JP3874538B2 - カーボンブラック水性分散液及びこれを用いた水性インキ - Google Patents

カーボンブラック水性分散液及びこれを用いた水性インキ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にインクジェット用インキ並びに筆記用インキの顔料として好適に使用されるカーボンブラック、水性媒体中にカーボンブラックを含有する水性分散液並びに、水性インキに関する。
【0002】
【従来技術】
インクジェット記録は、記録時の騒音が小さい、カラー印刷が可能、高速印字が可能、普通紙に印刷が可能で高品位であることと言った特徴を持つことからパーソナル用、オフィス用を問わずコンピュータの印刷用に巾広く使用されている。
このインクジェット印刷は種々の方式があり、記録ヘッドの中にある細いノズル中のインクを静電エネルギーにより吐出させる方法、及び記録ヘッド内においた発熱帯に電流を流し、その発熱により気泡を発生させてノズルからインキを吐出させることにより、印刷を行う方法が挙げられる。
【0003】
このようなインクジェット記録に用いられるインキとしては、従来は染料を水に溶解または分散した水性インキが用いられてきた。この様な水性インキは万年筆、ボールペン等の筆記具にも用いられている。
これらの用途に用いられる記録用のインキに要求される性能としては、次の様な項目が上げられる。
【0004】
(1)印字または筆記物に滲みが生じないこと
(2)印字または筆記物が光、または熱により退色しないこと
(3)長期間放置したときでも記録ヘッド内のノズルやペン先に目詰まりを生じないこと
(4)保存安定性が良いこと
(5)インキの粘度が低いこと
上述のように従来、これらの用途のインキでは着色剤として染料を、水に溶解または分散したインキが用いられてきたが、染料を用いた場合、印字または筆記物に滲みが出やすく光により退色するという問題を有することから、最近カーボンブラックを黒色顔料として使用したインキが注目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのカーボンブラックをインキ用顔料として用いた場合、カーボンブラックの表面が親油性であるために、カーボンブラックの水中での分散性が悪く、ノズルやペン先にカーボンブラックが目に詰まったり、保存中に凝集物を生じ使用不可能となる。このため、各種の分散剤の添加が必要とされている。
【0006】
ここで分散剤としては、カーボンブラックと馴染みの良い親油性基と、水と馴染みの良い親水基との両方の基を分子内に含有する分散剤、具体的には主に樹脂分散剤が、分散性あるいは分散安定性を改良するために用いられている。
しかしながら、このような樹脂分散剤はカーボンブラック表面に結合させることによりその効果を期待するものであるため、カーボンブラック表面に結合する量以上に添加しないと分散効果が得られない。このため液中に余分な分散剤が残り、それがノズルやペン先のインクが乾燥したときに、再溶解性の乏しい固形物となり、目詰まりの原因となる。また、分散剤を添加することによりインキの粘度が高くなり、安定したインキの吐出性が得られないという問題も生ずる。
【0007】
この様な問題点を改善するため、液中でオゾンにより酸化処理されたカーボンブラックを用いることが本発明者により提案された(特願平9−358919)。しかしながら、このような処理を行ったとき、常温で静置しておく時は分散安定性が保たれているが、インキの受ける可能性のある温度である60℃で静置しておくと、一日で凝集してしまうと言う欠点が有ることが判った。このため、酸化カーボンブラックを水性インキに用いるには問題があった。
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題を解決し、分散安定性に優れ、ノズルやペン先での目詰まりの発生が抑えられ、吐出安定性に優れた水性インキ用顔料並びにインキを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、カーボンブラック水性分散液を得た後、硫酸イオンを除去するか、または硫黄化合物の少ないカーボンブラックを用いこれを含有する水性分散液にアルカリを添加してpHを中性にすることにより著しく分散安定性のよいカーボンブラック水分散体を提供できることを見出し本発明に到達した。このような簡易な操作により驚くべきことに水分散性が極めて良好なカーボンブラックを得ることができるとの知見を得たものである。
【0010】
すなわち本発明は、硫酸イオンの含有量が20ppm以下であり、カーボンブラックの全酸性基が3μequ/m 2 以上であることを特徴とするカーボンブラック水性分散液等に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず本発明で用いるカーボンブラックは特に制限されず、従来よりインキ用顔料として用いられているカーボンブラックを含め、いずれも用いることができる。
本発明で用いることのできるカーボンブラックは特に限定されないものの、特に好ましいカーボンブラックとして、各種の表面処理、特に酸化処理により表面に酸性官能基を付与して分散剤の存在なしでも水性媒体中での分散しうるものとした、酸化処理カーボンブラックが好適である。これは、おそらくこれらの酸化処理カーボンブラックにおいて表面に存在するカルボキシル基等の酸性官能基と、硫酸イオンとの間の相互作用が、本発明の効果に何らかの関連があるため上記酸化処理カーボンブラックを用いて本発明を実施した場合に極めて顕著な効果を得ることができるものと推測される。
【0012】
酸化処理に供するカーボンブラックの粒子径は限定されないが100nm以下、さらには30nm以下のものが粒子の沈降が特に抑えられ最適である。
また、カーボンブラック中の硫黄や硫黄化合物は酸化剤で酸化されて溶液中で硫酸イオンとなることから、極力、少ないことが望まれるが、全硫黄分析値で各々0.5重量%、好ましくは0.1%重量以下が好ましい。硫黄含有量を低下するには、カーボンブラックの原料として用いる芳香族炭化水素、燃料として用いる液体炭化水素や気体炭化水素として低硫黄含有量の物を用いることで可能である。また塩素含有量は、カーボンブラック製造時の冷却水として用いる水として純水を使用することにより、低下させることができる。
【0013】
カーボンブラック中の硫黄量は、例えばカーボンブラックを0.1g精秤し、ベストフ社製「SULMHOGRAPH12A」にて測定することが出来る。
カーボンブラックの酸化処理方法として特に以下のものが好ましい。すなわち、水にカーボンブラックを懸濁した後に、酸化剤を反応させ酸化を行う。水の量は、カーボンブラックと水の比率(重量)で95:5〜0.5:99.5が適当であり、より好ましくは50:50〜2:98、さらに好ましくは20:80〜5:95の範囲がよい。
【0014】
酸化剤はカーボンブラックに酸性官能基を増加する物で有れば特に限定しないが、一般には、酸化剤が酸化をした後に水中に残存しない物が好ましく、このようなものとしてオゾンが好適に用いられる。具体的にはオゾン及び/又はオゾン含有ガスを通じてカーボンブラックの酸化処理を行うことができる。
ここで酸化剤であるオゾンは、オゾン発生機により発生させることができる。このオゾン発生機としては、空気や酸素中で放電することによりオゾンを発生させるものが一般的であるが、水を電気分解することにより発生させることも可能である。本発明で用いるオゾンを発生させるための発生機としては、方式に関わらずいずれも使用することができるが、オゾンの発生濃度が高いほどカーボンブラックの酸化の反応効率が良いので好ましい。一般的にはオゾン濃度1〜20重量%のオゾン含有ガスを発生させる発生機が市販されておりこれらで充分である。
【0015】
このように、水の存在下でオゾンによりカーボンブラックの酸化を行い、後述のようにカーボンブラックの表面の全酸性基量が特定量となるか、あるいは活性水素含有量が特定量となるまで酸化することにより、特に水性媒体中での分散性の良好なカーボンブラックとすることができる。このような簡易な操作により特性の優れた酸化カーボンブラックが得られる機構は明らかではないが、カーボンブラックの表面に水が存在すると、オゾンがカーボンブラック表面に直接反応しないで、オゾンは一担水に溶解し、水分子と共に反応することにより、生じる官能基も水との馴染みが良く、分散安定性を発揮するものとなることも考えられる。
【0016】
これらの理由により、気相でのオゾン酸化により同程度の全酸性基を有する程度にまで酸化されたカーボンブラックに比べてもなお、水中での分散性が大きく向上した酸化処理されたカーボンブラックとなるという意外な効果を発揮するものと推測される。
尚、上記の水存在下でのオゾンによる酸化処理に供するカーボンブラックはあらかじめ酸化したものである必要は無いが、水存在下での酸化に先立ち、従来公知である硝酸や気相のオゾンで処理をしたカーボンブラックを上記の方法により酸化処理してもかまわない。
【0017】
以上説明した水存在下でのオゾンによる酸化処理により、カーボンブラックの全酸性基が3μequ/m2以上となるまで酸化処理するのが望ましい。
全酸性基の量は、NaOHやKOH等の強アルカリと反応した量として求めることができる。
この全酸性基を求める方法としては以下の通りである。酸化処理したカーボンブラックを、0.1ミクロンのメンブランフィルターを用いて濾過を行い水と分離する。この分離したカーボンブラックを60℃の乾燥機で1昼夜乾燥した後、メノウ乳鉢で粉砕する。この乾燥後のカーボンブラックを0.2〜0.5g取り、0.01NのNaOHを60cc入れた三角フラスコに入れ、窒素を三角フラスコに流し、スターラで6時間撹拌をして反応させる。この反応物を再び0.1ミクロンのメンブランフィルターを用い濾過を行い、濾過液を得る。
【0018】
この濾過液を40cc取り、0.025N塩酸を用い自動中和滴定装置で滴定を行い濾過液のNaOH濃度を求める。
カーボンブラックの全酸性基は次の計算により求めることが出来る。
【0019】
【数1】
Figure 0003874538
全酸性基が3μequ/m2未満では水性媒体への分散が困難となる場合がある。
【0020】
より好ましくは6μequ/m2以上とすれば、水性媒体への分散性が非常に良好となる。
また、カーボンブラックとして活性水素含有量が2.0mmol/g以下、特に好ましくは1.5mmol/g以下のものを用いるのが好適である。
活性水素含有量を特定量以下に抑えたカーボンブラックが、意外なことに水性媒体中での分散性に特に優れており、分散安定性のよいカーボンブラック水分散体を提供できることを本発明者は見出した。従来、例えば特開平8−3498号公報記載の方法におけるように、酸化処理によりカーボンブラック表面の酸性官能基が増加し、それが親水性につながり水性媒体中での安定性に単純に寄与すると考えられてきたようである。これに対し本発明者は、意外にも、酸化処理により付与される官能基は全酸性基として検出されるが必ずしも活性水素含有量として検出される官能基の増加に結びついているとは言えないこと、さらには活性水素含有量の多いカーボンブラックが必ずしも水性媒体中での分散に優れているとは言えず、活性水素含有量を増加させることが分散性向上につながらず、かえって低下させることを見出したのである。そして、活性水素含有量が2.0mmol/g以下のカーボンブラックを用い水性分散液を調製すれば、水性媒体中でのカーボンブラックの分散性が特に優れたものとなることがわかった。
【0021】
活性水素含有量は、以下の方法により求まる。カーボンブラックにジアゾメタンのジエチルエーテル溶液を滴下させることによりカーボンブラック上の活性水素をメチル基に交換する。この処理をしたカーボンブラックに、比重1のヨウ化水素酸を加え、加熱してメチル基をヨウ化メチルとして気化させる。このヨウ化メチルの気体を硝酸銀溶液でトラップしてヨウ化メチル銀として沈殿させる。このヨウ化銀の重量より元のメチル基の量、すなわち活性水素の量を測定する。
【0022】
カーボンブラックが酸化処理等の処理を施されたものであり例えば次亜塩素酸ソーダでの処理による場合等、残存イオンを多く含んでいる場合には脱塩、中和処理を行うことにより正確な活性水素含有量を求める。この脱塩を行う方法として簡単には、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の入ったカラムにカーボンブラック分散液を通す方法が使用できる。このような処理により、官能基と結びついていた陽イオンは除去でき、分散液のpHは酸性を示すため、カーボンブラックの有する活性水素量を正確に示すことができる。このような前処理は、カーボンブラック中の陽イオン量が1000ppm以上の場合に行うべきである。より具体的には、カーボンブラック分散液(カーボンブラックが乾燥状態であれば、これを一旦水に分散して得られた分散液)を、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を混合したものを詰めたカラムを通して、陽イオンを取り除いた後、0.1μmのメンブランフィルターで濾過をして、カーボンブラックを取り出す。このカーボンブラックを100℃の乾燥機の中で1昼夜乾燥した後、乳鉢で粉砕しをし、サンプルを得る。このサンプル1.0gを取り、過剰量のヨウ化水素溶液の入ったフラスコに入れ、加熱沸騰させ、ヨウ化メチルを発生させ、この発生したヨウ化メチルを窒素ガスで搬送して、硝酸銀溶液で捕集、沈殿させる。捕集液を硝酸酸性にした後、メンブランフィルターで濾過して沈殿物を捕集する。この沈殿物を50℃で乾燥後、重量測定して活性水素量を求める。
【0023】
水の存在下でオゾンによりカーボンブラックの酸化を行い、後述のようにカーボンブラックの表面の活性水素含有量が特定量以下となるまで酸化処理を行うことにより水性媒体中での分散性に優れたカーボンブラックを得ることができる。かかる酸化方法を採用すると、意外にも、活性水素含有量として検出される官能基は減少し、全酸性基として検出される酸性官能基が増加することが判明した。このような簡易な酸化処理操作により水への分散性に寄与する酸性官能基がバランスよく付与され、特性の優れたカーボンブラックが得られる機構は明らかではないものの、以下のように推測される。カーボンブラックは原料炭化水素が熱分解を受けて、脱水素しながら炭化をしてできた粒子からなっているが、その粒子には、脱水素されなかった水素が、活性水素として残っている。このカーボンブラックを水の存在下でオゾン酸化するとオゾンと水とが一担反応したラジカルが生じるために、本来水となじみの悪い活性水素を置き換えて水となじみの良い官能基が生成するために、水への分散性の良好なカーボンブラックが得られるものと考えられる。
【0024】
しかしながら、この分散液を60℃の雰囲気下で放置すると、24時間以内でカーボンブラックが凝集する。これを防止するためには、この水分散液を陰イオン交換樹脂を詰めたカラムに通す等の手段により、硫酸イオンを除去し、硫酸イオンを20ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下とする。この際、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の両方を詰めておくことで、さらに陽イオンまで除去でき分散安定性には効果的である。このようなイオン除去処理を行うと分散液のpHは低くなり、通常、液中のpHが1〜3となる。このような水分散液は常温放置では分散安定性が良いが、60℃に放置した時にはすぐに凝集することから、水分散液にNaOH、またはアミン類等のアルカリを添加し、pHを5から10に調整するのが望ましい。またpHが10以上になっても60℃での分散安定性が劣る。
【0025】
本発明者は、このように水性媒体中の硫酸イオンを極めて低いレベルの特定量以下に抑えることにより、水性媒体中におけるカーボンブラックの分散性を長期にわたって良好に保つことができることを見出したのであり、かかる知見は高特性のインクジェットインキの作製において極めて価値あるものであると考えられる。なお、上述のような次亜塩素酸での酸化処理等により残存するイオンを膜処理により除去することは、以前より知られているが、このような膜処理でも残存する低レベルの含有量の硫酸イオンであっても、水性媒体中のカーボンブラック、特に酸化処理等によりカーボンブラック自体の表面を改質することにより分散性を付与したカーボンブラックの分散性に対しては影響を及ぼすことが本発明者により見出されたのである。このため、本発明で規定するレベルにまで硫酸イオンを除去するために、イオン交換樹脂での処理を行うのが簡易且つ効果的な操作である。
【0026】
あるいは、あらかじめ硫黄含有量の極めて少ないカーボンブラックを用いて水性分散液を調製することも考えられるが、いずれにしても水性分散液中の硫酸イオン量を本発明で規定する範囲内とすることは必須である。
このように硫酸イオンの存在がカーボンブラックの水性媒体中での分散性に影響を及ぼす機構は、未だ明らかとなってはいない。尚、硫酸イオンの濃度は、例えば分散液から水分を除去し上述の「SULMHOGRAPH12A」等により硫黄分を計測し、計算により求めることができる。
【0027】
このようにして作った水性分散液に極性溶媒を混合することにより、優れた性能を有する水性インキとすることができる。なおここでカーボンブラック水性分散液とはカーボンブラックが水又は水と水溶性溶媒との混合液に分散しているものをいう。また極性溶媒の具体例としてはエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶剤、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等の含N系溶剤の他尿素等が代表的である。
【0028】
水性分散液中の酸化処理カーボンブラックの濃度は用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.5〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%含有させたカーボンブラック水性分散液とするのが好ましい。この範囲であればインキとした場合の印字濃度が良好で、しかもインキの粘度が抑えられ、優れた特性のインキを得ることができる。
【0029】
こうして得られるカーボンブラック水性分散液は、例えばカーボンブラックの濃度が20wt%を超える場合等には必要に応じて分散剤を添加する等、各種の添加剤を加え水性インキとして使用することができる。また必要に応じ濃縮、乾燥し、その後別途希釈してインキとして使用することもできる。この場合カーボンブラックを水に添加し、ビーズミル、ボールミル、衝撃性分散機等による分散処理を用いることもできる。
【0030】
インキ化する際の添加剤としては例えば浸透剤、定着剤、防かび剤等が挙げられる。
浸透剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤の他、フッ素系界面活性剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどを使用することができる。
【0031】
定着剤としては、水溶性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどのノニオン系水溶性樹脂、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル系水溶性樹脂などのアニオン系水溶性樹脂等)の他、水性エマルジョンも使用できる。
一般にインクジェット用のインクとして使用する際には、カーボンブラック濃度として1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%のものが使用される。インクジェット用インクとして使用する際は、pH7〜10に整えて用いるのが望ましい。
【0032】
こうして得られる本発明のインキは、インクジェット用のインクとして必要な、液滴形成の安定性吐出安定性、長時間の吐出安定性、長時間休止後の吐出安定性、保存安定性、被記録材への定着性、記録画像の耐候性等いずれもバランスのとれたものとなる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、%は特にことわりのない限り重量%を表す。
実施例1
市販カーボンブラック(三菱化学(株)製「#47」粒子径23nm、硫黄量0.5%)を20g、水500ccに入れ、家庭用ミキサーで5分間分散した。
【0034】
得られた液を、攪拌機の付いた3リットルのガラス容器に入れた。攪拌機で攪拌しながら、オゾン濃度8重量%のオゾン含有ガスを500cc/分で2時間導入した。
この際オゾン発生器としてペルメレック電極社の電解発生型のオゾナイザーを用いてオゾンを発生させた。
【0035】
オゾン処理後の分散液を取り出しpHを測定したところ2.5であった。(pHの測定は、JIS K 6221による。)
また、この分散液中の粒度分布を日機装社製マイクロトラックUPAで測定したところ平均50%分散径で77nmであり、この液を取り、光学顕微鏡を用い、400倍の倍率で確認したところ良好な分散状態で全体がミクロブラウン運動をしており分散性が良好であることがわかった。
【0036】
次いで、この分散液を0.1ミクロンの径を有するミクロポアーフィルターでカーボンブラックを濾過し、この濡れたカーボンブラックを60℃で乾燥をし、全酸性基を測定したところ、450μequ/gであった。また窒素吸着比表面積は120m2/gであった。したがって単位面積あたりの全酸性基は3.75μequ/gであった。また、カーボンブラックの活性水素含有量を測定したところ、1.20mmol/gであった。
【0037】
このとき同時に得られた濾過液を3cc取り、細長いるつぼの中にいれ、60度Cの乾燥機の中に入れ、水を蒸発させた。このるつぼをそのままベストフ社製の「SULMHOGRAPH12A」に入れて、硫黄量を求め、計算により液中の硫酸イオン量を求めたところ、硫酸イオンの濃度は110ppmであった。上記の酸化処理で得られた分散液100ccをビーカに入れ、このビーカに陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SAN UP」)を20CC入れて、50℃に加温した後、スターラにより撹拌を3時間行った。その後、室温まで冷却をし、これを5000rpm30分遠心沈降を行い、イオン交換樹脂並びにその他の異物を除去した。この上澄み液に、0.1NのNaOH溶液を少量ずつ添加しpHを8に調整をした。このときの分散径は75nmで、光学顕微鏡で分散液を観察したところ、分散性は良好であることが判った。
【0038】
また、この上澄み液からカーボンブラックを分離した液から求めた硫酸イオン濃度は7ppmであった。
このpHを調整した分散液を100ccの蓋付き瓶に70cc取り、60℃に保った乾燥機の中に放置した。
3ヶ月後にこの瓶を取り出し、冷却後、分散径を測定したところ、80nmでほとんど変化が無く、また光学顕微鏡でも良好な分散が確認出来た。
【0039】
一方この分散液を、(株)NEC製のカートリッジに詰めNEC(株)製プリンター「PR101」を用いて印字をしたところにじみやかすれの無い良好な印字物が得られた。
実施例2
実施例1でのオゾン反応時間を4時間に変更した以外は同様に処理を行った。
【0040】
得られた分散液のpHは2.2で、平均50%分散径は70nmであり、単位比表面積当たりの全酸性基は6.9μequ/m2であった。
この分散液中の硫酸イオン濃度は115ppmであった。
この分散液も実施例1と同様な前処理をして、60℃で3ヶ月放置した。この分散液も、実施例1と同様に分散径が75nmと変化が少なく、(株)NEC製のカートリッジにインキを詰めて印字を実行したところ、にじみやかすれの無い良好な印字物が得られた。
【0041】
また、このイオン交換処理後の分散液中の硫酸イオン濃度は2ppmであった。
実施例3
実施例2でのカーボンブラックを「#960」(三菱化学(株)製、硫黄量0.3%、粒子径16nm)に変更した以外は同様に処理を行った。
【0042】
得られた分散液のpHは2.1であった。濾液残のカーボンブラックの全酸性基は900μequ/g、比表面積は240m2/gであり、単位比表面積当たりの全酸性基は3.75μequ/m2となる。平均50%分散径は45nmであった。
この分散液中の硫酸イオン濃度は85ppmであった。
【0043】
この分散液も実施例1と同様な前処理をして、60℃で3ヶ月放置した。この分散液も、実施例1と同様に分散径が47nmと変化が少なく、(株)NEC製のカートリッジにインキを詰めて印字を実行したところ、にじみやかすれの無い良好な印字物が得られた。
また、このイオン交換処理後の分散液中の硫酸イオン濃度は10ppmであった。
実施例4
実施例2で得られたイオン交換処理をした液をNaOHでpH8に調整した後、酢酸ナトリウムを液中濃度で30ppm添加して、60℃で3ヶ月放置した。この分散液も、実施例1と同様に分散径が77nmと変化が少なく、(株)NEC製のカートリッジにインキを詰めて印字を実行したところ、にじみやかすれの無い良好な印字物が得られた。
【0044】
また、このイオン交換処理後の分散液中の硫酸イオン濃度は2ppmであった。
実施例5
原料油として硫黄分が500ppmのものを用い、燃料として硫黄含有量が0のプロパンガスを用い、ファーネス炉で実施例1と同一の粒子径と比表面積のカーボンブラックを得た。このカーボンブラック中の硫黄量は0.04%であった。このカーボンブラックを用い、実施例2と同様に酸化処理を行った。
【0045】
この処理液を、60℃で3ヶ月放置した。この分散液も、実施例1と同様に分散径が77nmと変化が少なく、(株)NEC製のカートリッジにインキを詰めて印字を実行したところ、にじみやかすれの無い良好な印字物が得られた。
また、このイオン交換処理後の分散液中の硫酸イオン濃度は2ppmであった。
比較例1〜3
実施例1、2、3それぞれで得たイオン交換処理をする前の分散液を、蓋付きのガラス瓶に入れを60℃の乾燥機に一昼夜放置した後、分散液を取り出し、顕微鏡で分散状態を確認したところ、凝集をしており、水性インキとしては用をなさないものであった。
比較例4
実施例1で得たイオン交換処理をした分散液をに硫酸ナトリウムを溶液中の硫酸イオンの濃度が30ppmになるように添加をした後、この分散液を蓋付きのガラス瓶に入れを60℃の乾燥機に一昼夜放置した。この分散液を取り出し、顕微鏡で分散状態を確認したところ、凝集をしており、水性インキとしては用をなさないものであった。
【0046】
以上の実施例及び比較例からも明らかなように、本発明により水とカーボンブラックが共存する状態で、酸化処理をし、その液中の硫酸イオン濃度を20ppm以下になるように、硫黄含有量の少ないのカーボンブラックを選んで酸化処理をすることにより、硫酸イオンによる高温下での凝集性を著しく押さえる事が出来き、一般の環境下でも、長時間分散状態を保ち、印字特性の良好な水性インクに使用できる分散液が得られることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明により特にインクジェット用又は筆記用のインキに使用した場合にノズルのオリフィス中またはその先端での目詰まりや沈降物発生が無く、長時間、高温下で放置した後でも、安定したインキの吐出安定性が得られる水性分散液並びに水性インキを得られる。

Claims (9)

  1. 硫酸イオンの含有量が20ppm以下であり、カーボンブラックの全酸性基が3μequ/m 2 以上であることを特徴とするカーボンブラック水性分散液。
  2. カーボンブラックの活性水素含有量が2.0mmol/g以下である請求項1記載のカーボンブラック水性分散液。
  3. カーボンブラックが、水の存在下で酸化処理されたものである請求項1又は2に記載のカーボンブラック水性分散液。
  4. 酸化処理がオゾンを用いて行われたものである請求項記載のカーボンブラック水性分散液。
  5. pHが5〜10である請求項1〜のいずれかに記載のカーボンブラック水性分散液。
  6. カーボンブラックの含有量が0.5〜50重量%で有ることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のカーボンブラック水性分散液。
  7. カーボンブラックの粒子径が10〜30nmでかつDBP吸油量が50〜180cc/100gで有ることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の水性分散液。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のカーボンブラック水性分散液を用いた水性インキ。
  9. インクジェット用インキである請求項記載の水性インキ。
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