JP3923660B2 - 地上波ディジタル放送用中継システム - Google Patents

地上波ディジタル放送用中継システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上波ディジタル放送において放送波中継を行う中継システムに係り、特に中継局において送信電波が受信アンテナに回り込むことによる妨害を効果的に除去できる地上波ディジタル放送用中継システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、地上波ディジタル放送の研究開発が将来の実現に向けて精力的に進められている。地上波ディジタル放送においては、サービスエリアを全国規模で拡大するために、親局から送信される放送波を中継して子局に送信する放送波中継局の設置が不可欠である。
【0003】
現行のアナログ地上放送における放送波中継局では、親局からの放送波を親局の送信周波数と異なる周波数に変換して子局に送信する方式がとられている。これに対し、地上波ディジタル放送においては、貴重な周波数資源の有効利用を図り、また地上波ディジタル放送を利用した移動体サービスにおいて同一周波数で放送されるエリアを広くするために、放送波中継局の送信周波数を親局のそれと同一周波数にする、いわゆるSFN(単一周波数ネットワーク)の構築が重要な課題となっている。
【0004】
一般に、放送波中継局では親局からの放送波を受信アンテナで受信して得た受信信号を送信機で規定の電力まで増幅して送信アンテナで子局に送信する際、送信アンテナからの送信電波の一部が受信アンテナに回り込み、これが送信機の電力増幅器に再び入力される。SFNを実現するために、放送波中継局の送信周波数と受信周波数を同一にした場合、送信アンテナから受信アンテナに回り込む電波のレベルがあるしきい値以上になると電力増幅器が発振することがある。
【0005】
このような不安定現象を避けるために、放送波中継局の受信所と送信所を位置的に分離し、例えば受信所を山影に設置して送信アンテナからの電波が受信アンテナに回り込まないようにする、いわゆる分離方式が考えられている。しかし、この分離方式は山腹を挟んで遠く離れた二個所に受信所と送信所を設置し、かつ両者を長いケーブルで接続しなければならず、用地と設備に莫大な費用がかかるという問題がある。また、中継局からの送信電波を受信アンテナに回り込まないようにする地形は限定されており、特定の限定された場所にしか適用できないという困難もある。さらに、中継局で受信した親局からの電波にゴースト成分が含まれている場合には、中継局から子局に送信する電波にもゴースト成分が含まれるため、放送波中継を繰り返す過程で信号品質が徐々に劣化してゆくという欠点もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、地上波ディジタル放送においてSFNで放送波中継を行う場合に、中継局からの送信電波が中継局の受信アンテナに回り込むことによる電力増幅器の発振などの不安定現象を避けるために、中継局の受信所と送信所を位置的に離す分離方式は、用地の確保とケーブル敷設などの設備面で多くの費用を必要とするばかりでなく、地形条件が限定された地域にしか適用ができず、また中継局の受信電波にゴースト成分が含まれている場合には、中継局からの送信電波にもゴースト成分が含まれてしまうことにより、放送波中継を繰り返す過程で信号品質が劣化してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、設置場所の地形の影響を受けることなく、中継局において送信電波が受信アンテナに回り込むことによる不安定現象を回避でき、またゴースト妨害の影響を受けにくい地上波ディジタル放送用中継システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る地上波ディジタル放送用中継システムは、親局からの放送波を受信し、その受信信号をSHF帯の電波に変換して送信する中継局と、この中継局から送信された電波を受信し、その受信信号を親局からの放送波と同一周波数に変換して送信する少なくとも一つの子局とを有することを基本的な特徴とする。
【0009】
この地上波ディジタル放送用中継システムでは、次のようにして所期の課題が解決される。まず、親局と子局は送信周波数が同一であって、SFN(単一周波数ネットワーク)が実現されているため、周波数資源の有効利用が図られる。中継局は、受信周波数と送信周波数が異なることになるが、放送波を送信するものではないため、SFNの条件に反しない。
【0010】
子局は中継局からのSHF帯の周波数の電波を受信し、これと異なる例えばUHF帯の周波数の電波を放送波として送信するため、送信する放送波の一部が受信アンテナに回り込んでも、内部の電力増幅器の発振などの不安定現象を起こすことがなく、安定した動作が維持される。
【0011】
中継局の送信周波数はSHF帯であるため、中継局の送信アンテナおよび子局の受信アンテナにパラボラアンテナを使用して、送受信パターンを絞ることができ、これにより子局の受信アンテナでマルチパスによるゴースト波が受信されることがなく、子局でのマルチパス妨害が回避される。
【0012】
中継局においても、親局の方向に指向性ビームを向けた受信アンテナを用いて親局からの放送波を受信するようにすることにより、中継局でのマルチパス妨害を回避することができる。
【0013】
中継局は、本来は親局のサービスエリア外に設けられていてもよいが、受信電界強度があるレベル以下になると急激に画質劣化を起こすディジタル放送特有の特性を考慮して、親局のサービスエリア内に中継局を設置することにより、中継局は環境の変化等によらず常に安定して親局からの放送波を受信でき、中継による特性劣化が最小限に抑えられる。
【0014】
この場合、親局と子局を含めた全体のサービスエリアを効率的に拡大するために、中継局は親局のサービスエリアのできるだけ端部に設置されることが望ましい。
【0015】
さらに、この際に受信端末(一般のディジタルTV受信機)が親局、子局のいずれからの電波も受信できないエリアをできるだけ無くし、全体としてのサービスエリアをより効率的に広げるために、親局のサービスエリアと子局のサービスエリアとを一部重複させてもよい。
【0016】
この場合には、重複エリア内にある受信端末が親局からの放送波と子局からの放送波の両方を受信することによるマルチパス妨害を考慮する必要がある。この問題に対しては、親局が放送すべき信号をOFDM(直交周波数分割多重)方式により変調した後、送信周波数に変換する構成とすれば、OFDM伝送でのガードタイムを親局から中継局および子局を介して受信端末に至るまでの伝搬遅延時間と、親局から受信端末までの伝搬遅延時間との差の時間以下に設定することにより、このようなマルチパス妨害は容易に回避されることになる。
【0017】
親局と中継局および子局は、GPS受信機から送信される信号または原子発振器からの信号を基準信号として、PLL(位相同期ループ)により周波数変換のための局部発振信号を生成することにより、相互の周波数同期を正確にとることが可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るディジタル放送用中継システムの概略構成を示す図である。この中継システムは親局1からUHF帯の周波数f1で送信される放送波を受信し、その受信信号をSHF帯の周波数f2の電波に変換して送信する中継局2と、この中継局2からの送信された電波を受信し、その受信信号を親局1からの放送波と同一周波数f1で送信する子局3からなり、親局1からの放送波または子局3からの放送波が受信端末である一般のディジタルTV受信機で受信される構成となっている。
【0019】
次に、図2〜図5を用いて親局1、中継局2および子局3の詳細について説明する。
図2は親局1の構成を示している。図2において、放送されるべき映像・音声信号20はOFDM変調器21に入力され、基準信号発生器22からの基準信号を入力とするPLL(位相同期ループ)回路23で生成される局部発振信号LOに基づいて、直交周波数分割多重方式により変調される。OFDM変調器21の出力信号はアップコンバータ24に入力され、UHF帯の周波数f1、例えば470MHz(第13チャネル)〜770MHz(第62チャネル)のいずれかの周波数に変換される。アップコンバータ24の出力信号は送信機25により電力増幅され、送信アンテナ26より放送波として送信される。
【0020】
図3に、PLL回路23の構成例を示す。基準信号発生器22からの基準信号は、位相比較器31の一方の入力に与えられる。この位相比較器31の出力信号は、ループフィルタ32を介して電圧制御発振器(VCO)33に制御信号として供給される。電圧制御発振器33の出力信号は、1/n分周器34を介して位相比較器31の他方の入力に与えられる。1/n分周器34は、分周比が可変のプログラマブル分周器が用いられる。このような構成により電圧制御発振器33からは、基準信号発生器22から出力される基準信号のn倍の周波数の局部発振信号LOが得られる。
【0021】
図4は、中継局2の構成を示している。図4において、親局1からの周波数f1の放送波は受信アンテナ40で受信される。受信アンテナ40としては、子局3からの周波数f1の放送波を受信しないように、指向性の鋭いアンテナ、例えばパラボラアンテナを使用することが望ましい。この受信アンテナ40は、指向性ビームが親局1の方向を向くように設置される。親局1と子局3は、中継局2から見て別の方向に位置しているから、受信アンテナ40は親局1からの放送波のみを受信することになる。
【0022】
受信アンテナ40からの受信信号は受信機41で増幅された後、ダウンコンバータ44により一定の中間周波信号に変換され、さらにアップコンバータ45によってSHF帯の周波数f2、例えば3.4GHzに変換される。アップコンバータ45の出力信号は送信機46により電力増幅され、送信アンテナ47より送信される。送信アンテナ47としては、SHF帯の送信が可能なパラボラアンテナが使用される。
【0023】
ダウンコンバータ44およびアップコンバータ45は、基準信号発生器42からの基準信号に基づいてPLL回路43で生成される局部発振信号LO1,LO2がそれぞれ供給され、これらの局部発振信号LO1,LO2を用いて周波数変換を行う。PLL回路43は、図2に示したPLL回路23と同様に構成されている。
【0024】
図5は、子局3の構成を示している。図5において、中継局2から送信されるSHF帯の周波数f2の電波は、受信アンテナ50で受信される。受信アンテナ50としては、SHF帯の受信が可能なパラボラアンテナが使用される。受信アンテナ50からの受信信号は受信機51で増幅された後、ダウンコンバータ54により一定の中間周波信号に変換され、さらにアップコンバータ55によって親局1からの送信周波数f1と同じ周波数に変換される。アップコンバータ55の出力信号は送信機56により電力増幅され、送信アンテナ57より送信される。送信アンテナ57は、無指向性アンテナが使用される。
【0025】
ダウンコンバータ54およびアップコンバータ55は、基準信号発生器52からの基準信号に基づいてPLL回路53で生成される局部発振信号LO3,LO4がそれぞれ供給され、これらの局部発振信号LO3,LO4を用いて周波数変換を行う。PLL回路53も、図2に示したPLL回路23と同様に構成されている。
【0026】
なお、図2〜図5における基準信号発生器22、42および52としては、例えばGPS衛星から送信される信号を受信して周波数精度の高い基準信号を出力するGPS受信機、あるいはルビジウム(Rb)発振器のような高精度の原子発振器が使用される。親局1、中継局2および子局3では、このような高精度の基準信号発生器22、42および52からの基準信号に基づいてPLL回路23、43および53で生成される局部発振信号を用いて周波数変換を行うことによって、正確に周波数同期がとられる。
【0027】
また、親局1または子局3からの放送波を受信する受信端末であるディジタルTV受信機は、図示していないがOFDM復調器を用いて元の映像・音声信号を再生するものとする。
【0028】
このように構成された本実施形態の地上波ディジタル放送用中継システムによると、次のような効果が得られる。
(1)放送波を送信する親局1と子局3は送信周波数が共にf1と同一であるため、SFNが実現されており、限られた周波数資源の有効利用を図ることができる。
【0029】
(2)子局3では中継局2からの周波数f2の電波を受信し、これと異なる周波数f1の電波を放送波として送信するため、周波数f1の電波が受信アンテナ40に回り込んでも、電力増幅器(送信機46)が発振などの不安定現象を起こすことがなく、安定した動作が可能である。
【0030】
(3)中継局2の送信周波数f2はSHF帯であるため、中継局2の送信アンテナ47および子局3の受信アンテナ50としてパラボラアンテナを用いることで、送受信パターンをビーム状に絞ることができる。従って、子局3の受信アンテナ50でマルチパスによるゴースト波が受信されることがない。
【0031】
(4)GPS受信機や高精度の原子発振器を基準信号発生器22、42、52に使用することにより、親局1、中継局2および子局3間の周波数同期を正確にとることができる。
【0032】
(5)親局1、中継局2および子局3の配置を工夫し、かつ中継局2の受信アンテナ40にパラボラアンテナのような指向性アンテナを用いることにより、マルチパス妨害を回避しつつ、全体のサービスエリアを効率的に拡大することができる。
【0033】
次に、図6を用いて親局1と中継局2および子局3の好ましい配置例と、それによる特に上記(5)の効果について説明する。
図6に示すように、親局1のサービスエリアをA1とし、子局3のサービスエリアをA3とする。サービスエリアとは、家庭などに設置される一般のディジタルTV受信機で必要な受信電界強度が得られるエリアをいう。これに対し、例えば中継局2や子局3は、その所要受信電界強度が一般のディジタルTV受信機の所要受信電界強度より低いため、その受信エリアはサービスエリアより一般的に広い。
【0034】
ここで、中継局2は図6に示されるように親局1のサービスエリアA1内に設置される。中継局2は、上述したように一般のディジタルTV受信機に比較して所要受信電界強度が低く受信エリアが広いため、本来は一般のディジタルTV受信機で所要受信電界強度が得られるサービスエリアA1から若干外れた位置に設置されていても、親局1からの放送波を受信することが可能である。実際、従来のアナログ放送における放送波中継局は、親局のサービスエリア外に設置されることが多い。
【0035】
しかし、受信電界強度があるレベル以下になると急激に画質劣化を起こすディジタル放送特有の特性を考慮すると、中継局2も一般のディジタルTV受信機で所要受信電界強度が得られるサービスエリアA1内に設置することが望ましい。このように親局1のサービスエリアA1内に中継局2を設置することにより、中継局2は環境の変化等によらず常に安定して親局1からの放送波を受信することができ、中継による特性劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0036】
また、この際に図6に示すように中継局2を親局1のサービスエリアA1のできるだけ端部に設置することにより、親局1から子局3までの距離を延ばし、親局1および子局2の両サービスエリアA1,A3を含めた全体のサービスエリアを効率よく拡大することができる。
【0037】
さらに、図6の例では一般のディジタルTV受信機が親局1および子局3のいずれからの電波も受信できないエリアをできるだけ無くし、全体としてのサービスエリアをより効率的に広げるために、親局1のサービスエリアA1と子局3のサービスエリアA3とは一部で重複している。さらに、これらサービスエリアA1とA3との重複エリア(サービス競合エリアともいう)A0に、中継局2を設置することも可能である。この重複エリアA2は、親局1のサービスエリアA1の一部であり、子局3のサービスエリアA3の一部でもあるから、当然のことながら受信端末4、すなわち一般家庭のディジタルTV受信機も存在し得る。
【0038】
ところで、図6のように親局1および子局3のサービスエリアA1,A3の重複エリアA2に中継局2を設置すると、中継局2は位置的には送信周波数が共にf1である親局1から送信される放送波と子局3から送信される放送波の両方を受信することが可能であるため、両方の放送波が同時に受信されることによるマルチパス妨害を考慮する必要がある。しかし、本実施形態では中継局2の受信アンテナ40としてパラボラアンテナのような指向性アンテナを用い、その指向性ビームを親局1に向けて設置しているため、中継局2は親局1からの放送波のみを受信し、子局3からの放送波は受信しないようにすることができ、マルチパス妨害の問題は生じない。
【0039】
また、図6のように親局1および子局3のサービスエリアA1,A3の重複エリアA2に受信端末4が存在していると、受信端末4は通常、八木アンテナのような指向性のあまり鋭くない受信アンテナを用いるため、送信周波数が共にf1である親局1から送信される放送波と子局3から送信される放送波の両方を受信する可能性が高く、従ってマルチパス妨害を考慮する必要がある。しかし、この問題はOFDM伝送方式を利用することで、以下のようにして回避することができる。
【0040】
図6に示すように、親局1から受信端末4までの伝搬遅延時間をT0、親局1から中継局2までの伝搬遅延時間をT1、中継局2から子局3までの伝搬遅延時間をT2、子局3から受信端末4までの伝搬遅延時間をT3とする。この場合、親局1から送信され受信端末4で受信される放送波(希望波)の受信信号を図7(a)とすると、親局1から中継局2および子局3を経由して受信端末4で受信される放送波(妨害波)の受信信号は図7(b)となり、図7(a)の所望波の受信信号に対して時間Tdifだけ遅れる。この遅延時間Tdifは、
Tdif=(T1+T2+T3)−T0
で与えられる。
【0041】
OFDM伝送方式では図7に示したように、有効シンボル区間と有効シンボル区間との間にガード区間(ガードインターバルともいう)が設定されている。そして、図7(a)の所望波の受信信号に対する図7(b)の妨害波の受信信号の遅延時間Tdifがガード区間の時間長(ガードタイムという)Tg以内であれば、妨害波の受信信号が受信端末4で設定された図7(c)のFFTウインドウ区間内に他のシンボルが入り込まず、マルチパス妨害を受けないようにすることができる。
【0042】
ガードタイムTgは、一例として125μsec程度に選ばれる。これは距離に換算して40km程度である。これは言い換えれば所望波と妨害波が40km程度以内の伝搬距離差で到来する場合は、ガード区間によりマルチパス妨害を吸収できることを意味する。ここで、図6の状況を考えると、例えば親局1のサービスエリアA1は半径30〜40km程度であり、子局3のサービスエリアA3は数km〜20km程度である。従って、親局1から受信端末4に直接伝搬する所望波の伝搬距離と、親局1から中継局2および子局3を経由して受信端末4に至る妨害波の伝搬距離との差は大体10km前後以内、長くとも20km程度であるから、所望波に対する妨害波の遅延時間Tdifは、ガードタイムTg以内に収まることになる。
【0043】
なお、上記実施形態では図1に示したように中継局2からの周波数f2の電波を受信してその受信信号を周波数f1に変換して送信する子局3が2つ設けられているが、子局は1つでもよく、3つ以上でも構わない。
【0044】
また、図1の構成を拡張して、子局3から送信される電波を中継局2と同様の別の中継局を介して別の子局に送信するようにしてもよい。すなわち、一つの親局からの周波数f1の放送波を送信周波数がf2(SHF帯)の中継局と送信周波数がf1の子局を交互に経由して順次送信することにより、サービスエリアをさらに拡大するようにすることも可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のディジタル放送用中継システムによれば、中継局で親局からの放送波を受信し、その受信信号をSHF帯の電波に変換して子局に向けて送信し、子局で中継局から送信された電波を受信し、その受信信号を親局からの放送波と同一周波数に変換して放送波として送信する構成とすることにより、以下のような効果を奏する。
【0046】
(1)放送波を送信する親局と子局の送信周波数が同一であるためにSFNが実現され、周波数資源の有効利用を図りつつ、放送波中継が可能となる。
(2)子局は中継局からのSHF帯の周波数の電波を受信し、これと異なる例えばUHF帯の周波数の電波を放送波として送信するため、送信する放送波の一部が受信アンテナに回り込んでも、送信用の電力増幅器の発振などの不安定現象は生じない。
【0047】
(3)送信周波数がSHF帯である中継局の送信アンテナと子局の受信アンテナに指向性の鋭いパラボラアンテナを使用することで、子局でのマルチパス妨害を回避し、かつ中継局においても親局の方向に指向性ビームを向けた受信アンテナを用いて親局からの放送波を受信することにより、マルチパス妨害を回避することができる。
【0048】
(4)中継局を十分な受信電界強度が得られる親局のサービスエリア内に設置することにより、常に安定して親局からの放送波を受信でき、中継による特性劣化を最小限に抑えることができる。この場合、中継局を親局のサービスエリアのできるだけ端部に設置すれば、親局と子局を含めた全体のサービスエリアを効率的に拡大することができる。
【0049】
(5)受信端末(一般のディジタルTV受信機)が親局、子局のいずれからの電波も受信できないエリアをできるだけ無くし、全体としてのサービスエリアをより効率的に広げるために親局のサービスエリアと子局のサービスエリアを一部重複させた場合でも、親局が放送すべき信号をOFDM方式により変調した後、送信周波数に変換する構成とすれば、OFDM伝送でのガードタイムを親局から中継局および子局を介して受信端末に至るまでの伝搬遅延時間と、親局から受信端末までの伝搬遅延時間との差の時間以下に設定することにより、受信端末でのマルチパス妨害を容易に回避することができる。
【0050】
(6)親局と中継局および子局において、GPS受信機から送信される信号または原子発振器からの信号を基準信号として、PLLにより周波数変換のための局部発振信号を生成する構成とすることで、これら三者相互の周波数同期を正確にとることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る地上波ディジタル放送用中継システムの概略構成を示す図
【図2】同実施形態における親局の構成を示すブロック図
【図3】同実施形態におけるPLL回路の構成を示すブロック図
【図4】同実施形態における中継局の構成を示すブロック図
【図5】同実施形態における子局の構成を示すブロック図
【図6】同実施形態における親局と中継局および子局の配置例を示す図
【図7】同実施形態におけるガード区間によるマルチパス妨害除去の説明図
【符号の説明】
1…親局
2…中継局
3…子局
4…受信端末
20…映像・音声信号
21…OFDM変調器
22…基準信号発生器
23…PLL回路
24…遅延回路
25…アップコンバータ
26…送信機
27…親局送信アンテナ
31…位相比較器
32…ループフィルタ
33…電圧制御発振器
34…1/n分周器
40…中継局受信アンテナ
41…受信機
42…基準信号発生器
43…PLL回路
44…ダウンコンバータ
45…アップコンバータ
46…送信機
47…中継局送信アンテナ
50…子局受信アンテナ
51…受信機
52…基準信号発生器
53…PLL回路
54…ダウンコンバータ
55…アップコンバータ
56…送信機
57…子局送信アンテナ
A1…親局サービスエリア
A2…重複エリア
A3…子局サービスエリア

Claims (8)

  1. ディジタルTV受信機に対する親局のサービスエリア内に設置され、前記親局からの第1の周波数帯のディジタル放送波を受信し、その受信信号を第2の周波数帯の電波に変換して第1の指向性アンテナにより送信する中継局と、
    前記中継局から送信された電波を前記第1の指向性アンテナの方向に向けて配置された第2の指向性アンテナにより受信し、その受信信号を前記親局からのディジタル放送波と同一周波数に変換してディジタル放送波を送信する少なくとも一つの子局とを有することを特徴とする地上波ディジタル放送用中継システム。
  2. 前記第1の指向性アンテナおよび第2の指向性アンテナとしてパラボラアンテナを使用することを特徴とする請求項1記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
  3. 前記中継局は、前記親局のサービスエリア内の端部に設置されることを特徴とする請求項1記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
  4. 前記中継局は、前記親局の方向に指向性ビームを向けた受信アンテナにより該親局からのディジタル放送波を受信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
  5. 前記親局のサービスエリアとディジタルTV受信機に対する前記子局のサービスエリアとを一部重複させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
  6. 前記親局は、放送すべき信号を直交周波数分割多重方式により変調した後、送信周波数に変換することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
  7. 前記直交周波数分割多重におけるガードタイムは、前記親局から受信端末までの伝搬遅延時間と、該親局から前記中継局および前記子局を介して該受信端末に至るまでの伝搬遅延時間との差の時間以下に設定されていることを特徴とする請求項6記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
  8. 前記親局と中継局および子局は、GPS受信機から送信される信号または原子発振器からの信号を基準信号として、位相同期ループにより周波数変換のための局部発振信号を生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の地上波ディジタル放送用中継システム。
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