JP3929407B2 - 液体クロマトグラフィー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原液から目的とする物質を分離して分取する液体クロマトグラフィーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば薬品の原液から目的とする薬品化合物を分離して分取したり、光学異性体から左形と右形の化合物を分離して分取するのに、カラムクロマトを用いた液体クロマトグラフィーが使用されている(例えば下記特許文献1)。
【0003】
液体クロマトグラフィーは、中空シリンダー内に充填物として例えばシリカゲルを圧入して充填し、上下の開放部を固定フランジで塞ぎ、内部に原液を供給して目的物を分離して分取していた。
【0004】
しかし、従来の液体クロマトグラフィーは、フィルターとその周囲のパッキンとの密閉が困難であり、充填物が外部に漏れ出したり、気密性を保てないという問題があった。また、使用中に充填物の体積が収縮したり、供給口近傍の充填物が汚れて部分的に除去した場合など、内部に空隙が生じてしまうという問題があった。内部に空隙が生じると、分離効率(分離理論段数)が下がるという問題が起こる。さらに、充填物を充填したり充填し直す際は、カラム(中空シリンダー)を充填物製品のメーカーや専門業者に送り、作業をしてもらわなければならず、コストが高く不便であるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−201672号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、フィルターとその周囲のパッキンとのしっかりとした密閉ができる液体クロマトグラフィーを提供することを第1番目の目的とする。本発明の第2番目の目的は、可動栓を移動させても内部の充填物が外部に漏れ出すことはなく、カラム充填物の体積変化に応じて可動栓を移動できる液体クロマトグラフィーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の液体クロマトグラフィーは、原液を中空シリンダー内の充填層を通過させて、目的とする物質を分離して分取する液体クロマトグラフィーであって、
前記中空シリンダーの少なくとも一方の開放端には、前記中空シリンダーの内部に収納される栓を含み、
前記栓の外周は、断面方向から見て少なくとも一つの段差を有し、
内側が前記段差に密着して配置され、外側が前記中空シリンダーの内壁に対してテーパー面を含むフィルターパッキンと、
前記フィルターパッキンの外周に密着して配置され、外側が前記中空シリンダーの内壁に密着するシールパッキンを備え、
前記栓と前記フィルターパッキンと前記シールパッキンにより、前記充填物を密閉していることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の液体クロマトグラフィーは、中空シリンダー(以下「カラム」ともいう。)の直径に対して、栓の直径は短く、若干のスペースを有している。若干のスペースがないと、栓はカラム内にスライドして入り込むことができない。好ましいスペースの長さは、約10μm程度である。カラムの内部に充填する充填物は、例えばシリカゲルや珪藻土など、平均直径5〜30μm程度の微粒子やゲルであるから、前記のスペースを完全に密閉しないと外部に漏れ出してしまう。さらに、完全密閉しないと、内部を加圧することもできない。とくにフィルターとその周囲との部分の密閉が重要で、従来は良いパッキンがなかったため、充填物の漏れ出しが多かった。
【0009】
したがって、カラム内壁面と栓の外周との間にパッキンを介在させることが必要となる。しかし、カラム内部は加圧の場合もあり、簡単なパッキンでは完全密閉のシールはできない。
【0010】
そこで本発明は、
(1)栓の外周は断面方向から見て少なくとも一つの段差を有し、
(2)この段差に密着して配置され、外側が前記中空シリンダーの内壁に対してテーパー面を含むフィルターパッキンと、
(3)このフィルターパッキンの外周に密着して配置され、外側がカラム(中空シリンダー)内壁に密着するシールパッキンを備え、
(4)栓とフィルターパッキンとシールパッキンにより、充填物を密閉する
ことにより、完全密閉のシール構造を実現できた。
【0011】
すなわち、栓の外周の段差構造により栓とフィルターパッキンは密着し、外部または内部から圧力がかかっても、栓の動きに対してフィルターパッキンとシールパッキンは一体となって動く。また、テーパー部によりシールパッキンは外側に動く力が作用するので、シールパッキンとカラム内壁の密着性は強くなる。また、テーパー部によりフィルターパッキンは内側に動く力が作用するので、フィルターパッキンと栓の密着性は高くなる。さらに、栓の内側(充填物側)にはフィルターを配置する必要があるが、フィルターパッキンは内側に動く力が作用するので、フィルターパッキンとフィルターとの密着性も高くなる。
【0012】
前記栓は、可動栓であっても良いし、固定栓であっても良い。可動栓とする場合は、本発明の第2番目の目的も達成できる。すなわち、カラム内で可動栓を押し込んだり逆方向に移動させるに際し、内部の気密性を保ちながら移動させることができる。この結果、可動栓を移動させても内部の充填物が外部に漏れ出すことはなく、カラム充填物の体積変化に応じて可動栓を移動できる。また、カラム充填物の微調整も容易なことから、液体クロマトグラフィーの使用者が自らカラム充填物を充填することが可能となる。
【0013】
本発明において、栓の外周が、充填物側の直径が長い少なくとも一つの段差である場合は、フィルターパッキンの外側は、充填物側に向かって厚くなるテーパーであることが好ましい。また、栓の外周が、充填物側の直径が短い少なくとも一つの段差である場合は、フィルターパッキンの外側は、充填物側に向かって薄くなるテーパーであることが好ましい。前記テーパーの好ましい角度は、カラム内壁面を基準線としたとき、±5°〜±60°の範囲であり、より好ましくは±10°〜±45°の範囲である。
【0014】
前記フィルターパッキンおよび前記シールパッキンから選ばれる少なくとも一方のパッキンの上にさらに必要に応じてバックスペーサーを介して可動栓フランジを備えるか、または必要に応じてバックスペーサーを介して可動栓ステータを備えることが好ましい。バックスペーサーを介して可動栓フランジを備える場合は、可動栓フランジに孔を設けることができるので、これにボルトを挿入してボルト締め作業により可動栓を押し込むことができる。また、バックスペーサーを介して可動栓ステータを備えた場合は、油圧装置により可動栓を押し込むことができる。前記した両者の場合、バックスペーサーが介在しているので、フィルターパッキンまたはシールパッキンが痛むことはない。
【0015】
前記フィルターパッキンおよび前記シールパッキンは、合成樹脂製であることが好ましい。合成樹脂としては、一例としてポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブテン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエンなどのポリオレフィン;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステルなどのポリエステル;ポリイミド(PI);ポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネ−ト;ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケント(PEK);ポリエーテルエーテルケント(PEEK);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)、ポリ弗化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)などのフッ素樹脂を挙げることができる。前記合成樹脂のうち、化学的安定性を要求される場合はフッ素樹脂が好ましい。また化学的安定性とともに機械的強度も要求される場合は、PEEK樹脂が好ましい。パッキンの製造方法は、任意な方法を選択でき、射出成形または注型成形でもよいし、切削加工などでもよい。
【0016】
前記液体クロマトグラフィーの中空シリンダー内の圧力は、いかなる範囲であってもよいが、1MPa〜100MPaの範囲である場合に、顕著な作用・効果を発揮する。また、中空シリンダー内の内径はいかなる範囲でもよいが、一例として20mm〜1000mmの範囲を挙げることができる。
【0017】
【実施例】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。
【0018】
(実施例1)
以下、図面により本発明の実施例1の液体クロマトグラフィーを説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例1における液体クロマトグラフィーの断面図であり、図2は同Aの部分の拡大図、図4は図1の部分切り欠き斜視図である。中空シリンダー(カラム)1と、充填物の充填層2と、原液供給口3と、分離液取り出し口4と可動栓5と固定栓17とを含んでいる。中空シリンダー(カラム)1はステンレススチール(SUS316)で作成され、大きさは一例として、外径114.3mm、内径102.3mm、高さ240mmである。本実施例においては、可動栓を上に配置した例を示したが、上下少なくとも一方または両方に配置してもよい。
【0020】
可動栓5と固定栓17はステンレススチール(SUS316)で作成され、大きさは一例として、中空シリンダー(カラム)1の内径より10μmだけ小さく作成されている。しかし、本発明のパッキンは気密性が高いので、中空シリンダー(カラム)1の内径と、可動栓5および固定栓17の外径との隙間(クリアランス)をさらに大きく取っても差し支えない。すなわち、中空シリンダー(カラム)1の内径と、可動栓5および固定栓17の外径との加工精度をそれほど上げなくても気密密封できる。
【0021】
可動栓5と固定栓17の外周には、断面方向から見て少なくとも一つの段差6が形成されている。この段差6は、充填物側の直径が長い。好ましい突出長さは1mm以上5mm以下である。この段差6により、外側のパッキンは上下方向に動かなくなる。
【0022】
可動栓5と固定栓17の外側にはフィルターパッキン7を配置した。フィルターパッキン7の内側は可動栓5と固定栓17の段差6に密着するように形成されている。またフィルターパッキン7の外側は、上部が中空シリンダー(カラム)1と平行で、下部は充填物側に向かって厚くなるテーパーを形成した。
【0023】
フィルターパッキン7の外周にはシールパッキン8を配置した。シールパッキン8の内側はフィルターパッキン7の外側と密着させ、外側は中空シリンダー1の内壁に密着させた。フィルターパッキン7とシールパッキン8は、ポリテトラフルオロエチレンのプレートから切削成形加工により形成した。
【0024】
可動栓5と固定栓17の内側(充填物側)には、ディストリビュータ(分散板)9とフィルター10を可動栓5と固定栓17に一体化して配置した。
【0025】
可動栓5の外側(外気側)には、フィルターパッキン6およびシールパッキン7の上にさらにバックスペーサー11を介して可動栓フランジ12を配置した。可動栓フランジ12には、可動栓5と一体化するための締め付けナット13と、中空シリンダー(カラム)1に対して押し込むことが可能なボルト16を挿入する孔15を設けた。中空シリンダー(カラム)1側にもボルト16を挿入する孔14を設けた。
【0026】
固定栓17の外側には円盤状のプレート(フランジ)20を配置し、ボルト18,19により固定栓17を中空シリンダー(カラム)1の下端部に固定した。
【0027】
中空シリンダー(カラム)1内に充填物として、平均直径約10μmのシリカゲルを充填し、ボルト16を締め付けて5MPaの圧力をかけた。これにより、中空シリンダー(カラム)1内は完全密閉されていることが確認できた。
【0028】
本実施例の装置は、カラム内で可動栓5を押し込んだり逆方向に移動させるに際し、内部の気密性を保ちながら移動させることができた。また、可動栓5を移動させても内部の充填物が外部に漏れ出すことはなく、カラム充填物の体積変化に応じて可動栓5を移動できた。また、可動栓5と固定栓17の内側(充填物側)のフィルター10とフィルターパッキン6およびシールパッキン7との密着性も良好で、この部分からの充填物の漏れ出しもなかった。さらに、カラム充填物の微調整も容易なことから、液体クロマトグラフィーの使用者が自らカラム充填物を充填することが可能であった。
【0029】
(実施例2)
実施例1に代えて、図3に示すとおり可動栓25の段差26の方向を図1と逆方向にし、これに合わせてフィルターパッキン27およびシールパッキン28のテーパー角度も逆向きにした。このようにしても、中空シリンダー(カラム)1の内圧に対して強い構造となり、中空シリンダー(カラム)1内は完全密閉されていることが確認できた。なお、同一符号を付与している部品は図1〜2と同一部品を示す。
【0030】
この実施例の装置も、カラム内で可動栓を押し込んだり逆方向に移動させるに際し、内部の気密性を保ちながら移動させることができた。また、可動栓を移動させても内部の充填物が外部に漏れ出すことはなく、カラム充填物の体積変化に応じて可動栓を移動できた。さらに、カラム充填物の微調整も容易なことから、液体クロマトグラフィーの使用者が自らカラム充填物を充填することが可能であった。
【0031】
(実施例3)
実施例1の可動栓フランジに代えて、図5に示すとおり移動栓ステータ30を配置した。移動栓ステータ30の外側には油圧機を固定して1MPa〜10MPaの圧力をかけた。これにより、中空シリンダー(カラム)1内は完全密閉されていることが確認できた。なお、同一符号を付与している部品は図1〜4と同一部品を示す。
【0032】
この実施例の装置も、カラム内で可動栓を押し込んだり逆方向に移動させるに際し、内部の気密性を保ちながら移動させることができた。また、可動栓を移動させても内部の充填物が外部に漏れ出すことはなく、カラム充填物の体積変化に応じて可動栓を移動できた。さらに、カラム充填物の微調整も容易なことから、液体クロマトグラフィーの使用者が自らカラム充填物を充填することが可能であった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明は、可動栓を移動させても内部の充填物が外部に漏れ出すことはなく、カラム充填物の体積変化に応じて可動栓を移動できる液体クロマトグラフィーを提供できる。また、カラム内で可動栓を押し込んだり逆方向に移動させるに際し、内部の気密性を保ちながら移動させることができ、さらに、カラム充填物の微調整も容易なことから、液体クロマトグラフィーの使用者が自らカラム充填物を充填することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における液体クロマトグラフィーの断面図である。
【図2】図1のA部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例2における液体クロマトグラフィーの要部拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例1における液体クロマトグラフィーの部分切り欠き斜視図である。
【図5】本発明の実施例3における液体クロマトグラフィーの部分切り欠き斜視図である。
【符号の説明】
1 中空シリンダー(カラム)
2 充填層
3 原液供給口
4 分離液取り出し口
5,25 可動栓
6,26 段差
7,27 フィルターパッキン
8,28 シールパッキン
9 ディストリビュータ(分散板)
10 フィルター
11 バックスペーサー
12 可動栓フランジ
13 締め付けナット
14,15 ボルト挿入孔
16,18,19 ボルト
17 固定栓
20 円盤状のプレート(フランジ)
30 移動栓ステータ
Claims (8)
- 原液を中空シリンダー内の充填層を通過させて、目的とする物質を分離して分取する液体クロマトグラフィーであって、
前記中空シリンダーの少なくとも一方の開放端には、前記中空シリンダーの内部に収納される栓を含み、
前記栓の外周は、断面方向から見て少なくとも一つの段差を有し、
内側が前記段差に密着して配置され、外側が前記中空シリンダーの内壁に対してテーパー面を含むフィルターパッキンと、
前記フィルターパッキンの外周に密着して配置され、外側が前記中空シリンダーの内壁に密着するシールパッキンを備え、
前記栓と前記フィルターパッキンと前記シールパッキンにより、前記充填物を密閉していることを特徴とする液体クロマトグラフィー。 - 前記栓が、可動栓または固定栓である請求項1に記載の液体クロマトグラフィー。
- 前記栓の外周が、充填物側の直径が長い少なくとも一つの段差である場合は、前記フィルターパッキンの外側は、充填物側に向かって厚くなるテーパーである請求項1または2に記載の液体クロマトグラフィー。
- 前記栓の外周が、充填物側の直径が短い少なくとも一つの段差である場合は、前記フィルターパッキンの外側は、充填物側に向かって薄くなるテーパーである請求項1または2に記載の液体クロマトグラフィー。
- 前記フィルターパッキンおよび前記シールパッキンから選ばれる少なくとも一方のパッキンの上にさらに可動栓フランジ、または可動栓ステータを備えた請求項2〜4のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー。
- 前記フィルターパッキンおよび前記シールパッキンが、合成樹脂製である請求項1〜5のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー。
- 前記中空シリンダー内の圧力が、1MPa以上である請求項1〜6のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー。
- 前記中空シリンダー内の内径が、20mm〜1000mmの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー。
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