JP3925663B2 - 抗Fasリガンド抗体および該抗体を用いた測定法 - Google Patents
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Description
本発明は、抗Fasリガンド抗体及び該抗体を用いた測定方法に関する。特に抗Fasリガンド抗体を用いたヒト体液中のFasリガンドの測定方法及び該測定方法に使用する抗体に関する。また、本発明は、Fasリガンドによるアポトーシスを高度に抑制する抗Fasリガンド抗体に関する。さらに、本発明は、上記の抗体を産生するハイブリドーマまたは細胞株に関する。
背景技術
ヒトFasリガンドは、Fas抗原を発現する細胞に対してアポトーシスを誘導する生体内分子として、長田等により報告されたポリペプチドである(Tomohiro Takahashi等、International Immunology、6巻、1567−1574頁、1994年)。ヒトFasリガンドは、TNFファミリーに属する分子量約40kDのII型膜蛋白質で、TNFと同様に、生体内で3量体を形成すると考えられている(Masato Tanaka等、EMBO Journal,14巻、1129−1135頁、1995年)。また、ヒトFasリガンドはラットFasリガンド(Takashi Suda等、Cell、75巻、1169−1178頁、1993年)やマウスFasリガンド(Tomohiro Takahashi等、Cell、76巻、969−976頁、1994年)と細胞外領域において高いホモロジーを有しており、ヒトFasリガンドはヒトFas抗原のみでなくマウスFas抗原をも認識し、アポトーシスを誘導することができる。逆に、ラットFasリガンドおよびマウスFasリガンドは、ヒトFas抗原を認識してアポトーシスを誘導することができる。
もともと細胞のアポトーシスという現象は、生体の恒常性の維持に深い関わりをもつものとして注目されていたが、上記のようにFasリガンドが異なる種間でホモロジーを有することから、Fasリガンド−Fas抗原を介したアポトーシスは生体の恒常性の維持に極めて重要な役割を担っているものと考えられる。
特に最近、Fasリガンド、Fas抗原の異常と自己免疫疾患との関係について興味ある報告がなされた。すなわち、自己免疫疾患のモデルマウスの1系統であるMRL−lpr/lprではFas抗原遺伝子に変異が生じており、このような変異の生じたFas抗原遺伝子を発現している細胞ではアポトーシスが起きない(Rie Watanabe−Fukunaga等、Nature、356巻、314−317頁、1993年およびAdachi M.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、1993年)。一方、自己免疫疾患のモデルマウスの他の系統であるC3H−gld/gldでは、Fasリガバンド遺伝子に変異が生じており、gldマウスのFasリガンドはアポトーシス誘導活性を持たない。この変異とは、遺伝子のポイントミューテーションであり、その結果、Fasリガンドの細胞外領域のC末端より数えて7番目のアミノ酸が他のアミノ酸に変化している。(Tomohiro Takahashi等、Cell、76巻、969−976頁、1994年)。このようなgldマウスのFasリガンドは、Fas抗原に結合することができない(Fred Ramsdell等、Eur.J.Immunol、24巻、928−933頁、1994年)。
これらの事実から、ヒトにおける自己免疫疾患のある種のものは、Fas抗原もしくはFasリガンドの異常によって、本来アポトーシスを起こして生体内から除去されるべき自己反応性のT細胞が残存するために生じるのであろうと考えられるようになった。
最近では、リウマチにおける滑膜細胞の異常増殖も、これらの細胞で正常にアポトーシスが生じないために起こるのではないかと考えられている。また、コバヤシN.(Kobayashi N.)等は、エイズウイルス感染によりT細胞膜上にFas抗原の発現が誘導されるので(日経サイエンス、6巻、34−41頁、1993年)、エイズウイルス感染時におけるT細胞の減少もFasリガンドを介したものであると予想している。
このようにFasリガンド−Fas抗原を介したアポトーシスと疾患との関わりが明らかになるにつれて、アポトーシスの異常を伴う疾患、すなわち、上記自己免疫疾患やリウマチ、エイズ等の治療に、FasリガンドもしくはFas抗原を応用することが期待されてきている。
また、長田らは、Fasリガンドに対する抗体を取得し、該抗体がアポトーシスを抑制しうることを報告してきた(Masato Tanaka等、EMBO Journal,14巻、1129−1135頁、1995年および国際特許出願公開公報WO95/13293)。
発明の開示
前述のように長田らは鋭意研究を重ね、Fasリガンドを単離し、また、それに対する抗体を作製し、報告してきた。
しかしながら、実際にヒト体液中に存在するFasリガンドを測定した報告はなく、ヒト体液中に可溶性のFasリガンドが存在することも確認されていなかった。通常Fasリガンドのような生理活性サイトカイン類は、局所において微量産生され、局所で作用すると考えられている。また、一般的に半減期が短く、作用した後は速やかに組織または血中から除去される。よって、必ずしも末梢血中等で容易に検出可能であるとはいえない。Fasリガンドは、元々膜貫通(結合)蛋白質として報告されており、ある特殊な条件下では細胞から遊離することがin vitroの実験で示されている(Masato Tanaka等、EMBO J.,14巻、1129−1135頁、1995年)が、生理的な状態でしかも生体内でそのような現象が起きていることは知られておらず、ヒト体液中にFasリガンドの存在することも未知であった。また仮に存在していたとしても、上記理由から、その濃度は極めて低いものと予想され、これを測定することは相当に困難であると考えられていた。また、体液中には免疫学的測定における種々の妨害物質の存在の可能性があり、高感度かつ特異性の高いFasリガンド測定系およびそれに適した抗体の開発が必要であった。また、Fasリガンドは種々の疾患との関連が示唆されており、それらの疾患を診断する一つの手段として体液中のFasリガンド濃度を測定することが臨床上有用と考えられている。しかし、いかなる疾患で体液中のFasリガンド濃度が変動しているかについては未だ報告がない。さらに将来的にFasリガンドのようなアポトーシスを誘導する物質の投与が有用と予想されている疾患の患者にFasリガンドを投与した場合、またはFasリガンドの活性あるいは発現に影響を与えるような物質を投与した場合、血中濃度のモニタリングまたは治療効果の判定のために体液中のFasリガンド濃度を測定することが必要であり、高感度かつ特異的なFasリガンドの測定方法が待望されていた。また、中和抗体については、より中和活性の高い抗体およびその特性の解明が望まれており、特に治療等の生体内における適用を考慮した場合、より低容量でFasリガンドによるアポトーシスを抑制しうる抗体が有効性および安全性の面から強く望まれていた。
不運にも、非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体の使用は、ヒトの治療において、特に以下に説明するような繰り返しの治療療養法においてある種の欠点を有する。マウスモノクローナル抗体は、例えば、比較的短い循環半減期を有し、そしてヒトに用いられた場合は、他の重要な免疫グロブリンの機能的特性を欠く。
恐らく更に重要には、非ヒトモノクローナル抗体は、ヒト患者体中に注入されたときに免疫原性となるアミノ酸配列の実質的な長さを含む。多くの研究により、外来の抗体の注入の後、患者によって引き起こされた抗体に対する免疫応答が、非常に強くなり得て、最初の処置後の抗体の治療的有用性を本質的に排除してしまうと示されている。更に、種々の疾患を治療するために、益々多数の種々のマウス又は他の(ヒトに)抗原性のモノクローナル抗体が開発されると予想されるので、いずれかの異なった非ヒト抗体を用いた最初の又は数回の処置の後、それに続く関連のない療法のための処置でさえ、交叉反応性のために、効果がなかったり、またそれ自身が危険であることがあり得る。
いわゆる「キメラ抗体」(例えば、ヒト定常領域に連結されたマウス可変領域)の製造が幾分か成功であると証明されている一方、著しい免疫原性の問題が残っている。一般的に、典型的なヒトモノクローナル抗体生産技術を用いてFasリガンドに反応性のヒト免疫グロブリンを生産することは、多くの抗原の場合と同様に、非常に困難であろう。同様に、いわゆる「ヒト化」または「再形成」抗体(例えば、ジョーンズら、ネーチャー321:522−525(1986);シャールマンら、J.Immunol.147:4366−4373(1991);ケッテルボロフ、プロテイン エンジニアリング4:773−783(1991);ゴールマンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4181−4185(1991);テンペストら、バイオテクノロジー9:266−271(1991);リーチマンら、ネーチャー332:323(1988)及びヨーロッパ特許公開第0239400号公報、これらの引例はそれぞれ本明細書の部と成す、参照。)を生産するために組換DNA技術を利用することは、部分的には、得られる免疫グロブリンの予期し得ない結合親和性のために一定の結果を与えない。
さらに、体液中のFasリガンドをより詳細に検討するため、またFasリガンドの機能を解析するため、特定のFasリガンド由来ペプチドと反応する抗体、すなわちFasリガンド内の結合部位の明らかな抗体の取得が待望されていた。
本発明の目的は、抗Fasリガンド抗体及び該抗体を用いた測定方法を提供することにある。特に抗Fasリガンド抗体を用いたヒト体液中のFasリガンドの測定方法、及び該測定方法に使用する抗体、測定試薬および測定キットを提供する。また、本発明は、Fasリガンドによるアポトーシスを高度に、例えば、50%以上抑制する抗Fasリガンド抗体、およびヒト化抗体である該抗Fasリガンド抗体を提供する。さらに、本発明は、上記の抗体を産生するハイブリドーマまたは細胞株を提供する。本発明はまた、本発明の抗Fasリガンド抗体の少なくとも一つを必須の構成成分または有効成分として含有する組成物または医薬を提供し、ならびに、Fas抗原/Fasリガンド系の異常もしくはFas抗原を介するアポトーシスの異常を伴う、該異常により引き起こされるまたは該異常の関与する、全身性または局所性の病的状態または疾患を処置するための方法であって、FasリガンドによるFas抗原発現細胞のアポトーシスを抑制する抗Fasリガンド抗体の治療有効量を患者に投与することを含む方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、ヒトFasリガンド細胞外領域上のエピトープ領域と推定された部分とそのアミノ酸配列を示す模式図である。
図2は、抗M52ペプチドモノクローナル抗体を用いたFasリガンドのウエスタンブロッティングによる結果を示す図面代用写真である。
図3は、アポトーシス誘導活性に及ぼす抗M52ペプチドモノクローナル抗体の影響を示すグラフである。
図4は、抗Fasリガンド抗血清(ロット8−2)の抗体価を示すグラフである。
図5は、F919−9−18モノクローナル抗体によるアポトーシス抑制活性を示すグラフである。
図6は、酵母由来のFasリガンド細胞外領域のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
図7は、ポリクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA系の標準曲線を示すグラフである。
図8は、サンドイッチEIA系における正常ヒト血清の影響を示すグラフである。
図9は、各種疾患患者血清中のFasリガンドの測定値を示すグラフである。
図10は、マウスF919抗体の軽鎖可変領域のcDNA配列及び翻訳アミノ酸配列を示す図である。CDRに下線を引き、成熟鎖の1番目のアミノ酸には二重下線を引いた。
図11は、マウスF919抗体の重鎖可変領域のcDNA配列及び翻訳アミノ酸配列を示す図である。CDRに下線を引き、成熟鎖の1番目のアミノ酸には二重下線を引いた。
図12は、ヒト化F919抗体(version2)の軽鎖可変領域のcDNA配列及び翻訳アミノ酸配列を示す図である。CDRに下線を引き、成熟鎖の1番目のアミノ酸には二重下線を引いた。
図13は、ヒト化F919抗体の重鎖可変領域のcDNA配列及び翻訳アミノ酸配列を示す図である。CDRに下線を引き、成熟鎖の1番目のアミノ酸には二重下線を引いた。
図14は、マウス及びヒト化F919抗体(version1)の競合的結合を示すグラフである。Fasリガンドを発現するトランスフェクタント1A12細胞とともに、放射標識されたトレーサーマウスF919抗体の存在下に、順次増加させた量のマウス又はヒト化競合物抗体を、インキュベートした。そして結合/遊離放射活性の比率を測定した。結果を2つの試料の平均値で示す。
図15は、マウス及びヒト化F919抗体(version2)の競合的結合を示すグラフである。Fasリガンドを発現するトランスフェクタント1A12細胞とともに、放射標識されたトレーサーマウスF919抗体の存在下に、順次増加させた量のマウス又はヒト化競合物抗体を、インキュベートした。そして結合/遊離放射活性の比率を測定した。結果を2つの試料の平均値で示す。
図16は、マウスならびにヒト化F919抗体(version1)IgG1(G1v1)およびIgG4(G4v1)のアポトーシス抑制活性を示すグラフである。結果を3つの試料の平均値で示す。
図17は、マウスならびにヒト化F919抗体(version2)IgG1(G1v2)およびIgG4(G4v2)のアポトーシス抑制活性を示すグラフである。結果を3つの試料の平均値で示す。
図18は、2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA系の標準曲線を示す。
図19は、HIV感染患者パネル血清のFasリガンド濃度の推移を示すグラフである。
図20は、A型肝炎患者パネル血清のFasリガンド濃度の推移を示すグラフである。
図21は、B型肝炎患者パネル血清のFasリガンド濃度の推移を示すグラフである。
図22は、C型肝炎患者パネル血清のFasリガンド濃度の推移を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は以下の抗体を提供する。すなわち、
(1)抗Fasリガンド中和抗体であって(以下、中和抗体と称することがある)、
▲1▼FasリガンドによるFas抗原発現細胞のアポトーシスを高度に抑制する活性を有する抗Fasリガンド抗体であって、30μg/ml、好ましくは10μg/ml、より好ましくは3μg/ml、さらに好ましくは1μg/ml、特に好ましくは0.3μg/mlにおいて50%以上のアポトーシス抑制率を示す抗Fasリガンド抗体。
▲2▼生物活性を有するFasリガンドの少なくともいずれか1つを認識する抗Fasリガンド抗体。
▲3▼生物活性を有さないFasリガンドの少なくともいずれか1つを認識しない曲抗Fasリガンド抗体。
▲4▼▲2▼及び▲3▼の性質を合わせ持つ抗Fasリガンド抗体。
▲5▼該生物活性を有するFasリガンドが後に実施例で記載するFasリガンド細胞外領域、遊離型Fasリガンド、Fasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドnd5、nd12、nd20、nd32およびnd42、ヒトFasリガンドの細胞外領域の置換変異体であるL179Fの少なくとも何れか一つである▲2▼または▲4▼の抗Fasリガンド抗体。
▲6▼該生物活性を有さないFasリガンドがFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドnd49、ヒトFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるcd179または硫安塩析により凝集変性したFasリガンドの少なくとも何れか一つである▲3▼▲4▼または▲5▼の抗Fasリガンド抗体。
▲7▼▲1▼および▲2▼の性質を合わせ持つ抗Fasリガンド抗体。
▲8▼少なくとも107M-1以上、好ましくは108M-1以上、より好ましくは109M-1以上、さらに好ましくは1010M-1以上の親和定数でFasリガンドと結合する抗Fasリガンド抗体。
▲9▼少なくとも107M-1以上、好ましくは108M-1以上、より好ましくは109M-1以上、さらに好ましくは1010M-1以上の親和定数でFasリガンドと結合する▲1▼ないし▲7▼のいずれかに記載の抗Fasリガンド抗体。
▲10▼図10または11に示される相補性決定領域(CDR)の少なくとも一つ、好ましくはすべてを含有する抗Fasリガンド抗体。
▲11▼図10または11に示される相補性決定領域(CDR)の少なくとも一つ、好ましくはすべてを含有する、▲1▼ないし▲9▼のいずれかに記載の抗Fasリガンド抗体。
▲12▼ヒトFasリガンドに特異的に結合する非ヒト供与体の免疫グロブリン(Ig)からの少なくとも一つ、好ましくはすべてのCDRおよびヒト受容体免疫グロブリンからの少なくとも一つ好ましくはすべてのフレームワーク領域を含有するヒト化免疫グロブリンである抗Fasリガンド抗体。
▲13▼▲12▼に記載のヒト化免疫グロブリンである▲1▼ないし▲11▼のいずれかに記載の抗Fasリガンド抗体。
▲14▼前記非ヒト供与体Igが▲1▼ないし▲11▼のいずれかに記載の抗Fasリガンド抗体である▲12▼または▲13▼に記載の抗Fasリガンド抗体。
▲15▼前記非ヒト供与体Igが、マウスF919−9−18抗体である▲14▼に記載の抗Fasリガンド抗体。
ここで中和抗体とは、FasリガンドによるFas抗原発現細胞のアポトーシスを抑制する活性を示す抗体をいい、後述する実施例の1−3に記載の方法または公知の方法で測定するアポトーシス(これは放射活性または特異的溶解率(specific lysis,%)等で表現される)が、対照群例えば無添加群と比較して低値であるものをいう。具体的には、以下の式で計算されるアポトーシス抑制率が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは90%以上である抗体である。
また、Fasリガンドの生物活性とは、Fas抗原発現細胞のアポトーシスを誘導または抑制する活性をいい、後述する実施例の1−3に記載の方法または公知の方法で測定される。
また、抗Fasリガンド抗体とは、Fasリガンドを認識する活性、またはFasリガンドと反応する活性を有する抗体をいい、例えば本明細書に記載のいずれかの方法または公知の方法で抗原であるFasリガンド(例えばFasリガンド細胞外領域)との結合が確認される抗体が含まれる。
本発明はまた以下の抗体を提供する。すなわち、
(2)特定のFasリガンド由来ペプチドに対する抗Fasリガンド抗体であって、
▲1▼該ペプチドと特異的に反応する抗Fasリガンド抗体。
▲2▼該ペプチドが配列表の配列番号1〜8のいずれかである▲1▼の抗Fasリガンド抗体。
▲3▼該ペプチドが配列表の配列番号1または6である▲1▼の抗Fasリガンド抗体。
▲4▼該ペプチドが配列表の配列番号1である▲1▼の抗Fasリガンド抗体。
▲5▼該ペプチドが配列表の配列番号1中に記載されるアミノ酸の番号で1〜9または10〜20に対応する部分のペプチドである▲4▼の抗Fasリガンド抗体。
すなわち、本発明(1)の抗体はFasリガンドの生物活性発現に重要なエピトープを認識する抗体であり、該エピトープは生物活性を有するFasリガンド、例えば、Fasリガンド細胞外領域、遊離型Fasリガンド、Fasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドnd5、nd12、nd20、nd32およびnd42、ヒトFasリガンドの細胞外領域の置換変異体であるL179F等には表現されているが、生物活性を有さないFasリガンド、例えばFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドnd49、ヒトFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるcd179および実施例4−1記載のFasリガンド細胞外領域の硫安塩析による凝集物等には表現されていないエピトープと考えられる。また本発明は、標準的結合条件(例えば生理的食塩液または血清条件)下で後に実施例で述べるような検定法において、少なくとも107M-1以上、好ましくは108M-1以上、より好ましくは109M-1以上、さらに好ましくは1010M-1以上のFasリガンドに対する結合親和性を有する抗Fasリガンド抗体ならびに、図10および11に示される相補性決定領域(CDR)の少なくとも一つ、好ましくは3つ、より好ましくはすべてを含有する抗Fasリガンド抗体を提供する。本発明(1)の抗体の好適な例としてはハイブリドーマF919−9−18の産生するモノクローナル抗体またはこれと同一のエピトープを認識する抗体或いは該抗体とその抗原の結合を競合する抗体があげられる。本発明(1)の抗体は高度にアポトーシスを抑制することが可能である。また、Fasリガンド特に生物活性を有するFasリガンドを認識するため、ヒト体液中のFasリガンド、特に生物活性を有するFasリガンドを高感度に検出する測定方法に使用可能である。
本発明(2)の抗体の好適な例としては、ハイブリドーマF918−7−3、F918−9−4およびF918−20−2等が産生する抗体またはこれと同一のエピトープを認識する抗体或いは該抗体とその抗原との結合を競合する抗体があげられる。前記(2)▲5▼の抗体の内、配列番号1のペプチドのアミノ酸番号1から9のペプチドに特異的に反応する抗体としてはF918−7−3が、また、アミノ酸番号10から20のペプチドに反応する抗体としてはF918−9−4およびF918−20−2があげられる。本発明(2)の抗体は特異的にFasリガンドと反応し、また、その反応するペプチド部分が明らかであり、特定のFasリガンドと反応する。そのため、ヒト体液中のFasリガンドを高感度に検出する測定方法に使用可能である。また、1種類または複数の特定のFasリガンドを選択的に検出する測定方法にも使用し得る。
本発明の抗Fasリガンド抗体は、FasリガンドまたはFasリガンド由来ペプチドと結合する限り、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体は特性がより明らかであるという点で好ましい。
抗体、すなわち、免疫グロブリンの構造はH鎖とL鎖とからなり、H鎖のクラスにより、5つのイソタイプ(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)に分けられる。このうち、IgG、IgAのH鎖はサブクラスに分けられる。本発明の抗Fasリガンド抗体は、これらの、および後述のいずれの分類の鎖を含有するものでもよく、またいずれのイソタイプに属するものであってもよい。
さらに、免疫グロブリンは例えばペプシンで分解すると、F(ab’)2とFc’に別れ、パパインで分解するとFabとFcの2つのフラグメントに分かれる。本発明の抗体は、抗原と結合するものであれば、完全な抗体分子でもその一部のフラグメントでもよい。また、本発明の抗体はキメラ抗体またはヒト抗体であってもよい。さらに、公知方法により種々の標識物を結合させた標識抗体、他の物質、例えばポリペプチドとの融合抗体及びイムノトキシン等も本発明の抗体に含まれる。
基本的な抗体の構造単位は、テトラマーを構成すると知られている。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一のペアから成り、各ペアは、1つの“軽”鎖(約25kD)及び1つの“重”鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のNH2末端は、主として抗原認識に寄与する約100〜110或いはそれ以上のアミノ酸の可変領域から始まる。各鎖のCOOH部分は、主としてエフェクター機能に寄与する定常領域を定めている。
軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンとして分類され、それぞれ抗体のイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEと決定づけている。軽鎖及び重鎖内では、可変領域及び定常領域が、約12或いはそれ以上のアミノ酸の“J”領域によって連結されており、重鎖はまた約10より多いアミノ酸の“D”領域を含む(一般に、ファンダメンタル イムノロジー、ポールW.編、第7章、131−166頁、ラベンプレス、N.Y.(1984)、本引例をもって明細書の一部と成す、参照)。
各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。鎖は全て、3つの超可変領域(この領域はまた相補性決定領域又はCDRと呼ばれる[“免疫学的興味の蛋白質配列”、カバット E.ら、U.S.デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシース(1987);及びチョチア アンド レスク、J.Mol.Biol.、196:901−917(1987)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照])によって連結された比較的保存されたフレームワーク領域の同じ普遍的構造を示す。各ペアの2つの鎖からのCDRは、フレームワーク領域によって一列に並べられ、特異的なエピトープへの結合を可能とする。
本明細書において、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にエンコードされる1以上のポリペプチドからなる蛋白質を云う。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びにミリアド(myriad)免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。免疫グロブリンは、例えばFv、Fab及びF(ab’)2並び二価抗体(例えば、ランザベチアら、Eur.J.Immunol.17:105(1987))を含む抗体の他の種々の形態で、及び一本鎖(例えば、ヒューストンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA)85:5879−5883(1988)及びバードら、サイエンス、242:423−426(1988)、本引例をもって本明細書の一部と成す)にて存在しうる(一般に、フードら、ImmunoIogy(ベンジャミン、N.Y.、第2版、1984)、ハルロウ アンド レーン、Antibodies:A Laboratory Manual(コールドスプリング ハーバー ラボラトリー、1988)及びハンカピラー アンド フード、ネーチャー、323:15−16(1986)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照)。
「成熟免疫グロブリン」の天然の形態は、配列中の1以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入または付加によって長さが多少変化することはよく知られている。このように、可変領域および定常領域は、実質的な天然の修飾を受けるが、なお実質的に同一であり、かつそれらの各活性を保持しうる。
ヒト定常領域および再編成した可変領域DNAは、公知の操作法に従って種々のヒト細胞、好ましくは不死化B細胞から単離しうる。同様な方法により非ヒト材料から非ヒト免疫グロブリン配列を単離することができる。DNA配列のための材料の細胞ならびに発現および分泌のための宿主細胞は、種々の材料、例えばアメリカン タイプ カルチャー コレクション(セルライン及びハイブリドーマのカタログ、第5版(1985)、ロックビル、MD、本引例をもって本明細書の一部と成す)から得ることができる。
これらの「天然に存在する形態」の免疫グロブリン鎖に加えて、他の「実質的に同一な」修飾された免疫グロブリン重鎖および軽鎖が当業者に周知の種々の組み換えDNA技術を利用して容易にデザインされそして製造されうる。例えば、鎖は、いくつかのアミノ酸の置換、末端及び中間での付加や欠失等によって、その1次構造レベルにて天然の配列から変化することができる。或いは、1又はそれ以上の免疫グロブリン活性(例えば、結合活性)を有するような、一次の抗体構造の部分のみを含むポリペプチドフラグメントを製造することができよう。特に、多くの遺伝子と同様に、免疫グロブリン遺伝子も分離した機能的領域を含有し、各領域は異なる生物活性を有することが注目される。一般に、所望のエピトープ結合成分をコードする遺伝子の修飾は、種々の良く知られた技術、例えば、特定部位の突然変異誘発(ギルマン アンド スミス、Gene 8:81−97(1979)及びロバーツら、ネーチャー328:731−734(1987)、本引例を持って本明細書の一部と成す、参照)によって、容易に達成されよう。
より好ましい本発明の態様において、エピトープ結合成分は、「キメラ」または「ヒト化」された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる(CoおよびQueen Nature、351巻、501頁、1991年)。
キメラ抗体は、軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学により、異なった種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構成されている抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントは、ヒト定常(C)セグメント、例えば、γ1及びγ4と連結されうる。従って、他の哺乳動物種も用いられ得るけれども、典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体からのV又は抗原結合ドメイン及びヒト抗体からのC又はエフェクタードメインから成るハイブリッド蛋白質である。
本明細書において、「フレームワーク領域」という用語は、カバットら(前掲)による定義の如く、単一種中の種々の免疫グロブリンの内で、比較的保存されている(即ち、CDR以外の)免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変領域の部分を云う。本明細書において、「ヒトフレームワーク領域」とは、自然に生じるヒト抗体のフレームワーク領域と又はいくつかのこのような抗体の共通配列と実質的に同一(約85%又はそれ以上)であるところのフレームワーク領域である。
本明細書において、「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体からの少なくとも一つのCDRを含む免疫グロブリンを云い、その中に存在する何らかの定常領域は、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一である、即ち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%同一である。従って、恐らくCDRを除く、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、1以上の天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。例えば、ヒト化免疫グロブリンは、キメラマウス可変領域/ヒト定常領域抗体を含まない。
より好ましい本発明の態様において、Fasリガンドに特異的に反応するヒト化免疫グロブリンである抗Fasリガンド抗体が提供される。これらの免疫グロブリンは、より特異的には、本発明は、複数の、好ましくは一つのヒト受容体(アクセプター)免疫グロブリンからのフレームワーク領域(FR)の少なくとも一つ、好ましくは一方の鎖の全て(4つ)、より好ましくはすべて(各鎖について4つ)を含有し、そして、Fasリガンドに特異的に結合する非ヒト、好ましくは齧歯類、より好ましくはマウス供与体免疫グロブリンからの1以上、好ましくはすべて(各鎖について3つ)の相補性決定領域(CDR)を含有するヒト化免疫グロブリンである、本発明の抗体のいずれかに従う抗Fasリガンド抗体を提供する。該免疫グロブリンは、軽鎖/重鎖複合体の2つのペアを有することができ、少なくとも一つの鎖、特に重鎖は、ヒトフレームワーク領域セグメントに機能的に連結された、1以上、好ましくは全て(3つ)の供与体(マウス)免疫グロブリンの相補性決定領域を含む。例えば、供与体(マウス)相補性決定領域は、追加の自然に随伴する供与体(マウス)アミノ酸残基と共に又はなしで、ヒトフレームワーク領域中に導入されて、約107M-1より強い親和性レベルにてFasリガンドに結合できるヒト化免疫グロブリンを製造できる。これらのヒト化免疫グロブリンはまた、CDRを供与するマウスモノクローナル抗体のFasリガンドへの結合をブロックできる。好ましい実施態様において、1以上のCDRが本発明の抗体、より好ましくは本発明(1)の抗体のいずれかに従う非ヒト供与体抗体、特にマウスF919−9−18抗体から由来し、そしてヒト化免疫グロブリンはIgG1又はIgG4イソタイプである。さらに明確な例としては、本発明のヒト化免疫グロブリンは、各々、配列表の配列番号11、13、15、19、21または23のいずれかのアミノ酸配列を含有するまたは該アミノ酸配列からなるCDRの少なくとも一つ、好ましくはすべて(各鎖3つ)を含有するものである。ヒト化免疫グロブリンにおける各CDRおよびフレームワークの位置は元の供与体免疫グロブリンにおける位置と対応していることが望ましい。
一般に、本発明のヒト化抗体は、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワーク及び供与体免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワーク間において、65%以上95%以下、好ましくは70%以上90%以下の相同性(即ち、配列同一のパーセント)が好ましい。標準的には、同じヒト抗体からの重鎖及び軽鎖が、フレームワーク配列を提供するために選択されて、2つの鎖の集合における非適合性の可能性を減少させるが、異なる2以上のヒト抗体から由来してもよい。
ヒトフレームワーク領域に関しては、CDRを得る非ヒト免疫グロブリンのフレームワークまたは可変領域アミノ酸配列をヒト免疫グロブリン配列コレクション中の対応する配列と比較し相同性の高い配列を選び用いる。好ましくは、フレームワークアミノ酸配列の相同性は60%以上、より好ましくは65%以上である。また、好ましくは、受容体免疫グロブリン重鎖可変領域のアミノ酸配列は、供与体免疫グロブリン重鎖可変領域のアミノ酸配列と最も相同なヒト免疫グロブリン重鎖可変領域配列の代表的コレクション中の5つ、より好ましくは3つの中にある。ヒト化免疫グロブリンの設計は、以下のように行うことができる。
1)アミノ酸が以下の(a)〜(c)のカテゴリーに該当する場合は、用いられ用るヒト免疫グロブリン(受容体免疫グロブリン)のフレームワークアミノ酸はCDRを供与する非ヒト免疫グロブリン(供与体免疫グロブリン)由来のアミノ酸で置換される。
(a)受容体免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中の該アミノ酸がヒト免疫グロブリンのその位置に稀であり、そして供与体免疫グロブリン中の対応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン中のその位置に典型的である;
(b)該アミノ酸がCDRの1つに一次配列上近接もしくは隣接している;または、
(c)該アミノ酸が供与体もしくはヒト化免疫グロブリンの三次元モデルにおいてCDRの約5、好ましくは4、より好ましくは3オングストローム以内に原子を有する(Co等Proc,Natl.Acad.Sci.USA,88、2869、1991)。
2)受容体免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中の該アミノ酸および供与体免疫グロブリンの対応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン中のその位置に稀である場合、ヒトフレームワークのその位置に典型的であるアミノ酸に置換する。ヒト化免疫グロブリンの製造の詳細な説明については、クイーンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029(1989)、国際特許出願公開公報WO90/07861およびWO92/11018、Co等Proc, Natl. Acad. Sci. USA, 88, 2869(1991)、CoおよびQueen Nature、351巻、501頁、1991年、ならびに、コーら、J.Immunol.148:1149(1992)(これらの引例をもって本明細書の一部と成す)が参照される。
一般に、全ての又は殆どのアミノ酸の置換が上記基準を満たしているのが望ましい。しかしながら、個々のアミノ酸が上記基準にあっているかどうかについては暖昧であることもあり、そして、代わりの様々な免疫グロブリンが製造され、その内の一つはその特定の置換を有するものもあるが、有さないものもある。本発明のヒト化抗体は、通常、少なくとも1、3、5及び更に通常は7つの、対応する供与体(マウス)軽鎖フレームワーク残基または他のアミノ酸残基での置換を含む。そして、ヒトフレームワークがEu抗体由来である場合、特にCDR供与体がマウスF919−9−18である場合、それらの置換は表4および5に示される位置での置換を含む。ヒト化抗体はまた、通常、少なくとも1、3、5、7、9、11、13及び更に通常は16の位置において、対応する供与体(マウス)重鎖フレームワーク残基での置換を含む。そして、ヒトフレームワークがEu抗体由来である場合、特にCDR供与体がマウスF919−9−18である場合、それらの置換は表4および5に示される位置での置換を含む。これらの位置は、通常、典型的なアミノ酸残基を有するヒト免疫グロブリンの等価位置からのアミノ酸またはその同類のアミノ酸で置換されてもよい。
また、フレームワーク領域中のいくつかの位置のアミノ酸は抗原と直接相互作用、例えば非共有結合的に接触することができ、これらの位置も上記置換の対象となるが、特に、重鎖の26から30の位置のアミノ酸は立体構造上超可変ループに含まれるとされており(チョチアおよびレスク、J.Mol.Biol.、196:901−917(1987))、その意味ではCDRと同様に移植することも可能である。
ヒト化抗体は、ヒトの治療における使用のために、マウスに比べ、そしていくつかの場合にはキメラ抗体に比べ、少なくとも3つの潜在的な利点を有する。
1)エフェクター部分がヒトであるので、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用しうる(例えば、補体依存性細胞障害(CDC)又は抗体依存性細胞障害(ADCC)による、より効率的な標的細胞の破壊)。
2)ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク又はC領域を異物として認識せず、従って、このような注入された抗体に対する抗体応答は、全部が異物であるマウス抗体又は一部分が異物であるキメラ抗体より少ない。
3)注入されたマウス抗体は、通常の抗体の半減期よりも非常に短い、ヒト体内での循環における半減期を有すると報告されている(ショー、D.ら、J.Immunol.138:4534−4538(1987))。注入されたヒト化抗体は、恐らく、自然に生じるヒト抗体の半減期とより近い半減期を有し、より少量、又はより少ない頻度の投与量を与えることを可能とする。
本発明の抗Fasリガンド抗体には、Fas抗原とFasリガンドの結合に影響する物およびしない物が含まれる。本発明(1)の抗Fasリガンド抗体のように、Fasリガンドに結合し、かつアポトーシスを誘導しない場合には、生体内のFasリガンドに拮抗する物質として、アポトーシスを人為的に抑制するために使用することができる。また、本発明の抗Fasリガンド抗体は以下に示すFasリガンドの測定方法のために、ならびに該測定方法のための試薬およびキットの構成成分として、使用される。
また、本発明は以下の測定方法、測定試薬及び測定キットを提供する。すなわち、
(3)抗Fasリガンド抗体を用いたヒト体液中のFasリガンドの測定方法、測定試薬及び測定キットであって、
▲1▼(1)または(2)の何れかに記載の抗体のうちの少なくとも1つを用いる、または含有することを特徴とするFasリガンドの測定方法、測定試薬及び測定キット。
▲2▼競合法による▲1▼記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲3▼サンドイッチ法による▲1▼記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲4▼同一または異なる2種類以上の中和抗体を組み合わせて用いる、または含有する▲1▼−▲3▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲5▼同一または異なる2種類以上の(2)記載の抗体を組み合わせて用いる、または含有する▲1▼−▲3▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲6▼中和抗体および(2)記載の抗体を組み合わせて用いる、または含有する▲1▼−▲3▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲7▼前記中和抗体が受託番号BP−5535のハイブリドーマの産生するF919−9−18である▲6▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲8▼前記(2)記載の抗体が配列表の配列番号1のペプチドに特異的に反応する抗体である▲6▼または▲7▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲9▼前記(2)の抗体が配列表の配列番号1のアミノ酸番号11−20のペプチドに特異的に反応する抗体である▲8▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
▲10▼前記(2)の抗体が、F918−9−4またはF918−20−2である▲8▼または▲9▼に記載の方法、測定試薬及び測定キット。
上記▲1▼から▲10▼に記載の方法、測定試薬及び測定キットにおいて、1又は2種以上の他の抗Fasリガンド抗体を併用してもよい。
中和抗体、特に本発明の中和抗体は、Fasリガンドの生物活性に重要なFasリガンド上の構造またはエピトープを認識していると考えられるので、中和抗体を用いた本発明の測定方法は、検体特にヒト体液中のFasリガンド、特に生物活性を有するFasリガンドを高感度に測定することができる。また、該方法は検体中のFasリガンドの生物活性を試験する方法として生物試験法(バイオアッセイ)の代替法としても使用可能である。前述のようにFasリガンドは生理的には3量体として存在または機能することが示唆されており、実施例で記載されるように同一の抗体同士の組み合わせにおいてもサンドイッチ法による測定が可能である。
また、本発明(2)の抗体は、Fasリガンドと特異的に反応し、また、その反応するペプチド部分が特定されているため、本発明(2)の抗体を用いた測定方法は、検体特にヒト体液中のFasリガンドを高感度に測定することができる。また、1種類または複数の特定のFasリガンドを選択的に測定することも可能である。
また、中和抗体、特に本発明の中和抗体と本発明(2)の抗体とを組み合わせることにより、生物活性を有する1種類または複数の特定のFasリガンドを選択的に測定することも可能である。
さらに、複数の本発明の測定方法で同一の検体を同時に測定することによりFasリガンドの全量および特定のFasリガンドの量ならびにそれらの量比を測定することも可能であり、例えば、特定の疾患または病態におけるFasリガンドの量的変化のみでなく、質的変化をも測定することが可能である。
本発明の測定方法の対象試料は必ずしも体液に限定されないが、本方法は体液、特にヒト体液中のFasリガンドを測定するために特に適している。体液としては例えば、好ましくは、血液、血漿、血清、尿、髄液、リンパ液、唾液、腹水、胸水より選ばれる試料である。
本発明の抗体が認識する抗原であるFasリガンドおよび本発明の測定方法で検出されるFasリガンドは、実施例に示すように、それが、Fas抗原に結合するかしないかに関わらず、また、アポトーシスを誘導するかしないかに関わらず、Fasリガンド、特にヒトFasリガンド由来のものであれば、生体内の内在性Fasリガンドならびに外因性のFasリガンドの何れでもよく、それらは天然物から由来したもの、遺伝子工学的に作製したもの、または化学的に合成したもの等、何れもが該当する。糖鎖を有するもの、有さないものいずれもが含まれる。例えば、Fasリガンド発現細胞、Fasリガンド、Fasリガンド細胞外領域、遊離型FasリガンドまたはFasリガンド由来ペプチド断片、あるいはFasリガンドの1アミノ酸以上を欠失もしくは置換された欠失体及び置換体ならびに少なくともFasリガンドの一部を有する融合蛋白質等が含まれる。
本発明の測定方法を用いて健常人及び種々の疾患を有する患者の体液中のFasリガンドを測定することができる。また、本発明により初めて体液中のFasリガンド濃度が明らかとなった。例えば、肝炎、HIV感染症または自己免疫疾患では健常人より高値を示し、これらの疾患の診断に応用できる。さらにFasリガンドによるアポトーシスに影響を与えない抗Fasリガンド抗体は、体内診断にも応用可能である。
さらに本発明は以下の方法、測定試薬および測定キットを提供する。
(4)抗Fasリガンド抗体を用いる、または含有する体液中のFasリガンドの測定方法、測定試薬および測定キットであって、
▲1▼Fasリガンドの増加、減少および/またはFas抗原/Fasリガンド系の異常の予知、検出、およびそれらを伴う疾患および該疾患に付随する病態の予知、検出または診断のために使用される体液中のFasリガンドの測定方法、測定試薬および測定キット。
▲2▼Fas抗原/Fasリガンド系の異常を伴う疾患においてFas抗原/Fasリガンド系の異常に起因した全身または局所における病態を検出するための方法、測定試薬および測定キット。
▲3▼(3)記載の測定方法による▲1▼または▲2▼に記載の方法、測定試薬および測定キット。
▲4▼該疾患が自己免疫疾患、肝炎またはHIV感染症である▲1▼−▲3▼に記載の方法、測定試薬および測定キット。
さらに本発明は以下のハイブリドーマまたは細胞株を提供する。
(5)抗Fasリガンド抗体を産生するハイブリドーマまたは細胞株。
▲1▼(1)および(2)に記載の抗体を産生するハイブリドーマまたは細胞株。
▲2▼受託番号がFERM BP−5533、FERM BP−5534またはFERM BP−5535であるハイブリドーマ(本明細書では、各々F918−7−3、F918−9−4、F919−9−18と表示、いずれも平成7年6月22日に日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に原寄託され、平成8年5月9日にブタペスト条約に基づき移管)。
本発明は、前記した本発明の抗Fasリガンド抗体の少なくともいずれかひとつを活性成分または有効成分として含有する新規組成物または医薬を、ならびに、Fas抗原/Fasリガンド系の異常もしくはFas抗原を介するアポトーシスの異常を伴う、該異常により引き起こされるまたは該異常の関与する、全身性または局所性の病的状態または疾患を処置するための方法を提供する。該方法は、本発明の抗Fasリガンド抗体、特にFas抗原発現細胞のFasリガンドによるアポトーシスを抑制する抗Fasリガンド抗体の少なくともいずれか一つの治療有効量を患者に投与する工程を含む。
以下に、本発明の抗Fasリガンド抗体の取得方法等についてさらに説明する。
本発明の抗Fasリガンド抗体を作製するための抗原としては、実施例に示すように、それが、Fas抗原に結合するかしないかに関わらず、また、アポトーシスを誘導するかしないかに関わらず、Fasリガンド、特にヒトFasリガンド由来のペプチドを含むものであれば、天然物から由来したもの、遺伝子工学的に作製したもの、または化学的に合成したもの等、何れも本発明の抗体を作製するための抗原として使用することができる。糖鎖を有するもの、有さないものいずれもが含まれる。例えば、Fasリガンド発現細胞、Fasリガンド全長、Fasリガンド細胞外領域、遊離型FasリガンドまたはFasリガンド由来部分ペプチド断片、あるいはFasリガンドの1アミノ酸以上が欠失もしくは置換された欠失体及び置換体ならびに少なくともFasリガンドの一部を有する融合蛋白質等が含まれる。
本発明の抗Fasリガンド抗体は、それがポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であっても、公知方法を参考にして得ることができる(例えば、免疫実験操作法、日本免疫学会編、日本免疫学会発行、参照)。以下に簡単に説明する。
当該抗Fasリガンド抗体を得るには、まず動物に、免疫抗原としてFasリガンドまたはその部分ペプチドを必要に応じてフロイントの完全アジュバント(FCA)や不完全アジュバント(FIA)等の適切なアジュバントとともに接種し、必要があれば2〜4週間の間隔で追加免疫する。追加免疫後、採血を行い抗血清を得る。抗原として用いるFasリガンドは、それが抗体の作製に使用しうる精製度のものであればいかなる方法で得られたものであってもよい。
免疫抗原として使用するポリペプチドが、低分子のポリペプチド、すなわち約10〜20アミノ酸からなるポリペプチドである場合には、それをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のキャリアと結合させて抗原として使用すればよい。Fasリガンドで免疫する動物はいかなるものであっても良いが、好ましくは通常当業者で免疫学的な実験に使用されるラット、マウス、ウサギ、ハムスター、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウシ等から、目的の抗体を産生しうる動物種を選択して使用することが好ましい。
ポリクローナル抗体は、得られた抗血清を精製することによって得る事が出来る。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて行えば良い。
モノクローナル抗体を得るには以下のように行う。すなわち、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、ポリエチレングリコール、センダイウイルス、電気パルス等を用いる方法によって、ミエローマ細胞株等と融合し、ハイブリドーマを作製する。その後、Fasリガンドに結合する抗体を産生しているクローンを選択して培養し、その選択されたクローンの培養上清を精製するごとによって得る。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の方法を組み合わせて行う。
また、遺伝子工学的な方法により当該抗Fasリガンド抗体を得る。例えば、Fasリガンドまたはその部分ペプチドで免疫した動物の脾細胞、リンパ球あるいは、Fasリガンドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを採取し、これをもとにcDNAライブラリーを作成する。抗原と反応する抗体を産生しているクローンをスクリーニングし、得られたクローンを培養し、培養混合物から目的とする抗体を公知方法を組み合わせて精製する。
本発明の、結合性フラグメント及びそれらの他の誘導体を含む免疫グロブリンは種々の組み換えDNA技術により製造されることができ、トランスフェクションされた細胞、好ましくは不死化された真核細胞、例えばミエローマ又はハイブリドーマ細胞中で最終的に発現されうる。ヒト化免疫グロブリンフレームワーク領域をコードする第一配列、及び所望の免疫グロブリン相補性決定領域をコードする第二配列セットを含むポリヌクレオチドが、合成的に又は適当なcDNAとゲノムDNAセグメントを組み合わせることによって製造されうる。
一の態様においては、本発明は、Fasリガンドの所望のエピトープに結合できる免疫グロブリン、好ましくは本発明(1)の抗体、例えばモノクローナル抗体マウスF919−9−18からの重鎖及び/又は軽鎖CDRをエンコードする組み換えDNAセグメントに向けられている。これらの領域をエンコードするDNAセグメントは、典型的には、適当なヒトフレームワーク領域をエンコードするDNAセグメントに連結される。好例としてのDNA配列(これらは、発現すると、モノクローナル抗体マウスF919−9−18の重鎖及び軽鎖CDRを含むポリペプチド鎖をコードする)は、図12および13に含まれる。コドン縮重及び重要でないアミノ酸置換のため、以下に詳述する如く、他のDNA配列が容易にそれらの配列の代わりに用いられうる。ヒト化免疫グロブリンのデザイン及び製造の詳細な記載のためには、国際特許出願公開公報WO/07861が参照される。
DNAセグメントは、典型的には、更に、ヒト化免疫グロブリンコーディング配列に作動可能に連結された発現制御DNA配列を含み、自然に随伴されている又は異種のプロモーター領域を含む。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションできるベクター中の真核生物のプロモーター系であるが、原核生物宿主のための制御配列もまた用いられ得る。ベクターがいったん適当な宿主中に組み入れられると、宿主はヌクレオチド配列の高レベルでの発現に適した条件下で維持され、そして所望により、軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖ダイマー又は完全な抗体、結合フラグメント又は他の免疫グロブリン形態の収集及び精製が引き続き行われうる。
所望のヒト化抗体を最終的に発現できる本発明の核酸配列は、種々の異なったポリヌクレオチド(ゲノムDNA又はcDNA、RNA、合成オリゴヌクレオチド等)及び構成成分(例えば、V、J、D及びC領域)から、並びに種々の異なった技術により形成されうる。適当なゲノム配列と合成配列を連結することは、現在、製造の最も普通の方法であるが、cDNA配列もまた利用されうる(ヨーロッパ特許第0239400号公報及びリーチマン、L.ら、ネーチャー332:323−327(1988)、これらの引例は共に、本明細書の一部と成す、参照)。
ヒト定常領域DNA配列は、良く知られた方法に従って、種々のヒト細胞、好ましくは不死化されたB細胞から単離されうる(カバット、前掲、及びWO87/02671参照)。本発明の免疫グロブリンを製造するためのCDRは、同様に、Fasリガンドに結合できるモノクローナル抗体から由来し、そしていずれかの便利な哺乳動物源(マウス、ラット、ウサギ又は良く知られた方法によって抗体を生産できる他の脊椎動物を含む)中で生産される。DNA配列のための適したソース細胞、及び免疫グロブリン発現及び分泌のための適した宿主細胞は、多くのソース、例えばアメリカン タイプ カルチャー コレクション(セルライン及びハイブリドーマのカタログ、第5版(1985)、ロックビル、MD、)から得ることができる。好ましい実施態様において、CDRは、それぞれ、マウスF919−9−18のCDR配列に対応する配列を有し、そしてマウスF919−9−18の対応するCDRアミノ酸配列がコードされる同義性のヌクレオチド配列を含みうる。
本明細書に詳細に記したヒト化免疫グロブリンに加えて、他の「実質的に相同な」修飾された免疫グロブリンが、本技術分野の熟練者に良く知られた種々の組み換えDNA技術を利用して容易にデザインされそして製造されうる。例えば、種々の異なるヒトフレームワーク領域が、本発明のヒト化免疫グロブリンのための基礎として、単独でまたは組み合わせて使用することができる。さらに、フレームワーク領域は、いくつかのアミノ酸の置換、末端及び中間での付加や欠失等によって、その1次構造レベルにて天然の配列から変化させることができる。もちろん、フレームワーク中のアミノ酸の多くは、抗体の特異性又は親和性に対しては、殆ど或いは全く、直接には寄与しない。従って、フレームワークアミノ酸残基の多くの個々の同類置換は、得られたヒト化免疫グロブリンの特異性又は親和性を感知できるほど変えることなしに許容され得る。しかしながら、一般的にこのような置換は望ましくない。遺伝子の修飾は、種々の良く知られた技術、例えば、特定部位の突然変異誘発(ギルマン アンド スミス、Gene 8:81−97(1979)及びロバーツら、ネーチャー328:731−734(1987)参照)によって、容易に達成されうる。
或いは、一次の抗体構造の部分のみを含むポリペプチドフラグメントを製造することができ、該フラグメントは1又はそれ以上の免疫グロブリン活性(例えば、結合活性)を有する。これらのポリペプチドフラグメントは、本技術分野にて良く知られた方法によって完全な抗体を蛋白質分解することにより、又は、特定部位の突然変異誘発を用いて停止コドンをベクターpVk及びpVg1−dhfrの所望の位置、例えばFabフラグメントを製造するためにCH1の後に、又はF(ab’)2フラグメントを製造するためにヒンジ領域の後に挿入することにより製造されうる。一本鎖抗体は、DNAリンカーを用いてVL及びVHを連結することにより製造されうる(ヒューストンら、前掲、及びバードら、前掲、参照)。一つの例として、Fv又はFabフラグメントが、ブフナー アンド ルドルフ(Bio/Technology 9:157−162(1991))及びスケラら(Bio/Technology 9:273−277(1991)の方法(これらの引例をもって本明細書の一部と成す)に従って、E.coli中で製造されうる。Fv及びFabはまた、真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞中で、コードしているポリヌクレオチドを発現することにより製造されうる。また、多くの遺伝子と同様に、免疫グロブリン関連遺伝子は分離された機能的領域を含み、それぞれが1以上の別個の生物学的活性を有しているので、遺伝子は、新規な性質を有している融合蛋白質(例えば、イムノトキシン)を製造するために、他の遺伝子からの機能的領域(例えば、酵素、共通の譲渡人を有する米国特許シリアル番号第132,387号明細書(1987年12月15日出願)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照)に融合されうる。
バクテリア宿主中でのヒト化免疫グロブリン配列の発現は、CDR領域を突然変異誘発し、かつFasリガンドに対する高い親和性及び/又は高い特異的結合性を有するヒト化免疫グロブリンCDR変異型のためにスクリーニングされることができるバクテリオファージ表現(display)ライブラリーを製造することにより、より高い親和性のヒト化免疫グロブリン配列を選択するために有利に用いられ得る。このような鋭敏な親和性の潜在的な利点は、Fasリガンド以外の分子との結合親和性が改善された及び/又は交叉反応が減少されたヒト化免疫グロブリンCDR変異型の製造である。免疫グロブリン可変領域配列を有するファージディスプレイライブラリーを製造するための方法は、本技術分野において提供されており、例えば、セサリーニ、FEBS Lett 307:66−70(1992);スイマーら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3756−60(1992);グラムら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576−80(1992);クラックソンら、ネーチャー 352:624−8(1991);スコット アンド スミス、サイエンス 249:386−90(1990)、ガラードら、Bio/Techniques 9:1373−1377(1991)(これらの引例をもって本明細書の一部と成す)が参照される。得られた親和性が鋭敏化されたCDR変異型ヒト化免疫グロブリン配列は、次いで、効率的な発現に適した宿主中で発現される。
既に記したように、DNA配列は、配列を発現制御配列に作動可能に連結(即ち、発現制御配列が機能することを保証するように配置)した後に、宿主中で発現される。これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとして或いは宿主染色体DNAの肝要な部分として宿主中で複製可能である。通常、発現ベクターは、選択マーカー、例えばテトラサイクリン耐性(tetR)、G418耐性(neoR)、ミコフェノール酸耐性(gpt)又はHSV−tkを含み、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能とする(例えば、米国特許第4,704,362号明細書、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照)。
E.coliは、本発明のDNA配列をクローニングするために特に有用な一つの原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主は、バチルス、例えば枯草菌、及び他の腸内細菌科、例えばサルモネラ、セラチア、及び種々のシュードモナス種を含む。これらの原核生物宿主において、また発現ベクターを作ることもでき、該ベクターは、典型的には、宿主細胞と適合した発現制御配列(例えば、複製起点)を含む。更に、任意の数の種々の良く知られたプロモーター、例えば、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、又はλファージからのプロモーター系が存在してもよい。プロモーターは、典型的には(場合によりオペレーター配列と共に)発現を調節し、そして、転写及び翻訳を開始し、完成させるためのリボソーム結合部位配列等を有する。
他の微生物、例えば酵母もまた発現のために用いられ得る。サッカロミセスは、発現制御配列、例えば、3−ホスホグリセレートキナーゼ又は他の解糖酵素を含むプロモーター、及び複製起点、末端配列、及び所望の類似のものを有する適当なベクターを伴った好ましい宿主である。
植物又は植物細胞培養物が、本発明のヒト化免疫グロブリンの発現のために用いられ得る(ラリック アンド フライ、Hum.Antibodies Hybridomas 2(4):172−89(1991);ベンヴェヌトら、Plant Mol.Biol.17(4):865−74(1991);デューリンら、Plant Mol.Biol.15(2):281−93(1990);ハイアットら、ネーチャー342:76−8(1989)、これらの引例をもって本明細書の一部と成す)。好ましい植物宿主は、例えば、アラビドプシス(Arabidopsis)、ニコチアナ タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ ルスチカ(Nicotiana rustica)及びソラヌム ツベロズム(Solanum tuberosum)を含む。本発明のヒト化抗Fasリガンド抗体がコードされるポリヌクレオチド配列を発現するための好ましい発現カセットは、その中で、ヒト化免疫グロブリン鎖をエンコードする挿入されたポリヌクレオチド配列が重複したエンハンサーとともにCaMV35Sプロモーターに作動可能に連結されているところのプラスミドpMOG18である。pMOG18は、シーモンズら、Bio/Technology 8:217−221(1990)(この引例をもって本明細書の一部と成す)の方法に従って用いられる。或いは、植物中でのヒト化免疫グロブリンの発現のための好ましい実施態様は、ハイアットらの方法(前掲)に従う。但し、本発明のヒト化抗Fasリガンド抗体がコードされるポリヌクレオチド配列を、ハイアットら(前掲)によって用いられた免疫グロブリン配列に代えて用いる。アグロバクテリウム ツミファシエンスのT−DNAに基づいたベクターもまた、ヒト化免疫グロブリン配列を発現するために用いられることができ、好ましくは、このようなベクターは、スペクチノマイシン耐性又は他の選択性マーカーがコードされるマーカー遺伝子を含む。
昆虫細胞培養物もまた、本発明のヒト化免疫グロブリンを製造するために用いられることができ、代表的には、バキュロウイルスに基づいた発現系が用いられる。ヒト化免疫グロブリンは、プトリッツら、Bio/Technology 8:651−654(1990)の方法(本引例をもって本明細書の一部と成す)に従って、ヒト化免疫グロブリンがコードされるポリヌクレオチド配列を発現することにより製造されうる。プトリッツらの方法に、本発明のヒト化抗Fasリガンド抗体をエンコードするポリヌクレオチド配列をプトリッツらのマウスモノクローナルAb 6A4重鎖及び軽鎖cDNA配列の代わりに挿入するという変更を加えることができる。
微生物及び植物に加えて、哺乳動物細胞培養物もまた、本発明のポリペプチドを発現し、製造するために用いられ得る[ウイナッカー、遺伝子からクローンへ(VCHパブリッシャーズ、N.Y.、1987)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照]。哺乳動物細胞は、実際に好ましい。なぜなら、完全な免疫グロブリンを分泌できる多くの適した宿主セルラインが本技術分野で開発されており、それらは、CHOセルライン、種々のCOSセルライン、HeLa細胞、好ましくはミエローマセルライン等、又は形質転換されたB細胞又はハイーブリドーマを含む。これらの細胞の発現ベクターは、発現制御配列、例えば、複製起点、プロモーター、エンハンサー(クイーンら、Immunol.Rev.89:49−68(1986)、本引例をもって本明細書の一部と成す)、及び必要なプロセッシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列を含む。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等から由来のプロモーターである。一般に、選択性マーカー、例えばneoR発現カセットは、発現ベクター中に含まれる。
本発明のヒト化免疫グロブリンがコードされるトランスジーンは、所望のヒト化免疫グロブリンを、典型的には、回収可能な体液、例えばミルク又は血清中に発現するトランスジェニック非ヒト動物を製造するために用いられ得る。このようなトランスジーンは、通常は連結されたエンハンサー、例えば齧歯類の免疫グロブリンエンハンサー又はカゼイン遺伝子プロモーター/エンハンサー(ブーラーら、Bio/Technology 8:140−143(1990);メアデら、Bio/Technology 8:443−446(1990)、これらの引例をもって本明細書の一部と成す)と共に、プロモーターに作動可能に連結されたヒト化免疫グロブリンがコードされるポリヌクレオチド配列を含む。トランスジーンは、本技術分野で示されそして以下に記載された方法に従って、相同な組み換え構築物のために細胞及び胚中に移入されうる。好ましい非ヒト動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ及びヤギを含み、ウシミルク中での発現が特に好ましい(WO91/08216(1991)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照)。ヒト化抗体の精製は、免疫グロブリン精製のための本技術分野で公知の精製方法により達成される。目的のDNAセグメント(例えば、重鎖及び軽鎖がコードされる配列及び発現制御配列)を含むベクターは、宿主細胞のタイプに応じて変更を加えた良く知られた方法により宿主細胞中に移入されうる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、通常、原核生物細胞のために利用され、一方、リン酸カルシウム処理、リポフェクション、バイオリスティックス(biolistics)、ウイルスに基づいたトランスダクション、又はエレクトロポレーションが他の細胞宿主のために用いられ得る。タングステン粒子バリスティックトランスジェネシスは、植物細胞及び組織のために好ましい[一般に、マニアティスら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(コールド スプリング ハーバー プレス、1982)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照]。
いったん発現されれば、本発明の、完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖及び重鎖、または免疫グロブリンの他の形態は、本技術分野の標準方法に従って精製されることができ、該方法は、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む[一般に、スコープス、R.、蛋白質精製(スプリンガー−フェルラーク、N.Y.、1982)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照]。薬学的用途のためには、少なくとも約90〜95%の均質性の実質上純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%或いはそれ以上の均質性が最も好ましい。いったん部分的に又は所望の均質性まで精製されると、その後、ポリペプチドは、治療用に(体外用途を含む)、又は検定方法、例えば免疫蛍光染色等の開発及び実行において用いられ得る。一般に、免疫学的方法、第I及びII巻(ルフコビッツ アンド ペルニス編、アカデミック プレス、NY、1979及び1981)を参照することができる。
本発明の他の一つの態様において、モニター上に抗体の3次元イメージを示すコンピュータープログラムが提供される。例えば、UNIXオペレーティングシステム下で動き、分子モデリングパッケージQUANTA(Polygen Corp.USA)を用いるシリコングラフィックスIRIS 4Dワークステーションが適している。コンピューターは、ヒト化抗体の変異体を作るのに有用である。一般に、本発明の抗体は既に、満足のいく結合親和性を提供している。しかしながら、なお強い結合親和性をもった抗体を、あるアミノ酸残基の更なる変更により同定できると見込まれる。3次元イメージはまた多くの重要でないアミノ酸を同定し、該アミノ酸は、抗体の結合親和性に検出されるほど影響しない同類置換の対象となりうる。全体的に、同類置換でさえ免疫グロブリンの特性に著しく影響するかもしれない。しかしながら、多くの個々の同類置換は、免疫グロブリンの特性を著しく損なうことはないようである。
本発明の他の一つの態様において、Fasリガンドに対するヒト抗体が提供される。これらの抗体は、下記する種々の技術により製造される。例えば、インビトロ免疫化法、トリオーマ方法論(オストベルグら、Hybridoma 2:361−367(1983);オストベルグ、米国特許第4,634,664号明細書;及びエングルマンら、米国特許第4,634,666)、およびヒト抗体遺伝子トランスジェニック非ヒト動物[ロンベルグら、WO93/12227(1993);クッヒェルラパティー、WO91/10741(1991)]、などが応用でき、これらと慣用のケーラー−ミルステイン法を組み合わせて用いることによりヒトモノクローナル抗体が調製される。
また、ヒュースら、サイエンス、246:1275−1281(1989)によって概説されている通常のプロトコルに従ってヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることである。Fasリガンド又はそのフラグメントに結合する抗体が選択される。次いで、このような抗体(又は結合性フラグメント)がコードされる配列がクローン化され、増幅される。ヒュースによって記載されたプロトコルは、ファージ表現技術と組み合わせると更に効率的に変わる。例えば、ドワーら、WO91/17271及びマッカフェルティら、WO92/01047(これらの引例をもって、それぞれ本明細書の一部と成す)が参照される。これらの方法において、メンバーが、それらの外表面上に種々の抗体を発現するところのファージライブラリーが製造される。抗体は、通常、Fv又はFabフラグメントとして表現される。所望の特異性を有する抗体を発現するファージは、Fasリガンドポリペプチド又はそのフラグメントに対する親和性の増大により選択される。
ファージ表現法の変法において、選択されたネズミ抗体の結合特異性を有するヒト抗体が製造されうる(ウインター、WO92/20791参照)。
本発明の抗Fasリガンド抗体は、体液中や組織中に存在するFasリガンドを検出するために使用することができる。また、Fasリガンドを精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中のFasリガンドを検出するために使用することができる。
本発明の抗Fasリガンド抗体には細胞に対するFasリガンドの作用を修飾、例えば促進または抑制するものが含まれる。
Fasリガンドが誘導するアポトーシスを抑制する効果を有する抗体を得るには、前記ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を製造する過程で得られる血清や、ハイブリドーマの培養上清を、FasリガンドもしくはFasリガンドを発現する細胞と、Fas抗原を発現する細胞とを使用したin vitroのアッセイ系等にかけてスクリーニングする。スクリーニングの結果、選別された血清や培養上清から公知方法を組み合わせて目的の抗体を精製する。なお、FasリガンドもしくはFasリガンドを発現する細胞とFas抗原を発現する細胞を利用したスクリーニング方法の好ましい例は、実施例で例示されるが、国際特許出願公開WO95/13293等にも詳述されている。また、特定のFasリガンド、例えば実施例で示されているnd32、nd42またはL179Fの少なくとも1つとの反応性、およびnd42またはcd179の少なくとも1つとの非反応性を指標としてスクリーニングすることも可能である。
本発明の抗体又はそれらの混液を含む組成物は、予防的な及び/又は治療的な処置のために投与されうる。特に、Fasリガンドが誘導するアポトーシスを、高度に抑制することができる本発明の中和抗体は、生体におけるアポトーシスを調節するために使用することができる。たとえば、当該抗体はリウマチにおける関節組織の破壊、全身性エリテマトーデス(SLE)における自己組織の破壊、あるいは糖尿病、インフルエンザ、エイズ、肝炎等の組織や細胞のアポトーシスが関与する疾患の治療薬として使用することができる。
一方、本発明の抗体の中でFasリガンドの作用を促進する抗体は、エイズ感染初期の治療や、リウマチにおける滑膜細胞の異常増殖や自己免疫疾患における自己抗原反応性T細胞の増殖を抑制するため等、生体にとって不要な細胞を除去するために使用できる。
本発明の抗体及びそれらの薬学的組成物は、特に、非経口投与、即ち、皮下、筋肉内又は静脈内投与において有用である。本発明の抗体はまた、典型的には局所適用のために、胃瘻栄養法又は(胃)洗浄、腹腔内注入、眼軟膏剤、局所軟膏剤、頭蓋内注入(典型的には、脳室中に)、心膜内注入、又は内包(intrabursal)注入によって投与されうる。非経口投与のための組成物は、通常、許容される担体、好ましくは水性担体中に溶解された免疫グロブリンの溶液又はそれの混液を含む。種々の水性担体、例えば、水、緩衝水、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒトアルブミン溶液等が用いられ得る。これらの溶液は、無菌であり、そして一般的には微粒子物質が存在しない。これらの組成物は、慣用の、良く知られた滅菌方法により滅菌されうる。組成物は、生理学的条件に近づけるために、要求に応じて、薬学的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝化剤、毒性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムを含みうる。これらの製剤中の抗体の濃度は、広範囲に、即ち、約0.005重量%未満(通常は、少なくとも約1重量%)から15又は20重量%と大きい量まで変化することができ、主として、選択された投与の特定の様式に従って、液容量、粘性等に基づいて選択される。
非経口投与組成物を調製するための現実の方法は、本技術分野の熟練者にとって公知又は明白であり、例えば、レミントンズ ファーマシューティカル サイエンス(第15版、マック パブリッシング カンパニー、イーストン、ペンシルバニア、1980)(本引例をもって本明細書の一部と成す)に更に詳細に記載されている。洗浄(lavage)又はその他のルートのために適した組成物は、意図される特定の使用に従って選択される。いくつかの薬学的組成物は、抗Fasリガンド抗体及びその疾患に於いて常用される他の治療剤を含みうる。いずれの場合も、ボラス投与および持続投与が適用されうる。また、予防的または治療的有効量は、対象疾患、病態および患者の状態等によって適宜決定される。
本発明の抗体は、貯蔵のため凍結又は凍結乾燥され、使用に先だって適当な担体中で再構成されうる。この技術は、慣例の免疫グロブリンにおいて有効であると知られており、公知の、凍結乾燥及び再構成技術が用いられ得る。凍結乾燥及び再構成が、様々な程度の抗体の活性損失をもたらしうる(例えば、慣例の免疫グロブリン、IgM抗体は、IgG抗体よりも大きい活性損失を生じる傾向にある)ということ、及び使用レベルが、それを補うために調節されなけらばならないかもしれないということは、当業者にとって認識されることである。
本発明の好ましい薬学的組成物は、Fasリガンド発現細胞へ特定の薬剤等を送達するためのデリバリーシステムとしての、特に、Fasリガンド発現細胞を殺すための、イムノトキシン中での本発明の主体である免疫グロブリンの使用を含む。イムノトキシンは、2つの構成成分によって特徴づけられ、特に、インビトロ又はインビボで選択された細胞を殺すのに有用である。一つの構成成分は、細胞障害剤であり、それは、通常、付着された又は吸収されたときに細胞に対して致死的である。第二の構成成分は、「デリバリービヒクル」として知られており、特定の細胞タイプ、例えばFasリガンドエピトープを発現している細胞に、毒性の薬剤をデリバリーする手段を提供する。2つの構成成分は、通常、種々の良く知られた化学的方法のいずれかにより、互いに化学的に結合されている。例えば、細胞障害剤が蛋白質でありかつ第二の構成成分が完全な免疫グロブリンである場合は、結合は、ヘテロ二価性の架橋物質、例えば、SPDP、カルボジイミド、グルタルアルデヒド等である。種々のイムノトキシンの製造は、本技術分野で良く知られており、例えば、「モノクローナル抗体−毒素コンジュゲート:不思議な弾丸を狙って」トルペら、Monoclonal Antibodies in Clinical Medicine,アカデミック プレス、第168−190頁(1982)(本引例をもって本明細書の一部と成す)中に見ることができる。構成成分はまた、遺伝子的に連結されうる[チャウダリーら、ネーチャー339:394(1989)、本引例をもって本明細書の一部と成す、参照]。
種々の細胞障害剤が、イムノトキシンでの使用に適している。細胞障害剤は、放射性核種、例えば、ヨウ素−131或いは他のヨウ素のアイソトープ、イットリウム−90、レニウム−188及びビスマス−212或いは他のαエミッター、多くの化学療法剤、例えば、ビンデシン、メソトレキセート、アドリアマイシン及びシスプラチン、及び細胞障害蛋白質、例えば、リボソーム阻害蛋白質様ポークウィード抗ウイルス蛋白質、シュードモナスエキソトキシンA、リシン、ジフテリア毒素、リシンA鎖等、又は細胞表面で活性な薬剤、例えばホスホリパーゼ酵素(例えば、ホスホリパーセC)を含みうる[一般に、共通の譲渡人を有する米国特許出願シリアル番号07/290,968および07/310,252号明細書、「キメラ毒素」オルスネス アンド フィル、Pharmac.There.、25:355−381(1982)、及び癌の検出及び治療のためのモノクローナル抗体(バルドウィンとバイエルズ編、アカデミック プレス、1985)、159−179頁、224−226頁、これら全ての引例をもって本明細書の一部と成す、参照]。
イムノトキシン中のデリバリー成分は、本発明の免疫グロブリンを含む。完全な免疫グロブリン又はそれらの結合性フラグメント、例えば、Fab又はFvが好ましく用いられる。典型的には、イムノトキシン中の抗体は、ヒトIgM又はIgGイソタイプであるが、他の哺乳動物定常領域が、所望により用いられ得る。
Fasリガンド自体を、治療や研究に使用するためには、当該蛋白質を高純度で、大量に生産することが必要になるが、本発明の抗Fasリガンド抗体はFasリガンドの精製に有用である。特に本発明の中和抗体は生物活性を有するFasリガンドと選択的に結合するため治療用の医薬として重要な、活性を保持したFasリガンドを高純度にかつ効率よく精製することができる。
本発明の測定方法は、上記のようにして得た抗体を用いるステップを含むが、該ステップは、対象試料中の被検物質であるFasリガンドと、上記のようにして得た抗体との抗原抗体反応による、対象試料中の被検物質をトラップする工程であることが好ましい。
本発明の測定方法における被検物質の検出原理は特に限定されないが、凝集法、サンドイッチ法、固相直接法または固相結合法、競合法等が例示される。この内、サンドイッチ法及び競合法が好ましく、特にサンドイッチ法が好ましい。
凝集法では、抗体を粒子、例えばラテックス粒子や赤血球(例えば羊赤血球)の表面に結合させて、Fasリガンドが存在すると粒子の凝集が生じるようにし、この粒子の凝集の程度を指標としてFasリガンドを測定する。
なお、この凝集法では、ラテックスや赤血球以外にも、ゼラチンやマイクロビーズ、カーボン粒子等、一般に用いられている粒子を使用することができる。
また、サンドイッチ法、固相直接法または固相結合法、競合法では、標識された抗体や抗原を使用し、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ケミルミネッセンスイムノアッセイ(化学発光免疫測定法)、フルオロイムノアッセイ(蛍光免疫測定法)、時間分解蛍光免疫測定法(TR−FIA)、イムノクロマトグラフィーアッセイ(ICA)等の原理で測定を行なうことができる。
以下に、本発明の測定方法の好適例の1つである、EIAの原理に基づく、サンドイッチ法、固相直接法、競合法を説明する。
EIAによるサンドイッチ法では、まず、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等の酵素で標識した、Fasリガンドを認識する抗体または2次抗体を準備する。特にポリペルオキシダーゼ標識した抗体は好ましい例である。また、使用する固相には、Fasリガンドを認識する抗体を吸着させておく。サンプル(試料)もしくはスタンダードを添加後、上述の酵素標識抗体を添加し、抗原抗体反応を行なわしめる。過剰の酵素標識抗体を洗浄操作で除去した後、使用する酵素に応じた発色基質、例えばオルトフェニレンジアミンとH2O2、p−ニトロフェニルリン酸、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド等を加えて酵素と反応させる。基質の発色は、酵素量、ひいてはサンプル中のFasリガンドに依存するので、発色最終産物の量を測定することによりFasリガンドを定量することができる。
固相直接法では、サンプル(試料)を直接固相に吸着させ、固相のFasリガンド非吸着面を、その測定系には影響しないタンパク質、例えばBSA(ウシ血清アルブミン)などでブロッキング処理し、次いでFasリガンドを認識する酵素標識抗体を添加し、反応させる。以降は、サンドイッチ法と同様の操作を行ない、サンプル中のFasリガンドの有無を判定するか定量を行う。
競合法では、使用する抗体が認識する一定量のFasリガンドを直接固相に吸着させ、次いでブロッキング処理した後、ここに、Fasリガンドを認識する酵素標識抗体とサンプル(試料)とを添加する。一定時間反応させた後、洗浄して固相に非結合の物質を除去し、発色基質を加えて酵素と反応させる。反応後、サンプル添加による、酵素標識抗体の固相Fasリガンドへの結合阻害度を測定することにより、サンプル中のFasリガンドを定量する。
なお、はじめに抗体を固相に吸着させ、酵素標識したFasリガンドをサンプルと同時に添加し、サンプル添加による標識物の固相化抗体への結合阻害度を測定することにより、サンプル中のFasリガンドを定量してもよい。
上記以外の方法として、抗原抗体反応を液相中で行ない、後に、抗体を用いた凝集沈降法もしくは物理化学的な手法によって、標識抗体と結合したFasリガンドと結合しなかったFasリガンドを分離し定量する方法もある。また、Fasリガンドを認識する抗体を標識するのではなく、その抗体を認識する二次抗体を得、それを標識し、抗原抗体反応を行なわせて、Fasリガンドを測定することも可能である。
サンドイッチ法、固相直接法、競合法のいずれにおいても、標識酵素−発色基質の組合せを、標識酵素−生物発光基質または化学発光基質、標識酵素−蛍光基質等の組合せに変えることが可能である。この場合の、酵素−発光基質の代表的な組合せは、アルカリフォスファターゼ−AMPPD、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−ルミノール、ルシフェラーゼ−ルシフェリン等があり、酵素−蛍光基質の代表的な組合せは、アルカリフォスファターゼ−ウンベリフェリルフォスフェート、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−p−ハイドロキシフェニルプロピオン酸等がある。
さらに、上記3種の測定方法において、酵素に代わって、放射性物質や化学発光物質あるいは蛍光物質で直接あるいは間接的に標識された抗体や抗原を用い、放射能や発光、蛍光の強度を測定することにより、サンプル中のFasリガンドを測定することも可能である。
放射性物質としては、125Iや131I等が一般に使用されており、化学発光物質の代表的な物には、アクリジニウムエステル等がある。また、蛍光強度を測定する場合には、より高感度な方法として、抗体あるいは抗原にキレート剤を直接あるいは間接的に結合させ、励起光照射後にそのキレート剤に結合する希土類金属から発せられる蛍光の強度を時間分解的に測定することにより、試料中のFasリガンドを測定する方法(時間分解蛍光免疫測定法)も有用である。なお、代表的な希土類金属の例として、ユーロピウムがあげられる。
本発明の測定方法は、以上説明したように、試料中のFasリガンドを検出または測定することを目的としている。この場合、対象試料は動物、特にヒトの体液あるいは、組織、細胞および菌体ならびにそれらの抽出液、培養上清、塗末標本および切片があげられるが、体液であることが好ましい。より好ましくは、血液、血漿、血清、尿、髄液、リンパ液、唾液、腹水、胸水より選ばれる試料である。
本発明の測定方法を用いて健常人及び種々の疾患を有する患者の体液中のFasリガンドを測定することができる。また、初めて体液中のFasリガンド濃度が明らかとなり、特定の疾患においてFasリガンド濃度が変動することも明らかとなった。
なお、本発明の測定試薬及びキットは、上記した測定方法の構成等に準拠することができる。
実施例
以下に、実施例をもって本発明を一層具体的に説明するが、これらは一例として示すものであり、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
また、以下の記載において用いる略号は、当該分野における慣用略号に基づくものである。
なお、以下に示す実施例中の諸操作は、主にサムブルック等編〔モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版〕コールドスプリングハーバーラボラトリー,1989年;今本文男等編〔組換え遺伝子の細胞への導入と発現〕蛋白質核酸酵素臨時増刊28(14)1983年;岡田善雄監修〔細胞工学的技術総集編〕実験医学臨時増刊7(13)1989年等を参考として実施した。
1.抗Fasリガンドペプチド抗体の作製
1−1抗原ペプチドの選択
図1に示すように、配列表の配列番号9のFasリガンド細胞外領域中に想定しうるエピトープの解析を行った。Fasリガンド細胞外領域のアミノ酸配列と相同性が高いタンパク質を、生体高分子立体構造のデータベースであるPROTEIN DATA BANK(PDB)から、BIOSYM社製、Homologyモジュール中のFASTAプログラムによって検索した。その結果、TNF−α(PDB−1D 1TNFおよび2TUN)が、全体構造的に相同性の高いことが判明した。そこで、これらのTNF−α立体構造を参照タンパク質として、Fasリガンド細胞外領域のモデリングを行った。モデル構造構築において基盤構造とする構造保存領域の抽出は、TNF−α各単量体構造をα炭素によって重ね合わせ、構造上のずれが1オングストローム以内であり、かつX線結晶解析において温度因子が20以下となるような領域に設定した。構造保存領域に結合させる可変領域は、挿入欠失のある場合に限り、PDB中の適当な構造を検索した。構造の構築には、BIOSYM社製、Homologyモジュールを使用した。構築した初期構造の置換の入った側鎖に関して、その配座のグローバルミニマムサーチを行った後、BIOSYM社製の計算ソフトウエアDiscoverを用いて構造最適化計算をかけFasリガンド細胞外領域モデル構造を得た。得られたモデル構造を用いて分子表面に露出している構造領域、TNF−α各単量体構造の重ね合わせにおいて構造のずれが大きい領域、TNF−αの温度因子が大きい領域を抗体に認識されやすいエピトープを含む領域として選択した。次に、モデル構造の二次構造情報などから、それらの領域のペプチドを合成した際にそのペプチドが抗原構造を維持しやすいように考慮して配列表の配列番号1〜8のペプチド8種類のアミノ酸配列を選択した。図1に、選択した8種類のペプチドのアミノ酸配列を示した。合成ペプチドは、キャリアーと結合させるためペプチドのC末端にSH基を持つシステインを導入した。配列表の配列番号1〜8の配列は、このシステインを持たない配列で表している。
1−2抗血清の作製
図1記載のペプチドのアミノ酸配列に基づき、配列表の配列番号1〜8のペプチドを株式会社不二家バイオサイエンス研究所に依頼して合成した。ここで、図1に示すように配列番号1〜8のアミノ酸配列に対応するペプチド番号をM52〜M59として、以下この記載を用いる。また、キャリアーとしてのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)へのマレイミド法による結合およびウサギへの免疫は株式会社免疫生物研究所に依頼した。
1−3抗血清の評価
投与したペプチドに対する抗体価の上昇は株式会社免疫生物研究所において、固相化したペプチドと抗血清との反応性を測定することにより確認した。その結果、投与した8種類のペプチドに対する各々の抗血清は約6000倍〜24000倍の希釈倍率で固相化した対応するペプチドと反応した。
次に、ヒトFasリガンドに対して結合するか否かを確認するため、ウエスタンプロッティングを行った。後述する4−1に記載のFasリガンド細胞外領域を含む培養上清10μlをゲルローディングバッファー(SEPRASOL、Integrated Separation Systems社)と等量混合し37℃で1時間処理した。この溶液2μlを4〜20%のSDS−PAGE(テフコ社)の各ウエルにアプライし、25mAにて室温で約1時間泳動した。泳動終了後、PDVFメンブレン(ミリポア社)に4℃にて200mA、90分の条件で転写した。メンブレンを原液のブロッキング剤(ブロックエース、雪印乳業(株))で室温1時間振とうしブロッキングを行ったのち、各レーンを裁断した。各レーンを0.5%BSAを添加した0.05%Tween20を含む0.076M PBS(pH6.4)(以下、T−PBSと略す)で各々500倍に希釈した各抗血清1mlに浸し、室温にて1時間振とうした。反応終了後、各レーンをT−PBSで2回洗浄し、次に10%ヤギ血清を添加したT−PBSで500倍に希釈したHRPO標識抗ウサギIgs抗体(ダコ社)1mlに浸し、室温にて1時間反応させた。T−PBSで5回洗浄後、ECLシステム(アマーシャム社)で検出した。また、プレートに結合したFasリガンド細胞外領域との反応性をプレートアッセイ(固相直接法)にて確認した。まず、イムノプレート(Maxisorp、Nunc社)に0.076M PBS(pH6.4)(以下、PBSと記す)で0〜25ng/ウエルに希釈した後述の4−1に記載の部分精製Fasリガンド細胞外領域を50μl分注し、45℃で30分間処理しFasリガンド細胞外領域を結合した。イオン交換水で5回洗浄後0.1%BSA/PBSを100μl/ウエル添加し、ブロッキングした。ブロッキング剤を除去後、0.1%BSA/PBSで希釈した抗血清を添加し37℃で1時間反応させた。次に0.005%Tween20を含む0.9%NaClで2回洗浄し、10%ヤギ血清/PBSで1000倍に希釈したHRPO標識抗ウサギIgs抗体(ダコ社)を50μl/ウエル添加し、37℃で1時間反応した。反応終了後、洗浄液で5回、イオン交換水で2回洗浄し、3mg/mlオルトフェニレンジアミンと0.027%過酸化水素を含む0.1Mマッキルベインバッファー(pH5.0)50μlを添加し5分間反応後、1N塩酸50μlで反応を停止し490nmの吸光度を測定した。さらに、Fasリガンドによるアポトーシス誘導活性に与える影響について51Crリリースアッセイ法を用いて検討した。106個のWC8細胞を20μCiの(51Cr)クロム酸ナトリウム(NEN社)を含むRPMI1640培地を用いて37℃で2時間培養し、51Crで標識した。次に51Crで標識した細胞を1×104個含む反応液中に、抗血清を終濃度500倍希釈となるように添加し、さらにCOS−1細胞由来のFasリガンド細胞外領域の培養上清(Fasリガンド細胞外領域濃度約0.9μg/ml相当)を終濃度10%で添加し、37℃で4時間培養後、51Crの遊離を指標にアポトーシス誘導活性を測定した。表1は各抗血清のFasリガンドに対する結合活性とアポトーシス誘導活性への効果を示している。ウエスタンプロッティングではM52およびM57ペプチドを投与し作製した抗血清はFasリガンド細胞外領域と結合した(+)が、他の抗血清は結合しなかった(−)。一方、プレートアッセイでは各抗ペプチド抗血清のうち、M52またはM57ペプチドを投与して得られた抗血清はFasリガンドと強く(++)反応し、M53またはM54ペプチドを投与して得られた抗血清にも反応性(+)が認められた。また、アポトーシス抑制活性はどの抗血清にも認められなかったが、M52ペプチドを投与した抗血清にはFasリガンドのアポトーシス誘導活性を促進する効果が認められた。
1−4抗血清の精製
M52およびM57ペプチドを投与して得られた抗血清5mlを塩析法とイオン交換カラム法により精製した。まず、各血清5mlに等量の0.15M NaClを添加した後、攪拌しながら希釈前の血清と等量の飽和硫安を滴下した。室温で30分間攪拌し、さらに30分間静置した。10000rpmで10分間遠心し、得られた沈殿を0.02M リン酸バッファー(pH6.3)5mlに溶解後、透析した。遠心して不純物を除去した後、同じバッファーで平衡化したDEAEセルロース(DE52、WHATMAN社)10mlを充填したカラムにアプライした。未吸着分画を回収し、さらに50mlのバッファーで洗浄し、未吸着分画と混合した。得られたIgGを含有する溶液をダイアフローPM10メンブレン(アミコン社)を用いて濃縮し、M52およびM57のペプチドを投与して得られたそれぞれの抗血清から精製抗体を得た。タンパク濃度を280nmの吸光度より算出した。
2.抗M52ペプチドモノクローナル抗体の作製
2−1投与抗原の調製およびマウスの免疫
M52ペプチド1.1mgを0.1M リン酸バッファー(pH7.0)110μlに溶解し、マレイミド化KLH(ベーリンガーマンハイム社)1.54mgを蒸留水154μlで溶解した。両者を混合し、室温にて2時間反応させた後、生理食塩水で平衡化したNickカラム(ファルマシア社)で精製し、投与抗原を得た。
調製した投与抗原70μgを生理食塩水で0.1mlに希釈し等量のフロイント完全アジュバント(DIFCO社)と混合し,ddYマウス(5週令、雌)の腹腔に投与した。2週間後、同量をフロイント不完全アジュバント(DIFCO社)と混合し同様に投与した。
2−2抗血清の評価
投与1週間後、眼底より採血し、Fasリガンド細胞外領域との結合を確認した。まず、イムノプレート(Maxisorp、Nunc社)に0.076M PBS(pH6.4)(以下、PBSと略す)で0〜100ng/ウエルに希釈した後述の4−1に記載の部分精製Fasリガンド細胞外領域を50μl分注し、45℃で30分間処理しFasリガンド細胞外領域を結合した。イオン交換水で5回洗浄後0.1%BSA/PBSを100μl/ウエル添加しブロッキングした。ブロッキング剤を除去後、0.1%BSA/PBSで希釈した抗血清を添加し37℃で1時間反応させた。次に0.005%Tween20を含む0.9%NaClで2回洗浄し、10%ウサギ血清/PBSで1000倍に希釈したHRPO標識抗マウスIgs抗体(ダコ社)を50μl/ウエル添加し37℃で1時間反応した。反応終了後、洗浄液で5回、イオン交換水で2回洗浄し、3mg/mlオルトフェニレンジアミンと0.027%過酸化水素を含む0.1M マッキルベインバッファー(pH5.0)50μlを添加し5分間反応後、lN 塩酸50μlで反応を停止し490nmの吸光度を測定した。その結果、M52ペプチドを投与して得られたマウス抗血清はFasリガンド細胞外領域と強い反応性を示した。
2−3モノクローナル抗体の作製
2−1で得られた投与抗原70μgを生理食塩水400μlに希釈し、抗体価の上昇したマウスの尾静脈に投与し、3日後、「単クローン抗体実験操作入門、安東民衛・千葉丈著、講談社サイエンティフィク」記載の方法に従い細胞融合を行った。6日後、培養上清中の抗体を2−2記載の方法によりスクリーニングし、反応性の得られたウエルを「単クローン抗体実験操作入門、安東民衛・千葉丈著、講談社サイエンティフィク」記載の限界希釈法によりクローニングした。クローニング後、再度スクリーニングを行い、Fasリガンドと反応する抗M52ペプチドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ20クローン(F918シリーズ)を得た。後述のF918−4−5(IgG1/λ)、F918−2−4(IgG1/λ)、F918−7−3(IgG1/κ)、F918−9−4(IgG1/λ)、F918−17−1(IgG1/κ)、F918−20−2(IgG1/λ)およびF918−23−1(IgG1/κ)がF918シリーズに含まれる。得られたハイブリドーマのサブクラスはIgM/κ3クローン、IgG1/κ6クローン、IgG1/λ9クローン、IgG2b/λ1クローン、IgG2b/κ1クローンであった。ハイブリドーマを無血清培地(PHFM−II、GibcoBRL社)で培養し、培養上清を60%飽和硫安で塩析後、IgGはプロテイン−Aカラム(PROSEP−A、BIOPROCESSING社)で精製し、精製抗体を得た。蛋白濃度は280nmの吸光度より算出した。
2−4抗体の評価
得られた精製抗体(抗体濃度3μg/ml)2ロット(F918−7−3およびF918−9−4)とFasリガンド細胞外領域との結合を1−3記載の方法に準じてウエスタンプロッティングにより確認した。ここでは、後述する4−1に記載の精製Fasリガンド細胞外領域(図2に示すピキア(Pichia)酵母由来Fasリガンド細胞外領域)、実施例の5−1に記載のCOS−1細胞由来遊離型Fasリガンドおよび実施例の3に記載のCOS−1細胞由来Fasリガンド細胞外領域を用いた。2次抗体としてHRPO標識抗マウスIgs抗体(ダコ社)を用い、検出にはTMB試薬(SCYTEKLaboratories)を用いた。図2に示すように、F918−9−4では分子量約3万付近に酵母由来のFasリガンド細胞外領域、COS−1由来のFasリガンド細胞外領域および遊離型Fasリガンドでバンドが検出されFasリガンドと結合していることが確認された。一方、F918−7−3では酵母およびCOS−1由来のFasリガンド細胞外領域にはバンドが検出されたが、遊離型Fasリガンドにはバンドが検出されなかった。次に、Fasリガンドのアポトーシス誘導活性に与える影響を1−3記載の方法に従って検討した。図3に示すようにF918−9−4はアポトーシス誘導活性を変化させなかったが、F918−7−3にはアポトーシス誘導促進活性が認められた。これよりM52ペプチドを投与したモノクローナル抗体中に少なくとも2種類以上の特異性の異なる抗体が存在することが明らかになった。
3.抗Fasリガンド抗体の作製
3−1投与抗原の調製及びマウスの免疫
投与抗原はCOS−1細胞に発現させて後述する方法で調製したFasリガンド細胞外領域を使用した。COS−1細胞由来のFasリガンド細胞外領域は、国際特許出願公開WO95/13293の実施例18に記載のプラスミドpM1070をCOS−1細胞へ導入した形質転換体COS−1/pM1070を用いて作製した。すなわち、8.1μgのpM1070を40μlの10mM Tris−HCl(pH7.4)/1mMエチレンジアミン四酢酸(以下、TEバッファーと略す)溶液に溶解した。これに、0.2mg/ml DEAEーデキストランおよび50mM Tris−HCl(pH7.4)1mlを含有するD−MEM(日本製薬(株))11.3mlを添加し、DNA−DEAEデキストラン混合液を作製した。
150cm2のルーフラスコ内でセミコンフルエントまで単層培養したCOS−1細胞にDNA−DEAEデキストラン混合液を滴下し、5%CO2存在下で37℃にて培養し、形質転換体COS−1/pM1070を得た。4時間後、DNA−DEAEデキストラン混合液を除去し、10%ウシ胎児血清(FBS、アーバインサイエンテイフィック社)を含有するD−MEM培地に交換し、さらに48時間培養した。その後、培地をphenol red free D−MEM(FBS,BSA無添加)に交換し、さらに96時間培養した後、培養上清を回収した。
培養上清は1200rpmで5分間遠心して沈殿物を除去し、0.22μmのフィルターでろ過した。次にダイアフローPM10メンブレン(アミコン社)を用いて10倍に濃縮し、2.5ml(22.5μg相当)をPD10カラム(ファルマシア社)を用いてゲルろ過し、ボイドに溶出される分画3.5mlを回収した。回収した分画をセントリコン−10(アミコン社)で400μlに濃縮し、初回投与抗原とした。また、10倍濃縮した培養上清300μlを4−20%調整用SDS−PAGE(2−D、テフコ社)により泳動し、分子量マーカー(プレステインドSDS−PAGEスタンダードLow、バイオ・ラッド ラボラトリーズ社)を参考にして3万付近のゲルを切り出し粉砕し、生理食塩水中で一晩振とうしてFasリガンド細胞外領域を抽出した。抽出液をセントリコン−10(アミコン社)で200μlに濃縮したものを追加および最終投与抗原とした。
マウスの免疫は、まず初回投与用抗原200μlを等量のフロイント完全アジュバント(DIFCO社)と混合し、ddYマウス(5週令、雌)の腹腔に投与した。2週間後、追加投与用抗原100μlを等量のフロイント不完全アジュバント(DIFCO社)と混合し同様に投与した。
3−2抗血清の評価
追加投与1週間後に眼底より採血し、抗血清とヒトFasリガンドとの結合を2−2記載の方法に従って測定した。図4が示すように、COS−1由来の部分精製Fasリガンド細胞外領域を投与したマウス(8−2)の抗血清は抗血清の希釈倍率に依存した吸光度の上昇がみられ、酵母由来Fasリガンド細胞外領域と結合することが確認された。また、1−3記載の方法に従いアポトーシス誘導活性に対する効果を検討したところ、強い抑制活性が認められた。
3−3モノクローナル抗体の作製
酵母由来Fasリガンド細胞外領域との結合活性が確認されたマウス(8−2)に3−1記載のSDS−PAGEで調製したFasリガンド細胞外領域200μlを腹腔内に投与し、3日後「単クローン抗体実験操作入門、安東民衛・千葉丈著、講談社サイエンティフィク」記載の方法に従い細胞融合を行った。6日後、培養上清のスクリーニングを2種類の方法を用いて行った。すなわち、2−2記載の方法によりFasリガンドとの結合を測定した。また、1−4記載の抗M52ペプチド抗体とサンドイッチが可能な抗体を取得する目的でサンドイッチEIA系によるスクリーニングも平行して行った。まず、10μg/mlにPBSで希釈したDEAE精製ウサギ抗M52ペプチド抗体を50μl/ウエルづつイムノプレート(Maxisorp、Nunc社)に分注し、45℃で30分間処理し抗体を結合した。イオン交換水で5回洗浄後、0.1%BSA/PBS100μlを各ウエルに添加し室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング液を廃棄した後、後述の4−1に記載の部分精製Fasリガンド細胞外領域200ng/mlを25μl加え、さらに培養上清25μlを添加した。37℃で1時間反応後2回洗浄液で洗浄し、次に10%ウサギ血清/PBSで1000倍に希釈したHRPO標識抗マウスIgs抗体(ダコ社)を50μl添加し37℃で1時間反応した。洗浄液で5回洗浄後、さらにイオン交換水で2回洗浄し、0.027%過酸化水素を含む3mg/mlのオルトフェニレンジアミン/0.1Mマッキルベインバッファー(pH5.0)を50μl添加し10分間反応させ、1N塩酸50μlで反応を停止した。吸光度計により490nmの吸光度を測定した。その結果、両方法で4−1記載の可溶型Fasリガンドと反応する培養上清1ウエルを得た。反応性の得られたウェルを「単クローン抗体実験操作入門、安東民衛・千葉丈著、講談社サイエンティフィク」記載の限界希釈法によりクローニングした後、同様にスクリーニングを行いFasリガンド細胞外領域と反応し、抗M52ペプチド抗体とサンドイッチが可能な抗体F919−9−18(IgG2b/κ)を産生するハイブリドーマ1クローンを得た。
3−4抗体の評価
F919−9−18抗体のアポトーシス抑制活性を1−3記載の方法に従い測定した。図5から明らかなように、F919−9−18は、国際特許出願公開WO95/13293の実施例15および16に記載の抗Fasリガンド抗体F883−1−1よりも百倍以上強い抑制活性を示し、この抑制活性は国際特許出願公開WO95/13293の実施例1に記載のhFas−Fcよりも強いものであった。
4.サンドイッチEIA系の作製
4−1標準品の作製
標準品として用いるFasリガンド細胞外領域は以下のように調製した。
(1)配列表の配列番号9のヒトFasリガンド細胞外領域179アミノ酸をコードするDNAを有するプラスミドpM1283の構築
まず、センスプライマー1(TCTCTCGAGAAAAGAGAGCAGCTCTTCCACCTG)およびアンチセンスプライマー1(AGGGAATTCCTATTAGAGCTTATA)を化学合成した。センスプライマー1は、ピキア酵母発現用プラスミドpPIC9(Invitrogen社)のα−factorシグナル配列の一部をコードする塩基配列、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端配列、およびXhoIサイト(CTCGAG)を含む。アンチセンスプライマー1は、ヒトFasリガンド細胞外領域のC末端部分をコードする塩基配列、終始コドン(TAG)およびEcoRIサイト(GAATTC)を含む。
得られたプライマーをそれぞれ100pmol、国際特許出願公開WO95/13293の実施例18に記載の、ヒトFasリガンド細胞外領域179アミノ酸をコードするDNAを含むプラスミドpM1070を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのPfu DNAポリメラーゼと添付のPfuバッファー10μl(共にストラタジーン社)を含む100μlの溶液を調製した。DNAサーマルサイクラー(PCRシステム9600、パーキンエルマー社)を使用して、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとするPCRを30サイクル行った。得られたPCR産物をEcoRI、XhoIで二重消化し、pPIC9のEcoRI、XhoIサイトに組み込み、得られたプラスミドをpM1283と命名した。20μgのpM1283をBglIIで消化することにより直鎖状にし、ピキア酵母の形質転換に用いた。
(2)ピキア酵母の形質転換
ピキア酵母GS115株(Invitrogen社)をYPDプレート(1%(w/v)バクト イーストイクストラクト/2%(w/v)ペプトン/2%(w/v)D−グルコース/2% バクト アガー)に植込み、30℃で2日間培養した後、単一コロニーを10mlのYPD(1%(w/v)バクト イーストイクストラクト/2%(w/v)ペプトン/2%(w/v)D−グルコース)に植込んだ。30℃、200rpmで終夜振とう培養後、10μlを500mlのマイヤーに入れた200mlのYPDに植込み、さらに30℃、200rpmで終夜振とう培養することによりOD600値が0.2〜0.3の酵母培養液を得た。
酵母培養液を1,500xg、室温で5分間遠心分離後、酵母を20mlの滅菌蒸留水に懸濁して洗浄し、1,500xgで5分間遠心分離した。同様の操作でさらに酵母を20mlのSEDバッファー(0.95M ソルビトール/23.75mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(pH8.0)/50mM DTT)で1回、20mlの1M ソルビトールで1回洗浄した後、20mlのSCEバッファー(1M ソルビトール/1mM EDTA/10mM塩酸ナトリウムバッファー、pH5.8)に再懸濁した。7.5μlの3mg/mlチモリアーゼ(zymolyase、Invitrogen社)を10mlの酵母懸濁液に添加し、30℃で9分間インキュベートすることにより、5%SDS中におけるOD600値の低下を指標として、70%の酵母をスフェロプラスト化した。750xgで10分間遠心分離後、10mlの1M ソルビトール溶液で1回、10mlのCaS溶液(1M ソルビトール/10mM トリス塩酸、pH7.5/10mM 塩化カルシウム(CaCl2))で1回洗浄した後、0.6mlのCaS溶液に懸濁した。
0.1mlのスフェロプラスト溶液に10μgの直鎖状pM1283を添加し、室温で10分間インキュベートした。1mlのポリエチレングリコール(PEG)/CaT(20%(w/v) PEG3350/10mM Tris,pH7.5/10mM CaCl2)溶液を添加し、室温で10分間インキュベートした後、750xgで10分間遠心分離した。150μlのSOS溶液(1M ソルビトール/0.3X YPD/10mM CaCl2)をペレットに添加し、室温で20分間インキュベートした後、850μlの1M ソルビトールを添加した。
45℃に保温した10mlのヒスチジンを含まないRD溶液(0.186g/ml ソルビトール/20mg/ml D−グルコース/13.4mg/mlイースト ナイトロジエン ベース/0.4μg/ml ビオチン/50μg/ml L−グルタミン酸/50μg/ml L−メチオニン/50μg/ml L−リジン/50μg/ml L−ロイシン/50μg/ml L−イソロイシン/1% アガー)に上記の溶液を100μl添加後、RDBプレート(2%アガー/RD溶液)に重層し、30℃で4日間培養した。得られた形質転換体をMMプレート(13.4mg/ml イースト ナイトロジエン ベース/0.4μg/ml ビオチン/0.5% メタノール/1.5% アガー)およびMDプレート(13.4mg/ml イースト ナイトロジエン ベース/0.4μg/ml ビオチン/2% D−グルコース/1.5% アガー)に植込み、30℃で2日間培養した。培養後MDプレートでは増殖し、MMプレートではほとんど増殖しない形質転換体を選択し発現に用いた。
(3)ヒトFasリガンド細胞外領域の酵母を用いた生産
(2)で作製した形質転換体を50mlの試験管に入れた10mlのBMGY(1%(w/v) イーストイクストラクト/2%(w/v) ペプトン/13.4mg/ml イースト ナイトロジエン ベース/0.4μg/ml ビオチン/1%(v/v) グリセロール/0.1M リン酸カリウムバッファー,pH6.0)中で30℃で2日間振とう培養を行い、さらに500mlマイヤーに入れた100mlのBMGY中に培養液を2mlずつ添加し振とう培養することにより、OD600値が10〜20の培養液2Lを得た。4000xg、室温で10分間遠心分離を行うことにより酵母を採取し、400mlのBMMY(1%(w/v) イースト イクストラクト/2%(w/v) ペプトン/13.4mg/ml イースト ナイトロジエン ベース/0.4μg/ml ビオチン/0.5%(v/v) メタノール/0.1M リン酸カリウムバッファー,pH6.0)に懸濁した。500mlマイヤー8本にそれぞれ50mlずつ分注し、さらに30℃で2日間振とう培養を行い、13,000xg、10分間遠心分離を行うことによりヒトFasリガンド細胞外領域を含む培養上清を得た。
次に0.22μmのフイルターでろ過した培養上清50mlを80%飽和硫安により塩析し、4℃で1時間放置後、10000rpmで10分間遠心し沈殿を回収した。沈殿を0.15M NaClを含む0.067Mリン酸バッファー(pH7.2)に溶解し、透析した。透析後、10000rpmで10分間遠心し、さらに0.22μmのフイルターで不純物を除去した。2mlをゲルろ過カラム(Hiprep 16/60 Sephacryl S−300 HR、ファルマシア社)にアプライし0.5mlの流速で溶出した。溶出液を2mlづつフラクションにとり、280nmの吸光度より蛋白質を検出し、1−3に記載の方法により各フラクション30μlを用いてアポトーシス誘導活性を測定した。また、2−1記載の方法に従い各フラクション50μlをイムノプレートに感作し抗M52ペプチド抗体でFasリガンドを検出した。図6はゲルろ過のチャートを示しており、抗M52ペプチド抗体では2カ所のフラクションに抗体結合活性が認められたが、アポトーシス誘導活性は低分子量側のフラクションにのみ認められた。活性の認められたフラクションを4−20%SDS−PAGE(テフコ社)により検定したところ、Fasリガンド細胞外領域の分子量である3万付近のバンドはアポトーシス誘導活性を示した低分子量側のフラクションにのみ認められ、高分子量側のフクションには分子量14万以上のバンドが検出され、この分画はFasリガンドが凝集したものと推定された(以下、酵母Fasリガンド凝集物ということがある)。アポトーシス誘導活性のあるフラクションを集め、セントリコン−10(アミコン社)で濃縮し、BSAを標準品としてプロテインアッセイ(バイオ・ラッド ラボラトリーズ社)で濃度を算出した。これを部分精製品とした。
精製Fasリガンド細胞外領域は酵母由来の培養上清を80%飽和硫安で塩析後、0.15M NaClを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)で透析し、hFas−Fcを結合したプロテインA−セルロファイン(チッソ(株)社)アフィニティーカラム(5ml)にアプライし以下のようにして得た。なお、該アフィニティーカラムは、国際特許出願公開WO95/13293の実施例1に記載のhFas−FcをプロテインA−セルロファイン(チッソ(株)社)の添付文書に記載の方法に従い作製した。洗浄後、2M NaClを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)で溶出し、280nmのピークを回収し、50mM MESバッファー(pH6.0)に透析した。次に、Mono S(HR5/5、ファルマシア社)にアプライし、500mM NaClを含む50mM MESバッファー(pH6.0)で溶出し、280nmのピークを回収しセントリコン−10(アミコン社)で濃縮した。PBSで透析し、BSAを標準品としてLowry法により蛋白濃度を算出した。精製Fasリガンド細胞外領域38μg(蛋白濃度300μg/ml)を得た。
4−2ポリクローナル抗体によるサンドイッチEIA系の作製
DEAE精製ウサギ抗M52ペプチド抗体と抗Fasリガンド抗血清(ロット8−2)を用いてサンドイッチEIA系を作製した。まず、PBSで10μg/mlに希釈したDEAE精製ウサギM52ペプチド抗体を50μl/ウエルづつイムノプレート(Maxisorp、Nunc社)に分注し、45℃で30分間処理し結合した。イオン交換水で5回洗浄後、0.1%BSA/PBSを100μl/ウエル添加し室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング液を廃棄した後、0.1%BSA/PBSで希釈した精製Fasリガンド細胞外領域0〜250ng/mlを25μl加え、さらに0.1%BSA/PBSで500倍に希釈した抗Fasリガンド抗血清(ロット8−2)を25μl添加した。37℃で1時間反応後、0.005% Tween20を含む0.9% NaClで年2回洗浄し、次に10%ウサギ血清/PBSで1000倍に希釈したHRPO標識抗マウスIgs抗体(ダコ社)を50μl添加し37℃で1時間反応させた。洗浄液で5回洗浄後、さらにイオン交換水で2回洗浄し、0.027%過酸化水素を含む3mg/mlのオルトフェニレンジアミン/0.1Mマッキルベインバッファー(pH5.0)を50μl添加し10分間反応させ、1N塩酸50μlで反応を停止した。吸光度計により490nmの吸光度を測定した。図7は作成した標準曲線を示している。本系は、Fasリガンドを高感度かつ定量的に測定可能と考えられた。
4−3モノクローナル抗体によるサンドイッチEIA系の作製
モノクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA系は以下のように作製した。
まず、中根ら(Immunofluorescence and Related Staining Techniques,W.Knapp,K.Holubar and、G.Wick eds.1978)の方法に従い、モノクローナル抗体をペルオキシダーゼで標識した。すなわち、ペルオキシダーゼ(RZ3.11、東洋紡(株))を6mg秤量し、1.5mlの蒸留水で溶解した。次に蒸留水で溶解した0.1Mメタ過ヨウ素酸ナトリウムを0.3ml添加し室温で15分間静置し、続いて蒸留水で溶解した1.5%エチレングリコール0.3mlを添加し室温で20分間静置した。この溶液を0.001Mの酢酸バッファー(pH4.4)に対して4℃で一夜透析した。
得られた活性化ペルオキシダーゼ127μl(ペルオキシダーゼ400μg相当)に1M炭酸バッファー(pH9.5)を7μl添加し、続けて0.01M炭酸バッファー(pH9.5)で透析した精製モノクローナル抗体(2〜3mg/mlのもの)500μg相当を添加し25℃にて2時間反応させた。次に、0.01M炭酸緩衝液(pH9.5)で溶解した4mg/mlの水素化ホウ素ナトリウムを12μl添加し4℃で2時間静置した。次に0.076MのPBS(pH6.4)に対して4℃で一夜透析し、得られたペルオキシダーゼ標識抗体に半量の18%シュークロース、0.3%BSA/PBSを添加し−20℃にて保存した。
次に、PBSで10μg/mlに希釈したF918シリーズまたはF919−9−18モノクローナル抗体を50μl/ウエルずつイムノプレート(Maxisorp、Nunc社)に分注し、45℃で30分間処理し抗体を結合させた。イオン交換水で5回洗浄後、0.1%BSA/PBSを添加し室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング液を廃棄した後、0.1%BSA/PBSで希釈した精製Fasリガンド細胞外領域0〜100ng/mlを25μl加え、次に10%ウサギ血清/PBSで0.5〜2μg/mlに希釈したHRPO標識抗体(F918シリーズあるいはF919−9−18)を25μl添加し37℃で1時間反応させた。0.005%Tween20を含む0.9% NaCl洗浄液で5回洗浄後さらにイオン交換水で2回洗浄し、0.027%過酸化水素を含む3mg/mlのオルトフェニレンジアミン/0.1Mマッキルベインバッファー(pH5.0)を50μl添加し10分間反応させ、1N塩酸50μlで反応を停止した。吸光度計により490nmの吸光度を測定した。表2はモノクローナル抗体の組み合わせおよびEIAの結果を示したものであり、抗M52ペプチドモノクローナル抗体(F918シリーズ)と抗Fasリガンド抗体(F919)による組み合わせが可能であることを示している。また、抗M52ペプチドモノクロナール抗体同士のサンドイッチ系であるF918−9−4/F918−7−3や同じ抗体であるF919−9−18/F919−9−18でもサンドイッチ系が可能であった。なお、表2において◎は高反応性を、○は中反応性を、△は低反応性を、×は反応性が認められなかったことを示す。表2においてウサギ抗M52およびウサギ抗M57は、M52およびM57ペプチドで免疫したウサギの抗血清である。
5.測定系の評価
5−1各種Fasリガンドの作製
ヒトFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドnd42およびcd179を国際特許出願公開WO95/13293の実施例21に記載の方法で発現させた。なお、国際特許出願公開公報中ではポリペプチドnd42およびcd179はそれぞれND42およびCD179として表示されている。また、ヒトFasリガンドの細胞外領域の欠失変異体であるポリペプチドnd5、nd12、nd20、nd32およびnd49、ヒトFasリガンドの細胞外領域の置換変異体であるL179Fならびに遊離型Fasリガンドを以下の方法で発現させた。なお、nd5、nd12、nd20、nd32、nd42およびnd49は、配列表の配列番号9に記載のアミノ酸配列のN末端から、それぞれ5アミノ酸、12アミノ酸、20アミノ酸、32アミノ酸、42アミノ酸および49アミノ酸が欠失したそれぞれ6、13、21、33、43および50番目のアミノ酸から179番目のアミノ酸までのアミノ酸配列を有するポリペプチドである。また、ポリペプチドcd179は配列表の配列番号9に記載のアミノ酸配列のC末端から1アミノ酸が欠失したアミノ酸配列、すなわちアミノ酸番号1から178までのアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ポリペプチドL179Fは配列表の配列番号9に記載のアミノ酸配列のC末端アミノ酸残基であるロイシンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチドである。また、遊離型Fasリガンドは、遺伝子としてFasリガンド全長を有するプラスミドを導入されたCOS−1細胞表面上に発現したFasリガンドが培養上清中に遊離したものである。
(1)プラスミドpM1081の作製
ヒトFas抗原シグナルペプチドとヒトFasリガンド細胞外領域をコードするプラスミドpM1081を以下の方法で作製した。このpM1081は、サイレントミューテーションにより、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする塩基配列中にSpeI、PshAI認識配列が導入され、またヒトFasリガンドをコードする塩基配列中にPstI認識配列が導入されている。
まず、センスプライマー2(TGCGAATTCACCATGCTGGGCATCTGG)およびアンチセンスプライマー2(CTTCTGCAGGTGGAAGAGCTGAGCGACACTAGTCAGAACCAGAGG)を化学合成した。このセンスプライマー2は、ヒトFas抗原シグナルペプチドをコードする配列の5’末端領域とEcoRIサイト(GAATTC)を含んでいる。また、アンチセンスプライマー2は、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側とヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端側をコードする塩基配列およびPstIサイト(CTGCAG)、SpeIサイト(ACTAGT)、PshAIサイト(GACTAGTGTC)を含んでいる。得られたアンチセンスプライマー2と、センスプライマー2とを、それぞれ100pmol、ヒトFas抗原をコードするDNA(イトウ N、(Itoh N)等、Cell、66巻、233−243頁、1991年)を含むプラスミドpBLF58−1を50ng、PfuDNAポリメラーゼを2.5U、添付のPfuバッファー(共に、ストラタジーン)を10μl含む100μlの溶液を調製した。DNAサーマルサイクラー(PCRシステム9600、パーキンエルマー)を使用して、94℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分を1サイクルとするPCRを30サイクル行った。PCR産物をEcoRIおよびPstIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約70bpのDNA断片を回収し、キアエックスキット(Qiagen社)を用いてDNAを精製した。国際特許出願公開WO95/13293の実施例18に記載のプラスミドpM1067のEcoRIサイトおよびPstIサイト間に、上述の約70bpのDNA断片を挿入した。
得られたプラスミドの塩基配列を確認したところ、EcoRIサイトとSpeIサイトとの間に16bpの欠損があった。そこで、目的とするEcoRIサイトからSpeIサイトまでの配列を構築するためのセンスオリゴヌクレオチド1(AATTCACCATGCTGGGCATCTGGACCCTCCTACCTCTGGTTCTGA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド1(CTAGTCAGAACCAGAGGTAGGAGGGTCCAGATGCCCAGCATGGTG)を化学合成し、それぞれを1nmolずつ含む20μlのTE溶液を調製した。このTE溶液を95℃で5分間加熱後、16℃まで徐冷することにより、これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、二本鎖DNAの両端にそれぞれEcoRI切断配列とSpeI切断配列を持つDNA断片を得た。これを上述の16bp欠損したプラスミドのEcoRIサイトとSpeIサイト間に挿入し、pM1081を得た。
(2)プラスミドpM1291の作製
まず、センスプライマー3(CTGACTAGTGTCGCTCAGAAGGAGCTGGCA)およびアンチセンスプライマー3(GTCTTCCCATTCCAGAGGCATGG)を化学合成した。このセンスプライマー3は、ヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端側に位置するアミノ酸配列と、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側6番目から10番目までのアミノ酸配列をコードする塩基配列とSpeIサイト(ACTAGT)、PshAIサイト(GACTAGTGTC)を含んでいる。また、アンチセンスプライマー3は、ヒトFasリガンド細胞外領域のcDNAの塩基配列の164番目から186番目までの相補配列で、BstXIサイト(CCAGAGGCATGG)を含んでいる。得られたセンスプライマー3およびアンチセンスプライマー3をそれぞれ100pmol、国際特許出願公開WO95/13293の実施例12に記載のpBX−hFL1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのPfuDNAポリメラーゼおよび添付のPfuバッファー(共にストラタジーン)10μlを含む100μlの溶液を調製した。上記(1)と同様にPCRを行い、得られたPCR産物をSpeI、BstXIで二重消化した。これを(1)で作製したプラスミドpM1081のSpeI、BstXIサイトに組み込み、得られたプラスミドをpM1291と命名した。
(3)プラスミドpM1292の作製
まず、センスプライヤー4(CTGACTAGTGTCGCTCGAGAGTCTACCAGC)を化学合成した。このセンスプライマー4は、ヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端側に位置するアミノ酸配列と、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側13番目から17番目までのアミノ酸配列をコードする塩基配列とSpeIサイト(ACTAGT)、PshAIサイト(GACTAGTGTC)を含んでいる。
得られたセンスプライマー4および(2)のアンチセンスプライマー3を使用して(2)と同様にPCRを行い、得られたPCR産物をSpeI、BstXIで二重消化した。これを(1)で作製したプラスミドpM1081のSpeI、BstXIサイトに組み込み、得られたプラスミドをpM1292と命名した。
(4)プラスミドpM1293の作製
まず、センスプライマー5(CTGACTAGTGTCGCTACAGCATCATCTTTG)を化学合成した。このセンスプライマー5は、ヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端側に位置するアミノ酸配列と、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側21番目から25番目までのアミノ酸配列をコードする塩基配列とSpeIサイト(ACTAGT)、PshAIサイト(GACTAGTGTC)を含んでいる。
得られたセンスプライマー5と(2)で作製したアンチセンスプライマー3を用い、(2)と同様にPCRを行った。得られたPCR産物をSpeI、BstXIで二重消化し、pM1081のSpeI、BstXIサイトに組み込み、得られたプラスミドをpM1293と命名した。
(5)プラスミドpM1295の作製
まず、センスプライマー6(CTGACTAGTGTCGCTAGTCCACCCCCTGAA)を化学合成した。このセンスプライマー6は、ヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端側に位置するアミノ酸配列と、ヒトFasリガンド細胞外領域のN末端側33番目から37番目までのアミノ酸配列をコードする塩基配列とSpeIサイト(ACTAGT)、PshAIサイト(GACTAGTGTC)を含んでいる。
得られたセンスプライマー6と、(2)で作製したアンチセンスプライマー3を用い、(2)と同様にPCRを行った。得られたPCR産物をSpeI、BstXIで二重消化し、pM1081のSpeI、BstXIサイトに組み込み、得られたプラスミドをpM1295と命名した。
(6)プラスミドpM1296、pM1297、pM1298、pM1300の作製
(2)から(5)で得られプラスミドpM1291、pM1292、pM1293、pM1295をそれぞれEcoRI、KpnIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。それぞれ約580、570、540、500bpのDNA断片を回収し、キアジエン(QIAGEN)のキアエックス(QIAEX)キットを使用してDNAを精製した。動物細胞発現ベクターpEF−BOS(ミズシマおよびナガタ(Mizushima & Nagata,Nucleic Acids Res.,18巻、5322頁、1990年)にdhfr遺伝子を組換え修飾したプラスミドpM1103のEcoRI、KpnIサイト間に、上述の約580、570、540、500bpのDNA断片を組み込み、得られたプラスミドをそれぞれpM1296、pM1297、pM1298、pM1300と命名した。
作製したプラスミドの塩基配列をPRISM Dye Terminator Cycle Sequencingキット(パーキンエルマー)とDNAシーケンサ(モデル373A、パーキンエルマー)を使用して決定した。その結果、プラスミドpM1296、pM1297、pM1298、pM1300にはそれぞれ、ヒトFasリガンドの細胞外領域のN末端より数えて6、13、21、33番目以降のアミノ酸配列をコードする国際特許出願PCT/JP95/00883の配列表の配列番号1、2、3および4に記載のDNAが含まれていることが確認された。本発明者らは、公知方法にてプラスミドpM1297およびpM1300で、大腸菌HB101を形質転換させ、得られた形質転換体大腸菌HB101(pM1297)、HB101(pM1300)を、生命工学工業技術研究所へ、1995年4月26日付で寄託している(受託番号FERM BP−5083、FERM BP−5084)。
(7)ヒトFasリガンド細胞外領域をコードするDNAを有するプラスミドpM1070−pUC118の作製
まず、センスプライマー2(TGCGAATTCACCATGCTGGGCATCTGG)およびアンチセンスプライマー4(AACCTGCAGGTGGAAGAGCTGAGCAACAGACGTAAG)を化学合成した。センスプライマー2はEcoRIサイト(GAATTC)とヒトFas抗原シグナルペプチドのN末端5アミノ酸をコードする塩基配列を含み、アンチセンスプライマー4はPstIサイト(CTGCAG)とヒトFasリガンド細胞外領域のN末端4アミノ酸をコードする塩基配列とヒトFas抗原シグナルペプチドのC末端5アミノ酸をコードする塩基配列を含む。
得られたプライマーをそれぞれ100pmol、ヒトFas抗原のアミノ酸をコードするDNA(イトウ N、(Itoh N)等、Cell、66巻、233−243頁、1991年)を含むプラスミドpBLF58−1を50ng、dATP、dCTP、dGTP、dTTPをそれぞれ20nmol、2.5ユニットのPfu DNAポリメラーゼと添付のPfuバッファー10μl(共にストラタジーン)を含む100μlの溶液を調製した。DNAサーマルサイクラー(PCRシステム9600、パーキンエルマー)を使用して、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとするPCRを30サイクル行い、得られたPCR産物をEcoRI、PstIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約70bpのDNA断片を回収し、キアエックスキット(QIAGEN)を用いてDNAを精製した。国際出願公開WO95/13293の実施例18に記載のプラスミドpM1067をEcoRI、PstIで二重消化し、上述の約70bpのDNA断片を挿入し、プラスミドpM1070−pUC118を得た。
(8)ヒトFasリガンド細胞外領域のC末端アミノ酸変異体L179FをコードするDNAを有するプラスミドpM1090の作製
まず、センスプライマー7(GAGCTACTGCACTACTGGGC)およびアンチセンスプライマー5(CTTGGTACCCTATTAGAACTTATATAAGCC)を化学合成したセンスプライマー7は、ヒトFasリガンド細胞外領域の129番目から135番目付近のアミノ酸をコードする20bpのDNAを含み、6bp下流にApaIサイト(GGGCCC)が位置している。アンチセンスプライマー5は、ヒトFasリガンド細胞外領域のC末端175番目から178番目までのアミノ酸をコードする塩基配列を含み、179番目のロイシンをコードする塩基配列(CTC)をフェニルアラニンをコードする塩基配列(TTC)に置換してある。さらに、終始コドン(TAA、TAG)およびKpnIサイト(GGTACC)を含む。
得られたセンスプライマー7およびアンチセンスプライマー5を用いて、(2)と同様にPCRを行った。得られたPCR産物をApaI、KpnIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。約130bpのDNA断片を回収し、キアエックスキット(QIAGEN)を用いてDNAを精製した。ヒトFasリガンド細胞外領域をコードするDNAを含むpM1070 pUC118をApaI、KpnIで二重消化し、上述の約130bpのDNA断片を挿入した。得られたプラスミドをEcoRI、KpnIで二重消化後、アガロースゲル電気泳動に供し、約600bpのDNA断片をキアエックスキットを用いて精製した。動物細胞発現ベクターpEF−BOS(ミズシマおよびナガタ(Mizushima & Nagata)、Nucleic Acids Res.,18巻、5322頁、1990年)にDHFR遺伝子を組み換えたプラスミドpM1103のクローニングサイトのEcoRI、KpnIサイト間に上述の約600bpのDNA断片を組み込み、得られたプラスミドをpM1090と命名した。
作製したプラスミドの塩基配列をPRISM Dye Terminator Cycle Sequencingキット(パーキンエルマー)とDNAシーケンサ(モデル373A、パーキンエルマー)を使用して決定した。その結果、プラスミドpM1090には、ヒトFasリガンドの細胞外領域のアミノ酸配列(配列表の配列番号9)のC末端アミノ酸残基であるロイシンがフェニルアラニンに置換されたアミノ酸配列をコードするDNAが含まれていることが確認された。
(9)COS−1細胞への導入
pM1090、pM1296、pM1297、pM1298、pM1300および国際特許出願公開WO95/13293の実施例18に記載のpM1070、国際特許出願公開WO95/13293の実施例12に記載のpEX−hFL1を使用して、以下の方法で形質転換体COS−1/pM1090、COS−1/pM1296、COS−1/pM1297、COS−1/pM1298、COS−1/pM1300、COS−1/pM1070、COS−1/pEX−hFL1を作製した。すなわち、それぞれのプラスミドDNA8.1μgを40μlのTris/EDTA溶液に溶解した。そのうちの2.5μlに、それぞれ0.2mg/mlDEAE−デキストランおよび50mM Tris−HCl(pH7.4)を含有するD−MEM(日水製薬)0.7mlを添加し、DNA−DEAEデキストラン混合液を作製した。6ウェルプレートでセミコンフルエントまで単層培養したCOS−1細胞にDNA−DEAEデキストラン混合液を添加し、5%CO2存在下で、37℃にて培養し、形質転換体COS−1/pM1090、COS−1/pM1296、COS−1/pM1297、COS−1/pM1298、COS−1/pM1300、COS−1/pM1070、COS−1/pEX−hFL1を得た。
上記で得た形質転換体COS−1/pM1090、COS−1/pM1296、COS−1/pM1297、COS−1/pM1298、COS−1/pM1300、COS−1/pM1070、COS−1/pEX−hFL1を1%FCSを含むD−MEM中で37℃で72時間培養した後、培養上清をそれぞれ回収した。各培養上清中のアポトーシス誘導活性は実施例1−3に記載の方法で測定された。
(10)遊離型Fasリガンド
遊離型Fasリガンドは、国際特許出願公開WO95/13293の実施例12に記載のプラスミドpEX−hFL1を上記(9)記載の方法に従い、COS−1細胞に導入して得られた形質転換体COS−1/pEX−hFL1の培養上清より回収したものを使用した(COS遊離型と称することがある)。また、特異的マトリックスメタロプロテアーゼ様酵素が膜結合Fasリガンドを切断してその可溶(遊離)型を生成する事が報告されており(タナカ M.等、EMBO J.14巻、1129−1135頁、1995年およびタナカ M.等、Nature Medicine、2巻、317−322頁、1996年)、この遊離型FasリガンドのN末端アミノ酸は、Fasリガンド細胞外領域の27アミノ酸を欠失した第28番目のグルタミンであった。
5−2各種Fasリガンドとの反応性
各種Fasリガンドを用いて8種類のサンドイッチEIA系の抗原特異性を検討した。FasリガンドとしてFasリガンド細胞外領域の各種欠失体および置換体、4−1記載の凝集したFasリガンド細胞外領域(酵母FasL凝集物)および精製したFasリガンド細胞外領域(酵母FasL)、3−1記載のCOS−1細胞由来のFasリガンド細胞外領域(COS sFasL)、ならびに遊離型Fasリガンド(COS遊離型)を用いて、それぞれに対する反応性を測定した。
表3から明らかなように、M52ペプチドを投与して得られたモノクローナル抗体にはM52ペプチドのN末端領域を認識しているグループ(F918−7−3)とC末端領域を認識しているグループ(F918−9−4)が存在した。また、F919−9−18はM52ペプチド領域を持たないFasリガンド細胞外領域とも反応することから、M52ペプチドの位置よりもさらにFasリガンドのC末端側にその結合領域が存在し、かつアポトーシス誘導活性を有するもののみと結合することが明らかとなった。なお、○は高反応性を、△は低反応性を、×は反応しないことを示す。
5−3正常人血清の影響
4−2記載の測定法を用いてヒト血清中のFasリガンドの測定を行うため、ヒト血清の影響を検討した。実施例4−1記載の部分精製Fasリガンド細胞外領域を0.1%BSA/PBSまたは正常ヒト血清で希釈し標準曲線を作製した。図8に示すように、正常ヒト血清でFasリガンド無添加のバックグランドが0.1%BSA/PBS希釈剤よりも若干低値を示した以外両者に差は認められず、血清の影響はないと考えられた。
6.各種疾患患者血清中Fasリガンドの測定
各種の疾患の患者血清を用いて4−2記載の測定法により血中Fasリガンドの測定を行った。標準品として4−1記載の精製Fasリガンド細胞外領域を正常ヒト血清で希釈したもの(0,10,50,100,200ng/ml)を使用し、正常人血清26例、B型肝炎患者血清36例、C型肝炎患者血清13例、HIV抗体陽性患者血清14例、その他各種疾患患者の血清を測定した。図9は各血清での測定値を示したものであり、正常人は測定感度(約1ng/ml)以下であったが、B型肝炎患者(9/36)、C型肝炎患者(4/13)、HIV抗体陽性患者(1/14)、(( )内はカットオフ値を1ng/mlとした場合の陽性例/測定数を示す)に高値例がみられた他、マラリア患者(2/10)、関節リューマチ患者(3/12)および抗DNA抗体陽性自己免疫疾患患者(1/1)においても陽性例が認められ、これらの疾患でFasリガンドが病因または病態と関連していることが示唆された。
7.マウスF919−9−18抗体可変領域cDNAのクローニングおよび配列決定
マウスF919−9−18抗体(以下F919と略す)の重鎖及び軽鎖可変ドメイン遺伝子のcDNAを、(コーら、J.Immunol.148:1149(1992)及び共通に譲渡された米国特許出願シリアル番号第07/634,278号明細書参照)に記載の如くのアンカーされたポリメラーゼ連鎖反応を用い、定常領域にアニールされる3’プライマー、及びcDNAに付加されたdG尾部にアニールされる5’プライマーを用いてクローン化した。PCR増幅された遺伝子フラグメントは、pUC18ベクター中に挿入化された。軽鎖および重鎖可変領域cDNAの両方に対して、数個の独立クローンからヌクレオチド配列を決定した。重鎖に対しては、マウス重鎖可変領域に特徴的な単一の配列が同定された。軽鎖に対しては、ともにマウス軽鎖可変領域配列に相同2つの特長的配列が同定された。しかし、1つの配列は、V−J結合におけるフレームシフトを生じるヌクレオチドの欠失のため機能的ではなく、また非産生アリールとして同定された。もう一方の配列はマウスカッパー鎖可変領域に典型的であった。各配列の数個のクローンが配列決定され、それぞれ同一であることがわかった。重鎖および機能的軽鎖の可変ドメインcDNA配列ならびにそれらから導かれるアミノ酸配列を図11および図10に示す。
8.ヒト化F919抗体可変領域のコンピューターモデリングによる設計
ヒト化抗体中で高い結合親和性を保持するために、クイーンらの一般的方法に従った(クイーンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029(1989)及びWO90/07861、(本引例をもって明細書の一部と成す)参照)。フレームワーク残基の選択は高親和性を保持するために重要である。原則として、いかなるヒト抗体からのフレームワーク配列もCDR移植のための鋳型として使用することができる。しかしながら、そのようなフレームワークへの直接的なCDR置換は抗原への結合親和性の有意な損失を招くことが示されている(Glaser等,J.Immunol.、149:2606(1992);Tempest等,Biotechnology、9:266(1992);Shalaby等,J.Exp.Med.17:217(1992))。受容体ヒト抗体が元のネズミ供与体抗体と相同であればあるほど、ネズミCDRをヒトフレームワークと組み合わせることが親和性を減少しうる歪みをCDR中に導入することになるということがより少ないと見込まれる。抗体配列データベースに対する配列相同検索に基づいて、ヒト抗体Euが、マウスF919抗体に高いフレームワーク相同性を提供するものとして選ばれたが他の高度に相同なヒト抗体鎖、特にヒトサブグループIからのカッパー軽鎖およびヒトサブグループIからの重鎖も同様に適しているであろう(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,U.S. Department of Health and Human Services, 1991)。
コンピュータープログラムENCAD(レビット、J.Mol.Biol.168:595(1983)、本引例をもって明細書の一部と成す)を、F919可変領域の分子モデルを構築するために用いた。モデルは、CDRと潜在的に相互作用するのに十分にCDRに近接したところの、マウスF919フレームワーク中のアミノ酸を決定するために用いた。ヒト化F919軽鎖及び重鎖可変領域をデザインするために、マウスF919抗体からのCDRが、ヒトEu抗体のFR中に移植された。コンピューターモデルがCDRとの有意な接触を示したフレームワークの位置において、元のヒトフレームワークアミノ酸に代わってマウス抗体からのアミノ酸へ置換された。ヒト化F919に対しては、この置換は、重鎖の残基27、30、45、46、68、70、72および97ならびに軽鎖の残基7、22、70、71および87においておこなわれた。ヒト化軽鎖の追加のバージョン(version2)を2つのヒトフレームワーク残基を保持するように、すなわち、version1の位置7および22におけるT(スレオニン)およびS(セリン)をversion2では各々SおよびTに置換して、構築した。後に示す結果から、2つのバージョンの軽鎖の間には結合親和性に大きな差はないことが示された。よって、より多くのヒト残基を保持しているという観点からは、version2は、ヒト化軽鎖としては好ましい選択である。さらに、ヒト抗体のデータベース中でその位置においてまれにしか現れないフレームワークアミノ酸残基はそれらの位置におけるヒトコンセンサスアミノ酸によって置換した。ヒト化F919抗体に対しては、この置換は、重鎖の残基74、93、95、98、107、108、109および111ならびに軽鎖の残基48および63においておこなわれた。
ヒト化F919抗体重鎖および軽鎖(version2)可変領域の配列を図13および12に示した。しかしながら、多くの潜在的にCDRと接触し得る残基は、抗体の抗原に対する実質的な親和性をなお保持させるであろう他のアミノ酸への置換を受ける余地がある。下表(表4)は、代替のアミノ酸も適しているであろうフレームワーク中の多くの位置を一覧にする(LCは軽鎖を、HCは重鎖を示す)。
同様に、ヒト化F919抗体重鎖および軽鎖中のCDRと接触していないフレームワーク残基の多くは、ヒト化抗体の親和性またはフレームワーク残基の多くは、ヒト化抗体の親和性または非免疫原性を有意に損なうことなく、ヒトEu抗体、他のヒト抗体、マウスF919抗体または他のマウス抗体の対応する位置からのアミノ酸の置換を受けることができる。下表(表5)は、代替のアミノ酸も適しているであろうフレームワーク中の追加の位置を一覧にする。
代替のアミノ酸の組合せの選択は、親和性、特異性、非免疫原性、製造の容易性および他の望ましい性質の様々な組合せを有するヒト化F919抗体のバージョンを作製するために使用されるであろう。このようにして、上表中の例は、限定のためではなく、実例として提供される。
9.ヒト化F919抗体の構築
上記のように、ヒト化抗体可変領域アミノ酸配列が設計されると、シグナルペプチド、スプライス供与シグナルおよび適正な制限サイトを含むそれらのアミノ酸配列をコードするように遺伝子が構築された(図12および13)。重鎖可変領域遺伝子は、61から79塩基長の範囲の8つのオーバーラップする合成オリゴヌクレオチドを用いて構築、増幅した。オリゴを対にしてアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長させ、4つの2本鎖断片を得た。得られた断片を変性し、アニールし、そしてKlenow断片で伸長して、2つの断片を得た。これらの断片を変性アニールし、そしてもう一度伸長させ全長の遺伝子を得た。得られた産物をTaqポリメラーゼを用いてポリメラーゼ鎖反応(PCR)により増幅し、ゲル精製し、XbaIで消化し、再度ゲル精製し、そしてpVg1(Co等、J.Immunol.、148:1149(1992))、またはpVg4発現ベクターのXbaIサイトヘサプクローン化した。pVg4ベクターは、γ4遺伝子のCHlエクソンの前のHindIIIサイトから該遺伝子のCH4エクソンの後のNsiIサイトの270塩基対後方に渡るヒトγ4定常領域遺伝子(Ellison and Hood、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79巻、1984頁、1982年)の約2000塩基対の断片で、γ1定常領域遺伝子を含むpVg1のXbaI−BamHI断片を置換することにより構築された。得られたプラスミドは、ヌクレオチド配列決定および制限酵素マッピングにより確認された。
軽鎖可変領域配列は以前構築されたgpIIb/IIIaに特異的なヒト化抗体HuC4G1に高度に相同であることが判明した。HuC4G1軽鎖およびヒト化F919軽鎖(version1)は、全可変領域中で位置30、53、70および92におけるわずかに4つのアミノ酸残基で異なる。それ故、我々は、合成オリグヌクレオチドおよびPCRを用いた部位特異的突然変異導入により、pVkプラスミド中に構築したHuC4G1軽鎖遺伝子中へそれら4つの位置における望ましいアミノ酸残基を取り込むことによりヒト化F919軽鎖可変領域遺伝子を構築した。2番目のバージョンの軽鎖は位置7および22における2つの追加の変更を有し、そして同様に構築された。従って、得られたプラスミドはヒトCκ遺伝子を含むpVkベクター中に各々のヒト化F919可変領域遺伝子を含有する(前出のCo等参照)。最終のプラスミドは、ヌクレオチド配列決定および制限酵素マッピングにより確認された。すべての操作は当業者に周知の標準的方法により実施された。
以上のように4つのヒト化F919抗体が、下に示すように重鎖および軽鎖の異なる組合せにより構築された。
上述の各抗体を産生する細胞株を作製するため、各重鎖および軽鎖プラスミドをマウスミエローマ細胞株Sp2−0−agl4(ATCC CRL1581)中へトランスフェクトした。トランスフェクション前に重鎖および軽鎖含有プラスミドを各々BamHIおよびFspIを用いて直線化した。約20μgの各プラスミドをPBS中で1×107細胞中へトランスフェクトした。トランスフェクションはメーカーの指示に従って360Vおよび25μFDのキャパシタンスでGene Pulser装置(バイオラッド)を用いてエレクトロポーレーションによりおこなった。各トランスフェクションからの細胞を4枚の96ウエルティッシュカルチャープレートに植込み、2日後、選択培地(D−MEM、10%FCS、1XHT supplement(シグマ)、0.25mg/ml xanthine、1μg/ml mycophenolic acid)を添加した。
約2週間後、現れたクローンをELISAにより抗体産生についてスクリーニングした。各トランスフェクションからの高産生クローンからの抗体は、細胞を標準培地(10%FCS/D−MEM)中でコンフルエントになるまで生育させ、次いで培地を無血清培地(Hybridoma SFM、GIBCO)に置き換え、そして培地中で最大の抗体価が得られるまで培養することにより調製した。培養上清をプロテインA−セファロースカラム(Pharmacia)に通し、抗体を0.1Mグリシン、0.1MNaCl(pH3.0)で溶出し、続いてPBS中へ交換した。抗体の純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、そして抗体濃度を、抗体蛋白質1.0mgは1.3のOD280値を有すると仮定して、OD280の値より決定した。
10.ヒト化F919抗体の性状
マウスおよびヒト化F919抗体が抗原であるFasリガンドに結合することを示すため、25ngの各抗体(マウスF919、HuF919G1.V1、HuF919G1.V2、HuF919G4.V1およびHuF919G4.V2)を、ヒトFasリガンドを発現するようにマウスリンパ腫細胞株WR19Lをトランスフェクトした細胞である。1A12細胞とともに各々氷上で30分間インキュベートした。細胞を冷PBSで洗浄し、FITC標識ヤギ抗ヒトまたは抗マウス抗体(ダコ イムノロジカルズ)とともにさらに30分間インキュベートし、フローサイトメトリー(FACS)によって解析した。FACSヒストグラムから、マウスおよび4つのヒト化F919抗体は特異的に1A12細胞に結合し、トランスフェクトしていない細胞株WR19Lには結合しないことが示された。ヒト化F919抗体が受容体結合(Fasリガンド結合)に対してマウスF919抗体と競合する能力を調べるために、順次増加させた量(0.01−150μg/ml)のマウスF919抗体および各バージョンのヒト化F919抗体を各々、一定量(5ng)の125I標識したトレーサーマウス抗体および5×105個の1A12細胞とともに4℃で90分間インキュベートした。マウスおよびヒト化F919抗体は実質的に等しい効率で競合した(図14および15)。それらのデータから計算された各抗体の結合親和性は、下表(表7)に示されるようにほぼ同様であった。したがって、ヒト化操作は元の抗体の結合親和性を有意には減少させなかった。
11.ヒト化F919抗体のアポトーシス抑制活性の評価
1A12細胞のWC8細胞に対する細胞障害活性を抑制する活性を指標としてアポトーシス抑制活性を測定した。1A12細胞はヒトFasリガンドを発現するようにマウスWR19L細胞を形質転換させた細胞であり(タナカ M.等、Nature Medicine、2巻、317−322頁、1996年)、また、WC8細胞はヒトFas抗原を発現させるようにマウスWR19L細胞を形質転換させた細胞である。このWR19L細胞は、マウスFas抗原を殆ど発現せず、TNFの細胞障害作用に感受性の細胞である。細胞障害活性の測定は、ルービエ E.(Rouvier E.)等の方法に準じて行った(J.Exp.Med.,177巻、195−200頁、1993年)。先ず、1A12細胞を10%非働化ウシ胎児血清(FBS)含有RPM11640で洗浄しエフェクター細胞として使用した。一方、100μlの10%非働化FBS含有RPMI1640中で、20μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウム(NEN社)と共に1×106個のWC8を37℃で2時間インキュベートし、その後10%非働化FBS含有RPMI1640で洗浄し、これらの細胞をターゲット細胞として使用した。
1×104個の1A12細胞とターゲット細胞1×104個とを、様々な濃度のマウスまたはヒト化F919抗体と共に全液量が計100μlになるようにし37℃で4時間インキュベートした。γカウンターによって測定した各ウェル中の上清の放射活性から、以下に示す式を用いて特異的細胞溶解率を算出した。51Crの自然放出量は、培地のみでターゲット細胞をインキュベートすることにより決定し、一方、最大放出量は、ターゲット細胞に0.1%となるようにTritonX−100を加えることにより決定した。
各ヒト化抗F919抗体は、マウス抗F919抗体とほぼ同等またはやや強いアポトーシス抑制活性を示した(図16および17)。
12.2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA系による血中Fasリガンド濃度の測定
ヒト血中Fasリガンド濃度を測定するため、2種類のモノクローナル抗体(F918−20−2、F919−9−18)を用いた2ステップサンドイッチEIA系を作製した。
(1)ポリパーオキシダーゼ標識抗体の調製
まず、PIERCE社Instructions26101Xに記載の方法に従い、2−Iminothiolane・HCl(Traut’s reagent)を用いてモノクローナル抗体F919−9−18にSH基を導入した。すなわち、抗体15mg(15mg/ml)をゲルろ過カラムNAP−10(ファルマシア社)を用いて0.1M NaCl、1mM EDTAを含む50mMトリエタノールアミン・HCl(pH8.0)(以下TEAと記す)の緩衝液に交換した。得られた抗体9mg(6mg/ml)を1.4mgずつ容器に分注し、TEAで100μg/mlになるように溶解したTraut’s reagentをそれぞれ抗体:Traut’s reagentのモル比が1:5、1:10または、1:50となるように添加し、窒素置換した後室温で60分間反応させた。反応終了後反応液組成をNAP−5(ファルマシア社)を用いて0.lM NaCl、5mM EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に交換した。導入されたSH基の数を測定するためPIERCE社Instructions26101Xに記載の方法に従い、Ellman’s reagent(5,5’−dithio−bis−2−nitrobenzoic acid)を用いて導入されたSH基の数を算出した。その結果、抗体1モル当たりのSH基の数は抗体:Trant’s Reagent モル比1:5で1.4個、1:10で1.0個、1:50で1.3個であった。導入率が最も良かった抗体:Trant’s Reagent モル比1:5の抗体を用いてポリパーオキシダーゼ(PolyPOD)標識物を以下のようにして調製した。
PolyPOD(MH)(ベーリンガーマンハイム社)を精製水で5mg/mlになるように溶解し上記抗体200μg(1.67mg/ml)にそれぞれ抗体:PolyPODモル比が4:1、2:1または、1:1となるようにPolyPOD溶液を添加し30℃で1時間反応させた。反応液に5mM N−エチルマレイミドをそれぞれ10μl添加して反応を止め、0.45%NaClを含む0.076M リン酸緩衝液(pH6.4)(以下PBSと記す)に4℃で一夜透析した。標識抗体濃度は280nmと403nmの吸光度を測定し、以下に示す式を用いて算出した。透析後の液量を測定し、半量の18%シュークロース/0.3%BSA/PBSを添加し−40℃で保存した。
標識抗体濃度(mg/ml)=
10×A280−(A403×10/7.58×104)×2.29×104
(2)F(ab’)2断片の調製
次に超高感度酵素免疫測定法、(石川榮治著学会出版センター,1993年)に記載の方法に従い、モノクローナル抗体F918−20−2よりF(ab’)2を調製した。すなわち、抗体10mg(5mg/ml)を0.1M NaClを含む0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に4℃で一夜透析した。同じ緩衝液で溶解したブタ胃ペプシン(シグマ社)を40μl(0.4mg)を添加し37℃で24時間反応した。反応液を氷冷しトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンでpHを7付近に戻し、PBSで平衡化したプロテインA結合ガラス樹脂カラムProsep−A(Bio Prossesing社)にアプライし切断されたFc部分を除いた。結合しなかった通過液を回収し、PBSに4℃で一夜透析し、これに最終濃度0.05%となるようにアジ化ナトリウムを添加し4℃で保存した。F(ab’)2の濃度は280nmの吸光度より算出した。
(3)ヒト血清中のFasリガンド値の測定
F919−9−18抗体を用いて血中のFasリガンドを吸収した正常人血清を希釈剤として実施例4−1に記載の精製Fasリガンド細胞外領域を5ng/mlから倍々希釈により希釈系列(5〜0.08ng/ml)を作製した。また、ブランク(Fasリガンド0ng/ml)には希釈剤を使用した。臨床症状との関連性を明らかにするため、表8のパネル血清(Boston Biomedical社)中のFasリガンド濃度を以下のようにして測定した。
まず、PBSで30μg/mlに希釈したF918−20−2F(ab’)2を70μl/ウェルづつイムノプレート(MaxisorP、Nunc社)に分注し、45℃で30分間処理し抗体を固相化させた。イオン交換水で5回洗浄後、0.1%BSA/PBS 200μlを添加し室温で30分間ブロッキングした。
プレートのブロッキング液を廃棄した後、希釈したFasリガンドの希釈系列または検体20μlを各ウエルに分注し、第一反応用緩衝液として0.1%Tween20、0.9%NaClを含む0.076Mリン酸緩衝液(pH6.4)を各ウエルに80μl添加した。37℃で2時間反応させた後、0.005%Tween20を含む0.9%NaClで5回洗浄した。次に10%ウサギ血清1%マウス血清を含む第一反応用緩衝液で0.5μg/mlに希釈した最も反応性の良かったPolyPOD標識抗体(4:1結合)を各ウエルに100μl分注し37℃で1時間反応させた。0.005%Tween20を含む0.9%NaClで5回洗浄した後、イオン交換水で2回洗浄した。0.2mg/mlのテトラメチルベンジジンと0.01%の過酸化水素を含む0.16M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を各ウエルに100μl添加し、遮光して室温で15分間反応させた。1N硫酸を各ウエルに100μl添加し、反応を停止し吸光度計により波長450nmの吸光度を測定した。
図18は測定したFasリガンドの希釈系列により作製した標準曲線を示したものであり、これを用いて各検体中のFasリガンド濃度を算出した。図19から図22は各パネル血清の他の項目の測定値(BostonBiomedical社添付文書記載)とFasリガンド濃度の推移を経時的に示したものである。なお、A型肝炎、B型肝炎患者パネル血清のALT値はトランスアミナーゼGPT測定用体外診断用医薬品オートセラGPT−2(第一化学薬品)を用いて日立オートマチックアナライザー7070(日立製作所)により測定した。
HIVの初期感染が疑われる患者のパネル血清では感染初期にFasリガンド値の上昇が認められた(図19)。また、A型肝炎、C型肝炎患者のパネル血清は両者とも初期感染が疑われ、ALT値の上昇に伴ってFasリガンド濃度が上昇した(図20および22)。一方、B型肝炎患者も初期感染例と推定され与たがALT値の変動は認めれず、またFasリガンド濃度も上昇しなかった(図21)。したがって、これらの疾患ではFasリガンドがその臨床症状と何らかの関連性を持っていることが示唆された。このことはFas/Fasリガンド系が症状の悪化に関与していることを示すものであり、アポトーシスを抑制する抗Fasリガンド抗体がこれらの疾患で有効である可能性を示している。
産業上の利用可能性
本発明の抗Fasリガンド抗体を用いたヒト体液中のFasリガンドの測定方法及び該測定方法に使用しうる抗体は、Fasリガンドの関与が示唆されている種々の疾患におけるFasリガンドの増加減少または異常を検出するために使用できるため、特定の疾患及び病態の予知、検出および診断または治療方法の選択のために応用しうる。またFasリガンド及びFasリガンド関連物質ならびにFasリガンドの発現に影響を与える薬剤による治療を受けている患者のモニタリング及び治療効果および予後の判定にも有用である。
Fasリガンドの作用を調節する抗体は、それを使用して、内因性または外因性のFasリガンドにより生体内で生じるアポトーシスを調節し、疾患の治療や、診断に使用する事ができる。エイズウイルス感染後期の免疫能の低下や、劇症肝炎における肝機能低下は、免疫担当細胞あるいは肝細胞のアポトーシスにより組織の機能が著しく低下した結果と考えられる。このような状態においては、Fasリガンドの作用を抑制し、細胞のアポトーシスを防ぐことが必要になる。したがって、このような病態には、Fasリガンドの作用を抑制する抗Fasリガンド抗体を治療に使用することができる。また、心筋梗塞時の再灌流傷害、臓器移植、移植片対宿主病(GVHD)、潰瘍性大腸炎およびクローン病等のFasリガンド/Fas抗原の関与が示唆されている疾患の予防または治療に有用と考えられる。特に、本発明の抗Fasリガンド中和抗体は、低濃度で強力にアポトーシスを抑制することから、生体内においても低用量で有効でかつ副作用を低率に押えうることが期待されるので、有効性および安全性ならびにコストの面からも有用性が高い。
ヒト化抗体は、ヒトの治療における使用のために、マウスに比べ、そしていくつかの場合にはキメラ抗体に比べ、少なくとも3つの潜在的な利点を有する。
1)エフェクター部分がヒトであるので、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用しうる(例えば、補体依存性細胞障害(CDC)又は抗体依存性細胞障害(ADCC)による、より効率的な標的細胞の破壊)。
2)ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク又はC領域を異物として認識せず、従って、このような注入された抗体に対する抗体応答は、全部が異物であるマウス抗体又は一部分が異物であるキメラ抗体より少ない。
3)注入されたマウス抗体は、通常の抗体の半減期よりも非常に短い、ヒト内での循環における半減期を有すると報告されている(ショー、D.ら、J.Immunol.138:4534−4538(1987))。注入されたヒト化抗体は、恐らく、自然に生じるヒト抗体の半減期とより近い半減期を有し、より小さい又はより少ない頻度の投与量を与えること可能とする。
一方、Fasリガンドによるアポトーシスを促進する抗Fasリガンド抗体は、生体にとって不必要な細胞を除去するために使用することが可能である。たとえば、先述したように、エイズウイルス感染細胞ではFas抗原が発現されているので、エイズウイルス感染初期においては、該抗Fasリガンド抗体を使用してFasリガンドによるアポトーシスを人工的に増強し、感染細胞を早期に除去する事により、エイズを治療する事が可能であろう。また、ある種の自己免疫疾患では、人為的にFas抗原を介したFasリガンドによるアポトーシスを促進させる事により、自己抗原反応性のT細胞の除去が可能になるであろう。また、モリモト H.(Morimoto H.)等は、癌細胞にFas抗原を介したアポトーシスを誘導する事によって、アドリアマイシンやシスプラチンによる制癌効果が相乗的に増強されることを報告している(Cancer Res.,53巻、2591−2596頁、1993年)ので、Fasリガンドによるアポトーシスを促進する抗Fasリガンド抗体は癌治療にも使用することができるであろう。
さらに、それ自体はFasリガンドによるアポトーシスに影響しない抗Fasリガンド抗体も、イムノトキシンのように他の物質を結合させることによって治療等に応用することが可能である。
また、Fasリガンド自体を、治療や研究に使用するためには、当該蛋白質を高純度で、大量に生産することが必要になるが、本発明の抗Fasリガンド抗体はFasリガンドの精製にも有用である。特に治療用の医薬として重要と考えられる活性を保持したFasリガンドを特異的にかつ効率よく精製することができる。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:2
配列の長さ:14
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:3
配列の長さ:13
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:4
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:5
配列の長さ:19
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:6
配列の長さ:18
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:7
配列の長さ:16
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:8
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:9
配列の長さ:179
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
起源 生物名:ヒト
配列:
配列番号:10
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Claims (8)
- 少なくとも108M-1の親和定数でヒトFasリガンドに結合し、軽鎖の相補性決定領域(CDR)1−3が配列表の配列番号11、13および15のアミノ酸配列にそれぞれ対応し、重鎖のCDR1−3が配列番号19,21および23のアミノ酸配列にそれぞれ対応し、これら軽鎖および重鎖から構成される中和抗体である、抗Fasリガンド抗体。
- 受託番号FERM BP−5535のハイブリドーマが産生する抗Fasリガンド抗体。
- 前記CDRが、ヒトFasリガンドと特異的に結合する非ヒト供与体(ドナー)免疫グロブリン(Ig)からのCDRであり、さらにヒト受容体(アクセプター)フレームワーク領域(FR)を含有するヒト化免疫グロブリンである、請求項1に記載の抗Fasリガンド抗体。
- 前記ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークのアミノ酸配列が、供与体免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークのアミノ酸配列に対して65%以上95%以下の同一性がある、請求項3に記載の抗Fasリガンド抗体。
- 前記ヒト化免疫グロブリンが、受容体免疫グロブリン重鎖又は軽鎖フレームワーク中の対応するアミノ酸と置き換わる、供与体免疫グロブリンフレームワーク由来のアミノ酸を含み、かつ、該アミノ酸のそれぞれが、
(1)供与体免疫グロブリン配列中のCDRに1次配列上近接している、又は(2)該供与体もしくはヒト化免疫グロブリン中のCDRから5オングストローム以内の距離にある原子を含む、請求項3または4に記載の抗Fasリガンド抗体。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の抗Fasリガンド抗体を用いてFasリガンドを測定するFasリガンドの測定方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の抗体を産生するハイブリドーマまたは細胞株。
- 前記ハイブリドーマが、FERM BP−5535である請求項7に記載のハイブリドーマ。
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