JP3931705B2 - 発熱機器の冷却装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン等の熱機関、電動式モータやモータ制御用のインバータ回路及び燃料電池等の発熱機器の冷却装置に関するものであり、特に、内燃機関を搭載した車両に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エンジン用の冷却装置として、出願人は、既に特願2001−280050号を出願している。この出願は、暖機運転時に、エンジン内を循環する冷却水量を略1〜5L/minとすることにより暖機運転の促進を図るものであるが、その後、試作実験を積み重ねたところ、以下に述べる点がさらに明らかになった。
【0003】
すなわち、上記出願では、暖機運転時にエンジン内を循環する冷却水量を略1〜5L/min程度の微少流量としているので、暖機運転時に冷却水量を10〜15L/min程度とした従来に比べて、暖機運転が早期に完了するものの、暖機運転が完了した後、エンジン内を循環する冷却水量を増大させた時に、図9の波線で示すように、冷却水温度、つまりエンジン温度が低下してしまった。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、上記出願と異なる新規な構成にて、暖機運転終了後に、エンジン、つまり発熱機器の温度が低下することを防止することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、発熱機器(10)内を循環する冷却液を冷却し、その冷却した冷却液を発熱機器(10)に戻すラジエータ(20)と、発熱機器(10)から流出する冷却液をラジエータ(20)を迂回させて発熱機器(10)に戻すバイパス通路(30)と、バイパス通路(30)及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を調節する流量制御装置(40、100)とを備え、
流量制御装置(40、100)は、電気式の流量調整バルブ(40)及びこの流量調整バルブ(40)を制御する制御装置(100)を有して構成されており、
流量制御装置(40、100)は、ラジエータ(20)に冷却液が流れることを停止させた状態で、発熱機器(10)内を流れる冷却液の循環流量を所定流量以下とする暖機運転モードと、
流量調整バルブ(40)の動作速度を発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて大きくすることにより、バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量、及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を、発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて短くする変化時間制御モードとを有し、
変化時間制御モード時においては、流量調整バルブ(40)の動作速度を変化時間制御モード以外のいずれかのモード時に比べて遅くすることを特徴とする。
【0006】
これにより、変化時間制御モード時は流量調整バルブ(40)の動作速度を遅くすることで、低温の冷却液が短時間に多量に流れ始めることを防止できるので、暖機運転の促進を図りながら、暖機運転終了後に、発熱機器(10)の温度が低下することを未然に防止できる。
しかも、流量調整バルブ(40)の動作速度を発熱機器(10)の発熱量の変動に直接応答して変化させることができるので、発熱機器(10)の発熱量の変動に応じて発熱機器(10)の温度を常に適切な温度に制御できる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、発熱機器(10)内を循環する冷却液を冷却し、その冷却した冷却液を発熱機器(10)に戻すラジエータ(20)と、発熱機器(10)から流出する冷却液をラジエータ(20)を迂回させて発熱機器(10)に戻すバイパス通路(30)と、バイパス通路(30)及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を調節する流量制御装置(40、100)とを備え、
流量制御装置(40、100)は、電気式の流量調整バルブ(40)及びこの流量調整バルブ(40)を制御する制御装置(100)を有して構成されており、
流量制御装置(40、100)は、ラジエータ(20)に冷却液が流れることを停止させた状態で、発熱機器(10)内を流れる冷却液の循環流量を所定流量以下とする第1暖機運転モードと、
ラジエータ(20)に流れる冷却液の流量を略0とした状態で、バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量を所定流量より大きくする第2暖機運転モードと、
バイパス通路(30)及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を制御して発熱機器(10)に流れ込む冷却液の温度を制御する温度制御モードと、
流量調整バルブ(40)の動作速度を発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて大きくすることにより、バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量、及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を、発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて短くする変化時間制御モードとを有し、
変化時間制御モード時においては、流量調整バルブ(40)の動作速度を変化時間制御モード以外のいずれかのモード時に比べて遅くするようになっており、
さらに、流量制御装置(40、100)は、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時、及び第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時のうち少なくとも一方の時に、変化時間制御モードを実行することを特徴とする。
【0008】
これにより、変化時間制御モードの実行時に、流量調整バルブ(40)の動作速度を遅くすることで、低温の冷却液が短時間に多量に流れ始めることを防止できるので、暖機運転の促進を図りながら、暖機運転終了後に、発熱機器(10)の温度が低下することを未然に防止できる。
しかも、請求項1に記載の発明と同様に、流量調整バルブ(40)の動作速度を発熱機器(10)の発熱量の変動に直接応答して変化させることで、発熱機器(10)の温度を常に適切な温度に制御できる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、発熱機器(10)内を循環する冷却液を冷却し、その冷却した冷却液を発熱機器(10)に戻すラジエータ(20)と、発熱機器(10)から流出する冷却液をラジエータ(20)を迂回させて発熱機器(10)に戻すバイパス通路(30)と、冷却液を熱源とするヒータ(60)と、バイパス通路(30)、ラジエータ(20)及びヒータ(60)を流れる冷却液の流量を調節する流量制御装置(40、100)とを備え、
流量制御装置(40、100)は、電気式の流量調整バルブ(40)及びこの流量調整バルブ(40)を制御する制御装置(100)を有して構成されており、
流量制御装置(40、100)は、ラジエータ(20)に冷却液が流れることを停止させた状態で、発熱機器(10)内を流れる冷却液の循環流量を所定流量以下とする第1暖機運転モードと、
ラジエータ(20)に流れる冷却液の流量を略0とした状態で、バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量を所定流量より大きくする第2暖機運転モードと、
バイパス通路(30)及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を制御して発熱機器(10)に流れ込む冷却液の温度を制御する温度制御モードと、
ヒータ(60)に冷却液を循環させるヒータモードと、
流量調整バルブ(40)の動作速度を発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて大きくすることにより、バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量、及びラジエータ(20)を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を、発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて短くする変化時間制御モードとを有し、
変化時間制御モード時においては、流量調整バルブ(40)の動作速度を変化時間制御モード以外のいずれかのモード時に比べて遅くするようになっており、
さらに、流量制御装置(40、100)は、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時、第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時、及びヒータモードに移行する時のうち少なくとも一つの時において、変化時間制御モードを実行することを特徴とする。
【0010】
これにより、変化時間制御モードの実行時に、流量調整バルブ(40)の動作速度を遅くすることで、低温の冷却液が短時間に多量に流れ始めることを防止できるので、暖機運転の促進を図りながら、暖機運転終了後に、発熱機器(10)の温度が低下することを未然に防止できる。
しかも、請求項1、2に記載の発明と同様に、流量調整バルブ(40)の動作速度を発熱機器(10)の発熱量の変動に直接応答して変化させることで、発熱機器(10)の温度を常に適切な温度に制御できる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、流量制御装置(40、100)は、発熱機器(10)の発熱量を発熱機器(10)に課せられる負荷に基づいて検出することを特徴とするものである。
【0016】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る発熱機器の冷却装置を車両走行用エンジンの冷却装置に適用したものであって、図1は本実施形態に係るエンジンの冷却装置の模式図である。
【0018】
図1中、ラジエータ20はエンジン10内を循環する冷却水を冷却し、その冷却した冷却水をエンジン10に戻す熱交換器であり、送風機21はラジエータ20に冷却風を送風する送風手段である。
【0019】
バイパス通路30はエンジン10から流出する冷却水をラジエータ20を迂回させてエンジン10に戻すバイパス手段であり、流量調整バルブ40はラジエータ20に循環させる冷却水量とバイパス通路30に循環させる冷却水量とを調節する電子制御式の流量調整バルブであり、ポンプ50はエンジン10から駆動力を得て冷却水を循環させる渦巻式のウォータポンプである。なお、流量調整バルブ40の構造は後述する。
【0020】
ヒータ60は冷却水(エンジン廃熱)を熱源として室内に吹き出す空気を加熱する暖房用熱交換器であり、電磁弁70はヒータ60に冷却水を供給する温水通路を開閉する弁手段であり、送風機61は室内に吹き出す空気を送風する空調用送風手段である。
【0021】
トルクコンバータ80はオートマチックトランスミッション用の流体継ぎ手であり、オイルクーラ90はトルクコンバータ80内の作動油(オートマチックトランスミッションフルード)と冷却水とを熱交換するオイル熱交換器である。なお、本実施形態では、オイルクーラ90はヒータ60から流出した冷却水と作動油(ATF)とを熱交換している。
【0022】
ところで、第1水温センサ101はバイパス通路30を流れる冷却水の温度を検出する検出手段であり、第2水温センサ102はポンプ50の流入側に配設されてエンジン10に戻ってくる冷却水の温度を検出する検出手段である。
【0023】
また、圧力センサ103はエンジン10の吸入負圧を検出することによりエンジン10に課せられた負荷を検出する負荷検出手段であり、回転センサ104はエンジン100の回転数を検出する回転数検出手段であり、外気温センサ105は室外空気温度を検出する外気温度検出手段である。
【0024】
そして、各センサ101〜105の検出信号及び車両用空調装置の始動スイッチ(A/Cスイッチ)106のON−OFF信号は電子制御装置(ECU)100に入力されており、このECU100は、各センサ101〜105の検出信号及び始動スイッチ106のON−OFF信号に基づいて予め設定されたプログラムに従って流量調整バルブ40、電磁弁70及び送風機21等を制御する。
【0025】
つまり、本実施形態では、流量調整バルブ40、ECU100及び第1、2水温センサ101、102等により、バイパス通路30及びラジエータ20を流れる冷却水の流量を調節する流量制御装置が構成される。
【0026】
次に、流量調整バルブ40の構造について述べる。
【0027】
図2は流量調整バルブ40の断面図であり、図3は図2の上面図である。そして、冷却水通路40aを構成するアルミニウム製のハウジング41は、図2に示すように、ラジエータ20の流出側に接続される第1流入口42aが形成された第1ハウジング41a、並びにバイパス通路30の流出側に接続される第2流入口42b及びポンプ50の吸入側に接続される流出口42c(図3参照)が形成された第2ハウジング41bを有して構成されている。
【0028】
なお、第1、2ハウジング41a、41bは、Oリング等のパッキン41cを介してボルト41d(図3参照)により締結されている。
【0029】
また、ハウジング41内のうち第1ハウジング41aのフランジ部41eには、第1流入口42a側と流出口42c側とを仕切るアルミニウム製のシートプレート43が配設されている。
【0030】
そして、このシートプレート43は、図4に示すように、段付き部43cが形成された円筒部43d、及びこの円筒部43dの軸方向一端側に位置する円盤状のシート面43bが形成されており、シート面43bには、第1流入口42a側と流出口42c側と連通させる連通口43aが形成されている。
【0031】
このとき、連通口43aは、その外縁が描く図形の図心がシート面43bの図心と一致するように形成されているとともに、連通口43aの外縁部には、連通口43aを縁取るようにゴム製のパッキン44が焼き付け固着されている。
【0032】
因みに、図形の図心とは、周知のごとく、平面図形において面積モーメントが釣り合う点であり、本実施形態では、シート面43bは円盤状であるので、その図心は中心と一致する。
【0033】
なお、シートプレート43を挟んで上流側と下流側とは、フランジ部41eとシートプレート43との間に配設されたOリング等のパッキン43fにより密閉されている。このため、シートプレート43の上流側から下流側に流れる冷却水の全ては、連通口43aを通過することとなる。
【0034】
また、シートプレート43より冷却水流れ下流側には、連通口43aの開口面積、すなわち開度を調節するバルブ45が配設されており、このバルブ45は、図5に示すように、シート面43bと平行に配置されてパッキン44と接触しながら平行移動するように回転する円盤状の第1バルブ面45a、第2流入口42b側に繋がる開口部41f(図2参照)の開口面積を調節する第2バルブ面45b、並びに第1バルブ面及び第2バルブ面45bを回転させるシャフト部45c等からなるもので、これら45a〜45cは金属にて一体形成されている。
【0035】
このとき、第1バルブ面45aには、連通口43aに対応するように扇状の開口部45dがシャフト45cに対して対称に形成されており、第2バルブ面45bは、第1バルブ面45aの外縁部に位置してシャフト45cの長手方向と平行な方向に延出する円筒状の一部をなす壁部であり、シャフト45cの先端側には、後述する減速機47の出力軸を固定するためのネジ穴が形成されている。
【0036】
ところで、シートプレート43のシート面43bに形成された連通口43aのうち、第1バルブ面45aに形成された扇状の開口部45dと対応する部位からずれた位置、すなわちシート面43bの中心部の開口部(図4(a)の二点鎖線で示された部位)43eは、シートプレート43を挟んで上流側と下流側とを連通させる連通口43aとしての機能に加えて、シート面43bの流入口42a側の面に作用する水圧よる力を調節する受圧面積調節穴として機能する。そこで、以下、開口部43eを受圧面積調節穴43eと表記する。
【0037】
つまり、シート面43bの現状の受圧面積は、図4(a)において斜線で示された面積であるが、受圧面積調節穴43eを大きくすれば、受圧面積が減少してシート押圧力が減少し、逆に受圧面積調節穴43eを小さくすれば、受圧面積が増大してシート押圧力が増大する。
【0038】
また、図2において、モータ46はバルブ45を回転駆動する動力を発生するステッピングモータであり、減速機47はモータ46の出力を減速してバルブ45のシャフト45cに伝達する複数枚の歯車からなる変速機であり、この減速機47及びモータ46によりバルブ45を回転駆動させるアクチュエータが構成されている。
【0039】
軸受48はシャフト45cを回転可能に支持する転がり軸受であり、リップシール49は流体通路40a内の冷却水がアクチュエータ内に流入することを防止するシール手段である。
【0040】
以上に述べた構成により、シートプレート43は、バルブ45より上流側に位置してバルブ45に対してシート面43bと直交する方向に微少、つまりパッキン43fの弾性変形量程度に変位することができる。このとき、図2に示すように、シートプレート43の変位方向一端側、つまり下流側への変位はバルブ45により規制され、シートプレート43の変位方向他端側、つまり上流側への変位はフランジ部41eにより規制される。
【0041】
なお、バルブ45が回転すると、パッキン44と第1バルブ面45aとの摩擦量によりシートプレート43が回転するおそれがあるので、本実施形態では、シートプレート43の外周側に外方側に突出する突起部43hを形成し、この突起部43hを第2図に示すように第2ハウジング41bに設けた溝部41gに摺動可能に嵌合させることによりシートプレート43が回転することを防止している。
【0042】
また、捩りコイルバネ47aは、減速機47の歯車列の外側に配置されて、モータ46に電圧が印加されていないとき、つまりエンジン停止時及び流量制御バルブ40の組み立てが完了したときに、バルブ45がバイパス通路30及びラジエータ20の両者に冷却水が流れ得る位置となるように自動的にバルブ45を回転させる弾性力をバルブ45に作用させるリターン用の弾性手段である。
【0043】
次に、本実施形態に係る流量調整バルブ40の概略作動について述べる。
【0044】
バルブ45が第1バルブ面45aの中心を中心として回転すると、シートプレート43の連通口43aとバルブ45の開口部45dとの重なり合う面積、すなわち連通口43aの開口面積、及び開口部41fの開口面積がバルブ45の回転角に比例して変化し、流量調整バルブ40内を流れる冷却水量が調節される。
【0045】
このとき、第1バルブ面45aはパッキン44と接触しているので、第1バルブ面45aとシート面43bとの隙間から冷却水が下流側に流れてしまうことを防止できる。したがって、バルブ45の回転角、つまり連通口43aの開口面積に応じてラジエータ20を流れる冷却水量を調節することができる。
【0046】
そして、エンジン10が停止してモータ46に電圧が印加されていないときには、捩りコイルバネ47aの弾性力により、バルブ45が図6に示すような位置で停止するため、バイパス通路30及びラジエータ20の両者に冷却水が流れ得る状態となる。
【0047】
次に、流量調整バルブ40の制御方法及びその特徴を述べる。
【0048】
図7はバルブ45の回転角度と、バイパス通路30及びラジエータ20を流れる冷却水の流量、つまりバイパス通路30側の開口面積とラジエータ20側の開口面積との関係を示すチャートであり、図8は、後述する変化時間制御モード時における、バルブ45の回転速度、つまり流量調整バルブ40の動作速度とエンジン負荷との関係を示すマップである。
【0049】
なお、図8では、エンジン負荷を表すパラメータとして、エンジン10の吸入負圧及び回転数を採用している。因みに、スロットルバルブの開度が大きくなるほど吸気圧が大きくなるので、吸気圧が大きくなるほどエンジン負荷が高いと見なすことができ、エンジン回転数が高いほどエンジン負荷が高いと見なすことができる。
【0050】
1.第1暖機運転モード
このモードは、ラジエータ20に冷却水が流れることを停止させた状態で、エンジン10内を流れる冷却水の流量を略1〜5L/min程度としてエンジン10を早期に暖機するものである。
【0051】
2.第2暖機運転モード
このモードは、ラジエータ20に流れる冷却液の流量を略0とした状態で、バイパス通路30側を全開としてバイパス通路30を流れる冷却水の流量を第1暖機運転モードより大きくするものである。
【0052】
3.温度制御モード
このモードは、バイパス通路30及びラジエータ20を流れる冷却水の流量を制御してエンジン10に流れ込む冷却水の温度を制御するものである。
【0053】
4.変化時間制御モード
このモードは、図8に示すマップに従ってバルブ45の回転速度を制御することにより、バイパス通路30を流れる冷却水の流量、及びラジエータ20を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を変化させるものである。
【0054】
そして、変化時間制御モードでは、エンジン10の負荷、換言すれば、エンジン10の発熱量に応じてバルブ45の回転速度を制御するので、エンジン負荷が大きくなるほど、バルブ45の回転速度を大きくする。なお、変化時間制御モード以外のモード時、例えば温度制御モード時におけるバルブ45の回転速度は、約40°/secである。
【0055】
さらに、本実施形態では、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時、及び第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時に、この変化時間制御モードを実行する。
【0056】
なお、第1暖機運転モード、第2暖機運転モード及び温度制御モードのいずれのモードを選択するかは、冷却水温度に基づいて決定されており、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時の冷却水温度は、第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時の冷却水温度より高く、かつ、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時の冷却水温度、及び第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時の冷却水温度は、温度制御モード時における目標温度より低い。
【0057】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0058】
第1暖機運転モード時においては、微少な流量のみを循環させているので、バイパス通路30内の冷却水は、十分に高い温度まで上昇しているものの、エンジン10及びラジエータ20内には低温の冷却水が溜まっている。
【0059】
なお、微少流量では、エンジン10内に溜まっている低温の冷却水を全て流し出すことはできず、低温の冷却水はエンジン10内に部分的に滞留したままとなっている。
【0060】
このため、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時に、短時間でバイパス通路30側を全開とすると、エンジン10内に溜まっていた低温の冷却水が一度に流れ始めるので、冷却水温の平均化によって冷却水の温度が図9の波線で示すように大きく低下してしまう。
【0061】
同様に、第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時に、短時間でラジエータ20側を開き始めると、ラジエータ20内に多量に溜まっていた低温の冷却水が一度に流れ始めるので、エンジン10に流れ込む冷却水の温度が大きく低下してしまう。
【0062】
これに対して、本実施形態では、モードを変化させる時に変化時間制御モードを実行するので、例えば第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時においては、ラジエータ20内に溜まっている低温の冷却水が短時間に多量に流れ始めることを防止できる。
【0063】
したがって、第1暖機運転モード時に微少流量として暖機運転の促進を図りながら、暖機運転終了後に、エンジン10の温度が大きく低下することを未然に防止できる。
【0064】
また、本実施形態では、第1暖機運転モードが終了した後、第2暖機運転モードを経た後に温度制御モードに移行するので、エンジン10内に部分的に溜まっていた低温の冷却水によりエンジン10の温度が大きく低下することを防止できる。
【0065】
また、第2暖機運転モード時にはバイパス通路30側の流量を増大させるので、エンジン10内の冷却水温度分布を略均一にした後、温度制御モードに移行することとなる。したがって、第1水温センサ101にてバイパス通路30を流れる冷却水の温度を正確に検出することができるので、エンジン10の温度、つまり冷却水温度を正確に制御することができる。
【0066】
ところで、エンジン10の温度が低いと、エンジン10内の機械損失が大きくなるので、燃費が悪化する。逆に、エンジン10の温度が高いと、エンジン10が焼き付き等の熱損傷が発生するおそれが高い。一方、エンジン10の負荷が増大すると、これに応じて発熱量が増大する。
【0067】
したがって、本実施形態のごとく、エンジン10の発熱量の増大に応じて、流量を目標流量まで変化させる時間を短くすれば、常に、エンジン10を適切な温度とすることが可能となる。
【0068】
(第2実施形態)
第1実施形態では、バルブ45の回転速度を変化させることにより、流量を目標流量まで変化させる時間を変化させたが、本実施形態は、目標流量、つまり目標バルブ開度を決定した時からバルブ45が実際に作動し始めるまでの遅延時間をエンジン負荷に応じて変化させることにより、流量を目標流量まで変化させる時間を変化させたものである。
【0069】
そして、本実施形態においても、バルブ開度が短時間に変化することを防止できるので、第1実施形態と同様に、エンジン10の温度が低下することを防止しつつ、常に、エンジン10を適切な温度とすることができる。
【0070】
なお、図10は、変化時間制御モード時における、遅延時間とエンジン負荷との関係を示すマップである。
【0071】
(第3実施形態)
本実施形態は、図11、12に示すように、暖房用ヒータ60へ供給するエンジン冷却水量も制御することができる流量制御バルブ40に本発明を適用したものである。
【0072】
このため、本実施形態では、図12(a)に示すように、暖房用ヒータ60から流出した冷却水が流入する第3流入口42dを第1ハウジング41aに設けるとともに、バルブ45に第3流入口42dを開閉する第3バルブ面45eを設けている。
【0073】
ところで、図13はバルブ45の回転角度と、バイパス通路30、ラジエータ20及びヒータ60を流れる冷却水の流量との関係を示すチャートであり、本実施形態では、新たに、ヒータ60に冷却水液を循環させるヒータモードが追加されている。そして、第1暖機運転モードからヒータモードに移行する時も変化時間制御モードを実行している。
【0074】
これにより、ヒータ60に溜まっていた冷水が流れ込んで来ても、第1実施形態と同様に、バルブ開度が短時間に変化することを防止できるので、エンジン10の温度が大きく低下することを防止しつつ、常に、エンジン10を適切な温度とすることができる。
【0075】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時、第2暖機運転モードが終了して前記温度制御モードに移行する時、及びヒータモードに移行する時の全ての場合において、変化時間制御モードを実行したが、本発明は、これに限定されるものではなく、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時、第2暖機運転モードが終了して前記温度制御モードに移行する時、及びヒータモードに移行する時のうち少なくとも一つの時において、変化時間制御モードを実行すれば、十分な効果を得ることができる。
【0076】
また、第2暖機運転モードを廃止して、第1暖機運転モードが終了した後、直ぐに温度制御モードに移行してもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、発熱機器としてエンジンを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電動式モータやモータ制御用のインバータ回路及び燃料電池等を発熱機器としてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、エンジン負荷の吸入圧及び回転数で検出したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
また、上述の実施形態では、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時の冷却水温度は、第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時の冷却水温度より高く、かつ、第1暖機運転モードが終了して第2暖機運転モードに移行する時の冷却水温度、及び第2暖機運転モードが終了して温度制御モードに移行する時の冷却水温度は、温度制御モード時における目標温度より低かったが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷却水回路を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る流体バルブの断面図である。
【図3】図2の上面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るシートプレートの二面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るバルブの二面図である。
【図6】エンジン停止時における図2のA−A断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態におけるバルブの回転角とバイパス通路及びラジエータ側に流れる冷却水量との関係を示すチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態における流量調整バルブの動作速度とエンジン負荷との関係を示す図表である。
【図9】エンジン冷却水温度の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態における遅延時間とエンジン負荷との関係を示す図表である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る冷却水回路を示す模式図である。
【図12】(a)は本発明の第3実施形態に係る流体バルブの断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態におけるバルブの回転角とバイパス通路及びラジエータ側に流れる冷却水量との関係を示すチャートである。
【符号の説明】
10…エンジン、20…ラジエータ、30…バイパス通路、
40…流量調整バルブ、100…ECU。
Claims (4)
- 発熱機器(10)内を循環する冷却液を冷却し、その冷却した冷却液を前記発熱機器(10)に戻すラジエータ(20)と、
前記発熱機器(10)から流出する冷却液を前記ラジエータ(20)を迂回させて前記発熱機器(10)に戻すバイパス通路(30)と、
前記バイパス通路(30)及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を調節する流量制御装置(40、100)とを備え、
前記流量制御装置(40、100)は、電気式の流量調整バルブ(40)及びこの流量調整バルブ(40)を制御する制御装置(100)を有して構成されており、
前記流量制御装置(40、100)は、
前記ラジエータ(20)に冷却液が流れることを停止させた状態で、前記発熱機器(10)内を流れる冷却液の循環流量を所定流量以下とする暖機運転モードと、
前記流量調整バルブ(40)の動作速度を前記発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて大きくすることにより、前記バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量、及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を、前記発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて短くする変化時間制御モードとを有し、
前記変化時間制御モード時においては、前記流量調整バルブ(40)の動作速度を前記変化時間制御モード以外のいずれかのモード時に比べて遅くすることを特徴とする発熱機器の冷却装置。 - 発熱機器(10)内を循環する冷却液を冷却し、その冷却した冷却液を前記発熱機器(10)に戻すラジエータ(20)と、
前記発熱機器(10)から流出する冷却液を前記ラジエータ(20)を迂回させて前記発熱機器(10)に戻すバイパス通路(30)と、
前記バイパス通路(30)及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を調節する流量制御装置(40、100)とを備え、
前記流量制御装置(40、100)は、電気式の流量調整バルブ(40)及びこの流量調整バルブ(40)を制御する制御装置(100)を有して構成されており、
前記流量制御装置(40、100)は、
前記ラジエータ(20)に冷却液が流れることを停止させた状態で、前記発熱機器(10)内を流れる冷却液の循環流量を所定流量以下とする第1暖機運転モードと、
前記ラジエータ(20)に流れる冷却液の流量を略0とした状態で、前記バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量を前記所定流量より大きくする第2暖機運転モードと、
前記バイパス通路(30)及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を制御して前記発熱機器(10)に流れ込む冷却液の温度を制御する温度制御モードと、
前記流量調整バルブ(40)の動作速度を前記発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて大きくすることにより、前記バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量、及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を、前記発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて短くする変化時間制御モードとを有し、
前記変化時間制御モード時においては、前記流量調整バルブ(40)の動作速度を前記変化時間制御モード以外のいずれかのモード時に比べて遅くするようになっており、
さらに、前記流量制御装置(40、100)は、前記第1暖機運転モードが終了して前記第2暖機運転モードに移行する時、及び前記第2暖機運転モードが終了して前記温度制御モードに移行する時のうち少なくとも一方の時に、前記変化時間制御モードを実行することを特徴とする発熱機器の冷却装置。 - 発熱機器(10)内を循環する冷却液を冷却し、その冷却した冷却液を前記発熱機器(10)に戻すラジエータ(20)と、
前記発熱機器(10)から流出する冷却液を前記ラジエータ(20)を迂回させて前記発熱機器(10)に戻すバイパス通路(30)と、
冷却液を熱源とするヒータ(60)と、
前記バイパス通路(30)、前記ラジエータ(20)及び前記ヒータ(60)を流れる冷却液の流量を調節する流量制御装置(40、100)とを備え、
前記流量制御装置(40、100)は、電気式の流量調整バルブ(40)及びこの流量調整バルブ(40)を制御する制御装置(100)を有して構成されており、
前記流量制御装置(40、100)は、
前記ラジエータ(20)に冷却液が流れることを停止させた状態で、前記発熱機器(10)内を流れる冷却液の循環流量を所定流量以下とする第1暖機運転モードと、
前記ラジエータ(20)に流れる冷却液の流量を略0とした状態で、前記バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量を前記所定流量より大きくする第2暖機運転モードと、
前記バイパス通路(30)及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量を制御して前記発熱機器(10)に流れ込む冷却液の温度を制御する温度制御モードと、
前記ヒータ(60)に冷却液を循環させるヒータモードと、
前記流量調整バルブ(40)の動作速度を前記発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて大きくすることにより、前記バイパス通路(30)を流れる冷却液の流量、及び前記ラジエータ(20)を流れる冷却液の流量のうち少なくとも一方の流量を目標流量まで変化させる時間を、前記発熱機器(10)の発熱量の増大に応じて短くする変化時間制御モードとを有し、
前記変化時間制御モード時においては、前記流量調整バルブ(40)の動作速度を前記変化時間制御モード以外のいずれかのモード時に比べて遅くするようになっており、
さらに、前記流量制御装置(40、100)は、前記第1暖機運転モードが終了して前記第2暖機運転モードに移行する時、前記第2暖機運転モードが終了して前記温度制御モードに移行する時、及び前記ヒータモードに移行する時のうち少なくとも一つの時において、前記変化時間制御モードを実行することを特徴とする発熱機器の冷却装置。 - 前記流量制御装置(40、100)は、前記発熱機器(10)の発熱量を前記発熱機器(10)に課せられる負荷に基づいて検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発熱機器の冷却装置。
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