JP3923747B2 - 二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステム及びその表示制御方法 - Google Patents

二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステム及びその表示制御方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステム及びその表示制御方法にかかり、特に、ヘルメット内部に所定の情報を表示する二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステム及びその表示制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、二輪車用のヘルメット内部に表示装置を設け、この表示装置に車速等の情報を表示させるヘルメットマウントディスプレイ(HMD)が知られている。このヘルメットマウントディスプレイ備えたヘルメットを、運転者が装着して二輪車を運転することにより、当該運転者は、ヘルメットの透過面付近に表示された車速等の車両情報、ナビゲーションシステムによる地図情報、あるいは、各種の警告情報等を見ることができる。これにより、運転者は上記各種の情報を、前方を向いたまま見ることができるため、視線移動あるいは姿勢変動、例えば、メータパネルを見るために下方を向くといった動作が抑制され、当該運転者の二輪車運転時における運転姿勢の安定化を図ることができる。
【0003】
そして、ヘルメットマウントディスプレイシステムにおける表示位置は、視野の中央では運転の妨げになるので、中央から離れた位置に表示されるようになっている。このとき、当該表示位置は、例えば、車速が低速のときに視野の妨げとならず、かつ、認識しやすい位置に設定される。これにより、当該運転者は、視線を少しずらすだけで上記のような各種の情報を得ることができ、迅速に当該情報を認知することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例においては、以下のような不都合があった。すなわち、人間の目は車速が高くなるにつれて早く認識できる視野が狭くなるため、上記のような表示位置では、車速が高速になるにつれて運転者が各種情報の認識するのに時間がかかるという問題が生じる。従って、上述したような各種情報(警報など)を早く認識して、迅速な対応を採ることが望まれる高速時において、運転者による上記各種情報の認識が遅延するという問題が生じる。また、このとき、表示位置を運転者の視野に対応して動的に変動することも考えられるが、かかる場合には表示が運転の妨げとなることもあり得る。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、ヘルメットマウントディスプレイに表示される各種情報が運転者の運転の妨げとなることを抑制しつつ、当該運転者が各種情報を、高速時においても迅速に認識することができる二輪車用マウントディスプレイシステム及びその表示制御方法を提供すること、をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、所定の表示データを表示する表示部と、この表示部の表示内容を決定すると共に当該表示部の表示状態を制御する制御部とを備え、制御部が、車両の速度を検出する速度検出機能と、当該車両の速度が速くなるに従って前記表示データの輝度を高く設定して前記表示データを表示部に表示する速度対応表示機能とを備えた、という構成を採っている。
【0007】
このような構成にすることにより、制御部により車両の速度が検出され、当該速度に対応した輝度にて表示データが表示部に表示される。従って、速度が高速で運転者の視野が狭くなり、現在の表示位置における表示が迅速に認識しづらい場合であっても、当該運転者は、輝度が変化して認識が容易となった表示データを迅速に認識することができる。
【0008】
また、速度対応表示機能は、車両の速度が速くなるに従って、表示データの輝度を高く設定して表示部に表示する。これにより、車両の速度が高速になるに従って、表示データの輝度が高く設定されて当該表示データが表示部に表示される。従って、高速走行時であって運転者の視野が狭くなる場合であっても、当該狭い視野にあわせて表示データの表示位置を移動する必要がないため、表示が運転の妨げになることを抑制しつつ、表示データが高い輝度にて表示されるため、当該運転者は表示を迅速に認識することができる。
【0009】
また、速度対応表示機能にて設定される表示データの輝度は、あらかじめ定められた所定の上限値を有するようにすると望ましい。これにより、速度に早くなるに従って輝度が高く設定される表示の輝度が所定の値以上に設定されることがないため、輝度が高すぎて表示が見えづらくなることが抑制され、運転者が表示データを迅速に認識することができる。
【0010】
また、制御部は、表示部のあらかじめ定められた所定の位置に表示データを移動不能に表示する表示位置設定機能を備えると共に、この設定された表示位置において速度対応表示機能が作動して表示データを表示するようにすると望ましい
【0011】
これにより、低速走行時には、運転者が表示を迅速に認識できつつ、かつ、視界の妨げとならないようなあらかじめ定められた位置に表示データが表示される。そして、その後、車速が所定の速度に達したときに、すなわち、高速走行時には、上述したように速度に対応した輝度にて表示データが表示される。従って、高速走行時においても、表示データが低速走行時に設定された位置に表示されつつ、かかる位置にて速度に対応した輝度に設定されるため、より認識の迅速化を図ることができ、視界の妨げになることが抑制される。
【0012】
さらに、本発明では、制御部が車両の速度を検出する速度検出工程と、車両の速度が速くなるに従って表示データの輝度を高く設定して表示部のあらかじめ定められた所定の位置に所定の表示データを表示する表示位置設定工程と、当該車両の速度に対応した表示状態にて表示データを表示部に表示する速度対応表示工程とを備えた、という構成を採っている二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムの表示制御方法をも提供している。このようにしても、上記と同様に作用し、表示データが運転者の運転の妨げとなることが抑制されつつ、当該運転者が迅速に表示データを認識することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
まず、本発明である二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムの基本的な構成を、図1乃至図2を参照して説明する。図1は、二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムの構成を示すブロック図であり、図2は、当該システムを備えたヘルメット10の外観図である。
【0015】
本実施形態の二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムは、図1に示すように、所定の表示データを表示する表示部12と、この表示部12の表示内容を決定すると共に当該表示部12の表示状態を制御する制御部13とを備えている。そして、当該システムは、図2に示すように、ヘルメット10に装備されている。このヘルメット10は、頭部全体を覆う、いわゆるフルフェース型のヘルメット10である。そして、このヘルメット10には、運転者Rが前方を見るための透過面11(バイザー)が備えられている。また、ヘルメット10内には、上記表示部12等を駆動する電源(図示せず)が備えられている。
【0016】
上記表示部12は、ディスプレイ14、光学部材15、コンバイナ16等から構成されている。ディスプレイ14は、LED、LCD又は蛍光表示管等からなり、制御部13にて車速センサ(図示せず)等から検出された車速信号V1及びオンオフ信号V2によって映像S2を発生する。光学部材15は、レンズ等からなり、ディスプレイ14から発生した映像光をコンバイナ16へ投光する。コンバイナ16は、ハーフミラーとなっていて、ヘルメット10の透光面11を通して得られる情景S1を透過させるとともに、ディスプレイ14からの映像S2を反射させるものである。
【0017】
これにより、運転者Rは、ヘルメット10の透過面11を通して前方の情景S1を見ることができると共に、当該透過面11付近に備えられた上記コンバイナ16に映し出された映像S2である各種の表示データを見ることができる。ここで、表示データは、当該二輪車の速度情報や、障害物情報、各種警告情報、あるいは、走行地点の地図情報などである。
【0018】
図3(a)に、ヘルメット10の透過面11からの運転者Rの視野、すなわち、当該運転者Rが透過面11越しに見ることができる情景S1を示す。この図に示すように、当該透過面11の右下には、すなわち、当該透過面11付近にあるコンバイナ16には表示データS2が映し出され、上述したように運転者Rは、情景S1と共に表示データS2を見ることができる。
【0019】
ここで、上記制御部13は、所定の演算処理能力を有するCPUから成っている。この制御部13は、上述したように、上記表示部12の動作を制御して、当該表示部12に各種の表示データS2を表示する機能を備えている。
【0020】
また、この制御部13は、車速を検出する機能(速度検出機能)を備えている。この速度検出機能は、二輪車の所定箇所にあらかじめ備えられた車速センサ(図示せず)から車速信号Vを読み出し、車両の速度を検出する。このとき、ヘルメット10内の制御部13と、二輪車の所定箇所に備えられた車速センサ(図示せず)とは、ケーブル又は電波によって電気的に接続されている。
【0021】
但し、制御部13は、必ずしもヘルメット10内に備えられていることに限定されない。当該制御部13は、二輪車側に備えられていてもよい。そして、制御部13が表示部12をケーブル又は電波等を介して制御することにより、当該表示部12の表示を制御してもよい。
【0022】
また、この制御部13は、上述したように表示部12に表示する各種の表示データS2を作成する機能を備えている。例えば、障害物に関する情報である警告データを作成したり、現在位置周辺の地図データを作成する。従って、二輪車には、障害物を検知する障害物センサや、ナビゲーションシステム等を備えている。これにより、当該システムでは、障害物が検出された場合に、運転者Rに障害物に注意すべき情報(注意喚起情報)を発することができ、さらには、現在地周辺の地図等を表示することができる。
【0023】
さらに、本発明にかかる制御部13は、車両(二輪車)の速度に対応した輝度にて表示データS2を表示部12に表示する速度対応表示機能とを備えている。この速度対応表示機能は、上記速度検出機能にて検出された速度に基づいて、コンバイナ16に表示される表示データS2の輝度を変更するという機能である。すなわち、速度に対応した輝度にて、表示データS2を投光するよう上記ディスプレイ14の動作を制御する。
【0024】
そして、本実施形態においては、二輪車の速度が速くなるに従って、当該輝度が高く設定されて表示されるようになっている。このとき、例えば、図4に示すようなあらかじめ用意されている速度に対応した輝度に関する情報に基づいて設定される。この図4に示すものは、実験により定められた、所定の車速時において運転者Rが認識しやすい表示の輝度を表す車速―輝度曲線である。そして、当該情報は、制御部13にて読み出し可能な記憶媒体に記憶されていて、必要に応じて当該制御部13にて読み出されて用いられる。但し、車速に対応する輝度の設定は、上記方法に限定されない。所定の関数によって速度等から算出されることにより設定されてもよい。
【0025】
ここで、上記各機能は、制御部13であるCPUが各機能用の所定のプログラムを実行することにより実現することができる。従って、当該各プログラムは、制御部13にて読み出されて実行されるよう、所定の記憶媒体に記憶されている。
【0026】
このようにすることにより、車速が早くなるに従ってヘルメットマウントディスプレイに輝度が高く設定された表示データS2が表示され、輝度の高い表示は認識しやすいため、視野が狭くなっている運転者Rが、迅速に表示データS2を認識することができる。
【0027】
ここで、上記実施形態において、速度対応表示機能にて設定される表示データS2の輝度は、あらかじめ定められた所定の上限値を有するものであってもよい。すなわち、制御部13が、表示される輝度を所定の値以上にならないように設定するよう制御してもよい。例えば、表示データS2が明るすぎて運転者Rが見づらいと、あらかじめ実験等に明らかになっている輝度である。このようにすると、輝度を高く設定したことにより却って見づらくなるということが抑制される。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0029】
当該他の実施形態におけるヘルメットマウントディスプレイシステムは、上述した一実施形態とほぼ同様の構成要素を備えている。そして、本実施形態では、さらに、制御部13が、車両の速度が所定の速度に達したときに表示部12のあらかじめ定められた所定の位置に表示データS2を表示する表示位置設定機能を備えると共に、この設定された表示位置において速度対応表示機能が作動して表示データS2を表示するようになっている。
【0030】
上記表示位置設定機能は、低速走行時における運転者Rの視野内に表示データS2を表示する。すなわち、二輪車の速度に基づいて、ディスプレイ14の投光位置を移動する。このとき、低速走行時の視野内であって、運転者Rの運転の妨げとならない位置である。従って、当該視野の範囲の中心から外れた位置である。その表示例を、図3(a)に示す。図3(a)は、上述したようにヘルメット10の透過面11越しにおける運転者Rの視野を示す図である。このとき、内側の点線の楕円に囲まれた範囲は、運転者Rが当該車両の速度にて迅速に認識することができる視野の範囲(認識容易視野範囲E1)を示している。また、当該内側の楕円の範囲外であって外側の一点鎖線の楕円に囲まれた範囲は、運転者Rが認識に時間がかかってしまう視野の範囲(認識困難視野範囲E2)を示している。
【0031】
図3(a)に示すように、内側の楕円の範囲内E1であって、その中心から離れた箇所に上記表示データS2を表示することによって、運転者Rの運転の妨げとならず、認識しやすい位置に表示データS2が表示されるため、当該運転者Rは、迅速に表示データS2を認識することができる。
【0032】
そして、当該表示位置にて、上述した速度対応表示機能が作動する。すなわち、上記表示位置設定機能にて設定された表示位置に表示データS2が表示された状態のまま、当該表示の輝度が速度に対応して設定されて表示される。図3(b)にその様子を示す。図3(b)は、高速走行時における運転者Rの視野を示す図である。このように、高速走行時においては、運転者Rは前方に集中するため、迅速に認識できる視野が狭くなる(点線の楕円E1)。同様に、認識に時間がかかる視野も狭くなる(一点鎖線の楕円E2)。かかる場合においては、表示データS2の表示位置は認識に時間がかかる位置にあるが、当該表示データS2の輝度が高く設定されて表示されているため、運転者Rが当該表示データS2を迅速に認識することができる。なお、当該表示データS2の表示位置を運転者Rが高速時に迅速に認識できる視野にあわせて移動しないため、表示位置が中央に移動することなく、運転の妨げとなることが抑制される。
【0033】
ここで、本実施形態における動作を、図5を参照して説明する。
【0034】
まず、ヘルメットに搭載されているヘルメットマウントシステムや車両の電源を入れると、初期位置(図示せず)に表示データS2が表示される(ステップS1)。この初期位置は、上述した低速時の視野の範囲内である必要はなく、さらに外側であってもよい。また、この時に表示される表示データS2は、当該システムが正常に作動しているか否かを表す旨の情報等である。
【0035】
続いて、車速が検出される(速度検出工程)。このとき、車速が所定の速度(Va)に達したか否かが検出され(ステップS2)、当該速度(Va:低速)に達すると表示データS2が認識容易視野範囲E1内に表示される(ステップS3、表示位置設定工程、図3(a)参照)。
【0036】
続いて、車速がさらに高い速度に達したか否かが検出され(ステップS4)、所定の速度(Vb,・・・)に達したときに当該速度(Vb,・・・)に対応した輝度にて表示データS2が表示される(ステップS5、速度対応表示工程)。このとき、表示データS2の表示位置は、低速走行時に設定された表示位置である(図3(a),(b)参照)。すなわち、表示位置を変えずに表示される。その後、車両が停止するまで、当該速度に対応した表示を行う。但し、車速が低速の速度(Va)よりも低くなったときには、上記初期位置に表示データS2を表示してもよい。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、表示部に表示される表示データの表示状態が車速に対応して変化するため、すなわち、車速が早くなるに従って表示の輝度が高く設定されるため、高速走行時において運転者の視野が狭くなった場合であっても当該表示を迅速に認識することができる、という従来にない優れた効果を有する。そして、この場合に、高速走行時の視野にあわせて表示位置を移動することがないため、当該表示が視野の中央に移動することが抑制され、運転者の運転の妨げとなることも抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明である二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムが装備されるヘルメットの外観を示す正面図である。
【図3】図3は、図2に開示したヘルメットの透過面越しにおける運転者の視野を示す図である。図3(a)は、低速走行時の運転者の視野を示し、図3(b)は、高速走行時の運転者の視野を示す。
【図4】図1に開示した表示部に表示される表示データの、車速に対する輝度の値を示す線図である。
【図5】本発明の他の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ヘルメット
11 透過面(バイザー)
12 表示部
13 制御部
14 ディスプレイ
15 光学部材
16 コンバイナ
R 運転者
E1 認識容易視野範囲
E2 認識困難視野範囲
S1 情景
S2 表示データ(映像)

Claims (5)

  1. 所定の表示データを表示する表示部と、この表示部の表示内容を決定すると共に当該表示部の表示状態を制御する制御部とを備えた二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムにおいて、
    前記制御部が、車両の速度を検出する速度検出機能と、当該車両の速度が速くなるに従って前記表示データの輝度を高く設定して前記表示部に表示する速度対応表示機能とを備えたことを特徴とする二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステム。
  2. 前記制御部は、前記表示部のあらかじめ定められた所定の位置に移動不能に前記表示データを表示する表示位置設定機能を備えると共に、この設定された表示位置において前記速度対応表示機能が作動して前記表示データを表示することを特徴とする請求項1記載の二輪車用マウントディスプレイシステム
  3. 前記表示位置設定機能は、当該車両の低速走行時における認識容易視野範囲内であって、当該車両の高速走行時における認識容易視野範囲外且つ認識困難視野範囲内に前記表示データの表示位置を設定することを特徴とする請求項2記載の二輪車用マウントディスプレイシステム
  4. 前記速度対応表示機能にて設定される表示データの輝度は、あらかじめ定められた所定の上限値を有することを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステム
  5. 制御部が車両の速度を検出する速度検出工程と、前記車両の速度が速くなるに従って表示データの輝度を高く設定して表示部のあらかじめ定められた所定の位置に所定の表示データを表示する表示位置設定工程と、当該車両の速度に対応した表示状態にて前記表示データを前記表示部に表示する速度対応表示工程とを備えたことを特徴とする二輪車用ヘルメットマウントディスプレイシステムの表示制御方法。
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