JP3926331B2 - 金属内包フラーレン類及びその他のフラーレン類の化学的精製方法 - Google Patents

金属内包フラーレン類及びその他のフラーレン類の化学的精製方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2001年10月1日出願の米国仮出願No.60/326,307より優先権を主張しており、本出願内に引用としてその内容全体を言及している。
本発明はフラーレン類、特に内包フラーレンの化学的手法による精製に関連する。
現在のところ、内包フラーレン類は空フラーレン類に比べると非常に少量しか得ることができない。巨視的量の空フラーレン類と内包フラーレン類とを生成するのに用いられる主な製造方法はクレッチマー(Kratschmer)とハフマン(Huffman)により初めて明らかにされたカーボンアーク放電法(クレッチマー:1990)である。この方法は、およそ10〜20%のフラーレン材料を含有する炭素煤を生成するが、その大半はC60及びC70である。また、この10〜20%のうち、約1%のみが金属内包フラーレン類である。空フラーレン類と内包フラーレン類は密な混合物として同時に形成されるので、各々の特性調査を行う前にまず内包フラーレン類と空フラーレン類を互いに分離する必要がある。
金属内包フラーレン類の化学的な観点とその精製は、幾つかの公表された評論の主題となってきた(ベスーヌ(Bethune):1993、ナガセ:1996、リュー(Liu):2000、シノハラ:2000)。多くの技術論文や科学報告書が、空フラーレン類と金属内包フラーレン類との分離及び精製について考察している。
これらの論文や報告書の大部分がクロマトグラフ技術、特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたものである。初の金属内包フラーレン類の高速液体クロマトグラフィー精製に言及した三つの主要論文があり、一つはSc2 @C74、Sc2 @C82及びSc2 @C84についての論文(シノハラ:1993)である。他の二つはLa@C82についての論文である(キクチ:1993、ヤマモト:1994)。最も生産力のある高速液体クロマトグラフィー手法は、現在は二段階の処理を行うもので、Sm@C2n類のHPLC分離について明らかにした最近の報告書が、この手法に関して詳述している(オカザキ:2000)。この二段階高速液体クロマトグラフィー手法は、市販の2種類のHPLCカラムを連続して使用する。これらは日本のナカライテスク社製の「バッキープレップ(Buckyprep)」、米国のリージスケミカル(Regis Chemical)社製の「バッキークラッチャー(Buckyclutcher)」であり、どちらもフラーレン化合物分離用に特別に開発されたカラムである。メイヤーホフ(Meyerhoff)は、トリフェニルポルフィリンシリカ誘導体のHPLC固定相が、La@C82及びY@C82を、一段階で空フラーレンから分離するのに有効であることを報告している(シャオ(Xiao):1994)。
空フラーレン類に対してどの内包フラーレン類が濃縮されるかによる、溶媒抽出手法が様々に案出されてきた。これらの手法は典型的に極性溶媒を用いて、製造時のフラーレン煤中に、空フラーレン類に対してより高い割合で内包フラーレン類を抽出するために用いられる。使用される溶媒と抽出される内包フラーレン類の例を次に示す。
N−N−ジメチルホルムアミドはM@C82を抽出する(M=Ce ディン(Ding):1996、M=Gd スン(Sun):1999)。
アニリンはM@C60(M=Y、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Gd)を抽出する(クボゾノ:1996)。
ピリジンは混合フラーレン類M@C2n (M=La、Ce)を抽出する(リュー:1998)。
同様の溶媒抽出が、クロマトグラフィーの稼動効率を高めるために、HPLCによる金属内包フラーレン類の分離より以前に行われてきた。ツォ(Tso)らは、混合Scm @C2nを濃縮するためのクロマトグラフィーを用いない手法を報告しており(ツォ:1996)、C18結合シリカを用いた固体相抽出が空フラーレン類とScm @C2nとのクロロベンゼン溶液で行われ、この手法によって20%から30%の空フラーレン類が選択的に除去された。
混合フラーレン材料の内包フラーレンを部分的に濃縮する昇華法が報告されている。エレジャンらはLa@C82の部分的濃縮のためのグラディエント昇華法を報告した(Yeretzian:1993)。ディーナーらは、温度を変数としたLa@C2n及びU@C2nの昇華研究を行った(Diener:1997)。ケイグルらは、二段階温度昇華によるHom @C82の濃縮を報告しており(Cagle:1999)、またオガワらは、真空昇華濃縮によるEr@C60の濃縮についての報告を行った(オガワ:2000)。
高濃度溶媒中での個々のイオン性フラーレン化合物の製造について、1990年頃に巨視的量のフラーレン生成が発見されてから今日に至るまでの関連文献を網羅する広範囲な概観が行われた(リード(Reed):2000(a))。この中では、フラーレンのカチオン(陽イオン)C76 + (ボルスカー(Bolskar):1996、ボルスカー:1997)、C70 + (ボルスカー:1997)、C60 + (ボルスカー:1997、リード:2000(b))、HC60 + (リード:2000(b))の合成及び塩の分離実験の完全な詳細が報告されている。ツマンスキー(Tumanskii:1998)らは、指定したH(La@C82 + )及びH(Y@C82 + )類の原位置検出を報告している。
ディーナーらが取得した米国特許6,303,016では、スモールバンドギャップフラーレン類(small bandgap fullerenes)を溶解可能になるまで還元することにより、混合物からスモールバンドギャップフラーレン類を抽出する方法を開示している。いったん溶解すると、スモールバンドギャップフラーレン類は電荷を中性に戻し元に戻る。同様な方法として、電気化学的還元法を用いてバンドギャップの大きい空フラーレン類と、スモールバンドギャップフラーレンC74を分離する電気化学的方法が行われた(ディーナー:1998)。この方法では、非常に高い電子親和力によって、他の大半の空フラーレン類に比べて、陽電位においてより還元されるので、アニオン(陰イオン)C74 - が選択的に生成される。C74 - は中性フラーレンから分離し、大量の電気化学的な一電子酸化により、プラチナ電極上に中性のC74として最終的に取り出された。この方法はまた、ガドリニウム内包フラーレン生成についても関連して行われた。これはGd@C2nの一般式で表されるガドリニウム内包フラーレン及びC74を豊富に含みながらも、バンドギャップの大きい空フラーレン類を殆ど含まない材料の製造であった。この方法が基礎としているのは、空フラーレンに比較してC74及びGd@C2nが非常に高い第一還元電位を有する点である。原則的には、バンドギャップがより大きい空フラーレン類と金属内包フラーレン類を分離するため、又は高い割合で存在するC60とC70からC70以上の高次フラーレン類を分離するための、同様な還元手法が実施可能である。
個々のフレライド(還元フラーレン)類の単離後、しばらく時間をおいて、空フラーレンカチオン(又はフラーレニウム)の可逆的な電気化学的検出が行われた。フラーレニウムとは、中性分子のHOMO(最高被占有軌道)レベルから一電子が除去されたフラーレンである。この検出には他の電解還元実験に必要とされるよりも厳密な条件及び異なる溶媒を必要とする。標準的な空フラーレン類のHOMOレベルは比較的エネルギーが低いので、HOMOより電子を1除いて形成したフラーレンカチオン類は親電子性が高い。この特質によってフラーレニウムは求核試薬に対して高い反応性を示す。これらの理由により、フラーレンカチオンは溶媒中の水などの微量の不純物に反応しやすい。そのためフラーレンの製造には純度の高い溶媒と厳密に水を排除した状態が好ましい。好ましい溶媒は、非求核的であって弱配位性である。塩化アルカン溶媒及び塩化アリーン溶媒は、前記の電気化学的実験において、生成した短寿命のカチオンに対して適度に非反応性であることが分かった。空フラーレン類の一電子酸化電位について、表1のE1 Oxの欄にまとめた。もっとも豊富に入手できるC60とC70は、希な高次フラーレンよりも酸化されにくいことを明記しておく。高い酸化電位(およそ+0.7V vs. Fc/Fc+より大きい)は、これらのフラーレンカチオンが非常に反応しやすいということを裏付けるものである。
フラーレニウムイオンの電気化学的発生と検知は秒単位であるため、これらの結果はフラーレンカチオンが単塩体として分離され生成されたことを保証するものではない。フラーレニウムカチオンの合成は個々のフレライドのアニオンの分離よりも困難である。ボルスカーらは「フラーレンを酸化させフラーレンカチオンにするための問題というのは、そのために十分強力でありながら、求核反応をしない酸化剤を発見するという問題である」と述べている(ボルスカー:1999)。この酸化剤は、中性フラーレンから電子を取り出すのに十分な熱力学的駆動力を有していなければならない。しかしいったん酸化が行われると、還元された酸化剤は、新しく形成されたフラーレンカチオンと続けて反応してはならない。また、この新しく形成されたフラーレンカチオンの陽電位を平衡させるために、酸化剤はカウンターアニオン(対陰イオン)の放出を必要とする。このアニオンは不活性であって、求核攻撃や求核付加、又はフラーレンの電子還元どちらの形にしても、フラーレンカチオンと反応してはならない。このフラーレニウムカチオン塩の最初の合成は、[C76 + ][CB116 Br6 - ]の合成であり(ボルスカー:1996)、この文献には以上に述べた原則が記述されている。最初のフラーレン酸化実験においてはC76がテスト対象とされたが、これはC76の酸化電位がC60(及びC70)の酸化電位よりも低く、C76が純D2 異性体として市販されていたためである。[C76 + ][CB116 Br6 - ]の合成は、下記式のように行われた。
76+[(2,4-Br2633+ ][CB116 Br6 - ]→
[C76 + ][CB116 Br6 - ]+(2,4-Br2633 N (1)
この場合の酸化剤は、トリス(2,4−ジブモフェニル)アミンのラジカルカチオンであった。+1.16VのE゜では、C76から電子を取除くのに十分な酸化能力を有している(E1 Ox=+0.81V)。中性アミンの還元による生成物は、立体的及び電気的な理由によって非常に弱い塩基性で、新たに形成されるフラーレンカチオンと反応しない。C76 + に対するカウンターイオンとなる、酸化剤の六臭化カルボランアニオン[CB116 Br6 - ]は、おそらく知られている中では最も求核性が低く低反応のアニオンであり(リード:1998)、フラーレンニウムイオンと反応しない。特に六ハロゲン化カルボランアニオン[CB1166 - ](但し、X=F、Cl、Br、I)が特に求核性と配位が弱いために、かつて分離するのが不可能だと考えられていた非常に親電子的である、様々なカチオンを今日では合成することができる。この合成の優れた例としては、カウンターアニオンである六塩化カルボラン[CB116 Cl6 - ]と非常に強い酸化剤を組み合わせて用い、C60 + 及びC70 + フラーレニウムラジカルカチオンを合成するものである(リード:2000(b))。この特に不活性なアニオンを組み込んだ新規の超酸性固体[H+ ][CB116 Cl6 - ]が合成されC60をプロトン化するのに用いられた。そして得られた、安定しており完全に特徴付けられた化合物[HC60 + ][CB116 Cl6 - ]が、分離されたプロトン化フラーレン類としては最初の例である。この極度な酸化とプロトン化の成功、つまりC60 + 及びHC60 + の濃縮溶媒中での合成は、フラーレンが実際にプロトン化及び酸化可能であるということと、結果として生じるカチオン性フラーレン類が安定しており、適切な実験的条件下で処理可能であって分離できるということを示す役割を果たした。
しかしながら未だに当該分野においては、フラーレン類、特に内包フラーレン類の精製についてはさらに改良された方法が必要である。本発明は、空フラーレン類と内包フラーレン類の化学的特質の明確な相違を利用した、従来の方法に代わる新規の精製方法を提供する。
発明の要約
一般的に、フラーレンは燃焼法もしくは電気アーク法により得られた煤から得られる。そのような煤中にはC60が最も多く含まれているが、また、高次フラーレン類や金属内包フラーレン類、内包フラーレン類などのような他のフラーレン類も微量ながら含んでいる。この微量のフラーレン類を複合混合物から精製することは、多くの科学者が一様に直面している難題である。本発明においては、望ましいフラーレンを化学修飾することによりこの問題を解決した。望ましいフラーレンを化学修飾するとは、目的とするフラーレン類と目的外のフラーレン類に異なる化学的特性を付与することで、これらフラーレン類の分離を可能にするということである。例えば、本発明は内包フラーレン類と空フラーレン類との分離精製を可能にし、これによりフラーレン化学における長年にわたる問題を解決する。
本発明は、フラーレン混合物中において、第一のフラーレン群と第二のフラーレン群とを、以下の処理により分離する方法を提供する。まず、第一と第二のフラーレン群を含むフラーレン混合物を用意する。前記第一もしくは第二のフラーレン群のうちどちらか一つの安定したフラーレンカチオンを溶媒中に形成し、前記フラーレンカチオンをもう一方のフラーレン群より分離する。このカチオン類の選択的形成は、化学的な酸化や電気化学的な酸化、又はカチオン性親電子基を化学的に付加することにより行われる。それから、再結晶化又は沈殿化の手法により、カチオン化したフラーレンと中性フラーレンとを分離する。
本発明の方法は、異なるフラーレン類の分離精製に利用及び適用されるものであり、フラーレン類とは、以下に限定されるものではないが、金属内包フラーレン類及び非金属内包フラーレン類や、高次の空フラーレン類、外部誘導体化された空フラーレン類及び他の内包フラーレン類、空ヘテロフラーレン類及び内包ヘテロフラーレン類、そしてこれらの組み合わせである。
本発明は一実施例において、フラーレン類の特定の種類又は特定のフラーレン類の酸化電位の相違に基づいてフラーレン類を精製する方法、特にフラーレン材料の混合物を製造する内包フラーレン類のアーク合成に関連する。このフラーレン材料は、様々な個別のフラーレン類の複合混合物であり、C60及びC70を最も豊富に含んでいる。C60及びC70フラーレンは、内包フラーレン類や高次フラーレン類といった、その他多くのフラーレン材料中の微量成分とは酸化電位が異なっている。従って、フラーレン材料を溶媒中で適切な酸化剤を用いて酸化すれば、C60及びC70を中性に留めつつ、内包フラーレン類や高次フラーレン類そしてそれらの混合物を選択的に酸化することができる。そして溶媒の極性を減じることによって、C60及びC70は溶解したままで、酸化されたフラーレン類が析出又は再結晶化する。更に、析出した酸化フラーレンから溶媒を分離し、適切な還元剤を用いて酸化されたフラーレンを還元し、酸化されていない以前の状態に戻す。
また、本発明は一実施例において、目的のフラーレン類をフラーレン材料から精製する方法に関連する。この方法は以下の(a)〜(f)で構成する。(a)まず目的のフラーレン類と望ましくないフラーレン類とを含むフラーレン材料を用意する。
(b)そして目的のフラーレン類又は望ましくないフラーレン類のうちどちらか一つの安定したフラーレンカチオンを溶媒中に形成し、
(c)溶媒の極性を減じてフラーレンカチオンを析出させ、
(d)沈殿したフラーレン類から溶媒を分離する。
一実施例において、目的のフラーレン類は、フラーレン材料中の望ましくないフラーレン類とは異なる酸化電位を有している。この実施例の好ましい見地においては、その酸化電位がフェロセン基準を用いて0.10Vである。この実施例の別の好ましい見地においては、その酸化電位が0.30Vである。また別の好ましい見地においては、目的のフラーレンとは内包フラーレン類、高次フラーレン類、金属フラーレン類及びそれらの混合物である。
もう一つの実施例において、本発明は目的のフラーレン類の純度を高める方法に関連する。この方法は以下の(a)〜(d)で構成する。
(a)目的のフラーレン類と望ましくないフラーレン類を含むフラーレン材料を用意する。
(b)そして目的のフラーレン類と望ましくないフラーレン類のうちどちらか一つの安定したフラーレンカチオンを溶媒中に形成し、
(c)溶媒の極性を減じてフラーレンカチオンを沈殿させ、
(d)沈殿したフラーレン類から溶媒を分離し、目的のフラーレン類の純度を高めることができる。
このカチオンの選択的形成は、化学的な酸化や電気化学的な酸化、又はカチオン性親電子基を化学的に付加することにより行われる。それから再結晶化又は析出化の手法によりカチオン化したフラーレンと中性フラーレンとを分離する。
もう一つの実施例において、更に、本発明はC60及びC70フラーレン類を実質的に含まない内包フラーレン1種を生成する方法にも関連する。この方法は以下の処理によって構成される。まずC60及びC70フラーレン及び前記内包フラーレンを含むフラーレン材料を用意する。前記内包フラーレンの安定したフラーレンカチオンを溶媒中に形成し、溶媒の極性を減ずることによって前記フラーレンカチオンを析出させる。そして、C60及びC70フラーレン類を含む溶媒を、析出した前記内包フラーレンから分離する。
また、もう一つの実施例において、更に、本発明はフラーレン材料とC60及びC70フラーレンを分離する方法に関連する。この方法は以下の処理によって構成されている。まず、第一フラーレン群(C60とC70)及び第二のフラーレン群(他のフラーレン類)を含むフラーレン材料を用意する。第二のフラーレン群の安定したカチオンを溶媒中に形成し、溶媒の極性を減ずることで前記フラーレンカチオンを析出させる。そしてC60及びC70を含んだ溶媒を、析出した第二のフラーレン群から分離する。
特定の化学物質と酸化還元特性によって、微量に含まれるフラーレン物質を、他の大量に含まれるフラーレン物質と共に、混合物から化学的に分離する方法は、幅広い種類の内包フラーレン材料及び空フラーレン材料の精製に用いることができる。これより金属内包フラーレン類を空フラーレン類から分離する手順について説明する。この手順は、適切な化学的及び/又は酸化還元特性を有する、以下に例を示すフラーレン材料に適用される。しかしこの例に限定されるものではない。
(A)M@C82で表される金属内包フラーレン類と、空フラーレン類及びMm @C2nで表される他の内包フラーレン類との分離は、M@C82類を化学的に又は電気化学的にかで一電子酸化させ、それらの分子カチオンM@C82 + にすることで行われる。これは、M@C82の可能性のある異なる構成異性体及び/又は光学異性体の全てを含む(但し、Mは周期率表に記載されている元素であり、記号@は元素Mがフラーレンケージに内包されている又は内部にあることを表す。また、mは整数の1、2又は3であり、nは整数である。)。
(B)個々の分子として及び/又は一般的なフラーレン類としてのMm @C2nで表される金属内包フラーレン類と空フラーレンとの分離は、Mm @C2n類の分子カチオンを化学的に又は電気化学的にかで一電子酸化させ、それらの分子カチオンMm @C2n + にすることで行われる。これは中性状態にあって高い不溶性を示すが、分子カチオンとしては可溶で抽出可能であるMm @C2nの抽出と分離も含む。これらのフラーレン類の多くがこれまで分離されたことがなかった。また、Mm @C2nの全ての異なる構成異性体及び/又は光学異性体を含む。
(C)昇華物に豊富な不溶性のM@C2n類、具体的にはM@C60、M@C70及びM@C74(但し、Mは内包される三価のランタノイド系元素、つまりCe、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu及び可能性としてはEr)の分離は、M@C2n類を化学的に又は電気化学的にかで一電子酸化させ、それらの分子カチオンM@C2n + にすることで行われる。特に、可溶性のC2n及びM@C2nを溶媒の洗浄除去をし、酸化可能であるC2nとM@C2nを酸化的に可溶化させて除去することによって、不溶性のM@C2nを後に残して分離を行う。
(D)昇華物に特に豊富な不溶性のM@C2n類、具体的にはM@C60、M@C70及びM@C74(但し、Mは内包される二価のランタノイド系元素、つまりSm、Eu、Tm、Yb)の分離は、M@C2n類を化学的に又は電気化学的にかで一電子酸化させ、それらの分子カチオンM@C2n + にすることで行われる。
(E)一般的な類としての、高次の空フラーレンC2n(C60及びC70よりも高次)とC60及びC70との分離は、C2nを、内包フラーレンが存在しない状態で、化学的に又は電気化学的にかで一電子酸化させ、それらの分子カチオンC2n + にすることで行われる。これはC2nの全ての異なる構成異性体及び/又は光学異性体を含む。
(F)空フラーレン類と、選択的に酸化可能な官能基によって外部誘導体化された内包フラーレン類との分離は、カチオン誘導体化フラーレン類とカチオン誘導体化内包フラーレン類を形成する化学的又は電気化学的手段によって行われる。結果として生じる酸化化合物はフラーレンケージ構造であるか、外部が官能基であるか、又はその両方である。
(G)骨格置換の空フラーレン類及び内包フラーレン類(例えば、ヘテロフラーレン類)と、非置換フラーレン類及び内包フラーレン類を分離するには、炭素以外の元素へと置換した1以上の独立した炭素原子をフラーレン殻に有するヘテロフラーレンを、化学的に又は電気化学的に酸化してそれらの分子カチオンにする。
(H)非金属を内包するフラーレン類(例えば、Nm@C2n、Pm@C2nなど)と空フラーレン類との分離は、所定の内包フラーレン類を化学的に又は電気化学的にかで一電子酸化して、相当する分子カチオンにすることにより行われる。この発明は、Sc3 N@C80やErSc2 N@C80などのような複数元素を混合して内包するフラーレンの分離にも適用することができる。
(I)上記AからHまでの、カチオン性フラーレン類の選択的形成に基づいた分離区分は、化学的プロトン化又は他のカチオン性親電子基の付加によって行われる。これは上述の化学的又は電気化学的酸化を通じて行われるフラーレンカチオン形成とは全く異なるものである。カチオン形成は、酸化電気化学反応によって行ってもよいし、ブロンステッド酸によるプロトン化又は求電子試薬の付加などのカチオン化剤の化学的付加によって同様に行ってもよい。本発明では、光化学的カチオンの生成方法を用いることも可能であり、これは酸化とプロトン化の一般的な化学的方法の一方法と考慮される。
本発明は、新規のカチオン性フラーレン類の包括的な製造方法について記述する。これらのフラーレンカチオンは続けて他の目的で使用することができる。例えば、他の方法では得ることの難しい外部誘導体化されたフラーレン及び/又は内包フラーレン化合物を製造するために、求核試薬を用いた誘導体化反応に続いて使用することができる。
ここで記述される化学的精製方法は、フラーレン製造の標準的な方法であるアーク放電法やレーザーアブレーション法以外の新たな方法によって製造されたフラーレン材料にも適用される。例えば、この化学的精製方法は、現在入手できる量よりも多い内包フラーレンの生成量を含む材料を製造するいずれの新規方法にも適用される。ここで記述される包括的方法は、本発明の開示以前には不可能であったプロセスで純粋な金属内包フラーレン合成物の大量分離を可能にするものである。
本発明は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を主とする従来の分離精製技術を超えて重要な進歩を提供する。本発明は、分離しようとするフラーレン材料の化学的物性の強い相異を利用するものであるが、従来のHPLCでのフラーレン材料の分離は一般的に、フラーレン類の中で同質の化学的物性に依存している。従って、HPLCを用いた方法では相当な時間とコストが必要である。本発明ではHPLCとは異なる、一般的に入手可能な機器を使用するし、通常入手可能な溶媒、反応剤を使用する。そして、開示される方法は、クロマトグラフィー技術に比較すると大規模な生産拡大に馴染みやすい。また、本発明で開示される方法はクロマトグラフィー技術に先立って準備段階としても使用でき、クロマトグラフィーの効率を大幅に向上することができる。さらに都合のよいことには、本発明では最終精製製品が固体状態であるため、困難である低蒸気圧溶媒及び高沸点溶媒の除去をしなくてもすむ。
開示される酸化抽出の手法は、カチオンとして中性であれば通常、不溶性で抽出不可能であるMm @C2n(又は可溶で抽出可能であるが非常に効率が低い)の効率的な抽出を可能にするという点で、従来の技術を越えた重要な進歩であり、得られる内包フラーレン類の総生成量を増加させる。また、極性が高く及び/又は強配位の溶媒を、部分選択的な抽出を行う反応剤として用いるような、様々な溶媒抽出方法を越えた進歩である。そのような溶媒は、内包フラーレン類を、本発明よりも低効率で空フラーレン類との混合物として抽出する。また、本発明は金属内包フラーレン類に、予測できないプロセスで外部から結合する可能性のあるこれらの高極性及び/又は強配位の溶媒を用いない。
発明の詳細な説明
特に明記しない限り、用語は以下のように定義されるものである。
ここで使用される「フラーレン材料」という用語は、1種以上の特定のフラーレン類を含む材料を言う。この用語は、一般的に未処理又は簡単に処理したフラーレン前段階原料、つまり煤を指すが、この用語はまた、煤から更に処理されてなお特定のフラーレン類の混合物を含むような、未精製フラーレン材料をさすこともある。
ここで使用される「フラーレン」という用語は、酸化電位又は還元電位という物理的若しくは化学的特性に基づいて、その他のフラーレンから区別される特定フラーレン又はフラーレン類をいう。もし特定のフラーレンでないフラーレン類であれば、その物理的又は化学的特性を表す数値には幅がある。つまり、その類の酸化電位の数値には幅があるということである。分離処理においては、フラーレン材料中のある1種のフラーレンは「目的の」又は「望ましい」フラーレンとして表現される。一方では、その他のフラーレン(類)は「目的外の」又は「望ましくない」フラーレンとして表現される。本発明での使用に適したフラーレンは、これにより限定されるものではないが、空フラーレン類、空フラーレン誘導体類、高次の空フラーレン類、スモールバンドギャップ空フラーレン類(empty small bandgap fullerene)、ヘテロフラーレン類、内包フラーレン類、内包フラーレン誘導体類、そして、多層及び/又は同心球状であってNが50以上の巨大フラーレン類である。
「カチオン」という用語は1以上のカチオンを指す。また、「安定したカチオン」とは、中性状態に戻らないカチオン、又はその形成条件において不可逆的に反応をするカチオンである。
「酸化フラーレン」という用語は、一電子が除かれた又は一正電荷が付加されたフラーレンを指す。また、「酸化容易なフラーレン」とは、その酸化電位が0.8Vに等しいかそれよりも小さいフラーレンである(フェロセン/フェロセニウム対に対して)。
ここで使用される「C60及びC70を実質的に含まない内包フラーレン類」とは、その20重量%以下がC60及びC70である内包フラーレン材料をいう。好ましくは、「C60及びC70を実質的に含まない内包フラーレン類」とは、その20重量%以下がC60及びC70である内包フラーレン材料をいう。
一般的には、フラーレン類はほとんどの有機化合物に比較すると、全ての溶媒に対して「低溶解性」を有する。本出願では相対的な可溶性を「可溶」「中程度に可溶」「やや可溶」「実質的に不溶」「不溶」として、C60の各種溶媒に対する公知の可溶性スケールに則り定義する(ルオフ(Ruoff)ら:1993を参照)。C60は、アセトニトリル及びメタノールのような極性溶媒に対しては不溶である(計測できる量が溶解しない)。また、C60はテトラヒドロフランのような極性溶媒に対しては実質的に不溶である(溶解する量が0.001mg/mLよりも少ない)。そして、C60はアルカン炭化水素及びハロアルカンにはやや可溶である(アルカン炭化水素には0.002〜2mg/mLが溶解し、ハロアルカンには0.1〜5mg/mLが溶解する。)。また、様々な溶媒に対してやや可溶から可溶である。(ベンゼンに対する1.7mg/mLから1,2-ジクロロベンゼンに対する27mg/mLまでの範囲にわたる)。そして、置換ナフタレン類には可溶である(30mg〜50mg/mLが溶解する)。従ってここで定義される溶解性は、以下のようになる。不溶:実質的に0mg/mLの溶解量である。ほとんど不溶:0mg/mLを越え、0.001mg/mLと等しいかより少ない溶解量である(この量は「微量」と表される。)。やや可溶:約0.002〜約5mg/mLの溶解量である。中程度に可溶:5mg/mLを越え、約20mg/mLよりも少ない溶解量である。可溶:約20mg/mLを越える溶解量である。以上に述べたように、不溶であるフラーレン類は、非反応性極性溶媒にも不溶である。これらの一般的な溶媒に溶解するフラーレン類(例えばC60)は、極性溶媒には不溶、ほとんど不溶又はやや可溶であるが、この溶解性は溶解しようとするフラーレンに依存する。
フラーレン類と内包フラーレン類(内部に単数又は複数の原子を内包するフラーレン)は、最近発見された化学化合物である。フラーレンは、分子のダングリングボンドや電子が満たされたボンドを持たない、全て炭素分子による籠状分子である。C60が最も豊富にあるフラーレンであり、次に豊富なのがC70である。より大きいC2n、つまり、C76、C78、C82、C84などのフラーレン類(2nは70から100)は「高次フラーレン」と呼ばれる。空フラーレン分子の特徴的な類であるC74(D3h)及びC80(Ih )などはHOMO−LUMOギャップが小さく、固体状態でスモールバンドギャップ物質として振舞う(ディーナー:1998)。これらの空フラーレンは「スモールバンドギャップフラーレン」という用語で呼ばれる。
「フラーレン」という用語は、ここでは一般的に、その大きさにかかわらず、五員環及び六員環の炭素環を有する閉殻構造を持つ炭素化合物をいう。また、この用語は、豊富に存在する低分子量のC60及びC70フラーレン、より大きなフラーレンとして知られるC76、C78、C84、そして高分子量でありNが50以上のC2N(巨大フラーレン)を含むものとする。この巨大フラーレンは、多層及び/又は同心球状のフラーレンである。さらにこの用語は、当該分野で理解されている意味で「溶媒抽出可能なフラーレン」であり(トルエン又はキシレンに可溶な低分子量フラーレンを一般に含む)、抽出不可能な高分子量フラーレンをも意味する。この高分子量フラーレンは、少なくともC400 の巨大フラーレンをいう。加えて「フラーレン類」には、ここで具体的に述べられた中で、単数又は複数の元素、特に単数又は複数の金属元素を内包する内包フラーレン、フラーレンケージの単数又は複数の炭素が、ホウ素又は窒素のような非炭素元素で置換されたヘテロフラーレンをいう。さらに、「フラーレン物質」という用語は、一般にフラーレン類の混合物を含有する材料、及び1種もしくは2種以上のフラーレン類をその他の物質と共に含む混合物を含有する材料をいう。これは例えば、公知のフラーレン合成の過程で形成されうる無定形の炭素質物質である。又はフラーレン性材料は未処理又は簡単に処理したフラーレン材料であり、燃焼煤だけでなく、例えば抽出及び/又は昇華によって少なくとも部分的に精製されたような未処理又は簡単に処理したフラーレン材料を含む。
フラーレンは「カーボンナノ材料」と呼ばれる物質の広範囲な類である。ここでは一般的に、ほとんどが炭素物質であり、炭素原子の位置により形成された六角形の中に五員環を含むことによりグラファイトの曲がりを示す六員環を有し、そして少なくともナノメーター程度の外形を有する物質をいう。カーボンナノ材料の例としては、以下に限定されるものではないが、フラーレン、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、ナノチューブ、ナノメーター程度の外形を有する多層の炭素構造体がある。カーボンナノ材料は煤中に生成され、特定のケースにおいては、煤から分離するかもしくは煤中に濃縮する。フラーレンなどのカーボンナノ材料の合成中に生成する煤は、更なるカーボンナノ材料の精製と濃縮の元となるか又はそれ自身が望ましいカーボンナノ材料の特質を有し、その特質を伝達する付加物として有用なカーボンナノ材料の混合物を含んでいる。「カーボンナノ材料」という用語は、限定無しに使用される場合には、検出可能な量のカーボンナノ材料を含有する煤を含んだ意味で用いられる。例えば、「フラーレン性煤」という用語は、当該分野においては、フラーレンを含む煤という意味で用いられる。つまり、フラーレン性煤という語はカーボンナノ材料という語に意味的に包含されているのである。非フラーレン性の炭素質物質とは、これらに限定はされないが、無定形の炭素質物質に加えて非フラーレン性カーボンナノ材料を含む。カーボンナノ材料が無定形の炭素質物質なのではない。
内包フラーレンとは、その内部空間に単数又は複数の原子を包みこんでいるフラーレンケージであり、一般式Mm @C2nで表される。但し、Mは元素、mは1、2、3又は4以上の整数、nは整数である。記号@は、フラーレンケージ内の元素Mが内包されている又は内部にあるという状態を表す。様々な条件下で、大部分の空フラーレンケージに対応する内包フラーレン類が生成され、検出されているが、本発明において有用な金属内包フラーレン類が内包している元素Mは、ランタノイド金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、放射性金属である。但し、これら元素に限定されるものではない。その他に本発明に有用なのは、放射性元素を内包している内包フラーレン類である。放射性元素には、天然同位体又は人工同位体を含む。また、放射性元素として、ヨウ素、リン、ビスマス、アンチモン、ヒ素等、銅に加えて、アクチニド系金属などの非金属又は半金属がある。He@C60、N@C60、P@C60などの非金属内包の研究が進んでいる中でも、ランタノイド系金属内包フラーレンが最近はるかに注目を集めている。M@C2nで表される金属内包フラーレンの中では、M@C82の式を有するものが、最近の研究の中心である。他のMm @C2n及び複金属を内包するMm @C2nの研究が、上記研究よりも遅いペースで進められているが、これは、キャラクタリゼーションに必要な量の分離された材料が十分に入手できないためである。
本発明では、フラーレン材料中の第一のフラーレン及び第二のフラーレンを分離する方法を以下のように行う。
(a)溶媒中に前記フラーレン材料を入れる。
(b)前記第一のフラーレンから安定したフラーレンカチオンを形成する。ここでは、前記フラーレンカチオン若しくは前記第二のフラーレンの少なくともどちらか1つが可溶である溶媒が選択されている。
(c)前記第二のフラーレンと前記フラーレンカチオン又はフラーレンカチオン塩を分離する。
この方法には前記カチオンを中性状態に戻す処理を含んでもよい。
上記方法でのカチオン性フラーレン類の選択的形成は、化学的酸化、電気化学的酸化、若しくはカチオン性親電子基の化学的付加によって行う。カチオンの形成も同じく、酸化物質によって、又はブロンステッド酸又は求電子試薬の付加によるプロトン化のような、カチオン性試薬の化学的付加によって行う。本発明では、酸化及びプロトン化のための一般的な化学的手法の一端として、光化学的カチオン発生法を用いることができる。
カチオンフラーレン類の選択的形成の次に分離処理を行う。この分離処理には幾つかの方法がある。その一実施例においては、第二のフラーレン及びフラーレンカチオンの両方が、溶媒に実質的に可溶である。そして溶媒の極性を減じてフラーレンカチオン塩を析出させ、溶媒から析出したフラーレンカチオン塩を分離して、フラーレンカチオンを第二のフラーレンから分離する。第一のフラーレンは溶媒に可溶であっても不溶であってもよい。この精製処理は、カチオン性フラーレン化合物と中性フラーレン化合物との溶解性の違いを利用するものである。イオン性化合物は高極性及び高誘電率の溶媒に可溶であるが、反対に非イオン性化合物は低極性及び低誘電率の溶媒に可溶である。この相違性は分離に用いるのに有利である。オルトジクロロベンゼン(ODBC)の様な溶媒は、フラーレンアニオン、フラーレンカチオン、フラーレン中性イオンを溶解することができる。炭化水素ヘキサンの様な無極性溶媒が、フラーレン中性分子とフラーレンカチオン分子が混合しているODCB溶液に付加された場合、極性が急激に減じて、中性分子の大半が溶液中に残存しつつカチオン分子が固体の塩として析出する。
別の実施例においては、分離処理は以下のように行われる。第一と第二のフラーレンは溶媒に実質的に可溶であり、フラーレンカチオンが溶媒に実質的に不溶である。そして、前記フラーレンカチオンが塩として析出して、そのフラーレンカチオン塩沈殿物を溶媒から分離することにより第二のフラーレンと分離する。この析出は酸化的カチオン形成によって発生する。
また別の実施例においては、第一と第二のフラーレンが溶媒に実質的に不溶であり、フラーレンカチオンが溶媒に実質的に可溶である。そして、溶媒に不溶である第二のフラーレンを溶媒から分離することにより、フラーレンカチオンを第二のフラーレンと分離する。
(フラーレン類の酸化)
一般的に、空フラーレン類は酸化しにくいが還元しやすい(酸化とは単数又は複数の電子の除去をいい、還元とは単数又は複数の電子の付加をいう。)。C60の分子は、この原型的な例である。C60は、その低く及び三重縮退したHOMOレベルにより、6個までの電子を受容することができる。溶液中の6電子の電気化学的な可逆的還元とそれらの電位が、サイクリック・ボルタンメントリー及び各種のパルス法によって検知、計測された。更に、電気化学研究によってC70及びそれより高次のフラーレンが類似した振る舞いを示すことが分かった。選択された空フラーレンの4段階までの還元レベルを下記の表1にまとめた。
Figure 0003926331
フラーレニウムカチオンの合成は個々のフレライドアニオンの分離よりももっと困難な合成である。酸化剤は、中性フラーレンから電子を取り出すのに十分な熱力学的駆動力を有していなければならない。いったん酸化が行われると、還元された酸化剤は、新しく形成されたフラーレンカチオンと続けて反応してはならない。また、この新しく形成されたフラーレンカチオンの陽電荷を平衡させるために、酸化剤はカウンターアニオンの放出を必要とする。このアニオンは不活性であって、求核攻撃又は付加、或いはフラーレンの電子還元どちらによっても、フラーレンカチオンと反応してはならない。一般に、フラーレンカチオンは溶媒中の微量の不純物、例えば水、に反応しやすい。そのためフラーレンの製造には純度の高い溶媒と厳密に水を排除した状態が好ましい。
一般的に、全ての代表的な空フラーレンの中で、C60が最も高いイオン化電位を有しており、最も酸化されにくく、最もプロトン化されにくいようである。これまで、C60 + カチオンは六塩化カルボランのカウンターアニオン[CB116 Cl6 - ]と組み合わせた強力な酸化剤によって合成されてきた(リード:2000(b))。C60よりも条件の少ないフラーレン分子の酸化のためには、合成化学で一般的に用いられる、酸化力の比較的弱い化学的酸化剤が存在する(コナリー(Connelly):1996)。同様に、より親電子性が低いカウンターアニオンのように弱求核的で弱配位ではないが十分な酸化力を有するハロゲン化カルボラン[CB1166 - ]よりも、より安定なアニオン類が存在する(ストラウス(Strauss):1993)。C60よりも高次のフラーレンのプロトン化は、C60及びより高次のフラーレンの化学的酸化と同様に、C60のプロトン化よりも条件が少ないが、やはり適切な合成条件を必要とする。その合成条件とは、以下に限定されるものではないが、嫌気条件、純度が高く水を含まない溶媒、非求核的である溶媒、非求核的であるアニオン、所定のフラーレンのプロトン化に十分な酸性度である。
内包フラーレン化合物の化学的特質は、対応する空フラーレン類の化学的特質に比して、十分には明らかにされていない。その主な理由は内包フラーレン類が比較的不足しているからである。内包フラーレン類は、カーボンアーク放電法によって生成されたフラーレン総量のほんの数%でしかなく、豊富にある空フラーレン類から分離するのが非常に困難である。
本発明に関連して、流体中での金属内包フラーレン類カチオン及びアニオンの過渡電気化学的検知についての報告が最近あった。金属内包フラーレン類に電子を付加するため、及び電子を除去するために必要なエネルギーの相対測定が、これらの実験から得られたデータによって提供される。M@C82の金属内包フラーレン(及び1種のM2 @C80)に関する電気化学的データが、表2に記載された各種の技術によって得られた。
表2のデータは、金属内包フラーレン類の酸化還元特質が、それらの空フラーレン類と類似性もあり相違性も有することを示している。金属内包フラーレン類は、空フラーレン類と同様に多段階還元する。しかし、金属内包フラーレンの第一の還元は、より大きい空フラーレン類よりも高電位(より陽性、つまり電子付加がより容易)である。金属内包フラーレン類は、空フラーレン類に比較して、非常に低電位での一電子酸化をする。事実、これらの酸化は酸化電位>1Vでなされ、C60及びC70フラーレン類の酸化電位よりも低い、つまり酸化容易である。また、表2で特徴的なことは、ごく最近分離されたLa@C82及びPr@C82の稀な異性体について電気化学的測定が行われた点である。これらの稀な構造異性体は一電子還元し、それぞれの主要な異性体と類似した酸化還元特性を示すことが観察された。2つの報告書が、金属元素を複数内包したフラーレンの電気化学反応の幾つかについて記述している。La2 @C80は、単一元素内包フラーレン類よりもやや容易に還元し、やや高電位で酸化する(スズキ:1995)。また、SC3 @C82についての、強配位の溶媒ピリジン中での電気化学的測定が報告されている(アンダーソン(Anderson):1997)。表2によって示されるのは、フラーレンケージ中に単一の金属原子又は複数の金属原子を入れると、フラーレンの酸化還元特性が変化するということである。
Figure 0003926331
以上のような電気化学研究に続き、アカサカとその同僚たちは、定電位電解を用いてHPLCで精製したLa@C82の異性体(A及びB)の酸化還元溶液を発生させたことを報告した(アカサカ:2000(a)、アカサカ:2001)。Vis−NIR分光光度法では、中性La@C82に対するイオンスペクトルの特徴的な変化が明らかになった。興味深いことに、La@C82 + カチオンが不活性雰囲気下でさえも分解してしまうと報告されたのに対し、La@C82 - アニオンは、空気中でも著しく安定である。
アーク法による構成比の高い生成物(C60及びC70)と、構成比の低い生成物(Mm @C2n)との、酸化特性における大きな違いは、本発明において空フラーレン類から内包フラーレン類を分離することが成功するための物理的基礎となっている。金属内包フラーレン類が比較的一電子酸化しやすく一電子還元しやすいことの理由は、金属内包フラーレン類の電子的構造を調べれば、部分的に説明できる。図1は、三電子付与の(原子価が三価の)金属を内包する典型的なM@C82の分子軌道図(MO)である。この金属は表2に記載されたような金属であり、この場合にM@C82が内包する三価金属は、Sc・Y・La・Ce・Pr・Nd・Gd・Tb・Dy・Ho・Yb・Lu・U・Np・Amを含むと広範に理解される。これらの分子は全て中性であるが、正式には両性イオンM3+@C82 3-として表すことができる。図1のMO図では、これらの分子はラジカルであり、個々に低下したHOMOレベルにおいて1つの不対電子を有している。図1ではまた、HOMOにおいて電子が除去された場合(M@C82 + )、又は、別の電子が付加された場合(M@C82 - )に何が起こるかを比較的に示している。どちらの場合にも、HOMOレベルが最高の閉殻分子が形成された。従って、一電子酸化及び一電子還元は好ましく、これはM@C82類が通常の閉殻フラーレン類よりもなぜ非常に酸化還元しやすいかという理由説明を補足するものである。フリーラジカルは通常、閉殻分子よりも反応性が高いので、閉殻金属内包フラーレンプラスイオン又はマイナスイオンを形成する為にラジカルM@C82から一電子を付加又は除去すると、M@C82類を安定させることになる。重要なことは、M@C82がC60やC70よりも非常に酸化容易であることにより、大量にC60やC70が存在する中でさえも、特定の化学的条件下であればカチオンM@C82 + を優先的に形成できるということである。
M@C82以外のMm @C2n類の電子構造及びMO図については、現在はあまり良く知られていない。しかしほとんどのMm @C2n類は、特に三価金属を内包する類の場合に、M@C82に見られるのと同様なラジカル電子構造及び一電子酸化の比較的容易さを有していると予測されている。二価金属内包フラーレン類の酸化電位は、相応する三価金属内包フラーレン類よりも高くなるであろうが、C60及びC70の酸化電位と比較すると明らかに低い。このように、一電子酸化に基づいた精製方法は、異なる形のフラーレン類(Mm @C2n)に適切な条件下で適用される。Mm @C2n金属内包フラーレン類の構造異性体で豊富でないものは本発明の精製方法論によく適合する。内包フラーレン類とは全く異なり、高次の空フラーレン類全体の酸化電位(E1 Oxの範囲は+0.7V〜+0.9V)は、C60及びC70の酸化電位(E1 Oxの範囲は+1.3V及び+1.2V)と比較して約0.5Vの差がある。このように、酸化は豊富にあるC60及びC70フラーレン類と高次の空フラーレン類との分離のきっかけともなるものである。
化学的酸化剤及び化学的還元剤には多くの種類があるが、本発明の処理に係る酸化に最適なのは、弱配位アニオン及び弱い求核性溶媒である。一般的な化学的酸化還元剤が広範囲にわたって検討された(コナリー:1996)。これらの酸化還元剤を選択する場合の重要な基準は、特定の酸化還元電位と加工可能性である。本発明で開示された方法では、Ag+ が好都合な酸化剤である。なぜなら、Ag+ の還元による副産物として生じる金属Agは可溶であって、新たに酸化された物質を含む溶液中から濾過によって容易に取り除くことができるからである。本発明の開示において効果的なその他の酸化剤は置換トリアリールアミニウム類のカチオンであり、例えばトリ(4-ブロモフェニル)アミニウム(p−BrC643+ 及び酸化度の異なる誘導体に関連している(コナリー:1996、ボルスカー:1996)。その他の化学的酸化剤は、それらに限定されるものではないが、コナリーとガイガー(Geiger)によって論じられているものを含む(コナリー:1996)。
六フッ化アンチモン酸(SbF6 - )に代わる様々な弱配位アニオン類が存在する(ストラウス:1993)。これらアニオンは以下に限定されるものではないが、トリフラート、硫酸塩、過塩素酸塩、六塩化アンチモン塩、六フッ化リン酸塩、六塩化ヒ酸塩、六フッ化ヒ酸塩、三フッ化ホウ酸塩、テトラアリールホウ酸塩とそれらの置換フッ酸誘導体、三塩化アルミン酸塩、三フッ化酢酸塩、また様々な構成のカルボランなどである。前記カルボランは、例えば、CB1166 (但し、X=H、F、Cl、Br、I、CH3 )、CB11(X)12 - (但し、X=F、Cl、CH3 )、CB910 - 、Co(C21192 - などである。
有用な弱求核溶媒は、以下に限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1'-2,2'-テトラクロロエタン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの各種異性体、α, α, α- トリフルオロトルエン、ジクロロジフルオロエタン、そして他にはフロン、二酸化硫黄、ニトロベンゼンなどである。再結晶化処理に適している低極性溶媒は、以下に限定されるものではないが、ヘクサン、市販の混合物としてのヘクサン、ペンタン、ヘプタン及び側鎖アルカンと直鎖アルカン、シクロヘクサン、デカリン(シス異性体及びトランス異性体)、ベンゼン、トルエン、キシレン(の全ての異性体)、メシチレン、テトラリン、四塩化炭素などである。
(その他のカチオン形成方法)
本発明で開示される、酸化によるフラーレンカチオン形成に基づく分離処理は、プロトンのようなカチオン性求電子試薬の付加を通じたカチオン形成により代替して行うことができる。プロトン化による空フラーレンカチオン及び内包フラーレンカチオン形成は、酸化方法として同様の方法に適用される本発明の開示での精製処理の変形である。なぜなら内包フラーレン類は空フラーレン類よりも非常に低いプロトン化閾値を有するからである。リードらは、最もプロトン化が難しいであろうC60が、極度の条件下では事実上プロトン化されることを示した(リード:2000(b))。それよりも緩い条件下で更に弱い酸を用いた予備計測では、La@C82及びY@C82が三フッ化酢酸によってプロトン化され得ることをツマンスキーらが示した(ツマンスキー:1998)。つまり、余分の空フラーレン類と密に混合している内包フラーレン類の選択的プロトン化は可能であり、上述した酸化に類似しているが化学的プロトン化に基づくカチオン精製処理を可能にするものである。プロトン化はより豊富に存在するC60及びC70から、より高次のフラーレン類をまとめて分離するのにも有用である。なぜなら、高次フラーレン類は、HC60 + 及びHC70 + を形成するのに必要な条件よりも緩い条件下で選択的にプロトン化するからである。プロトン化によって形成されたフラーレンカチオンは、酸化処理において処理されたのと同様に、プロトン化されていないフラーレン類と再結晶化によって分離される。しかしながら、ラジカルで中性の内包フラーレン類の酸化は、プロトン化にわずかながら利点を与えるる。ラジカルなM@C82分子の一電子酸化は閉殻分子を形成するが、一方、プロトン化処理後は結果として生じるカチオンはラジカルのまま残る。ラジカルは、一般的に閉殻分子よりも反応性が高い。従って、ある特定のケースでは、酸化に基づくカチオン精製方法の方がプロトン化に基づく方法よりも望ましい。
個々の酸による金属内包フラーレン類のプロトン化は、式2によって表される。
(Mm @C2n)+[H+ ][X- ]→[H(Mm @C2n+ ][X- ] (2)
式2の酸[H+ ][X- ]は、弱配位のカウンターアニオンである[X- ]と共に用いられるプロトン酸(ブロンステッド酸)である。X- は、以下に限定されるものではないが、トリフラート、硫酸塩、過塩素酸塩、六フッ化アンチモン塩、六塩化アンチモン塩、六フッ化リン酸塩、三フッ化ホウ酸塩、テトラアリールホウ酸塩とその様々な置換フッ酸誘導体、三塩化アルミン酸塩、三フッ化酢酸塩、また様々な構成のカルボランなどである。前記カルボランは、例えば、CB1166 - (但し、X=H、F、Cl、Br、I、CH3 )、CB11(X)12 - (但し、X=F、Cl、CH3 )、CB910 - 、Co(C21192 - などである。
プロトン化に加えて、他のカチオン性求電子試薬R+ (Rは有機官能基又は無機官能基)をカチオン形成処理中に含めることができる。このような試薬は、金属内包フラーレン類と反応してR(Mm @C2n + )のようなカチオンを形成する。キタガワはRC60 + の類似化合物(Rは一部分がポリクロロアルカン)を原位置発生させた(キタガワ:1999)。
(分離処理)
一実施例においては、第二のフラーレン及びフラーレンカチオンの両方が、溶媒に実質的に可溶である。そして溶媒の極性を減じてフラーレンカチオン塩を沈殿させ、溶媒から沈殿したフラーレンカチオン塩を分離して、フラーレンカチオンを第二のフラーレンから分離する。この精製処理はカチオン性フラーレン化合物と中性フラーレン化合物との溶解性の違いを利用するものである。イオン性化合物は高極性及び高誘電率の溶媒に可溶であるが、反対に非イオン性化合物は低極性及び低誘電率の溶媒に可溶である。この相違性は分離に用いるのに有利である。オルトジクロロベンゼン(ODBC)の様な溶媒は、フラーレンアニオン、フラーレンカチオン、フラーレン中性イオンを溶解することができる。炭化水素ヘキサンの様な無極性溶媒が、フラーレン中性分子とフラーレンカチオン分子が混合しているODBC溶液に付加された場合、極性が減じて、中性分子の大半が溶液中に残存しつつカチオン分子が固体の塩として沈殿する。特記すべきは、空フラーレン類と内包フラーレン類の一般的な有機溶媒に対する溶解度は比較的低い(ミリメーターあたりミリグラム程度)ということである(ルオフ:1993)。本発明においてフラーレンアニオン、フラーレンカチオン、フラーレン中性イオンを溶解するために有用な溶媒は、以下に限定されるものではないが、ハロベンゼン(オルトジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなど)及びハロアルキル(例えば1,1,1',1' 四酸塩化エタン)である。再結晶化処理に用いるのに適している低極性溶媒は、以下に限定されるものではないが、ヘクサン、市販の混合物としてのヘクサン、ペンタン、ヘプタン及び他の側鎖アルカンと直鎖アルカン、シクロヘクサン、デカリン(シス異性体及びトランス異性体)、ベンゼン、トルエン、キシレン(の全ての異性体)、メシチレン、テトラリン、四塩化炭素などである。
別の実施例においては、分離処理は以下のように行われる。第一と第二のフラーレンは溶媒に実質的に可溶であり、フラーレンカチオンが溶媒に実質的に不溶である。そして、前記フラーレンカチオンが塩として析出して、そのフラーレンカチオン塩析出物を溶媒から分離することにより第二のフラーレンと分離する。この実施例において有用な溶媒は、第一のフラーレン及び第二のフラーレンがどちらも可溶である無極性の有機性溶媒であり、以下に限定されるものではないが、無極性炭化水素(ヘキサン、ペンタン、デカリンなど)及びアレーン(ベンゼン、トルエンなど)の溶媒である。
また別の実施例においては分離処理は以下のように行われる。第一と第二のフラーレンが溶媒に実質的に不溶であり、フラーレンカチオンが溶媒に実質的に可溶である。そして、溶媒に不溶である第二のフラーレンを溶媒から分離することにより、フラーレンカチオンを第二のフラーレンと分離する。この実施例において有用な溶媒は、以下に限定されるものではないが、ジクロロメタンのような少なくとも中程度の極性である溶媒であって、フラーレンカチオンを溶解できる溶媒である。
(中性フラーレンの復帰)
フラーレンカチオンの分離に次いで、フラーレンカチオンを中性状態に復帰させることができるがこれは任意である。フラーレンの親分子は酸化されたカチオン塩から様々な化学的又は電気化学的還元方法を用いて中性に戻すことができる。このような還元反応の化学量論のうちどのようなものが対照とされた場合でも、フラーレンアニオンに過剰還元する恐れを最小限にするために、比較的弱い還元剤が用いられる。
フラーレンの親分子は、プロトン化されたフラーレンカチオン塩から塩基反応によって中性に戻すことができる。式3は、プロトン化されたフラーレンカチオン塩の中性化処理をあらわす。但し、この式に限定されるものではない。
[H(Mm @C2n+ ][X- ]+NaOH →
m @C2n+[Na+ ][X- ]+H2 O (3)
m @C2nで表される式では、Mには、それらには限定されないが、表2に列記された元素を含める。これは内包フラーレン類が正しくはM3+@C2n 3-になるように、Mが電子を3個付与された金属原子であって、開示されたM@C2nの分離処理がうまく働くことを意図したものである。これらの金属元素は、図1のMO図に概説されるような電子構造を有している。図1はM@C82 + 、M@C82及びM@C82 - のフロンティア分子軌道の比較である(Mは3+の状態であって、M3+@C82 3 - のように3個の電子を付与している)。図1の縦軸は任意のエネルギーであって、各ダイヤグラムは他のダイヤグラムに対して基準とはならない。
フラーレンケージに3個の電子を付与する金属ではない金属を内包するMm @C2nの電子構造は、あまりよく知られていないが、本発明で開示された精製処理は、そのような電位が異なるMm @C2n類に適応させるために修正することが可能である。このことは、本発明ではTm @C2nの分離によって証明されている。また、本発明は複数元素を混合して内包する内包フラーレン類の分離にも適用できる。これらには、最近発見された、例えばSc3 N@C80、ErSc2 N@C80、Er2 ScN@C80、Er3 N@C80(スティーブンソン(Stevenson):1999)のようなものが含まれる。これらのような内包フラーレン類に適合するために行う修正は、以下に限定されるものではないが、異なる酸化還元剤、異なるカウンターアニオン、可溶化の異なる溶媒、再結晶化のための異なる溶媒である。開示された方法では、金属内包フラーレン類のカチオンの酸化による発生は、大規模な電気化学的技術を用いて行うことも可能である。
本発明で開示された精製方法は、Mm @C2nで表される金属内包フラーレン類以外のフラーレン類にも応用することができる。例えば、カチオン化による精製方法は、一般的なクラスである高次フラーレン類C2n(nが38以上)と、より豊富に存在するフラーレン類であるC60及びC70との、内包フラーレン類の存在下又は非存在下における分離に応用することができる。酸化電位の範囲が約+0.7V〜+0.9Vである一群の高次の空フラーレン類においては、その酸化電位はC60及びC70に比較して約0.5V低い。同様に、高次の空フラーレン類のプロトン化は、相当するC60及びC70のプロトン化に比較すると容易である。求電子性試薬の空フラーレンの混合物への付加は、高次フラーレン類については、そのイオン化電位の低さから証明される高い塩基度と一電子酸化の容易さのために選択的に行われる。高次フラーレンカチオンを形成するためのこれら2通りの方法(酸化とプロトン化)は、豊富にあるC60及びC70フラーレン類と一群の高次の空フラーレン類との分離の化学的きっかけとなるものである。いったん酸化されるかプロトン化されると、上述の方式1及び方式2において概説された開示方法と同じように、高次の空フラーレン類はイオン性塩として再結晶化され、非カチオンであって中性であるC60及びC70分子から分離される。そして製造された材料は、それから高次フラーレン類のみに濃縮される。この高次フラーレン類の混合物は、大量のC60及びC70の干渉なしに、標準的なクロマトグラフィー手法(つまり、予備的なHPLC)によってさらに個々のフラーレンを分離及び単離するのに適している。C60及びC70の干渉がないということは、混合高次フラーレン類の初期の溶液濃度を高くすることができ、大部分がC60及びC70である混合物の通常の処理時に可能なHPLC注入量よりも多い注入量が可能になり、繰り返し再循環させて還元を行うことができるなどということであり、クロマトグラフィー処理の効率が非常に高められるのである。
本発明で説明される精製方法及び分離方法は、外部誘導体化されたフラーレン類及びヘテロフラーレン類の分離にも適している。ヘテロフラーレンとは、単数又は複数のフラーレン構成要素である炭素原子が、C59N、C59Bにみられるように、一般式C(2n)-xx で表される他の元素によって骨格置換されたものである。このような分離方法は、改質前の出発物質を含む混合物から外部誘導体化されたフラーレン類及びヘテロフラーレン類を分離するのに有用である。外接フラーレンC60の誘導体の一般的調整は、例えば処理前のC60の一部のみを転換して誘導体化されたC60分子にし、製品としてその材料を、分離するのが困難な望ましいC60誘導体と未転換のC60の密な混合物のままにしておくものである。この特徴は、C2n及びMm @C2nフラーレン分子の有機誘導体化、無機誘導体化、有機金属誘導体化、ヘテロ誘導体化のいずれにも当てはまる。従って、本発明の開示に基づく、誘導体化されていないフラーレン分子から外接フラーレン誘導体を分離するための、クロマトグラフィーを用いない簡易な精製方法は広範囲で一般的な有用性がある。フラーレン誘導体又はヘテロフラーレンへの酸化剤又は求電子物質の添加位置は、外部置換基又はヘテロ原子であってもなくてもよく、又はその代わりに該フラーレン自体の残部でもよいし、それらの組み合わせでもよい。詳細は特定の誘導体化されたフラーレン又はヘテロフラーレンの修理に完全に依拠し、フラーレンの場合でもヘテロフラーレンの場合であっても、精製処理の適用性を損ねるものではない。そして、同時に外部誘導体化されている及び/又はヘテロフラーレンである内包フラーレン類にも等しく適用される。
金属内包フラーレン類の重要な応用方法が開発中である。これらの応用方法を効率良く活用するためには、現在入手可能な量より更に大量の金属内包フラーレン類が必要となる。本発明で開示される精製方法により得られる利点としての用途例は、以下を含む。
1.臨床用磁気共鳴映像装置(MRI)の造影剤としての用途。核磁気共鳴分析法(NMR)の原理と技術を用いて、体内の水陽子を映像化することによってMRIが行われる。磁気スピンを有する物質が投入されると、水陽子に近似なものについては、それらの陽子の緩和時間(T1 及びT2 )が減少し、常磁性の影響下においてではなく、水陽子と関係して「目立つ」ようになる。この影響は(常磁性の金属イオンに対する水分子の直接配位を通じて)外圏又は内圏となる。高磁気モーメントを有する金属イオン(ランタノイドガドリニウムなど)は、一般的に最適な緩和試薬となる。しかしながら、これらのイオンは血流中に直接流されると有毒である。配位化学では、MRIの緩和剤としてその錯体を使用する一方で、ガドリニウムの自由イオンを最小限にするために用いてきた。しかし、ガドリニウム内包フラーレン類は、キレート金属配位錯体に対して特有の利点を有する。なぜなら、内包金属はフラーレンの内部に閉じ込められているからで、これは空フラーレン類や、非金属内包フラーレン類には全く見られない利点である。従って、内包フラーレン類は、金属の有毒性という点を考慮すると、従来のキレート(多座配位子)よりも体内で安全であるようだ。
磁気を帯びた金属を内包したフラーレン類は、本発明にて開示されている方法によって精製することが可能であり、製薬利用のために、誘導体化又はそのほかに化学修飾することも可能である。そのためには第一に、水溶性に導く誘導体化が必要であるが、その方法は数多く開発されてきた。そのような化合物は体内の器官及び患部を映像化するために生体内で用いることができる。
2.核医学薬剤としての用途。放射性元素の金属キレートは、生体内での放射能のトレーサー又は高エネルギーで放射性崩壊する治療資源として用いることができる。多くの場合、有毒な金属が自由イオンとして循環するのを抑制するために、上記のMRI用の造影剤と一緒に強力な化学キレートが用いられる。また、放射性核種に関係するのは、大きなエネルギーを有する放射性崩壊に続くキレートからの金属のポテンシャル放出である。内包フラーレン類は、解離しない金属として、及び特定のタイプの腐敗事象や生成物反動に耐久性のあるカゴ状構成として、従来のキレートよりも優れた振る舞いをすると考えられる。従って、これらの核医学用薬剤が長期間の内に患者に与える有害な副反応を減少させるのである。
本発明において開示された精製方法では、次のような方法で、放射性金属を内包するMm @C2nに作用する。
1)放射能性金属の前駆体を用いた、精製に続くアーク合成法など。
2)内包フラーレン類の生成/精製に続く中性子放射化(ケイグル:1999)。
3)フラーレンケージへの放射性元素のイオン注入。
4)固体相フラーレンの格子にある侵入型元素の活性化を通じた、核反跳による注入。
放射性医薬品への金属内包フラーレン類の応用には、放射性映像用の放射能のトレーサー(血液脳関門を越えることが可能なもの)、治療法(付加した官能基を通じて目標を定めるという可能性を用いる)及び歯科補綴に用いる装置のフラーレンコーティング中の成分としてのものがある。
その他に、金属内包フラーレン類の製薬への応用は、一重項酸素の発生装置(タグマタルチス(Tagmatarchis):2001)があり、これは生体内での疾患治療用に用いることが可能である。
実験例1 Gd@C82の酸化による分離精製
金属を含有させたグラファイトロッドを用いたアーク放電法によって生成されたフラーレン材料の混合物と代表的なM@C82との分離の典型例として、Gd@C82の分離精製を紹介する。Gd23 を含有したグラファイトロッドは、標準的条件下(約30Vの直流・160A・150torrのヘリウムガス)で、カーボンアーク方式のフラーレンの反応炉における陽極としてアークされる。未精製煤中に生成したフラーレン類及び金属内包フラーレン類は、1晩かけて、温度750℃の減圧下(約1×10-3torr)で、水冷却コンデンサー上で昇華される。このコンデンサーは、嫌気状態でアーク装置より取り外され、不活性雰囲気のグローブボックスへと導入される。そこでフラーレン類とGdを含む金属内包フラーレン類の昇華混合物は、コンデンサーよりかき落とされ回収される。現在のアーク反応炉では、3本のGd23 を含有したグラファイトロッドから得られる昇華物の標準的な量は、普通400から700mgと様々である。この混合された空フラーレンとGd内包フラーレンの昇華物は方式1で説明した、M@C82の精製用に開発された方法で処理される。そしてこの方法では、全ての精製工程は、アルゴンを充填した不活性雰囲気のグローブボックス内で、嫌気条件下(酸素と水が存在しない条件)で行う。方式1の精製工程では、各工程において望ましくないフラーレン類(C60、C70及び高次フラーレン類)を必ず含んでしまうが、その理由は単純で、これらの望ましくない空フラーレン類は、内包フラーレン類よりも圧倒的に量が多いからである。しかしながら、一連の各再結晶化工程が、最終工程においては空フラーレン類が全く残らないように金属内包フラーレン類の量を濃縮していくのである。
図2は、嫌気状態で回収された昇華物の典型的なLD TOF−MS(レーザー脱離型飛行時間質量分析法)であり、空フラーレン類とGd内包フラーレンの広範な混合物を示している。この昇華物300mgをオジクロロベンゼン(ODBC)10ml中で一晩活発に攪拌し、45μm厚のフィルターで濾過する。この濾過により、空フラーレンでありスモールバンドギャップフラーレンであるC74やその他少量の空フラーレン類C2n(nは30以上)とに加え、Gd内包フラーレン類であるGd@C60、Gd@C70、それより高次のGd@C2n(主としてnは41を除く)の混合物を含む不溶性物質が取除かれる。可溶性の濾過液は、ODBC中にGd@C82を比較的大量の空フラーレン類C2n(nは30以上、及び37を除く)と共に含んでいる。
Gd@C82と大量に存在する他の空フラーレン類とを分離するための、方式1における第一の酸化還元工程を式4に示す。
ODBC溶液中のGd@C82と空フラーレン類C2n(nは30以上の整数、及び37を除く)に酸化剤[Ag+ ][SbF6 ]25mgを加え、この混合物を3時間活発に攪拌する。ODBC中の酸化剤[Ag+ ][SbF6 - ]には、Gd@C82から1電子を除去するには十分な酸化力があり、その陽イオンを与えて、六フッ化アンチモン酸塩及び固体相のAg副産物を生成する。大部分を占めるC60及びC70フラーレン類は、Ag+ がこれらC60及びC70から電子を除去するには酸化電位が高すぎるため、中性分子に留まる。
Figure 0003926331
その中程度から高程度の酸化電位を有するその他の空フラーレン類(例えば、C76、C78、C84など)もまた、非荷電分子のままである。そして、空フラーレン類と[Gd@C82 + ][SbF6 - ]塩の可溶性混合物はAg金属を除去するために濾過される。
Figure 0003926331
次に、ヘクサンのような無極性溶媒を多量に加えることによって、可溶物を再結晶化する。ODBC溶液を、急速に攪拌されているアルカン溶媒(ヘクサンと、シクロヘクサン又は5〜20%のデカリンを含むシクロヘクサン混合物とで全体量100mlを成す)に滴下する。ODCB溶液量に比較して多量の無極性アルカン溶媒は、溶媒の極性を急速に減じ、元のODCB溶液が有した溶解性を減じる結果イオン性塩である[Gd@C82 + ][SbF6 - ](及び、存在するならば酸化されたフラーレンのラジカルカチオン塩)を溶液中から急速に析出させる。このODCBとヘクサンの混合溶媒中では、ほとんどの中性フラーレン類が溶液中に留まる。ただし、少量の空フラーレン類がイオン性塩と一緒に析出する。なぜなら、純粋なODCBよりもこの混合溶媒において、空フラーレン類の溶解性が全体的により低いからである。この工程では、大部分の空フラーレン類を除去することによって、得られるGd@C82を濃縮する。1時間かけて上記の混合物を攪拌し、45μm厚のフィルターで濾過する。そして、濾過された固体は別量のアルカン溶媒(10〜50ml)にて洗浄する。
上記の固体は、出発原料と比較して量が減少した空フラーレン類と化合したGd@C82 + (Gd@C82のSbF6 - 塩として)が豊富になったフラーレン材料を含んでいる。また、フィルターを通過した可溶性の濾過液には、ODCBとアルカンの混合溶媒中に微量のGd@C82と共に空フラーレン類の混合物を含んでいる。この析出(再結晶化)工程は、望ましければ、Gd@C82の成分量を更に多くするために、何度か繰り返して循環させることができる(方式1)。このような場合、濾過された固体を、最小限の量のODCB(5〜10ml)に再び溶解し、急速攪拌状態のアルカン溶媒(50〜75ml)にて再び析出し、濾過し、前工程のようにアルカン溶媒で洗浄する。この再結晶化では、空フラーレン類に応じたGd@C82 + の析出物を濃縮するが、製品中のGd@C82 + の生成量がわずかに減少する。なぜなら、ODCB及びアルカン溶媒中に存在する微量の水及びその他の求核性不純物によって、Gd@C82 + が一電子還元して少量の中性Gd@C82となり、濾過液中に洗い落とされてしまうからである。昇華物中のGd@C82の全割合は低い(約1%)ので、精製処理の各工程におけるGd@C82の全体量を減少させる操作は最小限にするのが望ましい。
次の工程では、析出しGd@C82 + が豊富になった固体をジクロロメタン溶媒中で活発に攪拌する。ジクロロメタンは、適当に弱配位のカウンターアニオンを有するフラーレンカチオンを溶解するのに十分な極性を有する溶媒である。しかし、中性のフラーレン分子を溶解するには比較的不十分な溶媒である。従って、ジクロロメタンとの混合物として析出物を攪拌すると、まず可溶性のGd@C82 + と共に少量の空フラーレン類を抽出することになる。
次の工程(式5に表す)では、アニオンの複分解は[Gd@C82 + ][SbF6 - ]塩の弱配位のSbF6 - アニオンを、より強配位の塩化物(Cl- )と置換することで行う。ジクロロメタン溶液に、多量の塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム([n−Bu4+ ][Cl- ])を加える。CH2 Cl2 においては、[Gd@C82 + ][SbF6 - ]及び空フラーレン類の混合物への可溶の[n−Bu4+ ][Cl- ]の添加によって、不溶性の複合体Gd@C82Clが即時析出する。空フラーレン類はCl- の存在によっては何の影響も受けず、[n−Bu4+ ][SbF6 - ]の複分解生成物及び余分の[n−Bu4+][Cl- ]と共に溶液中に留まる。不溶性のGd@C82Clは濾過によって除去され、そしてCH2 Cl2 で洗浄される。
Figure 0003926331
Gd@C82Clから自由なGd@C82に戻すためには、まず最初に塩化物を除去するが、これは式6によって行う。[Ag+ ][SbF6 - ]は、今度はCl- を捕らえるために作用する。[Ag+ ][SbF6 - ]とGd@C82Clを、両方が溶解性を持つ溶媒であるODCB中に混合する。すると可溶性の[Gd@C82 + ][SbF6 - ]が生成し、及び不溶性であるAgClが即時に析出する。AgClを除去するためにこの溶液を濾過し、濃縮して純度を高めた個体の[Gd@C82 + ][SbF6 - ]を得るためにヘクサンを添加して再結晶化する。この再結晶化工程においては、急速攪拌状態のヘクサンに上記のODCB濾過液を滴下することによって、固体の[Gd@C82 + ][SbF6 - ]を回収する。そして、不溶性の[Gd@C82 + ][SbF6 - ]は、濾過によって除去され、ヘクサンで洗浄される。
Figure 0003926331
図3にLD TOF−MSによって分析しているように、上記の生成物である固体塩[Gd@C82 + ][SbF6 - ]には、空フラーレン類の混入がないことが必要である。図3で分析されたのは、上記精製方法の予備試験によって得られた物質で、少量のGd@C82でない不純物を含んでいる。続いて方式1の精製方法を応用することで、更に純度の高いGd@C82原料を精製する。図4ではGd@C82 + を含んだODCB溶液の電子吸収スペクトルを示し、約1280nmの特徴的なNIRλmax を表していることがわかる(アカサカ:2000(a))。図5はODCB中の精製後のGd@C82 + の示差パルスボルタモグラフ(DPV)である。+1/0酸化還元対は+0.52Vで観察され(このシステムではAg/AgNO3 に対して)、0/−1酸化還元対が、0.5Vの「電気化学的なギャップ」に対して、理論値に一致して+0.03Vで観察された(スズキ:1996)。また、これらの酸化還元のピーク間の数値は、対応するGd@C82の少量の構造異性体の酸化還元事象を反映しているようである(アカサカ:2000(b)におけるPr@C82と同様に)。
[Gd@C82 + ][SbF6 - ]は、それ自体で更なる化学的研究に利用できるし、又、望ましければ一電子を還元して中性のGd@C82とすることもできる。そのためには多くの化学的方法がある。そのような還元反応においては、化学量論はコントロールされ、Gd@C82 - アニオンへと過剰還元反応する可能性を最小限にするために、比較的弱い還元剤が用いられる。この還元反応を行うには、幾つかの方法がある。その内のひとつが式7で表されている。還元剤は、一電子を[Gd@C82 + ][SbF6 - ]に与えて、中性のGd@C82を生成させる。約−0.5VのE°(フェロセン基準に対して)であるデカメチルフェロセン、Fe(Cp*2 は、この還元反応を行い得る、広く入手可能な弱い還元剤である(コナリー:1996)。有用な還元方法の一つは、[Gd@C82 + ][SbF6 - ]塩の懸濁液を、[Gd@C82 + ][SbF6 - ]が不溶なアセトニトリル中で、デカメチルフェロセンに相当する一種の物質(つまり、ビス(ペンタメチルーシクロペンタジエニル)鉄、Fe(Cp*2 、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニルのアニオン)と共に攪拌することである。Fe(Cp*2 は、アセトニトリル中で[Gd@C82 + ][SbF6 - ]を一電子還元して、Gd@C82と[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ]にするために十分な溶解性を有している。この混合物は活発に攪拌されて、[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ](λmax =783nm)の緑色の溶液及び、濾過によって除去され追加のアセトニトリルによって洗浄された不溶性のGd@C82の懸濁液となり、最終的に1〜2mgのGd@C82が得られる。出発原料である[Gd@C82 + ][SbF6 - ]が、アセトニトリルに不溶であるため、先行する工程でのGd@C82への変換効率は100%とはなりにくい。しかし、ほとんどのGd@C82の化学的操作においては、これは問題とはならない。
[Gd@C82 + ][SbF6 - ]+Fe(Cp*2 + →Gd@C82+[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ](7)
望ましければ、[Gd@C82 + ]からGd@C82へ一電子還元させる処理に代わる処理を行うこともできる。まず、固体の[Gd@C82 + ][SbF6 - ](5mg)を最小限のODCB(1〜5ml)に溶解させる。Fe(Cp*2 の等価物を、攪拌しながらODCB溶液に加える。即時に一電子還元化が起こり、Gd@C82及び[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ]が形成され、これらはOCDB溶液中に留まる。それからこの混合物は、急速に攪拌されているヘクサン(50ml)に滴下され、Gd@C82と最小限量の[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ]が析出する。固体析出物は濾過された上、残存する[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ]を除去するためにアセトニトリルで洗浄され、その結果物が最終製品である固体のGd@C82である。特記すべき重要な点は、方式1での再結晶化は、分離処理において補完的な酸化剤を必要とせずに行われるということである。この代替方法は、Gd@C82が極性溶媒と無極性溶媒の混合溶媒にわずかに低い溶解性を示すため、空フラーレン類に対するGd@C82の部分的な濃縮をもたらす。しかしながらこの代替方法は、方式1で説明した酸化を基本とした処理よりも効果的ではない。
また、代替方法として、固体の[Gd@C82 + ][SbF6 - ]をMeCN([Gd@C82 + ][SbF6 - ]が不溶)中に懸濁させ、Fe(Cp*2 の等価物と共に攪拌する。この溶液は、[Fe(Cp*2 + ][SbF6 - ](紫外可視分光分析法で確認、λmax =783nm)の生成物から急速に緑色に変化する。そしてこの溶液を数時間攪拌し、濾過し、濾過物である固体のGd@C82をMeCNで洗浄する。固体の[Gd@C82 + ][SbF6 - ]はMeCNに不溶であるため、この場合[Gd@C82 + ][SbF6 ‐]のGd@C82への変換効率は100%ではない。しかしながら、この代替方法は簡易であって、Gd@C82の実用的な製品利用のほとんどに十分有効である。この代替方法による還元は、当該分野で通常の技術を持つ者が知る様々な条件下で行えるし、ここで説明している実験例に限定されるものではない。
上記で開示されたGd@C82と空フラーレン類との分離処理は方式1に要約されている。しかし、方式1で使用され正確な条件もまた、ここで説明している実験例に限定されるものではない。
実験例2:Gdm @C2nを含む「酸化容易な」Mm @C2nの酸化による分離及び精製
方式2は方式1で要述した処理を部分的に変更した方法を説明する。方式1ではM@C82のみの抽出であったのに対して、方式2ではより広い範囲の金属内包フラーレン類Mm @C2nの抽出と精製の処理を要述する。変更点は、フラーレン類と内包フラーレン類の混合した昇華物をOCDBで抽出する際に、[Ag+ ][SbF6 - ]混入酸化剤を使用することである。これはその場(in situ )での酸化及び他の不溶性である内包フラーレン類M@C2nと複数の金属を内包するフラーレン類Mm @C2nの溶液への抽出を可能にする。
例えば、最終製品がGd@C82のみならず様々なGd内包フラーレン類であるGdm @C2nを含むように、方式1での処理を第一の工程である昇華物のODCB抽出において変更することができる(方式2)。この工程での酸化剤の存在は、中性及びカチオンの両方でODCBに可溶であるGd@C82と一緒に、ODCBに不溶である他のGdm @C2n類を、酸化剤によりカチオンに転化して抽出するのに効果的である(式8)。Gdm @C2n + 材料の精製処理は、方式2で説明するように、Gdm @C82を精製するのに用いた方法(方式1)と同様に行われる。
Figure 0003926331
最終的に生成する固体は、非常に少量の空フラーレン類を含む金属内包フラーレン類Gdm @C2n(nは36以上)の混合物である。方式2で説明されている処理は、実験例1で述べたように金属を含有したグラファイトロッドからアーク放電法によって製造されたフラーレン材料について行われた。図6は、精製後のGdm @C2n材料のLD TOF−MSによる分析図である。図7は、ODBC中のGdm @C2nのDPVであり、この類の混合したGd内包フラーレン材料中の多くの酸化還元事象を示している。
Figure 0003926331
方式1及び2の分離処理は、Gd以外の金属を内包する金属内包フラーレン類に対しても行われた。例えば、Ym @C2n、Lam @C2n、Tm@C2nの金属内包フラーレン類である。YはGdと同様に、正式にはM3+@C2n 3-で表される金属内包フラーレン類を形成する金属の一例である。図8は、方式2の処理を適用したあとの昇華物から得られたYm @C2n材料を示している。図9は、ODCB中で精製されたYm @C2n材料の部分的なDPVである(Y@C82異性体についての引用文献に一致する。スズキ:1996、アカサカ:2000(b))。
M@C82でない金属内包フラーレン類Mm @C2nのほとんどは、中性では不溶である。従って、この方法は、抽出可能な金属内包フラーレン類の総合的な収集量を増加させる。これは特に価値があるが、なぜならフラーレン類全体の生成量に上述の金属内包フラーレン類が占める割合が少量だからである。Mm @C2n類の混合フラーレンの精製(方式2)を確保することは、M@C82に対して使用した同じ方法(方式1)で行われる。
また、方式2は、工数を減らすだけでなく、Mm @C2n抽出効率を低くしないために、以下のように変更することができる。ODCBとAg+ を使用して抽出と再結晶化工程を行う代わりに、昇華物を直接CH2 Cl2 とAg+ を用いて抽出する工程で処理を始めてもよい。この工程では、前処理を行わずにMm @C2n類をカチオンとして溶解するが、CH2 Cl2 に対して低い溶解性を有する空フラーレン類の昇華物マトリクス中に内包フラーレン類が取り込まれてしまうため、抽出された内包フラーレン類の全体量を減少させる。
分離実験では、上記開示された2通りの処理はGd内包フラーレンを含む煤及び、方式1及び2で用いられた嫌気状態という条件ではなく、完全に空気中で昇華させた昇華物について行われた。この実験においては、精製処理では望ましい分離が達成されたが、効率が非常に落ちた。その理由は、酸化されたMm @C2nと中性のMm @C2nの空気(酸素及び/又は水)への反応性によるものであろう。この空気に対する反応性は、カーボンアークによる生成物中の内包フラーレン類の成分比率が低いことによって複雑になる。カーボンアークで生成するよりも、内包フラーレン類の生成効率が高いこの新しい製造方法であれば、方式1及び2について空気中での分離を行うことも実行可能である。
開示された方式1及び2(モノカチオンであるM@C82 + 及びMm @C2n + の生成を利用するもの)の処理に対する、更なる変更点は、より高電荷のカチオン、例えばM@C82 x+及びMm @C2n x+(Xは2、3など)を形成する点である。スズキら及びアカサカらはフェロセンに対して約1.1Vの電位でジカチオンM@C82 2+が一時的に形成したという電気化学的証拠を発表している(スズキ:1996、アカサカ:1996)。より高い電荷を有するカチオンの化学的生成は、非常に弱い求核性アニオン及び溶媒と、方式1及び2で用いられている酸化剤よりも強力な酸化剤を必要とする。このような条件は実際、C60 + 及びC70 + の単塩体を形成する条件に類似している(ボルスカー:1997、リード:2000(b))。ジカチオンを用いる主な利点は、ジカチオンはその高いイオン電荷のために、溶解性が低いということである。この変更点では、内包フラーレンMm @C2n 2+類の混合物と空フラーレン類C2n及びC2n +とを共に生成する酸化条件が用いられる。内包フラーレン類のジカチオンはそれから選択的に析出、再結晶化されて、方式1及び2での処理と同様に、内包フラーレン類と空フラーレン類との分離に効果的にはたらく。
実験例3:M@C60、M@C70及びM@C74
方式1の処理(M@C82の分離)と方式2の処理(酸化容易なMm @C2n(Mは三価)の分離)が行われた後に残留している昇華物には、重要な金属内包フラーレンを含有する材料が存在する。この昇華物から分離される金属内包フラーレン類の第3の種類は、M@C60、M@C70及びM@C74のようなM@C2nであって、これらは溶媒には一般的に不溶で、可溶なカチオンには容易に酸化できない。三価の金属(M)を内包する、例えばGd内包フラーレンのような金属内包フラーレン類の場合、この第3の材料は図10のようなLD TOF−MS分析図を示す。主に含まれているのはGd@C60である。また、C74(D3h)及びC80(Ih )等のような、不溶性の内包フラーレンGdm @C2n類と類似した性質を本来有し、不溶性でスモールバンドギャップ空フラーレンが存在する。
これらの空フラーレン類C2nの量は、方式2で使用するような軽度の酸化剤を用いて酸化することによって減少させることができる。三塩化アルミニウムは、ODCBのような非反応性溶媒中でのこのような酸化に有用である。図11は、C74のような不溶性の空フラーレン類C2nの酸化減少以前のGd@C60の質量スペクトルである。この原料からの、スモールバンドギャップ空フラーレンC74及びその他のGd@C2n(2nは72以上)の減少は、ODCB中の過剰なAlCl3 を用いた処理によって行え、溶液は暗茶色となる。不溶物は濾過して除去し、(過剰なAlCl3 を除去するために)ODCB及びCH2 Cl2 で洗浄する。そしてヘクサンにて洗浄し、真空中で乾燥する。結果得られる、図12に示す原料(図10に示す原料と類似している)では、(図11と比較して質量分析のピーク部分を見ると、)C74が約50%減少している。C60、C70などの存在レベルが低いのだが、それらの少量が不溶性のGd@C60の固体に物理的にとりこまれてしまうであろうし、従ってそれらは抽出できないのである。三価のランタノイドを内包したMm @C2n類は、Gd@C60の例で示すように、中性分子又はカチオン分子として溶解し得る他の材料全てを除去することで精製する。方式3は、混合昇華物を出発物質とした3種の金属内包フラーレン類全てに共通の分離処理の概要を提供する。
何種かのランタノイド金属を内包するM@C2n(M=Sm、Eu、Tm、Yb及び可能性としてはEr)はフラーレンケージに2つの電子を与える金属を含んでいると報告されている(つまり、M2+@C2n 2-の形で)。この類の金属内包フラーレンは、それらが対応する、三価の電子を有する金属原子を内包するフラーレン類M@C2nとは異なる性質を有する。この異なる性質は、上記したような酸化耐性で不溶なM@C60類の性質からの逸脱を含む。二価の電子を有する金属原子を内包する、Mm @C60類のランタノイド金属内包フラーレン類は、中程度の酸化力である酸化剤を用いて酸化することができ、それによって新規な可溶性カチオンM@C60 + が生じる。ここで、Tm@C60をそのような種類の金属内包フラーレン類の一例として呈示する。図13は、標準的なアーク法によって嫌気下で製造された、Tm @C2nを含有するフラーレン昇華物(空フラーレン類も含む)のLD TOF−MSである。
Tm @C2nを含有するフラーレン昇華物は、方式2にて示したものと類似した酸化抽出処理で処理しやすい。この最初の例では、酸化抽出処理はAgPF6 を含むジクロロメタン中での昇華物の反応で始め、上記したようなODCB又はその他の溶媒での先行した洗浄を行わない。図14は、方式2と類似した該処理によって得られる、Tmm @C2n + を含有する原料を示している。この原料はかなりの量のTm@C60及びTm@C70をカチオンとして、その他の可溶なTmを内包するフラーレン類Tmm @C2nと共に含有する。これらのツリウム内包フラーレン類Tmm @C2nは、元となる昇華物と比較すると、空フラーレン類C2nと比較して濃縮されている。これらの結果は、この開示された精製方法が、M3+@C2n 3-類とは基本的に異なる構造の内包フラーレンに適用されることを示している。
さらに好ましくは、図13のTm@C2nを含有するアーク法で生成した昇華物は、ODCB中で数日間攪拌されることにより予め抽出される。これにより、ほとんどの溶解性C2n及びTm@C2nなどは、不溶物が濾過されヘキサンで洗浄された後に除去される。結果得られる固体の物質を、ODCB中で12時間、大量の酸化剤AgPF6 で処理する。すると、Tm@C60 + 及びTm@C70 + などのTm@C2n類の可溶性カチオンを含んだ濃茶色の溶液が生成する。この濃茶色の溶液を膜厚0.45μmのPTFEフィルターで濾過し、攪拌中のヘクサンに滴下すると、即時、固体物が析出する。この析出物はTm@C60 + 及びTm@C70 + を含んでおり、この析出物を濾過によって集め、ヘクサンで洗浄して減圧下で乾燥して図15に示す物質を製造する。この酸化はODCBに不溶なTm@C2nの一部のみを溶解させることが分かるが、これはおそらくより高い酸化電位を有する、異なったTm@C2n構造が存在し、及び/又は単にこれらの物質の分子内重合が困難であるからであろう。
また任意で、アーク法で製造された煤を、前処理に昇華を行わずに上記の処理において直接使用してもよい。可溶なTm@C2n類のカチオンは、ODCBで洗浄して嫌気下で処理された煤から、AgPF6 などによる酸化によって抽出し、上記のように再結晶化することもできる。
前記した、酸化容易なTm@C2n類の金属内包フラーレン酸化剤の性質は、特に利用性が高い。三価の金属を内包するM@C2nでは、はじめにM@C82について示したように、最初の酸化は、酸化電位を決める電子殻数(及び構造)の相違で不対電子が取れる結果起こる。二価の金属を内包するM@C2nでは、第一酸化は異なる原因で起こる。これは一つには、これらM@C2nの第一酸化は、M2+からフラーレンケージと離れているM3+への転換であるので、金属中心であるからだと説明できる。この点において、上記した一連の、フラーレンケージの内部のランタノイド金属及びその他の元素に対しても連続的な効果があるであろう。
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参考文献
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ここで引用される参考文献は全てここでの開示に矛盾しない程度に言及されて、組み入れられている。すなわち、各々の参考文献が言及され具体的に組み込まれたかのようにである。
当業者は、ここに具体的に開示されている以外の試薬、出発物質、溶媒、反応条件(例えば、温度、圧力など)、精製方法、及び分析技術、及びその他の方法や手順が本発明を実施するのに適用可能であることを、必要以上の実験によらずに理解するであろう。このような方法、試薬、出発物質、及び条件は全て本発明の範囲内に含むように意図されている。当業者は、ここで記載及び/又は開示されている方法、試薬、材料、手順、及び技術と機能的に同等な数多くの方法、試薬、材料、手順、及び技術を知り得るであろう。このような機能的同等物は全て本発明の範囲内に含むように意図されている。
出願人は、本発明と同時に出願した米国特許出願「不溶フラーレン類の誘導体化及び可溶化」(代理人管理番号108−01)及び特許仮出願60/326,353号と60/371,380号にて開示されている、誘導体化及び可溶化するためのフラーレンの精製方法に、本発明が特に有用であると述べている。
M@C82 + 、M@C82及びM@C82 - のフロンティア軌道レベルの比較図である(Mは3+状態、3電子が付与されておりM3+@C82 3-となっている。)。 混合ガドリウム内包フラーレン昇華物の、LD−TOF MS(レーザー脱離型飛行時間質量分析法)による分析表である。 方式1に従って分離されたGd@C82のLD−TOF MSによる分析表である。 オルトジクロロベンゼン(ODCB)溶液中のGd@C82 + のVis−NIR(可視−近赤外域)電子吸収スペクトルである。 オルトジクロロベンゼン溶液中のGd@C82 + の示差パルスボルタモグラムである。 方式2に従って分離されたGdm @C2nのLD−TOF MSによる分析表である。 オルトジクロロベンゼン溶液中のGdm @C2nの示差パルスボルタモグラムである。 方式2に従って分離されたYm @C2n + のLD−TOF MSによる分析表である。 オルトジクロロベンゼン溶液中のYm @C2nの示差パルスボルタモグラムである。 方法3に従って分離された不溶であるGd@C2nのLD−TOF MSによる分析表である。 オルトジクロロベンゼンに不溶であるGd@C60類のLD TOF−MSによる分析表である。 オルトジクロロベンゼンに不溶であり、AlCl3 処理したGd@C60類のLD TOF−MSによる分析表である。 混合ツリウム内包フラーレン昇華物のLD−TOF MSによる分析表である。 可溶性カチオンとして、不溶性の内包フラーレン類及び空フラーレン類C2nと分離した、精製Tmm @C2n + のLD−TOF MSによる分析表である。 可溶性で酸化可能なTm@C60類のLD−TOF質量分析表である。

Claims (39)

  1. フラーレン材料中の第一のフラーレンと第二のフラーレンの分離方法であって、(a)溶媒に該フラーレン材料を導入すること、(b)前記第一のフラーレンから安定したフラーレンカチオンを形成すること、(c)該フラーレンカチオン又は該フラーレンカチオン塩と前記第二のフラーレンとを分離することからなる工程を有し、
    前記第二のフラーレン及び該フラーレンカチオンの両方は該溶媒に実質的に可溶であり、該溶媒の極性を減じることで該フラーレンカチオンの塩を析出させて、該フラーレンカチオンの塩の析出物と該溶媒とを分離し、前記第二のフラーレンと該フラーレンカチオンを分離する方法。
  2. 請求項1の方法において、前記第一のフラーレンが、該溶媒に実質的に可溶である方法。
  3. 請求項1の方法において、前記第一のフラーレンが、該溶媒に実質的に不溶である方法。
  4. フラーレン材料中の第一のフラーレンと第二のフラーレンの分離方法であって、(a)溶媒に該フラーレン材料を導入すること、(b)前記第一のフラーレンから安定したフラーレンカチオンを形成すること、(c)該フラーレンカチオン又は該フラーレンカチオン塩と前記第二のフラーレンとを分離することからなる工程を有し、
    前記第一及び前記第二のフラーレンは該溶媒に実質的に可溶で、該フラーレンカチオンは該溶媒に実質的に不溶であり、該フラーレンカチオンの塩を析出させて、該フラーレンカチオンの塩の析出物と該溶媒とを分離し、前記第二のフラーレンと該フラーレンカチオンを分離する方法。
  5. フラーレン材料中の第一のフラーレンと第二のフラーレンの分離方法であって、(a)溶媒に該フラーレン材料を導入すること、(b)前記第一のフラーレンから安定したフラーレンカチオンを形成すること、(c)該フラーレンカチオン又は該フラーレンカチオン塩と前記第二のフラーレンとを分離することからなる工程を有し、
    前記第一及び前記第二のフラーレンは該溶媒に実質的に不溶で、該フラーレンカチオンは該溶媒に実質的に可溶であり、不溶な前記第二のフラーレンと該溶媒とを分離して、前記第二のフラーレンと該フラーレンカチオンを分離する方法。
  6. 目的のフラーレン及び望ましくないフラーレンを含有するフラーレン材料から、前記目的のフラーレンを精製する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該フラーレン材料を溶媒に導入すること。
    (b)前記目的のフラーレン又は前記望ましくないフラーレンのどちらか1種から安定したフラーレンカチオンを形成すること。
    (c)該溶媒の極性を減じて該フラーレンカチオンの塩を析出させること。
    (d)該溶媒と析出した該フラーレンカチオンの塩とを分離すること。
  7. 請求項6の方法において、前記目的のフラーレンを酸化して該フラーレンカチオンを形成する方法。
  8. 請求項6の方法において、前記望ましくないフラーレンを酸化して前記フラーレンカチオンを形成する方法。
  9. 請求項6の方法において、該フラーレンカチオンを、プロトン化剤を用いて形成する方法。
  10. 請求項6の方法において、該フラーレンカチオンをプロトン化剤でない求核試薬を用いて形成する方法。
  11. 第一のフラーレンとC60及びC70フラーレン類を含有するフラーレン材料からC60及びC70フラーレンを分離する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該フラーレン材料を溶媒に導入すること。
    (b)前記第一のフラーレンから安定したフラーレンカチオンを形成すること。ここで該溶媒には該フラーレンカチオンと該C60及びC70フラーレン類が全て可溶である。
    (c)該溶媒の極性を減じて該フラーレンカチオンの塩を析出させること。
    (d)該フラーレンカチオンの塩の析出物と該C60及びC70フラーレン類を含んだ該溶媒を分離すること。
  12. 60及びC70フラーレン類を実質的に含まない内包フラーレンを製造する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該C60及びC70フラーレン及び1種の内包フラーレンを含有するフラーレン材料を溶媒中に導入すること。
    (b)該内包フラーレンから安定したフラーレンカチオンを形成すること。ここで該溶媒には該内包フラーレンカチオンと該C60及びC70フラーレン類が全て可溶である。
    (c)該溶媒の極性を減じて該内包フラーレンカチオンの塩を析出させること。
    (d)該内包フラーレンカチオンの塩と該C60及び該C70フラーレン類を含んだ該溶媒を分離すること。
  13. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、電極を用いて電解溶液中で形成する方法。
  14. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、化学的な酸化剤を用いて形成する方法。
  15. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、プロトン化剤を用いて形成する方法。
  16. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、プロトン化剤ではない求核試薬を用いて形成する方法。
  17. 請求項1の方法において、前記第一及び前記第二のフラーレンの酸化電位が、フェロセン基準を用いて少なくとも0.10V異なる方法。
  18. 請求項1の方法において、前記第一及び前記第二のフラーレンの酸化電位が、フェロセン基準を用いて少なくとも0.30V異なる方法。
  19. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、内包フラーレン類、高次フラーレン類、金属内包フラーレン類又はこれらの類の混合物から形成する方法。
  20. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、スモールバンドギャップフラーレンから形成する方法。
  21. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、ランタノイド系金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアクチノイド系金属から成る群より選択される1種の金属を含む金属内包フラーレンから形成する方法。
  22. 請求項21の方法において、該金属をSc、Y、La、Sm、Eu、Tm、Yb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu及びErからなる群より選択する方法。
  23. 請求項22の方法において、該金属はGd、La、又はYである方法。
  24. 請求項1の方法において、前記安定したフラーレンカチオンを、放射性元素からなる群より選択される1種の元素を含む内包フラーレンから形成する方法。
  25. 請求項1の方法において、更に、(d)該フラーレンカチオンを元の荷電状態に戻す工程を有する方法。
  26. 請求項1の方法において、更に、(d)該フラーレンカチオンを還元剤によって還元する工程を有する方法。
  27. フラーレン材料から、可溶であって酸化容易なフラーレン類M@C2nを分離する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該フラーレン材料を昇華し、これによりM@C2nをどの巨大フラーレン類及びどの非フラーレン類からも分離すること。
    (b)前記昇華したフラーレン材料を第一の溶媒中で酸化剤に接触させ、これによりM@C2nのカチオンを含有する第一の溶液を形成すること。ここで前記第一の溶媒は該M@C2nカチオン及びどの可溶性フラーレン類も可溶であるように選択されている。
    (c)前記第一の溶液を濾過してどの固体も除去し、これにより該M@C2nカチオンの塩と前記第一の溶媒中の不溶フラーレン類とを分離すること。
    (d)該M@C2nカチオンを前記第一の溶液に析出させ、該M@C2nカチオンの塩を含む第一の析出物を生成し、これにより該M@C2nカチオンを前記第一の溶液に残存するどのフラーレン類からも分離すること。
    (e)前記第一の析出物を第二の溶媒に溶解して、これにより該M@C2nカチオンを含む第二の溶液を形成すること。ここで前記第二の溶液は該M@C2nカチオンが可溶であって、どの可溶性フラーレン類も実質的に不溶であるように選択されている。これにより該M@C2nカチオンを前記第二の溶媒に溶解しなかったどのフラーレン類からも分離すること。
    (f)濾過された前記第二の溶液を、アニオンを複分解する試薬と反応させて、該M@C2nカチオンの塩を含む第二の析出物を形成し、これにより該M@C2nカチオンの塩を前記第二の溶液中に残存するどのフラーレン類からも分離すること。
    (g)前記第二の析出物を第三の溶媒に溶解し、これにより第三の溶液を形成すること。ここで第三の溶媒は該M@C2nカチオン及びどの可溶性フラーレン類も可溶であるように選択されている。
    (h)前記第三の溶液を酸化剤と接触させ、これにより溶液中に該M@C2nカチオンを形成すること。
    (i)前記第三の溶液に該M@C2nカチオンを析出させ、該M@C2nカチオンの塩を含む第三の析出物を形成し、これにより該M@C2nカチオンを前記第三の溶液中に残存するどのフラーレン類からも分離すること。
    (但し、Mは周期率表に記載されている元素であり、記号@は元素Mがフラーレンケージに内包されている又は内部にあることを表し、nは整数である。)
  28. フラーレン材料から、可溶であって酸化容易なM@C2nを分離する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該フラーレン材料を昇華して、これにより該M@C2nをどの巨大フラーレン類及びどの非フラーレン類からも分離すること。
    (b)前記昇華したフラーレン材料を、ODCB中にてAgSbF6と接触させ、これにより該M@C2nのカチオンを含む第一の溶液を形成すること。
    (c)前記第一の溶液を濾過してどの固体も除去し、これにより該M@C2nカチオンをODCBに不溶であるどのフラーレン類からも分離すること。
    (d)該M@C2nカチオンを前記第一の溶液に析出させ、該M@C2nカチオンの塩を含む第一の析出物を形成し、これにより該M@C2nカチオンを前記第一の溶液中に残存するどのフラーレン類からも分離すること。
    (e)前記第一の析出物をCH2Cl2に溶解して該M@C2nカチオンを含む第二の溶液を形成して、該M@C2nカチオンをCH2Cl2に不溶であるどのフラーレン類からも分離すること。
    (f)濾過した前記第二の溶液を、n−Bu4NClと反応させて、該M@C2nカチオンの塩を含む第二の析出物を形成し、これにより該M@C2nカチオンの塩を前記第二の溶液中に残存するどのフラーレン類からも分離すること。
    (g)ODCB中に前記第二の析出物を溶解して、これにより第三の溶液を形成すること。
    (h)前記第三の溶液をAgSbF6と接触させ、これにより該M@C2nカチオンを溶液中に形成すること。
    (i)前記第三の溶液に該M@C2nカチオンを析出させ、該M@C2nカチオンの塩を含む第三の析出物を形成し、これにより該M@C2nカチオンを前記第三の溶液中に残存するどのフラーレン類からも分離すること。
    (但し、Mは周期率表に記載されている元素であり、記号@は元素Mがフラーレンケージに内包されている又は内部にあることを表し、nは整数である。)
  29. 請求項27の方法において、MはSc、Y、La、Sm、Eu、Tm、Yb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu及びErからなる群から選択される方法。
  30. 請求項29の方法において、MはGdである方法。
  31. 請求項29の方法において、MはTmである方法。
  32. フラーレン材料から不溶なM@C2nを分離する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該フラーレン材料を昇華し、これにより該M@C2nをどの巨大フラーレン類及びどの非フラーレン類からも分離すること。
    (b)前記昇華したフラーレン材料を溶媒中で酸化剤に接触させ、これにより可溶なC2n+M@C2n及びC2nを含む溶液を形成すること。
    (c)どの固体をも除去するために該溶液を濾過し、これにより前記不溶なM@C2nを該溶媒に可溶などのフラーレン類及びどのフラーレンカチオンからも分離すること。
    (但し、Mは周期率表に記載されている元素であり、記号@は元素Mがフラーレンケージに内包されている又は内部にあることを表し、nは整数である。)
  33. 請求項32の方法において、更に、工程(b)に先立って、前記昇華したフラーレン材料を洗浄して可溶なフラーレン類を除去する方法。
  34. 請求項32の方法において、MはSc、Y、La、Sm、Eu、Tm、Yb、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu及びErからなる群から選択される方法。
  35. 請求項34の方法において、MはGdである方法。
  36. フラーレン材料から可溶なM@C2nカチオンを分離する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)溶媒中で該フラーレン材料を酸化剤に接触させ、これによりM@C2nカチオンを含む溶液を形成すること。
    (b)該溶液を濾過してどの固体も除去し、これにより前記可溶なM@C2nカチオンをどの不溶なM@C2n及び該溶媒に可溶な空フラーレン類からも分離すること。
    (但し、Mは周期率表に記載されている元素であり、記号@は元素Mがフラーレンケージに内包されている又は内部にあることを表し、nは整数である。)
  37. 請求項36の方法において、更に、工程(a)に先立って、該フラーレン材料を昇華することにより該M@C2nをどの巨大フラーレン類及びどの非フラーレン類からも分離する方法。
  38. 不溶なM@C2nを含むフラーレン材料からスモールバンドギャップ空フラーレン類を分離する方法であって、以下の工程を有する方法
    (a)該フラーレン材料を昇華して、これにより該M@C2n及びスモールバンドギャップフラーレン類をどの巨大フラーレン類及びどの非フラーレン類からも分離すること。
    (b)前記昇華したフラーレン材料を溶媒中で酸化剤に接触させ、これによりスモールバンドギャップ空フラーレンのカチオンを含む溶液を形成すること。
    (c)該溶液を濾過して可溶な該スモールバンドギャップフラーレンのカチオンから前記不溶なM@C2nを除去すること。
    (但し、Mは周期率表に記載されている元素であり、記号@は元素Mがフラーレンケージに内包されている又は内部にあることを表し、nは整数である。)
  39. 請求項38の方法において、更に、工程(b)に先立って、前記昇華したフラーレン材料を洗浄して、可溶なフラーレン類を除去する方法。
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