JP3933303B2 - カーボンブラック及びその製造方法並びにカーボンブラック水性分散液及びこれを用いた水性インキ - Google Patents

カーボンブラック及びその製造方法並びにカーボンブラック水性分散液及びこれを用いた水性インキ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にインクジェット用インキ並びに筆記用インキの顔料として好適に使用されるカーボンブラック及びその製造方法、並びにこのカーボンブラックを含有する水性インキに関する。
【0002】
【従来技術】
インクジェット記録は、記録時の騒音が小さい、カラー印刷が可能、高速印字が可能、普通紙に印刷が可能で高品位であることと言った特徴を持つことからパーソナル用、オフィス用を問わずコンピュータの印刷用に巾広く使用されている。
このインクジェット印刷は種々の方式があり、記録ヘッドの中にある細いノズル中のインクを静電エネルギーにより吐出を行う方法、及び記録ヘッド内においた発熱帯に電流を流し、その発熱により気泡を発生させてノズルからインキを吐出させることにより、印刷を行う方法が挙げられる。
このようなインクジェット記録に用いられるインキとしては、従来は染料を水に溶解または分散した水性インキが用いられてきた。この様な水性インキは万年筆、ボールペン等の筆記具にも用いられている。
【0003】
これらの用途に用いられる記録用のインキに要求される性能としては、次の様な項目が上げられる。
(1)印字または筆記物に滲みが生じないこと
(2)印字または筆記物が光、または熱により退色しないこと
(3)長期間放置したときでも記録ヘッド内のノズルやペン先に目詰まりを生じないこと
(4)保存安定性が良いこと
(5)インキの粘度が低いこと
上述のように従来、これらの用途のインキでは着色剤として染料を、水に溶解または分散したインキが用いられてきたが、染料を用いた場合、印字または筆記物に滲みが出やすく光により退色するという問題を有することから、最近カーボンブラックを黒色顔料として使用したインキが注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのカーボンブラックをインキ用顔料として用いた場合、カーボンブラックの表面が親油性であるために、カーボンブラックの水中での分散性が悪く、ノズルやペン先にカーボンブラックが目詰まりしたり、保存中に凝集物を生じ使用不可能となる。このため、各種の分散剤の添加が必要とされている。
ここで分散剤としては、カーボンブラックと馴染みの良い親油性基と、水と馴染みの良い親水基との両方の基を分子内に含有する分散剤、具体的には主に樹脂分散剤が、分散性あるいは分散安定性を改良するために用いられている。
【0005】
しかしながら、このような樹脂分散剤はカーボンブラック表面に結合させることによりその効果を期待するものであるため、カーボンブラック表面に結合する量以上に添加しないと分散効果が得られない。このため液中に余分な分散剤が残り、それがノズルやペン先のインクが乾燥したときに、再溶解性の乏しい固形物となり、目詰まりの原因となる。また、分散剤を添加することによりインキの粘度が高くなり、安定したインキの吐出性が得られないという問題も生ずる。
【0006】
この様な問題点を改善するため、特開平8−3498号公報ではカーボンブラックに次亜塩素酸ソーダ溶液を作用し、カーボンブラックを市販品以上に酸化処理しその表面を親水化処理することにより、分散剤を使わず分散安定性を改良する試みが記載されている。しかしながらこの方法では、液中に酸化剤として用いた多くの塩素イオンやナトリウムイオンが存在するため、これをインキとして用いるには、一旦反応物を濾過し、その後逆浸透膜や限外濾過等により精製をする必要がある。また、100℃の高温で12時間もの長時間酸化処理を行っているため、水に可溶なフミン酸が生成する。
また、市販カーボンブラックを更に酸化処理をするものとして、特開平7−258578号公報には気相の低濃度オゾンを使用し長時間市販カーボンブラック以上に酸化処理することが記載されている。
【0007】
しかしながら、この様な方法で酸化処理したカーボンブラックは、酸化剤の作用が強い為か、カーボンブラックの表面を著しく浸食し、表面積を増大するとともに、水に可溶なフミン酸を生成する。また、この様な処理で生成したカーボンブラックの官能基は、理由は不明であるが、水との馴染みが不十分で分散安定性は十分ではないことが本発明者の検討により判明した。
このように、以上説明した従来技術である次亜塩素酸ナトリウムや気相中のオゾンを酸化剤として酸化処理をしたカーボンブラックを含む水性インキ中には、フミン酸やNaイオンが大量に存在することとなり、たとえば、特公平7−51687号公報にも記載されているように、これらの不純物がノズルやペン先で固形物となり、目詰まりの原因となる。
【0008】
また、酸化処理法として特開昭50−142626号公報には水性媒体とカーボンブラックを攪拌混合しながら、攪拌槽下部より細孔を通じてオゾンを曝気する方法も記載されている。しかしながら、ここではフラッシング(顔料粉末の水性混合物に、攪拌しながら油を添加して顔料粉末を油相に移行させる)により油等の疎水性ベヒクルに分散させる方法が記載されているのであって、水性インキ用、特にインクジェット用インキの顔料として好適に用いることのできる水性媒体への分散性の優れたカーボンブラックについては何等記載されていない。オゾンの導入量としてもファーネスブラックの比表面積1m2に対して2×10-5grモルを超えて導入することは好ましくないとされており、得られるカーボンブラックの酸化の程度は低いものが好ましいことを意図していることが推測されるものの、具体的な酸化の程度についても記載されてはいない。このように、従来は水性インキ用、特にインクジェット用インキの顔料として好適に用いることのできる水性媒体への分散性の優れたカーボンブラックを得る方法は見いだされておらず、カーボンブラックを水性インキ用顔料に用いるには問題があった。
【0009】
本発明は、上記の従来技術における問題を解決し、分散安定性に優れ、ノズルやペン先での目詰まりの発生が抑えられ、吐出安定性に優れた水性インキ用顔料並びにインキを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、全酸性基量を特定量以上としつつ活性水素含有量を特定量以下に抑えたカーボンブラックが、意外なことに水性媒体中での分散性に優れており、分散安定性のよいカーボンブラック水分散体を提供できることを見出し本発明に到達した。従来、例えば特開平8−3498号公報記載の方法におけるように、酸化処理によりカーボンブラック表面の酸性官能基が増加し、それが親水性につながり水性媒体中での安定性に単純に寄与すると考えられてきたようである。これに対し本発明者は、意外にも、酸化処理により付与される官能基は全酸性基として検出されるが必ずしも活性水素含有量として検出される官能基の増加に結びついているとは言えないこと、さらには活性水素含有量の多いカーボンブラックが必ずしも水性媒体中での分散に優れているとは言えず、活性水素含有量を増加させることが分散性向上につながらず、かえって低下させることを見出したのである。すなわち本発明は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の総含有量が1重量%以下のカーボンブラックをオゾンにより酸化して得られる、全酸性基量が0.5μequ/m2以上、活性水素含有量が2.0mmol/g以下で、抽出フミン酸濃度が、抽出液の吸光度で1以下であるカーボンブラック等に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のカーボンブラックは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の総含有量が1重量%以下のカーボンブラックをオゾンにより酸化して得られる、全酸性基量が0.5μequ/m2以上、活性水素含有量が2.0mmol/g以下で、抽出フミン酸濃度が、抽出液の吸光度で1以下であるものである。全酸性基の量は、NaOHやKOH等の強アルカリと反応した量として求めることができる。
【0012】
この全酸性基を求める方法としては以下の通りである。カーボンブラックを0.2から0.5g取り、0.01NのNaOHを60cc入れた三角フラスコに入れ、窒素を三角フラスコに流し、スターラで6時間撹拌をして反応させる。この反応物を再び0.1ミクロンのメンブランフィルターを用い濾過を行い、濾過液を得る。
この濾過液を40cc取り、0.025N塩酸を用い自動中和滴定装置で滴定を行い濾過液のNaOH濃度を求める。
なお、水中で酸化処理したカーボンブラックの測定等、カーボンブラックが分散液として存在する場合に測定を行うには、0.1ミクロンのメンブランフィルターを用いて濾過を行い水と分離する。この分離したカーボンブラックを60℃の乾燥機で1昼夜乾燥した後、メノウ乳鉢で粉砕したものを用い測定を行う。
カーボンブラックの全酸性基は次の計算により求めることが出来る。
【0013】
【数1】
Figure 0003933303
【0014】
本発明ではカーボンブラックの全酸性基の量が0.5μequ/m2以上とする。全酸性基が0.5μequ/m2未満では水性媒体への分散が困難となる。全酸性基が3μequ/m2以上で、水性媒体への分散が非常に優れたものとなる。より好ましくは6μequ/m2以上とすれば、水性媒体への分散性が極めて良好となる。全酸性基の上限は特に制限されないが、好ましくは2.5mequ/g以下、特に好ましくは2.0mequ/g以下とする。2.5mequ/gを超えても分散性向上効果は頭打ちとなる一方、カーボンブラックが分解してフミン酸等の有機物となることにより歩留りは低下する。活性水素含有量は、以下の方法により求まる。カーボンブラックにジアゾメタンのジエチルエーテル溶液を滴下させることによりカーボンブラック上の活性水素をメチル基に交換する。この処理をしたカーボンブラックに、比重1のヨウ化水素酸を加え、加熱してメチル基をヨウ化メチルとして気化させる。このヨウ化メチルの気体を硝酸銀溶液でトラップしてヨウ化メチル銀として沈殿させる。このヨウ化銀の重量より元のメチル基の量、すなわち活性水素の量を測定する。カーボンブラックが酸化処理等の処理を施されたものであり例えば次亜塩素酸ソーダでの処理による場合等、残存イオンを多く含んでいる場合には脱塩、中和処理を行うことにより正確な活性水素含有量を求める。この脱塩を行う方法として簡単には、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の入ったカラムにカーボンブラック分散液を通す方法が使用できる。このような処理により、官能基と結びついていた陽イオンは除去でき、分散液のpHは酸性を示すため、カーボンブラックの有する活性水素量を正確に示すことができる。このような前処理は、カーボンブラック中の陽イオン量が1000ppm以上の場合に行うべきである。より具体的には、カーボンブラック分散液(カーボンブラックが乾燥状態であれば、これを一旦水に分散して得られた分散液)を、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を混合したものを詰めたカラムを通して、陽イオンを取り除いた後、0.1μmのメンブランフィルターで濾過をして、カーボンブラックを取り出す。このカーボンブラックを100℃の乾燥機の中で1昼夜乾燥した後、乳鉢で粉砕しをし、サンプルを得る。このサンプル1.0gを取り、過剰量のヨウ化水素溶液の入ったフラスコに入れ、加熱沸騰させ、ヨウ化メチルを発生させ、この発生したヨウ化メチルを窒素ガスで搬送して、硝酸銀溶液で捕集、沈殿させる。捕集液を硝酸酸性にした後、メンブランフィルターで濾過して沈殿物を捕集する。この沈殿物を50℃で乾燥後、重量測定して活性水素量を求める。このような本発明のカーボンブラックは、市販のカーボンブラックを酸化処理することにより容易に得ることができる。酸化処理に供するカーボンブラックは特に制限されず、従来より存在するファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックはいずれも用いることができる。酸化処理に供するカーボンブラックの粒子径は限定されないが100nm以下、さらには30nm以下のものが粒子の沈降が特に抑えられ最適である。またカーボンブラック中のアルカリ金属、アルカリ土類金属は水中に溶解し、液中でのオゾン酸化の効率を低下するので、少ない方がよ、総量として1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下とする
【0015】
また、カーボンブラック中の硫黄や硫黄化合物、あるいは、塩素化合物はオゾンで酸化されて溶液中で強酸となり、カーボンブラックの表面に生成した官能基がイオンになることを妨害する作用を有することから、極力、少ないことが望まれるが、全硫黄分析値、あるいは全塩素分析値で各々0.5重量%、好ましくは0.1%重量以下が好ましい。硫黄含有量を低下するには、カーボンブラックの原料として用いる芳香族炭化水素、燃料として用いる液体炭化水素や気体炭化水素として低硫黄含有量の物を用いることで可能である。また塩素含有量は、カーボンブラック製造時の冷却水として用いる水として純水を使用することにより、低下することができる。
カーボンブラック中の硫黄量は、例えばカーボンブラックを0.1g精秤し、ベストフ社製「SULMHOGRAPH12A」にて測定することが出来る。
【0016】
酸化処理に供するカーボンブラックはあらかじめ酸化する必要は無いが、水存在下でのオゾン酸化に先立ち、従来公知である硝酸や気相のオゾンで処理をしたカーボンブラックをさらに以下に説明する方法で酸化処理してもかまわない。
酸化方法は特に限定されない。全酸性基量及び活性水素含有量が上述の範囲となる方法であればいずれも制限なく採用することができる。
特に、以下の方法により酸化処理を行えば、本発明のカーボンブラックを簡便な方法で得ることができ、好ましい。すなわち、カーボンブラックの酸化処理に際し、水の存在下で行うものとする。水の量は、カーボンブラックと水との比率(重量比)で95:5〜0.5:99.5が適当であり、より好ましくは50:50〜2:98、さらに好ましくは20:80〜5:95の範囲がよい。こうして水とカーボンブラックを混合し、この混合体にオゾンを導入してカーボンブラックの酸化処理を行う。具体的にはオゾン及び/又はオゾン含有ガスを通じてカーボンブラックの酸化処理を行うことができる。
【0017】
ここで酸化処理に用いる酸化剤であるオゾンは、従来よりカーボンブラックの酸化に使用されている他の酸化剤である硝酸、窒素酸化物、硫酸、次亜塩素酸類では高温下で酸化反応が進むのとは異なり、室温でカーボンブラックを酸化することができるものである。
【0018】
オゾン発生機によりオゾンを発生させ、これを水とカーボンブラックの混合物に導入することにより、水の存在下でカーボンブラックを酸化処理することができる。オゾン発生機としては、空気や酸素中で放電することによりオゾンを発生させるものが一般的であるが、水を電気分解することにより発生させることも可能である。本発明で用いるオゾンを発生させるための発生機としては、方式に関わらずいずれも使用することができるが、オゾンの発生濃度が高いほどカーボンブラックの酸化の反応効率が良いので好ましい。一般的にはオゾン濃度1〜20重量%のオゾン含有ガスを発生させる発生機が市販されておりこれらで充分である。
【0019】
水の存在下でオゾンによりカーボンブラックの酸化を行い、後述のようにカーボンブラックの表面の活性水素含有量が特定量以下となるまで酸化処理を行うことにより水性媒体中での分散性に優れたカーボンブラックを得ることができる。かかる酸化方法を採用すると、意外にも、活性水素含有量として検出される官能基は減少し、全酸性基として検出される酸性官能基が増加することが判明した。このような簡易な酸化処理操作により水への分散性に寄与する酸性官能基がバランスよく付与され、特性の優れたカーボンブラックが得られる機構は明らかではないものの、以下のように推測される。カーボンブラックは原料炭化水素が熱分解を受けて、脱水素しながら炭化をしてできた粒子からなっているが、この粒子には、脱水素されなかった水素が、活性水素として残っている。このカーボンブラックを水の存在下でオゾン酸化するとオゾンと水とが一担反応したラジカルが生じるために、本来水となじみの悪い活性水素を置き換えて水となじみの良い官能基が生成するために、水への分散性の良好なカーボンブラックが得られるものと考えられる。
【0020】
これらの理由により、従来各種の酸化処理により得られた酸化処理カーボンブラックに比べてもなお、水中での分散性が大きく向上したカーボンブラックとなるという意外な効果を発揮するものと考えられる。
このような水の存在下でのオゾン酸化反応では、得られる分散液のpHは低くなり、また通常、液中のpHが低くなるとカーボンブラックの凝集が進むと言われているが、本発明のカーボンブラックは液のpHが2でも分散安定性が良いという水性インキ用顔料として極めて優れた特性を有する。さらには、本発明で得られる酸化処理カーボンブラックを含有する水分散液にNaOH等のアルカリを添加した場合でも、pHが12に至るまで分散安定性が極めて優れたものである。
このように、以上説明した水存在下でのオゾンによる酸化処理により、カーボンブラックの活性水素含有量が2.0mmol/g以下となるまで酸化処理することにより本発明のカーボンブラックを得ることができる。
【0021】
また、本発明のカーボンブラックは、従来技術による酸化処理カーボンブラックに比較して、カーボンブラック中のフミン酸含有量を抑えることができる。
フミン酸とは、一般的に、石炭等の炭素を酸化剤で処理をした時に生成する、多環芳香族縮合物にカルボキシル基や水酸基の官能基が結合した物質で、褐色のものである。この物質は単一の物ではなく、分子量分布を持つが、カーボンブラックを酸化処理した時のフミン酸は紫外の特定波長の吸収を持つことからその波長での吸光度として濃度を求めることができる。
【0022】
このフミン酸の濃度の分析は、カーボンブラック水分散液を0.1ミクロンのメンブランフィルターを用い、カーボンブラックを濾過する。このカーボンブラックを60℃で一昼夜乾燥しこの10gを三角フラスコに入れ、その上に水100ccに入れ、超音波分散機を用いて分散抽出操作を10分間行う。抽出後、0.1ミクロンのメンブランフィルターを用いて加圧濾過を行う。
濾過の初期には、カーボンブラックが一部漏れ出てくるので、初期の液は捨て、カーボンブラックが完全に取り除かれた液を採取する。
この液を、10mm角の石英吸光度測定セルにいれ、光度計で紫外250〜260nmの最大吸光度を測定し、この値を抽出フミン酸濃度とする。なお、液の吸光度が高すぎて光度計では吸光度が測定できない場合は、液を一旦希釈して測定した値に希釈倍率を掛けて、吸光度を求める。
【0023】
本発明においては上述のように酸化処理によるフミン酸の発生が抑制できる。このため例えば抽出フミン酸量が、抽出液の吸光度で1以下である酸化処理カーボンブラックも容易に得ることができ、ノズルやペン先での固形物発生による目詰まりを抑え、インキ用途、特にインクジェット用インキにおける黒色顔料として特に優れた特性を発揮することができる。なおここで抽出フミン酸とは上記の分散抽出操作により抽出され吸光度として測定されるフミン酸をいう。
【0024】
このように本発明のカーボンブラックは、水で希釈するだけで容易に水中に分散される。好ましくはカーボンブラック濃度を20重量%以下として水で希釈すれば、そのままで分散剤の添加やビーズミル等による分散処理をしなくとも十分水媒体中での分散安定性が保たれるという極めて画期的な効果を発揮するものである。
【0025】
なお、カーボンブラック中に粒径1μm以上の炭素異物が存在する場合には濾過操作により粒子を除去すればよい。
以上説明した本発明のカーボンブラックは、各種の媒体と混合して有用であるが、特に水性媒体に分散して水性分散液とすることにより、優れた性能を有する水性インキとすることができる。なおここで水性媒体とは、水あるいは水とこれに混和する極性溶媒との混合物をいい、極性溶媒の具体例としてはエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等の含N系溶剤の他尿素等が代表的である。
【0026】
水性分散液中のカーボンブラックの濃度は用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.5〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%含有させたカーボンブラック水性分散液とするのが好ましい。この範囲であればインキとした場合の印字濃度が良好で、しかもインキの粘度が抑えられ、優れた特性のインキを得ることができる。
水性分散液のpHは限定されないが、特にpH2〜10とするのが好ましい。本発明の酸化処理カーボンブラックは、このように広範囲のpHにおいて水への分散性が優れている。
【0027】
こうして得られるカーボンブラック水性分散液は、例えばカーボンブラックの濃度が20wt%を超える場合等には必要に応じて分散剤を添加する等、各種の添加剤を加え水性インキとして使用することができる。また必要に応じ濃縮、乾燥し、その後別途希釈してインキとして使用することもできる。この場合酸化処理カーボンブラックを水に添加し、ビーズミル、ボールミル、衝撃性分散機等による分散処理を用いることもできる。
【0028】
インキ化する際の添加剤としては例えば浸透剤、定着剤、防かび剤等が挙げられる。
浸透剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤の他、フッ素系界面活性剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどを使用することができる。
定着剤としては、水溶性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどのノニオン系水溶性樹脂、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル系水溶性樹脂などのアニオン系水溶性樹脂等)の他、水性エマルジョンも使用できる。
【0029】
一般にインクジェット用のインクとして使用する際には、カーボンブラック濃度として1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%のものが使用される。インクジェット用インクとして使用する際は、pH7〜10に整えて用いるのが望ましい。
こうして得られる本発明のインキは、インクジェット用のインクとして必要な、液滴形成の安定性吐出安定性、長時間の吐出安定性、長時間休止後の吐出安定性、保存安定性、被記録材への定着性、記録画像の耐候性等いずれもバランスのとれたものとなる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、%は特にことわりのない限り重量%を表す。
実施例1
市販カーボンブラック(三菱化学(株)製「#47」、硫黄量0.5%、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の総含有量0.1%)を20g、水500ccに入れ、家庭用ミキサーで5分間分散した。
得られた液を、攪拌機の付いた3リットルのガラス容器に入れた。攪拌機で攪拌しながら、オゾン濃度8重量%のオゾン含有ガスを500cc/分で2時間導入した。
【0031】
この際オゾン発生器としてペルメレック電極社の電解発生型のオゾナイザーを用いてオゾンを発生させた。
オゾン処理後の液を取り出しpHを測定したところ2.5であった。(pHの測定は、JIS K 6221による。)
また、この液中の粒度分布を日機装社製マイクロトラックUPAで測定したところ平均50%分散径で77nmであり、この液を取り、光学顕微鏡を用い、400倍の倍率で確認したところ良好な分散状態で全体がミクロブラウン運動をしており経時により凝集することもなく、分散安定性が良好であることがわかった。
【0032】
次いで、この液を0.1ミクロンの径を有するミクロポアーフィルターで濾過し、濾過残のカーボンブラックを60℃で乾燥をし、全酸性基と抽出フミン酸の濃度とを測定した。全酸性基は450μequ/gであった。また窒素吸着比表面積は120m2/gであった。したがって単位面積あたりの全酸性基は3.75μequ/m2であった。また抽出フミン酸濃度は、紫外255nmの吸光度で0.1であった。
【0033】
さらに、この分散液に0.1NのNaOH溶液を添加しPHを10に調整をした。さらにPHを12に上げても、粒度分布は変化せず78ミクロンであり、光学顕微鏡でも分散状態は良好であった。
これらの2種類の分散液を5000rpmの遠心分離で、(株)NEC製のカートリッジに詰めNEC(株)製プリンター「PR101」を用いて印字をしたところにじみやかすれの無い良好な印字物が得られた。
【0034】
(活性水素含有量の測定)
上記分散液を0.1μmのメンブランフィルターで濾過をして、カーボンブラックを取り出した。このカーボンブラックを100℃の乾燥機の中で1昼夜乾燥した後、乳鉢で粉砕し、サンプルとした。このサンプル1.0gを取り、過剰量のヨウ化水素溶液の入ったフラスコに入れ、加熱沸騰させ、ヨウ化メチルを発生させ、この発生したヨウ化メチルを窒素ガスで搬送して、硝酸銀溶液で捕集、沈殿させた。捕集液を硝酸酸性にした後、メンブランフィルターで濾過して沈殿物を捕集した。この沈殿物を50℃で乾燥後、重量測定して活性水素量を求めた。その結果、活性水素含有量は、1.20mmol/gであった。
【0035】
比較例1
カーボンブラック「#47」を20g取り、105℃で1時間乾燥し、冷却後5cm径で長さ20cmのガラスカラムに入れ、下から8wt%のオゾンを流し2時間反応させた。
得られた酸化処理カーボンブラックの全酸性基は800μequ/g、比表面積122m2/g、単位比表面積当たりの全酸性基は6.57μequ/m2であった。
実施例1同様の操作により測定したところ、抽出フミン酸量は紫外255nmの吸光度で4.0であった。
(活性水素含有量の測定)
このカーボンブラックの活性水素を実施例1(活性水素含有量の測定)と同様の方法により測定したところ、3.51mmol/gであった。
このカーボンブラック4gを水100ccに入れ、ホモミキサーで5分攪拌した。
【0036】
この混合液中の、カーボンブラックの様子を光学顕微鏡で観察したところ、粒径400nm程度の凝集物がたくさん見え、分散している状態では無かった。
また、液のPHは2.8であった。
さらに、この液を5000rpmで遠心分離したところ、ほとんどのカーボンブラックが沈降してしまい、印字に供することが出来なかった。
比較例2
三菱化学(株)製「#47」を、実施例1(活性水素含有量の測定)と同様の方法により測定したところ、3.37mmol/gであった。
この「#47」を4g、酸化処理することなくそのままで水100ccに入れホモミキサーで5分撹拌した。
この混合液中の、カーボンブラックの様子を光学顕微鏡で観察したところ、凝集したものしか得られていなかった。その凝集体径は、マイクロトラックでは測定不可能な大きなものであった。
以上の実施例及び比較例からも明らかなように、活性水素含有量は特定方法による酸化処理により減少し、このようにして得られる全酸性基と活性水素含有量とが特定の範囲にある本発明のカーボンブラックを用いることにより、特に分散処理をしなくとも分散安定性が良く、フミン酸等の目詰まりの原因となる不純物が少ない水性インクに使用できる分散液が得られることが分かる。
【0037】
【発明の効果】
本発明により特にインクジェット用又は筆記用のインキに使用した場合にノズルのオリフィス中またはその先端での目詰まりや沈降物発生が無く、安定したインキの吐出安定性が得られる黒色顔料として好適なカーボンブラックを得る。

Claims (7)

  1. アルカリ金属及びアルカリ土類金属の総含有量が1重量%以下のカーボンブラックをオゾンにより酸化して得られる、全酸性基が0.5μequ/m2以上、活性水素含有量が2.0mmol/g以下で、抽出フミン酸濃度が、抽出液の吸光度で1以下であるカーボンブラック。
  2. 水の存在下、全酸性基が0.5μequ/m2以上、活性水素含有量が2.0mmol/g以下となるまで、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の総含有量が1重量%以下のカーボンブラックをオゾンにより酸化することを特徴とする酸化処理カーボンブラックの製造方法。
  3. 硫黄及び硫黄化合物の総含有量が、硫黄分析値として0.5重量%以下のカーボンブラックを酸化することを特徴とする請求項2記載の酸化処理カーボンブラックの製造方法。
  4. 請求項1記載のカーボンブラックを0.5〜50重量%含有するカーボンブラック水性分散液。
  5. pHが2〜10である請求項記載のカーボンブラック水性分散液。
  6. 請求項又は記載のカーボンブラック水性分散液を用いた水性インキ。
  7. インクジェット用インキである請求項記載の水性インキ。
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