JP3927350B2 - 遅延ロックループ、受信装置およびスペクトル拡散通信システム - Google Patents

遅延ロックループ、受信装置およびスペクトル拡散通信システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直接拡散スペクトラム拡散通信システムに用いられる遅延ロックループ(以降、DLLと呼ぶ)に関するものであり、特に、送信装置側から受け取った信号に乗算されている拡散符号系列と、受信装置側の相関器で用いる拡散符号系列と、の符号同期追跡を行うDLL、このDLLを用いた受信装置およびスペクトル拡散通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来のDLLについて説明する。近年、移動体通信システムや衛星通信システムでは、画像、音声、およびデータ等の伝送方式の一つとして、「スペクトラム拡散方式を用いた符号分割多元接続通信方式」が検討されている。また、以下の従来技術で用いられる直接拡散方式は、情報信号よりもはるかに広帯域の拡散符号系列を情報信号に直接乗算することにより、情報信号を拡散して通信を行う方式である。
【0003】
上記従来のスペクトル拡散通信システムとしては、たとえば、特開平6−197096号公報に記載された「移動通信システム(以降、オフセット多重化SSシステムと呼ぶ)」があり、このオフセット多重化SSシステムでは、パラレルデータに対して同一の拡散符号を用いてスペクトル拡散を行い、時間オフセットを与え、さらに多重化処理を行い、その後、データ通信を行う。
【0004】
図10は、特開平4−347944に記載されている上記直接拡散方式を採用した従来のDLLの構成を示す図である。なお、DLLは、初期捕捉回路で確立した送信側と受信側との符号同期を追跡するための回路である。また、ここでいう符号同期状態とは、データ復調時において、受信信号に乗算されている拡散符号と相関器で用いている拡散符号との位相が、等しい状態のことを示す。
【0005】
図10において、111および112は二乗算出部であり、113は加算部であり、114は入力された信号に対してδ時間(0<δ≦2Tc)の遅延を付加する遅延部であり、115は減算部であり、116はラッチ部であり、117はループフィルタであり、118はフィルタリングされた誤差信号を用いてチップレートRcのM倍の周波数帯を持つクロックのタイミング位相を変えることでサンプルクロックを発生する電圧制御発振器(以降、VCCと呼ぶ)であり、119はデータクロック発生部であり、120は入力された信号に対してδ/2時間の遅延を付加する遅延部である。
【0006】
つぎに、たとえば、多重数N=1および遅延係数τ1=0の場合における従来のDLLの動作を説明する。従来のDLLにおいて、まず、二乗算出部111および112では、それぞれ、同相相関信号および直交相関信号を二乗した値を出力する。そして、加算部113では、二乗後の同相相関信号および二乗後の直交相関信号を加算し、その加算結果として相関電力を出力する。さらに、減算部115では、遅延部114にて遅延が付加された相関電力から加算部11にて出力される相関電力を減算することにより、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す誤差信号を生成する。
【0007】
データクロック発生部119では、多重RF信号に乗算されている拡散符号系列の周期Tpに同期した捕捉パルスに基づいて、サンプルクロックを分周することにより、相関電力がピークを持つタイミングで立ち上りエッジを持ち、かつクロック周期Tpとなるデータクロックを発生する。
【0008】
ラッチ部116では、遅延部120にてδ/2時間の遅延が付加されたデータクロックの立ち上りエッジで、上記誤差信号をラッチする。そして、ループフィルタ117では、ラッチされた誤差信号に対してフィルタリング処理を実行することで、雑音成分を除去し、高SN比の誤差信号を生成する。最後に、VCC118では、ループフィルタ117から出力されるフィルタリング処理後の誤差信号に基づいて、チップレートRcのM倍の周波数帯を持つクロックのタイミング位相を変えることで、サンプルクロックを生成する。
【0009】
つぎに、上記従来のDLLの動作を、式を用いて説明する。たとえば、送信搬送波角周波数をωcとし、時刻tにおけるディジタル情報信号をD(t)とし、符号長をLとし、チップ周期をTcとし、符号周期LTcを持つPN信号をc(t)とすると、受信RF信号f(t)は、式(1)のように表すことができる。
f(t)=D(t)c(t)cos(ωct)
+jD(t)c(t)sin(ωct) …(1)
【0010】
ただし、ここでは、受信装置にて採用されている電圧制御搬送波発振器(以降、VCOと呼ぶ)で発生する局部搬送波の周波数が、送信搬送波角周波数と同じ値ωcを持つと仮定する。したがって、受信装置にて準同期検波処理後の同相成分(複素スペクトル拡散信号の同相成分)を信号I(t)とすると、信号I(t)は、式(2)のように表すことができる。
I(t)=D(t)c(t)cos(Δθ)
(ただし、Δθは送受信間のキャリア位相差) …(2)
【0011】
同様に、受信装置にて準同期検波処理後の直交成分(複素スペクトル拡散信号の直交成分)を信号Q(t)とすると、信号Q(t)は、式(3)のように表すことができる。
Q(t)=D(t)c(t)sin(Δθ) …(3)
【0012】
また、受信装置内では、準同期検波後の同相成分I(t)および直交成分Q(t)から、同相相関信号SI(t)と直交相関信号SQ(t)を求める。同相相関信号SI(t)および直交相関信号SQ(t)は、それぞれ、式(4)および式(5)のように表すことができる。
【0013】
【数1】
Figure 0003927350
【0014】
【数2】
Figure 0003927350
【0015】
したがって、加算部113では、式(6)のように相関電力SP(t)を求める。
【0016】
【数3】
Figure 0003927350
【0017】
ただし、時刻αにおいて初期捕捉が完全に行われている場合、ディジタル情報信号D(α+kTc)は、相関演算中にデータの変化点を持たない(k=0,1,2,…,L―1)。また、符号同期が完全に実現されている時刻をα=0とする。そのため、相関演算中のD(α+kTc)は、 “1”または“−1”の一定値となり、相関電力SP(α)は、(7)式のように表すことができる。
【0018】
【数4】
Figure 0003927350
【0019】
図11は、式(7)から求められる相関電力特性を示す図である。図11にて示されているように、相関電力SP(α)は、時刻α=0においてピークとなる。
【0020】
減算部115出力の誤差信号は、δ/2時間の遅延が付加されたデータクロックの立ち上りエッジでラッチされるため、時刻γ=α+δ/2における誤差信号DS(γ)の値を算出する必要がある。したがって、誤差信号DS(γ)は、式(8)のように、遅延部114にてδ時間の遅延が付加された相関電力SP(γ−δ)から加算部115にて出力された相関電力SP(γ)を減算することで求められる。
【0021】
【数5】
Figure 0003927350
【0022】
図12は、δ=Tcの場合における誤差信号DS(γ)の振幅特性を示す図である。図12にて示されているように、誤差信号DS(γ)は、座標原点を通るS字状となり、γ>0において、DS(γ)>0となる特性を持ち、一方、γ<0において、DS(γ)<0となる特性を持つ。
【0023】
したがって、VCC118では、上述のように求めた誤差信号DS(γ)がDS(γ)=0となるような電圧制御で、PN信号の同期追跡を行うこととなる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記、従来のDLLにおいては、前述した誤差信号が、多重化されている複数の並列データ系列における1チャネル分のデータ系列の相関電力から生成されているため、誤差信号のSN比が低くなる。そのため、従来のDLLから出力されるサンプルクロックおよびサンプルクロックを分周して生成するデータクロック、の精度を高くするためには、ループフィルタ(117)の帯域を狭くする必要がある。このような場合、従来のDLLでは、フィルタリング処理に多くの時間を要するため、それに伴って同期追跡特性が劣化する、という問題があった。
【0025】
また、反対にループフィルタの帯域を広くした場合には、前述した誤差信号の雑音成分を十分に除去できないため、サンプルクロックおよびデータクロックの精度が低くなり、受信装置およびスペクトル拡散通信システムにおける復調データのビット誤り率特性が劣化する、という問題があった。
【0026】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、従来のDLLと比較して、高精度で良好な同期追跡特性を実現可能なDLLを得ること、また、このDLLを用いることで復調データのビット誤り率特性を向上可能な受信装置およびスペクトル拡散通信システムを得ることを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる遅延ロックループにあっては、複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号、および複素スペクトル拡散信号の直交成分と拡散符号系列との直交相関信号、に基づいて、送信側と受信側の符号同期を追跡することで、サンプルクロックおよびデータクロックを生成する構成とし、前記同相相関信号と前記直交相関信号をそれぞれ二乗し、さらに、二乗後の同相相関信号と直交相関信号とを加算することで、相関電力を生成する相関電力生成手段(後述する実施の形態の二乗算出部1,2、加算部3に相当)と、前記相関電力をN(2以上の整数)個に分岐し、各相関電力のピークタイミングを揃えるようにそれぞれ異なる第1の遅延時間を与える遅延補正手段(各遅延補正部に相当)と、前記遅延補正後の各相関電力を加算することで合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段(加算部5に相当)と、前記合成相関電力に対して第2の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段(遅延部6、減算部7に相当)と、前記拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段(データクロック発生部11に相当)と、前記データクロックに対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段(ラッチ部8、ループフィルタ9、VCC10、遅延部12に相当)と、を備え、前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする。
【0029】
つぎの発明にかかる受信装置にあっては、送信側の装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行うスペクトル拡散通信システムを構成し、受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段(RF増幅部312、準同期検波部313に相当)と、前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段(相関信号算出部314に相当)と、前記同相相関信号および直交相関信号に基づいて、前記複素スペクトル拡散信号に乗算されている拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段(初期捕捉部315に相当)と、前記同相相関信号と前記直交相関信号をそれぞれ二乗し、さらに、二乗後の同相相関信号と直交相関信号とを加算することで、相関電力を生成する相関電力生成手段と、前記相関電力をN(2以上の整数)個に分岐し、各相関電力のピークタイミングを揃えるようにそれぞれ異なる第1の遅延時間を与える第1の遅延補正手段と、前記遅延補正後の各相関電力を加算することで合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、前記合成相関電力に対して第2の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、前記データクロックに対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第4の遅延時間を与える第2の遅延補正手段(各遅延補正部に相当)と、前記遅延補正後の各信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段(各データ復調部、P/S317に相当)と、を備え、前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする。
【0030】
つぎの発明にかかる受信装置にあっては、送信側の装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行うスペクトル拡散通信システムを構成し、受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第1の遅延時間を与える遅延補正手段(各遅延補正部321に相当)と、前記遅延補正後の各同相相関信号をそれぞれ二乗し、同様に、前記遅延補正後の各直交相関信号をそれぞれ二乗し、その後、すべての二乗値を加算することで、合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段(同相二乗算出部331、直交二乗算出部332、加算部333に相当)と、前記合成相関電力に基づいて、前記拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段(符号同期点検出部21に相当)と、前記合成相関電力に対して第2の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、前記データクロックに対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、前記遅延補正後のN個の同相相関信号とN個の直交相関信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、を備え、前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする。
【0033】
つぎの発明にかかるスペクトル拡散通信システムにあっては、送信装置と受信装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行い、前記送信装置は、入力直列データ系列から生成されたN個の並列データ系列と、拡散符号系列と、をそれぞれ乗算することで、N個の並列スペクトル拡散信号を生成する拡散変調手段(S/P212、各拡散変調部221に相当)と、前記各並列スペクトル拡散信号に対してそれぞれ異なる第1の遅延時間を与え、遅延処理後のすべての並列スペクトル拡散信号を加算することで、多重スペクトル拡散信号を生成する多重手段(各遅延部222、多重化部223に相当)と、前記多重スペクトル拡散信号を無線周波数信号に変換することで多重RF信号を生成する多重RF信号生成手段(周波数変換部224、電力増幅部225に相当)と、を備え、さらに、前記受信装置は、受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、前記同相相関信号および直交相関信号に基づいて、前記複素スペクトル拡散信号に乗算されている拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段と、前記同相相関信号と前記直交相関信号をそれぞれ二乗し、さらに、二乗後の同相相関信号と直交相関信号とを加算することで、相関電力を生成する相関電力生成手段と、前記相関電力をN(2以上の整数)個に分岐し、各相関電力のピークタイミングを揃えるようにそれぞれ異なる第2の遅延時間を与える第1の遅延補正手段と、前記遅延補正後の各相関電力を加算することで合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、前記合成相関電力に対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、前記データクロックに対して第4の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第5の遅延時間を与える第2の遅延補正手段と、前記遅延補正後の各信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、を備え、前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする。
【0034】
つぎの発明にかかるスペクトル拡散通信システムにあっては、送信装置と受信装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行い、前記送信装置は、入力直列データ系列から生成されたN個の並列データ系列と、拡散符号系列と、をそれぞれ乗算することで、N個の並列スペクトル拡散信号を生成する拡散変調手段と、前記各並列スペクトル拡散信号に対してそれぞれ異なる第1の遅延時間を与え、遅延処理後のすべての並列スペクトル拡散信号を加算することで、多重スペクトル拡散信号を生成する多重手段と、前記多重スペクトル拡散信号を無線周波数信号に変換することで多重RF信号を生成する多重RF信号生成手段と、を備え、さらに、前記受信装置は、受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第2の遅延時間を与える遅延補正手段と、前記遅延補正後の各同相相関信号をそれぞれ二乗し、同様に、前記遅延補正後の各直交相関信号をそれぞれ二乗し、その後、すべての二乗値を加算することで、合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、前記合成相関電力に基づいて、前記拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段と、前記合成相関電力に対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、前記データクロックに対して第4の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、前記遅延補正後のN個の同相相関信号とN個の直交相関信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、を備え、前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる遅延ロックループ(DLL)、受信装置およびスペクトル拡散通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0038】
実施の形態1.
本実施の形態のDLLは、スペクトル拡散通信システム、詳細には、オフセット多重化SSシステムに備えられた状態を想定し、たとえば、サンプルクロックおよびデータクロックの生成処理において、従来技術と比較して、高精度かつ良好な同期追跡特性を実現する。
【0039】
図1は、本発明にかかるDLLの構成を示す図である。図1において、1および2は二乗算出部であり、3は加算部であり、4−1〜4−Nは遅延補正部であり、5は加算部であり、6は入力された信号に対してδ時間(0<δ≦2Tc)の遅延を付加する遅延部であり、7は減算部であり、8はラッチ部であり、9はループフィルタであり、10はVCCであり、11はデータクロック発生部であり、12は入力された信号に対してδ/2時間の遅延を付加する遅延部である。
【0040】
つぎに、上記のように構成される本実施の形態のDLLの動作について説明する。本実施の形態においては、まず、前述の従来技術におけるDLL(図10の準同期検波部313、相関信号算出部314、二乗算出部111と112、および加算部113に相当)と同様に、図示の準同期検波部313、相関信号算出部314、二乗算出部1と2、および加算部3を用いて、相関電力を算出する。
【0041】
そして、算出された相関電力はN個に分岐され、遅延補正部4−1〜4−Nでは、そのN個の相関電力に対して、それぞれ、{TP−τ1c,TP−τ2c,TP−τ3c,・・・,TP−τNc}分の遅延補正時間を付加し、Nチャネルの各並列データ系列におけるそれぞれの相関電力のピークタイミングを揃える。ただし、TPは符号周期を表す。
【0042】
加算部5では、遅延補正部4−1〜4−Nにて遅延が付加されたN個の相関電力を加算し、その加算結果を合成相関電力として出力する。さらに、減算部7では、遅延部6でδ時間の遅延が付加された合成相関電力値から、加算部5が出力する相関電力値を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する。
【0043】
データクロック発生部11では、多重RF信号に乗算されている拡散符号系列の周期Tpに同期した捕捉パルスに基づいて、サンプルクロックを分周することで、合成相関電力がピークのタイミングで立ち上りエッジを持ち、かつ周期Tpを持つ、データクロックを発生する。
【0044】
ラッチ部8では、遅延部12にてδ/2時間の遅延が付加されたデータクロックの立ち上りエッジで、合成誤差信号をラッチする。そして、ループフィルタ9では、ラッチされた合成誤差信号に対してフィルタリング処理を実行することで、雑音成分を除去し、高SN比の合成誤差信号を生成する。最後に、VCC10では、フィルタリング処理後の合成誤差信号に基づいて、チップレートRcのM倍の周波数帯を持つクロックのタイミング位相を変えることで、サンプルクロックを生成する。
【0045】
つぎに、本実施の形態におけるDLLの動作を、式を用いて説明する。たとえば、時刻tにおけるN個の並列データ系列をDi(t)とし(i=1,2,…,N)、符号長をLとし、チップ周期をTcとし、符号長Lおよびチップ周期TcのPN信号をc(t)とし、後述する送信装置側の遅延部(222−1〜222−N)で与えられる遅延時間をそれぞれ{τ1c,τ2c,τ3c,…,τNc}(ただし、{τ1,τ2,τ3,…,τN}は、0≦τ1<τ2<τ3<…<τN<Lを満たす整数である)とすると、後述する送信装置側の多重部(223)で生成される多重スペクトル拡散信号MS(t)は、式(9)のように表すことができる。
【0046】
【数6】
Figure 0003927350
【0047】
そして、受信装置側で受け取った多重スペクトル拡散信号MS(t)に基づいて、図示の準同期検波部313から出力される複素スペクトル拡散信号CS(t)は、熱雑音等が存在しない場合、式(10)のように表すことができる。
【0048】
【数7】
Figure 0003927350
ただし、Δθは送受信間のキャリア位相差である。
【0049】
また、複素スペクトル拡散信号CS(t)に基づいて、図示の相関信号算出部314で算出される同相相関信号SI(t)および直交相関信号SQ(t)は、式(11)および式(12)のように表すことができる。
【0050】
【数8】
Figure 0003927350
【0051】
【数9】
Figure 0003927350
【0052】
したがって、二乗算出部1と2、および加算部3を用いて算出される相関電力SP(t)は、式(13)のように表すことができる。
【0053】
【数10】
Figure 0003927350
【0054】
図2は、上記オフセット多重化SSシステムにおける多重数N=3の場合の相関電力と捕捉パルスのタイミングチャートを示す図である。たとえば、相関電力SP(t)においては、多重化されている各並列スペクトル拡散信号に乗算されている拡散符号がそれぞれ符号同期している場合に、ピークを持つ。そのため、各並列スペクトル拡散信号に対する相関電力のピークは、図2で示されるように、基準符号同期点(送信装置の各遅延部で与えられる遅延時間が“0”の場合の符号同期点)から、送信装置の各遅延部で与えられた、たとえば、遅延時間{τ1c,τ2c,τ3c}後のタイミングで発生する。
【0055】
そこで、遅延補正部4−1〜4−Nでは、N個に分岐された相関電力SP(t)を、それぞれ時間−τicだけ遅延時間を補正した信号SPi(t)=SP(t+τic)を生成する(i=1,2,…,N)。なお、実際の構成において、遅延補正部4−1〜4−Nでは、N個に分岐された相関電力SP(t)に対して、それぞれ時間Tp−τic(i=1,2,…,N)の遅延時間補正を行うが、ここでは、式の簡略化のため、たとえば、−τic(i=1,2,…,N)の遅延時間補正を行う。すなわち、拡散符号周期Tp時間後に、加算部5から出力される合成相関電力SPG(t)は、式(14)のように表すことができる。
【0056】
【数11】
Figure 0003927350
【0057】
上記式(13)から明らかなように、相関電力SP(t)は、時刻t=vTp+wTc(v=0,±1,±2,…、w=1,2,…,N)にて各信号Dw(t)に対応する相関電力ピークが存在することから、遅延補正部4−1〜4−Nおよび加算部5にて構成されるFIRフィルタは、相関電力SP(t)に対するマッチドフィルタとして作用する。したがって、時刻t=vTpにおいて、すべての信号Dw(t)に対応する相関電力ピークが合成されるため、合成相関電力SPG(t)のSN比を向上させることができる。
【0058】
また、上記式(14)から明らかなように、合成相関電力SPG(t)には、拡散符号周期Tp時間あたりN2個の相関電力ピークが存在することになる。このN2個の相関電力ピークにおけるN個は、時刻t=vTpで発生する。しかしながら、残りのN(N−1)個の相関電力ピークは、時刻t=vTp+(τx−τy)Tcで発生する(x=1,2,…,N、y=1,2,…,N、x≠y)。そのため、これらN(N−1)の相関電力ピークについては、時刻t≠vTpで発生するサイドローブとなり、DLLから出力されるサンプルクロック、およびデータクロックの同期追跡特性やクロック精度を劣化させる要因となる。
【0059】
合成誤差信号については、δ/2時間の遅延が付加されたデータクロックの立ち上りエッジでラッチされるため、時刻t’=t+δ/2における合成誤差信号DSG(t’)の値を算出する必要がある。合成誤差信号DSG(t’)は、式(15)のように、遅延部6でδ時間の遅延が付加された合成相関電力SPG(t’−δ)から、加算部5が出力する合成相関電力SPG(t’)を減算することで求める。
【0060】
【数12】
Figure 0003927350
【0061】
ただし、合成誤差信号DSG(t’)は、従来技術におけるDLLの誤差信号DS(γ)と同様に、座標原点を通るS字状となり、t’>0において、DSG(t’)>0となる特性を持ち、t’<0において、DSG(t’)<0となる特性を持つ。
【0062】
したがって、VCC10では、上述のように求めた合成誤差信号DSG(t’)がDSG(t’)=0となるような電圧制御で、PN信号の同期追跡を行うこととなる。なお、合成誤差信号DSG(t’)は、(15)式に表記されるように、合成相関電力SPG(t’−δ)と合成相関電力SPG(t’)の差分値で求められるため、上述したように、合成相関電力SPG(t)において時刻t≠vTpで発生するN(N−1)の相関電力ピークがサイドローブとなり、合成相関電力DSG(t’)特性を劣化させることが考えられる。
【0063】
このDSG(t’)特性の劣化は、DLLで必要とされる同期追跡範囲である−Tc/2<t’<Tc/2の範囲において、合成相関電力SPG(t−δ/2)またはSPG(t+δ/2)がサイドローブを発生した場合に起こる。また、合成相関電力SPG(t)のサイドローブは、時刻t=vTp+(τx−τy)Tcを中心に、前後Tcの時間区間で発生する(x=1,2,…,N;y=1,2,…,N;x≠y)。
【0064】
すなわち、サイドローブ発生時間をΔtxy=(τx−τy)Tcと定義し、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対してサイドローブ発生時間Δtxyが式(16)を常に満たす場合、DLLで必要とされる同期追跡範囲である−Tc/2<t’<Tc/2の範囲において、合成相関電力SPG(t−δ/2)およびSPG(t+δ/2)でサイドローブが発生しなくなる。
【0065】
【数13】
Figure 0003927350
【0066】
図3は、オフセット多重化SSシステムにおける多重数N=4,δ=Tcの場合の合成誤差信号DPG(t’)特性を示す図である。図3のとおり、式(16)を常に満足しない遅延係数(τ1,τ2,τ3,τ4)=(0,1,2,3)が与えられた場合の合成誤差電力DSG(t’)については、必要とされる同期追跡範囲である−Tc/2<t’<Tc/2の範囲でサイドローブが発生しない場合の合成誤差電力と比べて、電力レベルが低下していることが判る。しかしながら、式(16)を満足する遅延係数(τ1,τ2,τ3,τ4)=(0,2,4,6)が与えられた場合の合成誤差電力DSG(t’)については、必要とされる同期追跡範囲である−Tc/2<t’<Tc/2の範囲でサイドローブが発生しない場合の合成誤差電力と比べて、同程度の電力レベルを示しており、電力レベルの低下が抑えられることが判る。
【0067】
すなわち、遅延係数τi(i=1,2,…,N)が(16)式を常に満たすように設定されることにより、必要とされる同期追跡範囲−Tc/2<t’<Tc/2内において、上記サイドローブに起因する劣化が生じないため、本実施の形態におけるDLLでは、サンプルクロックおよびデータクロックの生成処理において、従来技術と比較して高精度かつ良好な同期追跡特性を実現することができる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、遅延補正部4−1〜4−Nが与える遅延補正時間が、それぞれ{TP−τ1c,TP−τ2c,…,TP−τNc}としたが、これに限らず、たとえば、遅延補正時間を{(Y−τ1)Tc,(Y−τ2)Tc,…,(Y−τN)Tc}、すなわち、基準符号同期点を任意の時刻に設定することとしてもよい。ただし、このときのYは、Y≧τNを満たす整数となる。
【0069】
このように、本実施の形態においては、合成相関電力を用いて合成誤差信号を算出するため、その合成誤差信号が従来の誤差信号と比べて高SN比となる。そのため、本実施の形態では、ループフィルタの帯域を従来のDLLにおけるループフィルタの帯域より広くする場合においても、フィルタリング処理後の合成誤差信号のSN比を、従来のSN比より高くすることができ、さらに、サンプルクロックの位相の進み/遅れを高精度に判定できるようになるため、従来技術におけるDLLと比べて、高精度かつ良好な同期追跡特性を実現することができる。これにより、従来と比較して、より精度の高いサンプルクロックおよびデータクロックを生成することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態においては、式(16)を常に満たす遅延係数τi(i=1,2,…,N)が設定されることで、合成相関電力のサイドローブに起因する合成誤差信号特性の劣化が抑えられるため、さらに高精度で良好な同期追跡特性を実現することができる。
【0071】
実施の形態2.
本実施の形態では、実施の形態1のDLLを用いて、良好なビット誤り率特性を実現するオフセット多重化SSシステムを得る。
【0072】
図4は、本発明にかかるスペクトル拡散通信システムにおける送信装置の構成を示す図である。すなわち、オフセット多重化SSシステムにおける送信装置の構成を示す図である。図4において、211はデータ発生部であり、212はシリアル/パラレル変換部(以降、S/Pと呼ぶ)であり、213はクロック発生部であり、214は拡散符号発生部であり、221−1〜221−Nは拡散変調部であり、222−1〜222−Nは遅延部であり、223は多重化部であり、224は周波数変換部であり、225は電力増幅部であり、226は送信アンテナである。
【0073】
つぎに、本発明にかかるオフセット多重化SSシステムの送信装置の動作について説明する。図4において、送信装置では、まず、データ発生部211が、“1”または“−1”の値を持つディジタル情報信号を生成する。ここでは、ディジタル情報信号の発生速度を「ビットレート」と呼び、ディジタル情報信号のビットレートの値をRbと表記する。
【0074】
S/P212では、ディジタル情報信号をNチャネルの並列情報信号に変換する。なお、多重数Nは、拡散符号長L[ビット]以下の値である。また、ここでは、各チャネルでの並列情報信号の発生速度を「並列ビットレート」と呼び、並列ビットレートの値をRp(=Rb/N)と表記する。また、拡散符号周期をTp(=1/Rp)と表記する。
【0075】
そして、この送信装置で用いる拡散符号系列は、拡散符号発生部214で生成される。これは、"1"または"−1"の値かつ符号長L[ビット]の拡散符号系列であり、たとえば、クロック発生部213で作成された(Rp×L)のクロック周波数帯域を持つ。なお、拡散符号系列としては、たとえば、符号作成にする回路構成が容易で自己相関のサイドローブが小さい、かつ各符号系列間での相互相関が小さい、既知のM系列やGold符号が使用される。ここでは、クロック発生部213で作成されたクロックレートを「チップレートRc(=Rp×L)」と呼び、チップレートRcを持つクロック周期を「チップ周期Tc(=1/Rc)」と呼ぶ。
【0076】
拡散変調部221−1〜221−Nでは、Nチャネルの各並列情報信号と、拡散符号発生部214で生成された拡散符号と、を乗算することにより、Nチャネルの並列スペクトル拡散信号を生成する。なお、並列スペクトル拡散信号は、チップレートRcの周波数帯域を持つ。
【0077】
遅延部222−1〜222−Nでは、Nチャネルの各並列スペクトル拡散信号に対してそれぞれ異なる時間分の遅延を付加する。なお、遅延部222−1〜222−Nが付加する遅延時間は、それぞれ{τ1c,τ2c,τ3c,…,τNc}(ただし、{τ1,τ2,τ3,…,τN}を「遅延係数」と呼び、遅延係数{τ1,τ2,τ3,…,τN}は、0≦τ1<τ2<τ3<…<τN<Lを満たす整数とする)である。
【0078】
多重化部223では、遅延が付加されたNチャネルの並列スペクトル拡散信号のすべてを加算し、多重スペクトル拡散信号を生成する。そして、周波数変換部224では、その多重スペクトル拡散信号を無線周波数(RF)に周波数変換し、多重RF信号を生成する。その後、電力増幅部225では、周波数変換部224で無線周波数(RF)に周波数変換された多重スペクトル拡散信号(多重RF信号)を電力増幅し、最後に、送信アンテナ226から、電力増幅された多重RF信号を送信する。
【0079】
また、図5は、本発明にかかるスペクトル拡散通信システムにおける受信装置の実施の形態2の構成を示す図である。すなわち、オフセット多重化SSシステムにおける受信装置の構成を示す図である。図5において、311は受信アンテナであり、312はRF増幅部であり、313は準同期検波部であり、314は相関信号算出部であり、315は初期捕捉部であり、316はDLLであり、317はパラレル/シリアル変換部(以下、P/Sと呼ぶ)であり、321−1〜321−Nは遅延補正部であり、322−1〜322−Nはデータ復調部である。
【0080】
また、準同期検波部313において、341は電圧制御搬送波発振器(以降、VCOと呼ぶ)であり、342はπ/2移相部であり、343および344は乗算部であり、345および346はローパスフィルタであり、347および348はA/D変換部(以降、A/Dと呼ぶ)であり、さらに相関信号算出部314において、351は同相相関算出部であり、352は直交相関算出部である。
【0081】
つぎに、本発明にかかるオフセット多重化SSシステムの受信装置の動作について説明する。受信装置では、まず、受信アンテナ311で受信した上述の送信装置からの多重RF信号に対して、RF増幅部312がRF増幅を行う。
【0082】
準同期検波部313では、乗算部343が、VCO341から出力される局部搬送波とRF増幅された多重RF信号とを乗算し、ローパスフィルタ345が、その乗算後の信号における高調波成分の除去処理を行い、さらにA/D347が、チップレートRcのM倍の周波数帯域を持つサンプルクロックでフィルタリング処理後の信号をサンプリングすることで、「ディジタル値かつチップレートRcのM倍の周波数帯域」の条件を満足する複素スペクトル拡散信号の同相成分を生成する。
【0083】
同様に、準同期検波部313では、乗算部344が、移相部342によりπ/2移相された局部搬送波とRF増幅された多重RF信号とを乗算し、ローパスフィルタ346が、その乗算後の信号における高調波成分の除去処理を行い、さらにA/D348が、チップレートRcのM倍の周波数帯域を持つサンプルクロックでフィルタリング処理後の信号をサンプリングすることで、「ディジタル値かつチップレートRcのM倍の周波数帯域」の条件を満足する複素スペクトル拡散信号の直交成分を生成する。
【0084】
相関信号算出部314では、同相相関算出部351および直交相関算出部352が、複素スペクトル拡散信号の同相成分および直交成分に対して、それぞれ、多重RF信号に乗算されている符号と、それと同一の拡散符号系列と、の相関演算を、拡散符号周期TP分の時間で行い、その結果として同相相関信号および直交相関信号を生成する。
【0085】
なお、ここでは、拡散符号長をLとしているが、1チップにつきM回の割合でサンプリングが行われているので、たとえば、拡散符号1周期分に相当する時間内にサンプリングされる複素スペクトル拡散信号の同相成分および直交成分の数は、それぞれML個である。したがって、同相相関算出部351および直交相関算出部352では、それぞれ、入力されたML個のうち、M×i番目(i=1,2,…,L)の複素スペクトル拡散信号の同相成分または直交成分のサンプル信号のみを用いて、式(17)で表される相関値Sを、Tc/M時間毎に生成する。
【0086】
【数14】
Figure 0003927350
【0087】
ただし、rj(j=1,2,…,ML)は、入力されるML個のサンプル信号であり、ciは、“−1”もしくは“1”の値を持つ多重RF信号に乗算されている符号と同一の拡散符号系列である。また、同相相関算出部351および直交相関算出部352では、マッチドフィルタ等が用いられる。
【0088】
初期捕捉部315では、直交相関信号および同相相関信号から、多重RF信号に乗算されている拡散符号系列の周期Tpに同期した捕捉パルスを生成する。図6は、本発明にかかるオフセット多重化SSシステムに用いられる初期捕捉部の構成を示す図である。図6において、21は拡散符号周期Tp内で合成相関電力が最大ピークを有するタイミングを検出し、そのタイミングに同期した捕捉パルスを生成する符号同期点検出部である。
【0089】
図6において、加算部5から出力される合成相関電力は、前述したように、拡散符号周期Tp毎に基準符号同期点で最大値を有するピークを発生し、サイドローブとして、基準符号同期点以外の時刻で発生するN(N−1)個分の相関電力ピークを有する。そして、サイドローブとなるN(N−1)個の相関電力ピークについては、前述のように、時刻t=vTp+(τx−τy)Tcで発生する(v=0,±1,±2,…;x=1,2,…,N;y=1,2,…,N;x≠y)。
【0090】
また、このサイドローブの発生時刻は、遅延係数τi(i=1,2,…,N)のみに依存する時間であるから、遅延係数τiが適切に設定されることにより、サイドローブとなる相関電力ピークの発生時間を重複しないようにできる。すなわち、本実施の形態においては、合成相関電力のサイドローブの最大値を抑圧することができるため、初期捕捉部314における捕捉パルスと、サンプルクロックおよびデータクロックと、を高精度に生成することができる。
【0091】
上記のように、相関電力ピークの発生時間を重複しないようにするためには、a’≠aかつa’≠ b’を満たす任意のa∈{1,2,…,N},a’∈{1,2,…,N},b∈{1,2,…,N},b’∈{1,2,…,N}に対して、式(18)を常に満たすようにする。
τa−τb≠τa´−τb´ …(18)
【0092】
図7は、遅延係数をτ1=2、τ2=4、τ3=6とし、式(18)を満たさない場合における相関電力および合成相関電力の関係の一例を示す図である。詳細には、図7(a)が、遅延補正がない場合の相関電力のタイミングチャートであり、図7(b)から図7(d)が、図7(a)に示した相関電力をそれぞれ時間{(Tp−τ1c),(Tp−τ2c),(Tp−τ3c)}だけ遅延補正したものである。
【0093】
また、図8は、遅延係数をτ1=1、τ2=3、τ3=7とし、式(18)を常に満たす場合における相関電力および合成相関電力の関係の一例を示す図である。詳細には、図8(a)が、遅延補正がない場合の相関電力のタイミングチャートであり、図8(b)から図8(d)が、図8(a)に示した相関電力をそれぞれ時間{(Tp−τ1c),(Tp−τ2c),(Tp−τ3c)}だけ遅延補正したものである。
【0094】
図示のとおり、図7においては、遅延補正された相関電力ピークが基準符号同期点以外の同タイミングで発生しているため、合成相関電力は、最大値が相関電力2ピーク分以上となるサイドローブが発生する。それに対し、図8における合成相関電力については、ピーク値a,b,a,a+b+c,b,c,cの7つのピークが現れるが、この場合には、最も大きなピーク値(a+b+c)を基準符号同期点として検出する。このように、図8においては、ピーク値(a+b+c)以外のピーク値が、すべて相関電力1ピーク分の値に抑えられており、図7と比較して、さらに高精度な基準符号同期点の検出が可能となる。
【0095】
符号同期点検出部511では、上記のように、拡散符号周期Tp内で合成相関電力が最大ピークを有する基準符号同期点を検出し、そのタイミングに同期した捕捉パルスを生成することにより初期符号同期を行う。
【0096】
また、DLL316では、前述の実施の形態1のとおりに、直交相関信号および同相相関信号と、捕捉パルスから符号同期追跡を行い、拡散符号系列の周期に同期したデータクロックと、準同期検波部313にてサンプリング用クロックとして用いられるサンプルクロックと、を出力する。
【0097】
遅延補正部321−1〜321−Nでは、直交相関信号および同相相関信号に対して、それぞれ{TP−τ1c,TP−τ2c,TP−τ3c,・・・,TP−τNc}の遅延補正時間を与えることで、各チャネルに乗算された拡散符号系列の位相とデータクロックとのタイミング同期を確立する。さらに、データ復調部322−1〜322−Nでは、各チャネルに対して、データクロックの立ち上がりタイミングで算出された同相相関信号および直交相関信号から、並列復調データを算出する。
【0098】
なお、多重RF信号は、同一の拡散符号系列によりスペクトル拡散実行後の並列スペクトル拡散信号が多重化されたものであるが、Nチャネルの各並列スペクトル拡散信号については、多重化が実行されている他のチャネルと異なる遅延時間が与えられているので、データ復調時における各チャネル間の相互相関は小さな値となり、各チャネルに対する復調作業が可能となる。ただし、ここでいう並列復調データは、「並列ビットレートRpかつ“1”または“−1”の値」の条件を満足する信号である。
【0099】
P/S317では、Nチャネルの並列ビットレートRpの並列復調データから、1チャネルのビットレートRb(=NRp)の復調データの生成を行う。これら上述の動作により、本発明にかかるスペクトル拡散通信システムでは、多重RF信号から復調データを抽出することができる。
【0100】
このように、本実施の形態においては、準同期検波部313およびデータ復調部322−1〜322−Nで、DLL316から出力される高精度なサンプルクロックとデータクロックを用いているため、従来のオフセット多重化SSシステムと比較して、さらにデータ復調特性を向上させることができる。
【0101】
また、本実施の形態においては、式(18)を常に満たす遅延係数τi(i=1,2,…,N)を設定することで、サイドローブの最大値が抑圧されるため、合成相関電力に基づいて算出される捕捉パルス、サンプルクロックおよびデータクロックを、さらに高精度に生成できる。これにより、さらに大幅にデータ復調特性を向上させることができる。
【0102】
実施の形態3.
本実施の形態では、実施の形態2における初期捕捉部315と、DLL316で用いられる二乗算出部1,2,延補正部4−1〜4−Nと、の演算順序を入れ換えることで、前述の遅延補正部4−1〜4−Nの機能を、後述する遅延補正部321−1〜321−Nで実行する。このようにして、より小さい回路規模で、スペクトル拡散通信システム、すなわち、オフセット多重化SSシステムを実現する。
【0103】
図9は、本発明にかかるスペクトル拡散通信システムにおける受信装置の実施の形態3の構成を示す図である。なお、本実施の形態における送信装置については、前述の実施の形態2と同一の構成を用いるためその説明を省略する。また、図9において、前述の実施の形態2における受信装置と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
図9において、331−1〜331−Nはそれぞれ遅延補正部321−1〜321−Nで遅延補正された同相相関信号を二乗する同相二乗算出部であり、332−1〜332−Nはそれぞれ遅延補正部321−1〜321−Nで遅延補正された直交相関信号を二乗する直交二乗算出部であり、333は同相二乗算出部331−1〜331−Nと直交二乗算出部332−1〜332−Nとから出力されるすべての信号を加算する加算部である。
【0105】
つぎに、本発明にかかるオフセット多重化SSシステムの受信装置の動作について説明する。受信装置では、まず、同相二乗算出部331−1〜332−Nが、それぞれ遅延補正部321−1〜321−Nにて遅延補正された同相相関信号の二乗値を出力する。同様に、直交二乗算出部332−1〜332−Nでは、それぞれ遅延補正部321−1〜321−Nにて遅延補正された直交相関信号の二乗値を出力する。
【0106】
そして、加算部143では、同相二乗算出部331−1〜331−Nおよび直交二乗算出部332−1〜332−Nから出力される合計2N個の二乗値を加算し、その加算結果を合成相関電力として出力する。
【0107】
つぎに、加算部143から出力される合成相関電力SPG’(t)が(時刻t)、実施の形態1および2のDLLの加算部5から出力される合成相関電力SPG(t)と、等しいことを示す。
【0108】
前述の実施の形態と同様に、たとえば、同相相関信号をSI(t)とし、直交相関信号をSQ(t)とし、遅延補正部321−1〜321−NがSI(t)およびSQ(t)に与える遅延補正時間をそれぞれ−τicとすると(i=1,2,…,N)、加算部333から出力される合成相関電力SPG’(t)は、式(19)のように表すことができる。
【0109】
【数15】
Figure 0003927350
【0110】
式(19)より、合成相関電力SPG’(t)は、式(14)で求められるSPG(t)と等しいことが判る。
【0111】
このように、本実施の形態においては、前述の遅延補正部4−1〜4−Nの機能を、後述する遅延補正部321−1〜321−Nで実行する構成を用いた場合においても、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態における捕捉パルス、サンプルクロック、およびデータクロックについては、前述の実施の形態2と同一の特性を有することになる。
【0112】
また、実施の形態においては、実施の形態2における初期捕捉部315と、DLL316で用いられる二乗算出部1,2,延補正部4−1〜4−Nと、の演算順序を入れ換えることで、前述の遅延補正部4−1〜4−Nの機能を、遅延補正部321−1〜321−Nで共用することにより、実施の形態2より小さい回路規模で、実施の形態2と同様の良好なデータ復調特性を実現することができる。
【0113】
【発明の効果】
以上、説明したとおり、本発明によれば、合成相関電力を用いて合成誤差信号を算出するため、その合成誤差信号が従来の誤差信号と比べて高SN比となる。そのため、ループフィルタの帯域を従来のDLLにおけるループフィルタの帯域より広くする場合においても、フィルタリング処理後の合成誤差信号のSN比を、従来のSN比より高くすることができ、さらに、サンプルクロックの位相の進み/遅れを高精度に判定できるようになるため、従来技術におけるDLLと比べて高精度かつ良好な同期追跡特性を実現することができる。これにより、従来と比較して、より精度の高いサンプルクロックおよびデータクロックを生成することが可能な遅延ロックループを得ることができる、という効果を奏する。
【0114】
つぎの発明によれば、「|(τx−τy)Tc|≧(δ/2)+(3Tc/2)」を常に満たす遅延係数τiが設定されることで、合成相関電力のサイドローブに起因する合成誤差信号特性の劣化が抑えられるため、さらに高精度で良好な同期追跡特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0115】
つぎの発明によれば、準同期検波手段および各データ復調手段で、サンプルクロック生成手段から出力される高精度なサンプルクロックとデータクロックを用いているため、従来の受信装置と比較して、データ復調特性を向上させることが可能な受信装置を得ることができる、という効果を奏する。
【0116】
つぎの発明によれば、より小さい回路規模で、良好なデータ復調特性を実現することが可能な受信装置を得ることができる、という効果を奏する。
【0117】
つぎの発明によれば、「τa−τb≠τa'−τb'」を常に満たす遅延係数τiを設定することで、サイドローブの最大値が抑圧されるため、合成相関電力に基づいて算出される捕捉パルス、サンプルクロックおよびデータクロックを、さらに高精度に生成できる。これにより、さらに大幅にデータ復調特性を向上させることができる、という効果を奏する。
【0118】
つぎの発明によれば、「|(τx−τy)Tc|≧(δ/2)+(3Tc/2)」を常に満たす遅延係数τiが設定されることで、合成相関電力のサイドローブに起因する合成誤差信号特性の劣化が抑えられるため、さらに高精度で良好な同期追跡特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0119】
つぎの発明によれば、準同期検波手段および各データ復調手段で、サンプルクロック生成手段から出力される高精度なサンプルクロックとデータクロックを用いているため、従来の受信装置と比較して、データ復調特性を向上させることが可能なスペクトル拡散通信システムを得ることができる、という効果を奏する。
【0120】
つぎの発明によれば、より小さい回路規模で、良好なデータ復調特性を実現することが可能な受信装置を含むスペクトル拡散通信システムを得ることができる、という効果を奏する。
【0121】
つぎの発明によれば、「τa−τb≠τa'−τb'」を常に満たす遅延係数τiを設定することで、サイドローブの最大値が抑圧されるため、合成相関電力に基づいて算出される捕捉パルス、サンプルクロックおよびデータクロックを、さらに高精度に生成できる。これにより、さらに大幅にデータ復調特性を向上させることができる、という効果を奏する。
【0122】
つぎの発明によれば、「|(τx−τy)Tc|≧(δ/2)+(3Tc/2)」を常に満たす遅延係数τiが設定されることで、合成相関電力のサイドローブに起因する合成誤差信号特性の劣化が抑えられるため、さらに高精度で良好な同期追跡特性を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるDLLの構成を示す図である。
【図2】 多重数N=3の場合の相関電力と捕捉パルスのタイミングチャートを示す図である。
【図3】 多重数N=4,δ=Tcの場合の合成誤差信号DPG(t’)特性を示す図である。
【図4】 本発明にかかるスペクトル拡散通信システムにおける送信装置の構成を示す図である。
【図5】 本発明にかかるスペクトル拡散通信システムにおける受信装置の実施の形態2の構成を示す図である。
【図6】 本発明にかかるスペクトル拡散通信システムに用いられる初期捕捉部の構成を示す図である。
【図7】 式(18)を満たさない場合における相関電力および合成相関電力の関係の一例を示す図である。
【図8】 式(18)を常に満たす場合における相関電力および合成相関電力の関係の一例を示す図である。
【図9】 本発明にかかるスペクトル拡散通信システムにおける受信装置の実施の形態3の構成を示す図である。
【図10】 従来のDLLの構成を示す図である。
【図11】 従来技術における相関電力特性を示す図である。
【図12】 従来技術における誤差信号の振幅特性を示す図である。
【符号の説明】
1,2 二乗算出部、3 加算部、4−1,4−N 遅延補正部、5 加算部、6 遅延部、7 減算部、8 ラッチ部、9 ループフィルタ、10 VCC、11 データクロック発生部、12 遅延部、21 符号同期点検出部、211 データ発生部、212 シリアル/パラレル変換部(S/P)、213 クロック発生部、214 拡散符号発生部、221−1,221−2,221−N拡散変調部、222−1,222−2,222−N 遅延部、223 多重化部、224 周波数変換部、225 電力増幅部、226 送信アンテナ、311 受信アンテナ、312 RF増幅部、313 準同期検波部、314 相関信号算出部、315 初期捕捉部、316 DLL、317 パラレル/シリアル変換部(P/S)、321−1,321−2,321−N 遅延補正部、322−1,322−2,322−N データ復調部、331−1,331−2,331−N 同相二乗算出部、332−1,332−1,332−N 直交二乗算出部、333 加算部。

Claims (5)

  1. 複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号、および複素スペクトル拡散信号の直交成分と拡散符号系列との直交相関信号、に基づいて、送信側と受信側の符号同期を追跡することで、サンプルクロックおよびデータクロックを生成する遅延ロックループにおいて、
    前記同相相関信号と前記直交相関信号をそれぞれ二乗し、さらに、二乗後の同相相関信号と直交相関信号とを加算することで、相関電力を生成する相関電力生成手段と、
    前記相関電力をN(2以上の整数)個に分岐し、各相関電力のピークタイミングを揃えるようにそれぞれ異なる第1の遅延時間を与える遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各相関電力を加算することで合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、
    前記合成相関電力に対して第2の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、
    前記拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、
    前記データクロックに対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、
    を備え
    前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする遅延ロックループ。
  2. 送信側の装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行うスペクトル拡散通信システムの受信装置において、
    受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、
    前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、
    前記同相相関信号および直交相関信号に基づいて、前記複素スペクトル拡散信号に乗算されている拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段と、
    前記同相相関信号と前記直交相関信号をそれぞれ二乗し、さらに、二乗後の同相相関信号と直交相関信号とを加算することで、相関電力を生成する相関電力生成手段と、
    前記相関電力をN(2以上の整数)個に分岐し、各相関電力のピークタイミングを揃えるようにそれぞれ異なる第1の遅延時間を与える第1の遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各相関電力を加算することで合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、
    前記合成相関電力に対して第2の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、
    前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、
    前記データクロックに対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、
    前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第4の遅延時間を与える第2の遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、
    を備え
    前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする受信装置。
  3. 送信側の装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行うスペクトル拡散通信システムの受信装置において、
    受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、
    前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、
    前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第1の遅延時間を与える遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各同相相関信号をそれぞれ二乗し、同様に、前記遅延補正後の各直交相関信号をそれぞれ二乗し、その後、すべての二乗値を加算することで、合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、
    前記合成相関電力に基づいて、前記拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段と、
    前記合成相関電力に対して第2の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、
    前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、
    前記データクロックに対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、
    前記遅延補正後のN個の同相相関信号とN個の直交相関信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、
    を備え
    前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とする受信装置。
  4. 送信装置と受信装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行うスペクトル拡散通信システムにおいて、
    前記送信装置は、
    入力直列データ系列から生成されたN個の並列データ系列と、拡散符号系列と、をそれぞれ乗算することで、N個の並列スペクトル拡散信号を生成する拡散変調手段と、
    前記各並列スペクトル拡散信号に対してそれぞれ異なる第1の遅延時間を与え、遅延処理後のすべての並列スペクトル拡散信号を加算することで、多重スペクトル拡散信号を生成する多重手段と、
    前記多重スペクトル拡散信号を無線周波数信号に変換することで多重RF信号を生成する多重RF信号生成手段と、
    を備え、
    さらに、前記受信装置は、
    受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、
    前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、
    前記同相相関信号および直交相関信号に基づいて、前記複素スペクトル拡散信号に乗算されている拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段と、
    前記同相相関信号と前記直交相関信号をそれぞれ二乗し、さらに、二乗後の同相相関信号と直交相関信号とを加算することで、相関電力を生成する相関電力生成手段と、
    前記相関電力をN(2以上の整数)個に分岐し、各相関電力のピークタイミングを揃えるようにそれぞれ異なる第2の遅延時間(=−(第1の遅延時間))を与える第1の遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各相関電力を加算することで合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、
    前記合成相関電力に対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、
    前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、
    前記データクロックに対して第4の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、
    前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第5の遅延時間(=−(第1の遅延時間))を与える第2の遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、
    を備え
    前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とするスペクトル拡散通信システム。
  5. 送信装置と受信装置との間で複数チャネルのパラレル通信を行うスペクトル拡散通信システムにおいて、
    前記送信装置は、
    入力直列データ系列から生成されたN個の並列データ系列と、拡散符号系列と、をそれぞれ乗算することで、N個の並列スペクトル拡散信号を生成する拡散変調手段と、
    前記各並列スペクトル拡散信号に対してそれぞれ異なる第1の遅延時間を与え、遅延処理後のすべての並列スペクトル拡散信号を加算することで、多重スペクトル拡散信号を生成する多重手段と、
    前記多重スペクトル拡散信号を無線周波数信号に変換することで多重RF信号を生成する多重RF信号生成手段と、
    を備え、
    さらに、前記受信装置は、
    受け取った多重RF信号に基づいて、複素スペクトル拡散信号の同相成分と直交成分を生成する準同期検波手段と、
    前記複素スペクトル拡散信号の同相成分と拡散符号系列との同相相関信号と、前記直交成分と拡散符号系列との直交相関信号と、を算出する相関信号算出手段と、
    前記同相相関信号と直交相関信号とをそれぞれN個に分岐し、各信号の相関ピークがデータクロックの所定タイミングに発生するようにそれぞれ異なる第2の遅延時間(=−(第1の遅延時間))を与える遅延補正手段と、
    前記遅延補正後の各同相相関信号をそれぞれ二乗し、同様に、前記遅延補正後の各直交相関信号をそれぞれ二乗し、その後、すべての二乗値を加算することで、合成相関電力を生成する合成相関電力生成手段と、
    前記合成相関電力に基づいて、前記拡散符号系列の周期に同期した捕捉パルスを生成する捕捉パルス生成手段と、
    前記合成相関電力に対して第3の遅延時間を与え、遅延処理後の合成相関電力から前記加算後の合成相関電力を減算することで、サンプルクロックのタイミング位相の進み/遅れを表す合成誤差信号を生成する合成誤差信号生成手段と、
    前記捕捉パルスに基づいてサンプルクロックを分周し、データクロックを生成するデータクロック生成手段と、
    前記データクロックに対して第4の遅延時間を与え、遅延処理後のデータクロックのタイミングでラッチされた合成誤差信号の雑音成分を除去し、さらに、雑音除去後の合成誤差信号に基づいてサンプルクロックを生成するサンプルクロック生成手段と、
    前記遅延補正後のN個の同相相関信号とN個の直交相関信号に基づいて、もとのデータ系列を復調するデータ復調手段と、
    を備え
    前記第1の遅延時間{τ 1 c ,τ 2 c ,τ 3 c ,…,τ N c }(T c はチップ周期を表す)を決定するための遅延係数{τ 1 ,τ 2 ,τ 3 ,…,τ N }が、x≠yとなる任意のx∈{1,2,…,N},y∈{1,2,…,N}に対して、「|(τ x −τ y )T c |≧(δ/2)+(3T c /2)」(δは「0<δ≦2T c 」を満たす値を表す)を常に満たすことを特徴とするスペクトル拡散通信システム。
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