JP3925892B2 - 感光性樹脂組成物を有する材料の現像処理装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版、印刷配線基板又は集積回路の製造に用いられる基板上に担持された感光性樹脂組成物を現像処理する装置に関する。とりわけ、複数枚の感光性樹脂組成物を有する材料を自動的かつ安定して処理できる現像処理装置に関する。中でも、PS版などの平版印刷用原板の製版に際して安定な現像処理を施すことができる現像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性樹脂組成物を担持した平版印刷版(以下、PS版と記載)から印刷原版を製造する工程には、当該PS版を現像する工程があり、この現像を行なう装置が既に実施されている。この現像は、感光性樹脂組成物を有する材料の一部がアルカリ性の現像処理液中に溶出されることによって行われるので、現像タンク中のアルカリ性の現像処理液は、アルカリ剤成分が消費され、活性が低下する。また感光性樹脂組成物を有する材料の現像を行わなくても、現像処理液の表面が常に空気と接しているので、現像処理液は空気中の炭酸ガスを吸収し、液中に含まれているアルカリ剤成分が消費され、同様に活性が低下する。つまり、現像処理装置の中では、感光性樹脂組成物の現像処理に伴う処理疲労と、現像処理液と空気との接触によって起こる経時疲労(あるいは経時劣化)が、程度の差はあっても同時に進んでいる。そして、劣化が一定以上に進行すると適正な現像処理はできなくなる。そこで、適時に現像補充液を補充することで、劣化を回復させることが公知となっている。
【0003】
現像処理液の活性度の低下を防止するために、現像処理液よりも通常アルカリ剤や緩衝剤などが高濃度に含まれている補充液を供給してアルカリ消耗分を補正する方法が採られている。この補充方法は、現像処理装置を使用して大量の感光性樹脂組成物を安定に現像処理するためには必要であるが、以下に挙げるような問題点も含んでいる。
【0004】
(1) 補充に伴って、現像浴からオーバーフローが排出されて、現像廃液となるが、下水道への排出はできないので廃液の処分措置を講ずる必要がある。その廃液処分にはコストがかかるほか、この処分自体も環境への影響を伴う。
(2) 補充を行うことは、前項の問題に加えて、アルカリ剤などの現像処理液成分を無駄に排出することになり、経済的にも負担がかかる。
(3) 現像処理液へ溶出する感光性樹脂組成物が塩濃度の高い現像処理液中で析出し、この析出した感光性樹脂組成物がローラー等の搬送系に付着すると、現像処理装置内の搬送性異常や現像処理装置の停止の原因になる。析出物の除去のための洗浄を行う際に、現像処理装置を停止するので生産性も低下し、作業の手間も増える。
(4) アルカリ剤あるいは緩衝剤(珪酸塩、燐酸塩等)として加える薬剤が塩濃度を増加させるので、搬送系やタンクに感光性樹脂組成物から溶解した成分の析出が起こり易くなる(特に珪酸塩)。
【0005】
上記(1)及び(2)の対策として、必要成分だけを添加してオーバーフローによるロスを少なくすることが考えられる。必要成分だけを添加する方法としては、消費された成分を直接使用中の現像処理液に添加する方法が考えられるが、これは現像処理液の溶解に時間がかかり、トラブルの原因となると同時に、上記の問題点(3)及び(4)に関しては、問題点を助長させる結果となるので、問題点(1)及び(2)に関して多少の改善はあっても補充の問題点の実質的な解決手段とはならない。
【0006】
一方、中性塩の水溶液に不活性の電極を浸漬して水の電解を起こさせ、陽極に水素イオンを、陰極に水酸イオンを発生させ得ることはよく知られている。水の電解は、塩濃度を高めるものではないので、上記の(1)及び(2)の対策としてはより好ましいように考えられる。実際にハロゲン化銀写真材料の現像処理液のpHを高めるのにその陰極発生の水酸イオンを利用できることも知られている。
【0007】
しかしながら、一般的にキノンジアジドの光分解反応あるいはジアゾニウム塩のジアゾカップリングを利用する印刷用感光材料などの感光性樹脂組成物を有する材料の現像においては、電解によるアルカリ剤の供給方法は用いられていなかった。その理由は、現像処理液と称していても、感光性樹脂組成物を有する材料用の現像処理液は、ハロゲン化銀感光材料用の現像処理液とは組成が基本的に異なっており、感光性樹脂組成物を有する材料の現像処理液には、感光性樹脂組成物から水溶性化して溶出した有機高分子成分や、アルミニウム原板から溶出したシロキサン系の樹脂成分などが含まれているので、電極の被毒、つまりいわゆる有機汚染が引き起こされて、安定に電解操作を持続することは困難であることが容易に予想できるからである。
【0008】
加えて、米国特許第2,541,488号明細書には、電解生成した水酸イオンを用いてジアゾカップリング反応によって色素形成を行うシアゾ画像形成方法が開示されているが、これは、現像処理液とは異なって有機及び無機の樹脂成分を含まない。しかも新たに調合された被毒の恐れのない反応系で実現されたことであって、種々の高分子成分を含有している本発明の対象の感光性樹脂組成物とは、異なった系である。
【0009】
補充を伴う感光性樹脂組成物を有する材料の現像に関して、もう一つの弱点は、補充の管理を常法通りpHによって行おうとすると、十分な補充精度を維持しにくいことである。感光性樹脂組成物を有する材料用の現像処理液の実用域では、不必要な組成物成分の溶出を速めるために塩濃度を低く、かつpHを高く保つ設計がなされており、したがって現像処理液内の僅かな水酸イオンや水素イオンの発生が現像処理液の性能に影響を及ぼす。それにもかかわらず、現像処理液のpHが高いので、アルカリ成分濃度の変動に対してpHの動きは鈍感であった。したがって、pHの管理値の許容幅を厳しく採る必要があり、従来から大量の補充によってpH変動を抑制して安定な現像性能を保つ工夫がされていた。また、補充率が高いことは、溶出した感光性樹脂組成物成分の析出防止にも寄与していた。つまり、現像処理液の疲労の防止や析出物の生成防止と、現像補充液や廃液の減量とは、合い容れないことであって、両方を満足させることは強く要望されながら、解決されなかったことである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、現像浴中の現像処理液の性能を補充によって維持しながら、感光性樹脂組成物を有する材料の定常的なあるいは間欠的な現像を行うに際して、前述したような欠陥を解決して現像補充液や補充剤と現像廃液を減量でき、しかも安定な現像品質を恒常的に得ることが可能な現像処理装置を提供することである。具体的には、低補充量でも溶解成分の析出がなく、廃液の排出量を抑制でき、しかも現像品質も損なわれずに安定に維持することが可能な感光性樹脂組成物を有する平版印刷版の現像処理装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、感光性樹脂組成物を有する材料を露光後に現像するための現像浴を備えた現像処理装置において、前記現像浴からのオーバーフロー廃液が導入される中間廃液タンクと、前記現像浴から導入された現像使用液及び前記中間廃液タンクから導入された前記オーバーフロー廃液を電解処理する電解槽とを備え、前記電解槽が、前記現像使用液を当該電解槽の陰極側と現像浴との間で循環させる第1経路と、前記オーバーフロー廃液を当該電解槽の陽極側と前記中間廃液タンクとの間で循環させる第2経路とからなる循環機構を含むことを特徴とする現像処理装置によって解決される。
【0012】
本発明による現像処理装置は、アルカリ成分の低下した現像使用液及びオーバーフローした中間廃液を電気分解することによって、現像使用液の現像性能を回復させて再度現像に使用させることができる。オーバフローした中間廃液は、まず中間廃液タンクに導入され、その後に電解槽へと導入される。前記電解槽に導入された前記中間廃液は、当該電解槽内の陽極に接する部分を通って再び前記中間廃液タンクに導入される。それと同時に、前記電解槽内の陰極に接する部分には、現像浴から現像使用液が導入されており、導入された当該現像使用液は再び前記現像浴へと戻されている。すなわち、前記中間廃液タンクに導入された前記中間廃液は前記中間廃液タンクと前記電解槽の陽極部分との間で循環しており、前記現像使用液は前記現像浴と前記電解槽の陰極部分との間で循環している。
【0013】
現像使用液及び中間廃液は前記電解槽内において電気分解され、現像使用液は陰極に接するので、当該電気分解によってアルカリ成分(すなわち水酸イオン)の濃度が増し、現像性能が回復する。そして、上述の循環によって、前記電解槽内において電気分解により発生する気泡を流動させ、かつ液中の感光層成分が電極に電着及び析出することを防ぎ、それらによって電極間抵抗が増することを抑止し、その結果、良好な電気分解を継続させることができる。したがって、現像処理液の現像性能の良好な回復を継続させることができる。
【0014】
本発明の現像処理装置に使用される現像処理液として好ましいものは、pHが9.0〜14.0の範囲、好ましくは12.0〜13.5の範囲にある現像処理液である。かかる現像処理に使用される現像処理液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
上記のアルカリ水溶液の内、本発明による効果が一段と発揮される現像処理液はアルカリ金属ケイ酸塩を含有するpH12以上の水溶液である。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液はケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって現像性の調節が可能であり、例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような、SiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4重量%のケイ酸ナトリウムの水溶液や、特公昭57−7427号公報に記載されているような、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕
が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4重量%であり、かつ該現像処理液がその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有している、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液が好適に用いられる。
【0016】
現像処理液には、現像性の促進や現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0017】
上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像処理液中に0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%の範囲で添加される。
【0018】
現像処理液には更に必要により有機溶剤が加えられる。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10重量%以下のものが適しており、好ましくは5重量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール及び4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミン及びN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5重量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、したがって、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0019】
現像処理液には、更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤などを含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えば、ポリ燐酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸及び1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)及び1−ヒドロキシタエン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩を挙げることができる。
【0020】
このような硬水軟化剤はそのキレート化能と使用される硬水の硬度及び硬水の量によって適正な添加量が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像処理液に0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。
【0021】
本発明を適用することのできる感光性樹脂組成物を有する材料において、特に好ましいのは、平版印刷用感光材料であり、その中でもPS版であり、それもポジ型感光性樹脂組成物が特に好ましい。
【0022】
ポジ型感光性樹脂組成物としては、露光の前後で現像処理液に対する溶解性または膨潤性が変化するものならば使用でき、PS版としても多用される。好ましい感光剤としては、o−キノンジアジド化合物が挙げられる。例えば、アルカリ可溶性樹脂とo−キノンジアジド化合物とを含有するポジ型感光性樹脂組成物の場合、o−キノンジアジド化合物は、少なくとも一つのo−キノンジアジド基を有する化合物で、活性光によりアルカリ水溶液に対する溶解性を増すものが好ましい。
【0023】
この種のキノンジアジド基を有する化合物は、種々の構造のものが知られており、例えば、J.Kosar著「Light−Sensitive Systems」(John Wiley & Sons, Inc,1965年発行)P.336〜P.352に詳細に記載されている。ポジ型感光性樹脂組成物としては、特に種々のヒドロキシル化合物とo−ベンゾキノンジアジドあるいはo−ナフトキノンジアジドのスルホン酸エステルが好適である。
【0024】
ポジ型感光性樹脂組成物であって、上記のo−キノンジアジド以外の感光性樹脂組成物としては、水不溶であるが、アルカリ可溶性であり、そのアルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物を光酸発生剤と組み合わせた化学増幅系の感光性樹脂組成物を用いることができる。化学増幅系を取り入れた感光性樹脂組成物は、平版印刷材料及び集積回路やその他の高精細マイクロファブリケーション用のフォトレジストとして用いられ、現像工程に関しても、いずれも露光部のアルカリ可溶性化を利用して行われる。
【0025】
化学増幅系で用いられる光酸発生剤としては、公知のものを用いることができる。光酸発生剤として用いられる化合物群には、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0026】
また、化学増幅系の感光性樹脂組成物において、光酸発生剤と組み合わせて用いる水不溶であるが、アルカリ可溶性であり、そのアルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物は、−C−O−C−または−C−O−Si−結合を有する化合物であり、以下の例をあげることができる。
(a)少なくとも一つのオルトカルボン酸エステル及び/またはカルボン酸アミドアセタール群を含み、その化合物が重合性を有することができ、上記の群が主鎖中の架橋要素として、または側方置換基として生じ得る様な化合物、
(b)主鎖中に反復アセタール及び/またはケタール群を含むオリゴマー性または重合体化合物、
(c)少なくとも一種のエノールエステルまたはN−アシルアミノカーボネート群を含む化合物、
(d)β−ケトエステルまたはβ−ケトアミドの環状アセタールまたはケタール、
(e)シリルエーテル群を含む化合物、
(f)シリルエノールエーテル群を含む化合物、
(g)アルデヒドまたはケトン成分が、現像剤に対して、0.1〜100g/リットルの溶解性を有するモノアセタールまたはモノケタール、
(h)第三級アルコール系のエーテル、及び
(i)第三級アリル位またはベンジル位アルコールのカルボン酸エステル及び炭酸エステル。
【0027】
水不溶でアルカリ性水溶液に可溶の合成樹脂(以下、アルカリ可溶性樹脂という)としては、例えばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマーなどが挙げられる。その他として、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂、等種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜20,000で数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。かかるアルカリ可溶性の高分子化合物は1種類あるいは2種類以上を組合せて使用してもよく、全組成物の80重量%以下の添加量で用いられる。
【0028】
次に本発明に用いられる感光性樹脂組成物を有する材料の一つである、光重合性の感光性樹脂組成物を有する材料について説明する。本発明に用いられる光重合性感光性樹脂組成物は、その主な成分としては、付加重合可能なエチレン性二重結合を含む化合物、光重合開始剤等であり、必要に応じ、熱重合禁止剤等の化合物が添加される。
【0029】
付加重合可能な二重結合を含む化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等があげられる。
【0030】
本発明で用いられる光重合性の感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。例えば400nm付近の光を光源として用いる場合、ベンジル、ベンゾインエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン等が広く使用されている。
【0031】
本発明は上記のキノンジアジド、もしくは酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性基を有する化合物を用いたポジ型PS版、光重合系を用いたネガ型PS版のほかに次のタイプの平版印刷版材料及び印刷配線や集積回路作成用レジストにも同様に用いることができる。
(1) ジアゾ樹脂を用いたネガ型平版印刷版材料
(2) 光架橋型樹脂を用いたネガ型平版印刷版材料
(3) アルカリ可溶バインダー、酸発生剤、酸(熱)架橋性化合物を含むネガ型のレーザー直描型平版印刷材料
(4) アルカリ可溶バインダー、熱分解性でありかつ分解しない状態では該アルカリ可溶性バインダーの溶解性を実質的に低下させる物質をさらに含むポジ型のレーザー直描型平版印刷材料
【0032】
塗布、乾燥後に得られる画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的な平版印刷版用原板についていえば、0.5〜5.0g/m2が好ましく、0.5〜1.5g/m2がより好ましい。また、その膜の厚みは、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜1μmである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。まず図1を参照する。図1に示される現像処理装置10は印刷原版を製造するためにPS版を現像する装置である。現像処理装置10は現像浴4を備え、この現像浴4には、現像処理液Lが充填されている。現像浴4には露光後のPS版9が搬入される。搬入されたPS版9は、ガイド7及びローラR1〜R12によって現像浴4内において搬送され、ブラシ8a,8bによって摺られながら概ね矢印Dのような経路を通って現像処理される。そして、その後、前記PS版は次段の製造工程へと搬出される。現像浴4の中央付近の底部には配管T9が設けられており、2股に分かれた当該配管の出口に設置されたスプレーからの吐出によって現像処理液Lの攪拌を助勢している。この攪拌によって、より安定した現像処理を行なうことができる。配管T9の途中にはフィルタF及び電導度センサSが設けられており、現像処理液L内の不純物を取り除きながら当該液の電導度を測定している。
【0034】
現像処理液Lは、PS版の現像処理に伴う処理疲労と、空気との接触により起こる経時疲労とによって当該現像処理液のpH値が小さくなって現像能力が低下してゆく。この現像能力を回復させるために、現像補充液が現像浴4内に供給される。その供給量は、電導度センサSにより測定された現像処理液の電導度によって決定される。現像浴4には、現像補充液タンク5から配管T5を通って現像補充液が導入され、それと同時に希釈水タンク6から配管T6を通って希釈水が導入される。配管T5及び配管T6の各々の途中にはポンプPが設置されており、当該ポンプにより現像補充液及び希釈水が現像浴4に向けて供給される。なお図1(及び図3〜図5)において、ポンプP内の矢印は、そのポンプ内で流動する液の向きを示している。また、この実施形態においてポンプPはベローズポンプであるが、例えばマグネットポンプのような他のポンプを用いてもよい。この実施形態においては、現像浴4に導入された現像補充液及び希釈水が、この現像浴4内で混合されて現像処理液Lとなるが、混合後に現像浴4に導入されてもよい。
【0035】
現像補充液を補充することによって現像浴4からオーバーフローした現像処理液Lは、配管T7を通って中間廃液タンク2に導入される。この配管T7を通過した液を便宜上、中間廃液と呼ぶ。そして、前述のオーバーフローの一方で、現像処理液Lの一部は配管T4を通って電解槽1に導入される。この配管T4を通過した液を便宜上、現像使用液と呼ぶ。中間廃液タンク2には配管T1,T2の他に配管T8が接続されている。この配管T8は廃液タンク3に接続されており、中間廃液タンク2内の中間廃液が一定量を超えると、この中間廃液は配管T8を通って廃液タンク3に導入される。
【0036】
前述の中間廃液及び現像使用液は、処理疲労や経時疲労によって現像能力が低下しているものの、基本的にはまだ現像能力を有した液である。本発明は、これらの液を電解槽1に導入して電気分解を行なうことで、中間廃液内の負電荷(電子)を現像使用液内に移動させて、この中間廃液内の水酸イオンを減少させながら現像使用液内の水酸イオンを増加させる。それによって中間廃液のpH値を下げながら現像使用液のpH値を上げる。すなわち、電解槽1に導入された現像使用液はアルカリ化が進む。したがって、現像使用液は電解により現像能力が回復する。以下において、電解槽1の説明とともに、この電気分解の仕組を説明する。
【0037】
図2を参照する。図2に示されるのは電解槽1の断面拡大図であり、この電解槽1は、配管T1,T2により中間廃液タンク2に連通する陽極室C2と、配管T3,T4により現像浴4と連通する陰極室C1とを有する。陰極室C1と陽極室C2とはイオン交換膜IEで仕切られている。電解槽1は更に、陰極室C1(電解槽1)の外側内面に配置される陰極NEと、陽極室C2の中央に配置される陽極PEとを備える。陽極PEと陰極NEとの間には直流電圧が印加されている。配管T2からは中間廃液が導入され、また、配管T4からは現像使用液が導入される。
【0038】
中間廃液及び現像使用液が電解槽1に導入されると、現像使用液が陰極C1に接触し、それと同時に中間廃液が陽極C2に接触する。このとき、陰極C1においてはカチオンが放電して水と反応し、その結果、アルカリ性物質及び水素を生成する。また、陽極C2においては水酸イオンが放電して、その結果、水及び酸素を生成する。これらの反応によって陰極室NE内の現像使用液のpH値は大きくなり、陽極室PE内の中間廃液のpH値は小さくなる。陰極室NEと陽極室PEとはイオン交換膜IEで隔離されているので、このイオン交換膜を介したイオンの交換は制限される。
【0039】
電気分解によって、現像使用液のpH値は大きくなるので、現像能力が回復する。そして、現像使用液は配管T1を通って再び現像浴4に導入され、中間廃液は配管T3を通って再び中間廃液タンク2に導入される。
【0040】
以上のように、現像使用液は、現像浴4から配管T2、電解槽1、配管T1、そして再び現像浴4のような第1経路を循環し、その一方で、中間廃液は、現像浴4から配管T4、電解槽1、配管T3、そして再び現像浴4のような第2経路を循環する。これらの循環は現像処理装置10が作動している最中、常に行われている。現像使用液が電解槽1との間で循環されながら電解処理されることによって現像浴4内のアルカリ成分は減少しにくくなる。現像補充液の供給量は現像浴4内のアルカリ成分が減少し易いほど多くなるので、本発明の実施によって現像補充液の供給量を比較的少なくできる。これはすなわち、現像浴4からのオーバーフローが少なくなるということであり、オーバーフローが少なくなれば中間廃液、ひいては最終廃液の量が減少する。
【0041】
現像処理液及び中間廃液を電解槽を介して循環させることによる作用は以下の通りである。第1に、液が常に流動しているので電解槽1内の流通が良好となり、電気分解によって生成される水素や酸素による気泡が電極上に停滞することなく流動することである。第2に、やはり液が常に流動して電界槽1内の流通が良好となるので、電気分解によって電極に感光層中の組成物が電着及び析出しにくくなるということである。これらの作用によって、電極間抵抗が大きくなってしまうことを防止できる。したがって、良好な電気分解を継続的に行なうことができる。
【0042】
図3に示されるのは、本発明の第2実施形態である。この実施形態は、第1実施形態における配管T9の作用を配管T3から配管T4までの循環によって行なっている。配管T4は現像浴4の中央付近の底部から電解槽1の陰極室C1までを連通させており、その途中にはフィルタF及び電導度センサSが配置されている。また、電解槽1の陰極室C1から現像浴4までを連通させる配管T3は、2股に分かれた当該配管の出口開口によって現像処理液Lの攪拌を助勢している。この攪拌によって、より安定した現像処理を行なうことができる。したがって、図1の実施形態における配管T9を省くことができ、構造が簡単化できる。
【0043】
図4に示されるのは。本発明の第3実施形態である。第1実施形態との差異は、中間廃液タンク2及び配管T8の設置高さである。この実施形態においては、中間廃液タンク2内の中間廃液の液面の高さが現像浴内の現像処理液の高さと等しくなるように、中間廃液タンク及び配管T8の取り付け場所が設定され、中間廃液タンク2内の中間廃液のオーバーフロー分が配管T8に流入する。この配置によって、万が一イオン交換膜IEが破れたとしても、中間廃液タンク2又は現像浴4へ液が一方的に流動してしまうことを防ぐことができ、また、装置の休止中(ポンプPの停止中)においても、中間廃液タンク2と現像浴4との間の静水圧が等しくなるので、液面の変動を防止することができる。
【0044】
図5に示されるのは、本発明の第4実施形態である。この実施形態は第2及び第3実施形態の組み合わせであり、それらの実施形態による好適な作用を有する。配管T4は現像浴4の中央付近の底部から電解槽1の陰極室C1までを連通させており、その途中にはフィルタF及び電導度センサSが配置されている。また、電解槽1の陰極室C1から現像浴4までを連通させる配管T3は、2股に分かれた当該配管の出口に設置されたスプレーからの吐出によって現像処理液Lの攪拌を助勢している。この攪拌によって、より安定した現像処理を行なうことができる。したがって、図1の実施形態における配管T9を省くことができ、構造が簡単化できる。更に、中間廃液タンク2内の中間廃液の液面の高さが現像浴内の現像処理液の高さと等しくなるように、中間廃液タンク2及び配管T8の取り付け場所を設定しており、イオン交換膜IEが破れた場合に中間廃液タンク2又は現像浴4へ液が一方的に流動してしまうこととを防ぐことができ、また、装置の休止中(ポンプ停止中)においても、中間廃液タンク2と現像浴4との間の静水圧が等しくなるので、液面の変動を防止できる。
【0045】
【発明の効果】
上述のように、本発明による現像処理装置は、前記現像浴からのオーバーフロー廃液が導入される中間廃液タンクと、前記現像浴から導入された現像使用液及び前記中間廃液タンクから導入された前記オーバーフロー廃液を電解処理する電解槽とを備え、前記電解槽が、前記現像使用液を当該電解槽の陰極側と現像浴との間で循環させる第1経路と、前記オーバーフロー廃液を当該電解槽の陽極側と前記中間廃液タンクとの間で循環させる第2経路とからなる循環機構を含むことを特徴とするので、現像補充液及び廃液の量を少なくすることができ、更に液の循環によって、感光層成分が電極に電着を抑制し、電気分解によって生じる気泡を停滞させることなく流動させ、その結果、電解槽において良好な電気分解を行ない続けることができる。したがって、前記現像浴内の現像能力を継続的に維持しながら、廃液の量を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成図である。
【図2】本発明による電解槽の例を示す。
【図3】本発明の第2実施形態の構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態の構成図である。
【図5】本発明の第4実施形態の構成図である。
【符号の説明】
1 電解槽
2 中間廃液タンク
3 廃液タンク
4 現像浴
5 現像補充原液タンク
6 希釈水タンク
7 ガイド
8a,8b ブラシ
9 PS版
10,20,30,40 現像処理装置
L 現像処理液
T1〜T8 配管
P ポンプ
Claims (2)
- 感光性樹脂組成物を有する材料を露光後に現像するための現像浴を備えた現像処理装置において、前記現像浴からのオーバーフロー廃液が導入される中間廃液タンクと、前記現像浴から導入された現像使用液及び前記中間廃液タンクから導入された前記オーバーフロー廃液を電解処理する電解槽とを備え、前記電解槽が、陰極と陽極との間を隔壁で仕切られ、前記現像使用液を当該電解槽の陰極側と現像浴との間で循環させる第1経路と、前記オーバーフロー廃液を当該電解槽の陽極側と前記中間廃液タンクとの間で循環させる第2経路とからなる循環機構を含むことを特徴とする現像処理装置。
- 前記中間廃液タンクがオーバーフロー口を備え、当該オーバフロー口は、前記中間廃液タンク内の廃液面と前記現像浴内の現像処理液面とが等しい高さになるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の現像処理装置。
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