JP3924730B2 - 自吸式遠心ポンプ装置 - Google Patents

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Description

技術分野
この発明は、粘性が高く気泡を大量に含む泥状物や固形異物等が混入している液でも吸上げ輸送可能な自吸式遠心ポンプ装置に関するものであり、特に、完全自動運転ができて管理上の手が掛からない、高性能且つ経済的な自吸式遠心ポンプ装置を得ようとするものである。
背景技術
粘性が高く気泡を大量に含む泥状物を遠心ポンプで吸上げすることは一般に困難とされており、更にこのような液に固形異物等が混入しているものを吸上げ輸送する簡易かつ安全な手段が一般に望まれている。従来、真空装置を併用したとしても遠心ポンプが簡単に上記の目的に使用できにくいのは、羽根車中心付近に遠心分離され生成された空洞が簡単に上記のような性質の液に置き替わりにくいからであった。
この問題を明快に解決したのが、特公昭40−3655号「遠心ポンプ」の発明であった。その内容は、その公告公報にも明らかな通り、送液用の主ポンプに対し、その主羽根車中央部近傍に連通した吸込口を有する空洞引抜き用副ポンプを並列に設け、その副ポンプの吸込口をその吐出能力に比して絞られた形に形成させ、副ポンプの吐出口を主ポンプの吸込側に開放させ、副ポンプの副羽根車中央部近傍から真空ポンプへの排気通路を設けることによって、主ポンプの主羽根車中央部近傍の空洞を強力に排除し、揚液が常に連続の状態を保つようにしたものである。そして、更にその発明を改良した特公昭42−3145号「自吸式遠心ポンプ」においては、第15図及び第16図に例示したように、ポンプ停止中に揚液が排気通路に侵入して真空(排気)ポンプ12が故障するのを防止する手段として、該排気通路に、発生負圧によって変位する作動体により開閉する安全弁6を介在させたものである。(以下これらの発明を「原発明」と呼称する)
従来技術である原発明の装置は、それまで困難とされていた泥状物等の吸上げを容易に行えるものとして、広く使われてきたものであるが、しかし依然として次のような未解決の課題がある。即ち、
第1に、該安全弁を開弁させる力源を真空ポンプの発生負圧に頼っているため、弁が開いた瞬間に負圧が減少して弁閉鎖方向に作動し、弁が閉鎖した瞬間に負圧が高まって弁開方向に作動し、その繰り返しにより振動や音が発生する一種のフラップ現象によって、該安全弁の作動が不安定になる可能性がある。
第2に、ポンプ運転中には、気液分離を行なう副ポンプが真空ポンプの負圧に負けないだけの吐出能力によって揚液と排気系とを遮断し、又、ポンプ静止時には、安全弁が弁閉鎖によって揚液と排気系とを遮断しているので問題は生じない訳であるが、しかし、ポンプの起動の瞬間や停止に向かう瞬間、即ち副ポンプが正規回転数以下で回転している過渡的瞬間には、副ポンプの吐出能力が不足して真空ポンプ側の負圧に負けてしまう場合があり、しかもその過渡的瞬間には安全弁が開閉作動中の半開きの状態であるため主ポンプ側と排気系とが連絡してしまい、負圧を埋めるために主ポンプ側の揚液が真空ポンプ側に引き込まれて、真空ポンプの汚染や故障を引き起こす可能性がある。更に、ポンプが停止に向かう瞬間においては、主ポンプの吐出側の背圧が高い等の場合に揚液が瞬間的な逆流によって真空ポンプ側に侵入したり、あるいは、主ポンプの吸込側の揚程が高い等の場合に揚液の逆流落下等に伴う負圧によって真空ポンプ(真空ポンプが液封式の場合)の作動液が主ポンプ側に引き込まれて、作動液の欠量や揚液の逆汚染を引き起こす可能性もある。
上記の揚液と排気系との瞬間的な連絡によって発生する問題は、揚液も真空ポンプ作動液も共に水である場合等の、一般的な液体の輸送に用いる程度のものであれば無視しても実用上差し支えないが、例えば揚液が化学品や食品等の取扱いに注意を要する液体の場合には、これら揚液による真空ポンプの汚染も、真空ポンプ作動液による揚液の逆汚染も大きな問題となる。
このような場合、従来の解決策としては、副ポンプが正規回転数以下で回転している時には敢えて真空ポンプの排気能力を落とすように調節したり、あるいは、安全弁以外に弁やコック類を追加して手動で別途開閉したりしているが、いずれも複雑な装置となったり、自動運転には程遠い煩わしいものとなったりして、本質的な解決とはなっていなかった。
この発明は、上述のような従来の課題を、簡潔な構成によって抜本的に解決し、その自吸式遠心ポンプ装置としての高度な性能は維持したまま、安定的且つ確実に作動する新しい弁機構等を導入して、ポンプ起動、運転、停止の全行程にわたって主ポンプ側と真空装置側の間での液の侵入を防ぐこと等によって、完全自動運転ができて管理上の手が掛からず、小型化も大型化も容易に実施でき、耐久力もあり、設備及び管理コストも極めて経済的な自吸式遠心ポンプ装置を得ることを目的とする。
発明の開示
上記の目的を達成するために、この発明の自吸式遠心ポンプ装置は、送液用の主ポンプと、気液遠心分離用の副ポンプと、排気用の真空装置とを備え、該主ポンプの羽根車中央部近傍は、該副ポンプの吐出能力に比して絞られた通過面積を有する通路によって該副ポンプの吸込口に連通され、該副ポンプの吐出口は、還流路によって該主ポンプの吸込口に連通され、該副ポンプの羽根車中央部近傍は、排気通路によって該真空装置に接続され、該自吸式遠心ポンプ装置の原動機入力の投入の時点から遅延して開弁作動する緩作動弁と、該自吸式遠心ポンプ装置の原動機入力の遮断の時点に直ちに閉鎖作動する急作動弁とが、該排気通路中に直列に介装された構成となっている。
この発明においては、前記緩作動弁が、開弁作動のタイミングを電気制御された電動弁であってもよい。
又、前記急作動弁が、閉鎖作動のタイミングを電気制御された電動弁であってもよい。
又、前記真空装置が液封式真空ポンプを備え、且つ前記緩作動弁が、該液封式真空ポンプの作動液の液圧の上昇によって開弁作動する弁であってもよい。
又、前記緩作動弁と前記急作動弁とが合体されて、開弁作動が遅く閉鎖作動が速い一個の弁装置に構成されてもよい。
又、前記緩作動弁と前記急作動弁のいずれかの閉鎖によって前記排気通路が前記副ポンプの羽根車中央部近傍と遮断されたときに、該排気通路を大気に連通させることによって、前記真空装置の真空作用力を減殺する弁手段が、該排気通路中に併設されてもよい。
又、前記副ポンプの排気通路側の液面レベルの低下によって開弁作動するフロート弁が、前記排気通路中に直列に介装されてもよい。
又、上部に入口と出口とが開口した液溜槽が、前記排気通路中に直列に介装されてもよい。
又、前記主ポンプ、副ポンプ、真空装置のいずれか又は全てが、異なる回転軸系を有する構成であってもよい。
又、前記主ポンプ、副ポンプ、真空装置の全てが、同一の回転軸系を有する構成であってもよい。
又、前記主ポンプの羽根車と前記副ポンプの羽根車とが、隣接して一体的に形成されてもよい。
又、前記真空装置が液封式真空ポンプを備え、且つ、前記主ポンプの送液流路に接して該液封式真空ポンプの作動液を冷却する冷却通路が形成され、該冷却通路の入口は該液封式真空ポンプの排気口に連絡され、該冷却通路の出口は該液封式真空ポンプの吸気口に連絡される構成であってもよい。
又、前記主ポンプの吸込口近傍に、切断用の回転刃部及びこれに対応する固定刃部を備えてもよい。
又、前記主ポンプの羽根車中央部近傍と前記副ポンプの吸込口との間の連通路の吸込開口部が、該主ポンプの羽根車の吸込口側の空洞発生箇所に臨んで設けられてもよい。
これらのことによって、この発明の自吸式遠心ポンプ装置(以下「本ポンプ」と呼称する)は次のような作用効果を発揮する。
まず、本ポンプの起動操作、即ち原動機入力の投入の際には、急作動弁の開弁速度に拘わらず、緩作動弁が遅延時間をおいて開弁するので、副ポンプが気液遠心分離を行うに充分な回転数(吐出能力)に達した後にはじめて排気通路が開通することとなり、主ポンプから真空装置に液体が引き込まれることはない。
次に、本ポンプの運転中は、主ポンプの中央部の空洞が、副ポンプによって引き抜かれ且つ気液遠心分離され、液分は主ポンプに還流され、気体分は緩作動弁、急作動弁共に開通している排気通路を経由して真空装置によって排気されて、主ポンプが連続的に送液を行う訳であるが、この時、副ポンプは気液遠心分離を行うに充分な回転数(吐出能力)を保っており、一方真空装置も充分な真空度を保っているので、主ポンプと真空装置間のいずれの方向にも液体が侵入することはない。
次に、本ポンプの停止操作、即ち原動機入力の遮断の際には、緩作動弁の閉鎖速度に拘わらず、急作動弁が直ちに閉鎖するので、排気通路内に負圧(真空度)が残っていたとしても排気通路そのものが強制的に閉鎖されることとなり、主ポンプと真空装置間のいずれの方向にも液体が侵入することはない。
そして、本ポンプの静止中は、緩作動弁、急作動弁共に閉鎖しているので、主ポンプと真空装置間のいずれの方向にも液体が侵入することはない。
これらの諸作用により、前述の目的を容易且つ経済的に達成したものである。
更に、排気通路中にフロート弁や液溜槽を直列に介装して、万一前述の一連の作動機構が損傷して作動不充分となった場合にも、主ポンプと真空装置間の液体の侵入を阻止して、装置の安全管理の完璧を期すことができる他、必要に応じて、真空装置の温度上昇を抑える冷却機構を付設したり、揚液中の異物の破砕機構を付設したりして、多様な用途に容易に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の第1実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第2図は、この発明の第2実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第3図は、この発明の緩作動弁の部分についての一実施例を示す縦断面図である。
第4図は、この発明の緩作動・急作動弁の部分についての一実施例を示す縦断面図である。
第5図は、この発明の緩作動・急作動弁の部分についての一実施例を示す縦断面図である。
第6図は、この発明の第3実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第7図は、この発明の第4実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第8図は、この発明の第5実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第9図は、この発明の第6実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第10図は、この発明の第7実施例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第11図は、第10図におけるX−X’断面図(一部正面図)である。
第12図は、第10図におけるY−Y’断面図である。
第13図は、この発明の第8実施例を示す縦断面図である。
第14図は、この発明の第9実施例を示す縦断面図である。
第15図は、従来技術例を示す縦断面図(一部側面図)である。
第16図は、第15図における安全弁の部分を示す縦断面図である。
発明を実施するための最良の形態
以下各図にわたって共通の部分には同じ符号を付すものとし、まず、この発明の第1実施例を示した第1図について詳細を説明する。
第1図において、1は主ポンプケーシング、2は主羽根車、3は主ポンプと副ポンプとの隔板、4は副ポンプケーシング、5は副羽根車である。本図においては、簡単化のために主羽根車2も副羽根車5もセミオープン型が例示してある。両羽根車2;5は共に、孔やスリット等により中央部近傍の前面側と背面側とが連通されている。cは両ポンプ間の隔板3の中央開口とこれを貫通する軸部との間に形成された間隙部で、主ポンプの中央部と連通した副ポンプ吸込口に相当し、その通路面積が副ポンプの吐出能力に比較して充分に絞られた形に形成されている。この間隙部は、異物等の閉塞を防ぐため副ポンプ側を広くとったり、耐久性を増すために固い材質とゴム等を組み合わせたり、あるいは繊維状の物質等を粉砕するために歯形にするとかの手段を講じてもよい。
そして、副ポンプの吐出口eは、主ポンプの吸込側に対して還流路e’を介して開放連絡されている。fは副ポンプの吸込口cの反対側の中央部近傍に開かれた排気通路であり、副ポンプの中央部近傍に集まる空洞状の気体を真空装置12に導く。
真空装置12は、液封式真空ポンプでもよいし、その他の形式の真空ポンプでもよく、更にはその他の形式の負圧発生装置でもよい。
なお、これら主ポンプ、副ポンプ、真空装置の3つの機構は、勿論別々のタイミングで起動、停止するような制御シークエンスを組んでも差し支えはないが、送液途中に気体の塊が混入した様な場合にも支障なく運転を続けられるような、文字通りの完全自動運転をめざす本発明の趣旨からは、これら3つの機構を同時的に作動させることが望ましく、又、以下説明も同時的な作動を前提としたものとする。
第1図における主ポンプ及び副ポンプ部分の作動の態様を説明する。
本ポンプを起動し(勿論主ポンプ吐出口には逆止弁を備えるなどして、主ポンプ吐出口からは吸気出来ないようにしてあるものとする)正規回転数に達すると、主ポンプ吸込側の気体は、a→b→c→d→f及びa→e’→e→d→fの両経路を通って真空装置12に排気され、やがて吸上げられた揚液は主ポンプ吸込口a、主ポンプ作動室bを満たし、一方では還流路e’を満たし、次いで副ポンプ作動室dに侵入して行こうとするが、副ポンプの副羽根車5の吐出能力(即ち発生可能圧力)が真空装置12の吸引力(即ち真空度)以上となる構造にしてあるから、副ポンプ自体は真空装置12の吸引作用で還流路e’から副ポンプ側に揚液を吸込しょうとすることに対しては、一種の逆止弁的作用を果たす。そこで揚液は副ポンプ吸込口cを通り副ポンプ作動室d内に吸引されるが、前述の通り副ポンプ吸込口cは該副ポンプの吐出能力に比して絞られた形となっているから、吸込される液分は全てその吐出口eから還流路e’へと還流される。
もし揚液中に気体を生じていて主ポンプ中央部に空洞ができても、それは直ちに副ポンプ側に吸込まれ、そして排気通路f〜hに吸込まれて行く。このとき、副ポンプの副羽根車5が真空装置12の吸引力(真空度)に負けないだけの圧力を発生させ、且つ気液遠心分離羽根車として働く構造にしてあるから、直ちに気体と液分を分離し、液分は主ポンプ側に返し、副羽根車5の中央部にできた気体の空洞は排気し、連続且つ安全に揚液の吸引を続ける。又、この運転は排気通路hには揚液が行かないので、真空装置12は安全である。
以上の通りであるから、本ポンプは、水などの単純な液体に対しても、混入気体を分離、排気しつつ吸上げるという特徴ある揚水性能を発揮するのは勿論、熱湯や煮込み状態にある溶体の吸上げ、更には泥状物質の吸上げ等、従来の遠心ポンプでは困難とされていたものすら容易に取り扱うことができる。
次に、第1図における排気通路に付設された諸機構について説明する。
副ポンプより真空装置12に至る排気通路中には、基本的に、本ポンプ起動時に遅延時間をおいて排気通路を開通させることを主目的とした緩作動弁13と、本ポンプ停止時に直ちに排気通路を遮断することを主目的とした急作動弁14とが直列に配設されている。
緩作動弁13は、本ポンプ起動後に遅延時間をもって開作動する電動弁形式のものが例示されており、電気的な制御(制御系統の図示は省略)により、遅延作動する仕組みとなっている。この緩作動弁13は、本ポンプの原動機入力の投入時に、急作動弁14の状態如何に拘わらず遅延時間をおいて排気通路を開通させることとなるので、本ポンプの起動の瞬間に主ポンプ側揚液が真空装置側に引き込まれるのを防止する。
急作動弁14は、本ポンプ停止時に瞬時に閉作動する電動弁の一例として電磁弁形式のものが例示されている。電磁弁そのものの作動原理及び構造については公知であるから詳説ま省略する。この急作動弁14は、本ポンプの原動機入力の遮断時に、緩作動弁13の状態如何に拘わらず強制的に排気通路を遮断することとなるので、本ポンプの停止の瞬間に主ポンプ側揚液が真空装置側に引き込まれたり真空装置側の液体が主ポンプ側に引き込まれたりするのを防止する。
なお、緩作動弁13と急作動弁14を一体構造に形成することも当然に可能であり、例えば、開作動は遅延時間をもって行い閉作動は瞬時に行うよう制御された1個の弁に形成してもよいが、概念の簡単化のため、別置きのものを図中に例示したものである。
そして、第1図には、この排気通路中に更に安全装置としてのフロート弁16や液溜槽15が直列に介装された例が図示されている。
フロート弁16は、副ポンプの中央部近傍に臨む側にフロートを備え、その反対側に弁体と弁座を配置した一般的な形式のものが例示されている。液体の浮力によって閉鎖するフロート弁16は、本ポンプの起動、運転、停止の全ての時点にわたって、副ポンプ側の揚液液面が上昇した場合に排気通路を強制的に閉鎖して、主ポンプ側揚液が真空装置側に引き込まれるのを阻止する。このため、副ポンプから主ポンプへの還流路e’が詰まったり、あるいは副羽根車5が損傷等で機能不十分となったりして、副ポンプの排気側に揚液が充満する事故が起こった場合にも、真空装置への揚液の侵入を防ぐことができる。
液溜槽15は、容器の上部に入口と出口を備え液体が底部に滞留する形式のものが例示されている。即ち、容器の上部に副ポンプからの入口kと真空装置への出口mとが開口し、副ポンプ又は真空装置のいずれかより侵入した液体はこの容器底部に滞留し、気体分のみ通過可能になるよう形成されている。このため、万一前述の一連の作動機構が損傷して作動不充分となった場合などの緊急時にも、排気通路中の液体を捕捉して副ポンプと真空装置間での液体の侵入を許さず、装置の安全管理の完璧を期すことができる。なお、図中には滞留液を排出するためのドレン口nが容器の底部に設けられているが、このドレン口nからの排出操作は、手動でもよいし、滞留液が所定量に達したら自動排出する仕組みにしてもよいし、更には常に吸引排出するようにしてもよい。この液溜槽15の容器は、滞留液の量が確認できるよう透視可能な材質とすることが望ましい。
これら緩作動弁13、急作動弁14、フロート弁16、液溜槽15の4つの機構は、それぞれに特徴ある有効な作用をするものであり、その機構のいずれか1つ、2つ又は3つのみを適用しても、現地の配管条件や液質によっては必要充分な働きをし得るものであるが、本図においては、最も厳しい仕様、例えば化学品や食品を取り扱う場合などにも完璧に対応できる実施例として、4つの機構の全てを備えたものを示したものである。
次に、この発明の第2実施例を示した第2図について説明すると、この実施例は、真空装置12が液封式真空ポンプである場合の適用例として、緩作動弁13を、電動弁から液圧式の弁に置き換えたものである。又、液溜槽15の出口部分の構造が、該真空ポンプ12の吸気口iへの取付け部より延設されたパイプの上端が液溜槽15の容器の上部で開口するよう形成されて、液溜槽15が該真空ポンプ12に直結して取付けられた例も示している。
液封式真空ポンプ12の作動原理及び構造は、公知のものであるので、詳説は省略する。該真空ポンプ12の作動液としては、現地の仕様に応じた種類の液体、例えばオイルや水を用いればよく、もし主ポンプの揚液が清浄な場合には、その揚液そのものを用いてもよい。
第3図は、第2図中の緩作動弁13の構造についての一例を示したものである。即ち、弁箱の底部開口に弁座11が形成され、上部にシール部材7(例えばダイヤフラム)が設けられ、そのシール部材7と弁箱蓋部との間に弁駆動室gが形成され、該シール部材7には連結棒8が固着され、その他端に弁体10が弁座11に対応して装着され、常に弁体10を閉じさせる方向に付勢する付勢部材9が介装されている。hは弁箱よりの排気通路で、液封式真空ポンプ12の吸気口に導かれる。なお、シール部材7については、ダイヤフラムを図示したが、ダイヤフラムを他のシール部材即ちベローズ、ピストン等に置き換えてもよいことは勿論である。
この緩作動弁13の作動は、該真空ポンプ12から導かれた作動液の圧力上昇によって、弁駆動室gの内圧が上昇すると、一定時間経過後に付勢部材9の付勢力に打ち勝って、シール部材7が変位して弁体10を開き、排気通路を開通させるものである。
又、この第3図においては、弁体10が閉鎖状態の時にこの緩作動弁13の排気側が大気に連通するよう、弁体10と連動して作動する大気連通開閉部8aを備えたものが例示されており、それによって、本ポンプの起動当初は該真空ポンプ12が大気を吸気して真空作用力が減殺されることになるので、負圧を発生させるまでの遅延時間を延長して、本ポンプの起動の瞬間に主ポンプ側揚液が該真空ポンプ12側に引き込まれる可能性を更に減らすことができる。図示例では、この大気連通開閉部8aは、連結棒8に穿設された連通孔と連結棒8のシール部材7との固着部近辺に設けられたもう一つの弁からなっているが、この連動双子弁形式の弁装置構造に限ることなく、種々形態のものが設計できることは言うまでもない。
更に、この第3図においては、弁駆動室gの中に気体を密封した袋を挿入したものが例示されている。その目的は、該真空ポンプ12が起動されて弁駆動室g内の液圧が高まってきたときに、その液圧が直ちに弁体10を駆動することがないように、袋内の気体の圧縮の過程を経させて弁体10の作動を更に遅延させるものである。但し、実用上は、単に弁駆動室gに溜まる気体をそのまま利用して済むこともある。更に作動を遅延させるための他の方法としては、弁駆動室gへの液圧導入通路を絞る方法も当然考えられる。
この緩作動弁13に、急作動弁の機能も合体させて、開作動は遅延時間をもって行い閉作動は瞬時に行うよう制御された1個の弁装置に構成することも可能であり、その構成の一例が第4図に示されている。これは、液封式真空ポンプ12から弁駆動室gに作動液を導く通路の途中に絞り弁21を介装すると共に、弁駆動室gから該真空ポンプ12に向かう方向にのみ作動液を通過させる逆止弁22を並列に介装することによって、通過方向による通過流量の差を設け、該弁13の開作動は遅延時間をもって行なわせ閉作動は瞬時に行なわせるものである。その絞り弁21の開度調節及び逆止弁22の口径選択等によって、該弁13の開作動と閉作動の時間を調節できる。その他の構造は第3図のものと同様であるので詳説は省略する。
更に、第4図のものの構造を簡単化した一例が第5図に示されている。これは、前記絞り弁21と逆止弁22の役割を、弁駆動室gに作動液を導く通路の途中に設けた弁体23の往復動によって代替させたものである。即ち、図示例では、弁体23が下がったときには通路を絞り(弁体23の表面凹凸や孔等により若干の流路を残すものとする)上がったときには通路を拡大するものである。その他の構造は第4図のものと同様であるので詳説は省略する。
緩作動弁13に第4図や第5図にて例示したような急作動弁の機能も持たせた場合には、当然に急作動弁14は省略してもよい訳であるが、主ポンプ側と真空装置側の液の相互侵入を確実に阻止するための安全装置として、この急作動弁14を省略せずに残しておいてもよい。
さて、第6図は、この発明の第3実施例を示したものであり、これは、第2図のものの副ポンプの部分を真空装置と同一の回転軸上に移設したものである。その他の構成及び作用は第2図のものと同様であるから、詳説は省略する。
次に、第7図は、この発明の第4実施例を示したものであり、これは、第2図のものの主ポンプ、副ポンプ、真空装置の全てを同一の回転軸上に配置して、全体としてコンパクトな装置にまとめたものである。なお、主ポンプの羽根車2はオープン型のものを例示してある。その他の構成及び作用は第2図のものと同様であるから、詳説は省略する。
次に、第8図は、この発明の第5実施例を示したものであり、これは、第7図のものの主ポンプの羽根車2と副ポンプの羽根車5とを、隣接させ一体的に形成させたもので、全体として更にコンパクトな装置にまとめた実施例である。その他の構成及び作用は第7図のものと同様であるから、詳説は省略する。
次に、第9図は、この発明の第6実施例を示したものであり、これは、第7図のものの主ポンプの送液流路に接する箇所に液封式真空ポンプ12の作動液を冷却する冷却通路24を形成し、該冷却通路24の入口は該真空ポンプ12の排気口jに連絡させ、該冷却通路24の出口は該真空ポンプ12の吸気口iに連絡させたものである。これによって、該真空ポンプ12の作動液が長時間運転に伴う温度上昇で機能低下するのを防ぎ、ポンプ全体としての性能及び耐久性を向上させることができる。なお、図中の25は、該真空ポンプ12の排気口jから排出された気体に混じる作動液を分離抽出して、冷却通路24向けに送り出す分離器であり、図中に示唆したように分離器25内への放出方向を該分離器25の壁面接線方向にして遠心分離効果を発生させる形式とすればなお望ましい。その他の構成及び作用は第7図のものと同様であるから、詳説は省略する。
次に、第10図は、この発明の第7実施例を示したものであり、これは、第7図のものの主ポンプの吸込側に主羽根車2に先行してこれと同軸の回転刃部26を設け、そしてこれに対応してケーシング1側に固定刃部27を設け、破砕器を構成させたものである。これによって、主ポンプの送液中の閉塞の原因となる異物を破砕して主ポンプの閉塞を防ぎ、ポンプ全体としての性能及び耐久性を向上させることができる。具体的には例えば、揚液中に繊維、塊、その他の挟雑物が混じる汚物等を扱うに際しても、汚物等を能率的に破砕しながら移送することができる。なお、第11図は、第10図におけるX−X’断面、第12図は、第10図におけるY−Y’断面を図示したものであり、主羽根車2及び副羽根車5の形状や、その前背面間の連通孔・スリットの形状の一例も示している。その他の構成及び作用は第7図のものと同様であるから、詳説は省略する。
次に、第13図は、この発明の第8実施例を示したものであり、これは、第6図のものの主ポンプの羽根車中央部近傍と副ポンプの吸込口との間の連通流路c’の吸込開口部cを、該主ポンプの羽根車2の吸込口側の、図中の一点鎖線のような形状になる空洞発生箇所に臨んで設けさせたものである。そして、副ポンプの吐出口は還流路e’を経て主ポンプの吸込口aに連通されている。このように連通路の配置は異なってはいるが、その他の構成及び作用は第6図のものと同様であるから、詳説は省略する。
次に、第14図は、この発明の第9実施例を示したものであり、これは、第13図のものを更に発展させて、該主ポンプの羽根車2の吸込口側に、主ポンプと連動して回転する羽根28を設けて、その回転中心部近傍の、図中の一点鎖線のような形状になる空洞発生箇所の気体を吸込み副ポンプに送る機構としたものである。そして、副ポンプの吐出口は還流路e’を経て主ポンプの吸込口aに連通されている。このように連通路の配置は異なってはいるが、その他の構成及び作用は第13図のものと同様であるから、詳説は省略する。
さて、上記全実施例を通じて、
主羽根車2については、ノンクロッグ型、オープン型、セミオープン型、クローズド型など、公知のいかなる形状のものも適用できる。
副ポンプの形式及び副羽根車5の形状についても、各種の公知のものが適用可能であり、気液分離をより効果的にするために複列としたりしてもよい。又、副ポンプの吐出口と主ポンプの吸込側との間の還流路e’は、主ポンプケーシング1との一体鋳造で形成しても、別途配管を装着してもよい。
真空装置12は、前述のように各種公知のものが適用可能であり、個数も一つでもよいし、分岐して任意の真空装置を追加してもよい。
なお、主ポンプ、副ポンプ、真空装置の全てが同じ回転軸上にあっても、あるいはいずれかが異なる回転軸系を持ってもよく、上記の各実施例に述べた組合せの他にも、図示は省略したが、主ポンプ、副ポンプ、真空装置の夫々を全て別の回転軸上としても差し支えない。
又、各実施例は、いずれか1つを単独で採用しても、いくつかを組み合わせて採用してもよい。
その他、この発明の各構成要素にわたって、この発明の趣旨の範囲内で、その構成要素の個数や、構成要素間の位置や配列順序を変更したり、従来技術を援用するなど、種々設計変更可能であり、更にその素材材質も適宜現地仕様に適合したものを選択可能であり、この発明を上記の各実施例に限定するものではない。
産業上の利用可能性
この発明は、粘性が高く気泡を大量に含む泥状物や固形異物等が混入している液でも気液分離、排気しつつ吸上げ輸送可能な自吸式遠心ポンプ装置を、簡潔な構成によって改良し、その自吸式遠心ポンプ装置としての高度な性能は維持したまま、安定的且つ確実に作動する新しい弁機構等を導入して、ポンプ起動、運転、停止の全行程にわたって主ポンプ側と真空装置側との間での液の侵入を防ぐこと等によって、該ポンプの耐久性と利便性を大幅に向上させたものである。完全自動運転ができることに加え、装置がメンテナンスフリーであるため、装置の運転や保守管理の負担が大幅に軽減され、又、小型化も大型化も容易に実施でき、更に、簡潔な構成であるため設備及び管理コストも極めて経済的であり、その実施効果は極めて大きい。

Claims (14)

  1. 自吸式遠心ポンプ装置において、
    送液用の主ポンプと、気液遠心分離用の副ポンプと、排気用の真空装置とを備え、該主ポンプの羽根車中央部近傍は、該副ポンプの吐出能力に比して絞られた通過面積を有する通路によって該副ポンプの吸込口に連通され、該副ポンプの吐出口は、還流路によって該主ポンプの吸込口に連通され、該副ポンプの羽根車中央部近傍は、排気通路によって該真空装置に接続され、該自吸式遠心ポンプ装置の原動機入力の投入の時点から遅延して開弁作動する緩作動弁と、該自吸式遠心ポンプ装置の原動機入力の遮断の時点に直ちに閉鎖作動する急作動弁とが、該排気通路中に直列に介装されたことを特徴とする自吸式遠心ポンプ装置。
  2. 前記緩作動弁が、開弁作動のタイミングを電気制御された電動弁であることを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  3. 前記急作動弁が、閉鎖作動のタイミングを電気制御された電動弁であることを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  4. 前記真空装置が液封式真空ポンプを備え、且つ前記緩作動弁が、該液封式真空ポンプの作動液の液圧の上昇によって開弁作動する弁であることを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  5. 前記緩作動弁と前記急作動弁とが合体されて、開弁作動が遅く閉鎖作動が速い一個の弁装置に構成されたことを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  6. 前記緩作動弁と前記急作動弁のいずれかの閉鎖によって前記排気通路が前記副ポンプの羽根車中央部近傍と遮断されたときに、該排気通路を大気に連通させることによって、前記真空装置の真空作用力を減殺する弁手段が、該排気通路中に併設されたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  7. 前記副ポンプの排気通路側の液面レベルの低下によって開弁作動するフロート弁が、前記排気通路中に直列に介装されたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  8. 上部に入口と出口とが開口した液溜槽が、前記排気通路中に直列に介装されたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  9. 前記主ポンプ、副ポンプ、真空装置のいずれか又は全てが、異なる回転軸系を有することを特徴とする、請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  10. 前記主ポンプ、副ポンプ、真空装置の全てが、同一の回転軸系を有することを特徴とする、請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  11. 前記主ポンプの羽根車と前記副ポンプの羽根車とが、隣接して一体的に形成されたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  12. 前記真空装置が液封式真空ポンプを備え、且つ、前記主ポンプの送液流路に接して該液封式真空ポンプの作動液を冷却する冷却通路が形成され、該冷却通路の入口は該液封式真空ポンプの排気口に連絡され、該冷却通路の出口は該液封式真空ポンプの吸気口に連絡されたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  13. 前記主ポンプの吸込口近傍に、切断用の回転刃部及びこれに対応する固定刃部を備えたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第12項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
  14. 前記主ポンプの羽根車中央部近傍と前記副ポンプの吸込口との間の連通路の吸込開口部が、該主ポンプの羽根車の吸込口側の空洞発生箇所に臨んで設けられたことを特徴とする、請求の範囲第1項〜第13項のいずれかに記載の自吸式遠心ポンプ装置。
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