JP4003117B2 - 刺激性試験方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3次元的組織細胞培養物を用いて、被験物の刺激性を評価する刺激性試験評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体に接触するあるいは投与される物質については、その安全性や生体への効果などの試験が行われている。ここでは、皮膚に対する刺激性試験を主に例に挙げ、本発明に関して説明する。
【0003】
種々の化学物質は、使用に際して、皮膚刺激性試験を実施し、その安全性の評価を行う必要がある。現在、皮膚刺激性の評価には、動物やヒトを用いた試験結果が用いられている。動物を用いた刺激性試験には、ドレイズ試験法が用いられており、ウサギ、モルモット、ラットなどの動物が使用されている。動物を使用する毒性試験は、時間と経費がかかるばかりか、研究施設間の結果の再現性、など種々の問題点を有する。動物試験の結果は、ヒトに対する結果と異なる場合もあり、ヒトへの外挿に困難を有する。すなわち、動物からヒトへの外挿が経験則に基づくものであり、理論面での科学的未熟さが、動物実験に内在する不確実性の一つとなり、外挿の問題点として提起されている。加えて、最近動物愛護の見地より次第に動物試験法の使用が制限されるようになってきている。
【0004】
ヒトを用いた皮膚刺激性には、ヒト腕浸漬またはその修正法や、パッチテストが行われている。ヒトに対する試験は、主に最終商品についてのみ行われており、未知の原材料に対して刺激性を試験することは倫理上困難である。さらに、ヒト試験においては、被験者間の刺激感受性の個体差、並びに季節間変動よる被刺激性の違いがあり、試験結果の再現性に問題がある。
【0005】
そこで、これらの問題提起に対する回答として、ヒト由来細胞の培養系を毒性試験法に採用することが提唱され、種々のインビトロ試験法の研究が行われてきた。インビトロ法については、主に化粧品業界において近年動物実験代替法の研究が精力的に進められてきており、初代細胞、株化細胞を利用した単層培養方法をはじめ、種々の方法が考案されてきた(「細胞培養技術を使った動物実験代替法」遺伝、1993年6月号(47巻6号)、第14〜20頁)。それらの方法は、細胞をシャーレなどの培養器に播種し培地中に被験物質を入れその被験物質の細胞への直接的な作用を検出する方法が行われており、特に刺激性の分野では細胞の生存率、細胞死、細胞賦活によるサイトカインの産生などが測定されている。
これらの単層培養試験に用いられる被験物の濃度は、ヒトに対する刺激性を予測する上では、曝露環境における薬物濃度が、低濃度となり、被験物質のヒトへの実使用濃度との隔差により、検出された結果をヒトへ外挿することが難しい。
【0006】
さらに、バリア能を有する組織、特に、皮膚に対する刺激性は、被験物質の暴露様式から勘案すると、まず被験物質が皮膚最外層の角質層に作用し、角質の破壊、分解、浸透が行われる。これにより、角質層の被験物質の透過および被験物質によっては、バリア障害を生じ、その後、被験物質は、表皮生細胞層である顆粒層、有棘層、基底層、真皮層へと移行、蓄積し、生細胞への直接的な刺激が起こる。このように、皮膚に対する刺激性は、細胞に対する毒性のみでは、反映されず、角質層を含む表皮全体の刺激を総合して予測する必要がある。すなわち、前述した通常の単層培養細胞を用いた細胞毒性試験を皮膚刺激性の予測試験法として用いるときは、細胞に対する過剰暴露による細胞死を指標としているのみであるので、動物に対する皮膚刺激性試験での角質層透過性の少ない被験物質に対しても有意に高い皮膚刺激性の結果をあらわす場合がある。
【0007】
以上の点から、皮膚刺激性を予測する試験法の開発にあたって、皮膚の角質層を考慮に入れた試験法の開発がすすめられてきている。
【0008】
そこで、最近、これら前述の欠点を補うために、ヒト皮膚培養法の進歩に従い、皮膚刺激性を予測するために、角質層を有する3次元ヒト培養皮膚モデル(培養皮膚モデル)を用いた検討も行われてきており、素材として、その有用性が示されている。培養皮膚モデルを用いた刺激性の測定方法として、現在、生細胞数、テトラゾリウム塩(MTT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、プロスタグランジンE2(PGE2)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン8(IL−8)等の測定法が使用されているが、現在行われている方法は、長時間被験物質を培養皮膚に曝露させ、角質を透過した被験物質による細胞への直接的障害を評価する方法である(特願平4−153692、特願平4ー37211)。
特に、現在行われているインビトロ刺激性試験法では、MTT試験法やLDH試験法のような、細胞の生死を種々の検出法で検出することが主に行われている。
【0009】
これまで、培養皮膚モデルを用いた種々の動物代替法が考案されてきたが、それらは、今まで行われてきた、ヒトを含む動物実験の手法や単層細胞培養毒性試験方法と同様に、刺激物質の皮膚面に適用した被験物適用濃度に依存した試験がなされてきており、その適用濃度に依存した皮膚刺激評価を行ってきた。
すなわち、濃度依存性曲線から刺激性を判断する方法(EC50値)では、薬剤曝露時間を一定にし、50%細胞生存率を示す添加濃度を刺激指標としている。これは、薬剤曝露時間による細胞生存率が変化すること、曝露時間が適切でないと薬剤の過剰時間曝露によって過度な毒性値(皮膚刺激性値)を示す恐れがある。
また、時間依存性曲線から刺激性を判断する方法(ET50)では、薬物添加濃度を定め、薬剤曝露時間における50%細胞生存率を示す薬剤曝露時間を刺激指標としている。ET50値法は、添加する薬物の濃度によって、細胞毒性発現時間が変化すること、すなわち適用薬剤濃度差異による各薬剤の刺激性の見誤りが生じることもあるが、角質層によるバリア能を加味したかたちで、皮膚の刺激性を予測できる方法である。
しかしながら、ET50値法で得られる刺激性の指標は、前述した様に50%細胞生存率を示す薬剤曝露時間であり、それは薬物の角質透過性、角質破壊性と細胞に対する刺激性とが合わさった刺激指標であるので、各薬物の刺激性発現様式を正確に把握した刺激性評価方法ではなかった。
【0010】
繰り返すが、皮膚に対する刺激性は、少なくとも被験物が、角質層あるいはバリアを透過し、皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度での毒性により生じるのであるが、これまでの試験評価方法では、薬物の刺激性発現濃度や刺激性発現する曝露時間のみの刺激指標で試験評価されており、生体で起こる刺激性機序、そして、各機序の速度を包含した刺激指標による試験評価方法ではなかった為である。
これらの方法の問題は、培養皮膚モデル等の3次元組織物を用いた場合と同様に、ヒトや動物に対する試験においても生じる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述した様に、時間依存性曲線から薬物の刺激性を判断する方法に関して、従来薬物添加濃度を定め、薬剤曝露時間における50%細胞生存率を示す薬剤曝露時間を刺激指標としている(ET50値法)。このET50値法は、添加する薬物の濃度によって、細胞毒性発現時間が変化すること、すなわち適用薬剤濃度差異による各薬剤の刺激性の見誤りが生じることもあるが、角質層によるバリア能を加味したかたちで、皮膚の刺激性を予測する方法である。
【0012】
しかしながら、バリア能を有する組織体、特に皮膚に対する刺激性は、少なくとも被験物が、角質層あるいはバリアを透過し、皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度での毒性により生じるのであるが、これまでの試験評価方法では、薬物の刺激性発現濃度や刺激性発現する曝露時間のみの刺激指標で試験評価されており、生体で起こる刺激性機序や各機序の速度を包含した刺激指標でないことから、刺激性質の異なる被験物間において同等の結果を生じる危険性があった。
【0013】
すなわち、ET50値法で得られる刺激性の指標は、前述した様に50%細胞生存率を示す薬剤曝露時間であり、それは薬物の角質透過性、角質破壊性と細胞に対する刺激性とが合わさった刺激指標であるので、各薬物の刺激性発現挙動、性質を正確にとらえた区別できる刺激性評価方法ではなかった。
【0014】
したがって、本発明の目的は、被験物の生体組織への刺激性を予測する時、予測試験法であるインビトロ刺激性試験方法において、生体で起こる刺激性機序を正確にとらえ区分された刺激指標により、被験物の性質を反映した、精度高く評価できる、インビトロ組織刺激性試験評価方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
時間依存性曲線から薬物の刺激性を判断する方法に関して、鋭意検討および解析を重ねていたところ、刺激性の時間依存曲線を速度論解析することによって、薬剤の刺激性を正確に評価出来ることを特徴とするインビトロ刺激性試験評価方法である。
【0016】
一般に、バリア能を有する組織体、なかでも皮膚に対する刺激性は、少なくとも被験物が、角質層あるいはバリア層を透過し、皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度での毒性により生じることが知られている。
具体的には、上述刺激性発現機序に対して、鋭意検討を重ねた結果、各曝露時間において発現する刺激度(細胞生存率など)を速度論解析を行うことにより、刺激性発現挙動が2相性を示すことが分かった。
ここでいう被験物質の刺激度とは、細胞生存率や刺激により細胞が産生する因子量などを挙げることが出来、それらの検出方法としては、生細胞数、テトラゾリウム塩(MTT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、プロスタグランジンE2(PGE2)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン8(IL−8)等の測定法によって行うことが出来る。
【0017】
すなわち、皮膚刺激性の速度は、被験物を培養皮膚表面に添加したのち、初期は、ゆっくりした1次反応速度に依存した挙動を示す。あるいは、薬物が、角質層を透過後、あるいは、薬物によっては、角質層のバリア機能を減衰させた後、その刺激性の速度は変化する(後期挙動)。ゆえに、バリア能を有する皮膚に対する刺激性で、時間経過とともに変化する減少挙動検出する場合、以下に示す2つの式(式1のみ:初期挙動が継続する場合、式1および式2:初期と後期の2相の挙動の場合)によって表される刺激性発現挙動に、適合することが見出された。
数式(1) 0<t< Tの時 V=(100−V∞)・exp(-k1t)+V∞
数式(2) t>Tの時 V=(100−V∞)・exp(-k1T)・exp(-k2t)+V∞
また、時間経過とともに変化する増加挙動を検出する場合、以下の式(3)で示されることが見出された。
数式(3) C= A・{1−e-k1T・e-k2t }
Vは、時間tにおける刺激度(細胞生存率など)、Tは、初期(1相目)の屈曲部位までの時間、k1は、初期の1次速度定数、k2は、後期の1次速度定数を示している。V∞は、最長曝露時の刺激度(細胞生存率など)を示す。CとAは、時間tにおける産生値(刺激度)と最長曝露時の最大産生値(刺激度)を示す。
ただし、V∞が、0である時あるいは予測される時は、下式によって表すことが出来る。
式(4) 0<t< Tの時 V=100・exp(-k1T)
式(5) t>T の時 V=100・exp(-k1T)・exp(-k2t)
上記式を用いた解析は、例えば公知の動態学問的手法を利用して行うことができる。一例を次に示す。まず、実験により各時間の刺激度(例えば細胞生存率)のデータをとり、そのデータを上記式にエクセル(マイクロソフト社)等を用いて計算させ、最小自乗法を使用して実測と理論値のフィットする曲線を導く。その際、エクセルのIF文を用いて、例えばt-T>0などの識別によりカーブフィッティング(曲線当てはめ)計算を行うことにより、Tを実験グラフ上から未知数(推定値)としていれ、推測していくことができる(最適化処理)。
【0018】
一般に、バリア能を有する組織構造体、特に皮膚に対する刺激性が発現する場合、少なくとも被験物が、角質層あるいはバリア層を透過し、皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度での刺激性(細胞毒性など)により生じるのであるが、上記式(2)で表される2相性は、これらの刺激発現経過、挙動を的確に表現していることが見出された。
【0019】
さらに式により得られた因子は、有効に被験物の刺激性を評価することができる。
すなわち、これらのT、t は、薬物が皮膚に対して反応するまでの時間であり、一定の条件下で実験されると、各薬物の皮膚に対する反応性を推測することが出来る。また、k1が、低い値であると薬物の角質の透過性が低いことを表しているし、k2が、高い値であると細胞に対する刺激性が高いことを示唆している。
【0020】
したがって、本発明は、(1)皮膚モデルの表皮面上にサンプルを置く工程、(2)この状態で皮膚モデルを培養する工程、(3)皮膚モデルの細胞生存率または細胞刺激度を測定する工程、(4)刺激性を評価に際して、反応時間に依存した(3)の結果の速度論解析を行う工程、を有する皮膚刺激性試験方法であり、新規なインビトロ皮膚刺激性試験評価方法である。
【0021】
このように、バリア能を有する組織構造体、特に皮膚に対する刺激性は、被験物が、角質層あるいはバリア層を透過あるいは破壊する機序、そして皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度により刺激性(細胞毒性など)を発現する機序よりなるが、上記2式で表される速度論解析を被験物質の刺激性評価に組み入れることによって、これらの刺激発現経過、挙動を的確に判断し、被験物質の刺激性を的確に評価することが出来る。
他に、バリア能を有する3次元的組織細胞構造物を用いる時は、基本的に上記2式が適合されるが、バリア能が破綻したモデルを使用する場合、例えばアトピー性皮膚、肌荒れ皮膚を想定した時あるいは、バリア能の存在しない組織体に対して適用する場合は、上記2式を以下に示す式に一部修正することによって速度論解析することにも応用が可能である。
式(5) 0<tの時 V=(100−V∞)・exp(-ksst)+V∞
( Kssは、バリア能が破綻したモデルにおける一次速度定数である。)
式(6) 0<tの時 V=100・exp(-ksst) (V∞が、0の場合)
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に用いられる組織、皮膚組織は、ヒト、動物より採取されたもの、あるいは、3次元的に組織再構築された組織培養物、あるいは培養人工皮膚などが挙げられる。
また、本発明の皮膚刺激性試験に用いる培養人工皮膚とは、天然の皮膚組織に類似したものであって、生体より単離された皮膚の細胞から、細胞培養技術を用いて皮膚構造を再構築させたものであり、表皮層と真皮層からなる多細胞層の構造物、あるいは、表皮層のみの多細胞層の構造物である。表皮層は、表皮細胞層が積み重なった構造を有し、所定の分化した表皮細胞群で構成され、各細胞は生存している。
表皮細胞群は、生存していることが必要であり、生存していないと、表皮細胞間の結合と角質層の破壊が起こり角質層を介した刺激性を測定する上で好ましくない。
【0023】
本発明で行われる皮膚刺激性試験手法について培養人工皮膚を用いた例を用いて解説するが、以下の記載に限られるものではない。
まず、培養人工皮膚を例えばシャーレまたは培養プレートに入れ、さらに栄養培地を培養皮膚底面に接触する様に加え、皮膚表面は空気に曝露された状態で培養できるようにする。
次いで、培養皮膚表面に被験物質を接触させる。本発明では、培養人工皮膚の表面に、密着する様に被験物質を適用した後、培養器内、または、大気上で、設定した数点の時間曝露させる。曝露時間設定は、3点以上であれば良く、より信頼できる速度論評価を行うためには、好ましくは、5点以上設定すればよい。
【0024】
被験物質を接触させる手段としては、ヒト皮膚パッチテスト等に用いられるフィンチャンバー、コットンパッド、濾紙、スポンジ、ガーゼ、不織布等にしみ込ませて接触させるか、直接、被験物を皮膚表面に接触させても良い。ここで適用される被験物質とは、液状、クリーム状、ゲル状、固形状すべての皮膚に接触する物質及び製品を示す。
これらには、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、または非イオン系)とこれらの界面活性剤を含む製品、例えば、シャンプー、洗剤、コンディショナー、食器洗浄液、スキンクレンザー、クリーニング剤およびスキンケア品目などがある。
上記記載から明らかな様に、医薬品、化学品およびこれらの原料などの皮膚と接触する他の成分または製品を適用しても良い。被験物質の刺激性は、バリア能に対する影響、細胞毒性、細胞活性化、細胞増殖性など生体組織、細胞に対して刺激が加われた時に生じる種々の反応を意味する。例としては、これに限定されるものではないが、被験物質の各曝露時間後の皮膚に対する刺激度としては、細胞生存率や刺激により細胞が産生する因子量などを挙げることが出来、それらの検出方法としては、生細胞数、テトラゾリウム塩(MTT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、プロスタグランジンE2(PGE2)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン8(IL−8)等の測定法によって行うことが出来る。
【0025】
【実施例】
インビトロ皮膚刺激性試験において、各曝露時間後の刺激性を速度論解析することによって、有効な判別が可能であることを、本発明の内容の実施例を用いて具体的に説明する。これらの実施例は、本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0026】
実施例1
培養人工皮膚(LSE002:Living Skin Equivalent、東洋紡社製)を12穴の培養プレートに入れた。LSE002は、トランスウエル内で培養された培養人工皮膚で、実験には、トランスウエルとともに使用した。この12穴培養プレートの各ウエルの培養人工皮膚の底面に接触する様にアッセイ培地(東洋紡製)を0.6ml加えた。次に、培養人工皮膚の表面に被験物として50μlの乳酸溶液(3%、10%)、SLS溶液(1%:sodium lauryl Sulfate)、Triton X−100(1%)を添加し、5%炭酸ガスインキュベーター内で、種々の設定時間被験物の曝露を行った(乳酸:0、2、4、6、8、16、24時間。SLS:0、0.5、1、2、3、4、6時間。Triton X−100:0、0.5、1、2、3、4時間)。各時間曝露を実施した培養人工皮膚を炭酸ガスインキュベーターから取り出し、MTT試薬が0.333mg/ml含まれるアッセイ培地で3時間炭酸ガスインキュベーター内で培養した。その後、直径8mmのバイオプシーパンチで薬剤曝露部位をくりぬき、くりぬいた部分を0.3mlの酸性イソプロパノール液につけ、生成した青紫色のホルマザンの抽出を2時間行った。抽出終了後、96穴マイクロプレートリーダーを用いて570nmの吸光度を測定した。被験物曝露0時間目のMTT試験値を細胞生存率100%として、各曝露時間の細胞生存率を求め、各薬剤の時間依存曲線を図1および図2に示した。図1および図2からも明らかな様に、式2に適合した時間依存曲線であり、いずれの薬物においても2相性が示された。
【0027】
次に、速度論解析を行った結果の各パラメーターを表1に示した。
【表1】
【0028】
この結果より、乳酸では、薬物濃度の増加に従って角質層を透過し刺激性を発現するまでの時間(T)が減少するが、1次速度次数(k1)は変らなかった。加えて、刺激性発現後の1時反応次数も同様に違いは認められなかった。乳酸は、濃度に依存した角質の破壊挙動を示しにくいが、濃度を増加させることが、刺激性発現濃度に達する時間のみに影響を与えていることが示された。
同様に解析すると、SLSは、k1が0.290の値であり、徐々に角質を破壊しながら角質を透過していっていることが分かる。よって、Tの値は低く、刺激性を示し易い薬物であることが推測出来る。しかし、k2の値は、乳酸と近似しており、独自の細胞毒性度は乳酸と近似していることが推察出来た。
また、Triton X-100は、K1が0に近い値を示し、T値が1.829であることから、角質層の透過性は低いが、k2が3.523であることから、一旦角質を透過すると劇的な細胞毒性を示すことを推測することが出来た。
さらに、T値とk2を総合して評価すると、刺激性は、3%乳酸>10%乳酸>1%TritonX-100>>1%SLSの順で高いことが予測できた。
【0029】
【発明の効果】
本発明の方法は、バリア能を有する3次元的組織細胞構造物に対する刺激性が、被験物の角質層あるいはバリア層を透過あるいは破壊する機序、そして皮膚の表皮層(生細胞層)に達し、被験物の組織濃度、曝露時間、被験物単位濃度により刺激性(細胞毒性など)を発現する機序よりなるが、被験物の曝露時間に依存した刺激性曲線を用いた刺激試験結果の評価に、速度論的解析を組み入れることによって、被験物の刺激発現経過、挙動を的確に判断し、被験物質の刺激性を的確に評価することが出来る方法である。ゆえに、本発明の方法は、 動物実験代替法において、精度の高い刺激性評価結果を得る方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】培養皮膚モデルの表面に、3%と10%の乳酸溶液を適用した後、経時的に細胞生存率が推移した結果を示している。
【図2】培養皮膚モデルの表面に、1%のSLS溶液、1%のTriton X-100溶液を適用した後、経時的に細胞生存率が推移した結果を示している。
Claims (12)
- 3次元的組織細胞培養物の表面に被験物を添加し、その被験物の刺激性を評価するに際して、時間依存的に推移する細胞に対する刺激性を
下記式(1)、(2)あるいは、式(3)を用いた速度論解析によって、刺激性を評価することを特徴とする生体組織に対する刺激性を予測する刺激性試験評価方法。
数式(1) 0<t< T V=(100−V∞)・exp(−k1t)+V∞
数式(2) t>T V=(100−V∞)・exp(−k1T)・exp(−k2t)+V∞
数式(3) C= A・{1−e −k1T ・e −k2t }
(上記式中、Vは、時間tにおける刺激度、Tは、初期(1相目)の屈曲部位までの時間、k1は、初期の1次速度定数、k2は、後期(2相目)の1次速度定数を示している。
V∞は、最長曝露時の刺激度を示す。Cは、時間tにおける刺激度、Aは、最長曝露時の最大刺激度を示す。) - (1)3次元的組織細胞培養物の表面上にサンプルを置く工程、
(2)この状態で該培養物を培養する工程、
(3)該培養物の刺激度を測定する工程、
(4)刺激性の評価に際して、反応時間に依存した(3)の刺激度結果を速度論的に解析する工程、からなる請求項1記載の刺激性試験評価方法。 - 3次元的組織細胞培養物が、バリア能を有する構造を有する3次元的組織細胞培養物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の刺激性試験評価方法。
- 3次元的組織細胞培養物が、ヒト由来組織、動物由来組織および3次元的にインビトロ再構築された組織細胞培養物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の刺激性試験評価方法。
- 請求項1によって得られたk1、T、k2、t の内の少なくとも一つの因子によって被験物の刺激性を評価する請求項1〜4のいずれかに記載の刺激性試験評価方法。
- 3次元的組織細胞培養物が、皮膚組織、上皮組織、粘膜組織である請求項1〜5のいずれかに記載の刺激性試験評価方法。
- 3次元的組織細胞培養物を生体外において試験を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺激性試験評価方法。
- 3次元的組織細胞培養物として培養皮膚モデルを用い、培養皮膚モデルの表面に被験物を添加し、その被験物の刺激性を評価するに際して、時間依存的に推移する細胞に対する刺激性を速度論的に解析することによって、皮膚に対する刺激性を予測する請求項1〜7のいずれかに記載の刺激性試験評価方法。
- (1)培養皮膚モデルの表皮面上にサンプルを置く工程、
(2)この状態で培養皮膚モデルを培養する工程、
(3)培養皮膚モデルの細胞生存率または細胞刺激度を測定する工程、
(4)刺激性の評価に際して、反応時間に依存した(3)の結果の速度論解析を行う工程、からなる請求項8記載の皮膚に対する刺激性を予測する刺激性試験評価方法。 - 被験物の刺激性を評価する方法において、下記式(1)、(2)あるいは式(3)を用いた速度論解析によって、刺激性を評価することを特徴とする請求項8または9に記載の皮膚に対する刺激性を予測する刺激性試験評価方法。
数式(1) 0<t< T V=(100−V∞)・exp(−k1t)+V∞
数式(2) t>T V=(100−V∞)・exp(−k1T)・exp(−k2t)+V∞
数式(3) C= A・{1−e−k1T・e−k2t }
(上記式中、Vは、時間tにおける刺激度、Tは、初期(1相目)の屈曲部位までの時間、k1は、初期の1次速度定数、k2は、後期(2相目)の1次速度定数を示している。
V∞は、最長曝露時の刺激度を示す。Cは、時間tにおける刺激度、Aは、最長曝露時の最大刺激度を示す。) - 請求項10によって得られたk1、T、k2、t の内の少なくとも一つの因子によって被験物の刺激性を評価する請求項8〜10のいずれかに記載の皮膚に対する刺激性を予測する刺激性試験評価方法。
- 培養皮膚モデルが、角質構造、皮膚細胞を含む表皮様組織あるいは表皮様組織と真皮様組織からなる培養物であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の皮膚に対する刺激性を予測する刺激性試験評価方法。
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