JP3924935B2 - 温度式膨張弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主蒸発器と副蒸発器とを並列配置するとともに、この両蒸発器の冷媒入口部にそれぞれ温度式膨張弁を配置する冷凍サイクル装置において、副蒸発器側の温度式膨張弁の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車室内の前席側領域および後席側領域をそれぞれ独立に空調制御するために、車室内の前席側および後席側の双方に空調ユニットを配置し、この前後の両空調ユニット内にそれぞれ冷房用の蒸発器を収納するとともに、この前後の両蒸発器と、これら蒸発器に流入する冷媒を減圧するための膨張弁(減圧手段)とをそれぞれ並列に配置した車両空調用冷凍サイクル装置が知られている。
【0003】
ここで、膨張弁は、蒸発器の熱負荷変動に対応して蒸発器出口での冷媒の過熱度を所定値に維持するために、蒸発器出口の冷媒温度を感知して弁開度を変化させて、サイクル冷媒流量を調整している。
このような冷凍サイクル装置では、後席側蒸発器の冷媒入口部に電磁弁を配置して、この電磁弁の開閉により後席側蒸発器への冷媒流入を制御している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の冷凍サイクル装置において、電磁弁作動音の防止や、コストダウンのために、後席側の電磁弁を廃止することがある。電磁弁を廃止しても、後席側の空調ユニットの作動が停止して、後席側蒸発器への送風が停止されると、後席側蒸発器での冷媒蒸発(吸熱)がほとんど停止されるので、膨張弁の弁体と弁座間の微小隙間を通過する冷媒が蒸発器出口まで気液2相の飽和状態のまま流れてくるので、後席側膨張弁におけるダイヤフラム両側の圧力室間に圧力差が発生せず、膨張弁の弁体をばね手段のばね力にて閉弁させることができる。
【0005】
しかし、前席側空調ユニットのみ作動させて、後席側空調ユニットを停止している時(前席側空調ユニットの単独運転時)には、実際には、次の理由から後席側膨張弁の弁体が開閉振動を繰り返し、振動音を発生することが分かった。
すなわち、前席側空調ユニットの単独運転時に、前席側蒸発器のフロスト防止のために、圧縮機作動が断続(ON−OFF)制御されると、これに伴って、図3に示すように、サイクル低圧圧力の変動が起こる。そして、圧縮機の作動(ON)によりサイクル低圧圧力が低下していく過程において、この低圧圧力の低下に比して後席側膨張弁の感温部の温度低下の方が遅れるので、ダイヤフラム片側の感温側圧力室に比して、他の片側の圧力室の圧力(低圧圧力)の方が低くなる。その結果、後席側膨張弁の弁体が図3のA部に示すように微小に開弁する。
【0006】
このように、圧縮機の断続作動に伴って、その都度、後席側膨張弁の弁体が微小に開弁し、その際に、弁体が振動して振動音を発生することが分かった。
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、主蒸発器と副蒸発器とを並列配置する冷凍サイクル装置において、副蒸発器側の温度式膨張弁の弁振動音の発生を抑制することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、高圧側冷媒が導入される入口冷媒通路(13、14)と、この入口冷媒通路(13、14)より導入された冷媒を減圧膨張させる絞り通路(17)と、この絞り通路(17)の開度を調整する弁体(15)と、絞り通路(17)にて減圧膨張した冷媒を副蒸発器(11)に供給する出口冷媒通路(19)と、副蒸発器(11)を通過した冷媒が流れる蒸発器出口通路(20)と、この蒸発器出口通路(20)に設けられ、この蒸発器出口通路(20)の冷媒温度を感知する感温部材(21)と、弁体(15)を変位させる圧力応動部材(22)と、この圧力応動部材(22)の一面側に形成され、蒸発器出口通路(20)の冷媒温度が感温部材(21)を介して伝達され、この冷媒温度に対応した圧力が作用する第1圧力室(28)と、圧力応動部材(22)の他面側に形成され、蒸発器出口通路(20)の冷媒圧力が作用する第2圧力室(29)とを備え、
さらに、入口冷媒通路(13、14)の冷媒を蒸発器出口通路(20)の感温部材(21)近傍位置に減圧して直接導入するバイパス通路(37)を備えることを特徴としている。
【0008】
これによると、弁体(15)上流側の入口冷媒通路(13、14)の部位から高圧液冷媒をバイパス通路(37)を通して減圧し、蒸発器出口通路(20)の感温部材(21)近傍位置に直接導入できる。そして、通路(20)内にて、バイパス通路(37)からの流入冷媒(気液2相状態)の一部が蒸発して感温部材(21)を冷却することができる。
【0009】
そのため、サイクル低圧圧力が低下しても、バイパス通路(37)からの冷媒が低圧圧力の低下に対応した飽和温度まで感温部材(21)を冷却することができる。その結果、第1圧力室(28)と第2圧力室(29)の圧力をほぼ同一にすることができ、弁体(15)を閉弁状態に維持できる。
従って、図3のA部に示す、低圧圧力の低下による弁体(15)の微小な開弁を防止でき、弁振動音の発生を抑制することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明では、請求項1において、入口冷媒通路(13、14)、絞り通路(17)、出口冷媒通路(19)および蒸発器出口通路(20)を形成する膨張弁本体(12)を備え、この膨張弁本体(12)に、入口冷媒通路(13、14)と蒸発器出口通路(20)との間を直結するようにバイパス通路(37)が形成されており、バイパス通路(37)に、バイパス通路(37)より十分小さな開口面積を持つ絞り(38)が配置されていることを特徴としている。
【0011】
これにより、バイパス通路(37)の穴径を加工性の点から比較的大きな寸法にしても、絞り(38)によりバイパス通路(37)を通過する冷媒量を所望量に制限することができる。そのため、バイパス通路(37)の加工性の確保と、バイパス通路(37)を通過する冷媒流れによる冷房性能低下への悪影響の抑止とを両立させることができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明では、冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(1)と、この圧縮機(1)から吐出されたガス冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(2)と、この凝縮器(2)で凝縮した液冷媒を減圧膨張させる第1の膨張弁(6)と、この第1の膨張弁(6)と並列に設けられ、凝縮器(11)で凝縮した液冷媒を減圧膨張させる第2の膨張弁(10)と、第1の膨張弁(6)にて減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(7)と、この第1の蒸発器(7)と並列に設けられ、第2の膨張弁(10)にて減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(11)とを備え、
第1、第2の蒸発器(7、11)のうち、一方は、主に使用される主蒸発器(7)であり、他方は選択的に使用される副蒸発器(11)であり、
第1、第2の膨張弁(6、10)のうち、一方は、主蒸発器(7)への流入冷媒を減圧膨張させる主膨張弁(6)であり、他方は副蒸発器(11)への流入冷媒を減圧膨張させる副膨張弁(10)であり、
この副膨張弁(10)を、請求項1または2に記載の温度式膨張弁により構成した冷凍サイクル装置を特徴としている。
【0013】
さらに、請求項4記載の発明では、車室内前席側を空調する前席側空調ユニット(4)および車室内後席側を空調する後席側空調ユニット(8)と、請求項3に記載の冷凍サイクル装置とを備え、
前席側空調ユニット(4)に主蒸発器(7)および主膨張弁(6)を配置し、後席側空調ユニット(8)に副蒸発器(11)および副膨張弁(10)を配置した車両用空調装置を特徴としている。
【0014】
本発明は、具体的には、請求項3記載の冷凍サイクル装置および請求項4記載の車両用空調装置において好適に実施できる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は車両用空調装置の冷凍サイクル装置に本発明膨張弁を適用した一実施形態を示し、図中、1は自動車のエンジンルーム内に配置される圧縮機であって、この圧縮機1は電磁クラッチ1a等を介して自動車エンジン(図示せず)により駆動され、冷媒を圧縮、吐出するものである。圧縮機1の吐出冷媒ガスは、エンジンルーム内の凝縮器2に送られ、ここで、図示しない冷却ファンにより送風される外気と熱交換して冷却され、冷媒ガスが凝縮する。この凝縮冷媒は、受液器3内にて気液を分離され、液冷媒が受液器3内に溜まる。
【0016】
4は車室内の前席側を空調する前席側空調ユニットで、車室内前部の計器盤内側に配置される。この前席側空調ユニット4には、前席側電動送風機5、前席側温度式膨張弁6、および冷房用熱交換器としての前席側蒸発器(主蒸発器)7が備えられている。前席側蒸発器7の空気吹出部には温度センサ7aが配置され、この温度センサ7aの検出温度(蒸発器冷却温度)が所定値以下に低下すると、電磁クラッチ1aへの通電を遮断して圧縮機1の運転を停止することにより前席側蒸発器7のフロストを防止するようになっている。
【0017】
前席側温度式膨張弁6は、受液器3からの高温高圧の液冷媒を低温低圧の気液2相冷媒に減圧する減圧手段をなすもので、前席側蒸発器7の出口部の冷媒の過熱度が予め設定した所定値となるように弁開度を調整して、冷媒流量を調整するものである。
次に、8は車室内の後席側を空調する後席側空調ユニットで、車室内後部(後席側方部等)に配置される。この後席側空調ユニット8には、後席側電動送風機9、後席側温度式膨張弁10、および冷房用熱交換器としての後席側蒸発器(副蒸発器)11が備えられている。後席側温度式膨張弁10は、受液器3からの高温高圧の液冷媒を低温低圧の気液2相冷媒に減圧する減圧手段をなすもので、後席側蒸発器11の出口部の冷媒の過熱度が予め設定した所定値となるように弁開度を調整して、冷媒流量を調整するものである。
【0018】
上記した前席側温度式膨張弁6および後席側温度式膨張弁10は基本的には同一構造のものでよいが、後席側温度式膨張弁10には本発明独自の工夫点が設けられている。以下、後席側温度式膨張弁10の具体的構造を図2により詳述すると、12は後席側温度式膨張弁10の本体ケースで、アルミニュウム等の金属で略直方体状に成形されている。この本体ケース12の下方部右側には冷凍サイクルの受液器3からの液冷媒が流入する冷媒入口13が開口している。
【0019】
この冷媒入口13は本体ケース12の下方中央部に形成された弁体収容室14に連通しており、この室14内には、膨張弁10の球状の弁体15、及びこの弁体15を支持する支持部材16が収容されている。この弁体15と支持部材16は溶接等により結合されている。本例では、冷媒入口13と弁体収容室14とにより入口冷媒通路を構成している。
【0020】
17は冷媒入口13からの液冷媒を減圧する絞り通路で、その入口部に弁体15に対向する円錐状の弁座17aが形成されており、この絞り通路17の開度を弁体15により調整するようになっている。本例では、上記した絞り通路17および弁体15により膨張弁10の弁体機構部10Aが構成されている。
18は絞り通路17の中心部を貫通して配設された弁棒で、その下端部は球状の弁体15に当接している。19は絞り通路17を通過して減圧された低温、低圧の気液2相冷媒が流れる出口冷媒通路で、本体ケース12の上下方向の略中間部位に形成されており、この出口冷媒通路19は後席側蒸発器11の冷媒入口部に接続される。
【0021】
20は後席側蒸発器11にて蒸発したガス冷媒が流れる蒸発器出口通路で、本例では、本体ケース12の上方部において左右方向に円筒状に貫通するように形成されている。この蒸発器出口通路20の入口端(図2の左端)は後席側蒸発器11の冷媒出口部に接続され、出口端(図2の右端)は圧縮機1の吸入口に接続される。
【0022】
21は後席側膨張弁10の感温棒で、変位伝達部材としての役割も兼ねるものであり、アルミニュウム等の熱伝導の良好な金属にて円柱状に形成されている。この感温棒21は蒸発器出口通路20を貫通して配設され、後席側蒸発器11で蒸発した過熱ガス冷媒の温度を感知する感温手段をなすものである。すなわち、感温棒21は前記過熱ガス冷媒の流れ中に位置することにより、過熱ガス冷媒の熱が伝導され、過熱ガス冷媒の温度を感知するものである。
【0023】
この感温棒21の具体的形態について説明すると、蒸発器出口通路20を貫通する小径の軸部21aと、この小径軸部21aの端部に形成され、後述のダイヤフラム22に当接するダイヤフラムストッパ部21bとから構成されている。このダイヤフラムストッパ部21bは、感温棒21の上端部側(ダイヤフラム22側端部)から円板状に外径を拡大した形状に一体成形されている。
【0024】
次に、後席側膨張弁10の弁体15を作動させる弁体駆動部10Bについて説明すると、弁体15に当接された弁棒18の上端は感温棒21の下端面に当接しており、この感温棒21の小径軸部21aの下端部近傍の外周溝部にはシール用のOリング23が配設され、本体ケース12の孔部24に対して感温棒21は気密に、かつ摺動可能に嵌合している。
【0025】
感温棒21の上端部のダイヤフラムストッパ部21bは本体ケース12の最上部の外面側に配置されたダイヤフラム(圧力応動部材)22に当接している。従って、このダイヤフラム22が上下方向に変位すると、この変位に応じて円柱状感温棒21、弁棒18を介して弁体15も変位するようになっている。本例では、弁棒18と感温棒21とにより変位伝達部材が構成されている。
【0026】
ダイヤフラム22の外周縁部は、上下のケース部材25、26の間に挟持されて支持されている。このケース部材25、26はステンレス(SUS304)等の金属材で構成され、溶接、ろう付け等により一体に接合されている。下側のケース部材26は本体ケース12の最上部にねじ止めにて固定されており、このねじ止め固定部はゴム製の弾性シール材(パッキン)27にて気密になっている。
【0027】
そして、ケース部材25、26内の空間はダイヤフラム22により上側室(第1圧力室)28と下側室(第2圧力室)29に仕切られている。
上側室28には冷媒充填用のキャピラリチューブ30が接合されているが、このチューブ30の先端は閉塞されているので、上側室28は密封空間である。この上側室28の内部には冷凍サイクル内の循環冷媒と同種の冷媒ガスが充填されており、この封入ガスは感温棒21の感知した蒸発器出口の過熱ガス冷媒温度が金属製ダイヤフラム22を介して伝導され、この過熱ガス冷媒温度に応じた圧力変化を示す。
【0028】
従って、ダイヤフラム22はステンレス(SUS304)のように弾性に富み、かつ熱伝導が良好で、強靱な材質にて形成することが好ましい。
一方、下側室29は、感温棒21のダイヤフラムストッパ部21bの周囲の空隙、この空隙の下方部に形成される圧力導入用の空間31および環状連通路32を通して、蒸発器出口通路20に連通しており、この蒸発器出口通路20の冷媒圧力が下側室29内に導入される。すなわち、下側室29内の圧力は通路20と同一の圧力となる。
【0029】
また、本体ケース12の最下部には球状弁体15の支持機構10Cが設けられている。本体ケース12の最下部には外部に開口したねじ穴部33が設けられ、このねじ穴部33に調整ナット34がねじ止め固定されている。この調整ナット34はその外周部にシール用のOリング35が装着されており、これによりねじ穴部33との間を気密にシールしている。
【0030】
36はコイルばね(ばね手段)であり、その一端は調整ナット34により支持され、他端は弁体15の支持部材16に支持されている。従って、調整ナット34の締めつけ位置の調整により、コイルばね36の取付荷重を調整できる。
後席側膨張弁10は、上記したように本体ケース12内に感温棒21を内蔵するタイプのもので、その全体形状が概略箱状であるため、一般にボックス型と称されており、ここまでの構造は前席側膨張弁6も同一である。
【0031】
次に、後席側膨張弁10独自の工夫点について説明すると、本体ケース12において、弁体15の上流側の弁体収容室14の部位、すなわち、高圧液冷媒の入口部位から蒸発器出口通路(低圧側通路)20に直接連通するバイパス通路37が設けてある。このバイパス通路37の出口部は、そこからの流出冷媒により感温棒21を良好に冷却できるようにするため、感温棒21に近接して配置してある。
【0032】
また、バイパス通路37の入口部には、弁体収容室14からバイパス通路37へ流入する高圧液冷媒の流れを所定量以下に絞るためのオリフィス(絞り)38が配置してある。このオリフィス38は適宜の金属で形成され、バイパス通路37の入口部に圧入で固定されている。
ここで、バイパス通路37の穴径は、加工性の観点からφ2.0mm程度の大きさであり、これに対して、オリフィス38は、バイパス通路37を通過する冷媒量を微小量(5〜10kg/h以下)に抑えるために、φ0.2〜0.3mm程度の微小穴径が好ましい。
【0033】
次に、上記構成において作動を説明する。いま、図1の冷凍サイクル装置において、前席側空調ユニット4の送風機5および後席側空調ユニット8の送風機9の駆動用モータに通電して、この両送風機5、9をともに作動させると、前席側および後席側の両蒸発器7、11に空調空気が送風される。また、電磁クラッチ1aに通電すると、電磁クラッチ1aが接続状態となって、圧縮機1が車両エンジンの動力により回転駆動される。
【0034】
この状態では、圧縮機1の作動によりサイクル内に冷媒が循環し、周知のごとく前席側膨張弁6および後席側膨張弁10により高圧液冷媒が減圧されて低温低圧の気液2相冷媒となり、この気液2相冷媒が蒸発器7、11にて空調空気から蒸発潜熱を吸熱して蒸発することにより、空調空気を冷却する。
ここで、後席側膨張弁10を例にとって、その具体的作動を説明すると、膨張弁10の弁体駆動部10Bにおいて、ダイヤフラム22の上側室28内の封入ガスに、感温棒21、金属製ダイヤフラム22を介して、通路20内の蒸発器出口の過熱ガス冷媒温度が伝導される。そのため、上側室28内の圧力は通路20の過熱ガス冷媒温度に応じた圧力となり、一方、ダイヤフラム22の下側室29内の圧力は通路20の冷媒圧力(低圧圧力)となる。
【0035】
従って、この両室28、29内の圧力差と、弁体15を上方へ押圧するばね36の取り付け荷重とのバランスで、弁体15が変位することになる。そして、この弁体15の変位により絞り通路17の開度が調整され、冷媒流量が自動調整される。この冷媒流量の調整作用により、蒸発器出口のガス冷媒の過熱度が所定値に維持される。
【0036】
ところで、本実施形態においては、前述したように、後席側膨張弁10の本体ケース12において、弁体15の上流側の弁体収容室14の部位から蒸発器出口通路(低圧側通路)20に直接連通するバイパス通路37が設けてあるため、弁体15および後席側蒸発器11をバイパスする冷媒流れが生じるが、この冷媒流れは、オリフィス38の絞り作用により微小量(5〜10kg/h以下)に抑えることができる。
【0037】
そのため、バイパス通路37による冷媒のバイパス流れによる圧縮機1の動力増加分を2〜5%程度の微小量に抑えることができる。
また、前後の空調ユニット4、8のうち、前席側空調ユニット4の送風機5のみを作動させ、後席側空調ユニット8の送風機9を停止させると、後席側蒸発器11での冷媒蒸発(吸熱)がほとんど停止されるので、後席側膨張弁10の弁体15と弁座17a間の微小隙間を通過する冷媒が蒸発器出口通路20まで気液2相の飽和状態のまま流れてくる。その結果、後席側膨張弁10におけるダイヤフラム22上側の圧力室28内の冷媒圧力が蒸発器出口通路20の圧力と同一となり、両側の圧力室28、29間に圧力差が発生しないので、弁体15をばね36のばね力にて閉弁させることができる。
【0038】
ところで、前席側空調ユニット4の単独運転時における実際のサイクルの挙動としては、前席側蒸発器7の冷却温度(温度センサ7aの検出温度)に応じて圧縮機1の運転が断続されると、これに伴ってサイクル低圧圧力が前述の図3に示すように変動し、このサイクル低圧圧力の低下過程において後席側膨張弁10の弁体15が微小に開弁しようとする現象が発生する。
【0039】
しかし、本実施形態によると、後席側膨張弁10において、弁体15の上流側の弁体収容室14の部位から蒸発器出口通路20に直接連通するバイパス通路37が設けてあるため、弁体収容室14の高圧液冷媒がオリフィス38で減圧され、バイパス通路37を通過して蒸発器出口通路20の感温棒21近傍位置に直接流入する。
【0040】
そして、通路20内にて、バイパス通路37からの流入冷媒(気液2相状態)の一部が蒸発して感温棒21を冷却する。ここで、圧縮機ON時にサイクル低圧圧力が図3のように低下しても、バイパス通路37から常時冷媒が流入し、この流入冷媒が直ちに低圧圧力の低下に対応した飽和温度まで感温棒21を冷却することができる。
【0041】
その結果、ダイヤフラム22上側の圧力室28内の冷媒圧力を圧縮機ON時にも常に蒸発器出口通路20の圧力(サイクル低圧圧力)とほぼ同一にすることができ、弁体15をばね36のばね力にて閉弁した状態に維持できる。すなわち、本実施形態によると、図3のA部に示す、低圧圧力の低下による弁体15の微小な開弁を防止でき、弁振動音の発生を抑制することができる。
【0042】
(他の実施形態)
なお、上述の実施形態では、バイパス通路37の入口部に高圧液冷媒の流れを絞るためのオリフィス38を配置しているが、バイパス通路37自身の穴径(開口断面積)を十分小さくすることが可能な場合は、オリフィス38を廃止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する車両用空調装置の冷凍サイクル図である。
【図2】図1の後席側膨張弁の縦断面図である。
【図3】本発明および従来技術の作動説明図である。
【符号の説明】
10…後席側膨張弁、11…後席側蒸発器、12…本体ケース、15…弁体、
17…絞り通路、20…蒸発器出口通路、21…感温棒、
22…ダイヤフラム、28…上側室(第1圧力室)、
29…下側室(第2圧力室)、37…バイパス通路、38…オリフィス。
Claims (4)
- 並列接続された主蒸発器(7)および副蒸発器(11)を有する冷凍サイクルに適用され、かつ、前記副蒸発器(11)に流入する冷媒を減圧膨張させる温度式膨張弁であって、
高圧側冷媒が導入される入口冷媒通路(13、14)と、
この入口冷媒通路(13、14)より導入された冷媒を減圧膨張させる絞り通路(17)と、
この絞り通路(17)の開度を調整する弁体(15)と、
前記絞り通路(17)にて減圧膨張した冷媒を前記副蒸発器(11)に供給する出口冷媒通路(19)と、
前記副蒸発器(11)を通過した冷媒が流れる蒸発器出口通路(20)と、
この蒸発器出口通路(20)に設けられ、この蒸発器出口通路(20)の冷媒温度を感知する感温部材(21)と、
前記弁体(15)を変位させる圧力応動部材(22)と、
この圧力応動部材(22)の一面側に形成され、前記蒸発器出口通路(20)の冷媒温度が前記感温部材(21)を介して伝達され、前記冷媒温度に対応した圧力が作用する第1圧力室(28)と、
前記圧力応動部材(22)の他面側に形成され、前記蒸発器出口通路(20)の冷媒圧力が作用する第2圧力室(29)と、
前記入口冷媒通路(13、14)の冷媒を前記蒸発器出口通路(20)の前記感温部材(21)近傍位置に減圧して直接導入するバイパス通路(37)とを備えることを特徴とする温度式膨張弁。 - 前記入口冷媒通路(13、14)、前記絞り通路(17)、前記出口冷媒通路(19)および前記蒸発器出口通路(20)を形成する膨張弁本体(12)を備え、
この膨張弁本体(12)に、前記入口冷媒通路(13、14)と前記蒸発器出口通路(20)との間を直結するように前記バイパス通路(37)が形成されており、
前記バイパス通路(37)に、前記バイパス通路(37)より十分小さな開口面積を持つ絞り(38)が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の温度式膨張弁。 - 冷媒を圧縮し吐出する圧縮機(1)と、
この圧縮機(1)から吐出されたガス冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器(2)と、
この凝縮器(2)で凝縮した液冷媒を減圧膨張させる第1の膨張弁(6)と、この第1の膨張弁(6)と並列に設けられ、前記凝縮器(11)で凝縮した液冷媒を減圧膨張させる第2の膨張弁(10)と、
前記第1の膨張弁(6)にて減圧膨張した冷媒を蒸発させる第1の蒸発器(7)と、
この第1の蒸発器(7)と並列に設けられ、前記第2の膨張弁(10)にて減圧膨張した冷媒を蒸発させる第2の蒸発器(11)とを備え、
前記第1、第2の蒸発器(7、11)のうち、一方は、主に使用される主蒸発器(7)であり、他方は選択的に使用される副蒸発器(11)であり、
前記第1、第2の膨張弁(6、10)のうち、一方は、前記主蒸発器(7)への流入冷媒を減圧膨張させる主膨張弁(6)であり、他方は前記副蒸発器(11)への流入冷媒を減圧膨張させる副膨張弁(10)であり、
この副膨張弁(10)を、請求項1または2に記載の温度式膨張弁により構成したことを特徴とする冷凍サイクル装置。 - 車室内前席側を空調する前席側空調ユニット(4)および車室内後席側を空調する後席側空調ユニット(8)と、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置とを備え、
前記前席側空調ユニット(4)に前記主蒸発器(7)および前記主膨張弁(6)を配置し、
前記後席側空調ユニット(8)に前記副蒸発器(11)および前記副膨張弁(10)を配置したことを特徴とする車両用空調装置。
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