JP7309765B2 - 経皮吸収量の推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被験物質の経皮吸収量を推定する方法に関する。
皮膚に塗布する製品に含まれる物質の安全性を判断するためには、経皮吸収量を知る必要がある。経皮吸収量は、角層を透過した被験物質の量と定義されている。そのためこれまでは、摘出したヒトあるいは豚等の動物皮膚を使用したin vitro皮膚吸収試験法(OECD TG428)により、実際の使用場面に応じた塗布量(実使用条件、有限用量系)にて経皮吸収量を定量することが行われている。
しかしながら、当該試験の難しさや煩雑さ、摘出皮膚を使用することの倫理面等から、当該試験以外の方法で、経皮吸収量を算出することが試みられている。
経皮吸収量を推定するために、いくつかの計算式が提案されている。
非特許文献1では、塗布サンプルと角層を一体とみなして、角層より下に浸透した量を算出する計算式が提案されている。非特許文献1に記載の計算式では、角層より下への経皮吸収量を推定することができるが、実測値(摘出皮膚を用いたin vitro皮膚吸収試験法(OECD TG428)より計測した経皮吸収量)との乖離が大きく実用には適していない。その原因としては、実測値は有限用量系(塗布量が少量)のため塗布サンプル中の水分が蒸発し、サンプル中の物質の挙動が変化するためと考えられた。
塗布サンプル中の水分の蒸発を考慮した例としては、非特許文献2で、皮膚中での物質の分布を表すための計算式が提案されている。非特許文献2に記載の計算式は、塗布したサンプルからの水分蒸発も考慮され、深さ方向での成分の挙動が算出できるなど精度が高いが、実際に記載されている供試物質は脂溶性物質1種の適用のみで適用範囲が狭いことが予想される。またこの計算式は、人工膜から求めたパラメータへの応用はできない。
一方、生体膜をモデルとして作られた人工膜は、取り扱いが容易で、皮膚と類似の物質透過性を有することから、摘出皮膚の代替として透過性の評価に利用されている。しかし、人工膜は、皮膚のように角層とそれ以下の組織に分離することは物理的に不可能であるため、これまでに、人工膜を用いて物質の経皮吸収量を推定することはなされていなく、計算式を用いて実施しようとする試みもなかった。
Regulatory Toxicology and Pharmacology 57:200-209,2010 International Journal of pharmaceutics 578:119186,2020
本発明は、人工膜を用いて計測した皮膚透過パラメータを利用して、有限用量系における経皮吸収量を推定することができる方法を提供することに関する。
本発明者は、人工膜を用いて無限用量系(物質を含む溶液を大過剰に皮膚に塗布する)で計測した物質の透過係数(Kp)を利用して、角層より下の皮膚への経皮吸収量を推定する方法について鋭意検討を進めたところ、角層より下への透過量を求められる計算式に、塗布サンプルからの水分蒸散を考慮した変数を加えた計算式を考案し、人工膜を用いて求めた透過係数(Kp)を利用して、角層より下への物質の経皮吸収量を精度よく推定できることを見出した。
すなわち、本発明は、溶液中の被験物質の任意の適用時間に亘る経皮曝露に基づく被験物質の経皮吸収量を推定する方法であって、以下の工程(1)~(5)を含む、推定方法を提供するものである;
(1)人工膜を用いて、被験物質の透過係数(Kp)を求める工程
(2)被験物質を含有する溶液の蒸発時間(Tevp)を求める工程
(3)前記透過係数(Kp)に基づき、経皮曝露開始から前記蒸発時間(Tevp)までに、被験物質を含有する溶液から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程
(4)前記透過係数(Kp)に基づき、前記蒸発時間(Tevp)以降から前記任意の適用時間経過時までに、角層から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程
(5)前記被験物質量(M)及び(M)の総和量を、被験物質の経皮吸収量とする工程。
本発明によれば、人工膜を用いて求めた被験物質の透過係数(Kp)を利用して、有限用量系における経皮吸収量を推定することができる。これにより、摘出皮膚を使用したin vitro皮膚吸収試験法の実施を回避することができる。
被験物質の透過プロファイルを示す図である。実線は被験物質の時間依存的な累積透過量、点線は定常流速を示す線(回帰線)。 コウジ酸(KA)水溶液における透過プロファイルを示す図である。プロットは実測値、点線は定常流速を示す線(回帰線)。 人工膜と豚皮の透過係数(Kp)の相関式を示す図である。プロットは平均値、実線は回帰線(シグモイド曲線:式18 )、点線はx=yとなる線。 水分蒸発量の測定装置の一例を示す図である。 コウジ酸(KA)水溶液からの水分蒸発量を示す図である。プロットは実測値、点線は回帰線。 豚皮を用いたin vitro皮膚吸収試験法(OECD TG428)による実測値と豚皮を用いて算出した予測値の比較を示す図である。プロットは平均値、点線は実測値と予測値の誤差が2倍となる線。 豚皮を用いたin vitro皮膚吸収試験法(OECD TG428)による実測値と人工膜を用いて算出した予測値の比較を示す図である。プロットは平均値、点線は実測値と予測値の誤差が2倍となる線。
本発明の経皮吸収量を推定する方法は、溶液中の被験物質の任意の適用時間に亘る経皮曝露に基づく被験物質の経皮吸収量を推定する方法であって、(1)人工膜を用いて、被験物質の透過係数(Kp)を求める工程と、(2)被験物質を含有する溶液の蒸発時間(Tevp)を求める工程と、(3)前記透過係数(Kp)に基づき、経皮曝露開始から前記蒸発時間(Tevp)までに、被験物質を含有する溶液から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程と、(4)前記透過係数(Kp)に基づき、前記蒸発時間(Tevp)以降から前記任意の適用時間経過時までに、角層から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程と、(5)前記被験物質量(M)及び(M)の総和量を、被験物質の経皮吸収量とする工程と、を有する。
本明細書において、経皮吸収量を推定する皮膚は、ヒト皮膚、及び非ヒト動物が挙げられ、非ヒト動物の例としては、霊長類、ラット、マウス、モルモット、ハムスタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ等の非ヒト哺乳動物が挙げられる。好ましくは、ヒト皮膚、豚皮膚である。
工程(1)は、人工膜を用いて、被験物質の透過係数(Kp)を求める工程である。 人工膜は、ヒト皮膚に近い構造を持ち、ヒト皮膚の代替となりうるものであれば、シリコーン膜等の単層膜;角層、表皮、真皮を模倣した多層膜、例えばStrat-M(Merck;角層と角層以外の表皮を模倣した2層のポリエーテルスルホン(PES)膜と真皮を模倣した単層のポリオレフィン膜から構成されるメンブレン)等の二層以上の多層膜;三次元培養ヒト皮膚モデル等のいずれも用いることができる。なかでも、in vitro皮膚透過試験のために開発された観点から、好ましくは多層の人工合成膜である。
被験物質の透過係数(Kp)は、in vitro皮膚透過試験等の公知の方法により求めることができる。in vitro皮膚透過試験は、無限用量系(例えば、適用量が実使用条件の10~100倍以上)を適用することが好ましい。当該試験時の条件は、人工膜の表面温度として32±1℃、湿度は30~70%とすることが好ましい。
無限用量系のin vitro皮膚透過試験では、x軸に時間(hr)、y軸に皮膚又は人工膜を透過した被験物質の累積透過量(μg/cm)をプロットすることで、被験物質の透過プロファイルを獲得できる(図1)。
上記透過プロファイルを確認すると、被験物質を皮膚又は人工膜に滴下してから約2時間後から、被験物質が定常的に皮膚又は人工膜を透過する(累積透過量が直線になる)様子が見られる。この時の直線(定常流速)は式(1)に近似できる。ただし、a、bは定数とする。定常流速の傾き(a値)は、被験物質が定常的に皮膚又は人工膜を透過する速度(Flux)に等しい。さらに、Flux値(a値)と以下の式(2)~(4)に従い、各種皮膚透過パラメータ(透過係数(Kp)、拡散係数(D)及び分配係数(K))が算出される。皮膚の厚み(L)は好ましくは0.08~0.10cmである。以下、皮膚の厚みを0.10cmとして計算する。また、透過係数(Kp)は被験物質の皮膚又は人工膜の透過度を示し、拡散係数(D)は被験物質の皮膚中又は人工膜中での拡散度を示す。また分配係数(K)は被験物質の溶液から皮膚(角層)への分配度を示す。
なお、式中の「*」は「積;×」を意味する。
Figure 0007309765000001
Tlagは、皮膚又は人工膜を透過する被験物質の透過プロファイルにおいて、定常流速とx軸の交点、つまり数式(1)にy=0を代入した際のx値で表される。
人工膜を用いて求めた被験物質の透過係数(Kp)が、目的とする経皮吸収量を推定する皮膚、例えばヒト皮膚や豚皮膚、での透過係数と乖離がある場合は、シグモイド曲線により作成した回帰式を用いて補正することが好ましい。なお、ヒト皮膚や豚皮膚等での透過係数も、前述したin vitro皮膚透過試験等の公知の方法により求めることができる。
先ず経皮吸収量を推定する皮膚並びに人工膜を用いて求めた被験物質の透過係数(Kp)をそれぞれ対数変換し、負の値としたもの(-log10Kp)を算出し、x軸に人工膜由来の-log10Kp、y軸に皮膚由来の-log10Kpをプロットする。この時、実施例[図3]のように、各プロットが直線上に乗らない場合は、以下の式(5)が示すシグモイド曲線にフィッティングすることで、回帰式を取得する。ただし、a、b、cは定数とする。
Figure 0007309765000002
被験物質は、経皮吸収量を得たい物質であれば、特に制限されない。被験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよい。
本発明の方法は、被験物質の皮膚並びに人工膜への透過性を考慮して、LogKow値が、-2.5~4.0、更に-2.3~3.0、更に-2.3~2.0である被験物質に好ましく適用できる。
LogKow値は、1-オクタノール/水間の分配係数の常用対数をとった値で、有機化合物の疎水性を示す指標である。この値が正に大きい程疎水性が高いことを表す。被験物質のLogKow値は、Chem Draw 18.2(PerkinElmer Informatics)を用いて計算したものであり、計算方法にはMolecular NetworksのケモインフォマティクスプラットフォームMOSESに基づく計算モジュールが用いられている。MOSESは、Molecular Networks GmbH(ドイツ 、エルランゲン)が開発、保守、所有している。
また、被験物質の分子量(MW)は、被験物質の皮膚並びに人工膜への透過性を考慮して、500以下、更に150~300であることが好ましい。
工程(2)は、被験物質を含有する溶液の蒸発時間(Tevp)を求める工程である。
被験物質を含有する溶液は、水溶液、緩衝液、有機溶媒溶液等が挙げられる。有機溶媒としては、エタノール、グリセリン等の一価、二価又は多価のアルコール類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類等が挙げられる。被験物質を含有する溶液は、実使用製剤であってもよい。実使用製剤は、皮膚外用の医薬品、化粧品(例えば、スキンケアやボディケアのための化粧水、乳液、クリーム、ゲル等)等が挙げられる。
被験物質を含有する溶液中の被験物質の濃度は、in vitro皮膚透過試験を実施するサンプルと同一の濃度であることが好ましい。
蒸発時間(Tevp)の測定方法は、被験物質を含有する溶液の溶媒が蒸発するまでの時間を求めることができればよい。試験時の条件は、透過係数(Kp)を求める試験と同じ条件、すなわち温度は32±1℃、湿度は30~70%とすることが好ましい。
例えば、後記実施例に示すように、x軸に時間(hr)、y軸に被験物質を含有する溶液からの溶媒蒸発量(g)をプロットすることで、溶媒蒸発プロファイルを獲得できる。
上記蒸発プロファイルを確認すると、上に凸のカーブを描いていることから、被験物質を含有する溶液からの溶媒蒸発量の時間変化は、負の指数関数(-exp(x))に依存すると仮定し、以下の式(6)にフィッティングすることとした。よって、式(6)に従い蒸発時間(Tevp)が算出される。ただし、a,b,cは定数とする。具体的なTevpの算出としては、x軸に時間(hr)、y軸に被験物質を含有する溶液からの溶媒蒸発量(g)をプロットした後に式(6)をフィッティングすることで、定数a、b、cを求める。その後、上記数式のy値に滴下した溶媒の重量(g)を代入した際のx値がTevp(hr)となる。
Figure 0007309765000003
工程(3)は、前記透過係数(Kp)に基づき、経皮曝露開始から前記蒸発時間(Tevp)までに、被験物質を含有する溶液から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程である。
物質の拡散に関する基本法則であるFickの拡散第一法則は以下の式(7)ように定義されている。
Figure 0007309765000004
ここで、適用面積Aは、好ましくは0.80~1.8cmである。以下、任意の適用面積を1.0cmとして計算する。皮膚に塗布した溶液と角層(SC)を一つの塊とみなした時の仮想の濃度は、以下の式(8)で表される。
Figure 0007309765000005
ここで、本明細書において、溶液体積(V)は、被験物質の透過性により適宜選択される。好ましくは0.002~0.010mLである。以下、任意の溶液体積を0.01mLとして計算する。
また、角層体積Vscは、好ましくは0.0015~0.003mLである。以下、任意の角層体積を0.002mLとして計算する。
上記の式(7)、(8)より、角層以上に存在する被験物質量の時間変化は、以下の式(9)で表される。
Figure 0007309765000006
一方、溶液中の被験物質の経皮曝露開始から、被験物質を含有する溶液中の溶媒が蒸発する前記蒸発時間(Tevp)まで(0≦t≦Tevp)は、被験物質の濃度をf*Cvと仮定し、(7)の式を適用すると、蒸発時間(Tevp)における角層以上に存在する被験物質量(M)は、以下の式(10)によって算出される。
Figure 0007309765000007
はt=0時の溶液中の被験物質量を示す。Mは溶液中の被験物質濃度(Cv)と皮膚への塗布量の積で表される。ここで、本明細書において、被験物質を含有する溶液の任意の適用量は、被験物質の透過性により適宜選択される。好ましくは2~10μL/cmである。以下、任意の適用量を10μL/cmとして説明する。
上記の式(10)より、蒸発時間(Tevp)における角層下に透過した被験物質量(M)は、以下の式(11)によって算出される。
Figure 0007309765000008
工程(4)は、前記透過係数(Kp)に基づき、前記蒸発時間(Tevp)以降から前記任意の適用時間経過時までに、角層から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程である。
ここで、本明細書において、被験物質の任意の適用時間は、被験物質の透過性により適宜選択される。適用時間は、好ましくは18~28時間、より好ましくは20~26時間である。以下、任意の適用時間を24時間として計算する。
被験物質を含有する溶液中の溶媒が蒸発してから、つまり蒸発時間(Tevp)以降から24時間経過時まで(Tevp<t≦24)に角層中に存在する被験物質の濃度(Csc)は、以下の式(12)で表される。
Figure 0007309765000009
上記の式(7)、(12)より、Tevp<t<24において角層以上に存在する被験物質量の時間変化は、以下の式(13)で表される。
Figure 0007309765000010
上記の式(13)より、24時間経過時に角層に存在する被験物質量(Mt2)は、以下の式(14)によって算出される。
Figure 0007309765000011
上記の式(14)より、Tevp<t≦24に、角層から角層下に透過した被験物質量(M)は、以下の式(15)で算出される。
Figure 0007309765000012
工程(5)は、前記被験物質量(M)及び(M)の総和量を、被験物質の経皮吸収量とする工程である。
24時間に亘って、角層下に透過した被験物質量、すなわち経皮吸収量(M24)は、被験物質量(M)及び(M)の総和量で、上記の式(11)、(15)より、以下の式(16)によって算出することができる。
Figure 0007309765000013
後記実施例に示されるように、このようにして推定された被験物質の経皮吸収量は、実測値(摘出皮膚を用いたin vitro皮膚吸収試験法(OECD TG428)より計測した経皮吸収量)と近い値である。よって、本発明により推定される被験物質の経皮吸収量は、当該物質による全身毒性におけるリスク評価等に有用である。
[被験物質]
被験物質として、コウジ酸、カフェイン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、リドカイン及び5-硝酸イソソルビドを使用した。脱イオン水にクエン酸を1.1%(w/v)、クエン酸三ナトリウムを0.35%(w/v)配合することで、pH3.0クエン酸バッファーを作成した。また、脱イオン水脱イオン水にクエン酸を0.39%(w/v)、クエン酸三ナトリウムを0.87%(w/v)配合することで、pH5.0クエン酸バッファーを作成した。
コウジ酸、カフェイン、メチルパラベン、5-硝酸イソソルビドは、1%(w/v)又は飽和溶解度になるように脱イオン水に溶解した。安息香酸ナトリウムは、1%(w/v)になるようにpH7.0リン酸緩衝生理食塩水(Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline;DPBS、gibco社)に溶解し、また飽和溶解度になるようにpH3.0クエン酸バッファーに溶解した。リドカインは、1%(w/v)になるように、pH5.0クエン酸バッファーに溶解した。
表1に本試験において対象とした被験物質の物理化学的特徴(MW、LogKow)と各溶液中の被験物質の濃度(Cv)を示す。
試験例1 豚皮を利用したin vitro皮膚吸収試験法(OECD TG428)よる経皮吸収率の測定
(1)冷凍保存していた豚耳(東京芝浦臓器)を自然解凍し、0.1cm以下の厚みに皮膚を切り出した。以下、皮膚の厚み(L)を0.1cmとして計算する。
フランツ型拡散セル(パーメギア)のレセプター側に、溶液に応じて8.0mLのPBS、pH3.0クエン酸バッファーあるいはpH5.0クエン酸バッファーを満たした後に、オクタゴン撹拌子(寸法(mm):Φ8×75、アズワン)を1つ入れ、切り出した皮膚の真皮側がレセプター液に接触するようにセットした。インキュベーター(温度32±1℃、湿度50±2%;東京理科器械 KCL-2000W)内に1時間静置した後、皮膚健常性を確認するためVapoメーター(デルフィン・テクノロジーズ)を用いて水分蒸散量を測定し、測定値が15g/cm/h以下の皮膚を試験に用いた。
溶液10μLをマイクロマン(ギルソン)にて皮膚に塗布し(適用面積:1cm)、スターラーを用いて、レセプター液を攪拌させながらインキュベーター内に静置した。以下、適用面積は1cmとして説明する。24時間後、蒸留水で皮膚を洗浄し、乾いたコットンで皮膚表面を拭き、洗浄液とコットンをバイアルに回収した(A:洗浄液)。皮膚の溶液適用部位を角質チェッカー(プロモツール)で10回ストリッピングして、角層を剥離しバイアルに回収した(B:角層抽出液)。角層を除去した皮膚を細かく切り、バイアルに回収した。この時、蒸留水で湿らせたコットンで、皮膚が接触した器具を拭き、その後、乾いたコットンでもう一度器具を拭き、皮膚と同じバイアルに回収した(C:皮膚抽出液)。レセプター液はそのまま回収した(D:レセプター液)。20%(V/V)メタノールをA・B・Cのバイアルルに加えソニケーションし抽出液を得た。この操作を2回実施し、各抽出液をメンブレンフィルター(Millex Syringe Filter, Hydrophilic PTFE,Non-sterile、Merck)を装着したシリンジ(シリンジSS-20ESZ、テルモ)に加え、ろ過することでサンプルとし、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC;Nexera-i、Shimazu)を用いて定量した。
MPとMPの代謝産物;p-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)に関して、挿入量は、3μLとした。YMC-Triart C18(2.1mm*100mm,1.9μm)カラムは40℃に維持した。流速は、0.15mL/minとした。その他の成分に関して、挿入量は、LID、ISMNでは20μL、他成分では10μLとした。YMC-Triart C18(4.6mm*250mm,5μm)カラムは40℃に維持した。流速は、1.0mL/minとした。各成分の移動相、吸収波長の条件は以下の通り。
0.1%(V/V)リン酸:アセトニトリル=85:15、255nm(メチルパラベン・p-ヒドロキシ安息香酸)
0.1%(V/V)リン酸:アセトニトリル=95:5、270nm(コウジ酸)
0.1%(V/V)リン酸:アセトニトリル=80:20、270nm(カフェイン)
0.1%(V/V)リン酸:アセトニトリル=80:20、230nm(安息香酸)
0.1%(V/V)リン酸:アセトニトリル=70:30、220nm(リドカイン)
0.1%(V/V)リン酸:アセトニトリル=85:15、230nm(5-硝酸イソソルビド)
(p-ヒドロキシ安息香酸、リン酸、アセトニトリル(HPLC grade)富士フイルム和光純薬 社製)
角層より下に浸透した成分の量として、皮膚抽出液(C)及びレセプター液(D)を合算したものを経皮吸収量とした。また、式(16)に従い経皮吸収量(M24)をt=0時の溶液中の被験物質量(M)で除することで、以下のとおり経皮吸収率(%)の算出を行った。
2.各被験物質の経皮吸収率(%)を表2に示す。
試験例2 透過係数(Kp)を利用した経皮吸収量の推定
1.被験物質の透過係数(Kp)の算出
豚皮でのin vitro皮膚透過試験は以下の方法で実施した。
冷凍保存していた豚耳を自然解凍し、0.10cm以下の厚みに皮膚を切り出した。フランツ型拡散セルのレセプター側に、溶液に応じて8.0mLのPBS、水、pH3.0クエン酸バッファーあるいはpH5.0クエン酸バッファーを満たした後、オクタゴン撹拌子を1つ入れ、真皮側がレセプター液に接触するようにセットした。インキュベーター(温度32±1℃、湿度50±2%)内に1時間静置した後、Vapoメーターを用いて皮膚健常性を確認した。
溶液300μLを皮膚に載せ(適用面積:1cm)、アルミホイルで開口部に蓋をし、スターラーを用いてレセプター液を攪拌させながら、インキュベーター内に静置した。溶液を載せてから8時間後まで、拡散セルからレセプター液を2時間毎に0.50mL回収し、同量のレセプター液を補充した。2~8時間のレセプター液中に含まれる目的成分をUHPLCによって定量した。UHPLC条件は上記と同じにした。
人工膜でのin vitro皮膚透過試験は以下の方法で実施した。人工膜には、Strat-M(Merck Millipore)を用いた。
フランツ型拡散セルのレセプター側に、溶液に応じて8.0mLのPBS、水、pH3.0クエン酸バッファーあるいはpH5.0クエン酸バッファーを満たし、オクタゴン撹拌子を1つ入れ、人工膜の非光沢側をレセプター液に接触するようにセットした。インキュベーター(温度32±1℃、湿度50±2%)内に1時間静置した。
溶液1mLを人工膜に載せ(適用面積:1cm)、アルミホイルで開口部に蓋をし、スターラーを用いてレセプター液を攪拌させながらインキュベーター内に静置した。溶液を載せてから8時間後まで、拡散セルからレセプター液を2時間毎、0.50mL回収し、同量のレセプター液を補充した。2~8時間のレセプター液中に含まれる被験物質をUHPLCによって解析した。UHPLC条件は上記と同じにした。
まずは豚皮及び人工膜を透過した各被験物質の透過プロファイルの作成を試みた。UHPLCにて測定した、t時間におけるレセプター液中の被験物質の濃度(Ct)を用いて、t時間におけるレセプター液中の被験物質の累積透過量(Q)は、式(17)に従い算出できる。x軸に時間(hr)、y軸に被験物質の累積透過量(μg/cm)をプロット(2~8時間の4点)することで、被験物質の膜透過プロファイルを獲得できる(図2)。上記4点において、直線に並ぶ部分と式(1)をフィッティングすることで、定数a,bを求める。直線に並ぶ部分は被験物質や膜の種類(皮膚、人工膜)によって異なるが、2~8時間の4点、もしくは4~8時間の3点のどちらかで直線性は見られる。この時の直線(定常流速)の傾き(a値)は、被験物質が定常的に膜を透過する速度(Flux)に等しい。またFlux値及びTlag値と式(2)~式(4)から透過パラメーター(Kp、K)を算出した。この時、皮膚の厚み(L)は0.10cmとして計算した。算出した透過パラメーターを表3及び表4にまとめた。
上記結果に基づき、豚皮と人工膜の各Kp値を比較し、シグモイド曲線を用いて人工膜と豚皮のKp値の相関式を作成した(図3)(式18)。
2.水分蒸発試験
フランツセルの蓋をパラフィルムで塞ぎ、溶液10μLを載せた後、インキュベーター(温度32±1℃、湿度50±2%)内に静置した。この時、溶液中の水分蒸発に対するファンからの風の影響を考慮するため、図4に示すように溶液を載せた蓋をフランツセルの上に置くことで、実際にin vitro皮膚透過試験を行う時と同等の角度から、溶液がファンからの風を受けるように設置した。15分毎に蓋を取り出し、重量を測定した。重量が変化しなくなった時間で、測定を終了した。
各サンプルは、UHPLCにて解析した。UHPLC条件は上記と同じにした。
各溶液の水分蒸発量のタイムコースより、水分蒸発速度は負の指数関数(-exp(x))で近似できた(図5)ので、溶液からの水分蒸発量yと試験開始後の時間xを用いた上記の式(6)にあてはめて、水分蒸発量の時間変化の式を算出した。各溶液の蒸発時間(Tevp)は、式(6)とy=0.01の交点から算出した。各溶液の蒸発時間(Tevp)を表5に示す。
3.豚皮を用いた有限用量系での経皮吸収率の予測
本評価系の妥当性を評価するため、先ずは豚皮を用いて取得した透過係数(Kp)、分配係数(K)(表3)と蒸発時間(Tevp)(表5)を上記の式(16)に代入することで、予測値を算出した。この時、初期の被験物質量;M=Cv×塗布量、角層体積;Vsc=0.002mLとした。
また、試験例1で求めた実測値と予測値を比較した。結果を表6及び図6に示す。
その結果、実測値に近い予測値を算出することに成功した。この結果から、式(16)は実測値の推定に有用であることが確認された。
次に、人工膜を用いて、有限用量系での経皮吸収率の予測値を算出した。
図3に示したシグモイド曲線により作成した回帰式;式(18)を用いて、人工膜を用いて取得した透過係数(Kp)(表4)から豚皮の透過係数(Kp)を予測した。予測値を表7に示す。
次に、予測した透過係数(Kp)(表7)、人工膜を用いて取得した分配係数(K)の平均値(表4)、蒸発時間(Tevp)(表5)を、上記の式(16)に代入することで、豚皮と同様に予測値を算出した。当該予測値と試験例1で求めた実測値を比較した。結果を表7及び図7に示す。
その結果、人工膜を用いても、実測値に近い予測値を算出することができた。この結果から、人工膜を用いて取得した透過係数(Kp)を利用した本評価系は、有限用量系での経皮吸収量の予測に有用であることが確認された。

Claims (6)

  1. 溶液中の被験物質の任意の適用時間に亘る経皮曝露に基づく被験物質の経皮吸収量を推定する方法であって、以下の工程(1)~(5)を含む、推定方法;
    (1)人工膜を用いて、被験物質の透過係数(Kp)を求める工程
    (2)被験物質を含有する溶液の蒸発時間(Tevp)を求める工程
    (3)前記透過係数(Kp)に基づき、経皮曝露開始から前記蒸発時間(Tevp)までに、被験物質を含有する溶液から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程
    (4)前記透過係数(Kp)に基づき、前記蒸発時間(Tevp)以降から前記任意の適用時間経過時までに、角層から角層下に透過した被験物質量(M)を算出する工程
    (5)前記被験物質量(M)及び(M)の総和量を、被験物質の経皮吸収量とする工程。
  2. 工程(1)において、さらに被験物質の分配係数(K)を求める請求項1記載の推定方法。
  3. 工程(1)において、予め目的とする経皮吸収量を推定する皮膚を用いて被験物質の透過係数(Kp)を取得すると共に、該取得した前記皮膚における被験物質の透過係数(Kp)と人工膜を用いて求めた被験物質の透過係数(Kp)との回帰式を取得し、該回帰式に基づいて、人工膜を用いて求めた被験物質の透過係数(Kp)を補正する工程をさらに含む、請求項1又は2記載の推定方法。
  4. ヒト皮膚又は豚皮膚での経皮吸収量を推定するものである請求項1~3のいずれか1項記載の推定方法。
  5. 被験物質が、LogKow値が-2.5~4.0である物質である請求項1~4のいずれか1項記載の推定方法。
  6. 被験物質が、LogKow値が-2.3~2.0である物質である請求項1~4のいずれか1項記載の推定方法。
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