JP3923203B2 - 誘導発熱ローラ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は誘導発熱ローラ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ローラ本体と、誘導コイル、鉄心からなり、ローラ本体の内部に配置された誘導発熱機構とを備え、モータの回転軸の先端をローラ本体に連結することによりローラ本体を片持式に支持してモータにより直接回転させるようにした誘導発熱ローラ装置が使用されている。この場合ローラ本体の内部の誘導発熱機構はモータに対して一体的に取り付けられる。
【0003】
図5はその従来構成を示し、1はローラ本体、2はモータである。モータ2の回転軸3はモータ2の一方の端面から外部に導出され、ローラ本体1の軸心を通り、先端においてローラ本体1にナット4によって連結される。これによりローラ本体1はモータ2によって直接回転されるようになる。5はローラ本体1の内部にあって回転軸3を囲むように配置された誘導発熱機構で、環状の鉄心6とその外周に巻装された環状の誘導コイル7とにより主として構成されている。
【0004】
8はフランジで、ローラ本体1の開放端面を覆うように配置され、かつモータ2と一体的に連結されてある。このフランジ8はその内面中央から一体的に突き出た筒部9を有し、この筒部9はローラ本体1の軸心方向に沿う内部にまで延長させてある。この筒部9に誘導発熱機構5が取付金具10によって固定されている。筒部9の内部には回転軸3が挿通されてある。11はモータ2を冷却するためのフアンを収納しているフアン室である。
【0005】
このような構成において、モータ2によってローラ本体1は直接回転し、また誘導発熱機構5の誘導コイル7が交流電源によって励磁されることにより、ローラ本体1は通常の誘導発熱ローラ装置と同様に誘導発熱するようになる。通常このようにローラ本体を片持式に支持してモータにより直接回転させる誘導発熱ローラ装置は、そのローラ本体に糸を添纏させつつ移行させ、その過程でその糸を加熱するのに使用するが、その運転に際して、ローラ本体1を8700rpm程度で高速回転させることがある。そこでこのような高速回転に対処するため、筒部9の先端側の内面と回転軸3との間に軸受12を設置し、この軸受12により回転軸3を、筒部9に対して回転自在に支持するようにしている。
【0006】
ところでこのような誘導発熱ローラ装置では、その運転に際してはローラ本体1を250℃程度まで上昇させて使用することがあり、そのためには誘導コイル7は300℃程度に上昇させる必要がある。このような高温度で運転させると、ローラ本体1の内部にあって回転軸3を支持している軸受12も高温度となり、軸受機能が低下するので、これを冷却する必要が生じる。
【0007】
そのため従来では軸受12のハウジング内に冷却ジャケットを設け、ここに外部から循環ポンプにより冷却油を循環させて冷却するようにしている。しかしこのような構成によれば、冷却ジャケットを構成する必要があるので、軸受ハウジングの構成が複雑となる。また循環させる冷却油を冷却するための熱交換器、配管を必要とするほか、冷却油を循環させるためのポンプと、その電源も必要となる。そのため冷却機構全体が複雑となり、かつ製作費が高騰するばかりでなく、これらの保守、点検が煩雑となる欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、モータの回転軸の先端をローラ本体に連結してこれを片持式に支持し、ローラ本体をモータにより直接回転させるようにした構成において、ローラ本体の内部にあって、モータの回転軸を回転自在に支持している軸受を冷却するための構成の簡略化を図り、製作費を低減するとともに、その保守、点検の容易化を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モータの回転軸の内部に、その軸心方向に沿って、軸受の取付位置からモータのフアンに達する程度の長さの孔を設け、この孔を利用して気液二相の熱媒を封入する封入室としたことを特徴とする。
【0010】
封入室の内部において、軸受の近辺にある熱媒は高温となった軸受の熱によって加熱され気化される。気化された熱媒は封入室の内部を通ってフアン側に到達する。フアンの近辺はフアンによって空冷により低温となっているので、ここで気相の熱媒は冷却され液相に戻る。このようにして軸受の熱は熱媒によってフアン側に輸送される。これを繰り返すことにより軸受は冷却されることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1により説明する。なお図5と同じ符号を付した部分は、同一又は対応する部分を示す。本発明にしたがい、回転軸3の内部にその軸心方向に沿って延びる孔13を設け、この孔13を気液二相の熱媒(たとえば蒸留水)を封入する封入室として利用する。具体的には図1に示すように孔13にヒートパイプ14を挿入してこれを封入室とし、その内部に前記した熱媒を密封する。または孔13をジャケット室としてこれをそのまま封入室とし、その内部に前記した熱媒を直接封入するようにしてもよい(図4参照。)。
【0012】
孔13はその一端は軸受12の設置個所に対応する位置まで到達し、他端はフアン室11内にあるフアン15の設置個所に対応する位置まで到達する程度に設けられる。フアン15の設置個所に対応する個所が気相の熱媒の凝縮部となる。なお2Aはモータ2の電機子コイルで、回転軸3と機械的に一体とされてあり、16はモータ2の内部にあって、電機子コイル2Aとフアン15との間で回転軸3を回転自在に支持している軸受である。
【0013】
図1の構成において、モータ2によってローラ本体1が回転され、誘導コイル7が励磁されて運転状態となると、ローラ本体1が発熱する。またこの発熱によって軸受12の温度が上昇することは既に述べたとおりである。このときの軸受12の熱を孔13内のヒートパイプ14の内部にある熱媒が奪い、加熱されて気化する。
【0014】
気化された熱媒はヒートパイプ14内を通り、低温となっているフアン15側すなわち凝縮部に到達し、ここで冷却されて凝縮して放熱する。このようにして軸受12の熱は熱媒によってフアン15側に輸送される。以下これを繰り返す。このため軸受12は冷却され、極端な温度上昇が回避されることになる。
【0015】
このような構成によれば、気液二相の熱媒を回転軸3の内部の封入室に封入しておくだけで、軸受12を冷却することができる。そのため冷却油を使用して冷却する従来構成のように軸受12に冷却ハウジングを設ける必要はなく、また熱交換器、配管、循環用ポンプ、その電源などは全く不要となる。またモータ2に予め付属しているフアン15を軸受の冷却にそのまま兼用できる。
【0016】
ところでこのような構成において、封入室に封入された熱媒が軸受12からの熱によって気化され、その気相の熱媒がフアン15側に向かうとき、その過程で電機子コイル2A、軸受16に対応する個所を通過するとき、もしその近辺の温度が熱媒の温度より低いと、その熱媒はその近辺において放熱してしまうことがある。このような放熱作用が生じると、電機子コイル2A、軸受16の温度が上昇してしまう。
【0017】
これを解決するための構成を示したのが図2である。図2の構成は孔13にヒートパイプ14を設けた構成において、電機子コイル2A、軸受16の設置位置の近辺に対応する孔13の部分の径を大きくしておく。するとこの径の大きい部分の内面とヒートパイプ14の外周との間にギャップ17が形成されるようになる。このギャップ17の存在によりヒートパイプ14は孔13の内面と直接に接することがない。このためギヤップ17が断熱部となり、電機子コイル2A、軸受16が熱媒の液相への変化の際の放熱によって温度上昇するのが抑制されるようになる。なお図2乃至図4においてLは液相の熱媒である。
【0018】
図3は凝縮部における気相の熱媒の凝縮作用に支障が生じないようにした構成を示す。すなわち図2に示すように孔13にヒートパイプ14を設けた構成において、ヒートパイプ14のフアン15側の端部近辺、すなわち気相の熱媒の凝縮部における内面を肉厚として、段部18を設けている。回転軸3が回転すると、液相の熱媒は遠心力によってヒートパイプ14の内面に貼り付けられるように付着する。この場合軸受16より軸受12側に向かう内面に液相の熱媒が付着するが、図のように段部18が設けてあると、熱媒はこの段部18を乗り越えてまで軸受16からフアン15側に向かうことができず、これにより液相の熱媒の移動が阻止される。
【0019】
すなわち段部18の表面には液相の熱媒は付着しない。もし段部18の表面が液相の熱媒に覆われていたとすると、この部分での熱媒の凝縮作用が損なわれるが、段部18の存在によってその表面が液相の熱媒で覆われることがないので、前記凝縮作用は円滑に行われる。なお熱媒が多量に封入されると、段部18を超えてその内面に熱媒が付着することがあるので、適度の量の封入が必要である。
【0020】
図4は孔13をジャケット室としてそのまま封入室とした場合の、電機子コイル2A、軸受16の温度上昇を避けるための構成を示したものである。ここでは孔13のうち電機子コイル2A、軸受16の設置位置に対応する個所の肉厚を薄くして内径を大きくし、大径部19としてある。
【0021】
このように構成しておくと、回転軸3の回転により液相の熱媒が孔13の内面に付着するが、大径部19においては内径が大きいことにより多量の熱媒が溜って付着し、これが断熱層を形成する。そのため気化した熱媒が大径部19にある液相の熱媒に接して凝縮したとしても、この熱媒による断熱作用により電機子コイル2A、軸受16の温度上昇は阻止される。
【0022】
またこの構成においても、孔13におけるフアン15側の凝縮部となる部分の肉厚を大きくして内径を小さくし、図3の場合と同様に段部20を形成する。これにより段部20を乗り越えてその表面まで液相の熱媒が達することはなく、凝縮部が液相の熱媒により覆われることはない。したがって図3の構成と同様に気相の熱媒の凝縮作用が損なわれることはない。なおこの場合でも適度の量の液相の熱媒の封入が必要である。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、モータの回転軸に直結してローラ本体を回転させる構成において、回転軸の内部に気液二相の熱媒を封入した封入室を設けたことにより、回転を支持するためにローラ本体の内部に設置された軸受を、従来に比較して簡単で、しかも安価な構成で冷却することができるとともに、気相の熱媒の凝縮にモータに付属しているフアンを兼用するでき、更に保守、点検が不要となるといった効果を奏する。また熱媒を使用したため、その熱媒の凝縮によりモータの電機子コイルの温度が上昇するような恐れがあっても、これを確実に阻止し、かつ熱媒の円滑な凝縮作用を果たすことができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すもので一部を断面とした正面図である。
【図2】モータの回転軸の実施形態を示す断面図である。
【図3】モータの回転軸の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】モータの回転軸の更に他の実施形態を示す断面図である。
【図5】従来例を示すもので一部を断面とした正面図である。
【符号の説明】
1 ローラ本体
2 モータ
3 回転軸
5 誘導発熱機構
8 フランジ
9 筒部
12 軸受
13 孔
14 ヒートパイプ
15 フアン
17 ギャップ
18 段部
19 大径部
20 段部
Claims (4)
- ローラ本体と、誘導コイル、鉄心からなり、前記ローラ本体の内部に配置された誘導発熱機構とを備え、モータの回転軸の先端を前記ローラ本体に連結することにより前記ローラ本体を片持式に支持して前記モータにより直接回転させるようにした誘導発熱ローラ装置において、前記回転軸を前記ローラ本体の内部に配置された軸受により回転自在に支持するするとともに、前記回転軸の内部に、前記軸受の設置位置に対応する個所から前記モータの冷却用のフアンの設置位置に対応する個所に達する長さの孔を設け、前記孔の内部を気液二相の熱媒を封入した封入室として利用してなり、かつ前記封入室のうちの前記フアンの設置個所に対応する個所を、気相の熱媒の凝縮部としてなる誘導発熱ローラ装置。
- 液相の熱媒が凝縮部を覆うように移動してくるのを阻止するための段部を、前記凝縮部に設けてなる請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
- 回転軸の内部の孔にヒートパイプを配置して前記ヒートパイプを封入室とするとともに、前記回転軸のうちの少なくともモータの電機子コイルの設置位置に対応する前記孔の内面と前記ヒートパイプの外周との間に断熱用のギャップを形成してなる請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
- 回転軸の内部の孔をジャケット室としてその内部を封入室とするとともに、前記封入室のうちの少なくともモータの電機子コイルの設置位置に対応する個所を大径部とし、前記大径部に留まる液相の熱媒により断熱層を形成してなる請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
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