JP3924211B2 - 集積光干渉センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサに関し、より詳細には、それが曝される環境の特性を測定するための光干渉計センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、センサが曝される環境において、化学的または生化学的濃度、磁界または電界強度、圧力、張力、温度、およびpHなどの物理量の絶対値または相対値を検出および測定するためのセンサは、当該分野において周知である。従来技術のセンサには、例えばmeroury温度計またはブルドン圧力計などの直接読み取りセンサ、および入力信号または刺激を異なるタイプの出力信号に変換するためのトランスデューサを用いるセンサが含まれる。赤外線高温計は、このようにして、赤外線を、電気計量器によって読み取り可能な有用な電気出力信号へと変換する。
【0003】
従来技術のセンサには、測定値を直接またはトランスデューサを用いて提供する光学センサも含まれる。単純色比較pHテスト装置は、直接読みとる光学センサの一例であり、撮像光強度計量システムは、トランスデューサを用いる光センサである。最も感度の高い光センサは、干渉型のもので、これは、感知された状態に関する情報を提供するために干渉計を用いる。干渉計は、入力源からの光を、2つ以上の光ビームに分割する機器である。光ビームは、異なる有効光路長を有する異なる経路を通って進行させられ、それによって、ビームが再結合される際に、干渉縞パターンが作られる。干渉パターンの明るいバンドおよび暗いバンドの分析により、異なる光路の有効経路長の差異に関する高感度な測定が提供される。
【0004】
近年著しい技術的進展を経験した光センサの特定のグループには、集積光センサが含まれる。集積光センサは、様々な光学コンポーネントを単一の光導波路構造に集積することによって特徴づけられるモノリシック構造である。集積光センサは、典型的には、単一の基板上に構築された導波路を備えた薄膜素子であり、この素子は、通常、導波路を伝搬する異なるビーム部分を回折、屈折、反射、または合成させる他の光学素子または光学コンポーネントを設ける。集積光技術は、別個の光学コンポーネントを用いる従来の干渉センサに関連した光学素子を提供する際に特に有用である。現在、従来技術は、単一の基板上に、レンズ、検知フィールド(sensing field)、およびフィルタを含む様々なコンポーネントを内蔵した集積光センサを含む。
【0005】
典型的な集積光センサは、基板上のプレーナー構造として製造される1つ以上のチャネル導波路を備える。チャネル導波路は、典型的には、光ビームが伝搬する光路を提供する、小さな断面積(おおそ、数マイクロメートルの幅×数マイクロメートルの高さ)を有する直線構造である。チャネル導波路の屈折率は、周囲または支持基板の屈折率よりも高い。光源および必要な結合機構が設けられ、それによって光ビームが、チャネル波導路内を伝搬する。光源は、レーザ、発光ダイオード(LED)、または白熱光源であり得る。伝搬する光ビームは、環境の特定の状態に反応するチャネル導波路の検知領域を透過する。環境により、屈折率の変化などの、チャネル導波路の伝搬特性の変化が生じ得る。屈折率の変化により、チャネル領域を通る有効経路長が変化し、それによって、光ビームがチャネル導波路から現れる際に、光ビームの位相が変化する。あるいは、チャネル導波路が、特定の環境に対して直接的に反応しない場合は、その環境、または該環境のコンポーネントに反応性を有する材料でコーティングされ得、それによって、チャネル導波路の屈折率が変化する。従って、センサからの光学出力ビームは、環境の状態の相対値または絶対値の測定に使用され得る。
【0006】
光学入力ビームは、周知のマクスウェルの方程式を満足させるモードで、導波路を通って伝搬する。マクスウェルの方程式は、媒体を通って伝搬する電磁波の電界および磁界を支配する。このモードは、構成波の周波数、偏光、横電界分布、および位相速度によって特徴づけられ得る。方形のチャネル導波路においては、このモードは、それぞれTE波(transverse electric)およびTM波(transverse magnetic)である光ビームの直交偏光コンポーネントのTEm,nおよびTMm,nとして表される(モード番号指数mおよびnは、負ではない整数値である)。各モードは、各方向における導波路の波ノード数に対応する異なる場(field)分布を表す。許容モードは、導波路の境界(集積光センサの場合、境界は、基板と導波路との界面、環境と導波路との界面、および/またはコーティングと導波路との界面である)の構成によって決定される。境界および入力光源の波長に応じて、0モード、または1つ以上のモードが、導波路を通って伝搬することを許容され得る。
【0007】
市販の集積光干渉計には、本明細書中に援用される米国特許第4、515、430号に開示されているような、マッハ・ツェンダー干渉計技術を利用したものが含まれる。この技術は、2つの光ビームが2つの光路を通る単一モードの伝搬で、2つのビームが合成されて光干渉パターンが生成されることによって特徴づけられる。通常、マッハ・ツェンダー装置は、単一の入力光ビームを受け取り、後に、この入力光ビームは、ビームスプリッターによって、2つの異なるチャネル導波路を通るように指向される2つのビームに分割される。1つの導波路の光路長の変化は、環境によってその物理的長さが変化する、または屈折率が変化する場合にもたらされる。チャネル導波路から出て来るビームは、再結合され、それによって、装置を環境に曝すことによって生じた相対的または絶対的変化を示す単一の干渉ビームが生成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
マッハ・ツェンダー構成を用いた集積光干渉計は、顕著な感度を有し、小型に作製され得る。しかし、これらのセンサは、典型的にはそれぞれ2μm×3μmの断面積寸法を有する2つ以上の単一モードのチャネル導波路に依存し、その結果、製造が困難となり、コストが高いという不利点を有する。さらに2つのチャネル導波路は、環境の温度および振動状態に、異なる影響を受け得、それによって、深刻な干渉影響が生じる。最も重要なことは、 マッハ・ツェンダー干渉計の場合に、サイズの小さなチャネルにより、効率的な光結合の達成が困難となることである。光結合の困難さにより、多くの適用に対して、このタイプの干渉計は役に立たないも同然である。
【0009】
第2のタイプの集積光干渉センサは、プレーナー構造として、プレーナー型導波路を使用する。プレーナー型導波路は、チャネル導波路に典型的な4つの長方形の境界ではなく、2つの(平行する)境界によってのみ規定される。プレーナー型導波路においては、伝搬モードは、TEmおよびTMm(それぞれTE波およびTM波である)として表される(モード番号指数mは、負ではない整数値である)。チャネル導波路の場合と同様に、境界および入力光源の波長により、0または1つ以上のモードのいずれが導波路を通って伝搬することを許可され得るかが決定される。
【0010】
本明細書の従来技術および本発明の説明において、「プレーナー構造」および「プレーナー型導波路」という用語は、その全体的な構成において概して平面である構造物をさす。しかし、プレーナー構造およびプレーナー型導波路は、溝のあるまたは隆起のある表面、多孔性の層または領域、或いはその他の埋め込まれたまたは表面レリーフ特徴などの特徴を受け入れ得るということが理解されるべきである。さらに、ここでの従来技術および本発明の説明では、「光学(的)(optic)」および「光(light)」という用語が使用されるが、説明される技術は、概して電磁放射の現象であるということが認識されなければならない。従って、ここでは、「光学(的)」および「光」という用語は、センサの様々な部品の特性(例えば、光路のディメンション)およびセンサと感知される環境の特徴との間の相互作用の性質(例えば、センサの、波長の関数としての感度)によって課されるいかなる制約をも満たす、任意の電磁放射をさすものとして読まれるべきである。典型的には、光は可視または近可視の波長範囲にある。
【0011】
プレーナー型導波路干渉センサは、Hartmanに発行された米国特許第4,940,328号およびLukoszに発行された米国特許第5,120,131号で開示されており、これらの特許はここに参考のために援用される。これらの特許に記載される装置において、光は多チャネル導波路における伝搬とは対照的に、1つのプレーナー型導波路において少なくとも2つのモードで伝搬され、そして測定される環境に曝される感知領域を通過する。センサ出力は、プレーナー型導波路において伝搬する少なくとも2つのモードの干渉結果を含むビームを含む。より高いオーダーのモードは、環境によってプレーナー型導波路の屈折率が変化するときに最も大きな影響を受け、より低いオーダーのモードと組み合わされると、モード間干渉を示す出力をもたらす。これらの装置は、単一モードのマッハ−ツェンダー装置よりも簡単に製造され、光の導波路への結合がより簡単であることを特徴とする。しかし、これらの装置の感度は、概してマッハ−ツェンダー装置の感度のわずか2分の1〜3分の1である。感度がより低いのは、より低いオーダーモードは環境の刺激によって全く影響を受けないわけではなく、従って真の参照ビームを提供しないという事実の結果である。
【0012】
従来技術による装置に関する別の問題は、単一処理技術を使用して、1つの導波路における光学部品の高度の集積を達成することができないということである。
【0013】
上記の欠陥により、集積光センサの有用性は大幅に削減され、そのコストは大幅に上昇する。必要とされ、かつ現在入手可能でないのは、比較的安価で、1つの導波路に高度の部品集積を取り入れ、単純かつ効率的な光結合で高感度を提供する集積光センサである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前述の従来技術の問題は、本発明の集積光干渉センサによって克服される。光源からの光ビームが提供されると、センサは、センサが曝されている環境の特徴または状態を示す出力信号を提供する。
【0015】
一実施形態においては、センサはプレーナー型導波路、集積光回折格子、集積光複プリズム、および位相格子から構成される。回折格子は、光源からの光ビームをプレーナー型導波路に投入または結合し、これによって光ビームの1つのモードのみがプレーナー型導波路で伝搬する。導波路において、光ビームの第1の部分は環境の特徴によって第1の様態で影響を受け、光ビームの第2の部分は環境の特徴によって第2の様態で影響を受ける。光ビームの第1の部分は導波路の第1の領域にあり、導波路の第2の領域にある光ビームの第2の部分から空間的に離れている。集積光複プリズムはビームの部分を偏向し、その結果第1のビームの部分は第2のビームの部分と交差する。位相格子は、ビームの部分が交差する点に配置され、これによってビームの部分の少なくとも1つの結合を示す少なくとも1つの出力ビームが生み出される。
【0016】
代替の実施形態は、回折格子をその他の光入力カプラ(例えば、プリズム、ミラー)で置き換えることによって、または光源を適切に搭載して光入力カプラーの必要性を排除することによって提供され得る。同様に、ビーム偏向器として機能する集積光複プリズムは、集積光学レンズ、集積光学回折格子、または全内反射素子で置換し得る。さらに、ビーム結合器として機能する位相格子は、フレネル反射素子、音響光学装置、または電気光学装置で置換し得る。
【0017】
センサのプレーナー型導波路の一部分は、環境の特徴が導波路の光ビームの第1の部分に与える作用を拡張するよう処理し得る。この処理は、プレーナー型導波路の該部分を、環境の特徴のいかなる変化にも応じて屈折率が変化する材料でコーティングする工程から構成され得る。或いは、処理は、プレーナー型導波路の該部分を、環境の特徴のいかなる変化にも応じて厚みが変化する材料でコーティングする工程、またはプレーナー型導波路の該部分を、環境内の物質と反応する材料でコーティングする工程から構成され得る。処理はまた、環境の特徴が光ビームの第1または第2の部分のどちらかに与える作用を、拡張するよりむしろ最小限に抑え得る。導波路を処理するより、プレーナー型導波路の少なくとも一部分自体を、環境の特徴のいかなる変化にも応じて屈折率が変化する材料、または環境の特徴のいかなる変化にも応じて構成(例えば、形状あるいはサイズ)が変化する材料、または環境内の物質と相互作用する材料から構成し得る。
【0018】
好適には、プレーナー型導波路は、機械的強度、靭性、または光学的特徴のために選択された基板上で作製される。概して、基板が存在する場合は、センサ全体の下に位置し、その他のセンサ素子の作製のベースを提供する。本明細書においては、「導波路構造」という用語は、存在し得る任意の基板およびプレーナー型導波路に付与し得る任意のコーティングに加えてプレーナー型導波路自体を含む。
【0019】
本発明の顕著な特徴は、マッハ−ツェンダー干渉計では典型的なように、プレーナー型導波路の第1および第2の領域を、いかなる縦型の構造物または界面によっても別個の「チャネル導波路」に分ける必要がないということである。第1および第2の領域は、本発明のビーム処理領域を含み、ビーム処理領域は上部表面および下部表面によってのみ規定される。第1の領域と第2の領域との間には垂直な縦型の界面(横の境界)はない。この構造上の特徴に関しては、本発明は、先の米国特許第4,940,328号によって記載される装置と類似するが、本発明はプレーナー型導波路で伝搬する1つの横断モードしか使用せず、これによって米国特許第4,940,328号の多モード装置よりも感度は2〜3倍向上される。本明細書で開示される付加的な信号処理能力により、SN比は、米国特許第4,940,328号の多モード装置よりもオーダー1以上の大きさで増大する。
【0020】
センサがさらされる環境は、プレーナー型導波路の少なくとも1つの感知領域(sensing region)の屈折率を変化させることで、その領域を通る光の伝搬に直接影響し得る。プレーナー型導波路の影響された領域を通る光の伝搬の変化から、センスされた環境条件に関する情報が得られる。上記したように、導波路を通る光の伝搬が環境により直接変化することが可能でなければ、導波路の少なくとも1つの感知領域が被膜コーティングされ得る。コーティングは、環境条件に対して反応を示し、導波路を通る光の伝搬に影響を及ぼす。
【0021】
1つ以上の光検出器が、出力ビームを検出するために設けられ得る。光検出器は、出力ビームを直接受けるように取り付けられるか、センサと統合されて形成されるか、またはセンサからの出力を光検出器に結合するために、回析格子、プリズムまたはミラーなどの種々の光出力カプラが採用され得る。光検出器信号の処理は、異なる構成(例えば、長さ、厚さ、形状など)、または異なる材料(すなわち、異なる光学または化学性質等を有するもの等)からなる多数の集積された光学感知領域(すなわち、多数の干渉計)を作ることにより向上され得る。
【0022】
本発明は、多数の干渉計を使用することにより、少なくとも2つの主要信号処理の向上を提供する。信号処理の向上は、チャネル導波路を有するプレーナー構造の干渉計センサ(マッハ・ツェンダー素子など)、およびプレーナー型導波路を有するプレーナー構造の干渉計センサに適用され、プレーナー構造において伝搬するモードの数あるいはタイプに関わらず適用され得る。2つの向上のうちの前者において、プレーナー構造構成、プレーナー構造材料、オーバーレイ構成、オーバーレイ材料、基板構成、または基板材料などセンサの構成パラメータを変化することにより、干渉計出力ビーム間の定常位相バイアス差(phase bias difference)が得られる。特に、約90度の定常位相バイアス差は、センサから最大感度が常に得られることを確実にする。同一のパラメータにおいて他のバリエーションにすることにより、2つの向上のうちの後者が得られる。この向上は、干渉計の一方に関連した出力ビームの出力干渉パターンが、他方の干渉計からの出力干渉パターンと比べた場合に、矩象(quadrature)において異なる勾配を有するようになる。異なる勾配は、高解像度情報および低解像度情報の両方が同じセンサから得られることを確実にする。
【0023】
本明細書において、導波路感知領域の1つは「参照領域」と称する。環境における要因により影響される光が伝搬する、その他のあらゆる導波路感知領域は「信号領域」と称する。便宜上、「参照領域」は、代表的に、信号領域と比べて、光の伝搬が環境における要因によって影響されない、または影響されにくい、領域である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、感知領域は、小さい共通導波路構造に配置されている。これにより、環境熱、および物理条件は、センサ全体に均一に影響しやすい。従って、温度または振動的な安定性を得るために他のセンサタイプおよび構成には必要とされる物理的構造は必要でない。
【0025】
集積された光学部品の形成が、単一の形成技術、または一連の互換性のある技術を利用することによって、単一製造プロセスにより、複数の集積された光学部品がセンサに形成され得ることが好ましい。つまり、材料および形成技術の選択は、これらのセンサ素子の経済的実用可能性に重要となる。現在の形成技術は、フォトリソグラフィ、およびホログラフィエッチング処理を使用する薄膜蒸着、イオン交換、イオン注入、および真空蒸着を含む。格子は、例えば、格子エッチングマスクを作るのに2本のビームの干渉パターンを使用して形成され得る。エッチングマスクは、集積された光学格子のための所望の表面トポロジーを残して、エッチングの後に除去される。
【0026】
従って、本発明の目的は、改善された集積された光学干渉性センサを提供することである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、向上した熱および物理的安定性を有し、従って、種々の環境条件の下でも信頼性のある測定値が得られる光学センサを提供することである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、高いセンサ感度を有し、入力光源と容易に結合し、低コストで形成され得る集積された光学干渉計を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、例えば、温度、湿度、ならびに化学組成および生化学組成などの種々の環境条件の下で感度を有するセンサを提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、向上した光学ビーム操作、ならびに信号処理能力を提供することである。
【0031】
本発明のさらなる目的は、単一素子において光学部品の高レベルの集積を提供し、安定性、およびSN比を改善し、単一処理技術を採用し得るようにすることである。
【0032】
本発明の他の目的および特徴は、以下の特定の実施形態の詳細な説明を添付の図面とともに読むことにより容易に理解できるであろう。
【0033】
【発明の実施の形態】
次に、図1を参照して、集積光干渉センサであって、該センサがさらされている環境の物理特性を測定するための集積光干渉センサの好適な実施形態を示している。このセンサ全体を番号10で示す。センサ10を、全体的に矩形のものとして示しているが、製造技術、完全なセンサシステムおよびその他の設計の最終的な実施形態、ならびに製造上の好みおよび製造上考慮すべき事柄に応じて他の全体的構成を用いてもよいことは、集積光学分野の当業者により理解されるはずである。センサ10は、光ビームが伝搬する導波路構造12(図8A〜図8Cに図示)を含む。この導波路構造は、伝搬光ビームを以下により明確に説明するように所望の態様で操作する集積光学素子を含む。光源18は、導波路構造12において伝搬する光ビーム15を与える。光検出器アレイ62は、導波路の出力光ビームに反応し、検出光に応答して電気信号を生成する。集積光ビーム処理領域17は、導波路構造12を通る光の伝搬を、外部環境の刺激または条件に応答して変えることにより、センサの変換器能力を与える。この外部環境の刺激または条件は、測定または数量化することが望ましい。確実にビーム処理領域17だけを環境にさらすようにするために、センサ10中の他のすべての領域の上に、保護カバー(図示せず)を置くことができる。
【0034】
図8Aから図8Cに一連の断面図で示す導波路構造12は、プレーナー型導波路22を含み、基板20、1つ以上の選択的オーバーレイ55、および1つ以上の保護オーバーレイ60を含み得る。基板20は、基板下面24および基板−導波路界面26を含む。基板下面24および基板−導波路界面26は、実質的に平行な平面にある。プレーナー型導波路22は光透過材料からなる薄膜であり、導波路上面28および基板−導波路界面26を有し、これらの表面28および26も、実質的に平行な平面にある。基板20も、光透過材料を含む。
【0035】
導波路22の屈折率は、基板20の屈折率よりも大きい。この屈折率の差によって導波路22内を伝搬する光は全内反射し、これにより、光が導波路22を出ることを防ぐ。光は全内反射するが、導波路の境界の外側あるいはその近傍の領域において電場および磁場が誘導される。これらの誘導された場は「エバネセント場」と呼ばれる。
【0036】
導波路構造12の材料の選択は、用途に応じて行われる。基板20は、例えば、ホウ素をドープした二酸化シリコンを含むシリカを含有する化合物から製造される場合が多い。導波路22は、ガラス、およびポリマーを含む他の透明な誘電材料から製造され得る。ガラス材料には、例えば、窒化シリコンまたはチタンをドープした二酸化シリコンが含まれる。ポリマー材料には、例えば、ポリイミドが含まれる。
【0037】
選択される材料は、基板および導波路材料の間に所定の屈折率差ΔNを与え得るものでなければならない。但し、導波路の屈折率Nは、基板の屈折率よりも大きい。光学干渉センサの基板によく用いられる材料の屈折率は、大凡1.4〜1.6の範囲内である。典型的に、導波路の屈折率は1.4〜4の範囲内である。有機蒸気(organic vapor)検出センサの好適な実施形態において、基板材料は、Nが1.515であるBK7系ホウケイ酸ガラスであり得る。これに、屈折率が1.520である導波路層が付与され、ΔNは0.005となる。
【0038】
導波路22は、導波路構造の別個の層として基板20上に付与されてもよいし、あるいは、基板20内に形成されてもよい。前者の場合、化学蒸着(CVD)、薄膜蒸着および真空スパッタリングを含む方法によって導波路を基板20に付与する。導波路22が基板20内に形成される場合、イオン注入およびイオン交換を含む方法が使用され得る。これらのプロセスのいずれかを使用して、基板20の導波路上面28近傍にある部分の屈折率を、局所的な化学組成を変化させることによって0.1〜10mmの深さにまで増大させ得る。これらのプロセスによって0.1〜10mmの導波路厚さを得ることが可能である。有機蒸気検出センサの好適な実施形態においては、イオン交換プロセスによってBK7ホウケイ酸基板内に導波路を形成することが可能であり、その場合、基板20の導波路上面28において、銀イオンをナトリウムまたはカリウムイオンに交換する。
【0039】
センサ10の集積光学素子には、集積光学光入力結合格子(optic light input coupling grating)32、集積光学光ブロック(optic light block)34、集積光学複プリズム35および集積光学位相格子36が含まれる。入力結合格子32は、光をプレーナー型導波路22内に結合し、これにより、光は所望の伝搬路に沿って導波路内を伝搬する。入力結合格子32および集積光学位相格子36は、プレーナー型導波路22の表面上に配置された、あるいはその中に埋め込まれた格子であり得る。伝搬光ビームは、光ブロック34上に入射すると実効的に2本に分岐し、これにより、参照ビームS1および信号ビームS2の一対のビームを規定する。光ビームS1およびS2は複プリズム35を通過する際に偏向し、ビームD1およびD2を形成する。その後、ビームD1およびD2は位相格子36上に入射する。位相格子36はビームとして機能し、各入射ビームの一部、好ましくはその50%が影響を受けずに格子を通過し、各ビームの残りの部分が回折するように構成されている。各入射ビームの回折部分が、他の入射ビームの透過部分あるいは影響を受けなかった部分と共直線的に(colinearly)格子を出るように回折角が選択される。このようにして、ビームD1の透過部分およびビームD2の回折部分が混合または結合光ビームM1を形成する。ビームM1がビームD1およびD2の干渉結果(interference product)を含むことが当業者には理解される。同様に、ビームD2の透過部分およびビームD1の回折部分が混合または結合光ビームM2を形成する。光ビームM1およびM2を、参照ビームS1および信号ビームS2の干渉部分を含むものとみなすこともできる。なぜなら、これらのビームの相対的な位相は複プリズム35内で変化しないからである。光ビームD1およびD2は、光検出器アレイ62上に入射した時点でも、それぞれ参照ビームS1および信号ビームS2の光だけを含む。
【0040】
入力結合格子32は、大凡導波路構造12の入力端38に配置される。先に簡単に説明したように、入力結合格子32は、導波路22上または導波路22内に所定の深さを有する、プレーナー型導波路22上に配置された、あるいはその中に埋め込まれた集積光学構造である。入力結合格子32は、大凡導波路22に直交する入力光(incoming light)の伝搬路を再配向し、単一モードが導波路22内に伝搬するように不要なモードを排除する機能を果たす。中間ビーム整形レンズ(図示せず)と組み合わされ得る光源および入力格子は、幅100μm〜数ミリメートルの光ビームを導波路22内に結合する。
【0041】
プリズム27または直接結合(direct butt−coupling)を含む、光ビームをプレーナー型導波路22内に結合する別の手段を、入力結合格子32の代わりに用いることが可能である。図3Bに示すように、プリズム27は、導波路22よりも屈折率が大きい材料から形成される三角形の断面を持つ素子である。プリズム27は、プリズムの屈折率に応じた角度で光ビーム15を屈折させることによって、光ビーム15を導波路22内に向ける。図3Cに示すように、直接結合(butt−coupling)は、導波路22の入力端38エッジに直接接触するように光源を配置するか、または、中間伝送レンズ(intermediate transfer lens)を介して光ビーム15を導波路22の入力端38エッジに集光することによって行われる。
【0042】
図1および図3に示す実施形態において、入力結合格子32は、図示したように、導波路22内の入力端38近傍に形成される。導波路22を形成するために用いられる上記製造技術を用いて、結合格子32を形成することが可能であり、あるいは、導波路22またはその屈折率Nの周期的な乱れ(disturbance)を生じさせる他の方法を用いることも可能である。図3に示すように、格子の特徴は、周期Pが0.2〜1.5mm、高さHが0.2〜1.0mmの起伏(corrugation)または周期的な屈折率の変化40である。これらのタイプの集積光学素子の結合効率は、20〜30%の範囲内である。
【0043】
光源18は光ビーム15を提供して、センサ10を光学的に付勢する。光源18は、図3の実施形態に示すような光ファイバピグテール42等の受動素子であってもよい。光ファイバピグテール42は、基板の下側表面24に通じており、エポキシ43によって定位置に維持される。ピグテール42は光学的エネルギーの導管としてのみ機能し、それ故に受動素子なのである。あるいは、光源18は、図3Aに示すようなレーザーダイオード44等の能動素子であってもよい。レーザーダイオード44は、導管47を介して外部電流によって付勢され、これにより、センサ10を付勢する光ビーム15を発生する。別の実施形態において、光源18は、基板20の本体内に集積された、センサから延びるワイヤの電気的接点を持つレーザーダイオードであってもよい。このレーザーダイオードは、外部手段、または、センサ上に印刷され、外部電源の相手側接点(mating contacts)と電気的に接触するように配置される電気的接点によって付勢される。センサ製造分野の当業者には自明であるように、基板20は、センサ10を付勢するための所望の波長の光に対して光学的に透明であり、且つ、プレーナー型導波路22への光の結合を阻害しない分散または他の性質を持っていなければならない。また別の実施形態において、光源は、導波路22の上側表面上に直接製造され得る。この場合、内部結合素子(incoupling element)の必要が無くなる。本発明の目的において、プレーナー型導波路22内に光源18を集積すること、あるいは、光源18をプレーナー型導波路22に直接結合することは、光ビーム15の単一モードのみがプレーナー型導波路22内を伝搬するように光源18からプレーナー型導波路22内に光ビーム15を結合するための、格子32、プリズム27、レンズまたは他の手段と等価である。
【0044】
集積光学複プリズム35はビーム処理領域17の光出力端45に位置する。複プリズム35は、ビーム処理領域17を通過する光ビームを受け取り、これらの光ビームを位相回折格子36で重複させて干渉ビームを生成するために再結合させる働きをする。複プリズム35は、参照および信号誘導波をずらして重複させるバルクプリズムとして機能する薄膜複プリズムである。ビームの角偏差fは、プリズム領域と不変の導波路との間の屈折率の差およびプリズムの頂角aに依存する。実効モードの屈折率の差が0.1〜0.15の場合、シングルモード動作を保持する一方で2〜3度の偏差を実現し得る。複プリズム35は図1および図3に概略的に示される。複プリズム35は、光ビームS1およびS2が通過する入射面46を含む。プリズムはまた、頂角aの角度をなして互いに位置する対向面48を含む。好適な実施形態では、頂角aは150〜170度の範囲であり、隣接する角度は5〜15度の範囲である。これらの角度寸法は、実質的には、センサの構造上の寸法に依存し、当然ながら、これらの寸法に適合するために必要であれば、本明細書にて示した範囲を外れてもよい。別の集積光学構造体を光ビームを偏向させる手段として作用させて、複プリズム35の代わりに用いてもよい。これらの構造体としては、図1Aに示す集積光学レンズ71、または図1Bに示す集積回折格子72が含まれる。
【0045】
図1において、位相格子36は、偏向参照および信号ビームD1およびD2のためのビーム結合器として働く。このタイプの格子は、格子周期Gは典型的には1〜5mmの範囲であるため、回折効率の制御が容易であり、また、ホトリソグラフィー技術によって容易に生成される。格子周期Gは、複プリズムによって生成される偏差角f、誘導光の波長l、および導波路の実効モードの屈折率Neffに依存し、所定の式によって計算される。
【0046】
図1から分かるように、1つの偏向ビームを位相格子によって回折される他の偏向ビームの一部と結合させるためには、プリズム偏向角fはブラッグ角Qと同じであるべきである。
【0047】
2mm幅のビームを用いてセンサの全長を50mm以下に保持するためには、プリズム偏向角fは約2.8度であるべきである。従って、位相格子のブラッグ角Qもまた2.8度である。動作周波数が0.780μmの場合は、導波路の実効周波数モードの屈折率を1.52と仮定すると、これは5.2μmの格子周期Gに対応する。集積光学素子の製造で利用されるホトリソグラフィーの能力では、これらは比較的大きな寸法であり、容易に再生成され得る。
【0048】
実用においては、複プリズム35と位相格子36とを同時に製造するために、単一のホトリソグラフィーマスクを使用することができる。格子は、表面浮彫り構造として、または埋め込み格子として製造され得る。また、格子周期は粗いため、格子の角度選択性は非常に大きく、これは誘導波が整合することを意味する。また格子はまっすぐである。上述のように、複プリズムの代わりに、集積光学レンズ、集積光学回折格子、または全内反射素子を使用し得ることに留意されたい。
【0049】
位相格子36が、ビーム結合を実現する受動の十分に集積された手段を提供する一方で、ビームと部分との結合を示す出力ビームを生成する他の手段が利用可能および適用可能であることに留意することも有益である。例えば、図1Cに示す音響光学装置75は、導波路の屈折率を変動させてビーム結合を生じさせるために使用され得る。音響光学装置75は音響光学材料により構成されるプレーナー型導波路22である。制御電圧76を音響光学材料に印加することによって、導波路内に位相格子が確立される。音響光学装置75の利点は、制御電圧76を変動させることによって、導波路を伝搬する変動する位相格子77が得られることである。もしくは、図1Dに示すように、従来の方法による圧電層を導波路に適用することによって、電気光学装置85を構成し得る。デジタル間トランスデューサ88を導波路22の一方の表面に配置し、制御電圧86に接続させ得る。制御電圧86を変動させることにより、位相格子がエミュレートされ、ビーム結合が行われる。
【0050】
図2に示すように、集積光学複プリズム35と位相格子36との組み合わせは、全内反射素子81とフレネル反射素子82との組み合わせに置き換えることができる。全内反射素子81は、導波路22内のくさび状の空間によって形成される。反射素子81は内面81aおよび81bと外面81cおよび81dとを有する。くさび状空間の頂点83で外面81cおよび81dによって形成される角度は十分に大きいため、導波路内の誘導波は全面的に内面81aから反射され、フレネル反射素子82に衝突する。フレネル反射素子82は、図2Bに断面で示す厚い導波路領域と薄い導波路領域の細長いストリップよりなる。フレネル反射素子82は、誘導波の一部を反射および透過させ、反射部分と透過部分とのビーム結合を行うために用いられる。結合ビームは次に内面81bから反射してセンサの光検出器に向かう。
【0051】
ビーム処理領域17は参照領域52と信号領域54とを含む。領域52および54は、図1に示すような一般に細長い方形パッチ内の導波路22の上表面の接触インタフェース56に、1層以上の選択性オーバーレイ(selectiveoverlay)55および/または1層以上の保護オーバーレイ60を積層することによって画定され、またこれにより存在し得る。参照領域および感知領域はまた、導波路を構成するために使用される材料を変えることによって画定され得る。センサの適用にとって適切であれば、図1に示す方形以外の輪郭形状を用いてもよい。さらに、参照領域52または信号領域54、もしくはこれら両方は、導波路表面に多数の選択性オーバーレイを画定することによって、いくつかの小領域に分割してもよい。選択される形状がどのようなものであれ、ビーム処理領域17は、参照ビームS1が主に参照領域52を通過する光よりなり、信号ビームS2が主に信号領域54を通過する光よりなるように設計されるべきである。図8A〜図8Cは一定の比例で描かれていないことに留意されたい。つまり、オーバーレイ55および60の厚さは見やすいように誇張されている。選択性オーバーレイ55の典型的な厚さは、単一原子の層から1ミリメートルの何分の1かの範囲である。
【0052】
選択性オーバーレイ55は、接触インタフェース56に沿って導波路と光学的に接触して配置され、領域52または54のうちの一方を通る光の伝搬に影響を与え、他方の領域を通る光の伝搬には影響を与えない。選択性オーバーレイ55は、これら領域を通る光の伝搬を変化させるか、または一方の領域を通る光の伝搬の変化を防ぐように作用する。上記に簡単に述べたように、これらの領域を通る光の伝搬の差により、センサが機能するためのメカニズムが提供される。互いに僅かに異なる光ビームS1およびS2は、後に位相格子36内で結合され、光ビームM1およびM2を生成する。これらの光ビームは干渉ビームであり、これらを解釈することにより測定環境についての情報が提供される。
【0053】
選択性オーバーレイ55は、導波路22よりも低い屈折率を有するか、または、選択性オーバーレイ55が導波路厚みに対して十分薄い場合は導波路よりも高い屈折率を有していてもよく、または、測定しようとする環境に曝された際に可変であるような屈折率を有していてもよい。例えば、環境のある化学成分と化学応答性選択性オーバーレイ55との間の共有結合、水素結合吸収または吸着などの局所的な化学反応などにより、この環境成分の濃度または強度に比例して屈折率が変化し得る。屈折率の変化は、選択性オーバーレイによって覆われた領域を通る光の伝搬に影響を与える。試験される環境物質と化学応答性選択性オーバーレイ55との間の化学的結合はまた、選択性オーバーレイの全体的な構成(通常は厚さ)に変化を起こし、選択性オーバーレイによって覆われた領域を通る光の伝搬に影響を与え得る。この領域を通る光の伝搬の変化の大きさは、環境成分濃度または環境のその他の特性と相関付けることができる。ガス状アンモニアセンサの好適な実施態様において、選択性オーバーレイはポリビニルアルコールの薄膜であってもよく、その場合、アンモニアガスとポリビニルアルコール膜との間の陽子交換が、存在するアンモニアの濃度に比例してポリビニルアルコール膜の屈折率を変化させる。
【0054】
図8Aに示すように、環境自体が、環境の物理特性を感知するための選択性オーバーレイとして機能し得る。その場合、シグナル領域54は、導波路のうち選択性材料コーティングを受けない部分として規定される。参照領域52は、保護オーバーレイ60でコーティングされることにより、環境への曝されることによる影響を受けないか、あるいは影響の受け方が異なるようにされる。この場合、導波路上面28と環境との間において直接相互作用が起きる。相対湿度に応答する湿度センサは、環境の水分が導波路上面28と介在的に(interstitially)相互作用することにより、シグナル領域54の屈折率に局所変化を起こす一例である。
【0055】
図8Bに示す、センサ10とともに用いる化学応答層の特定例において、選択性オーバーレイ55は、導波路表面に接着された生物分子(biomolecule)の層であり、生物分子は分子結合対のうちの一方である。例えば、抗原、抗体、酵素、レクチンまたは単鎖核酸が、導波路表面のシグナル領域54に結合され得る。この場合、シグナル領域54は、特異的な分子結合を起こすように機能化されていると言うことができる。結合対の他方を含有する溶液がセンサに曝されたとき、結合対間の特異的分子結合が、シグナル領域54中の導波路屈折率が変化させる。結果として、シグナルビームの位相が変更され、シグナルビームS2を参照ビームS1とを結合する(combine)ことにより、結合対の2番目側の存在に関する情報が得られる。インフルエンザAウィルスの検知のための好適な実施態様において、選択性オーバーレイは、インフルエンザAのNPタンパク質に対して特異的なモノクローナル抗体の層であり得る。
【0056】
選択性オーバーレイ55自体が、センサを環境に曝すことなしに導波路の屈折率ならびにそこを通った光の伝搬に対して自発的な効果を有し得るため、導波路を正規化する(normalize)必要が生じ得る。これは、図8Cに示すように、特定の選択性オーバーレイ55の層を参照領域52に加えた後、参照領域52上に位置している選択的オーバーレイ55を保護オーバーレイ60で覆うことによってなされる。保護オーバーレイ60は非感光層(optically insensitive layer)を形成することにより、センサが環境に曝されたとき、参照領域52を規定する選択性オーバーレイ55の屈折率に対しても、参照領域52を通る光伝搬に対しても、環境からの影響がなくなる。保護オーバーレイは、例えば、二酸化シリコンまたはポリテトラフルオロエチレンから製造され得る。
【0057】
別の実施態様において、印加された電界に応じて屈折率が変化する選択性オーバーレイ55を設けるか、あるいはプレーナー型導波路22または基板20を印加電界に応答する材料から構築することによって、センサ10は環境中の電界を測定するように構成され得る。同様に、磁界または機械的力への曝すことに応答して屈折率が変化する材料で構成された選択性オーバーレイ55を設けること、あるいはこのような材料からプレーナー型導波路22または基板20を構築することにより、センサは環境中の磁界条件または機械的力をそれぞれ測定するように構成され得る。印加された電界に応答して屈折率が変化する材料は、例えばポリビニリデンまたはリチウムニオベートを含む。磁界に応答して屈折率が変化する材料は、例えばニッケル−ポリマー構造を含む。機械的力に応答して屈折率が変化する材料は、例えばポリスチレンまたはメチルメタクリレートなどのポリマーを含む。
【0058】
光が入力結合格子32によってプレーナー型導波路22に入射されて領域52および54中を伝搬する際、シグナル領域54に塗布された(applied)選択性材料はシグナルビームS2のエバネセントフィールドによって見られ、結果としてシグナルビームS2の位相が変更される。位相格子36によって変更されていないまたは異なる変更を受けた参照ビームS1と(偏向(deflect)後に)結合されたとき、得られる位相シフトは、干渉効果のために、出力ビームM1およびM2の両方において正弦波状の強度変化として現れる。出力ビームM1およびM2の強度は、以下の出力ビーム強度式によって記述される:
【0059】
【数1】
ただし、
Im1=出力ビームM1の強度 Is1=参照ビームS1の強度
Im2=出力ビームM2の強度 Is2=参照ビームS2の強度
Ф()=導波路構造構成パラメータから得られる定常位相バイアス
ΔNeff=Neff(s1)−Neff(s2)
Neff(s1)=導波路構造参照領域52の実効屈折率
Neff(s2)=導波路構造シグナル領域54の実効屈折率
L=ビーム処理領域17の物理長
λ=光ビームの自由空間波長
これらの等式は、出力ビーム強度の変化の大きさは、ビーム処理領域17の長さLの領域52および54間の実効屈折率差倍の関数であることを示している。従って、シグナル領域54の屈折率を変化させる環境条件の変化について、センサ10の感度は長さLに対して直接比例関係にある。
【0060】
集積された光学光ブロック(integrated optic lightblock)34は、導波路の中心に沿った所定領域内を伝搬する光を、領域52および54に平行に領域52および54の対向する内端に沿ってブロックすることによって、導波路領域52および54をいっそう別々に規定することができる。光ブロック34は不透明または光吸収性材料から構成され、シグナル領域54の特性または参照領域52の特性のいずれも有さない光を、光ビームS1およびS2と混ぜる(commingle)ことによりセンサ感度を減少させることを防止する。
【0061】
上述のように、光ビームS1およびS2は複プリズム35を通過して屈折され(好適な実施態様において典型的には2度〜3度の角度)、ビームを位相格子36においてオーパーラップさせ、ここにおいてビームが結合される。ビームM1およびM2が屈折率および環境の変化に関する情報を提供する一方で、ビームD1およびD2は、例えば入力電力の変動または出力における熱起因性の変化などに起因するセンサの動作変動を示すために有用である。従って、ビームD1およびD2は、ビームM1およびM2を正規化して電力変動または熱変化による偽効果を除去するために用い得る。
【0062】
センサ用の光検出器は、導波路構造12のエッジ64の部分に沿って配置されている光検出器アレイ62を有し得る。各光検出器アレイ62は、導波路構造12に面する各受光面66に設けられた光感知素子68が出力ビームと光学的に連通して配置されるように、受光面66を規定する。図1およびさらに詳細には図1Eに示すように、光検出器アレイ62の光感知素子68は、光ビーム出力を受光するように設計され、1つのアレイの第1部分68aは、光ビームD1を受光し、同一のアレイの第2部分68bは、光ビームM1を受光し、同一のアレイの第3部分68cは、光ビームS2を受光し、光ビームD2、M2、およびS1は、他のアレイの光感知素子68によって受光される。光感知素子68は、例えば、電荷結合素子(CCD)または多重離散型PINダイオードを有し得る。
【0063】
導波路構造12の出力エッジ64に沿ってアレイを設ける以外に、出力ビーム16を光検出器アレイ62に結合させる他の手段も使用できる。光検出器アレイ62は、出力結合格子33、プリズム37、または全内反射ミラー50によって、出力ビーム16に結合され得る。図3Dに示すように、出力結合格子33は、上記の入力結合格子32と同様の、プレーナー型導波路22に埋め込まれたまたは導波路22上に配置された集積光学構造である。出力結合格子33は、導波路22からの出力ビーム16を基板20を通して基板の下面24から、格子の周期および光源の波長に応じた角度で方向づける。図3Eに示すように、プリズム37は、導波路22よりも高い屈折率を有する材料で構成された三角形断面素子である。プリズム37は、導波路22からの出力ビーム16を、プリズムの屈折率に応じた角度で方向づける。図3Fに示すように、全内反射ミラー50は、研磨斜面39を導波路22の出力エッジ64に設けることによって構築され得る。全内反射ミラー50は、導波路22からの出力ビーム16を基板20を通して基板の下面24から、斜面の角度に応じた角度で方向づける。図3Fに示すように、好ましい角度は45度である。出力ビーム16を光検出器アレイ62に結合する他の手段は、導波路22内に光感知素子68を一体化することである。このような集積化は、ハイブリッド技術(例えば、素子を導波路と同一平面上に設けること)またはモノリッシック技術(即ち、検出器を導波路と同時に形成すること)のいずれかを用いて成し遂げられ得る。
【0064】
上記のように、図4にグラフで示す出力ビームM1およびM2の強度は、領域52および54の有効屈折率の差が直線的に変化するにつれて、正弦波状に変化する。出力ビームM1およびM2の強度の正弦波パターンの変化は、測定している環境条件に相関され得る。ビームM1の出力は、エネルギー保存により、出力ビームM2と位相が180度ずれている。最も貴重で、最も明瞭な情報は、最大勾配点(point of greatest slope)または矩象点(point of quadrature)で正弦波表示によって提供される。出力ビームM1およびM2の1つの強度が常に矩象点付近にあることを確実にするためには、出力を出力ビームM2と位相が90度ずれているM1にすることが好ましい。これは、1/4波フィルタを導波路構造12と、光検出器アレイ62の1つとの間で使用するか、または導波路内の集積光学構成要素として、ビームM1またはM2の1つの光路に沿って例えば位相格子構造を設けることによって成し遂げられ得る。
【0065】
ビーム処理領域17は、2つ以上の参照領域52および/または2つ以上の信号領域54とに分割することも可能である。例えば、図5に示す実施態様は、2つの信号領域54と対になった2つの参照領域52を示す。あるいは、図6は、多数の信号領域54a、54b、54c、および54dを示し、これらはすべて、同一の参照領域52を共有している。上記の分析は、各参照および信号領域対に適用される。しかし、同一のセンサ10内の多数の参照および/または感知領域の利点は、導波路構造12に対して用いられる材料(好ましくは、光学特性または化学特性などの材料特性に対して選択される)または導波路構造12に対して用いられる構成(例えば、形状およびサイズ)などのパラメータが、各対について異なり得ることである。これによって、光検出器アレイ62はさらに異なる情報を検出でき、多数の環境効果の感知および/または向上した信号処理が可能になる。
【0066】
向上した信号処理の例としては、図5における2つの参照領域52および信号領域54のそれぞれを実質的に同一の物理的長さになるように構成し、信号領域のそれぞれを同一の環境に敏感な選択オーバーレイ55で処理することが挙げられる。参照領域52および信号領域54のそれぞれの下部に位置する導波路22または基板20の構成および/または材料を適切に選択することによって、当業者は、2つの参照−信号対のそれぞれが、異なる定常位相バイアスF0および無視できるほどの感度差をもつようにすることができる。異なる定常位相バイアスとは、各参照−信号対によって生成される他の点では実質的に同一の出力が、光検出器アレイ62上の正弦波状に変化する出力干渉パターンの異なる部分をイメージすることである。1つの定常位相バイアスを他の定常位相バイアスとp/2ラジアン(90度)だけ異なるように構築することによって、常に少なくとも1つの出力が、干渉パターンの矩象点、即ち最も感度の高い部分付近でイメージされることが確実になり得る。
【0067】
向上した信号処理の他の実施例を図7に示す。図7は、図2にさらに詳細に示す全内反射素子81およびフレネル反射素子82を示す。図7に示すように、参照−信号対I1(I1rおよびI1s)およびI2(I2rおよびI2s)の信号領域上の環境に敏感な選択オーバーレイ55は、参照−信号対I3(I3rおよびI3s)の信号領域上の他の点では実質的に同一の環境に敏感な選択オーバーレイ55よりも長くなるように構築されている。上記の出力ビーム強度式によって示すように、および各参照−信号対(I1rs、I1sr、I2rs、等)に対する出力干渉において示すように、選択オーバーレイ55が長くなればなるほど、オーバーレイの長さに比例して感知効果が増加する。特に、オーバーレイの長さが変化すると、矩象点において出力干渉パターンの傾斜も変化することが理解される。この傾斜は、通常干渉計の感度と呼ばれる、測定される環境効果における単位変化当たりの干渉計(矩象点において)の位相変化である。参照信号対I1およびI2の長さが長ければ、高解像度の情報が得られ、参照信号対I3の長さが短かければ、同一の環境効果に関して低解像度の情報が得られる。図7に示す実施態様において、高解像度信号対I1(I1rおよびI1s)およびI2(I2rおよびI2s)間の90度定常位相バイアス差は、上述したように、感知領域の下部に位置するプレーナー型導波路22または基板20の構成または材料における適切な差によって引き起こされ、これらの2つの信号対の少なくとも1つが常に矩象点付近にあることを確実にする。同様に、導波路構造12の構成パラメータを適切に選択することによって、信号対I3およびI1間の定常位相バイアス差が最小限にされ得る。オーバーレイを受けない参照−信号対I4(I4rおよびI4s)は、制御情報を提供する。
【0068】
上記信号処理技術は、プレーナー構造中の電磁波が伝搬する際のセンサに適用できることに留意されたい。さらに、これらの技術は、プレーナー構造を伝搬するモードの数またはタイプに関係なく適用できる。これらの技術は、特に、集積光学プレーナー構造において有用である。従って、本願で開示する向上した信号処理技術は、マッハ−ツェンダーセンサ(即ち、米国特許第4,515,430号)などのチャネル導波路を有するプレーナー構造、および上記で詳細に開示したまたは米国特許第4,940,328号または米国特許第5,120,131号において開示されている干渉計センサなどのプレーナー型導波路を有するプレーナー構造に対する向上を提供する。
【0069】
言うまでもなく、上記の実施態様は、本発明を単に例示するものである。本発明をその好ましい実施態様を参照しながら詳細に説明したが、当然のことながら、本願で記載し、添付の請求の範囲に定義した本発明の精神および範囲を逸脱せずに、これらの実施態様に対して変更および改変が行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の干渉センサの一実施形態の斜視図
【図1A】本発明の干渉センサの一実施形態の部分斜視図であって、図1の集積光複プリズムの代わりに薄膜レンズを使用する場合を示す図
【図1B】本発明の干渉センサの一実施形態の部分斜視図であって、図1の集積光複プリズムの代わりに集積光回折格子を使用する場合を示す図
【図1C】本発明の干渉センサの一実施形態の部分斜視図であって、図1の位相格子の代わりに音響光学装置を使用する場合を示す図
【図1D】本発明の干渉センサの一実施形態の部分斜視図であって、図1の位相格子の代わりに電気光学装置を使用する場合を示す図
【図1E】本発明で使用するための光検出器の斜視図であって、光ビームD1、M1およびS2をそれぞれ受け取る光検出器アレイの部分を示す図
【図2】本発明の干渉センサの一実施形態の部分斜視図であって、図1の集積光複プリズムおよび位相格子の代わりに全内反射素子およびフレネル反射素子を使用する場合を示す図
【図2A】図2の線2a−2aに沿って見た、図2の実施形態の断面図であって、干渉センサの集積光学素子の断面図
【図2B】図2の線2b−2bに沿って見た、図2の実施形態の断面図であって、干渉センサの集積光学素子の断面図
【図3】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態の断面図であって、干渉センサの集積光学素子の側面図
【図3A】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態と同様の実施形態の部分断面図であって、光ファイバピグテールをレーザダイオードに置き換えた場合を示す図
【図3B】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態と同様の実施形態の部分断面図であって、光−入力結合手段としてプリズムを示す図
【図3C】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態と同様の実施形態の部分断面図であって、直接結合(direct butt−coupling)による光入力を示す図
【図3D】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態と同様の実施形態の部分断面図であって、光−出力結合手段として格子を示す図
【図3E】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態と同様の実施形態の部分断面図であって、光−出力結合手段としてプリズムを示す図
【図3F】図1の線3−3に沿って見た、図1の実施形態と同様の実施形態の部分断面図であって、全内反射ミラーによる光出力を示す図
【図4】本発明のセンサの光出力ビームの正弦波出力パターンをグラフで表したものであって、ビームの振幅を位相シフトΔFの関数として示す図
【図5】1つの基板上に装着された2つの干渉センサを有する、本発明の集積マルチセンサの実施形態の斜視図
【図6】図2の実施形態の部分斜視図であって、信号アームを細分して、多数の種類の検知またはより高度な信号処理のための多数の検知用小領域を生成する場合を示す図
【図7】共通の構造の制御干渉センサおよび3つのさらなる干渉センサと、これらの干渉センサのうちの2つの干渉センサであって、信号領域上の、環境に敏感な選択的オーバーレイの長さが異なり、それによりこれらの2つの信号領域から発する信号の感度が異なる2つの干渉センサの出力干渉パターンと、信号領域の導波路または基板の構成または材料が異なり、それにより信号領域から発する信号の定常(constant)位相バイアスが異なるもう1つの干渉センサの出力パターンとを示す図
【図8A】図1の線8A−8Aに沿って見た、図1の実施形態と類似した実施形態の断面図であり、参照領域を規定する1つの保護オーバーレイを誇張して示す図
【図8B】図1の線8B−8Bに沿って見た、図1の実施形態と類似した実施形態の断面図であり、信号領域を規定する1つの選択的オーバーレイを誇張して示す図
【図8C】図1の線8C−8Cに沿って見た、図1の実施形態と類似した実施形態の断面図であり、参照領域および信号領域を規定する選択的オーバーレイを誇張して示しており、該参照領域は保護オーバーレイも受け入れる図
Claims (11)
- 環境の特性を検出する装置であって、
a.コヒーレントな放射のビームを生成する手段と、
b.プレーナー型導波路であって、
i.該環境の該特性にさらされることの第1の作用として放射がその中を通って伝搬することを可能にする第1の領域と、
ii.該環境の該特性にさらされることの第2の作用として放射がその中を通って伝搬することを可能にする、該第1の領域とは異なる第2の領域であって、該第2の作用は該第1の作用とは異なる、第2の領域と、
を含むプレーナー型導波路と、
c.該ビームを該プレーナー型導波路に結合する手段と、
d.該第1の領域を伝搬した後の該ビームの第1の部分と該第2の領域を伝搬した後の該ビームの第2の部分との位相差を決定する手段と
を含み、
該位相差決定手段は、
該ビームの該第1の部分の第1の成分を該ビームの該第2の部分の第1の成分に結合することにより、該位相差を示す干渉ビームを生成する手段と、
該ビームの該第1の部分の第2の成分と該ビームの該第2の部分の第2の成分とを用いて、該干渉ビームを正規化する手段と
を含み、
該装置は、該プレーナー型導波路を通って該ビームを伝達することを該ビームの単一のモードのみに制限する構造的な特徴を有している、装置。 - 前記結合手段は、源から前記プレーナー型導波路に前記放射のビームを方向づける結合格子を含む、請求項1に記載の装置。
- 前記第1の領域は、前記環境の前記特性と相互作用し、該環境の該特性の変化に応答して変化する屈折率を有する材料を含む、請求項1に記載の装置。
- 前記第1の領域は、外表面を有し、該第1の領域を通る前記ビームの伝搬に影響を与えるドーパント材料は、該外表面の少なくとも一部分に隣接して設けられている、請求項1に記載の装置。
- 前記位相差決定手段は、前記干渉ビームを検出する手段をさらに含む、請求項1に記載の装置。
- 前記結合手段は、
a.前記ビームの前記第1の部分の前記一部分が、交点において該ビームの前記第2の部分の前記一部分と交差するように、該ビームの該第1の部分の該一部分と、該ビームの該第2の部分の該一部分とを偏向する手段と、
b.該交点に設けられ、該ビームの該第1の部分と該ビームの該第2の部分との少なくとも1つの結合を示す少なくとも1つの出力ビームを生成する手段と
を含む、請求項5に記載の装置。 - 前記検出手段は、
a.光検出器のアレイと、
b.前記干渉ビームの一部分を該光検出器の該アレイに向ける出力格子カプラと
を含む、請求項5に記載の装置。 - 前記構造的な特徴は、前記プレーナー型導波路の横断方向ディメンションを含む、請求項1に記載の装置。
- 前記構造的な特徴は、前記プレーナー型導波路の屈折率を含む、請求項1に記載の装置。
- 前記構造的な特徴は、前記プレーナー型導波路の屈折率および横断方向ディメンションを含む、請求項1に記載の装置。
- 前記構造的な特徴は、前記結合手段のジオメトリーを含む、請求項1に記載の装置。
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