JP5403652B2 - 重金属イオンの検出法およびそのための試薬 - Google Patents

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本発明は、重金属イオン、特に二価水銀イオン(以下、「水銀(II)イオン」ともいう)および一価銀イオン(以下、「銀(I)イオン」ともいう)の特異的な検出方法、並びにそのための試薬に関する。
水銀は天然に存在するもの以外に、蛍光灯、(ボタン)電池、農薬などに含まれており、これらの使用や廃棄の過程で、高濃度のまま環境中に放出されることもあり得る。水銀(水銀(II)イオン)は、人体への有害性のため環境中(河川、湖など)や生活排水(含事業所からの排水)における濃度を必要に応じモニターする必要がある(例えば環境庁告示第59号では、水銀イオンの環境基準値は0.0005mg/L以下、土壌汚染対策法における土壌含有基準量は15mg/kg以下、底質暫定除去基準は河川および湖沼においては25ppm以上という基準が定められている)。
重金属の調査対象において、土壌汚染対策法では、汚染の有無や状況を把握する場合、公定法による分析をおこなうことが決められている。公定法は分析精度・感度が非常に高い方法であるが、(1)分析機器やランニングコストが高価、(2)分析時間が長くかかる、(3)分析においてある程度の熟練が必要である、などの理由により汎用的なモニタリング手法として普及させるのは難しい側面もある。
従って、必要性の高い水銀(II)イオン分析の公定法を必要に応じて補完できるような、経済的かつ簡便な分析法(簡易分析法)の開発が求められている。
そのような公知技術はいくつか存在するが、例えば有機色素化合物を用いる比色検出は、有機色素の水への溶解性が低いため有機溶媒もしくは水−有機溶媒混合液を使用することが多く、現場における「その場」計測は困難である。またイオン選択性が低いものが多い上に、発色状態が、温度・pH・時間などの要因の影響を受けやすく、結果が不安定という欠点がある。
また、簡易水質検知管による検出は、水銀イオン用検知管として「ヨシテスト」(櫻護謨株式会社)が市販され、公定法を補完する簡易測定法として使用されていたが、現在は製造中止となっていて、同様の性能を有する製品は現在販売されていない。
非特許文献1および非特許文献2には、水銀(II)イオンはチミン同士からなるミスマッチ(以下、「T-Tミスマッチ」という)の中に入り込んでT-Hg-Tコンプレックス(塩基対)を形成することが記載されており、この現象を応用したHgセンサーシステムもいくつか報告されている(非特許文献3、4、5)。しかし、これらのシステムは、感度は高いが、蛍光光度計などの測定装置やシグナル増幅のための補助酵素が必要であり、環境調査の現場等でサンプリングして直ちに結果を得たい場合には不向きである。
T-Hg-Tコンプレックス形成を、金コロイド粒子の凝集による液色の変化を指標として検出することによる水銀(II)イオンの測定方法が記載されている(非特許文献5、6、7)。しかしながら、これらの方法は、精密な試料溶液の温度制御が必要で、かつ判定に長時間を要する、あるいは水銀(II)イオンだけでなく鉛(II)イオンにも応答してしまうため、鉛(II)イオンに対するマスキングが必要で、その結果、水銀(II)イオンに対する応答性も低下する、等といった問題点を抱えている。
ところで、本発明者らの一人である前田と共同研究者は、以前、ハイブリダイゼーションの温度を精密に制御することなく、目的とするDNAの末端の一塩基変異を検出しうる方法として、該一塩基変異部位を末端に有する、標的DNAと相補的な一本鎖オリゴDNAの反対の末端を金コロイド粒子表面に固定化したコンジュゲートの分散液を、標的DNA含有試料溶液と混合して両DNAをハイブリダイズさせたとき、液色が赤色から淡青色に変化した場合は末端の塩基対が相補的であり、液色の変化が起こらなかった場合は末端の塩基対がミスマッチである(即ち、試料中の標的DNAは一塩基変異を有する)と判定する方法を開発した(特許文献1、非特許文献8)。この方法は、金コロイド粒子に固定化されていない末端(以下、「自由末端」ともいう)にミスマッチ塩基対がある場合には、金コロイド粒子の凝集が起こらないことの発見に基づくものである。一方で、金コロイド粒子に固定化されている側の末端にミスマッチ塩基対があっても、金コロイド粒子の凝集が起こることから(特許文献1)、自由末端の塩基対の相補性が金コロイドの凝集に重要であることが示唆されている。
特開2004-275187号公報 J. Am. Chem. Soc. 128, 2172-2173 (2006) J. Am. Chem. Soc. 129, 244-245 (2007) Angew. Chem. Int. Ed. 43, 4300-4302 (2004) Tetrahedron Lett. 46, 2441-2443 (2005) Angew. Chem. Int. Ed. 47, 3927-3931 (2008) Angew. Chem. Int. Ed. 46, 4093-4096 (2007) Chem. Commun. 2242-2244 (2008) J. Am. Chem. Soc. 125, 8102-8103 (2003)
本発明の目的は、日常的な環境モニタリングや工場排水の管理などにおいて、特別な分析機器や大型の装置類を用いることなく、簡便・迅速かつ選択的に水銀(II)イオンのみを高感度で検出する方法およびそのための検出用試薬を提供することである。
本発明者らは、上記の末端一塩基変異の検出方法の研究をさらに進める過程で、ハイブリダイゼーションの結果形成されるDNA二重鎖の自由末端の塩基対が相補的であっても、自由末端から2番目もしくは3番目にミスマッチがある場合には、意外にも、高塩濃度条件下でも安定に金コロイド粒子が分散し得ることを見出した。そこで、自由末端から2番目もしくは3番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を金コロイド粒子に固定化したコンジュゲートを作製して、高塩濃度溶液中に分散させ、これに水銀(II)イオン含有溶液を添加した結果、極めて短時間で液色の変化が認められ、金コロイド粒子の凝集が起こることが明らかとなった。該コンジュゲートは鉛(II)イオンを含む他の重金属イオンには全く応答せず、高い水銀(II)イオン選択性を有することが確認された。尚、自由末端にT-Tミスマッチがある場合には、水銀(II)イオンが存在しても金コロイド粒子の凝集は起こらなかった。また、自由末端から2番目もしくは3番目にT-Tミスマッチ以外のミスマッチが存在する場合も、水銀(II)イオンによる金コロイド粒子の凝集は起こらなかった。以上より、自由末端から2番目もしくは3番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を金コロイド粒子に固定化したコンジュゲートを用いれば、被験液中の水銀(II)イオンのみを簡便・迅速かつ高感度に検出できることが確認された。さらに、本発明者らは、上記検討の過程で、自由末端から3番目にシトシン同士からなるミスマッチ(以下、「C-Cミスマッチ」という)を有するDNA二重鎖を金コロイド粒子に固定化したコンジュゲートを用いれば、被験液中の銀(I)イオンを同様に検出できることをも見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は次の通りである。
[1]金コロイド粒子表面にDNA二重鎖が固定化されてなるコンジュゲートであって、該DNA二重鎖は、金コロイド粒子に固定されていない末端の塩基対が相補的であり、かつ該末端から2番目にチミン同士からなるミスマッチを含むか、該末端から3番目にチミン同士もしくはシトシン同士からなるミスマッチを含む、コンジュゲート。
[2]チミン同士からなるミスマッチを含む、上記[1]記載のコンジュゲート。
[3]上記[2]記載のコンジュゲートを含む、二価水銀イオンの検出用試薬。
[4]シトシン同士からなるミスマッチを含む、上記[1]記載のコンジュゲート。
[5]上記[4]記載のコンジュゲートを含む、一価銀イオンの検出用試薬。
[6]被験液中の二価水銀イオンを検出する方法であって、該被験液と上記[2]記載のコンジュゲートの分散液とを、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下で混合する工程、および該混合液中の金コロイド粒子の凝集を検知する工程を含む、方法。
[7]被験液中の一価銀イオンを検出する方法であって、該被験液と上記[4]記載のコンジュゲートの分散液とを、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下で混合する工程、および該混合液中の金コロイド粒子の凝集を検知する工程を含む、方法。
[8]金コロイド粒子の凝集を、液色の変化を指標として検知することを特徴とする、上記[6]又は[7]記載の方法。
[9]塩がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である上記[6]又は[7]記載の方法。
本発明の方法により、環境中の水質検査における水銀(II)イオンの検出、測定及び分析を、特別な装置や大型分析機器を必要とせずに、簡便・迅速に実施することが可能となる。本発明の方法により、試料を採取する場所から移動することを要せずに水質検査を実施でき、且つ公定法を必要に応じて補完できる、精度の高い検査結果を得ることができる。
本発明は、金コロイド粒子表面にDNA二重鎖が固定化されてなるコンジュゲート(以下、「本発明のコンジュゲート」ともいう)を提供する。該コンジュゲートにおけるDNA二重鎖は、金コロイド粒子に固定されていない末端(自由末端)の塩基対が相補的であり、かつ該末端から2番目にチミン同士からなるミスマッチを含むか、該末端から3番目にチミン同士もしくはシトシン同士からなるミスマッチを含む。
特許文献1(特開2004-275187号公報)には、金コロイド粒子表面に一本鎖DNAが固定化されたコンジュゲートが記載され、該一本鎖DNAに完全相補的あるいは自由末端もしくは金コロイド粒子に固定されている側の末端の塩基がミスマッチである相補鎖DNAがハイブリダイズし、結果的に金コロイド粒子表面にDNA二重鎖が固定化されたコンジュゲートも開示されている。しかしながら、自由末端から2番目もしくは3番目の塩基がミスマッチであるコンジュゲートは記載されておらず、本発明のコンジュゲートは新規な複合体分子である。
本発明のコンジュゲートは、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集するような塩濃度条件下においても金コロイド粒子の凝集が起こらないことを特徴とする。上記特許文献1によれば、自由末端にミスマッチがあるDNA二重鎖では金コロイド粒子の凝集が起こらないのに対し、金コロイド粒子に固定されている側の末端塩基などに一塩基のミスマッチがあっても、自由末端が相補的であれば金コロイド粒子の凝集が起こることから、自由末端から2番目もしくは3番目の塩基対がミスマッチである本発明のコンジュゲートにおいて、高塩濃度条件下でも金コロイド粒子の凝集が起こらないことは、予期せぬ効果である。
本発明の第1のコンジュゲートは、自由末端から2番目もしくは3番目にT-Tミスマッチを有する。該コンジュゲートは、水銀(II)イオンの存在下で、分子内に該イオンを取り込んでT-Hg-Tコンプレックスを形成することによって擬似的に完全相補的なDNA二重鎖を形成することができる。したがって、該コンジュゲートの分散液中に水銀(II)イオンが存在すると、高塩濃度条件下では金コロイド粒子の凝集が起こる。金コロイドは安定に分散した状態では液色は赤色であるが、金コロイド粒子が凝集・沈殿すると液色は淡青色(あるいは無色)に変化するので、水銀(II)イオンの存在を目視で検知することが可能である(図3)。水銀(II)イオンがT-Tミスマッチの中に入り込んでT-Hg-Tコンプレックス(塩基対)を形成することは公知であるが、後記比較例に示されるように、自由末端にT-Tミスマッチが存在する場合には、水銀(II)イオンが存在しても金コロイド粒子の凝集は起こらないので、自由末端から2番目もしくは3番目にT-Tミスマッチを有する場合に限り、金コロイドの凝集が起こることは予期せぬ発見である。
しかも、本発明の第1のコンジュゲートは、水銀(II)イオンに対して高い選択性を有しており、他の金属イオン(例えば、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Pb2+等)が存在しても金コロイド粒子の凝集は起こらない。特に、従来T-Hg-Tコンプレックス形成を利用した水銀(II)イオンの検出では、鉛(II)イオンにも応答してしまうことが欠点として指摘されていることから、本発明の第1のコンジュゲートが鉛(II)イオンに応答しないことは、全く予想外の有利な特性である。
本発明の第2のコンジュゲートは、自由末端から3番目にC-Cミスマッチを有する。該コンジュゲートの分散液中に銀(I)イオンが存在すると、高塩濃度条件下で金コロイド粒子の凝集・沈殿が起こるので、銀(I)イオンの存在を、液色の変化を指標として目視で検知することが可能である(図12)。
本発明のコンジュゲートにおけるDNA二重鎖は、一方の鎖の一端のみが金コロイド粒子表面に固定化され、他方の鎖が該固定化された鎖にハイブリダイズすることによって金コロイド粒子と複合体を形成するものであってもよいし、後記実施例5に示されるように、一本鎖DNAの中央部分で金粒子表面に固定化され、該中央部を挟む両側の配列が対向して相補鎖を形成する(即ち、ヘアピン(ステムループ)構造をとる)ものであってもよい。この場合、一本鎖DNAの両端が形成されるDNA二重鎖の自由末端となり、両端から2番目もしくは3番目の塩基同士がミスマッチ塩基対を形成する。ループ長としては、3〜20塩基が挙げられる。
DNA二重鎖の塩基長は、金粒子表面に直接結合している鎖の鎖長として、例えば、5〜50塩基、好ましくは10〜30塩基、より好ましくは12〜20塩基の範囲で適宜選択することができる。相補鎖DNAの塩基長は必ずしも同じである必要はなく、水銀(II)イオンまたは銀(I)イオンの存在下で、金コロイド粒子の凝集を生じるのに十分な塩基対を形成しうる限り、金粒子表面に直接結合している鎖の、固定化末端側の1ないし数(例、2、3、4または5)塩基に対向する塩基を欠失していてもよい。DNA二重鎖の塩基配列は、自由末端から2番目の塩基がT-Tミスマッチであるか、自由末端から3番目の塩基がT-TミスマッチもしくはC-Cミスマッチである限り、いかなる配列であってもよい。
本発明のコンジュゲートに用いるDNA鎖は、例えば、市販のDNA自動合成機(例えばアプライドバイオシステムズ社(ABI社、Applied Biosystems Inc.)のDNAシンセサイザー394型等)を用いて、ホスホアミダイト法により各鎖を化学合成・修飾したもの、また、ホスホアミダイト法の別法としてリン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、チオホスホネート法等、いかなる方法で化学合成・修飾されたものであっても良い。あるいは、このようなDNA鎖は一般に市販品として購入することもできる。本発明のコンジュゲートに用いるDNA二重鎖は、上記手法によって得られる一本鎖DNAを適当な条件下でハイブリダイゼーションさせることにより得ることができる。また、一本鎖DNAがヘアピン(ステムループ)構造をとることによってDNA二重鎖を形成する場合、該一本鎖DNAを上記と同様にして調製し、適当な条件下で自己構造形成させることにより得ることができる。
DNA二重鎖は、金コロイド粒子への固定化のために、金コロイド粒子に固定化されるDNA鎖の固定される側の末端を、チオール基などの金コロイド粒子に化学吸着し得る置換基で修飾することができる。該置換基とDNA鎖末端とは、直接結合していてもよいし、例えばC3〜C12アルキルなどのリンカー(スペーサー)を介して連結されていてもよい。金コロイド粒子に固定化される末端は、5’末端であっても3’末端であってもよい。また、一本鎖DNAがヘアピン(ステムループ)構造をとることによってDNA二重鎖を形成する場合は、該構造を形成した際のループ部分のうち少なくとも一箇所の核酸塩基のインナー修飾、あるいはリン酸ジエステル結合部位の化学修飾によりリンカー(スペーサー)などを介してチオール基などの金コロイド粒子に化学吸着し得る置換基を導入し、金コロイド粒子に固定化することができる。
本発明のコンジュゲートに用いる金コロイド粒子は、分散媒中に分散させた際にコロイド状に分散しうるものであれば特に制限されないが、通常5〜200nm、好ましくは15〜100nmの粒子径を有する金微粒子を用いることができる。金コロイド粒子は、例えば、テトラクロロ金(III)酸4水和物水溶液を加熱・撹拌しながらクエン酸三ナトリウムを加えることにより取得することができる。あるいは、このような金コロイド粒子は一般に市販されている。
金コロイド粒子表面へのDNA二重鎖の固定化は、例えば、およそ1×108〜1×1014粒子/mLの金コロイド粒子溶液に、一方の末端にチオール基などの金コロイド粒子に化学吸着し得る置換基が導入された一本鎖DNAを5μMの濃度となるように添加し、50℃で16時間インキュベート後、必要な塩類を添加することにより溶液組成を0.1M NaCl、10mM リン酸緩衝液(pH 7)とし、さらに50℃で40時間インキュベートすることにより実施することができる。未結合の末端修飾一本鎖DNAを遠心分離によって取り除いた後、その相補鎖DNA(自由末端から2番目もしくは3番目の塩基がT-Tミスマッチ、または自由末端から3番目の塩基がC-Cミスマッチである。以下、単に相補鎖DNAと略記する場合がある)を等量添加し、金コロイド粒子上でハイブリダイゼーションさせることにより、DNA二重鎖を固定した金コロイド粒子、即ち本発明のコンジュゲートが得られる。上記ハイブリダイゼーションは、例えば、4〜40℃の温度で行うことができる。ハイブリダイゼーションの際に、金属イオンを共存させることができる。使用する金属イオンは特に限定されないが、好ましくはナトリウムイオン、またはマグネシウムイオンである。ナトリウムイオンとしては、NaNO3等が考慮され、その濃度は、0.1〜3Mとすることが好ましく、より好ましくは、0.5〜2.5Mである。また、マグネシウムイオンとしては、Mg(NO3)2等が適用でき、その濃度は0.1〜30mM、より好ましくは、0.3〜20mMである。
1つの金コロイド粒子に対するDNA鎖の固定量(本数)は、例えば、Anal. Chem. 72, 5535-5541 (2000)に記載されている蛍光プローブ法によって適宜決定することができる。本発明者らの一人である前田と共同研究者は、上記非特許文献8およびAnal. Biochem. 350, 162-164 (2006)において、上記による1つの金コロイド粒子に対するDNA鎖の固定量は、金コロイド粒子の粒径に依存し、15〜50nmの金コロイド粒子の場合、通常100〜2000本の範囲であることを記載している。金コロイド粒子に対する1本鎖DNAの固定量は、例えば、金コロイド粒子溶液の濃度や該溶液に添加する末端修飾DNA二重鎖の濃度や固定化反応の時間などで制御することができる。
あるいは、本発明のコンジュゲートは、チオール基など金コロイド粒子に化学吸着しうる官能基で一方の末端が修飾された一本鎖DNAと、相補鎖DNAを溶液中で適当な条件下においてハイブリダイズさせDNA二重鎖とした後、上記のように金コロイド粒子表面に固定化し、未結合の末端修飾DNA二重鎖を遠心分離によって取り除くことにより調製することもできる。
また、一本鎖DNAがヘアピン(ステムループ)構造をとることによりDNA二重鎖が形成される場合は、一本鎖DNAのうちヘアピン構造を形成した際のループ部分に金コロイドに吸着し得る置換基が導入され、これを上記と同様の手法で金コロイド粒子表面に固定化し、未結合の一本鎖DNAを遠心分離によって除去することにより、本発明のコンジュゲートを得ることができる。
本発明はまた、(1)被験液と本発明の第一のコンジュゲートの分散液とを、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下で混合し、該混合液中の金コロイド粒子の凝集を検知することによる、該被験液中の水銀(II)イオンの検出方法、並びに(2)被験液と本発明の第二のコンジュゲートの分散液とを、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下で混合し、該混合液中の金コロイド粒子の凝集を検知することによる、該被験液中の銀(I)イオンの検出方法を提供する。
被験液としては、例えば、雨水、河川水、湖沼水、海洋水をはじめとするあらゆる水域から採取した水、土壌等を純水等に溶解・懸濁して得られる上清などが挙げられるが、それらに限定されない。被験液は採取した液体をそのまま用いてもよいし、予想される水銀(II)イオンもしくは銀(I)イオン濃度に応じて、適宜希釈して用いても、逆に濃縮して用いてもよい。後記実施例に示されるように、本発明の一実施態様においては、約0.5〜約1μM(約0.1〜約0.2ppm)以上の水銀(II)イオン濃度であれば目視により検出可能であるので、例えば、定められた基準値が本発明コンジュゲートの検出下限よりも低ければ、河川などから採取した試料中の水銀(II)イオンを適当な手段・手法を用いて濃縮処理し、試料中における水銀(II)イオンが基準値を超える濃度であるかどうかを本発明コンジュゲートによって判定することができる。そのような公知技術はいくつか存在し、あらゆる公知の方法を用いることができる。
本発明のコンジュゲートの分散液中の金コロイド粒子濃度は、該粒子が分散した状態で目視により赤色に呈色していることが確認できる程度であれば特に制限はないが、例えば、1×107〜1×1015粒子/mLの範囲で適宜選択されうる。本発明のコンジュゲートを分散させる分散媒としては、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する濃度の塩が溶解した水もしくは緩衝液(例、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、3-モルホリノプロパンスルホン酸(以下、MOPS)緩衝液など)が挙げられる。塩としては、例えばナトリウム塩(例、NaNO3、NaClO4等)、カリウム塩(例、KNO3、KClO4等)、リチウム塩(例、LiNO3、LiClO4等)などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩(例、Mg(NO3)2、MgSO4等)、カルシウム塩(例、Ca(NO3)2、CaSO4等)などのアルカリ土類金属塩などを用いることができるが、それらに限定されない。DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度は、塩の種類や温度によっても異なるが、室温(25℃)でナトリウム塩溶液を用いる場合、例えば0.3〜3M、好ましくは0.5〜2.5Mであり、マグネシウム塩溶液を用いる場合は、例えば0.1〜30mM、好ましくは0.3〜20mMである。
本発明の方法において、被験液と本発明のコンジュゲートの分散液との混合は、一本鎖DNAの一方の末端を固定化した金コロイド粒子の分散液に、被験液と相補鎖DNAとを混合することによって行ってもよい。被験液と相補鎖DNAとは、金コロイド粒子分散液に同時に混合してもよいし、いずれか一方を先に混合してもよく、いずれの場合であっても、凝集反応は被験液と相補鎖DNAの両方が金コロイド粒子分散液と混合された時点で開始される。
本発明の方法において、金コロイド粒子の凝集を検出する際の反応系の体積は、特に限定されないが、例えば500μL以下が好ましく、200μL以下がより好ましく、100μL以下が更に好ましい。
本発明における金コロイド粒子の凝集反応は極めて速やかに進行するので、被験液と本発明のコンジュゲートの分散液とを混合してインキュベートする時間としては、例えば、1〜10分、好ましくは3〜7分程度が挙げられる。反応温度は特に制限されないが、例えば4〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃で反応を行うことができる。
本発明では、金コロイド粒子の凝集体の形成の有無を、溶液の色の変化を測定することによって確認することができる。本発明のコンジュゲートは、DNA二重鎖の自由末端が相補的であり、該末端から2番目もしくは3番目の塩基にミスマッチが存在することにより、該DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下においても、安定に分散して存在するので、該コロイド溶液は赤色を呈する。それは本発明で用いられる大きさの金コロイド粒子が表面プラズモン共鳴により520nm付近に強い吸光ピークを持つためである。このピークは粒子径が大きくなるに従い長波長側にシフトし、溶液は紫色又は青色を呈する。金コロイド粒子が凝集すると、粒子径が大きくなるのと同様の効果を生じて溶液色が変化する。本発明では、水銀(II)イオンもしくは銀(I)イオンの存在による金コロイド粒子の凝集を、この溶液の色の変化を測定することにより観察することができる。溶液の色の変化の測定は、溶液の色が赤から淡青(凝集によりコロイド粒子が沈殿するため、目視上は無色に見える場合もある)に変化するのを目視で識別するか、または吸収スペクトルを測定し、表面プラズモン共鳴に因る吸収ピーク(520nm付近)の長波長側へのシフト、あるいは吸光度の低下を観測することによって行うことができる。
また、本発明は、本発明の第一のコンジュゲートを含んでなる、水銀(II)イオンの検出用試薬、および本発明の第二のコンジュゲートを含んでなる、銀(I)イオンの検出用試薬を提供する。該試薬としては、例えば、本発明のコンジュゲートを水もしくは適当な緩衝液(例、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、MOPS緩衝液など)中に分散させたものが挙げられる。該分散媒には、本発明のコンジュゲートを構成するDNA二重鎖が完全相補的であれば、金コロイド粒子が凝集する濃度の塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩(例、NaNO3、NaClO4等)など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩(例、Mg(NO3)2、MgSO4等)など)等を含有していてもよい。本発明のコンジュゲートを含む試薬は、4〜10℃で保存することができる。
本発明のコンジュゲートを含んでなる試薬は、水銀(II)イオンもしくは銀(I)イオンの検出・測定のために必要であるか、もしくは用いることができる他の試薬・容器などとともにキット化することもできる。そのようなキットの他の構成要素としては、例えば、被験液と上記試薬との混合液中の塩濃度を調節するための塩溶液、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩(例、NaNO3、NaClO4等)など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩(例、Mg(NO3)2、MgSO4等)など)等の水溶液や、水銀(II)イオンもしくは銀(I)イオンの標準試料などが含まれ得るが、それらに限定されない。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の金コロイド粒子の凝集実験は、すべて室温(約25℃)下で実施した。
[参考例1]
平均直径15nmの金粒子を含むコロイド溶液をBritish BioCell International社より購入した。粒子濃度は1.4×1012粒子/mLであった。この金粒子は、以下の方法によって一本鎖DNAで修飾した。すなわち、3nmolのチオール化DNA、HS-(CH2)6-5'-TAC GCC ACC AGC TCC-3'(配列番号1)を、1mLの金コロイド粒子溶液と50℃で16時間インキュベートした。この溶液に必要な塩類を添加して、溶液組成が0.1MのNaCl、10mMのリン酸塩緩衝液(pH 7)となるように調整し、50℃で40時間反応させた。未反応のチオール化DNAを除去するために、溶液を14000rpmで25分間遠心分離し、上清を上記組成の緩衝液1mLで置換した。同じ条件で再度遠心分離を行い、沈殿を上記組成の緩衝液0.5mLに再分散した。
得られた一本鎖DNAを固定化した金コロイド粒子の種々のNaCl濃度条件下での凝集挙動を調べた。
その結果、一本鎖DNAを固定化した金コロイド粒子は、2.5MまでのNaCl濃度範囲内で、色変化は示さなかった(図1A)。次に、固定化したDNAに完全相補的な配列(配列番号2)を有するDNAを、双方のDNA量が等しくなるように加えた。その結果、NaCl濃度が0.5M以上の場合、粒子凝集を意味する無色(淡青色)への明確な変化が直ちに観察された(10分以内;図1B)。一方、固定化したDNAと金コロイド粒子に固定化されていない自由末端の塩基のみにミスマッチを有するDNA(配列番号3)を同様に加えた場合、2.5MまでNaCl濃度を上げても金コロイド粒子の凝集は起こらなかった(図1C)。
[参考例2]
参考例1と基本的には同様にして、5’末端をチオール化した一本鎖DNA(配列番号4)を固定化した金コロイド粒子(平均粒径40nm)を作製した。1M NaNO3溶液に該粒子を分散させ、該DNAと完全相補的な配列(配列番号5)、自由末端(配列番号6)、自由末端から2番目(配列番号7)、自由末端から3番目(配列番号8)および自由末端から4番目(配列番号9)にそれぞれミスマッチを有する配列からなる相補鎖DNAを、双方のDNA量が等しくなるように加えた。その結果、自由末端が相補的であっても、自由末端から2番目もしくは3番目にミスマッチがある場合には、高塩濃度条件下においても金コロイド粒子が安定に分散し、液色の変化は見られなかった(図2)。
[実施例1]
溶液中の塩濃度(NaNO3又はNaClO4濃度)を1M、Hg2+濃度を5μMにして、参考例2と同様の方法で、自由末端(配列番号6)、自由末端から2番目(配列番号7)、自由末端から3番目(配列番号8)にミスマッチを有する配列からなる相補鎖DNAを用いて実験を行った。その結果、自由末端から2番目にT-Tミスマッチを生じる相補鎖DNAを用いた場合でのみ,Hg2+に応答した凝集が見られた(図3)。
[実施例2]
金コロイド固定化DNA及び相補鎖DNAの組み合わせに、自由末端から2番目の塩基対にT-Tミスマッチを生じるAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC TCT C-3’(配列番号4)及び3’-ATG CGG TGG TCG AGT G-5’(配列番号6)を用い、1M NaNO3の濃度条件下、0〜2.5μMまでの様々なHg2+濃度で凝集反応を観察し(図4a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図4b)。その結果、1.0μM以上のHg2+濃度であれば、目視または吸光度変化の測定により検知できることがわかった。
[実施例3]
金コロイド固定化DNA及び相補鎖DNAの組み合わせに、やはり自由末端から2番目の塩基対にT-Tミスマッチを生じるAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC CTT C-3’(配列番号10)及び3’-ATG CGG TGG TCG GAT G-5’(配列番号11)を用い、1M NaNO3の濃度条件下、0〜2.5μMまでの様々なHg2+濃度で凝集反応を観察し(図5a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図5b)。その結果、自由末端から2番目にT-Tミスマッチが存在するDNA二重鎖を用いると、塩基配列に関係なく1.0μM以上のHg2+濃度であれば、目視または吸光度変化の測定により検知できることがわかった。
[実施例4]
金コロイド固定化DNA及び相補鎖DNAの組み合わせに、自由末端から3番目の塩基対にT-Tミスマッチを生じるAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC TTC T-3’(配列番号12)及び3’-ATG CGG TGG TCG ATG A-5’(配列番号13)を用い、1M NaNO3の濃度条件下、0〜2.5μMまでの様々なHg2+濃度で凝集反応を観察し(図6a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図6b)。その結果、0.5μM以上のHg2+濃度であれば、目視または吸光度変化の測定により検知できることがわかった。
[実施例5]
ヘアピン(ステムループ)構造をとっている一本鎖DNA(図7a)(配列番号14)を固定化した金コロイド粒子を用い、0.5M NaNO3の濃度条件下、0〜2.5μMまでの様々なHg2+濃度で凝集反応を観察し(図7a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図7b)。その結果、一本鎖DNAがステムループ構造をとってDNA二重鎖を形成する場合でも、自由末端から2番目にT-Tミスマッチが存在すれば、1.0μM以上のHg2+濃度であれば、目視または吸光度変化の測定により検知できることがわかった。
[実施例6]
金コロイド固定化DNA及び相補鎖DNAの組み合わせに、自由末端から2番目の塩基対にT-Tミスマッチを生じるAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC CTT C-3’(配列番号10)及び3’-ATG CGG TGG TCG GAT G-5’(配列番号11)を用い、1M NaNO3の濃度条件下、様々な2価陽イオン(濃度:2.5μM)存在下で凝集反応を観察し(図8a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図8b)。その結果、Hg2+以外の、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Co2+、Cu2+、Zn2+及びPb2+に対しては純水を添加した場合と同様に全く反応せず、Hg2+のみに高い選択性を持つことがわかった。
[比較例1]
金コロイド固定化DNA及び相補鎖DNAの組み合わせに、自由末端にT-Tミスマッチを生じるAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC TCC T-3’(配列番号15)及び3’-ATG CGG TGG TCG AGG T-5’(配列番号16)を用い、1M NaNO3の濃度条件下、0〜2.5μMまでの様々なHg2+濃度で凝集反応を観察し(図9a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図9b)。その結果、液色および吸光度変化(A650/A520)は、このHg2+濃度範囲でまったく観察されず、Hg2+イオンの検出ができないことがわかった。
[比較例2]
金コロイド固定化DNA及び相補鎖DNAの組み合わせに、やはり自由末端にT-Tミスマッチを生じるAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC TTC T-3’(配列番号12)及び3’-ATG CGG TGG TCG AAG T-5’(配列番号17)を用い、1M NaNO3の濃度条件下、0〜2.5μMまでの様々なHg2+濃度で凝集反応を観察し(図10a)、溶液の吸光度変化(A650/A520)を記録した(図10b)。その結果、液色および吸光度変化(A650/A520)は、このHg2+濃度範囲でまったく観察されず、Hg2+イオンの検出ができないことがわかった。
[比較例3]
実施例5において、ヘアピン(ステムループ)構造をとっている一本鎖DNA(自由末端にT-Tミスマッチを有する)(配列番号18)を固定化した金コロイド粒子を用い、0.5M NaNO3の濃度条件下、2.5μMのHg2+またはAg+濃度で凝集反応を観察した(図11)。その結果、いずれの場合も液色の変化は観察されず、Hg2+およびAg+イオンの検出ができないことがわかった。
[実施例7]
金コロイド固定化DNAとしてAu-S-5’-TAC GCC ACC AGC TCC T-3’(配列番号15)を、相補鎖DNAとして、自由末端にT-Tミスマッチを生じる3’-ATG CGG TGG TCG AGG T-5’(配列番号16)、自由末端から2番目にC-Cミスマッチを生じる3’-ATG CGG TGG TCG AGC A-5’(配列番号19)及び自由末端から3番目にC-Cミスマッチを生じる3’-ATG CGG TGG TCG ACG A-5’(配列番号20)をそれぞれ用い、1M NaNO3の濃度条件下、5μMのAg+濃度で凝集反応を観察した(図12)。その結果、自由末端から3番目にC-Cミスマッチを生じるDNA二重鎖を用いた場合のみ、液色の変化が観察され、Ag+イオンの検出が可能であることがわかった。
本発明の方法により、迅速に環境中の水銀(II)イオンおよび銀(I)イオンを検出することができ、(特に、緊急を要する場合の)環境汚染源の特定等に役立てることができる。また、本発明の方法は、広大な範囲の水銀(II)イオン分布を比較的省力で調査することもでき、土地利用計画の策定における環境アセスメントの迅速な実施等にも効果を発揮する。
一本鎖DNAを固定化した金コロイド粒子を0.1〜2.5Mの各濃度のNaCl溶液に分散させたときの液色を示す写真(A)、上記金コロイド粒子分散液に完全相補的なDNAをハイブリダイズさせたときの液色の変化を示す写真(B)および上記金コロイド粒子分散液に自由末端にミスマッチを生じる相補鎖DNAをハイブリダイズさせたときの液色の変化を示す写真(C)である。 一本鎖DNAを固定化した金コロイド粒子の分散液に、該DNAと1.完全相補的なDNA、2.自由末端にミスマッチを生じる相補鎖DNA、3.自由末端から2番目にミスマッチを生じる相補鎖DNA、4.自由末端から3番目にミスマッチを生じる相補鎖DNAおよび5.自由末端から4番目にミスマッチを生じる相補鎖DNAをそれぞれハイブリダイズさせたときの液色の変化を示す写真である。 自由末端から2番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合にのみ、水銀(II)イオン存在下で金コロイド粒子の凝集が起こることを示す写真である。 (a)自由末端から2番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合の種々の水銀(II)イオン濃度での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度変化(A650/A520)と水銀(II)イオン濃度との関係を示すグラフである。 (a)自由末端から2番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合の種々の水銀(II)イオン濃度での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度変化(A650/A520)と水銀(II)イオン濃度との関係を示すグラフである。 (a)自由末端から3番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合の種々の水銀(II)イオン濃度での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度変化(A650/A520)と水銀(II)イオン濃度との関係を示すグラフである。 (a)一本鎖DNAがステムループ構造をとることにより自由末端から2番目にT-Tミスマッチを生じるDNA二重鎖を用いた場合の、種々の水銀(II)イオン濃度での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度変化(A650/A520)と水銀(II)イオン濃度との関係を示すグラフである。 (a)自由末端から2番目にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合の、種々の金属イオン存在下での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度(A650/A520)を示すグラフである。 (a)自由末端にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合の、種々の水銀(II)イオン濃度での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度変化と水銀(II)イオン濃度との関係を示す(A650/A520)を示すグラフである。 (a)自由末端にT-Tミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合の、種々の水銀(II)イオン濃度での液色の変化を示す写真、及び(b)溶液の吸光度変化と水銀(II)イオン濃度との関係を示す(A650/A520)を示すグラフである。 一本鎖DNAがステムループ構造をとることにより自由末端にT-Tミスマッチを生じるDNA二重鎖を用いた場合の、水銀(II)イオンおよび銀(I)イオン存在下での液色の変化を示す写真である。 自由末端から3番目にC-Cミスマッチを有するDNA二重鎖を用いた場合にのみ、銀(I)イオン存在下で金コロイド粒子の凝集が起こることを示す写真である。

Claims (9)

  1. 金コロイド粒子表面にDNA二重鎖が固定化されてなるコンジュゲートであって、該DNA二重鎖は、金コロイド粒子に固定されていない末端の塩基対が相補的であり、かつ該末端から2番目にチミン同士からなるミスマッチを含むか、該末端から3番目にチミン同士もしくはシトシン同士からなるミスマッチを含む、コンジュゲート。
  2. 該DNA二重鎖が、金コロイド粒子に固定されていない末端から2番目にチミン同士からなるミスマッチを含むか、金コロイド粒子に固定されていない末端から3番目にチミン同士からなるミスマッチを含む、請求項1記載のコンジュゲート。
  3. 請求項2記載のコンジュゲートを含む、二価水銀イオンの検出用試薬。
  4. 該DNA二重鎖が、金コロイド粒子に固定されていない末端から3番目にシトシン同士からなるミスマッチを含む、請求項1記載のコンジュゲート。
  5. 請求項4記載のコンジュゲートを含む、一価銀イオンの検出用試薬。
  6. 被験液中の二価水銀イオンを検出する方法であって、該被験液と請求項2記載のコンジュゲートの分散液とを、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下で混合する工程、および該混合液中の金コロイド粒子の凝集を検知する工程を含む、方法。
  7. 被験液中の一価銀イオンを検出する方法であって、該被験液と請求項4記載のコンジュゲートの分散液とを、DNA二重鎖が完全相補的であれば金コロイド粒子が凝集する塩濃度条件下で混合する工程、および該混合液中の金コロイド粒子の凝集を検知する工程を含む、方法。
  8. 金コロイド粒子の凝集を、液色の変化を指標として検知することを特徴とする、請求項6又は7記載の方法。
  9. 塩がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である請求項6又は7記載の方法。
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