JP3932955B2 - 空気調和機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、年間を通して運転される空気調和機に関するものであり、特に圧縮機の動力を用いずに空調を行う自然循環運転を備えた空気調和機の空調能力の向上に関する。また、圧縮機の動力を用いる強制循環運転と自然循環運転とを併設する空気調和機の冷媒の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話をはじめとする移動体通信の普及によって、電算機室や移動体通信の中継電子機器を納めた基地局(シェルタ)に代表されるような電子機器の発熱を除去する分野が急速に広がっており、これらの場所では年間を通しての冷房運転が必要となっている。
【0003】
これらの用途では、冬季や夜間のように外気温度が低い場合には、換気によって冷房することも可能であるが、霧,雨,雪,塵埃の侵入を防ぐ装置が必要となり、しかも外気温度の変動によって室内温度も変動するため、安定した冷房が行えない。この様な条件では、室内温度と外気温度との温度差と、室内機と室外機との高低差とを利用して、室内から室外へ冷媒により熱を運ぶ自然循環を利用した空気調和機を用いることができる。この自然循環を利用した空気調和機では、自然循環を利用した運転(以下、自然循環運転という)を行う場合に圧縮機動力が不要となるため、圧縮機を利用した運転(以下、強制循環運転という)を行う空気調和機による冷房よりも年間消費電力を大幅に低減することができる。
【0004】
ここで、自然循環による冷房運転の動作原理について、図17を用いて説明する。図17は自然循環を利用した空気調和機として冷房装置を示す回路構成図であり、図において、2は凝縮器、3は室外ファン、5は室外機、6は液配管、7は蒸発器、8は室内ファン、9は空調対象空間に配置される室内機、10はガス配管である。この場合は、冷房を行うので、蒸発器7が室内側に設置され、凝縮器2が室外側に設置されている。
凝縮器2を蒸発器7より相対的に高位置に配置すると、凝縮器2で凝縮した液冷媒は、液配管6内を重力により下降して蒸発器7に流入する。蒸発器7に流入した液冷媒は空調対象空間例えば室内の熱負荷を受けて蒸発した後、ガス配管10を上昇して凝縮器2へ戻ることでサイクルが形成される。
【0005】
このように、自然循環による冷房運転とは冷媒を循環させる駆動力として蒸発器7と凝縮器2との位置的な高低差における液冷媒とガス冷媒の密度差を利用するものであり、凝縮器2,蒸発器7,液配管6,ガス配管10,および冷媒回路内の開閉弁部などの冷媒流路における圧力損失の和が液配管6内の液柱高さによる圧力上昇と等しい場合に成立する。
このような自然循環を利用した空気調和機において、従来、冷媒量は経験から適当な量を充填していた。また、自然循環運転中に空調能力を考慮して冷媒状態を適正に制御してはいなかった。
【0006】
また、自然循環を利用した空気調和機では、室内温度と外気温度との温度差の存在が必要であり、環境条件によっては自然循環運転が機能しない場合が生じる。そこで、自然循環運転が機能しない場合に圧縮機を用いた強制循環運転を行う併用の空気調和機が構成されている。
ところで、自然循環運転と強制循環運転とを組合わせた空気調和機では、一般に自然循環運転と強制循環運転との冷媒流量の差や液部長さの違いに起因する冷媒量の差、負荷変動に起因する冷媒流量の差、延長配管の長短に起因する冷媒量の差などを調整する必要から、冷媒回路内に冷媒量調節手段を設ける必要がある。従来の空気調和機では、凝縮器出口に設けられた液溜め容器や圧縮機の吸入側に設けられたアキュムレータにこの冷媒量調節機能を持たせていたが、その冷媒量の適正な制御方法に関する検討はほとんど行われていなかった。
【0007】
自然循環を利用した空気調和機の冷媒量制御方法の一例として、特開昭57−92666号公報に掲載されたように強制循環運転による冷房と自然循環運転による暖房とを併用した冷暖房機において冷媒量を制御したものがある。図18は従来の強制循環運転と自然循環運転を有する空気調和機を示す回路構成図である。
図において、1は圧縮機、2は凝縮器、5は室外機、6、10はそれぞれ冷媒配管で、自然循環運転時の液配管6とガス配管10である。7は室内熱交換器、9は室内機、14はアキュムレータ、20は液溜め容器、23は冷媒量調節器、24はドライヤフィルタ、25は加熱装置、26は冷媒加熱コイル、27は電磁弁、28は逆止弁、29は暖房運転の起動を円滑に行わせるための逆流防止用開閉弁、30は冷媒加熱コイル出口26bの冷媒圧力や温度の異常上昇を防止する高圧制御弁、31は毛細管、32は仕切、33は冷媒管路、34は分岐管、35は配管、36は電気ヒータ、37、38は開閉弁である。
【0008】
この空気調和機は、圧縮機1を用いる強制循環運転の場合、電磁弁27を閉止して、圧縮機1、凝縮器2、ドライヤフィルタ24、逆止弁28、毛細管31、冷媒配管6、室内熱交換器7、冷媒配管10、冷媒量調節器23のアキュムレータ14で、閉回路を構成する。そして、室内熱交換器7を蒸発器として動作させ、冷媒の蒸発を利用して室内の冷房を行う。
一方、自然循環運転による暖房の場合、電磁弁27を開放して加熱装置25を運転し、冷媒加熱コイル26、該コイルの高位置側端部26a、電磁弁27、アキュムレータ14、冷媒配管10、室内熱交換器の高位置側端部7a、室内熱交換器7、室内熱交換器の低位置側端部7b、冷媒配管6、冷媒加熱コイル26の低位置側端部26bで、閉回路を構成する。そして、室内熱交換器7を凝縮器として動作させ、冷媒の凝縮を利用して室内の暖房を行う。
【0009】
また、冷媒量調節器23の内部は、仕切32によって外側の室20と内側の室14とに分けられている。そして、外気温度の影響を受ける外側の室20を液溜め容器とし、内側の室14をアキュムレータとした構造である。また、分岐管34によって、液溜め容器20の底部と、冷媒管路33とを連通している。
分岐管34で液溜め容器20と連結されている冷媒管路33は、強制循環運転時に室内熱交換器7に送る低圧の液冷媒が流れる管路で、かつ、自然循環運転時に室内熱交換器7で熱交換を行った後の液冷媒が流れる管路である。
アキュムレータ14は、強制循環運転時に室内熱交換器7で熱交換を行った後のガス冷媒が流れる冷媒管路で、かつ、自然循環運転時に室内熱交換器7に送るガス冷媒が流れる冷媒管路中に設けられている。この冷媒量調整器23によって、強制循環運転と自然循環運転との冷媒量の差を調整している。
【0010】
上記のような従来の冷暖房機では、自然循環運転時において、外気温度が設定値、例えば5℃程度よりも低下すると、空調負荷の増加により冷媒流量を増加する必要がある。ところが、冷媒量調節器23が外気によって冷却されるため、冷媒調節器23内に冷媒が溜まってしまう。このような場合に、外気温度検知サーモの指令によって電気ヒータ36が通電により発熱し、冷媒量調節器23に熱を与えて溜まっている冷媒を蒸発させている。このため、外気温度が低いにも係わらず冷媒量調節器23内の冷媒量が適正に保たれ、十分な自然循環能力が得られるというものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の自然循環を利用した空気調和機では、充填する冷媒量を適当に決めており、空調能力を考慮してはいなかった。また、自然循環運転中に冷媒状態を制御して空調能力を向上させてはいなかった。
また、従来の強制循環運転と自然循環運転とを併用した空気調和機では、空調負荷の変化に対して自然循環運転時の冷媒量を制御する場合、外気温度が設定値よりも低下すると、外気温度検知サーモの指令によって電気ヒータ36が通電により発熱し冷媒量調節器23に一定量の熱を与える構成であり、外気温度や冷媒流量が自然循環運転の能力に及ぼす影響を考慮した冷媒量制御が行われていなかったため、自然循環運転を利用することによる消費電力削減効果が小さくなるという課題があった。
【0012】
また、冷媒量の調節を電気ヒータによって行うため、電気ヒータの電力量分だけ消費電力が増加し、自然循環運転を利用することによる消費電力削減効果が小さくなるという課題があった。
【0013】
本発明は上記のような従来の課題を解決するためになされたもので、自然循環運転において空調能力を考慮して最適な冷媒状態で運転でき、空調能力を最大限に発揮できる空気調和機の冷媒制御方法を得ることを目的とするものである。
また、強制循環運転と自然循環運転とを備え、電気ヒータなどの外部入力を必要とせずに強制循環運転から自然循環運転にスムーズに切換えることができ、大幅に消費電力を削減することができる空気調和機の冷媒制御方法を得ることを目的とするものである。
また、強制循環運転と自然循環運転とを備え、電気ヒータなどの外部入力を必要とせずに強制循環運転から自然循環運転にスムーズに切換えることができ、さらに空調能力を最大限に利用して自然循環運転を行い、大幅に消費電力を削減することができる空気調和機の冷媒制御方法を得ることを目的とするものである。 また、自然循環運転において高い空調能力が得られる空気調和機を得ることを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る空気調和機は、蒸発器とこの蒸発器よりも高い位置に設置された凝縮器とを配管で接続し冷媒を循環させて自然循環運転を行う空気調和機において、凝縮器と蒸発器の間の配管に設けられた冷媒流量調整手段と、凝縮器の出口の下部に配置されるとともに冷媒流量調整手段と凝縮器の間の配管に下部から接続された冷媒貯溜手段と、凝縮器の入口側の配管に圧縮機の吐出と吸入の間を逆止弁を介してバイパスさせるバイパス配管とを備え、圧縮機による強制循環運転から冷媒流量調整手段を全開にして自然循環運転へ切換可能とし、自然循環運転における凝縮器の出口部の冷媒の過冷却度と外気温度に応じて凝縮器からの余剰冷媒を冷媒貯溜手段に蓄積するように冷媒流量調整手段を制御することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る空気調和機は、蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度に応じて冷媒流量調整手段を制御することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る空気調和機は、圧縮機、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器、冷媒貯留手段を順次配管で接続し冷媒を循環させる強制循環運転と、圧縮機と冷媒貯留手段とをバイパスするバイパス配管、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器を接続し冷媒を循環させる自然循環運転とを切換可能な空気調和機において、冷媒貯留手段の入口側に開閉弁を設け、自然循環運転時に凝縮器の出口部の冷媒の過冷却度または乾き度が設定値になるように開閉弁を開閉制御したことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る空気調和機は、自然循環運転における凝縮器の出口部の冷媒状態の設定値は、乾き度が0.1以下かつ過冷却度が20℃以下の範囲内の値であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る空気調和機は、蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度が設定値となるように冷媒流量調整手段を調整したことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る空気調和機は、圧縮機、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器、冷媒貯留手段を順次配管で接続し冷媒を循環させる強制循環運転と、圧縮機と冷媒貯留手段とをバイパスするバイパス配管、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器を接続し冷媒を循環させる自然循環運転とを切換可能な空気調和機において、冷媒貯留手段の入口側に開閉弁を設け、自然循環運転時に蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度が設定値になるように開閉弁を開閉制御したことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る空気調和機は、自然循環運転における蒸発器の出口部の冷媒状態の設定値は、乾き度が0.9以上かつ過熱度が10℃以下の範囲内の値であることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る空気調和機は、自然循環運転で、冷媒流量または冷媒量を所定時間間隔で変化させることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明に係る空気調和機は、外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以下の場合に、自然循環運転における冷媒流量または冷媒量を変化させることを特徴とするものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
参考例1
以下、本発明の参考例1について説明する。図1は本実施の形態に係る空気調和機として例えば冷房装置を示す回路構成図である。この空気調和機は、強制循環運転と自然循環運転とを併設する構成のものである。
図において、1は圧縮機、2は凝縮器、3は室外ファン、4は冷媒流量調整手段で例えば電子式膨張弁、5は室外機、6は液配管、7は蒸発器、8は室内ファン、9は室内機、10はガス配管、11は開閉手段で例えば逆止弁、12はバイパス配管、13は開閉手段で例えば開閉弁、14はアキュムレータ、15は開閉手段で例えば逆止弁である。
【0024】
図1に示すように、室外機5と室内機9およびそれらを接続するための液配管6、ガス配管10で冷媒回路を構成し、配管内に冷媒を循環させる。
室外機5は、冷媒ガスを圧縮するための圧縮機1、この冷媒ガスを冷却液化させるための凝縮器2、外気を強制的に凝縮器2の外表面に送風する送風機である室外ファン3、凝縮器2を出た高温高圧の冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とする冷媒流量調整手段である電子式膨張弁4、過渡的現象や冷媒の過充填などの場合に圧縮機1への液戻りを防止するための冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14、自然循環運転時に圧縮機1およびアキュムレータ14をバイパスするための逆止弁11を介したバイパス配管12、自然循環運転時にアキュムレータ14への冷媒の流入を防止する開閉弁13、自然循環運転時に圧縮機1への冷媒の流入を防止する逆止弁15より構成されている。
また、室内機9は、液配管6から流入した湿り蒸気を空調対象空間の空調負荷によって蒸発させて冷媒ガスとする蒸発器7、室内空気を強制的に蒸発器7の外表面に送風する送風機である室内ファン8より構成されている。
室外機5の凝縮器2は室内機9の蒸発器7よりも高い位置に配置されており、ここでは例えば1.4m程度の高低差をつけて配置している。
【0025】
この空気調和機は、例えば発熱する電子機器などを納めたシェルタのように年間を通して冷房が必要な場所に利用される。そして、室内温度が外気温度よりも低いときには、圧縮機1を動作させる強制循環運転により室内の冷房を行う。また、室内温度が外気温度よりも高い時には、圧縮機1を停止して外気の冷熱を利用した自然循環運転により室内の冷房を行う。ここで、本実施の形態では、蒸発器7での冷媒の蒸発を利用して空調対象空間の冷房を行っている。
以下、強制循環運転について説明する。
電子式膨張弁4の開度を、凝縮器2を出た冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とするための適切な開度に設定し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を開放して圧縮機1を運転する。この時、逆止弁11は圧縮機1の吐出圧力と吸入圧力との圧力差で閉止され、強制循環運転の冷媒回路が形成される。
【0026】
次に、室内温度より外気温度が低い場合の自然循環運転について説明する。圧縮機1を停止し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を閉止し、電子式膨張弁4の開度を、例えば冷媒回路内の圧力損失を低減するために全開にする。この時、逆止弁11は冷媒の流れにより開放され、自然循環運転の冷媒回路が形成される。
【0027】
図2は、蒸発器とこの蒸発器よりも高い位置に設置された凝縮器とを配管で接続し冷媒を循環させて自然循環運転を行う空気調和機の実験機を試作し、複数の異なる冷媒充填量(例えば2.8kg,3.2kg,3.6kg,4.0kg,4.4kg,4.8kg)を充填して自然循環運転したときの、それぞれ自然循環運転時の冷媒充填量(kg)に対する冷房能力(kW)、蒸発器出口過熱度(℃)、凝縮器出口過冷却度(℃)の変化を示す実験結果である。図2の上側のグラフは、冷房能力の測定結果、下側のグラフは蒸発器出口過熱度(黒丸)、凝縮器出口過冷却度(白丸)の測定結果を示している。また、実験条件は室内温度と外気温度との温度差ΔTが33℃で一定の場合であり、横軸の冷媒充填量は自然循環運転を構成する冷媒回路内への冷媒充填量を示している。
【0028】
図2の上側のグラフから明らかなように、冷房能力は冷媒充填量が4kg付近で最大値を示している。冷媒充填量が4kgより少ない場合で、冷媒充填量の増加に伴い冷房能力が増加するのは、冷媒充填量の増加に伴って冷媒回路での有効な液柱高さが増加し、冷媒流量が増加するためである。また、冷媒充填量が4kgを越えた場合で、冷媒充填量の増加に伴い冷房能力が減少するのは、蒸発器出口の冷媒が二相状態となるため蒸発器内のエンタルピー差が減少するとともに、蒸発器出口から凝縮器入口までのガス配管の圧力損失が増加し冷媒流量が減少するためである。また、図2の下側のグラフからわかるように、冷房能力が最大となる冷媒充填量(図2上側のグラフの冷媒充填量が4kg付近)では蒸発器出口は飽和ガスの状態(蒸発器出口過熱度0℃)となる。従って、この場合の室内外温度差(33℃)では冷媒充填量を4kg付近の値に設定することにより、自然循環運転の冷房能力を最大限に利用することができ、最大の消費電力削減効果を得ることができる。また、4kg以下に比べて4kg以上の方が冷媒量に対する冷房能力の低下割合が大きいため、充填する冷媒量は冷房能力が最大となる時の充填量以下(例えば3.5kg〜4.0kg)に設定しておけば、最大に近い冷房能力が得られる。
【0029】
また、図2の実験条件における強制循環運転の適正冷媒量は約2kgであるため、自然循環運転の冷房能力を最大とするためには、強制循環運転時の約2倍(4kg/2kg)程度の冷媒量を充填すればよいことがわかる。
【0030】
図3は自然循環運転時の冷媒充填量(kg)に対する冷房能力(kW)を室内温度と外気温度との温度差ΔTが33℃の場合と10℃の場合を比較したものである。図3に示すように、室内温度と外気温度との温度差ΔTが小さくなると、最大となる冷房能力が得られる冷媒充填量が減少している。図3の点線は温度差が変化した時の冷房能力の最大値を結んだ直線である。この変化は、温度差ΔTが小さくなると、凝縮器出口の過冷却度が減少するため、冷媒回路内の有効な液柱高さが減少し、冷媒流量が減少するためである。このことから、自然循環運転において、外気温度が高く室内外の温度差が小さい場合には、外気温度が低く室内外の温度差が大きい場合に比べ、冷媒充填量の少ない方が高い冷房能力を得られることがわかる。
【0031】
図4は室内温度38℃における自然循環運転時の外気温度に対する冷房能力および空調負荷の関係を示している。図において、横軸は外気温度(℃)、縦軸は冷房能力および空調負荷を示し、曲線Aは例えば冷媒充填量が4kgのときの各外気温度に対しその外気温度に対する空調能力量を示し、曲線Bは冷媒充填量が3.5kgのときの各外気温度に対しその外気温度に対する空調能力量、曲線Cは冷媒充填量が3.0kgのときの各外気温度に対しその外気温度に対する空調能力量を示している。この空調能力量は、空気調和機を構成する機器においてシュミレーションによって求めたり、実験的に求めることができる。
【0032】
また、図4において、点線で示す曲線Z1,Z2は室内設定温度38℃のときの各外気温度に対しその外気温度に対する空調負荷量を示している。
ここで、各外気温度に対しその外気温度に対する空調負荷量は、機器の発熱量やシェルタの熱容量、壁からの吸放熱量によって、設計段階で求めることができる。
本実施の形態の空気調和機のように、シェルタのような人の出入がほとんどなく電子機器からの単位時間あたりの発熱量もほとんど変化しない空間で用いられる場合には、空調負荷量は外気温度が高くなるとこれに応じて大きくなり、曲線Z1,Z2に示されるように単調に増加するものとなっている。
【0033】
また、自然循環運転時の空調能力量、この場合には冷房能力量は、外気温度38℃で室内温度38℃と同一の時には0であり、外気温度が38℃から低下するとともに増加する。逆に空調負荷曲線は室内から外気への放熱のため、外気温度が低下するとともに減少する。このような特性から、例えばシェルタ内を38℃以下に保つときの空調負荷曲線がZ1である場合、冷房能力量と空調負荷量とがほぼ一致するときの外気温度、即ち冷房能力曲線と空調負荷曲線Z1の交点における外気温度が、自然循環運転で空調負荷をまかなうことのできる空調可能最大外気温度となっている。具体的には、冷房能力曲線が曲線Bで示される冷媒量を充填した場合には、外気温度21℃で空調負荷曲線Z1と交差しており、空調可能最大外気温度は21℃である。この場合、外気温度が空調可能最大外気温度21℃以下のいかなる温度においても自然循環運転の冷房能力が空調負荷よりも大きくまたは空調負荷と等しくなり、自然循環運転の冷房能力だけで十分に空調負荷をまかなうことができる。
このように、変化させた複数の冷媒量において、前記空調能力量と前記空調負荷量とがほぼ一致するときの空調可能最大外気温度をそれぞれ求める。
【0034】
参考例では、空気調和機の自然循環運転による空調機能を最大限に生かすため、空調可能最大外気温度が最も高くなるように冷媒回路に冷媒を充填する。即ち、空調負荷量が図4の曲線Z1に示すものとすると、この曲線Z1と交差する点の外気温度が一番高い冷房能力曲線となる冷媒充填量を選ぶと、自然循環運転の冷房能力だけで十分に空調負荷量をまかなうことができる温度範囲が大きくなる。図4では曲線Bと曲線Z1と交差する点の空調可能最大外気温度が一番高くなるので、この冷媒量3.5kgを充填する。このように冷媒回路に充填する冷媒量を決定することにより、空調負荷量を自然循環運転でまかなうことができる外気温度範囲が最大限に大きくなり、最大の消費電力の削減効果が得られる。
【0035】
上記のようにして決定される冷媒充填量は、空調負荷量の変化によって変わるものであり、例えば曲線Z2に示すような空調負荷量の場合には、曲線Cと曲線Z2と交差する点の空調可能最大外気温度が一番高くなるので、この冷媒量3kgを冷媒充填量として決定すれば、空調負荷量を自然循環運転でまかなうことができる外気温度範囲が最大限に大きくなる。
【0036】
なお、この空調能力曲線と空調負荷曲線の交差する点の外気温度以上では、空調負荷量を自然循環運転でまかなうことができなくなる。このため、外気温度がこれ以上になる場所で使用する場合には、強制循環運転を併用する。
また、例えば外気温度がほとんど空調可能最大外気温度以下であり、たまたま外気温度がこれ以上に上がって空調負荷が増えた場合には、例えば電子式膨張弁4の開度を変化させるなどして蒸発器7の出口部での過熱度を0に近い値に制御してもよい。図2に示すように、蒸発器7の出口部の冷媒状態として過熱度が0℃付近で、冷房能力が最大となっているので、蒸発器7の出口部での過熱度を0℃に近い値になるように運転すると、そのままの運転状態で継続するよりも冷房能力を増加することができる。
また、外気温度が自然循環運転のみでまかなうことができる温度以上にならない場所で使用する場合には、強制循環を併用する必要はなく、自然循環の冷媒回路を備えた構成とし、かつ本実施の形態で述べたように空調負荷量を自然循環運転でまかなうことができる温度範囲が最大限に大きくなるような冷媒量を充填すればよい。
【0037】
自然循環運転を利用した空気調和機では、運転動力としては室外ファン3と室内ファン8の入力だけであり、年間消費電力の大幅削減が可能となる。特に、本実施の形態では、自然循環運転による空調可能外気温度の範囲が広くなるように冷媒の充填量を決定したので、さらに年間消費電力の大幅削減できる。
例えば図5に示すように、横1.5m、奥行き3.7m、高さ1.5mのシェルタのモデルを設定し、電子機器からの発熱量をQ1 、壁からの吸放熱量をQ2 、室内機の冷房能力量をQ3 とし、特に室内機の強制循環運転の冷房能力量をQ3c、自然循環運転の冷房能力量をQ3nとして空調した際のシェルタ内の温度変化をシュミレーションした。このときのシェルタ内の空調の設定温度範囲を例えば26℃〜38℃、外気温度を26℃とする。図6に時間に対するシェルタ内の温度変化を示す。図6(a)は圧縮機を用いた強制循環運転のみで空調を行った場合(通常型)の温度変化であり、図6(b)は自然循環運転と強制循環運転を併用した場合(自然循環併用型)の温度変化である。シェルタ内の温度が設定温度範囲の上限である38℃以上になると、圧縮機を運転して強制循環運転による冷房を行う。また、シェルタ内の温度が設定温度範囲の下限である26℃以下になると、図6(a)では圧縮機を停止して冷房を行わず、図6(b)では圧縮機を停止して自然循環運転による冷房を行う。この自然循環併用型において、自然循環運転の空調可能最大外気温度は、26℃以下とする。
【0038】
シェルタ内の温度は、強制循環運転によって、Q1 −Q2 −Q3cの熱量で冷房され、38℃から△tc (時間)で26℃まで冷やされる。ここで、図6(a)の通常型では圧縮機運転を停止すると、Q1 −Q2 の熱量によって徐々に温度は上昇し△tn1(時間)で設定温度範囲の上限に達すると、再び圧縮機を運転する。一方、図6(b)の自然循環併用型では圧縮機運転を停止すると、自然循環運転による冷房が行われる。このため、Q1 −Q2 −Q3nの熱量によって徐々に温度は上昇し、△tn1(時間)よりも長い△tn2(時間)で設定温度範囲の上限に達し、再び圧縮機を運転する。
このように、強制循環運転と自然循環運転とを併用することにより、圧縮機の停止時間を長くでき、圧縮機の運転率を△tc /(△tc +△tn1)から△tc /(△tc +△tn2)に低下することができる。
本シュミレーション結果によれば、自然循環併用型空気調和機では、強制循環運転のみの空気調和機と比較して、圧縮機年間運転率を69〜86%程度低減でき、圧縮機の発停回数が大幅に低減でき、信頼性を向上できる空気調和機が得られる。また、圧縮機の運転率が低下することから、51〜66%程度、年間消費電力を削減できる。特に本実施の形態による空気調和機では、自然循環運転の冷房能力を最大限に利用できる冷媒量を充填しているので、その効果を確実に得ることができる。
【0039】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態1による空気調和機として例えば冷房装置について説明する。図7は本実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
図において、16は温度検知手段で例えば温度センサ、17は圧力検知手段で例えば圧力センサ、18は凝縮器2の出口部の冷媒の過冷却度を演算して設定値になるように制御する過冷却度演算制御手段であり、19は蒸発器7の出口部の冷媒の過熱度を演算して設定値になるように制御する過熱度演算制御手段である。この過冷却度演算制御手段18と過熱度演算制御手段19は、それぞれ、冷媒状態検知機能とこの検知した冷媒状態を適正に制御する制御機能を兼ね備えている。図1と同一符号は同一、または相当部分を示している。
【0040】
参考例1と同様、室外機5と室内機9およびそれらを接続するための液配管6、ガス配管10から構成されている。
室外機5は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機1、この冷媒ガスを冷却液化させる凝縮器2、外気を強制的に凝縮器2の外表面に送風する送風機である室外ファン3、凝縮器2を出た高温高圧の冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とする冷媒流量調整手段である電子式膨張弁4、過渡的現象や冷媒の過充填などの場合に圧縮機1への液戻りを防止する冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14、自然循環運転時に圧縮機1およびアキュムレータ14をバイパスするための逆止弁11を介したバイパス配管12、バイパス配管12を冷媒回路に対して開閉する開閉手段である逆止弁11、自然循環運転時にアキュムレータ14への冷媒の流入を防止する開閉弁13、自然循環運転時に圧縮機1への冷媒の流入を防止する開閉手段である逆止弁15より構成されている。
また、室内機9は、液配管6から流入した湿り蒸気を空調対象空間の空調負荷によって蒸発させて冷媒ガスとする蒸発器7、室内空気を強制的に蒸発器7の外表面に送風する送風機である室内ファン8より構成されている。
【0041】
この空気調和機では、室内温度より外気温度が高い時には強制循環運転を行う。即ち、電子式膨張弁4の開度を、凝縮器2を出た冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とするための適切な開度に設定し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を開放して圧縮機1を運転する。この時、逆止弁11は圧縮機1の吐出圧力と吸入圧力との圧力差で閉止され、強制循環運転の冷媒回路が形成される。
【0042】
また、室内温度より外気温度が低い場合には、電子式膨張弁4の開度を、例えば冷媒回路内の圧力損失を低減するために全開し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を閉止する。この時、逆止弁11は冷媒の流れにより開放され、自然循環運転の冷媒回路が形成される。
【0043】
ところで、参考例1で述べたように自然循環運転の冷房能力を最大とするためには、冷媒流量や液部長さの違いから強制循環運転時の約2倍程度の冷媒量を充填する必要がある。このため、強制循環運転時には余剰の冷媒液を冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14内に貯溜する構成とする。そして、自然循環運転を行う際の運転切換時に、アキュムレータ14内に貯溜された余剰冷媒を、自然循環運転の冷媒回路へ戻す冷媒回収運転を行う。
【0044】
冷媒回収運転の方法としては、電子式膨張弁4の開度を通常の強制循環運転時よりも小さくまたは全閉にして冷媒流量を小さくまたは0とし、一定時間圧縮機1を運転する。この時、蒸発器7の出口部の冷媒状態は過熱状態となり、この過熱ガスによってアキュムレータ14内に貯溜していた余剰冷媒は蒸発して、逆止弁15を通り凝縮器2へ流入する。一定時間、例えば2分程度冷媒回収運転を行い、冷媒回収運転終了後は圧縮機1を停止する。この後にアキュムレータの入口側の電磁弁13を閉止し、自然循環運転への運転切換時に低温低圧となったアキュムレータ14へ冷媒が流入するのを防止する。ここでは冷媒回収運転は、アキュムレータ14に貯溜した余剰冷媒を蒸発させるのに必要な時間を予め把握しておき、一定時間行うように構成しているが、圧縮機1の吐出温度や吸入温度を検知して冷媒回収運転の終了としてもよい。
【0045】
以下、自然循環運転における冷媒状態の制御方法について説明する。
図2に示すように、自然循環運転において、冷房能力が最大値となる状態では、蒸発器7出口の過熱度(黒丸)が0℃である。これを利用して、例えば過熱度設定値を0℃に近い値として5℃とし、蒸発器7出口の過熱度をこの過熱度設定値に制御することにより、冷房能力が最大値となる付近の状態で運転できる。ここで、蒸発器7の出口部における過熱度が正の時には冷媒状態の変化に応じて過熱度の検知値は変化する。ところが過熱度の検知値0℃になると飽和ガス温度になってしまって、冷媒状態は変化しても過熱度の検知値は0℃となりこれ以下の値を示すことはない。このため、過熱度の設定値は0℃とせずに、0℃に近い正の値、例えば5℃とする。
【0046】
実際に本実施の形態による空気調和機では、自然循環運転を行う場合に、例えば電子式膨張弁4の開度を変えて冷媒流量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の過熱度を制御する。以下、この制御方法について説明する。
蒸発器7の出口部に設置した温度センサ16と圧力センサ17の検知値に基づいて、過熱度演算制御手段19により蒸発器7の出口部の過熱度を演算する。この過熱度は式(1)で演算できる。
過熱度(℃) = 温度検知値−圧力検知値での飽和温度 ・・・(1)
【0047】
次に、演算された過熱度検知値と過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)とを比較し、その差に基づいて電子式膨張弁4の開度を演算する。そして、電子式膨張弁4の開度を演算された開度に設定することにより冷媒流量を変化させる。例えば過熱度検知値が過熱度設定値よりも大きい場合には、開度を大きくして冷媒流量を増加させると、過熱度が低くなる。逆に、過熱度検知値が過熱度設定値よりも小さい場合には、開度を小さくして冷媒流量を減少させると、過熱度が高くなる。このような手順を一定時間間隔、例えば5分程度の間隔で繰り返すことによって、冷媒流量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の過熱度が設定値になるように制御できる。このため、常に空調能力が最大付近になるように自然循環運転を行うことができる。
特に、自然循環運転での冷媒の流量は強制循環運転時のそれに比べて小さいので、電子式膨張弁4の制御を一定の時間、例えば5分程度の時間間隔で冷媒流量を変化させることにより、冷媒の動きに適した速度で制御できる。このため、安定した自然循環運転を行うことができる。なお、この時間間隔は、5分よりもおそくてもよく、例えば10分程度でもよい。
【0048】
また、外気温度が高く外気と室内の空調設定温度との温度差が小さい場合には、図3に示したように冷房能力が最大となるときの冷媒量が少なくなる。このため、蒸発器7の出口部の過熱度が設定値(例えば過熱度5℃程度)となるように冷媒流量を変化させると、冷媒回路内の冷媒量の分布が変化し、余剰となる冷媒が凝縮器2の出口部に蓄積されて凝縮器2の出口の過冷却度が増加する。このように凝縮器2の出口部の過冷却度が増加すると、凝縮器2内での凝縮する面積が小さくなり、自然循環運転の効率が悪くなってしまう。
そこで、本実施の形態では、凝縮器2の出口部の冷媒状態も所定の設定値になるように制御している。例えば、蒸発器7の出口部の過熱度を過熱度設定値になるように冷媒流量を変化させると共に、凝縮器2の出口部の過冷却度を過冷却度設定値、例えば8℃となるように凝縮器2内の冷媒量を変化させる。即ち、凝縮器2の出口部に設置した温度センサ16と圧力センサ17の検知値に基づいて、過冷却度演算制御手段18により凝縮器2の出口部の過冷却度を演算する。この過冷却度は式(2)で演算できる。
過冷却度(℃) = 圧力検知値での飽和温度−温度検知値 ・・・(2)
【0049】
そして、演算された過冷却度検知値と過冷却度設定値(例えば過冷却度8℃程度)とを比較して、演算された過冷却度検知値が過冷却度設定値よりもある値以上に大きくなる場合は、アキュムレータの入口側の電磁弁13を所定時間、例えば10秒程度開く。これにより、ガス配管10を流れる余剰冷媒は低温低圧であるアキュムレータ14内に流入し、電磁弁13を再び閉じると、自然循環運転を構成する冷媒回路内の冷媒量が少なくなって凝縮器2内の冷媒量も少なくなる。従って、凝縮器2の出口部での過冷却度は小さくなる。このようにして、凝縮器2の出口での過冷却度を設定値に制御でき、蒸発器7および凝縮器2の出口部の冷媒状態を、冷房能力が最大限に発揮できる状態で運転することができる。
この時に、過冷却度演算制御手段18で冷媒量を制御したことによるアキュムレータ14内の余剰冷媒は、その自然循環運転の継続中には冷媒回路を再び循環することはないが、圧縮機1の動作による強制循環運転と冷媒回収運転を介して冷媒回路に戻すことができる。
【0050】
以上のように本実施の形態の空気調和機では、自然循環運転において、蒸発器7の出口部の過熱度が0℃のときに空調能力が最大になるという現象に基づいて、蒸発器7の出口の過熱度を過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)となるように制御するので、外気温度を検知しなくても自然循環運転の空調能力を最大限に利用可能な空気調和機を得ることができる。
さらに、本実施の形態では、蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御することによって生じる効率の低下を防止するため、凝縮器2の出口部の冷媒状態を適切な設定値(例えば過冷却度8℃程度)となるように制御している。このように、蒸発器7と凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御することにより、自然循環運転における空調能力を最大限に確実に発揮できる制御方法を得ることができる。例えば、冷媒流量を変化させることによって余剰となった凝縮器2内の冷媒を冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14に貯溜すれば、外気温度と室内温度との温度差が小さくなっても、凝縮器2内での凝縮する面積が小さくなることなく、自然循環運転の効率が悪くなるのを防止できる。
また、凝縮器2の出口部での冷媒状態を所定の過冷却度に制御する際、余剰の冷媒を強制循環運転で必ず必要となる冷媒貯溜手段、この場合はアキュムレータ14に貯溜して凝縮器2内の冷媒量を変化させている。このため、特別な機器を付加しないで、自然循環運転の運転中にその空調能力を最大限に利用できる冷媒量になるように制御できる。
また、冷媒量の調整を電気ヒータなどの外部入力を用いずに、アキュムレータ14と電磁弁13、電子式膨張弁4の開閉によって行うため、自然循環運転の特長である大きな消費電力削減効果が得られる。
【0051】
なお、図7に示した構成では、凝縮器2の出口部の冷媒状態の制御は、蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御した上での制御であり、特に過熱度演算制御手段19で冷媒流量を変化させたことによって生じる余剰冷媒が自然循環運転に悪影響を及ぼさないようにするためのものである。外気温度と室内の空調設定温度との温度差が大きい場合には、冷媒流量をそれほど小さくする必要がないので、凝縮器2の出口部の過冷却度の増加による効率の低下はそれ程大きくない。このため、過冷却度演算制御手段18での過冷却度の制御は特に行わなくてもよく、過冷却度演算制御手段18およびこれで用いている温度センサ16と圧力センサ17はなくてもよい。
また、特に夏は外気温度が高くなり、冷媒回路内での有効な冷媒量が少ない方がよい可能性が高いので、過冷却度演算制御手段18によって余剰冷媒をアキュムレータ14に貯溜するように制御し、冬には外気温度が低いために、余剰冷媒が生じることはそれほどないと考えられ、アキュムレータ14に貯溜する制御は行わないように構成してもよい。
【0052】
なお、過冷却度演算制御手段18と過熱度演算制御手段19は、それぞれ例えばマイクロコンピュータのソフトウェアで実現できるので、室外機5または室内機9に設けた電気箱にマイクロコンピュータを格納しておき、これでソフトウェアを実行するようにすればよい。
【0053】
過熱度演算制御手段19での蒸発器7の出口部の冷媒状態の制御目標値は、乾き度Xが0.9以上でかつ過熱度が10℃以下の範囲内の値となるように過冷却度または乾き度を設定する。蒸発器7の出口部の乾き度に0.9という下限値を設けたのは、蒸発器7の出口部の乾き度が0.9より小さいと、ガス配管10内の圧力損失が大きくなって自然循環運転が効率よく行えないためである。また、蒸発器7の出口部の過熱度が10℃よりも大きいと、蒸発器7内の過熱領域が増大して蒸発に有効な伝熱面積が減少するためである。
さらに、過熱度演算制御手段19で蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御した上で、過冷却度制御手段18での凝縮器2の出口部の過冷却度の目標値は、乾き度が0.1以下で、かつ過冷却度が20℃以下の範囲内の値となるようにするのが望ましい。これは、乾き度が0.1よりも大きい場合には、液配管6にガス冷媒が混入して自然循環運転が不安定になるからである。また、過冷却度が20℃より大きい場合には余剰冷媒が凝縮器2の出口部付近に蓄積された状態となり、凝縮器2内の過冷却領域が増大して凝縮に有効な伝熱面積が減少するためである。
【0054】
なお、凝縮器2の出口部の冷媒状態の過冷却度または乾き度は、上記のように凝縮器2内の冷媒量を変化させて制御する他に、室外ファン3の回転数を変化させて凝縮器2での風量を変化させても制御できる。室外ファン3の回転数を大きくして風量を増加させると過冷却度は増加し、室外ファン3の回転数を小さくして風量を減少させると過冷却度は減少する。
【0055】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態による空気調和機として例えば冷房装置の制御方法について説明する。図8は本実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。図中、図7と同一符号は同一、または相当部分を示している。本実施の形態における過熱度演算制御手段19は、蒸発器7での風量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の冷媒状態が所定の過熱度になるように制御している。また、過冷却度演算制御手段18は実施の形態2と同様、凝縮器2の出口部の冷媒状態が所定の過冷却度になるように開閉弁13を開閉し、アキュムレータ14へ冷媒を貯溜させて凝縮器2内の冷媒量を変化させている。
【0056】
即ち、蒸発器7の出口部に設置した温度センサ16と圧力センサ17の検知値に基づいて、過熱度演算制御手段19により蒸発器7の出口部の過熱度を演算する。この過熱度は式(1)で演算できる。
次に、演算された過熱度検知値と過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)とを比較し、その差に基づいて室内ファン8の回転数を演算する。そして、室内ファン8の回転数を演算された回転数に設定することにより風量を変化させる。例えば過熱度検知値が過熱度設定値よりも大きい場合には、回転数を小さくして風量を減少させると、過熱度が低くなる。逆に、過熱度検知値が過熱度設定値よりも小さい場合には、回転数を大きくして風量を増加させると、過熱度が高くなる。このような手順を一定時間間隔、例えば5分程度の間隔で繰り返すことによって、蒸発器7での風量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の過熱度が設定値になるように制御できる。このため、常に空調能力が最大付近になるように自然循環運転を行うことができる。
【0057】
過熱度演算制御手段19での蒸発器7の出口部の冷媒状態の制御目標値は、乾き度Xが0.9以上でかつ過熱度が10℃以下の範囲内の値となるように過冷却度または乾き度を設定する。蒸発器7の出口部の乾き度に0.9という下限値を設けたのは、蒸発器7の出口部の乾き度が0.9より小さいと、ガス配管10内の圧力損失が大きくなって自然循環運転が効率よく行えないためである。また、蒸発器7の出口部の過熱度が10℃よりも大きいと、蒸発器7内の過熱領域が増大して蒸発に有効な伝熱面積が減少するためである。
【0058】
また、外気温度が高く外気と室内の空調設定温度との温度差が小さい場合には、図3に示したように冷房能力が最大となるときの冷媒量が少なくなる。このため、蒸発器7の出口部の過熱度が設定値(例えば過熱度5℃程度)となるように風量を変化させると、冷媒回路内の冷媒量の分布が変化し、余剰となる冷媒が凝縮器2の出口部に蓄積されて凝縮器2の出口の過冷却度が増加する。このように凝縮器2の出口部の過冷却度が増加すると、凝縮器2内での凝縮する面積が小さくなり、自然循環運転の効率が悪くなってしまう。
そこで、本実施の形態では、実施の形態と同様にして、凝縮器2の出口部の冷媒状態も所定の設定値になるように制御している。例えば、凝縮器2の出口部の過冷却度を過冷却度設定値、例えば15℃となるようにアキュムレータ14を利用して凝縮器2内の冷媒量を変化させる。また室外ファン3の回転数を変化させても過冷却度を制御することができる。これに関しては実施の形態で詳しく述べたので、ここでは省略する。
【0059】
以上のように本実施の形態の空気調和機では、自然循環運転において、蒸発器7の出口部の過熱度が0℃のときに空調能力が最大になるという現象に基づいて、蒸発器7の出口の過熱度を過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)となるように制御するので、外気温度を検知しなくても自然循環運転の空調能力を最大限に利用可能な空気調和機を得ることができる。
さらに、本実施の形態では、蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御することによって生じる効率の低下を防止するため、凝縮器2の出口部の冷媒状態を適切な設定値(例えば過冷却度15℃程度)となるように制御している。このように、蒸発器7と凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御することにより、自然循環運転における空調能力を最大限に確実に発揮できる制御方法を得ることができる。
【0060】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態による空気調和機として例えば冷房装置の制御方法について説明する。図9は本実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。図中、図7と同一符号は同一、または相当部分を示している。本実施の形態における過熱度演算制御手段19は、蒸発器7内の冷媒量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の冷媒状態が所定の過熱度になるように制御している。
【0061】
即ち、蒸発器7の出口部に設置した温度センサ16と圧力センサ17の検知値に基づいて、過熱度演算制御手段19により蒸発器7の出口部の過熱度を演算する。この過熱度は式(1)で演算できる。
次に、演算された過熱度検知値と過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)とを比較し、過熱度検知値が過熱度設定値よりも低いときに、その差に基づいて開閉弁13を所定時間、例えば10秒程度開とする。過熱度検知値が過熱度設定値よりも低いということは、蒸発器7内の冷媒量が多く、余剰の冷媒液がガス配管10を流れる。そこで、開閉弁13を開閉すると、ガス配管10を流れる冷媒液の一部がアキュムレータ14へ流れて貯溜する。このため蒸発器7の出口部の乾き度が増加して冷媒量が減少するため、蒸発器7内は適正な冷媒量となり、出口部の過熱度は過熱度設定値に近づくように変化する。
【0062】
このような手順を一定時間間隔、例えば5分程度の間隔で繰り返すことによって、蒸発器7内の冷媒量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の過熱度が設定値になるように制御できる。このため、常に空調能力が最大付近になるように自然循環運転を行うことができる。
ただし、開閉弁13を開として冷媒量を変化させるということは、即ち、余剰冷媒を自然循環運転の冷媒回路から除いてしまうことであり、蒸発器7内の冷媒量を減少させる方向にしか変化させることはできない。しかし、予め自然循環運転で余剰冷媒がある程度生じる冷媒量を充填しておき、また、アキュムレータ14へ一度に多く貯溜するのではなく、過熱度の変化をチェックしながら徐々に貯溜するように動作させれば、なんら問題はない。
【0063】
この時に、過熱度演算制御手段19で冷媒量を制御したことによるアキュムレータ14内の余剰冷媒は、その自然循環運転の継続中には冷媒回路を再び循環することはないが、圧縮機1の動作による強制循環運転と冷媒回収運転を介して冷媒回路に戻すことができる。
【0064】
本実施の形態による過熱度の制御は、蒸発器7内の冷媒量を減少させるのであるが、実際には自然循環運転の冷媒回路全体の冷媒量を減少させることになる。このため、実施の形態2および3の構成のように、冷媒流量や風量を変化させて冷媒量の分布が変わり、余剰冷媒が凝縮器2などに溜まってくるような現象は生じない。このため、実施の形態2および3で述べたような凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御しなくても、空調能力を最大限に発揮できるような自然循環運転を行うことができる。
【0065】
なお、実施の形態〜実施の形態で、蒸発器7の出口部の冷媒状態が所定の過熱度になるように、冷媒流量、蒸発器7での風量、蒸発器7内の冷媒量を変化させる制御方法について述べた。冷媒流量および蒸発器7での風量および蒸発器7内の冷媒量のうちの少なくともいずれか1つを変化させればよいということであり、場合によっては例えば、これら3つすべてを変化させて蒸発器7の出口部の冷媒状態が所定の過熱度になるようしてもよいし、いずれか2つを変化させて蒸発器7の出口部の冷媒状態が所定の過熱度になるようしてもよい。
【0066】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態による空気調和機の冷媒制御方法について説明する。本実施の形態では、蒸発器の出口部の冷媒状態として過熱度の制御目標範囲と、凝縮器の出口部の冷媒状態として過冷却度の制御目標範囲について説明する。このときの空気調和機の回路構成は図7と同様である。
図10は圧力−エンタルピー線図である。図において、Fは飽和液線および飽和ガス線、G1は室内空気温度に相当する飽和圧力、G2は外気温度に相当する飽和圧力である。Hは圧力−エンタルピー線図上の状態変化を示すサイクルで、範囲Dは蒸発器7の出口部の乾き度(飽和ガス線Fの内側)および過熱度(飽和ガス線Fの外側)の制御目標範囲、範囲Eは凝縮器2の出口部の乾き度(飽和液線Fの内側)および過冷却度(飽和液線Fの外側)の制御目標範囲である。
【0067】
制御目標範囲Dにおいて、最も空調能力が大きくなるのは、蒸発器7の出口部の冷媒状態が過熱度=0℃のときであり、飽和ガス線上の状態となっている。この飽和ガス線上から向かって右側へ変化するにしたがって過熱度は増大する。また、飽和ガス線上から向かって左側の部分では、過熱度は0℃のままであり、この領域では冷媒状態を表わす指標として過熱度の代わりに乾き度Xを用いる。飽和ガス線上から向かって左側へ変化するにしたがって、乾き度は減少する。蒸発器7の出口部の冷媒状態の制御目標範囲Dは、乾き度Xが0.9以上で、過熱度が10℃以下の範囲が望ましい。
ここで、乾き度は全冷媒流量に対する冷媒ガス流量の比であり、式(3)で演算できる。
乾き度=ガスの質量流量/(ガスの質量流量+液の質量流量)・・・(3)
【0068】
蒸発器7の出口部の冷媒状態の設定値を範囲Dの間で設定し、この設定値になるように冷媒流量や蒸発器7での風量や蒸発器7内の冷媒量を制御する。前に述べたように、過熱度は温度センサ16と圧力センサ17の検知値より、式(1)から演算できる。また、乾き度は例えば乾き度センサを蒸発器7の出口部に設けることにより検知できる。
蒸発器7の出口部の乾き度に0.9という下限値を設けたのは、蒸発器7の出口部の乾き度が0.9より小さいと、ガス配管10内の圧力損失が大きくなって自然循環運転が効率よく行えないためである。また、蒸発器7の出口部の過熱度が10℃よりも大きいと、蒸発器7内の過熱領域が増大して蒸発に有効な伝熱面積が減少するためである。従って、蒸発器7の出口部の冷媒状態の設定値を、乾き度が0.9以上かつ過熱度が10℃以下の範囲内の値とし、ガス配管の圧力損失の増大を抑えながら蒸発器内の伝熱面積を有効に利用する。
【0069】
例えば、目標設定範囲Dにおいて、電子式膨張弁4で冷媒流量を変化させて蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御する場合、冷媒状態を向かって右側方向に変化させたいとき、即ち過熱度を大きくまたは乾き度を大きくしたいときには、冷媒流量が減少するように電子式膨張弁4の開度を小さくする。逆に、冷媒状態を向かって左側方向に変化させたいとき、即ち過熱度を小さくまたは乾き度を小さくしたいときには、冷媒流量が増加するように電子式膨張弁4の開度を大きくする。
【0070】
また、例えば、室内ファン8の回転数を変化させて蒸発器7での風量を変化させ、蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御する場合、冷媒状態を向かって右側方向に変化させたいとき、即ち過熱度を大きくまたは乾き度を大きくしたいときには、風量が増加するように室内ファン8の回転数を上げる。逆に、冷媒状態を向かって左側方向に変化させたいとき、即ち過熱度を小さくまたは乾き度を小さくしたいときには、風量が減少するように室内ファン8の回転数を下げる。
【0071】
また、例えば、電磁弁13を開として蒸発器7内の冷媒量を変化させて蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御する場合、電磁弁13を開として蒸発器7内の冷媒量を減少させると、冷媒状態は向かって右側方向に変化する。
【0072】
また、凝縮器2の出口の冷媒状態の制御目標範囲Eは、乾き度Xが0.1以下で、過冷却度が20℃以下の範囲が望ましい。
前に述べたように、過冷却度は温度センサ16と圧力センサ17の検知値より、式(2)から演算できる。また、乾き度は例えば乾き度センサを凝縮器2の出口部に設けることにより検知できる。
また、凝縮器2の出口部の乾き度に0.1という上限値を設けたのは、凝縮器2の出口部の乾き度が0.1より大きいと、液配管6にガス冷媒が混入して自然循環運転が不安定になるためである。また、凝縮器2の出口部の過冷却度が20℃よりも大きいと、凝縮器2内の過冷却領域が増大して凝縮に有効な伝熱面積が減少するためである。従って、凝縮器の出口部の冷媒状態の設定値を、乾き度が0.1以下かつ過冷却度が20℃以下の範囲内の値とし、凝縮器内の伝熱面積を有効に利用でき、安定した自然循環運転を行う。
【0073】
例えば、制御目標範囲Eにおいて、電子式膨張弁4で冷媒流量を変化させて凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御する場合、冷媒状態を向かって右側方向に変化させたいとき、即ち過冷却度を小さくまたは乾き度を大きくしたいときには、冷媒流量が増加するように電子式膨張弁4の開度を大きくする。逆に、冷媒状態を向かって左側方向に変化させたいとき、即ち過冷却度を大きくまたは乾き度を小さくしたいときには、冷媒流量が減少するように電子式膨張弁4の開度を小さくする。
【0074】
また、例えば、室外ファン8の回転数を変化させて凝縮器2での風量を変化させ、凝縮器7の出口部の冷媒状態を制御する場合、冷媒状態を向かって右側方向に変化させたいとき、即ち過冷却度を小さくまたは乾き度を大きくしたいときには、風量が減少するように室外ファン3の回転数を下げる。逆に、冷媒状態を向かって左側方向に変化させたいとき、即ち過熱度を大きくまたは乾き度を小さくしたいときには、風量が増加するように室外ファン3の回転数を上げる。
【0075】
また、例えば、電磁弁13を開として凝縮器2内の冷媒量を変化させて凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御する場合、電磁弁13を開として凝縮器2内の冷媒量を減少させると、冷媒状態は向かって右側方向に変化する。
【0076】
以上のように、蒸発器7の出口部の冷媒状態や、凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御すれば、自然循環運転で空調能力が最大限に発揮でき、自然循環運転の特長とする消費電力削減効果をさらに向上できる。
【0077】
なお、蒸発器7の出口部や凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御して、自然循環運転で最大限の空調能力を得るという動作は、外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以下の場合に行うのが望ましい。これは、図4で示したように外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以上、例えば室内設定温度を38℃とした時では外気温度が13℃程度より低くなると空調負荷が軽くなり、過剰な冷房能力によって空調対象空間であるシェルタ内が冷え過ぎ、シェルタ内に設置されている通信機器の信頼性が低下するのを防止するためである。
【0078】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態による空気調和機として、例えば冷房装置について説明する。図11は本実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
図において、20は冷媒貯溜手段で、凝縮器2の出口部に設けられ、凝縮器2からの冷媒液を溜める液溜め容器である。また室外機5内に外気温度を検知する外気温度センサ16を備えている。ここで、図1と同一符号は同一、または相当部分を示している。
参考例1と同様、室外機5と室内機9およびそれらを接続するための液配管6、ガス配管10から構成されている。
室外機5は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機1、この冷媒ガスを冷却液化させる凝縮器2、外気を強制的に凝縮器2の外表面に送風する送風機である室外ファン3、凝縮器2を出た高温高圧の冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とする冷媒流量調整手段である電子式膨張弁4、凝縮器出口部の冷媒液を溜める液溜め容器20より構成されている。
また、室内機9は、液配管6から流入した湿り蒸気を空調対象空間の空調負荷によって蒸発させて冷媒ガスとする蒸発器7、室内空気を強制的に蒸発器7の外表面に送風する送風機である室内ファン8より構成されている。
【0079】
冷媒貯溜手段である液溜め容器20は、凝縮器2の下部に配置され、凝縮器2から冷媒が流入する配管と電子式膨張弁4へ流出する配管は液溜め容器20の下部に接続する。また、液溜め容器20の内容積は強制循環運転と自然循環運転との適正冷媒量差に相当する冷媒液を収納できる容積とする。この場合には、液溜め容器20は実施の形態2におけるアキュムレータ14の代わりに設けたものとなる。
【0080】
この空気調和機では、強制循環運転を行う場合、電子式膨張弁4の開度を、凝縮器2を出た冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とするための適切な開度に設定して圧縮機1を運転する。この時、逆止弁11は圧縮機1の吐出圧力と吸入圧力との圧力差で閉止され、強制循環のサイクルが形成される。
【0081】
また、自然循環運転を行う場合、例えば電子式膨張弁4の開度を全開すると、逆止弁11は冷媒の流れにより開放され、自然循環のサイクルが形成される。ここで、冷媒は圧縮機1を通る流路にも流れようとするが、圧縮機1内部の流動抵抗がバイパス配管12の流動抵抗に比べて非常に大きいため、圧縮機1を通る冷媒流量はバイパス配管12を通る冷媒流量に対して無視できるほど小さくなる。
【0082】
ところで、自然循環運転の冷房能力を最大限に利用する制御方法として、実施の形態〜実施の形態では、蒸発器7の出口部に設けた温度センサ16と圧力センサ17とから蒸発器7の出口の冷媒状態である過熱度を検知して、この過熱度を設定値になるように制御する方法について述べた。本実施の形態では、凝縮器2の出口部に設けた温度センサ16と圧力センサ17とから凝縮器2の出口の過冷却度を検知して、この過冷却度と外気温度とに応じて凝縮器2の出口部の過冷却度を設定値になるように制御する。凝縮器2の出口部の過冷却度を制御することにより、蒸発器7の出口部の過熱度を設定値に制御する方法を用いる。
【0083】
図2に示すように冷媒量の増加に対し、蒸発器出口部の過熱度は単調に減少し、凝縮器出口部の過冷却度は単調に増加している。即ち、蒸発器出口部の過熱度の値と凝縮器出口部の過冷却度の値とは1対1に対応している。例えば図2の下側のグラフでは、外気温度と空調設定温度との温度差が33℃の時の、冷媒量に対する蒸発器出口部の過熱度(黒丸)の変化と凝縮器出口部の過冷却度(白丸)の変化を示している。この関係から、蒸発器出口部の過熱度を希望の設定値、例えば0℃となるように制御する代わりに、凝縮器出口部の過冷却度をこれに相当する15℃程度を設定値として制御してもよい。この過熱度と過冷却度の関係は、外気温度と空調設定温度との温度差が変化すれば変化する。このため、本実施の形態では、外気温度と空調設定温度との温度差に対し、蒸発器出口過熱度が設定値(例えば過熱度0℃)となる凝縮器出口過冷却度をあらかじめ把握しておき、外気温度を検知して凝縮器出口部の過冷却度がその外気温度と空調設定温度との温度差における設定値となるように制御する。具体的には、電子式膨張弁4で冷媒流量を変化させたり、また室外ファン3の回転数を増減して凝縮器2での風量を変化させたり、また室内ファン8の回転数を増減して蒸発器7での風量を変化させて、凝縮器2の出口部の過冷却度を制御する。
【0084】
以下、本実施の形態における冷媒制御方法について、具体的に説明する。
ここで、本実施の形態では圧縮機1の吸入部にアキュムレータを備えていないため、強制循環運転と自然循環運転との冷媒量差の調整は液溜め容器20によって行う。つまり、強制循環運転時は必要冷媒量が自然循環運転時に比べて少ないため、余剰となる凝縮器2の出口部からの過冷却液が液溜め容器20に貯溜する。
自然循環運転時は、凝縮器2の出口部に設置した温度センサ16と圧力センサ17の検知値に基づいて、過冷却度演算制御手段18により凝縮器2の出口部の過冷却度を演算する。これは式(2)によって演算できる。
【0085】
次に、演算された過冷却度と外気温度センサ16で検知した外気温度と空調設定温度との温度差における過冷却度の設定値とを比較し、その差に基づいて電子式膨張弁4の開度を演算する。最後に、電子式膨張弁4の開度を演算された開度に設定する。このような操作を一定時間間隔ごと、例えば5分ごとに繰り返すことによって、凝縮器2の出口の過冷却度を外気温度と空調設定温度との温度差に応じた設定値に制御できる。この制御は、蒸発器7の出口部の冷媒状態である過熱度を空調能力が最大付近になるように制御することと同等である。
【0086】
例えば、電子式膨張弁4で冷媒流量を変化させて凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御する場合、過冷却度を小さくまたは乾き度を大きくしたいときには、冷媒流量が増加するように電子式膨張弁4の開度を大きくする。逆に、過冷却度を大きくまたは乾き度を小さくしたいときには、冷媒流量が減少するように電子式膨張弁4の開度を小さくする。
また、室外ファン3の回転数を変化させて凝縮器2での風量を変化させても、凝縮器2の出口部の冷媒状態を制御することができる。例えば、過冷却度を小さくまたは乾き度を大きくしたいときには、風量が減少するように室外ファン3の回転数を下げる。逆に、過冷却度を大きくまたは乾き度を小さくしたいときには、風量が増加するように室外ファン3の回転数を上げる。
【0087】
外気温度が高く外気と室内との温度差が小さい場合には、図3に示したように冷房能力が最大となる冷媒量が少なくなるため、冷媒流量や風量を適正になるように変化させることによって余剰となる冷媒が凝縮器2の出口部に蓄積されてくる。本実施の形態ではこの余剰冷媒は凝縮器2の出口部に設けた液溜め容器20内に蓄積されるため、外気温度の変化に関わらず凝縮器2付近の冷媒状態を適切な状態に維持することができる。
【0088】
また、本実施の形態による空気調和機において、液溜め容器20を設けずに図7に示すようなアキュムレータ14を備えた構成とし、過冷却度演算制御手段18は、凝縮器出口部の過冷却度を演算しその過冷却度が設定値になるように、開閉弁13を開閉制御してもよい。この場合には、自然循環運転での冷媒回路内の有効な冷媒量を変化させて凝縮器出口部の過冷却度または乾き度を制御することになる。このとき電子式膨張弁4の開度を例えば全開とするなど、一定の開度に固定しておけばよい。
【0089】
以上のように本実施の形態の空気調和機では、外気温度を検知して凝縮器2の出口部の過冷却度または乾き度がその外気温度における適正値となるように制御するため、蒸発器7および凝縮器2が常に適切な状態に維持され、自然循環運転の冷房能力が最大限に利用可能な空気調和機を得ることができる。
【0090】
また、図11の回路構成では冷媒量の調整を電気ヒータなどの外部入力を用いずに凝縮器2の出口部の下部に設けた液溜め容器20によって行うため、大きな消費電力削減効果が得られるという効果がある。
また、液溜め容器20は凝縮器2の出口と電子式膨張弁4との間の配管に設けられているので、強制循環運転から自然循環運転に切換える際に冷媒回収運転をしなくても、電子式膨張弁4の開度を大きく例えば全開にするだけで、瞬時に液溜め容器20に溜まっている冷媒液を自然循環運転で循環させることができる。 また、自然循環運転中や強制循環運転中に生じた余剰冷媒は、冷媒貯溜手段である液溜め容器20に自動的に貯溜する。このため、余剰冷媒の量を把握したり、余剰冷媒の量に応じた開閉弁の開閉などの煩雑な制御を必要としない。また、余剰冷媒を貯溜することによって凝縮器内または蒸発器内の冷媒量を減少させ、かつ貯溜した冷媒を流出させることによって凝縮器内または蒸発器内の冷媒量を増加させるという冷媒量の変化を自動的に行うことができる。
【0091】
また、凝縮器2の出口部のみの冷媒状態を制御することによって、蒸発器7の出口部の冷媒状態も制御でき、実施の形態2と比較して、簡単な構成で自然循環運転の空調能力を最大限に発揮できる空気調和機を得ることができる。
【0092】
なお、凝縮器2の出口部の冷媒状態の制御目標値に関しては、実施の形態で述べた範囲と同様である。即ち蒸発器7の出口部の冷媒状態において、乾き度Xが0.9以上でかつ過熱度が10℃以下の範囲となるように、これに対応する凝縮器2の出口部の過冷却度または乾き度を設定する。蒸発器7の出口部の乾き度に0.9という下限値を設けたのは、蒸発器7の出口部の乾き度が0.9より小さいと、ガス配管10内の圧力損失が大きくなって自然循環運転が効率よく行えないためである。また、蒸発器7の出口部の過熱度が10℃よりも大きいと、蒸発器7内の過熱領域が増大して蒸発有効な伝熱面積が減少するためである。
さらに、蒸発器7の出口部の過熱度の設定値から凝縮器2の出口部の過冷却度を設定する際、凝縮器2の出口部の乾き度が0.1以下で、かつ過冷却度が20℃以下となるように、その設定値をある程度修正してもよい。これは、凝縮器2の出口部の乾き度が0.1より大きい場合には液配管6にガス冷媒が混入して自然循環運転が不安定になり、過冷却度が20℃より大きい場合には凝縮器2内の過冷却領域が増大して凝縮に有効な伝熱面積が減少するためである。
【0093】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態による空気調和機として、例えば冷房装置について説明する。図12は本実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。図において、本実施の形態による空気調和機は、自然循環運転のみで冷房を行うものであり、外気温度が空調対象空間の設定値よりも高くならないところで使用されるものとする。即ち、常に外部からの冷熱によって空調対象空間を冷房しうる場合に用いられるものである。
【0094】
以下、本実施の形態に係る冷房装置について説明する。参考例1と同様、凝縮器2は蒸発器7よりも高いところ、例えば1.4m程度高いところに設置されている。図において、図1と同一符号は同一、または相当部分を示している。
参考例1と同様、室外機5と室内機9およびそれらを接続するための液配管6、ガス配管10から構成されている。
室外機5は、冷媒ガスを冷却液化させる凝縮器2、外気を強制的に凝縮器2の外表面に送風する送風機である室外ファン3、凝縮器2の出口部と蒸発器7の入口部との間の配管に設けられ、冷媒流量を調整する冷媒流量調整手段である電子式膨張弁4、凝縮器出口部の冷媒液を溜める冷媒貯溜手段である液溜め容器20より構成されている。
また、室内機9は、液配管6から流入した冷媒液を空調対象空間の空調負荷によって蒸発させて冷媒ガスとする蒸発器7、室内空気を強制的に蒸発器7の外表面に送風する送風機である室内ファン8より構成されている。
【0095】
液溜め容器20は凝縮器2の下部に配置され、凝縮器2から冷媒が流入する配管と電子式膨張弁4へ流出する配管は液溜め容器20の下部に接続されている。また、液溜め容器20は、外気温度と空調設定温度との温度差に応じて自然循環運転での冷媒回路内の有効な冷媒量を適正にするためのものであり、実施の形態6に示すような強制循環運転と自然循環運転との併用型空気調和機の場合の液溜め容器よりも少ない冷媒液を貯溜できる容積でよい。
【0096】
以下、自然循環運転における冷媒制御方法について説明する。
まず、図4に示したように、この空気調和機が設置されるところの空調負荷に対して、空調可能最大外気温度が最大となる冷媒量を本実施の形態の冷媒回路に充填する。そして自然循環運転で動作させる。外気温度が空調可能最大外気温度以下の場合には、空調能力が十分に空調負荷を上回っている。空調負荷に対して空調能力が大きすぎて空調対象空間内の温度が下がり過ぎる場合には、例えば室内ファン8や室外ファン3の動作を停止して、蒸発器7や凝縮器2における風量を制御して熱交換量を少なくすればよい。
【0097】
また、外気温度が空調可能最大外気温度を越えた場合には、この構成で得られる空調能力が最大となるように運転制御する。図2で示したように、外気温度と空調設定温度との温度差が変化しても、空調能力が最大となるところでは蒸発器7の出口部の過熱度が0℃になる。これを利用して、例えば過熱度設定値を0℃に近い正の値である5℃とし、蒸発器7出口の過熱度をこの過熱度設定値に制御することにより、冷房能力が最大値となる付近の状態で運転できる。
【0098】
例えば実際に本実施の形態による空気調和機では、自然循環運転を行う場合、以下に示すようにして蒸発器7の出口部の過熱度を制御する。即ち、蒸発器7の出口部に設置した温度センサ16と圧力センサ17の検知値に基づいて、過熱度演算制御手段19により蒸発器7の出口部の過熱度を演算する。この過熱度は式(1)で演算できる。
【0099】
次に、演算された過熱度検知値と過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)とを比較し、その差に基づいて電子式膨張弁4の開度を演算する。そして、電子式膨張弁4の開度を演算された開度に設定する。例えば過熱度検知値が過熱度設定値よりも大きい場合には、開度を大きくして冷媒流量を多くし、過熱度が低くなるように制御する。逆に、過熱度検知値が過熱度設定値よりも小さい場合には、開度を小さくして冷媒流量を少なくし、過熱度が高くなるように制御する。このような手順を一定時間間隔、例えば5分程度の間隔で繰り返すことによって、蒸発器7の出口部の過熱度が設定値になるように制御している。このため、常に空調能力が最大付近になるように自然循環運転を行うことができる。
また、電気ヒータなどを用いないので、自然循環運転の特長である消費電力の削減効果を最大限に発揮することができる。
【0100】
外気温度が高く外気と室内との温度差が小さい場合には、図3に示したように冷房能力が最大となるときの冷媒量が少なくなるため、蒸発器7の出口部の過熱度が過熱度設定値(例えば過熱度5℃程度)となるように電子式膨張弁4の開度を変化させると、余剰となる冷媒が液溜め容器20に貯溜される。ここに液溜め容器20を設けていない構成では、凝縮器2の出口部に余剰となった冷媒液が蓄積されて凝縮器2の出口の過冷却度が増加する。このように凝縮器2の出口部の過冷却度が増加すると、凝縮器2内での凝縮する面積が小さくなり、自然循環運転の効率が悪くなってしまう。これに対し本実施の形態では、余剰となる冷媒が液溜め容器20に自然に貯溜されるので、効率が低下するのを防止できる。
【0101】
また、外気温度と空調設定温度との温度差が大きくなって冷媒回路内の冷媒量が多い方が空調能力が得られる場合には、蒸発器7の出口部の冷媒状態を適正に制御する過程で自然に液溜め容器20に貯溜した余剰冷媒が少なくなって冷媒回路を循環するようになり、冷媒量の調整が自然にされていることになる。
【0102】
なお、過熱度演算制御手段19の代わりに実施の形態で示したような凝縮器2の出口部の過冷却度を演算制御する過冷却度演算制御手段18を設けてもよい。この場合には、過冷却度演算制御手段18によって、凝縮器2の出口部の温度と圧力から演算した過冷却度と、外気温度と空調設定温度との温度差に基づいて電子膨張弁4の開度を変化させるように構成する。
また、実施の形態のように、室内ファン8や室外ファン3の回転数を変えて蒸発器7または凝縮器2での風量を変化させることにより、蒸発器7の出口部の冷媒状態を制御してもよい。
【0103】
参考例2
以下、本参考例2による空気調和機として、例えば冷房装置について説明する。図13は本参考例による空気調和機を示す回路構成図である。 図において、21は圧縮機1の出口部の高圧配管とアキュムレータ14の入口部の低圧配管とを接続するバイパス配管で、配管の途中に開閉手段である開閉弁22を配設している。4は液配管6から流入した高温高圧の冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とする冷媒流量調整手段で、例えば電子式膨張弁である。本参考例では、強制循環運転と自然循環運転の液部長さの違いによる冷媒量差を吸収するために、この電子式膨張弁4を蒸発器7が設置されている室内機9側に設けている。また、図1と同一符号は同一、または相当部分を示している。
【0104】
参考例1と同様、本参考例による空気調和機は、室外機5と室内機9およびそれらを接続するための液配管6、ガス配管10から構成されている。
室外機5は冷媒ガスを圧縮する圧縮機1、この冷媒ガスを冷却液化させる凝縮器2、外気を強制的に凝縮器2の外表面に送風する送風機である室外ファン3、過渡的現象や冷媒の過充填などの場合に圧縮機1への液戻りを防止する冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14、自然循環運転時に圧縮機1およびアキュムレータ14をバイパスするための開閉弁13、逆止弁11を介したバイパス配管12、自然循環運転時に圧縮機1への冷媒の流入を防止する逆止弁15、圧縮機1の出口部の高圧配管とアキュムレータ14の入口部の低圧配管とを接続する開閉弁22を介したバイパス配管21より構成されている。
また、室内機9は液配管6から流入した高温高圧の冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とする電子式膨張弁4、電子式膨張弁4によって絞られた湿り蒸気を空調負荷によって蒸発させる蒸発器7、室内側の送風機である室内ファン8より構成されている。
【0105】
この空気調和機では、強制循環運転を行う場合、電子式膨張弁4の開度を凝縮器2から流出した冷媒液が減圧されて二相状態の湿り蒸気となる適切な開度に設定し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を開放して圧縮機1を運転する。この時、逆止弁11は圧縮機1の吐出圧力と吸入圧力との圧力差で閉止されて、強制循環の冷媒回路が形成される。
また、自然循環運転を行う場合、電子式膨張弁4の開度を、例えば冷媒回路内の圧力損失を低減するために全開し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を閉止すると、逆止弁11は冷媒の流れにより開放され、自然循環の冷媒回路が形成される。
【0106】
参考例1で示したように、自然循環運転の冷房能力が最大となる付近の冷媒量を充填した場合、強制循環運転時にはアキュムレータ14内に余剰冷媒が蓄積され、運転切換時にこの余剰冷媒を自然循環運転時の冷媒回路へ戻す冷媒回収運転が必要となる。冷媒回収運転としては、電子式膨張弁4の開度を全閉にして強制循環運転を行う方法もあるが、この方法では圧縮機1の吸入圧力が急激に低下するため、圧縮機1内に吸入された冷媒液が発泡して冷凍機油が吐出ガスとともに冷媒回路内へ流出し、圧縮機1内部の冷凍機油量が減少して潤滑不良により焼損に至る可能性がある。特に、スクロール圧縮機の場合、吸入圧力の低下や圧縮機1内部の冷媒液の発泡によって、摺動部への給油量が低下し、摺動部が温度上昇により熱変形して破損に至るといった問題が生じる。
【0107】
図14は、本参考例の空気調和機における、強制循環運転から自然循環運転への運転切換え手順を示すフローチャートである。強制循環運転で必要な冷媒量は自然循環運転で循環する冷媒量の約1/2であり、余剰の冷媒は強制循環運転中にアキュムレータ14に貯溜されてくる。強制循環運転から自然循環運転への運転切換時に、このアキュムレータ14に貯溜されている冷媒を自然循環運転を構成する冷媒回路に回収する必要がある。
ST1では強制循環運転を行っており、開閉弁13は開、開閉弁22は閉とし、電子式膨張弁4の開度は、凝縮器2を出た冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とするための適切な開度に設定された状態である。ST2で運転切換指令を受け、冷媒回収運転を開始する。即ち、ST3で開閉弁22を開放し、ST4で電子式膨張弁4の開度を蒸発器7の出口部の冷媒状態が過熱状態となるような開度に絞る。この状態で、一定時間例えば2分程度、圧縮機1を動作させる冷媒回収運転を行う(ST5)。
【0108】
電子式膨張弁4の開度を強制循環運転時の開度よりも小さくすると、冷媒流量が減少し、蒸発器7の出口部の冷媒状態は過熱状態となる。このため、蒸発器7からの過熱ガスがアキュムレータ14に流入する。これと共に、圧縮機1から吐出された高温高圧の過熱ガスの一部がアキュムレータ14に流入する。アキュムレータ14内の冷媒液は、蒸発器7からの過熱ガスと開閉弁22を介したバイパス配管21を通って流入する圧縮機1から吐出された過熱ガスによって蒸発し、凝縮器2側に回収される。
【0109】
次に、ST6で圧縮機1を停止し、ST7で開閉弁13を閉止してアキュムレータ14への冷媒の流入を防止する。そして、ST8で開閉弁22を閉止して、電子式膨張弁4の開度を、冷媒回路内の圧力損失を低減するために例えば全開とし(ST9)、自然循環運転へ移行する(ST10)。
【0110】
上記のように、本参考例における冷媒回収運転(ST5)では、圧縮機1の入口側と出口側を結ぶバイパス配管21と開閉弁22を設け、圧縮機1から吐出された高温高圧の過熱ガスの一部を吸入側へバイパスするため、圧縮機1の低圧を低下させることなくアキュムレータ14内に蓄積された冷媒を自然循環回路にスムーズに回収することができる。
【0111】
また、本参考例では、図13に示すように外気温度センサ16で測定した外気温度から外気温度検知値と空調設定温度との温度差を検知する。そして、その温度差の大小に応じてST4の電子式膨張弁4の開度あるいはST5の冷媒回収時間を変化させ、アキュムレータ14に貯溜した余剰冷媒の蒸発量を変化させている。即ち、外気温度検知値と空調設定温度との温度差に応じて回収する冷媒量を変化させ、自然循環運転の冷媒回路内の冷媒量を増減している。図3に示したように、自然循環運転では外気温度と室内温度との温度差に対して空調能力を最大限に利用するための最適な冷媒量が存在する。従って、このように冷媒量を外気温度と空調設定温度との温度差に応じて変化させることにより、自然循環運転での冷媒回路内の冷媒量を可変にし、そのときの外気温度で最大の空調能力が得られるように制御することができる。
【0112】
外気温度検知値と空調設定温度との温度差の大小によって、アキュムレータ14に貯溜した余剰冷媒の蒸発量を変化させるには、ST4における電子式膨張弁4の開度を温度差の大小によって変化させることにより、蒸発量を可変にできる。温度差が大きい時には自然循環運転における冷媒量が多い方がよいので、電子式膨張弁4の開度を大きくして冷媒流量を多くし、温度差が小さい時には自然循環運転における冷媒量が少ない方が空調能力が高くなるので、電子式膨張弁4の開度を小さくして冷媒流量を少なくする。この時の冷媒回収運転は2分程度に固定しておけばよい。
また、ST5における冷媒回収運転の運転時間を温度差の大小によって変化させることにより、蒸発量を可変にできる。温度差が大きい時には冷媒回収運転の運転時間を長くし、温度差が小さい時には自然循環運転における冷媒量が少ない方が空調能力が高くなるので、冷媒回収運転の運転時間を短くする。この時の電子式膨張弁4は強制循環運転よりも小さい一定の開度で固定しておけばよい。
また、圧縮機1の吐出温度や吸入温度を検知し、検知した吐出温度や吸入温度が設定値になるまで冷媒回収運転を行い、さらにその設定値を外気温度と空調設定温度との温度差に応じて変化させる構成としてもよい。
また、蒸発器7の出口部の過熱度を検知してこの過熱度が所定の設定値、例えば20℃程度になるまで、冷媒回収運転を行い、さらにその設定値を外気温度と空調設定温度との温度差に応じて変化させる構成としてもよい。
この冷媒回収運転を行う時の、運転時間,電子式膨張弁の開度4,圧縮機1の吐出温度や吸入温度,蒸発器7の出口部の過熱度の設定値は、予め実験やシミュレーションによって、それぞれのパラメータとアキュムレータ14からの蒸発量または残った冷媒量との関係を把握して記憶しておけばよい。
【0113】
ただし、外気温度と空調設定温度との温度差の大小に応じてアキュムレータ14に貯溜した余剰冷媒の回収量を変化させる動作は、外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以下の場合に行うのが望ましい。これは、図4で示したように外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以上、例えば室内設定温度を38℃とした時では外気温度が13℃程度より低くなると空調負荷が軽くなり、過剰な冷房能力によって空調対象空間であるシェルタ内が冷え過ぎ、シェルタ内に設置されている通信機器の信頼性が低下するのを防止するためである。
【0114】
以上のように、本参考例による空気調和機では、圧縮機1の吸入圧力を低下させることなくアキュムレータ内に蓄積された冷媒を自然循環運転の冷媒回路に回収でき、圧縮機の信頼性を向上させることができる。
また、外気温度を検知して冷媒回収時間や冷媒回収時の膨張弁4の開度を制御するため、外気温度と空調設定温度との温度差に応じて冷媒量を適切に制御でき、自然循環運転で最大の冷房能力を得ることができる。このため、電気ヒータなどの特別な加熱手段などを用いなくても冷媒の回収をスムーズに行うことができ、自然循環運転の特長である消費電力削減効果を十分に発揮できる。
【0115】
また、電子式膨張弁4を蒸発器に近い室内機側に設けたため、自然循環運転と強制循環運転において、液部長さの違いによる冷媒量差を極力小さくできる。即ち、自然循環運転と強制循環運転において、電子式膨張弁4と蒸発器7との間が長いと液部長さの違いが大きくなり、電子式膨張弁4と蒸発器7との間を短かくすると液部長さの違いを短かくできる。これにより、冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14を小型化することができる。
【0116】
参考例3
以下、本参考例3について説明する。図15は本参考例に係る空気調和機として例えば冷房装置を示す回路構成図である。この空気調和機は、強制循環運転と自然循環運転とを併設する構成のものであり、電子式膨張弁4を蒸発器に近い室内機側に設けた以外は、参考例1と同様の構成である。電子式膨張弁4を室内機側に設けたため、参考例2と同様、自然循環運転と強制循環運転において、液部長さの違いによる冷媒量差を極力小さくでき、冷媒貯溜手段であるアキュムレータ14を小型化することができる。
なお、本参考例では、強制循環運転から自然循環運転への切換えの際に行う冷媒回収運転について、主に説明する。
【0117】
強制循環運転では、電子式膨張弁4の開度を、凝縮器2を出た冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とするための適切な開度に設定し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を開放して圧縮機1を運転する。この時、逆止弁11は圧縮機1の吐出圧力と吸入圧力との圧力差で閉止され、強制循環運転の冷媒回路が形成される。
【0118】
また、自然循環運転では、圧縮機1を停止し、アキュムレータ入口側の電磁弁13を閉止し、電子式膨張弁4の開度を、例えば冷媒回路内の圧力損失を低減するために全開にする。この時、逆止弁11は冷媒の流れにより開放され、自然循環運転の冷媒回路が形成される。
【0119】
図16は、本参考例の空気調和機における、強制循環運転から自然循環運転への運転切換え手順を示すフローチャートである。強制循環運転で必要な冷媒量は自然循環運転で循環する冷媒量の約1/2であり、余剰の冷媒は強制循環運転中にアキュムレータ14に貯溜されてくる。強制循環運転から自然循環運転への運転切換時に、アキュムレータ14に貯溜されている冷媒を自然循環運転を構成する冷媒回路に回収する必要がある。本参考例では、例えばアキュムレータ14に貯溜した冷媒の全てを自然循環運転の冷媒回路に回収するものとする。 ST1では強制循環運転を行っており、開閉弁13は開とし、電子式膨張弁4の開度は、凝縮器2を出た冷媒液を減圧して二相状態の湿り蒸気とするための適切な開度に設定された状態である。ST2で運転切換指令を受け、冷媒回収運転を開始する。即ち、ST4で電子式膨張弁4の開度を蒸発器7の出口部の冷媒状態が過熱状態となるような開度に絞る。具体的には電子式膨張弁4の開度を強制循環運転の開度よりも小さくまたは全閉にして、冷媒流量を小さくまたは0とする。この状態で、一定時間例えば2分程度、圧縮機1を動作させる冷媒回収運転を行う(ST5)。
【0120】
冷媒流量を小さくまたは0とすると、蒸発器7の出口部の冷媒状態は過熱状態となり、過熱ガスがアキュムレータ4に流入する。この過熱ガスによってアキュムレータ14内の冷媒液は蒸発して凝縮器2側に回収される。
【0121】
次に、ST6で圧縮機1を停止し、ST7で開閉弁13を閉止してアキュムレータ14への冷媒の流入を防止する。そして、電子式膨張弁4の開度を、冷媒回路内の圧力損失を低減するために例えば全開とし(ST9)、自然循環運転へ移行する(ST10)。
【0122】
参考例では、蒸発器7の出口部の冷媒状態を過熱状態とし、その過熱ガスによってアキュムレータ14内の冷媒を蒸発させるので、アキュムレータ14に電気ヒータなどの特別な加熱手段を必要とせず、自然循環運転の特長とするところの消費電力の削減効果を得ることができる。さらに、簡単な手順でスムーズに強制循環運転から自然循環運転に切換えることができる。
【0123】
このように、蒸発器7の出口部の冷媒状態を過熱状態とし、その過熱ガスによってアキュムレータ14内の冷媒を蒸発させるには、電子式膨張弁4の開度を強制循環運転時よりも小さくまたは全閉として、冷媒流量を小さくまたは0の状態で所定時間圧縮機1を運転すればよい。本実施の形態では冷媒回収運転は、アキュムレータ14内に貯溜している余剰冷媒がすべて蒸発した時点で冷媒回収運転を終了するのであるが、これは余剰冷媒がすべて蒸発するのに必要な所定の運転時間を設定しておく。運転時間によって冷媒回収運転の終了とすることで容易に判断できる。
また、圧縮機1の吐出過熱度や吸入過熱度を検知する温度センサおよび圧力センサを備え、電子式膨張弁4の開度を強制循環運転時よりも小さくまたは全閉として、冷媒流量を小さくまたは0とし、検知した吐出過熱度や吸入過熱度が所定の設定値になるまで、圧縮機1を運転するというように、冷媒回収運転の終了を判断してもよい。
また、圧縮機1の吐出温度や吸入温度を検知する温度センサを備えて、この温度センサで検知した温度から温度上昇速度を検知しても、冷媒回収運転の終了を検知できる。アキュムレータ4の出口側に冷媒液が流れている間は圧縮機1の吐出温度上昇および吸入温度上昇はほとんどないが、電子式膨張弁4の開度を小さく調整することによってアキュムレータ14内の冷媒の過熱度が上がり圧縮機1の吸入部や吐出部に冷媒ガスが流れるようになると、この部分の温度上昇速度は速くなる。このため、圧縮機1の吸入部や吐出部の温度上昇速度が所定の設定値、例えば5℃/分程度以上になった時に冷媒回収運転の終了としてもよい。
また、蒸発器7の出口部の過熱状態と圧縮機1の吐出温度や吸入温度の関係を把握しておけば、この吐出温度や吸入温度が所定の設定値になった時に冷媒回収運転を終了してもよい。
また、蒸発器7の出口部の過熱度を検知する手段を備え、電子式膨張弁4の開度を強制循環運転時よりも小さくまたは全閉として、冷媒流量を小さくまたは0とし、検知した過熱度が所定の設定値になるまで、圧縮機1を運転して、冷媒回収運転の終了としてもよい。この場合にも冷媒回収運転の終了を検知できる。この過熱度の検知手段については実施の形態2で述べたので、ここでは省略する。
【0124】
冷媒回収運転の終了を検知するため、電子式膨張弁4の開度を強制循環運転時よりも小さくまたは全閉として、冷媒流量を小さくまたは0とした状態で、運転時間,吐出温度や吸入温度の設定値,過熱度の設定値は、予め設定しておく必要がある。この設定方法の一例としては、予め、実験やシミュレーションによって、アキュムレータ14に全体の冷媒量の1/2が貯溜されている時に、その冷媒を蒸発させるのに必要な電子式膨張弁4の開度と運転時間の関係や、アキュムレータ14にほとんど冷媒がなくなった時の圧縮機1の吐出温度や吸入温度の値や蒸発器7の出口部の過熱度の値を把握しておけばよい。
【0125】
なお、図15に示す構成で、参考例2に示したように、圧縮機1の入口側と出口側を結ぶバイパス配管21と開閉弁22を設け、圧縮機1から吐出された高温高圧の過熱ガスの一部を蒸発器7からの過熱ガスと共にアキュムレータ14に流入させるように構成すれば、圧縮機1の低圧を低下させることなくアキュムレータ14内に蓄積された冷媒を自然循環回路にスムーズに回収することができる。
【0126】
なお、実施の形態1〜実施の形態において、冷媒流量調整手段4として例えば電子式膨張弁を用いたが、これに限るものではない。特に、実施の形態1,5,6における冷媒流量調整手段4は、空気調和機の運転中に過熱度演算制御手段19または過冷却度演算制御手段18の出力する制御信号によって冷媒流量を変化させることができるものであればよい。例えば、複数の毛細管と複数の開閉弁を組合わせた構成とし、制御信号に基づいて開閉する開閉弁の種類を変化させることにより、冷媒が通過する毛細管の数を変化させる構成としてもよい。
また、実施の形態では、蒸発器7または凝縮器2での風量を変化させる手段として、室内ファン8または室外ファン3の回転数を変化させているが、これに限るものではない。例えば、回転数は変化させずに、風路形状を変化させることにより、風路抵抗を変化させる構成としてもよい。また、回転数と風路形状を共に変化させてもよい。
【0127】
また、実施の形態1〜実施の形態における空気調和機では、冷媒として例えば、フロンR22や、フロンR32/R125が50/50重量%の混合冷媒であるフロンR410A、フロンR32/R125/R134aが23/25/52重量%であるフロンR407Cや、炭化水素冷媒または炭化水素を含む混合冷媒、アンモニアなどを用いることができる。
冷媒としてフロンR410A(R32/R125=50/50重量%)を用いると、R22に比べて冷媒回路内の圧力損失が小さく、自然循環運転で得られる冷房能力を増大できる。
また、炭化水素冷媒には、例えばプロパン(R290)やイソブタン(R600a)などがあり、これらはオゾン層破壊能力(ODP)が0であるとともに、フロンR22やフロンR410Aなどのフロン冷媒に比べて地球温暖化能力(GWP)が1オーダー以上小さく、地球環境に対して害の小さな冷媒である。特に、炭化水素冷媒の中でもプロパン(R290)は、同一質量速度におけるフロンR22に対する蒸発熱伝達率は2.3倍、凝縮熱伝達率は1.3倍程度であり、圧力損失の点でも好ましく、地球環境に対して害が小さくかつフロンR22に近い性能が得られる炭化水素冷媒である。
なお、ここでは炭化水素冷媒としてプロパン(R290)が自然循環運転に適していることを示したが、熱伝達率が大きく圧力損失の小さい他の炭化水素冷媒や炭化水素冷媒を含む混合冷媒を用いても、同様に地球環境に対して害が小さくかつ自然循環運転の冷媒として適用できるという効果を発揮する。ここで、炭化水素冷媒を含む混合冷媒としては、例えば二酸化炭素(CO2 )/プロパン(R290)やアンモニア(NH3 )/プロパン(R290)などを用いることができる。
【0128】
また、実施の形態1〜実施の形態では、空気調和機として冷房装置について説明したが、凝縮器を室内側、蒸発器を室外側に設置して外気の温熱を利用した暖房装置についても適用でき、同様の効果がある。
【0129】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、圧縮機、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器、冷媒貯溜手段を順次配管で接続し冷媒を循環させる強制循環運転と、前記圧縮機と前記冷媒貯溜手段とをバイパスするバイパス配管、前記凝縮器、前記冷媒流量調整手段、前記蒸発器を接続し前記冷媒を循環させる自然循環運転とを切換可能な空気調和機において、前記強制循環運転から前記自然循環運転への運転切換時に、前記蒸発器の出口部の冷媒状態を過熱状態とするステップと、前記ステップで過熱状態となった冷媒の過熱ガスを前記冷媒貯溜手段に流入して貯溜している冷媒を蒸発させるステップとを備え、前記強制循環運転で前記冷媒貯溜手段に貯溜した冷媒を前記自然循環運転の冷媒回路に回収することにより、電気ヒータなどの外部入力を必要とせずに強制循環運転から自然循環運転にスムーズに切換えることができ、大幅に消費電力を削減することができる空気調和機の冷媒制御方法が得られる。
【0130】
また、本発明によれば、蒸発器の出口部の冷媒状態を過熱状態とするステップで、冷媒流量が、強制循環運転における冷媒流量よりも小さくなるように冷媒流量調整手段を調整し、蒸発器の出口部の冷媒状態を過熱状態としたことにより、電気ヒータなどの外部入力を必要とせずに強制循環運転から自然循環運転にスムーズに切換えることができ、大幅に消費電力を削減することができる空気調和機の冷媒制御方法が得られる。
【0131】
また、本発明によれば、圧縮機、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器、冷媒貯溜手段を順次配管で接続し冷媒を循環させる強制循環運転と、前記圧縮機と前記冷媒貯溜手段とをバイパスするバイパス配管、前記凝縮器、前記冷媒流量調整手段、前記蒸発器を接続し前記冷媒を循環させる自然循環運転とを切換可能な空気調和機において、前記強制循環運転から前記自然循環運転への運転切換時に、前記蒸発器の出口部の冷媒状態を過熱状態とするステップと、前記ステップで過熱状態となった冷媒の過熱ガスを前記冷媒貯溜手段に流入して貯溜している冷媒を蒸発させるステップと、外気温度と空調設定温度との温度差を検知するステップと、前記冷媒貯溜手段に貯溜した冷媒を蒸発させるステップにおける前記冷媒の蒸発時に前記温度差を検知するステップで検知した温度差の大小により前記冷媒の蒸発量を変化させるステップと、を備え、前記強制循環運転で前記冷媒貯溜手段に貯溜した冷媒の回収量を増減することにより前記自然循環運転の冷媒回路内の冷媒量を増減するので、冷媒回収運転後に、空調負荷に対して自然循環運転で空調できる能力が最大限に発揮できるような冷媒量とすることができ、高い空調能力で運転できる空気調和機の冷媒制御方法が得られる。
【0132】
また、本発明によれば、蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度に応じて冷媒流量調整手段を制御することにより、空調負荷に対して自然循環運転で空調できる能力が最大限に発揮できるような冷媒状態で運転することができ、高い空調能力で運転できる空気調和機が得られる。
【0133】
また、本発明によれば、冷媒貯溜手段に貯溜している冷媒を蒸発させるステップを所定時間行うことにより、冷媒回収運転の終了を容易に判断でき、自然循環運転での冷媒量を空調能力が最大限に発揮できる量とすることができる空気調和機の冷媒制御方法が得られる。
【0134】
また、本発明によれば、自然循環運転における凝縮器の出口部の冷媒状態の設定値は、乾き度が0.1以下かつ過冷却度が20℃以下の範囲内の値としたことにより、凝縮器内の伝熱面積を有効に利用でき、安定した自然循環運転を行うことができる空気調和機が得られる。
【0135】
また、本発明によれば、蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度が設定値になるように冷媒流量調整手段を調整したことにより、空調負荷に対して自然循環運転で空調できる能力が最大限に発揮できるような冷媒状態で運転することができ、高い空調能力で運転できる空気調和機が得られる。
【0136】
また、本発明によれば、自然循環運転時に蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度が設定値になるように、冷媒流量および前記蒸発器での風量および前記蒸発器内の冷媒量のうちのいずれか1つを変化させたことにより、空調負荷に対して自然循環運転で空調できる能力が最大限に発揮できるような冷媒状態で運転することができ、高い空調能力で運転できる空気調和機の冷媒制御方法が得られる。
【0137】
また、本発明によれば、自然循環運転における蒸発器の出口部の冷媒状態の設定値は、乾き度が0.9以上かつ過熱度が10℃以下の範囲内の値であることにより、ガス配管の圧力損失の増大を抑えながら蒸発器内の伝熱面積を有効に利用できる空気調和機が得られる。
【0138】
また、本発明によれば、自然循環運転で、冷媒流量または冷媒量を所定時間間隔で変化させることにより、自然循環運転に適した速度で制御でき、安定して自然循環運転を行うことができる空気調和機が得られる。
【0139】
また、本発明によれば、外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以下の場合に、自然循環運転における冷媒流量または冷媒量を変化させることにより、空調能力が過大になるのを防止でき、必要な外気温度と空調設定温度との温度差の範囲において自然循環運転による空調能力を最大限に発揮できるような冷媒状態で運転することができる空気調和機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例1による空気調和機を示す回路構成図である。
【図2】 参考例1に係わる冷媒充填量に対する冷房能力、蒸発器出口過熱度、凝縮器出口過冷却度を示す特性図である。
【図3】 参考例1に係わる冷媒充填量に対する冷房能力を示す特性図である。
【図4】 参考例1に係わる外気温度に対する空調負荷と冷房能力の関係を示す特性図である。
【図5】 参考例1に係わるシュミレーションモデルを示す説明図である。
【図6】 参考例1に係わるシュミレーション結果による時間に対する温度変化を示すグラフである。
【図7】 本発明の実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
【図8】 本発明の実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
【図9】 本発明の実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
【図10】 本発明の実施の形態に係わる圧力−エンタルピー線図である。
【図11】 本発明の実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
【図12】 本発明の実施の形態による空気調和機を示す回路構成図である。
【図13】 参考例2による空気調和機を示す回路構成図である。
【図14】 参考例2に係わる強制循環運転から自然循環運転への運転切換え手順を示すフローチャートである。
【図15】 参考例3による空気調和機を示す回路構成図である。
【図16】 参考例3に係わる強制循環運転から自然循環運転への運転切換え手順を示すフローチャートである。
【図17】 従来の自然循環運転を利用した空気調和機を示す回路構成図である。
【図18】 従来の自然循環運転と強制循環運転とを備えた空気調和機を示す回路構成図である。
【符号の説明】
1 圧縮機、2 凝縮器、3 室外送風機、4 冷媒流量調整手段、5 室外機、6 液配管、7 蒸発器、8 室内送風機、9 室内機、10 ガス配管、11,15 開閉手段、12 バイパス配管、13 開閉手段、14 アキュムレータ、16 温度検知手段、17 圧力検知手段、18 過冷却度演算制御手段、19 過熱度演算制御手段、20 冷媒貯溜手段、21 バイパス配管、22 開閉手段。

Claims (9)

  1. 蒸発器とこの蒸発器よりも高い位置に設置された凝縮器とを配管で接続し冷媒を循環させて自然循環運転を行う空気調和機において、前記凝縮器と前記蒸発器の間の配管に設けられた冷媒流量調整手段と、前記凝縮器の出口の下部に配置されるとともに前記冷媒流量調整手段と前記凝縮器の間の配管に下部から接続された冷媒貯溜手段と、前記凝縮器の入口側の配管に圧縮機の吐出と吸入の間を逆止弁を介してバイパスさせるバイパス配管とを備え、前記圧縮機による強制循環運転から前記冷媒流量調整手段を全開にして自然循環運転へ切換可能とし、前記自然循環運転における前記凝縮器の出口部の冷媒の過冷却度と外気温度に応じて前記凝縮器からの余剰冷媒を前記冷媒貯溜手段に蓄積するように前記冷媒流量調整手段を制御することを特徴とする空気調和機。
  2. 前記蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度に応じて前記冷媒流量調整手段を制御することを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
  3. 圧縮機、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器、冷媒貯留手段を順次配管で接続し冷媒を循環させる強制循環運転と、前記圧縮機と前記冷媒貯溜手段とをバイパスするバイパス配管、前記凝縮器、前記冷媒流量調整手段、前記蒸発器を接続し前記冷媒を循環させる自然循環運転とを切換可能な空気調和機において、前記冷媒貯溜手段の入口側に開閉弁を設け、前記強制循環運転時に前記開閉弁を開放し、前記強制循環運転から前記自然循環運転に切換えるための冷媒回収運転を行った後に前記開閉弁を閉止し、前記自然循環運転時に前記凝縮器の出口部の冷媒の過冷却度が設定値よりもある値以上大きい場合に前記開閉弁を所定時間開くことを特徴とする空気調和機。
  4. 自然循環運転における凝縮器の出口部の冷媒状態の設定値は、乾き度が0.1以下かつ過冷却度が20℃以下の範囲内の値であることを特徴とする請求項3記載の空気調和機。
  5. 前記蒸発器の出口部の冷媒の過熱度または乾き度が設定値になるように前記冷媒流量調整手段を調整したことを特徴とする請求項記載の空気調和機。
  6. 圧縮機、凝縮器、冷媒流量調整手段、蒸発器、冷媒貯留手段を順次配管で接続し冷媒を循環させる強制循環運転と、前記圧縮機と前記冷媒貯溜手段とをバイパスするバイパス配管、前記凝縮器、前記冷媒流量調整手段、前記蒸発器を接続し前記冷媒を循環させる自然循環運転とを切換可能な空気調和機において、前記冷媒貯溜手段の入口側に開閉弁を設け、前記強制循環運転時に前記開閉弁を開放し、前記強制循環運転から前記自然循環運転に切換えるための冷媒回収運転を行った後に前記開閉弁を閉止し、前記自然循環運転時に前記蒸発器の出口部の冷媒の過熱度が設定値よりも低い場合に前記開閉弁を所定時間開くことを特徴とする空気調和機。
  7. 自然循環運転における蒸発器の出口部の冷媒状態の設定値は、乾き度が0.9以上かつ過熱度が10℃以下の範囲内の値であることを特徴とする請求項6記載の空気調和機。
  8. 自然循環運転で、冷媒流量または冷媒量を所定時間間隔で変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の空気調和機。
  9. 外気温度と空調設定温度との温度差が25℃以下の場合に、自然循環運転における冷媒流量または冷媒量を変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の空気調和機。
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