JP3925701B2 - 生体組織を用いたインビトロ試験方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体組織に対する物質の反応性を評価するインビトロ試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体に接触するあるいは投与される物質については、その安全性や生体への効果などの試験が行われている。ヒトにおける安全性試験、薬物動態、代謝試験は、最終的に効果的かつ副作用の少ない薬物治療を行うためのものであり、薬物血中濃度推移と薬効および副作用との関係に関する試験結果を統合されることによって、初めて臨床における薬効および安全性を予測するための有用な情報になりうる。現在、薬効および副作用に直接関係する標的組織における薬物濃度濃度推移の測定が困難であるため、それに代用できるものとして、非結合型血中濃度推移を用いるという考え方で試験や評価が行われている。
標的における作用場の濃度を特定することは重要と認識されているが、生体においては構成要素が複雑であり、その測定は困難であることが起因している。
【0003】
本発明では、組織体を生体外に取り出すことあるいは、生体外で再構築された組織によって、その複雑な構成要素を単純化することにより、これらの問題を克服したインビトロ試験方法を示している。
【0004】
ここでは、皮膚に対する刺激性試験を例に挙げ本発明に関して説明する。
種々の化学物質は、使用に際して、皮膚刺激性を実施し、その安全性の評価を行う必要がある。現在、皮膚刺激性の評価には、動物やヒトを用いた試験結果が用いられている。
動物を用いた刺激性試験には、ドレイズ試験法が用いられており、ウサギ、モルモット、ラットなどの動物が使用されている。
動物を使用する毒性試験は、時間と経費がかかるばかりか、研究施設間の結果の再現性、など種々の問題点を有する。動物試験の結果は、ヒトに対する結果と異なる場合もあり、ヒトへの外挿に困難を有する。すなわち、動物からヒトへの外挿が経験則に基づくものであり、理論面での科学的未熟さが、動物実験に内在する不確実性の一つとなり、外挿の問題点として提起されている。加えて、最近動物愛護の見地より次第に動物試験法の使用が制限されるようになってきている。
【0005】
ヒトを用いた皮膚刺激性には、ヒト腕浸漬またはその修正法や、パッチテストが行われている。ヒトに対する試験は、主に最終商品についてのみ行われており、未知の原材料に対して刺激性を試験することは倫理上困難である。さらに、ヒト試験においては、被験者間の刺激感受性の個体差、並びに季節間変動よる被刺激性の違いがあり、試験結果の再現性に問題がある。
【0006】
そこで、これらの問題提起に対する回答として、ヒト由来細胞の培養系を毒性試験法に採用することが提唱され、種々のインビトロ試験法の研究が行われてきた。インビトロ法については、主に化粧品業界において近年動物実験代替法の研究が精力的に進められてきており、初代細胞、株化細胞を利用した単層培養方法をはじめ、種々の方法が考案されてきた(「細胞培養技術を使った動物実験代替法」遺伝、1993年6月号(47巻6号)、第14〜20頁)。それらの方法は、細胞をシャーレなどの培養器に播種し培地中に被験物質を入れその被験物質独自の細胞への直接的な作用を検出する方法が行われており、特に刺激性の分野では細胞の生存率、細胞死、細胞賦活によるサイトカインの産生などが測定されている。
これらの試験に用いられる被験物の濃度は、ヒトに対する刺激性を予測する上では、曝露環境における薬物濃度が、低濃度となり、被験物質のヒトへの実使用濃度との隔差により、検出された結果をヒトへ外捜することが難しい。
【0007】
さらに、皮膚に対する刺激性は、被験物質の暴露様式から勘案すると、まず被験物質が皮膚最外層の角質層に作用し、角質の破壊、分解、浸透が行われる。これにより、角質層の被験物質の透過および被験物質によっては、バリア障害を生じ、その後、被験物質は、表皮生細胞層である顆粒層、有棘層、基底層、真皮層へと移行、蓄積し、生細胞への直接的な刺激が起こる。このように、皮膚に対する刺激性は、細胞に対する毒性のみでは、反映されず、角質層を含む表皮全体の刺激を総合して予測する必要がある。すなわち、前述した通常の単層培養細胞を用いた細胞毒性試験を皮膚刺激性の予測試験法として用いるときは、細胞に対する過剰暴露による細胞死を指標としているのみであるので、動物に対する皮膚刺激性試験での角質層透過性の少ない被験物質に対しても有意に高い皮膚刺激性の結果をあらわす。
以上の点から、皮膚刺激性を予測する試験法の開発にあたって、皮膚の角質層を考慮に入れた試験法の開発が望まれている。
【0008】
最近、これら前述の欠点を補うために、ヒト皮膚培養法の進歩に従い、皮膚刺激性を予測するために、角質層を有する3次元ヒト培養皮膚モデルを用いた検討も行われてきており、素材として、その有用性が示されている。ヒト皮膚モデルを用いた刺激性の測定方法として、現在、生細胞数、テトラゾリウム塩(MTT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、プロスタグランジンE2(PGE2)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン8(IL−8)等の測定法が使用されているが、これらはすべて、長時間被験物質を培養皮膚に曝露させ、角質を透過した被験物質による細胞への直接的障害を評価する方法である(特願平4−153692、特願平4ー37211)。
特に、現在行われているインビトロ刺激性試験法は、MTT試験法やLDH試験法のような、細胞の生死を種々の検出法で検出することに集中している。
【0009】
一般に、皮膚の刺激性は、急性刺激性、慢性刺激性の2種に大きく分類され、刺激性発現の作用機構は、種々あるが、薬物の生細胞への直接影響、薬物により刺激を受けた細胞から生じる2次的な炎症反応、角質層を破壊することによって皮膚の生体向上性を撹乱し透過性促進や炎症反応の惹起などによることが考えられている。
これまで、パッチテストなどによる皮膚上に生じた紅斑等の所見を評価する方法が用いられているが、皮膚一次刺激性を評価する場合、特に、薬物の皮膚内への透過による皮膚内細胞への被験物質の直接的な刺激を反映していることが多い。しかし、ヒトあるいは、動物の皮膚状態の違い(健常皮膚とアトピー皮膚の違いなど)により、同用量、同性状薬物においても、皮膚に対する刺激性は異なった結果を生み出す場合がある。
【0010】
また、これまで、培養皮膚モデルを用いた種々の動物代替法が考案されてきたが、それらは、今まで行われてきた、ヒトを含む動物実験の手法や単層細胞培養毒性試験方法と同様に、刺激物質の皮膚面に適用した被験物適用濃度に依存した試験がなされてきており、その適用濃度に依存した皮膚刺激評価を行ってきた。
すなわち、濃度依存性曲線から刺激性を判断する方法(EC50値)では、薬剤曝露時間を一定にし、50%細胞生存率を示す添加濃度を刺激指標としている。これは、薬剤曝露時間による細胞生存率が変化すること、曝露時間が適切でないと薬剤の過剰時間曝露によって過度な毒性値(皮膚刺激性値)を示す恐れがある。
また、時間依存性曲線から刺激性を判断する方法(ET50)では、薬物添加濃度を定め、薬剤曝露時間における50%細胞生存率を示す薬剤曝露時間を刺激指標としている。これは、添加する薬物の濃度によって、細胞毒性発現時間が変化すること、すなわち適用薬剤濃度差異による各薬剤の刺激性の見誤りが生じる。
これらの方法の問題は、培養皮膚モデル等の3次元組織物を用いた場合と同様に、ヒトや動物に対する試験においても生じる。
【0011】
これまでの、被験物の生体外での濃度を基準としたインビトロ測定方法では、各薬剤による透過性の違い、角質層の破壊率、その結果生じた局所の薬物の濃度差による刺激性の差異を十分にとらえることが出来ず、生体(ヒト)と異なった刺激性の評価結果に陥ることが多い。現在、少なくとも皮膚刺激性のインビトロ測定法の考え方では、薬物が皮膚内に吸収される際の薬物動態学的概念、すなわち、透過性、分配、拡散の概念が評価手法に採りこまれていない(この様な発想は現在のところ本分野学会ではない)。このため、擬陽性等の生体と異なる説明の出来ない結果が、発生する。特にエンドポイント方法において顕著であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの、被験物の生体外での濃度を基準とした評価方法では、各薬剤による透過性の違い、角質層の破壊率、その結果生じた局所の薬物の濃度差による刺激性の差異を十分にとらえることが出来ず、生体と異なった刺激性の評価結果に陥ることが多い。
そこで、本発明の目的は、皮膚刺激性を試験する際、薬物動態学的知見から、薬物の、生体細胞の作用場での薬物濃度を推定し、その薬物の種々の性質を勘案して、生体中で起こる刺激性機序、作用様式を模倣した試験方法であり、それらを総合して評価できるインビトロ皮膚刺激性試験方法を提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、薬物の生体への反応性を試験する際、薬物動態学的知見から、薬物の、生体細胞の作用場での薬物濃度を推定し、その薬物の種々の性質を勘案して、生体中で起こる反応性、機序、作用様式を模倣した試験方法であり、それらを総合して評価できるインビトロ組織反応性評価試験方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
一般に皮膚刺激性として評価する際に用いるヒトあるいは動物の皮膚上の紅斑等の所見は、皮膚刺激発現部位が皮膚最外層である角質層ではなく、表皮層や真皮層の細胞に、刺激物質が作用することによって生じる。
これまで行われてきた被験物の用量依存性等適用薬物の組織適用濃度を基準とした評価方法では、各薬剤による透過性の違い、角質層の破壊率、その結果生じた局所の薬物の濃度による刺激性の差異を十分にとらえることが出来にくかった。
【0014】
それは、皮膚に対する刺激性が、少なくとも被験物が、角質層あるいはバリアを透過し、皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度での毒性により生じるのであるが、これまでの試験方法では、薬物の適用濃度と曝露時間のみのファクターで試験されており、生体中で起こる刺激性機序を模倣した、勘案した試験方法ではなかった為である。
【0015】
繰り返すが、皮膚に対する刺激性は、薬物が、角質層を透過し、皮膚生細胞層に達した結果、薬物自体(固有の)の細胞毒性力によって、細胞を刺激することによって発生する。そこで、この機構を分割して検討を進めた結果、薬物の角質透過速度(分配拡散速度)、生細胞層に入る時点での分配拡散速度、透過抵抗、および薬物の濃度依存による毒性度合が皮膚刺激性の発現に関係してくることがわかってきた。さらに、鋭意検討を進めた結果、刺激発現機序から、皮膚刺激部位における刺激物質濃度および皮膚内滞留時間が、当該部位の刺激性発現に直接関係してくることが見出された。
【0016】
この観点から、本発明の測定方法では、皮膚刺激性を試験する際、薬物動態学的知見、すなわち透過性、分配、拡散、透過抵抗を導き、被験物の生体細胞の作用場での被験物質の濃度を調べて、その薬物の種々の生体細胞に及ぼす効果(例えば細胞毒性)を加味して、速度論解析を行うことにより、皮膚生体内で生じた刺激性を刺激機序に促した刺激性評価できることを見出した。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に用いられる組織、皮膚組織は、ヒト、動物より採取されたもの、あるいは、3次元的に組織再構築された組織培養物、あるいは培養人工皮膚などが挙げられる。
また、本発明の皮膚刺激性試験に用いる培養人工皮膚とは、天然の皮膚組織に類似したものであって、生体より単離された皮膚の細胞から、細胞培養技術を用いて皮膚構造を再構築させたものであり、表皮層と真皮層からなる多細胞層の構造物、あるいは、表皮層のみの多細胞層の構造物である。表皮層は、表皮細胞層が積み重なった構造を有し、所定の分化した表皮細胞群で構成され、各細胞は生存している。
表皮細胞群は、生存していることが必要であり、生存していないと、表皮細胞間の結合と角質層の破壊が起こり角質層を介した刺激性を測定する上で好ましくない。
【0018】
本発明で行われる皮膚刺激性試験手法について培養人工皮膚を用いた例を用いて解説する。
まず、培養人工皮膚を例えばシャーレまたは培養プレートに入れ、さらに栄養培地を培養皮膚底面に接触する様に加え、皮膚表面は空気に曝露された状態で培養できるようにする。
次いで、培養皮膚表面に被験物質を接触させる。本発明では、培養人工皮膚の表面に、密着する様に被験物質を適用した後、培養器内、または、大気上で、一定時間曝露させる。
被験物質を接触させる手段としては、ヒト皮膚パッチテスト等に用いられるフィンチャンバー、コットンパッド、濾紙、スポンジ、ガーゼ、不織布等にしみ込ませて接触させるか、直接、被験物を皮膚表面に接触させても良い。ここで適用される被験物質とは、液状、クリーム状、ゲル状、固形状すべての皮膚に接触する物質及び製品を示す。
これらには、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、または非イオン系)とこれらの界面活性剤を含む製品、例えば、シャンプー、洗剤、コンディショナー、食器洗浄液、スキンクレンザー、クリーニング剤およびスキンケア品目などがある。上記記載から明らかな様に、医薬品、化学品およびこれらの原料などの皮膚と接触する他の成分または製品を適用しても良い。被験物質の曝露後の皮膚に対する刺激性の検出方法としては、生細胞数、テトラゾリウム塩(MTT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、プロスタグランジンE2(PGE2)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン8(IL−8)等の測定法によって行う。
【0019】
本発明における重要な因子である、作用場の局所物質濃度を測定する手法を説明する。
この手法は、拡散セルを用いて行われる。その様式は、垂直膜型セル(シンク型)、水平膜型セル(フランツ型セル)などの拡散セルが用いられるが、透過性を試験できる装置あるいは器具であれば良く、特に本拡散セルに限定されるものではない。これらのセルに皮膚を装着後、角質層側に被験物質を適用し、真皮側に透過してくる被験物量を測定する。
【0020】
皮膚を一枚膜と考え、薬物を適用し、薬物が、分配係数に従って皮膚表面に分配し、レセプター側において薬剤濃度が0であることを前提とし、Fickの第2式の変法を解くことによって、物理化学的定数を求めることが出来る。得られた分配係数、拡散係数から作用場における被験物質の濃度が推定できる。
簡易的な作用場濃度の推定法として、細胞に対する刺激度、EC50値などの固有の細胞毒性値(濃度で表される)から、曝露時間等をかけ合わせることによって作用場濃度を見積もり本評価系に使用することも可能である。この、細胞に対する刺激度は、細胞を用いて測定された毒性度のみに限らず、例えば、タンパク質変性、膜破壊性などの化学あるいは物理的方法によって規定された値であってもかまわない。
【0021】
これらの因子を数学的手法を用いて、別に、同モデルを用いて得られた刺激性値(EC50値、ET50値等)を用いることによって、皮膚に対する刺激性を見積もることが出来る。
例えば、この式に限るものではないが、Hillの式に当てはめることによって刺激度の判定が可能である。
(式) E = Emax・Cγ/(EC50γ+Cγ)
E:皮膚刺激度、Emax:最大皮膚刺激度、C:反応場における薬物濃度
EC50:50%皮膚刺激度発現濃度、γ:形状因子
【0022】
要約すれば、以下の工程を行うことによる皮膚の刺激性試験法であるが、以下の記載に限られるものではない。
▲1▼ 皮膚の上部に被験物を接触させ、被験物が、皮膚組織を透過する速度を求める工程。
▲2▼ 被験物が組織内を移動する際の分配、拡散性を求める工程。
▲3▼ ▲1▼、▲2▼より得られた値を用いて、組織内の濃度を推定する工程。
▲4▼ 刺激性度と組織内濃度の関係をHill式に当てはめることによって、刺激性を評価する工程。
【0023】
【実施例】
本発明の内容を実施例を用いて、作用場の濃度を知ることによって、動態学的に皮膚刺激性に関して有効な判別が可能であることを具体的に説明する。これらの実施例は、本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1
MTT試験法は、予め検体の薬剤暴露部位を確保するリング(東洋紡社製)を表面に接着させた培養人工皮膚(LSE:Living Skin Equivalent、東洋紡社製)またはトランスウエルにモルモット皮膚片を入れものを6穴の培養プレートに入れ、この6穴プレートの各ウエルのLSE底面に接触するように、アッセイ培地(東洋紡社製)を1.2ml加えた。各リング中央部に被験物質としてCPC(cetylpyridinium chloride)溶液を80μl加え、CO2インキュベーター内で24時間培養を行った。培養終了後、アッセイ培地をMTT試薬が0.333mg/mlの濃度で含まれるMTT含有アッセイ培地に交換し、さらに3時間CO2インキュベーター内で培養した。その後、検体暴露部を直径8mmのバイオプシーパンチでくり抜き、くり抜いた部分を0.3mlの酸性イソプロパノール液に漬け、生成した青紫色のホルマザンの抽出を2時間行った。抽出終了後、96穴マイクロプレートリーダーを用いて、570nmの吸光度を測定した。
【0025】
皮膚透過試験は、モルモットから得られた皮膚組織および培養皮膚モデル(LSEhigh)をTwo-chamber(side by side)diffusion cellにマウントすることによって行った。モルモットの背部皮膚は、バリカンあるいはシェーバーで除毛した皮膚を用い、Stripped Skinとしては、粘着テープで20回角質層を剥離したものを用いた。
モルモットの場合は、5%濃度、LSEhighでは、1%の濃度になるように生理食塩液で調製したCPC溶液を角質層側のチャンバーに添加し、反対側の真皮部へは、生理食塩液を等量満たしておく。37℃下で試験を行い、レシーバー側の溶液のCPC濃度をHPLCを用いて測定した。
【0026】
皮膚透過性実験から、培養皮膚モデルとギニアピッグのCPCの累積皮膚透過時間曲線を作成した。次に LSE-high と guinea pig 皮膚は角質層と生きた表皮と真皮からなる 2 層膜構造と仮定し、viable epidemis and dermis層における透過係数Pvedを 算出した.次に各皮膚膜を介するCPCの定常状態透過速度から、Pssを求めた。さらに、RR, Kved を算出した。
【0027】
MTT試験及び透過性試験から得られた結果を、各透過係数(Ptot、Psc、Pved)、透過抵抗(RR)、分配係数(Kved)、最大刺激度(Imax)、IC50、γの分類で表1にまとめた。
【0028】
【表1】
Figure 0003925701
【0029】
これらのデータを用いて、モルモットの intact skin と stripped skin に CPCを適用した時のviable epidemis and dermis 中の CPC 濃度に対する細胞生存率(MTT値) 調べたところ、Hill式に適合した濃度依存性のある曲線が描けた。このことは、作用点濃度により刺激性(この場合はMTT値)の発現度合いが、バリア能の有無にかかわらず評価できることが示された。(図1)
【0030】
同様に、皮膚モデルを用いた結果を解析した結果、モルモットと同じく、作用点濃度により刺激性(この場合はMTT値)の発現度合いが、バリア能の有無にかかわらず評価できることが示された。(図2)
【0031】
モルモットの結果と皮膚モデルの結果を、CPCの皮膚に対する分配係数の違いをAUC理論を用いた補正を両者のIC50値を用いて行うことによって、モルモットの刺激性の結果と皮膚モデルの刺激性の結果が一致した。(図3)
【0032】
各濃度の薬剤を用いて、ドレイズ試験結果とHill式から得られた皮膚刺激度の結果の相関を調べた結果、高い相関性(相関係数:r=0.986)が得られた。各濃度の薬剤の刺激性評価が、生体外において行う実験法である本インビトロ試験方法は、動物で起こる反応を正確に評価できた。(図4)
【0033】
【発明の効果】
本発明は、生体外に取り出した生体組織あるいは当該生体組織に近似した培養細胞組織に被験物質を適用し、被験物質の透過性を測定することによって、組織の被験物質の作用場での濃度を測定する、そして、被験物の細胞に対する反応性をかけ合せることにより、実際の組織内で起こる作用を、組織の種差あるいは個体差などの種々の要因を平準化して評価出来る方法である。
本発明の方法は、 動物実験の代替法として、精度の高い結果を得る方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】角質を剥離したモルモットの皮膚(stripped skin)と無処理のモルモット皮膚(intact skin)の表面にCPCを適用した後、経皮吸収結果から算出された作用部位濃度と細胞生存率の相関性を示している。
【図2】角質を剥離した培養皮膚モデルの皮膚(stripped skin)と無処理の培養皮膚モデルの皮膚(intact skin)の表面にCPCを適用した後、経皮吸収結果から算出された作用部位濃度と細胞生存率の相関性を示している。
【図3】モルモット皮膚と皮膚モデルの皮膚を用いて得られた結果から、CPCの分配係数の違いから補正した作用部位濃度と細胞生存率(皮膚刺激度)の結果を示している。
【図4】ドレーズ試験結果と作用部位濃度から求めた皮膚刺激度との相関性を示している。

Claims (5)

  1. 生体組織中の作用場の局所物質濃度と物質独自の細胞に対する反応性から、物質の生体組織に対する反応性を評価する試験方法であって、
    生体組織が3次元的にインビトロ再構築された培養細胞組織物であり、以下の工程を含む試験方法。
    (1)皮膚の上部に被験物を接触させ、被験物が、皮膚組織を透過する速度を求める工程。
    (2)被験物が組織内を移動する際の分配、拡散性を求める工程。
    (3)(1)、(2)より得られた値を用いて、組織内の濃度を推定する工程。
    (4)刺激性度と組織内濃度の関係を Hill 式に当てはめることによって、刺激性を評価する工程。
  2. 物質の生体組織に対する反応性が、刺激性、毒性、増殖性、賦活性である請求項1記載の方法。
  3. 局所物質濃度が、透過係数、被験物濃度、分配係数、拡散係数、バリア抵抗値の内、少なくとも2種類の値を用いて算出されることを特徴とする請求項1〜2記載の試験方法。
  4. 生体組織を生体外に取り出し試験を行うことを特徴とする請求項1〜3記載の方法。
  5. 生体組織が、皮膚組織、上皮組織、粘膜組織である請求項1〜4記載の方法。
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