JP3930740B2 - 配管の継手検知方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下に埋設される都市ガス供給用の配管など、隠蔽部に施工されている配管の継手検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、都市ガスの配管は鋼管や鋳鉄管などの金属管が用いられ、金属管同士の連結部にはねじ継手が用いられているものがある。地下に埋設されている金属管は、経年使用による腐食等が発生し、合成樹脂管への取替や補修が必要になることがある。地下に埋設されている配管を掘り出して取替えや補修を行うことは、工事に多額の費用や工期がかかるため、管内部に合成樹脂管等を挿入することによって補修を行うインサーション工法などが開発されている。インサーション工法は、継手の中で特に曲がり部に使用されるエルボ類の数を工事の事前に調査して、工法が適用可能か否かを判断する必要がある。エルボ類の数が多いと、合成樹脂管を円滑に内部に挿入することができないからである。
【0003】
図9は、都市ガスの配管が大略的に「コ」の字形状に屈曲する部分の例を示す。直管状の鋼管1,2,3が垂直に屈曲する曲がり部には、エルボ5,6やストリートエルボ7などの90°曲管継手が用いられる。鋼管1,2,3の長さは、最大で5.5m程度であり、ストリートエルボ7はエルボ6と組み合わせて用いられ、配管を3次元的に屈曲させる。エルボ6とストリートエルボ7とを組合せて形成する曲がり部は、角度の自由度が大きく、ある程度の地盤沈下なども吸収可能である。なお、鋼管1,2,3を軸方向に連結する部分には、ソケットと呼ばれる直管継手が用いられる。
【0004】
図10は、都市ガスの配管に用いられる継手の例を示す。エルボ5,6およびストリートエルボ7は、図9に示すように用いられる。エルボ5,6は、全体として垂直に屈曲する短い曲管の両側に内ねじが形成され、外ねじが形成されている鋼管の端部を螺合して鋼管同士を垂直に連結する。ストリートエルボ7は、エルボ5,6とほぼ同型であるけれども、一端側には内ねじではなく、外ねじが形成され、エルボ5,6の一方側の内ねじと螺合して使用する。エルボ5,6の他方側の内ねじとストリートエルボ7の内ねじとには、鋼管が螺合される。レジューサ8は管の径が変化する部分に使用される片落ち管継手である。チー9は「T」字状に分岐する部分に使用されるT字管継手である。都市ガスの配管には、エルボ5,6やストリートエルボ7が多く使用されている。
【0005】
図9に示すような都市ガスの配管が地下に埋設されているような場合に、エルボ5,6やストリートエルボ7の位置を検知する技術として、音響反射式継手位置検知技術が開発されている。ねじ継手で形成された配管内にインパルス状の音を入射すると、継手の部分での断面積変化で反射音が発生する。音響反射式継手位置検知技術では、反射音信号の有無で継手の検知を行い、反射音信号が戻るまでの時間で継手までの距離を求めることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
都市ガスの配管で、取替や補修が必要となるような場合は、敷設してから長時間が経過し、配管の図面などが充分に残っていないことがある。また、配管が埋設されている地上の利用が、敷設当時は通路や駐車場などであったとしても、建物や花壇などが設けられていて、開削工事が困難となったり、工事は容易でも原状回復が困難となることもある。このような事情があるので、非開削工法であるインサーション工法の利用が望ましい。ただし、インサーション工法では、エルボ5,6などの曲がり部の数が制限される。しかも、エルボ6とストリートエルボ7とを組合せた曲がり部では、曲がり部の数としてエルボ5,6が単独で存在する曲がり部の2つ分に相当すると考えなければならない。しかし、エルボ6とストリートエルボ7とを組合せた曲がり部では、両継手が接近しているので、反射信号は1つに見え、継手の数も1つ分として解釈されてしまう。このため、インサーション工法を採用するか否かの事前の調査で、継手の数を少なく見積もって、実際にインサーション工法を実行する際に、配管の奥の方まで届かないことがあり得る。
【0007】
本発明の目的は、音響反射式継手位置検知技術を用いて、配管の継手を精度よく検知することができる配管の継手検知方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の管が、単独のエルボ類から成る継手および複数のエルボ類の組合せから成る継手のうち少なくともいずれか一方の継手を用いて連結される配管の一端側からインパルス状の音を入射し、
反射音信号を受信して、予め定める信号処理を行い、反射音信号中で継手からの反射に対応するピークを判別し、
音の入射から判別したピークまでの時間的な遅れに基づいて、該一端側から継手までの距離を求め、
予め定める周波数よりも低い周波数帯域での信号レベルのピーク値と、前記予め定める周波数よりも高い周波数帯域での信号レベルのピーク値との比の違いによる判別と、反射パターンにおけるピークの数の違いによる判別とを組合せて、継手が、単独のエルボ類から成る継手および複数のエルボ類の組合せから成る継手のいずれであるかを判別することを特徴とする配管の継手検知方法である。
【0009】
本発明に従えば、複数の管が継手で連結される配管の一端側からインパルス状の音を入射し、反射音信号を受信して音響反射式継手位置検知技術を適用する継手の位置の検知を行う。反射信号には予め定める信号処理を行い、反射音信号中で継手からの反射に対応するピークを判別する。音の入射から判別したピークまでの時間的な遅れに基づいて、音を入射する一端側から継手までの距離を求める。また複数の管を連結する継手として、単独のエルボ類から成る継手および複数のエルボ類の組合せから成る継手のうち少なくともいずれか一方を含む継手が用いられ、各継手の種類が不明であるので、反射音信号から、継手の種類を判別する。継手の種類の判別には、低い周波数帯域での信号レベルのピーク値と、高い周波数帯域での信号レベルのピーク値との比による判別と、反射パターンにおけるピークの数による判別とが組合せて用いられる。ピーク値の比は、単独のエルボ類から成る継手と、複数のエルボ類の組合せから成る継手とで、異なる。ピークの数もまた、単独のエルボ類から成る継手と、複数のエルボ類の組合せから成る継手とで、異なる。このような2つの基準による判別を組合せることによって、エルボ類が単独で用いられている継手と、複数のエルボ類が組合せて用いられている継手とを、精度よく判別して、各継手の種類を判別することができる。これによってインサーション工法などを適用するための事前調査などを精度よく行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一形態である配管の継手検知方法を実行している状態の概要を示す。都市ガスの配管10は、複数の鋼管11,12,13,14,15,16,17,…が継手で連結されて形成されている。継手は、たとえば顧客へ都市ガスを供給するために地盤20の地下から立上がる鋼管11と、地盤20の地下に埋設される鋼管12との間のエルボ21、地盤20の地下に埋設される鋼管12と鋼管13との間の直管継手22、地盤20の地下に埋設される鋼管13,14,15,16,17を順次連結するエルボ23,24,25,26が用いられている場合を想定する。
【0015】
継手の検知には、パーソナルコンピュータなどを基に、インパルス状の信号発生や信号処理の機能を備えるデータ処理装置30を使用する。データ処理装置30の処理結果等は、ディスプレイ装置31で画面に表示することができる。配管10の一端側である鋼管11の開口部には、配管10内にインパルス状の音を入射するためのスピーカ32を設置する。スピーカ32からの入射音に対する反射音を受信するためにマイクロホン33も設置する。データ処理装置30は、マイクロホン33によって反射音信号を受信し、予め定める信号処理を行う。入射音や反射音信号の波形は、ディスプレイ装置31の画面に表示することができる。
【0016】
データ処理装置30は、反射音信号中で継手からの反射に対応するピークを判別し、音の入射から判別したピークまでの時間的な遅れに基づいて、鋼管11の開口端側から継手までの距離を求め、ピークの特性に基づいて継手の種類を判別する。判別した検知結果もディスプレイ装置31の画面に表示される。直管継手22では反射音の信号レベルが小さいので、エルボ21,23,24,25,26からの反射音とは容易に区別することができ、曲がり部の数である曲がり数は、エルボ21,23,24,25,26に対応して5つであると判断することができる。図10に示すレジューサ8やチー9があっても、ピークの特性が異なっているので、容易に判別することができる。
【0017】
図2は、反射音信号の波形図の例を示す。スピーカ32からは、100Hz〜10kHz程度の周波数成分を含む音がインパルスとして発生される。図2(a)は反射音信号を単に増幅しただけの波形を示し、図2(b)はローパスフィルタ処理を施した後の波形を示す。図2(b)に示すように、たとえば1kHzをカットオフ周波数とするローパスフィルタ処理を施すと、ノイズ成分が低減され、波形は滑らかになる。インパルスの発生は、1秒程度の間隔をおいて、たとえば10回程度行い、その平均をとることによってノイズなどの影響を除去する。
【0018】
図3は、本実施形態での分析方法の概要を示す。図3(a)は概略的な手順を示し、図3(b)はピーク位置を決定する対象となる信号波形を示す。図3(a)のステップa1では、マイクロホンによる反射波の測定を行う。ステップa2では、反射波にローパスフィルタ処理を施し、さらにヒルベルト変換処理で絶対値に変換し、基準となるピーク位置を決定する。図3(b)は、ステップa2での処理結果の一例である。ステップa2の処理結果は、ステップa3で▲1▼として、ステップa1で測定する反射波にハイパスフィルタ処理し、ステップa2のローパスフィルタ処理の結果とのピーク比によって、継手の種類の判断を行う。また、ステップa4で▲2▼として、ステップa1で測定する反射波にハイパスフィルタ処理し、各継手に特有の反射パターンとの比較によって、どの継手であるかを判断する。ステップa5では、▲1▼および▲2▼の判断結果に基づいて、継手までの距離と種類とを判定し、ステップa6で図1に示すような検知結果の表示を行う。
【0019】
図4は、図3(a)のステップa3での▲1▼の判断を(a)で、ステップa4での▲2▼の判断を(b)でそれぞれ示す。図4(a)では、ピーク比の値に基づいて、エルボ単独で同一種類の継手であるか、ストリートエルボを含む異なる種類の継手であるかを判断する。図4(b)では、ピークでの反射パターンが継手の種類による波形の形状の違いを反映していることに基づき、継手の種類を判別する。
【0020】
本発明では、複数の鋼管11,12,13,14,15,16,17がエルボ21,23,24,25,26や直管継手22などの継手で連結される配管10の一端側からインパルス状の音を入射し、反射音信号を受信して音響反射式継手位置検知技術を適用し、継手の位置の検知を行う。反射信号には予め定める信号処理を行い、反射音信号中で継手からの反射に対応するピークを判別する。音の入射から判別したピークまでの時間的な遅れに基づいて、音を入射する一端側から継手までの距離を求めることができる。ピークの特性に基づいて継手の種類を判別するので、継手が単なるエルボか、エルボとストリートエルボとの組合せかなどを適切に判別することができ、インサーション工法などを適用するための事前調査などを精度よく行うことができる。
【0021】
図5は、前述の▲1▼の判断の根拠として、継手がエルボ単独の場合と、エルボとストリートエルボとの組合せである場合とを、反射信号の周波数特性で比較して示す。実線で示すエルボ単独の場合は、1000Hz以下の信号レベルが高く、500Hz〜2000Hzはほぼ平坦であり、2000Hz以上では減衰する。破線で示すエルボとストリートエルボとの組合せの場合は、1000Hz以下の信号レベルがエルボ単独の場合より小さくなり、1000Hz〜2000Hzではエルボ単体の場合よりも大きくなる。このような周波数特性は、ストレートエルボとエルボとを組合せる場合、反射を生じさせる断面変化部分が接近しており、反射波間の干渉で特性が変化していると推定される。
【0022】
図6および図7は、予め試験用に作成した鋼管と継手との組合せに対して、本実施形態による音響反射式継手位置検知を行い、得られる反射信号波形について、1000Hzをカットオフ周波数とするローパスフィルタを通過させた信号の各ピークに対して、ピーク値Lowと、1000Hzをカットオフ周波数とするハイパスフィルタを通過させた信号のピーク値Highとのピーク比High/Lowを計算した結果をそれぞれ示す。図5から、エルボ単独の場合は周波数特性が平坦で、ピーク比High/Lowの値は1に近い。ストレートエルボとエルボとの組合せ(以下、「ストエル」と略称することもある)では、ピーク比High/Lowの値が大きくなる。また、音を入射する位置から離れると、反射音のレベルは下がり、ピーク比High/Lowの値も低下する。このような特性に基づいて、図6および図7にそれぞれ示すように、ピーク比High/Lowの値に基づき、継手がエルボ単独であるか、ストレートエルボとエルボとの組合せであるかを区別することができる。
【0023】
すなわち、▲1▼の方法では、継手の種類の判別を、ピークの特性として、反射音信号の周波数成分の違いに基づいて行う。インパルス状の入射音に対する反射音の周波数成分は、エルボが単独で存在する曲がり部と、エルボとストリートエルボとが近接して存在する曲がり部とで異る分布を示す。このような周波数成分の違いを利用することによって、継手の種類を精度よく判別することができる。
【0024】
図8は、前述の▲2▼の判断の根拠として、ストリートエルボとエルボとを組合せている曲がり部からの反射ピークの波形の例を示す。組合せの場合はピークが2つ現れるのに対し、エルボ単独では1つである。ピークが2つであるか、1つであるかを判別するために、上限閾値および下限閾値を設定し、反射信号波形が上限閾値を超えると矩形波に変換する。上限閾値および下限閾値を適切に設定することができれば、ピーク波形のみを矩形波に変換し、1つのときはエルボ単独で、2つのときはストリートエルボとエルボとの組合せであると判断することができる。各継手について代表的な反射パターンを用意しておくことによって、対象となる配管10に使用されている継手の種類を容易に判別することができる。
【0025】
すなわち▲2▼の方法では、継手の種類の判別を、ピークの特性として、反射音信号の反射パターンの違いに基づいて行う。インパルス状の入射音に対する反射音の波形である反射パターンは、エルボが単独で存在する曲がり部と、エルボとストリートエルボとが近接して存在する曲がり部とで異る形状を示す。このような反射パターンの違いを利用することによって、継手の種類を精度よく判別することができる。
【0026】
以上の説明では、都市ガスの配管に本発明を適用しているけれども、水道管などの他の配管にも本発明を適用することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、音響反射式継手位置検知技術を適用する際に、音を入射する一端側から継手までの距離を求めるばかりではなく、低い周波数帯域での信号レベルのピーク値と、高い周波数帯域での信号レベルのピーク値との比による判別と、反射パターンにおけるピークの数による判別とを組合せて、継手の種類が判別される。このような2つの判別基準で継手の種類を判別するので、単独のエルボ類から成る継手と、複数のエルボ類の組合せから成る継手とを、適切に判別して、各継手の種類を判別することができ、インサーション工法などを適用するための事前調査などを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である配管の継手検知方法の概要を示す簡略化した断面図および表示画面を示す図である。
【図2】図1の実施形態で得られる反射音信号の波形の例を示す波形図である。
【図3】図1の実施形態での概略的な手順を示す工程図、およびピーク位置を決定する対象となる信号波形図である。
【図4】図3のステップa3およびステップa4の判断方法による継手の種類の判別を行う状態を、それぞれ示すグラフである。
【図5】図1の実施形態での反射音信号の周波数特性の例を示すグラフである。
【図6】図1の実施形態で、ピーク比に基づいて継手の種類を判別する実験結果を示すグラフである。
【図7】図1の実施形態で、ピーク比に基づいて継手の種類を判別する実験結果を示すグラフである。
【図8】図1の実施形態で、反射パターンに基づいて継手の種類を判別する実験結果を示す波形図である。
【図9】従来からの典型的な都市ガス供給用配管の曲がり部を示す図である。
【図10】都市ガス供給用配管に用いられる継手の例を示す図である。
【符号の説明】
10 配管
11,12,13,14,15,16,17 鋼管
20 地盤
21,23,24,25,26 エルボ
22 直管継手
30 データ処理装置
31 ディスプレイ装置
32 スピーカ
33 マイクロホン
Claims (1)
- 複数の管が、単独のエルボ類から成る継手および複数のエルボ類の組合せから成る継手のうち少なくともいずれか一方の継手を用いて連結される配管の一端側からインパルス状の音を入射し、
反射音信号を受信して、予め定める信号処理を行い、反射音信号中で継手からの反射に対応するピークを判別し、
音の入射から判別したピークまでの時間的な遅れに基づいて、該一端側から継手までの距離を求め、
予め定める周波数よりも低い周波数帯域での信号レベルのピーク値と、前記予め定める周波数よりも高い周波数帯域での信号レベルのピーク値との比の違いによる判別と、反射パターンにおけるピークの数の違いによる判別とを組合せて、継手が、単独のエルボ類から成る継手および複数のエルボ類の組合せから成る継手のいずれであるかを判別することを特徴とする配管の継手検知方法。
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