドルの製造手順を説明する図。
【図5】本発明の一実施例に係るフレキシブルソーラパドルの製造手順を説明する図。
【図6】本発明の一実施例に係るフレキシブルソーラパドルの製造手順を説明する図。
【符号の説明】
1(1-1 ,1-2 )…カバーレイ
2…接着剤
3…銅箔
4…粘着剤
5…フレキシブルOSR
6…接着剤
7…ソーラセル
8…インターコネクタ
9…接着剤
10…カバーガラス
11…スリット
12…穴

Claims (5)

  1. 複数のフィルム材をそれぞれ接着剤を用いて接着して形成された基体と、
    この基体の第1の面に所定の間隔で配置された複数のソーラセルと、
    前記基体の第1の面の側から、前記ソーラセルを避け、かつ前記接着剤まで到達するように形成された第1の凹部とを具備したことを特徴とするフレキシブルソーラパドル。
  2. 複数のフィルム材をそれぞれ接着剤を用いて接着して形成された基体と、
    この基体の第1の面に所定の間隔で配置された複数のソーラセルと、
    前記基体の第2の面に粘着剤を用いて粘着された熱制御板と、
    前記基体の第1の面の側から、前記ソーラセルを避け、かつ前記接着剤まで到達するように形成された第1の凹部と、
    前記基体の第2の面の側から、前記粘着剤まで到達するように形成された第2の凹部とを具備したことを特徴とするフレキシブルソーラパドル。
  3. 第1の凹部は、各ソーラセルの周囲に複数個ずつ形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブルソーラパドル。
  4. 基体を形成する複数のフィルム材の間にハーネスが配置されているとき、第1の凹部の深さを前記ハーネスの表面までとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフレキシブルソーラパドル。
  5. 第1の凹部の形成位置にハーネスが存在しない場合には、前記第1の凹部を前記ハーネスの表面の位置よりも深い位置まで到達させることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブルソーラパドル。
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