JP3932515B2 - 金コロイド粒子を用いるdnaの配列検知方法、ターゲットdnaの末端一塩基変異検出方法、遺伝子検査方法 - Google Patents

金コロイド粒子を用いるdnaの配列検知方法、ターゲットdnaの末端一塩基変異検出方法、遺伝子検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、DNAの配列検知方法、前記方法を用いるターゲットDNAの末端一塩基変異検出方法および遺伝子検査方法に関する。
近年の遺伝子工学の発展により、遺伝子診断は、医療分野における病原菌やウィルスの検出のみならず、犯罪捜査、親子鑑定、考古学研究、生物学などの様々な分野において頻繁に用いられるようになっている。
従来、遺伝子診断は、一般に、検体であるターゲットDNAとこれに相補的なプローブDNAを用意し、これらをハイブリダイゼーションし得る条件でアニールし、ハイブリダイゼーションの有無を検定することで行われてきた。初期の方法では、検体をナイロン膜などの固相に固定し、目的の遺伝子配列に相補的な遺伝子の結合を調べていた。しかし、一塩基変異を検出するという観点からは、その特異性が必ずしも高くないという問題が指摘されていた。また、数時間から1日という長い時間を要する上、遺伝子結合を検知するために、放射性同位元素を用い、あるいは、酵素反応を利用した複雑な化学反応を必要とするため、より精度の高い、簡便な方法が求められていた。
そこで、最近になって、プローブDNAを基板に固定化した遺伝子チップを用いる遺伝子診断方法が研究、報告されている。しかし、この方法も、依然として、一塩基変異を検出におる前述の問題点を解決するものではなかった。
さらに、ラテックス微粒子や金コロイド粒子とDNAの複合体の凝集を用いる遺伝子診断(非特許文献1及び2、特許文献1)が報告され、簡便な方法として注目された。しかし、このような複合体の凝集では、検体として添加されたDNA(ないしRNA)が複数の微粒子を架橋することにより凝集を促しているため、検体DNAの複数の箇所に結合する複数種類のDNA固定化微粒子を用意する必要があり、複雑で、汎用性がなかったのが実状である。
このような問題を解決する方法として、簡便に、高い精度で遺伝子の相違を診断する汎用的な方法が特許文献2に記載されている。この方法は、1本鎖DNAと疎水性物質の複合体であるDNAコンジュゲート物質と金属陽イオンを含有する水溶液に、遺伝子DNAを添加し、該水溶液の光散乱強度、または光透過率のいずれかの変化を測定することを特徴とする遺伝子診断方法である。疎水性物質としては、実際には、イソプロピルアクリルアミドの重合体が用いられている。
確かにこの方法では、1種類のDNAコンジュゲート物質を用いることで遺伝子DNAの一塩基変異を検出することができた。しかし、このDNAコンジュゲート物質の調製は操作が煩雑であり、また、分析時にはミセル構造をとらせるために30℃を超える温度に加温する必要があった。さらに、特許文献2の実施例では温度を40℃に維持しているように、特許文献2に記載の方法では、一塩基変異を検出するためには、DNAコンジュゲート物質のDNAと遺伝子DNAとのハイブリダイゼーションの温度を精密に制御する必要が有った。
Chemistry Lett., 1999, 1041-1042 J.Am.Chem.Soc., 1998, 120, 1959-1964 特表2003−503699号公報 特開2001−252098号公報
そこで本発明の目的は、ハイブリダイゼーションの温度を精密に制御することなく、かつ目視を含む様々な検出方法によって、DNAの配列を検知し得る方法を提供することにある。
上記本発明の目的を達成する手段は、以下の通りである。
[請求項1]表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子とターゲットDNAとを溶液中でハイブリダイズさせて、金コロイド粒子に固定された1本鎖DNAの金コロイド粒子に固定されていない側においていずれのDNA鎖も突出していない末端を有する2本鎖DNAを形成し、ハイブリダイズ後の金コロイド粒子の凝集体の形成の有無により、ターゲットDNAの末端一塩基の情報を得る方法であって、
前記ハイブリダイズを0〜30℃の範囲の温度で行い、かつ
前記凝集体が形成された場合には、少なくとも、金コロイド粒子に固定された1本鎖DNAの金コロイド粒子に固定されていない側の末端の一塩基と、この前記一塩基と対向する前記ターゲットDNAの末端の一塩基が、相補的であると判定する、前記方法。
[請求項2]前記金コロイド粒子の凝集体の形成の有無を、溶液の色の変化を測定することによって観察する、請求項1に記載の方法。
[請求項3]前記溶液の色の変化の測定を、色が赤から青に変化するのを目視で識別するか、または吸収スペクトルを測定し、最大吸収の長波長側へのシフトを観測することにより行う、請求項2に記載の方法。
[請求項4]前記溶液に基板を共存させ、前記凝集体を該基板上に堆積させ、堆積した凝集体について凝集体の形成の有無を検出する、請求項1に記載の方法。
[請求項5]前記金コロイド粒子の凝集体の形成の有無を、顕微鏡、粒子からの散乱光の検知、電気化学的検出、表面プラズモン共鳴、または電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)によって観察する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項]前記ハイブリダイズを、室温で温度制御なしで行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項]前記ハイブリダイズを氷冷下で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項]前記ハイブリダイズを金属陽イオンの存在下で行う請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
[請求項]前記金属陽イオンがナトリウムイオンまたはマグネシウムイオンである請求項に記載の方法。
[請求項10]請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を含む、ターゲットDNAの末端一塩基変異検出方法。
[請求項11]DNAを増幅する工程および/またはプライマー一塩基伸長反応の後に、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を行うことを特徴とする、遺伝子検査方法。
本発明によれば、ハイブリダイゼーションの温度を精密に制御することなく、かつ目視を含む様々な検出方法によって、DNAの配列を検知する方法を提供することができる。さらに、本発明の方法は、DNAの配列の検知を、(1)目視、(2)最大吸収のシフト、(3)顕微鏡観察、等の様々な方法で行うことができる。更に、本発明によれば、ターゲットDNAの末端一塩基変異の検出を行うこともでき、更には、遺伝子診断を行うこともできる。
本発明の方法は、表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子とターゲットDNAとを溶液中でハイブリダイズさせて、金コロイド粒子に固定された1本鎖DNAの金コロイド粒子に固定されていない側においていずれのDNA鎖も突出していない末端を有する2本鎖DNAを形成し、ハイブリダイズ後の金コロイド粒子の凝集体の形成の有無により、ターゲットDNAの末端一塩基の情報を得る方法である。
なお、本発明において、「配列を検知する」とは、末端の一塩基を含んでプローブとハイブリダイズするターゲット配列が検出対象物に含まれているか否かを知ることを意味し、例えば、少なくとも一部の塩基配列が未知であるターゲットDNAに対して、その未知配列に関する情報を得ることが含まれる。更に、本発明において、「配列を検知する」という語には、ある病原体に特徴的な核酸配列からプローブ核酸を作製して病原体の有無を確認する場合のように、既知ターゲット配列が、検出対象物に含まれるか否かを確認することも含まれる。具体的には、例えば、ターゲットDNAの大部分の配列が既知であり、3'末端のみA、T、G、Cの4通りの可能性が残されている状態から、それが「Aでない」ことを新たに知ることや、ターゲットDNAが何種類かの配列をもったDNAの混合物であるとき、その中に、ある病原体に特有の配列が存在するかどうかを新たに知ることが含まれる。
本発明の配列検知方法において、前記凝集体は、少なくとも、金コロイド粒子表面に固定した1本鎖DNAの金コロイドに固定されていない側の末端の一塩基と、この塩基に対向するターゲットDNAの末端の一塩基とが相補的であり、これら末端の一塩基を含んで、上記1本鎖DNAとターゲットDNAとがハイブリダイズしているときにのみ生じる。この点について、図1を参照して説明する。
図1に、3’末端にCを有する1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子と、5’末端にGを有するターゲットDNAを用いた例を示す。図1に示すように、少なくとも、金コロイド粒子表面に固定した1本鎖DNAの、金コロイドに固定されていない側(以下、「自由末端側」ともいう)の末端の一塩基(3’末端のC)と、この塩基に対向するターゲットDNAの末端の一塩基(5’末端のG)とが相補的であり、これら末端の一塩基を含んで、上記1本鎖DNAとターゲットDNAとがハイブリダイズすると、金コロイド粒子同士が凝集し、凝集体が形成される。一方、ターゲットDNAの末端の一塩基が金コロイド粒子固定化DNAの自由末端側の末端塩基と相補的でない場合、凝集体は形成されない。こうして、本発明の方法によれば、金コロイド粒子の凝集体の形成の有無により、ターゲットDNAの配列を検知することができ、特に、ターゲットDNAの末端一塩基変異を検出することができる。
本発明の配列検知方法は、ターゲットDNAの末端一塩基変異を検出するために用いることができる。本発明の方法により検出できる末端一塩基変異は、塩基の置換、挿入または欠損のいずれであることもできる。
末端への塩基の挿入とは、ターゲットDNAの末端(金コロイド粒子固定化DNAの自由末端側)に、例えば、1塩基以上の塩基が追加された場合を意味し、金コロイド粒子固定化DNAの固定化末端側から15塩基までは完全相補性であることを意味する。
また、末端での塩基の欠損とは、ターゲットDNAの末端(金コロイド粒子固定化DNAの自由末端側)の1塩基以上の塩基が欠失している場合を意味し、例えば、図6のBのターゲットDNAにおいて、塩基数は14で、5’末端のAが欠失しており、金コロイド粒子固定化DNAの固定化末端側から14塩基までは完全相補性である場合である。
本発明では、金コロイド粒子の凝集体の形成の有無を、溶液の色の変化を測定することによって観察することができる。本発明の方法に用いる「表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子」において、金コロイド粒子は、例えば、粒子径が5〜20nmの範囲であり、このコロイド溶液は赤色を呈する。それはこの大きさの金コロイド粒子が表面プラズモン共鳴により 520 nm 付近に強い吸光ピークを持つためである。このピークは粒子径が大きくなるに従い長波長側にシフトし、溶液は紫色あるいは青色を呈する。金コロイド粒子が凝集すると、粒子径が大きくなるのと同様の効果を生じて溶液色が変化する。本発明では、この溶液の色の変化を測定することにより、凝集体の形成の有無を観察することができる。溶液の色の変化の測定は、溶液の色が赤から青に変化するのを目視で識別するか、または吸収スペクトルを測定し、最大吸収の長波長側へのシフトを観測することによって行うことができる。表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子を含む溶液の色は赤であり、これにターゲットDNAをハイブリダイズさせると、ターゲットDNAと金コロイド粒子固定化DNAとが完全相補性であれば、溶液の色は青に変化する。この変化を例えば、目視で識別するか、最大吸収の長波長側へのシフトを観測するかによって観察する。しかし、ターゲットDNAの末端の一塩基が金コロイド粒子固定化DNAと相違する場合(但し、固定化されていない方の端が相違する場合)、溶液の色は変化しない。
更に、本発明では、前記凝集体の形成の有無を、顕微鏡、粒子からの散乱光の検知、電気化学的検出、表面プラズモン共鳴、または電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)によって観察することもできる。特に、ハイブリダイズを行う溶液に基板を共存させると、金コロイド粒子凝集体が、該基板上に堆積する現象が観察される。本発明では、この基板上の凝集体を、先に示したような手段で観察することもできる。そのような基板としては、シリコーン製基板、ガラス製基板等を用いることができる。
本発明の方法は、液体を、マイクロチップに形成されたマイクロ流路の中に導入するのに外部からの動力を必要としないマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップを用いて行うことができる。ここで、マイクロチップとは、平板状の基板に微細加工によってマイクロ流路を集積化して形成したものを意味する。そのようなマイクロチップとしては、高分子材料により形成し、マイクロ流路内に減圧された空間を生起させて、自動的にマイクロ流路内に液体を導入するようにしたマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップ、具体的には、以下に記載するようなマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップを挙げることができる。
(1)所定の形状に形成されたマイクロチャネルと、前記マイクロチャネル内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートとを有し、前記マイクロチャネルの全体または一部を高分子材料により形成し、前記高分子材料を脱気したことを特徴とするマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップ;
(2)所定の形状に形成されたマイクロチャネルと、前記マイクロチャネルの複数の端部のうちの所定の端部側に連接され、前記マイクロチャネルの内部とのみ連通し外部に対して遮蔽された内部空間を有する減圧室と、前記マイクロチャネルの複数の端部のうちの前記減圧室が連接された端部を除いた残余の端部それぞれに形成され、前記マイクロチャネル内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートとを有し、前記マイクロチャネルまたは前記減圧室のそれぞれの全体または一部のうちの少なくともいずれかを高分子材料により形成し、前記高分子材料を脱気したことを特徴とするマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップ;
(3)一方の端部に複数の導入用流路が連接され、他方の端部が減圧室に連接された混合用流路と、前記複数の導入用流路それぞれの前記混合用流路と連通する側の端部とは異なる端部側に形成され、前記導入用流路内に液体を導入するために外部に開口する複数のポートと、前記減圧室の内部空間を、前記混合用流路の内部とのみ連通させ外部に対して遮蔽する封止手段とを有し、前記封止手段、前記減圧室または前記混合用流路のそれぞれの全体または一部のうちの少なくともいずれかを高分子材料により形成し、前記高分子材料を脱気したことを特徴とするマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップ。
以下に、前記マイクロ流体制御機構を有するマイクロチップについて説明する。
まず、図2には、マイクロ流体制御機構を有するマイクロチップの概略構成上面説明図を示す。図3(a)には、図2に示すマイクロチップのA−A線による断面図(概略構成縦断面図)が示されており、図3(b)には、図2に示すマイクロチップのB−B線による断面図(概略構成縦断面図)が示されている。
ここで、マイクロチップ10は、第1の板状部材12と、第2の板状部材14と、第1の板状部材12に配置された封止手段としての被覆部材16とを有して構成されている。
そして、第1の板状部材12には、マイクロチャネルとして、上面から見てY字型状の一連の流路を構成するマイクロチャネル20が形成されている。このマイクロチャネル20は、上面から見て直線状に延長するマイクロ流路たる混合用流路22と、混合用流路22の一方の端部22aが二股に分岐されて形成されたマイクロ流路たる第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26とを有するものである。ここで、混合用流路22、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26は、第1の板状部材12の下面12b側が開口した溝状に形成されており、その下面12b側の開口面は、第2の板状部材14により遮蔽されている。
また、第1導入用流路24の一方の端部24a、即ち、混合用流路22の端部22a側とは異なる側の端部は、第1の板状部材12の上面12aに形成された試料や試薬などの液体を導入するために外部に開口している開口部たる第1サンプル用ポート30と連通している。一方、第2導入用流路26の一方の端部26a、即ち、混合用流路22の端部22a側とは異なる側の端部は、第1の板状部材12の上面12a側に形成された試料や試薬などの液体を導入するために外部に開口している開口部たる第2サンプル用ポート32と連通している。
従って、第1導入用流路24の端部24aならびに第2導入用流路26の端部26aは、大気に開放されていることになる。一方、第1導入用流路24の他方の端部24bと第2導入用流路26の端部26bとは、混合用流路22の一方の端部22aと連通している。
そして、混合用流路22の他方の端部22b、即ち、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26と連通する側とは異なる側の端部は、減圧室40の側方開口部40aと連通している、即ち、混合用流路22の一方の端部22aには、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26の複数の導入用流路が連接されており、他方の端部22bには、減圧室40が連接されている。この減圧室40は、第1の板状部材12の上面12aにおいて、略円形形状の上方開口部40bで開口するとともに、下面12b側において略円形形状の開口部で開口する円筒状に形成されており、その下面12b側の開口部は第2の板状部材14により遮蔽されている。
一方、減圧室40の上方開口部40bには、封止手段たる被覆部材16が配設されており、被覆部材16によって上方開口部40bは封止されている。これにより、減圧室40の内部空間40cは、混合用流路22の内部とのみ連通し、外部に対しては遮蔽されている。即ち、混合用流路22の他方の端部22bは、減圧室40の内部空間40cには開放されているが、大気には開放されていない。
ここで、マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14、および被覆部材16の材料としては、高分子材料を用いることができる。
例えば、高分子材料の1つであるゴムは、固体のミクロ構造がかなり疎であり、かつ固体分子の運動自由度が相当に大であるので、気体が固体中に入り込み易く、非常に多くの気体が溶解する固体材料である。このように非常に多くの気体が溶解可能な固体材料であるゴムなどの高分子材料によって、第1の板状部材12、第2の板状部材14、および被覆部材16を形成するとよい。
なお、この実施の形態において、マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14、および被覆材料16の材料として、ゴム、具体的にはポリジメチルシロキサン(以下、「PDMS」ともいう)などのシリコーンゴムを用いることができる。
マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14、および被覆部材16の材料としては、非常に多くの気体が溶解可能な固体材料が好適であり、例えば、空気に対する溶解度係数S=0.011〜10(cm3(STP;標準状態(0℃、1atm))/(cm3atm))の高分子材料を用いることができる。
ここで、
C:固体中の気体濃度(cm3(STP)/cm3
(1cm3の固体に溶けている気体の量を、標準状態での体積に換算したもの)
P:固体に接触する気体の圧力(atm)
S:溶解度係数(cm3(STP)/(cm3atm))
とするヘンリーの法則
C=SP
により、PDMSの空気に対する溶解度係数を算出することができる。温度35℃、空気を窒素80%、酸素20%とすると、PDMSの空気に対する溶解度は、S=0.11cm3(STP)/(cm3atm)となる。ただし、このPDMSの空気に対する溶解度係数Sは、PDMSの重合度などに依存するものである。
なお、マイクロチップ10を構成する第1の板状部材12、第2の板状部材14、および被覆材料16の材料は、上記のものに限られるものではなく、マイクロチップ10を用いて実験を行う際の試料や試薬などの液体の種類などに応じて適宜選択することができる。
また、マイクロチップ10の第1の板状部材12は、例えば、長さL1が30mm、長さL2が30mm、厚さL3が2mmの大きさの直方体形状を有しており、第2の板状部材14は、例えば、第1の板状部材12と略一致する寸法に設定されている。
そして、マイクロチャネル20の混合用流路22の端部22aから端部22bまでの長さL4は、例えば、14mmに設定され、混合用流路22の幅L5は、例えば、100μmに設定され、混合用流路22の深さL6は、例えば、25μmに設定されている。
また、第1導入用流路24の端部24aから端部24bまでの長さ、ならびに、第2導入用流路26の端部26aから端部26bまでの長さL7は、例えば、4mmに設定されている。なお、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26の幅は、例えば、混合用流路22の幅L5と略一致する寸法に設定され、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26の深さは、例えば、混合用流路22の深さL6と略一致する寸法に設定されている。
また、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32の直径L8は、例えば、2mmに設定されている。また、減圧室40の上方開口部40bの直径L9は、例えば、1mmに設定されている。
なお、上記した各構成部位の寸法は、各構成部位の大きさの一例を示すものであって、本発明で使用する場合、前記寸法に限定されるものではない。
以上の構成において、マイクロチップ110を脱気するために、圧力10kPaの真空チャンバーに、例えば、0.5〜3時間入れることができる(図4(a)参照)。このように、マイクロチップ10全体を低圧環境に置くことにより、マイクロチップ10全体に溶け込んでいる空気を抜くことができる(図4(a)における破線矢印参照)。つまり、マイクロチップ10を形成しているPDMSに溶解している気体が取り除かれることになる。
そして、脱気を開始してから所定時間が経過した後、マイクロチップ10を真空チャンバー内から大気中(100kPa)に取り出す(図4(b)参照)。こうして、真空チャンバー内における脱気を終了し、大気中に取り出されてマイクロチップ10が大気圧に戻されたときから、マイクロチップ10を形成するPDMSへの空気の再溶解が始まる(図4(b)における破線矢印参照)。
こうしたPDMSへの空気の再溶解は、気体溶解度に関するヘンリーの法則に基づく現象である。即ち、PDMSなどのシリコーンゴムは、液体のように平衡溶解度が接触気体の分圧に比例するものである。このため、低圧から大気圧に戻すことにより、平衡溶解度が再び上がり、系がこの新しい平衡に向かう際に、PDMSへの空気の再溶解が始まる。
そして、前述のように溶解度係数S=0.11cm3(STP)/(cm3atm)のPDMSは、非常に多くの気体が溶解可能な固体材料であって、こうしたPDMSによりなるマイクロチップ110の外部環境が低圧環境下から大気圧に戻されることで、マイクロチップ10全体に新たに多くの空気が溶解することになる。こうして、大気中に取り出した後、マイクロチップ10の第1サンプル用ポート30に、第1の液体を滴下する。
ここで、マイクロチャネル20を構成する3つの流路、即ち、混合用流路22、第1導入用流路24、ならびに第2導入用流路26のうち、混合用流路22の端部22b側は、被覆材料16によって予め大気には開放されておらず、第1導入用流路24の端部24aは、第1サンプル用ポート30に滴下された第1の液体によって封止されている。その結果、第1の液体がマイクロチャネル20に導入されたときには、第2導入用流路26の端部26aのみが大気に開放されていることになる。
次に、マイクロチップ10の第2サンプル用ポート32に、第1の液体と混合すべき第2の液体を滴下する。これにより、第2導入用流路26の端部26aが、第2サンプル用ポート32に滴下された第2の液体によって封止されるので、マイクロチャネル20に形成された各流路が、外部に対して閉ざされ、第1の液体と第2の液体とを混合用流路22へ導入する動作が開始される。
より詳細には、第1サンプル用ポート30に第1の液体を滴下し、第2サンプル用ポート32に第2の液体を滴下した状態では、マイクロチャネル20に形成された各流路が外部に対して閉ざされるので、混合用流路22内の空気や、混合用流路22の端部22bが開放している減圧室40の内部空間40cの空気は、第1サンプル用ポート30ならびに第2サンプル用ポート32を介したマイクロチップ10の外部との連絡を失い、マイクロチップ10の閉ざされた各流路と減圧室とにより形成される空間(以下、「閉空間」という)に位置するようになる。
ここで、前述のようにマイクロチップ10を真空チャンバー内から大気中に取り出したときから、マイクロチップ10を形成するPDMSへの空気の再溶解が始まっているので(図4(b)参照)、この閉空間に位置する空気は、混合用流路22の内壁22cや減圧室40の内壁40dからPDMSに溶解する(図4(d)における破線矢印参照)。
その結果、混合用流路22内や減圧室40の内部空間40cよりなる閉空間の圧力が下がり、第1導入用流路24内の第1の液体と第2導入用流路26内の第2の液体とは、同時に混合用流路22に流れ込む(図4(c)参照)。こうして、第1の液体と第2の液体との2液は、混合用流路22内において混合される。
前述のマイクロチップ10においては、第1の板状部材12、第2の板状部材14、および被覆材料16をPDMSにより形成して、脱気し、PDMSへの空気の再溶解が始まるようにした状態において、混合すべき2液によってマイクロチャネル20が外部に対して閉ざされると、マイクロチャネル20内に減圧された空間が生起され、液体は減圧された空間に吸引されて自動的に混合用流路22内へ導入される。ここで、第1の液体として金コロイド粒子含有溶液を、第2の液体としてターゲットDNA含有溶液を用いれば(またはその逆でも構わない)、金コロイド粒子表面に固定した1本鎖DNAの自由末端側の末端の塩基と、ターゲットDNAの末端の塩基とがハイブリダイズする場合には、金コロイド粒子の凝集体が形成され、基板上(主として混合用流路22上)に堆積する様子が観察される。一方、ターゲットDNAが末端一塩基変異を有する場合には、凝集体は形成されない。こうして、このようなマイクロチップを用いることにより、ターゲットDNAの変異を検出することができる。
次に、前述のマイクロチップ10の製造方法について説明する。マイクロチップ10の製造工程の概略を、図5(a)〜(d)の順に時系列で示す。
まず、マイクロチップ10の第1の板状部材12は、以下のような型成形技術によって製造され得る。即ち、所定の高さのマイクロチャネル20を成形するための反転パターンを形成するために、超厚膜フォトレジスト(SU−8;Microchem社製、米国)をシリコン基板の上にスピンコートし、製造者メーカーの指示に従って処理する。その後、反転パターンを露光し、現像する。
現像の後に、接着を強化するために、炉中で4分間150℃で焼き、次いで、1〜2時間かけて室温まで徐冷する。型離れをよくするために、シリコン基板は、反応性イオンエッチング(RIE)機械(RIE−10NR;サムコインターナショナル研究所社製、日本)中で、CHF3プラズマにより重合化されたフロロカーボン層を2分間成膜する。そのときの条件は、例えば、CHF3ガス流量50sccm、圧力20Pa、電力200Wとすることができる。
更に、PDMS(Sylgard 184;Dow Corning社製、米国)の未重合液体を、当該溶液を保持する型枠を使用してシリコン基板上に注ぐ(図5(a)参照)。これに対して、65℃で1時間の第1キュアと、100℃で1時間との第2キュアを行う。キュアされたPDMSチップは、シリコン基板から剥離される。
こうして製造されたPDMSチップに対して、金属パイプを使用してパンチすることにより、第1サンプル用ポート30、第2サンプル用ポート32、ならびに減圧室40に対応する丸孔を穿設する(図5(b)参照)。こうして製造された第1の板状部材12は、同じくPDMSチップからなる第2の板状部材14の表面に単に接触させるだけで可逆的に接着される(図5(c)参照)。
そして、減圧室40の開口部を被覆するようにして、第1の板状部材12の上面12aにPDMSからなるテープを取り付けると(図5(d)参照)、マイクロチップ10が完成する。この際、PDMSからなるテープに代わって、市販されている粘着テープを用いてもよい。
なお、本発明において使用し得るマイクロチップの製造方法は、上記の態様に限られるものではなく、マイクロチップを形成する材料の種類などに応じて、適当な製造プロセスでマイクロチップを製造することができる。また、上記には、導入用のマイクロ流路として、第1導入用流路24ならびに第2導入用流路26を有するマイクロチップを例にとり説明したが、混合用流路の一方の端部に連接される導入用流路の本数は、3本以上でもよい。また、PDMSのような高分子材料により形成される領域は、マイクロチップ10の全体に限られるものではなく、被覆材料16の全体または一部、マイクロチャネル20の混合用流路22の全体または一部、減圧室40の全体または一部、これらのうちの少なくともいずれかとすることができる。ただし、PDMSなどの高分子材料により形成される領域全体の容量は、高分子材料内部の気体濃度に影響するものなので、マイクロチャネル20内に減圧された空間が生起可能な範囲で、マイクロチャネル20全体や減圧室40全体の寸法に応じて、高分子材料により形成される領域は適宜変更するとよい。
本発明において使用される表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子を得るためには、金表面がチオール基と強く結合する性質を利用して、金コロイド粒子にDNAや抗体を固定化するための公知の方法を用いることができる。
例えば、金コロイド粒子表面への1本鎖DNAの固定は、金コロイド粒子溶液にチオール化したDNAを添加し加熱すると、金表面にチオール基が結合し、結合しなかったチオール化DNAを遠心分離によって取り除くことにより、1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子が得られる。1つの金コロイド粒子に対する1本鎖DNAの固定量(本数)は、例えば、金コロイド粒子の分散安定性や加えたいターゲットDNAの量を考慮して、適宜決定され、通常50〜300本の範囲であることができる。金コロイド粒子に対する1本鎖DNAの固定量は、例えば、固定化するチオール化DNAの濃度や固定化反応時間などで制御することができる。
金コロイド粒子表面に固定した1本鎖DNA(以下、「金コロイド粒子固定化DNA」ということがある)は、塩基数が例えば、5〜30の範囲、好ましくは12〜18、より好ましくは14〜16の範囲である。金コロイド粒子固定化DNAの配列は、ターゲットDNAの配列に応じて適宜決定し、そのようなDNAは公知の方法により適宜調製できる。金コロイド粒子固定化DNAの塩基数は、ターゲットDNAの塩基数と同等であることができる。また、本発明の方法においては、金コロイド粒子固定化DNAの塩基数とターゲットDNAの塩基数とは、必ずしも同等である必要はなく、少なくとも、金コロイド粒子固定化DNAの自由末端側の末端塩基とターゲットDNAの末端塩基とが相補的でありハイブリダイズすれば、凝集体が形成される。
本発明の方法において、ターゲットDNAは、塩基数が5〜30の範囲であることができ、好ましくは12〜18、より好ましくは14〜16の範囲である。ターゲットDNAの塩基数は、検出すべきターゲットDNAの由来や調製のし易さ、あるいは、検出感度等を考慮して、適宜決定される。
本発明の方法においては、表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子とターゲットDNAとを溶液中でハイブリダイズさせる。上記ハイブリダイズは、例えば、0〜30℃の温度で行うことができる。本発明においては、前記ハイブリダイズを室温で温度制御なしに行うことができ、または、氷冷下で行うこともできる。ハイブリダイズを氷冷下で行うことにより、金コロイド粒子の凝集を促進することができる。
本発明の方法においては、表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子とターゲットDNAとを溶液中でハイブリダイズする際に、金属陽イオンを共存させることができる。使用する金属陽イオンは特に限定されないが、好ましくはナトリウムイオン、またはマグネシウムイオンである。ナトリウムイオンとしては、NaCl等が考慮され、その濃度は、0.1〜3Mとすることが好ましく、より好ましくは、0.5〜2.5Mである。また、マグネシウムイオンとしては、MgCl2等が適用でき、その濃度は20〜100mM、より好ましくは、30〜50mMとする。これらの金属陽イオンがDNA固定化金コロイド溶液中に共存することにより、相補的遺伝子を添加した際に、金コロイド粒子表面のDNA鎖と二重らせんが形成され、金コロイド粒子どうしの凝集が円滑に生じる。
更に、本発明は、前記配列検知方法を含む、ターゲットDNAの末端一塩基変異検出方法にも関する。その詳細は、前述の通りである。
更に、本発明は、DNAを増幅する工程および/またはプライマー一塩基伸長反応の後に、前記配列検知方法を行うことを特徴とする、遺伝子診断方法にも関する。DNAの増幅工程およびプライマー一塩基伸長反応は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。DNAを増幅する工程および/またはプライマー一塩基伸長反応の後に、前述の本発明の配列検知方法を行うことにより、遺伝子診断、例えば、患者の一塩基多型の診断を行うことができる。これにより、例えば、その患者の薬物副作用に対する危険因子を評価することが可能である。具体的には、患者から採取した細胞を公知の方法で処理してDNAを抽出する。抽出したDNAのうち、目的の一塩基を含む領域を増幅する。その後、プライマー一塩基伸長反応により、目的の一塩基をプライマーの3’末端にコピーする。その後、前述の本発明の配列検知方法を行うことにより、金コロイド粒子の凝集体の形成の有無によって、目的の一塩基の種類を判定することができる。更に、本発明の遺伝子診断方法は、病原体由来DNAの検出にも有効である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
直径15nmの金粒子を含むコロイド溶液を購入した。粒子濃度は1.4×1012 mL-1(=2.3 nM)であった。この金粒子は、非特許文献2の方法に少し修正を加えた以下の方法によって一本鎖DNAで修飾した。すなわち、3 nmolのチオール化DNA HS-(CH2)6-5'-TAC GCC ACC AGC TCC-3' を、1 mLの金コロイド粒子溶液と50℃で16時間インキュベートした。この溶液に必要な塩類を添加して、0.1MのNaCl、10mMのリン酸塩緩衝液(pH 7)に変え、50℃で40時間反応させた。未反応のチオール化DNAを除去するために、溶液を14000rpmで25分間遠心分離し、上清を上記組成の緩衝液1 mLで置換した。同じ条件で再度遠心分離を行い、沈殿を上記組成の緩衝液0.5 mLに再分散した。
金コロイド粒子表面上に固定化されたチオール化DNAの数を評価するために、ジチオスレイトール(DTT)を添加し(終濃度=10 mM)、DNAを金コロイド粒子から遊離させた。オリグリーン(OliGreen) ssDNA定量キット(モレキュラープローブ社、米国)を使用して、溶液中のDNA濃度を測定したところ、約1μMであった。計算すると、1 粒子当たり約200のDNA (50pmol・cm-2)に相当する。
様々なNaCl濃度で、溶液色の観察により、および可視スペクトルの測定により金コロイド粒子の凝集挙動を調査した。
下記実験はすべて、室温(約25℃)で実施された。DNAを固定化していない金コロイド粒子は、0.1M のNaClで直ちに凝集し、溶液は紫色に変化した。対照的に、DNAを固定化した金コロイド粒子は、2.5MまでのNaCl濃度範囲内で、色変化は示さなかった(図6A)。粒子表面に固定化されたDNAが、金コロイド粒子の分散を安定化したことが分かる。次に、固定化DNAに相補的な配列を有するターゲットDNAを、双方のDNA量が等しくなるように加えた(図6B)。NaCl濃度が0.5M以上の場合、粒子凝集を意味する紫色への明確な変化が直ちに観察された(10分以内)。この非架橋系での凝集プロセスは、数十分から数時間を要する架橋系での凝集プロセスよりはるかに迅速である。この違いは、凝集メカニズムが異なることに起因していると考えられる。この非架橋系では、金コロイド粒子の表面上にDNAの二本鎖が形成されたとき、この二本鎖が溶液中のナトリウムイオンを強く引き付けることにより、金コロイド粒子周辺の電荷が中和されるために凝集が起きると考えられる。凝集の駆動力はロンドン−ファン・デル・ワールス引力であり、この力はある程度離れた距離からでも作用し、迅速な凝集へと導く。他方、架橋系では、凝集の速度論は、比較的遅いブラウン運動をする金コロイド粒子のランダムな衝突に支配される。図6のAおよびBに対応する可視スペクトルを図7にA及びBとして示す。0.5MのNaClの存在下で、吸光ピークは、相補的なターゲットDNAの添加後10分間で525nmから560nmへ移動した。
この系は、5'末端の一塩基ミスマッチに対して特別高い感度を有する。図6のCに示すような、5'末端の一塩基が置換されたターゲットDNAに対して上記と同様の実験を実施したところ、あらゆるNaCl濃度で全く色の変化が起きなかった。さらに、可視スペクトルは、図7のターゲットを含まない場合におけるAの曲線と判別不能であった。
末端ミスマッチについてのこの異常な感度に対する解釈は困難であるが、本発明者らは、1つの塩基でも一本鎖として働き、それがDNA-金コロイド粒子複合体の最外殻に位置する場合には、マイナスの電荷を維持して粒子凝集を妨げると考える。
実施例2
NaCl濃度を1Mとして、実施例1と同様の方法で、様々な配列を有するプローブDNAおよびターゲットDNAを用いて実験を行った。結果を表1に示す。
ターゲットa2のように、固定末端側に変異があっても、完全相補鎖と同じように凝集が観察された。一方、ターゲットa4のようなランダム配列では、粒子表面で二本鎖形成が起こらないため、金コロイド粒子の凝集は観察されなかった。ターゲットa5〜a9のように、自由末端に挿入、欠損、置換などの変異を有するサンプルでも、凝集は起こらなかった。この挙動は、置換の結果生じたミスマッチの種類には関係しなかった(a7〜a9参照)。これらに完全相補する、別のプローブDNA(B〜D)を用いた場合は、金コロイド粒子が凝集することも確認した。さらに30塩基までの様々な長さ、配列を持ったプローブDNA(E〜K)を用いて実験したところ、完全相補ターゲットを加えたときには金コロイド粒子は凝集し、末端置換ターゲットを加えたときは凝集せず、例外はなかった。また、プローブの向きを逆転させて3'末端を金コロイド粒子に固定化した場合(M)も同様であった。
実施例3
実施例1で使用したものと同様のDNA修飾金コロイド粒子を28nM、NaClを1.0M、Tween 20を0.01%含む水溶液を調製し,金コロイド溶液とした。
実施例1で使用した2種類のターゲットDNAの凍結乾燥物を、脱イオン水に溶解した後、NaClおよびTween 20を添加し、6.0μM DNA、1.0M NaCl、0.01% Tween 20の最終濃度に調整し、ターゲットDNA溶液とした。以下、金コロイド粒子表面に固定された1本鎖DNAと完全相補性の配列を有するターゲットDNAをT1、末端一塩基変異を有するターゲットDNAをT2という。
3つの導入用流路を有するマイクロチップを、先に説明した方法に従って作製し、1時間脱気した。5分後、室温(約25℃)で、金コロイド溶液、T1溶液、およびT2溶液を、それぞれ、中央導入用流路、左側導入用流路、および右側導入用流路から、各3μlずつ導入した。数分後、40倍の対物レンズおよびデジタルスチルカメラ(オリンパス、キャメディア(Camedia) C-4040)を有する倒立顕微鏡によって、明視野像を記録した。得られた明視野像を図9に示す。金コロイド溶液とT1溶液との境界部分に、黒色の線が徐々に現れ、金コロイド粒子凝集体の堆積が観察された。それに対し、金コロイド溶液とT2溶液との境界部分には、凝集体は観察されなかった。
実施例4
ヒト培養細胞株遺伝子の検定

PCR: 大腸がん培養細胞株HCT-15、WiDr、Sw480、DLD-1、COLO205を東北大学加齢医学研究所医用細胞資源センターより供給を受けた。キアゲンQIAamp DNA Mini Kitを用いて、各細胞からDNAを抽出、精製した。がん遺伝子K-rasのコドン12を含む配列をPCRにより増幅した。プライマーの配列は、5'-GAC TGA ATA TAA ACT TGT GG-3' および 5'-CTA TTG TTG GAT CAT ATT CG-3'であった。 100 μlのスケールでPCRを行った。反応液の組成は、50 ngのゲノムDNA、各プライマー(最終濃度1 μM)、 2.5 U ピロベストDNAポリメラーゼ(Pyrobest DNA polymerase) (タカラ(TaKaRa))、ピロベスト反応バッファー(Pyrobest reaction buffer)、dNTP(最終濃度200 μM)であった。 94℃ 30秒、55℃ 30 秒、72℃ 1分の条件で30サイクル反応を行った。PCR反応生成物に対し、東洋紡(TOYOBO)製のMaExtractorを用いて脱塩とプライマー除去を行った。
プライマー伸長反応: 精製したPCR産物を鋳型として、プライマー伸長反応を20 μlのスケールで行った。プライマーの配列は、5'-GTG GTA GTT GGA GCT-3'であり、K-rasコドン7-11に相当する。以下の反応により、コドン12の最初の一塩基がプライマーに付加される。反応液の組成は、PCR産物(最終濃度約250 nM)、プライマー(最終濃度1 μM)、 4 U サーモシーケナーゼ(ThermoSequenase)(アマシャム(Amersham))、サーモシーケナーゼ反応バッファー(ThermoSequenase reaction buffer)、ddNTP(最終濃度25 μM)であった。 94℃ 30秒、37℃ 30秒、72℃ 30秒の条件で、Nucleic Acids Res. 2002 Mar 15;30(6):e27.に記載の方法に従って、30サイクル反応を行った。
金ナノ粒子凝集反応: プローブDNA(5'-C AGC TCC AAC TAC CAC-3'-(CH2)6-SH)で修飾された金ナノ粒子9.2 nM水溶液 5 μl に、上記プライマー伸長反応生成物を10 μl、NaCl 5 M水溶液を4 μl、Tween 20の1%水溶液1 μlを加えて混合し、氷冷した。結果を図10に示す。鋳型なしでプライマー伸長反応を行った試料では金ナノ粒子は分散したままであったのに対し、鋳型ありの場合では5種類とも凝集した。この結果から、5種類の細胞すべてにおいて、対立遺伝子の少なくとも片方が、プローブDNAに相補する、すなわち標的部位に塩基Gを持つことが示された。別途シークエンシングを行った結果、すべての細胞で両方の対立遺伝子が標的部位に塩基Gを持つことが確認された。以上から、本発明の方法が、細胞から遺伝子の配列情報を得るために有効であることが実証された。
本発明によれば、ハイブリダイゼーションの温度を精密に制御することなく、かつ目視を含む様々な検出方法によってDNAの配列を検知することができる。更に、本発明によれば、ターゲットDNAの末端一塩基を検出することもできる。更に、本発明の方法は、遺伝子診断にも応用することができる。
3'末端にCを有する1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子と5'末端にGを有するターゲットDNAとを用いた例を示す。 本発明で使用し得るマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップの概略構成上面説明図である。 (a)は、図2に示すマイクロチップのA−A線による断面図(概略構成縦断面図)であり、(b)は、図2に示すマイクロチップのB−B線による断面図(概略構成縦断面図)である。 図2に示すマイクロチップの動作を示す説明図であり、(a)は脱気処理を示す説明図であり、(b)は液体の滴下を示す説明図であり、(c)は2液の混合を示す説明図であり、(d)は(c)の一部拡大説明図である。 (a)、(b)、(c)、(d)は、本発明で使用し得るマイクロ流体制御機構を有するマイクロチップの製造過程を示す概略構成説明図である。 実施例1で行った金コロイド粒子の凝集による溶液の色の変化のNaCl濃度依存性を示す。AはターゲットDNAなし、BはターゲットDNAが完全相補、CはターゲットDNAが末端一塩基変異。 実施例1で行った金コロイド粒子の凝集による溶液の色の変化を示す可視光吸収スペクトル。AはターゲットDNAなし、BはターゲットDNAが完全相補。 実施例1で行った金コロイド粒子の凝集体の光学顕微鏡写真。AはターゲットDNAなし=凝集せず、BはターゲットDNAが完全相補=凝集。(写真の横幅=365μm) 実施例3で得られた倒立顕微鏡による明視野像である。 実施例4の結果を示す。

Claims (11)

  1. 表面に1本鎖DNAを固定した金コロイド粒子とターゲットDNAとを溶液中でハイブリダイズさせて、金コロイド粒子に固定された1本鎖DNAの金コロイド粒子に固定されていない側においていずれのDNA鎖も突出していない末端を有する2本鎖DNAを形成し、ハイブリダイズ後の金コロイド粒子の凝集体の形成の有無により、ターゲットDNAの末端一塩基の情報を得る方法であって、
    前記ハイブリダイズを0〜30℃の範囲の温度で行い、かつ
    前記凝集体が形成された場合には、少なくとも、金コロイド粒子に固定された1本鎖DNAの金コロイド粒子に固定されていない側の末端の一塩基と、この前記一塩基と対向する前記ターゲットDNAの末端の一塩基が、相補的であると判定する、前記方法。
  2. 前記金コロイド粒子の凝集体の形成の有無を、溶液の色の変化を測定することによって観察する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記溶液の色の変化の測定を、色が赤から青に変化するのを目視で識別するか、または吸収スペクトルを測定し、最大吸収の長波長側へのシフトを観測することにより行う、請求項2に記載の方法。
  4. 前記溶液に基板を共存させ、前記凝集体を該基板上に堆積させ、堆積した凝集体について凝集体の形成の有無を検出する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記金コロイド粒子の凝集体の形成の有無を、顕微鏡、粒子からの散乱光の検知、電気化学的検出、表面プラズモン共鳴、または電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)によって観察する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記ハイブリダイズを、室温で温度制御なしで行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記ハイブリダイズを氷冷下で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記ハイブリダイズを金属陽イオンの存在下で行う請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記金属陽イオンがナトリウムイオンまたはマグネシウムイオンである請求項に記載の方法。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を含む、ターゲットDNAの末端一塩基変異検出方法。
  11. DNAを増幅する工程および/またはプライマー一塩基伸長反応の後に、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を行うことを特徴とする、遺伝子検査方法。
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