JP3922061B2 - 音質評価装置及び音質評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、評価する音を採取し、その音の騒音レベルおよび時間変動成分と周波数成分を基に算出した累積変動レベルとから音質評価を行う音質評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、製品が発する音の音質を評価するにあたり、評価する音の騒音レベルdB(A)を騒音計で計測して騒音レベル評価を行うことがあるが、これではヒトの聴感でのフィーリングに十分に合う評価は得られなかった。更に、製品が発する音の質を被験者の聴感で評価するフィーリング評価(印象評価)やSD法での評価を用いた場合、これらの評価法はヒトの好き嫌いをダイレクトに評価できるが、物理量と直接的に整合性が取れない。このため製品開発の上での音質改善対策で、改善点を見出すための指標として利用するには不適切であった。そこで、製品が発する音の質を評価するにあたり、評価する音の周波数分析を行い、音質を改善するために必要な周波数帯の情報を物理量として定量化し、この物理量に沿って音質評価を行ことが成されている。なお、従来の音質評価装置の一例が特開平10−267743号公報や、特開平07−306087号公報に開示されている。
【0003】
ここで、ヒトの聴感について、図13を用いて概略説明する。一般に聴覚機構は外耳よりの音波を内耳の鼓膜を介し耳小骨に振動として入力し、耳小骨の振動を蝸牛内の基底膜に伝達し、この基底膜においてその手前側より奥側の各位置の有毛細胞に対し、順次高周波より低周波の振動を弁別してそれぞれ伝達し、各有毛細胞が各周波数毎の振動を電気信号に変換して神経繊維を介し脳に伝えている。ここでの有毛細胞は振動を電気信号に変換する際に化学変化による時間遅れを発生していることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上述の各従来例では、音質評価のために、評価する音の周波数分析後に、主に周波数領域毎の定量化を行い、音質を評価するものであった。このため、これら従来例では、時間的な音質因子である、時間的変動感や滑らかさを評価するには不充分なものであった。即ち、図13を用いて概略説明したように、ヒトの聴覚機構は、評価する音の振動の周波数弁別に加えて時間遅れを含む。このような聴覚特性を考慮した上で、音の音色、音質といったヒトの聴感でのフィーリングに合うように音の質を定量化して評価する必要があると推測される。
【0005】
このため、例えば、ディーゼルエンジンのディーゼル騒音の評価では、時間的に変動する音、即ち、耳障りとなり易い「ガラガラ音」や、「カリカリ音」と呼ばれている間欠音からなる騒音の音質を評価する場合、従来の騒音レベル評価のみ、或いは、周波数分析を行い音を定量化しただけでは、ヒトが有する時間遅れを含む聴覚機構と同様に、即ち、ヒトの聴感でのフィーリングに十分に合うような音の音色、音質といった評価はなされていなかった。
【0006】
このため、音の質を物理量化する上で、ヒトが有する時間遅れを含む聴覚機構と同様に時間的変動要素を考慮することが有効と推測される。
本発明は、以上のような課題に基づき、評価する音をヒトの聴感でのフィーリングに合うように物理量化し、音質評価を行うことのできる音質評価装置および音質評価方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、評価する音の騒音レベルを計測する騒音レベル算出手段と、上記音の時間変動を計測し、同音の時間変動相当の音の強さの変動レベルを求め、同変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出した累積変動レベル算出手段と、予め設定された騒音レベルと累積変動レベルとの評価点の関係を示す評価手段とから構成されたことを特徴とする。
このように評価する音が時間的変動感を表す累積変動レベルと騒音絶対値とに分析して求められ、それら2つの物理量の大小に応じて評価手段が音質評価を行うことができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の音質評価装置において、上記累積変動レベル算出手段は、上記音を電気信号に変換する変換手段と、上記変換手段からの信号を周波数バンド毎に分離して音圧時間信号を算出し、上記音圧時間信号を用いて音の強さを表す包絡線を抽出する包絡線変換手段と、上記包絡線を一次遅れ系の応答として処理する一次遅れ系応答手段と、上記一次遅れ系の応答として処理した音の強さの包絡線を対数表示処理した変動レベル算出手段と、上記変動レベル算出手段より算出された変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出する変動レベル累積手段とからなることを特徴とする。
このように累積変動レベル算出手段が、変換手段と包絡線変換手段と一次遅れ系応答手段と変動レベル算出手段と変動レベル累積手段とからなるので、時間的変動感がヒトの聴感でのフィーリングに合うように確実に物理量化でき、音質評価を行うことができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の音質評価装置において、上記一次遅れ系応答手段は、音の強さの上記包絡線の一次系遅れ処理を、その包絡線振幅上昇時の時定数よりも上記振幅の下降時の時定数が大となる定数で処理したことを特徴とする。
このように、一次遅れ系処理を包絡線振幅上昇時の時定数よりも下降時の時定数が大となる定数で処理するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1記載の音質評価装置において、上記累積変動レベルのオーバーオール値と上記騒音レベルのオーバーオール値とに基づいて騒音評価を行うことを特徴とする。
このように、累積変動レベルのオーバーオール値と騒音レベルのオーバーオール値とに基づいて騒音評価を行うので、音質を適正に物理量化し、音質評価を行うことができる。
【0011】
請求項5の方法発明は、評価する音を採取して電気信号に変換し、上記電気信号から騒音レベルを算出し、かつ上記電気信号から音の時間変動を計測し、同音の時間変動相当の音の強さの変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出し、上記騒音レベルと上記累積変動レベルとで上記音の評価を行うことを特徴とする。
このように、評価する音を電気信号に変換してから騒音レベルを算出し、かつ電気信号から音の時間変動を計測し、同音の時間変動相当の音の強さの変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出し、騒音レベルと累積変動レベルとで音質評価を行うことができる。
【0012】
請求項6の方法発明は、請求項5記載の音質評価方法において、上記変動レベルを算出するステップは、上記音の時間変動から音の大きさを表す包絡線を求め、上記音の大きさを表す包絡線から上記音の強さの包絡線を算出するステップを有することを特徴とする。
このように、音の時間変動から音の大きさを表す包絡線を求め、同包絡線から音の強さの包絡線を算出するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0013】
請求項7の方法発明は、請求項6記載の音質評価方法において、上記変動レベルを算出するステップは、上記音の大きさを表す包絡線から上記音の強さの包絡線を一次遅れ系の応答として処理するステップを有することを特徴とする。
このように、音の大きさを表す包絡線から音の強さの包絡線を一次遅れ系の応答として処理するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の音質評価方法において、上記変動レベルを算出するステップは、音の強さの上記包絡線の一次遅れ処理を、その包絡線振幅上昇時の時定数よりも上記振幅の下降時の時定数が大となる定数で処理したことを特徴とする。
このように、音の強さの包絡線の一次遅れ処理を、その包絡線振幅上昇時の時定数よりも上記振幅の下降時の時定数が大となる定数で処理するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態としての音質評価装置Mを、例えば、ディーゼルエンジンの評価にオーバーオール値を適用した場合について説明する。
図1に示す音質評価装置Mは変換手段1を含む累積変動レベル算出手段2と、騒音レベル算出手段3と、評価手段4とを備え、これらの各機能は上述したヒトの聴覚機能(図13参照)を再現することを考慮して構築された。
累積変動レベル算出手段2は変換手段1に加え、包絡線変換手段11と、一次遅れ系応答手段12と、変動レベル算出手段13と、変動レベル累積手段14とを備える。
【0016】
変換手段1は評価する音としてのディーゼルエンジン(以後単にエンジン6と記す)の音波(音圧)をアナログ信号に変換するマイクロホン7と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器8とを備える。
マイクロホン7は被試験体であるエンジン6の本体に対し評価するべき距離Lだけ離れた位置に配備され、ここではダミー9のヘッド901に取り付けられる。なお、エンジン6は例えば、ローアイドルで運転され、その際の騒音が評価する音としてマイクロホン7に採取され電気信号化され、A/D変換器8と騒音レベル算出手段3とにそれぞれ入力されている。
なお、騒音レベル算出手段3がマイクロホン7とは異なる専用のマイクロホン(図示せず)を別途に採用し、騒音信号(音圧Pa波形)を検出するように構成しても良い。
【0017】
A/D変換器8はマイクロホン7からの騒音信号をデジタル化し、データ記録部5がそのデジタル信号を所定のデータサンプリング周期毎に取り込み記憶処理する。その際の時間軸に対する騒音信号(音圧Pa波形)を図2に示す。
データ記録部5の騒音信号は包絡線変換手段11に入力される。
包絡線変換手段11はデータ記録部5からの騒音信号を周波数バンド毎に分離する周波数弁別部11aと、各周波数帯での音圧時間信号Pi(Pa)を算出する音圧時間信号算出部11bと、音圧時間信号Piを用いて音の強さを表す包絡線Peiを抽出する包絡線演算部11cとを備える。
【0018】
周波数弁別部11aによる騒音を周波数バンド毎に分離する処理は、上述したヒトの聴覚における基底膜の周波数弁別機能に適合するものとして採用されている。このような周波数弁別処理の結果得られた信号、例えば、中心周波数1kHzのバンドにおける音圧時間信号Pi(1kHz)を図3に示した。
音圧時間信号算出部11bで各バンド毎に分離された音圧信号Piは包絡線演算部11cで音圧信号に対する包絡線Peiの算出に使われる。
この処理は、図4に示すように、実線の音圧の波形における各ピークを順次連結して破線で示す音圧の包絡線を求めるのと同様の処理が成されることとなる。
【0019】
次に、一次遅れ系応答手段12は、音の大きさ(音圧)を表す包絡線Peiを音の強さ(エネルギ信号)の包絡線Iei(W/m2)に変換するエネルギ信号変換部12aと、ヒトの聴覚の特性を模擬するため、音の強さの包絡線を一次遅れ系の応答として処理する一次遅れ処理部12bを備える。音圧は大気圧に音圧変動成分を上乗せしてなり、その音圧発生時の音の強さの変化成分をエネルギ信号変換部12aが抜き出す処理を行うもので、音圧の包絡線Pei(Pa)を音の強さの包絡線に変換する、言い代えれば単位の換算を行うもので、式(1)により、算出している。例えば、中心周波数1kHzのバンドにおける音の強さの包絡線Iei(W/m2)を図5に示した。
【0020】
【数1】
【0021】
ここで、Iei :音の強さの包絡線 W/m2
ρ :空気密度 kg/m3
c :音速 m/sec、である。
【0022】
次いで、一次遅れ処理部12bは、図6に示すように、破線で示した音の強さの振幅(mW/m2)波形(入力信号)を一次遅れの応答として処理して実線で示す出力信号に変換し、即ち、振幅の立上がりを早め、降下を遅れめの処理をして音の振幅にだれを持った時間遅れ信号に変換する。
このような一次遅れ系の応答処理を行うべく、式(2)で表される一次遅れ系のインパルス応答W(t)を導出する。即ち、入力信号である強さの包絡線Iei(W/m2)を、出力信号である時間遅れ処理済の音の強さの包絡線Iei’(mW/m2)として導出し、これを図7に示した。
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、W(t) :一次遅れ系のインパルス応答
t :時間
T :時定数である。
【0025】
この一次遅れ系の応答処理は、入力信号(包絡線振幅Iei)をx(n)、出力信号(時間遅れ信号Iei’)をy(n)、前回値をy(n−1)とし、上昇時(x(n)≧y(n−1))の時定数Tup(例えば10mmsec)、下降時(x(n)<y(n−1))の時定数Tdown(例えば20mmsec)とし、時間刻み幅Δtとすると、上昇時の一次遅れ系の応答値y(n)が式(3a)として、下降時の一次遅れ系の応答値y(n)が式(3b)として、nが2、3、4・・・と経時的に変化するのに応じて、それぞれ算出できる。
【0026】
【数3】
【0027】
このように、一次遅れ系処理を包絡線振幅上昇時の時定数Tupよりも下降時の時定数Tdownが大となるよう設定したことによりヒトの聴覚における基底膜の有毛細胞による振動を電気信号に変換する際の時間遅れを模擬することができ、しかも、図7に示した時間遅れ処理済の音の強さの包絡線Iei’(mW/m2)は、「だれ」を持つことより、同音の強さの包絡線Iei’(実線の時間遅れ信号として示した)がその下側に位置する比較的小ピークの波形部位を覆うこととなり、この点でもヒトの聴覚と同様の状況を再現できることとなる。
変動レベル算出手段13は、式(4)に示すように、時間遅れ処理済の音の強さの包絡線Iei’(mW/m2)を実効値IRMSi(W/m2)で割って正規化し、ヒトの耳の感度に合うように対数表示値に処理し、これを変動レベルFLi(dB)として求める。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、FLi :変動レベル(F1uctuation Level) dB
Iei’ :耳の反応遅れを考慮した音の強さの包絡線 W/m2
IRMSi :音の強さの実効値 W/m2、である。
【0030】
このように、時間遅れ処理済の音の強さの包絡線Iei’(mW/m2)を中心周波数1kHzのバンドにおける変動レベルFLi(dB)としてデシベル表示に変換した一例を、図8に示した。
変動レベル累積手段14では変動レベル算出手段13で算出された変動レベルFLiにおけるある評価時間(例えばエンジン1サイクル)中に発生する極大値hnと極小値lnのピーク差dBk、すなわち、(dB1+dB2・・・+dBn)を合計する。しかも、各バンドにおける音の大きさのウエイト(騒音レベルのオーバーオール値LOA)と、図9に示すヒトの周波数嗜好パターンを考慮したウエイトWiとを加算して累積変動レベルCFLiとして数値化する機能を備え、具体的には式(5)の演算処理として実行される。
【0031】
【数5】
【0032】
ここで、CFLi :累積変動レベル(Cumu1ative F1uctuation Leve1)dB
i :周波数バンド番号
dBk :エンジン1サイクル中に発生する変動レベルのピーク差 dB
N :累積回数(1サイクル中の変動レベルのピーク差の数)
Li :各周波数バンドの騒音レベル dB
LOA :騒音レベルのオーバーオール値 dB
Wi :ヒトの周波数嗜好パターンを考慮したウェイト dB
dBref :dBリファレンス dB、である。
【0033】
ここでは、図8に示すピーク差dBkの抽出においては、極大値と極小値の候補のデータを予め採り込み、フィルタ処理を行う。即ち、ここでの変動レベルFLi(dB)は極大値hnと極小値lnを繰り返すが、その間にも比較的小レベルの極大値と極小値を生じている。そこで、最小値の後の最大値が決定する毎に最小値の点からx軸(時間軸)とy軸(変動レベル)にある閾値を設けて、その閾値範囲内の極大値と極小値を排除するというフィルタ処理を実行することになる。
次に、図9に示すヒトの周波数嗜好パターンを考慮したウエイトWiの設定マップは、低域側と高域側を持ち上げた台形型として設けた。
この後、得られた累積変動レベルCFLiのオーバーオール値CFLは式(6)を用いて算出し、騒音判定用物理量として適性化する。
【0034】
【数6】
【0035】
ここで、CFL :累積変動レベルオーバーオール dB
i :周波数バンド番号、である。
【0036】
このようにして騒音の時間的変動感を表す累積変動レベルオーバーオールCFLが評価判定用の物理量の一つとして演算され、その分布は、例えば、図10に示すようになる。
一方、騒音レベル算出手段3はマイクロホン7からの騒音信号(音圧Pa波形)をA特性フィルタを用いて補正したデシベル値dB(A)に変換して取り込み、データサンプリング周期毎にデシベル値NLidB(A)のオーバーオール値NL(dB(A))を騒音レベルとして算出し、これを評価判定用の物理量の一つとする。
【0037】
次に、評価手段4は、累積変動レベル(dB)と騒音レベル(dB(A))の2つの物理量から音質を十段階に評価する。ここで評価手段4は図11に示す音質評価処理マップm1を採用する。
オーバーオール評価の場合、音質評価処理マップm1は、横軸に累積変動レベルCFL(dB)を、縦軸に騒音レベルNL(dB(A))を取り、それぞれヒトが感じる騒音レベルに対しての十段階の評価線(1〜10)を適宜設定する。この場合、各評価線は評価基準を通る傾き1の直線として設定され、評価域を区分している。ここでは、No.7の評価線より騒音レベル値が小さい領域(左下側)が音質対策良好、大きい領域(右上側)が音質対策不良と判定するよう設定する。
【0038】
ここで各音質評価処理マップm1は、被試験体であるエンジンの機種毎に評価レベルを異ならせたものも採用することが可能である。
このような音質評価装置Mを用いてエンジンの騒音評価を各々オーバーオール値を用いて行う音質評価方法を順次説明する。
【0039】
まず、音質評価装置Mが騒音対策前のエンジン6にセットされる。次いで、エンジン6が、例えばローアイドルで運転され、その際の騒音がマイクロホン7に採取されて電気信号(音圧Pa信号)化される。
マイクロホン7の音圧Pa信号は、A/D変換器8と騒音レベル算出手段3とにそれぞれ入力される。騒音レベル算出手段3では騒音信号(音圧Pa波形)をデシベル値dB(A)に変換し、データサンプリング周期毎のオーバーオール値NL(dB(A))を騒音レベルとして導出するステップを行う。この騒音レベルNL(dB(A))は評価手段4による評価のステップで採用される。
【0040】
一方、累積変動レベル算出手段2では音の時間変動を計測し、その変動レベルFLi(dB)のピーク差dBkを合計して累積変動レベルCFLiを算出するステップを行う。
具体的には、まず、A/D変換器8において音圧信号がデジタル信号に変換され、データ記録部5に入力され記憶処理される。
【0041】
次いで、包絡線変換手段11では、周波数弁別部11aにより音圧信号を周波数バンド毎に分離するステップを行い、音圧時間信号算出部11bにより各バンド毎に分離された音圧信号Piは包絡線演算部11cにより各ピークを順次連結した音の大きさを表す包絡線Peiを抽出する(図4参照)ステップを行う。
次いで、一次遅れ系応答手段12のエネルギ信号変換部12aでは、音の大きさを表す包絡線Peiより音の強さの包絡線Iei(W/m2)を算出するステップを行う。
【0042】
次いで、一次遅れ処理部12bでは音の強さの包絡線Iei(W/m2)に対して上がり時定数Tupを、下がり時定数Tdownをそれぞれ用いて「だれ」を持たせる処理行い、時間遅れ処理済の音の強さの包絡線Iei’(mW/m2)を抽出するステップを行う。これにより、上述したヒトの聴覚における耳の反応遅れ機能に適合するようにする。
次いで、変動レベル算出手段13では時間遅れ処理済の音の強さの包絡線Iei’を実効値IRMSi(W/m2)で割って、ヒトの耳の感度に合うデシベル変換された変動レベルFLi(dB)とする(図8参照)。
【0043】
変動レベル累積手段14は累積変動レベル算出部14aとして、式(4)で表示したようにして、評価時間中に発生する変動レベルFLiのピーク差dBkを合計した値に、ヒトの周波数嗜好パターンを考慮したウエイトWi等の各種付加値を加算して累積変動レベルCFLiとして求めるステップを行う。更に、オーバーオール値算出部14bとして、累積変動レベルCFLiの累積変動レベルオーバーオール値CFLを式(5)で表示したようにして求める。
この後、評価手段4は、図11に示す音質評価処理マップを用い、累積変動レベルCFL(dB)と騒音レベルNL(dB(A))に相当する評価値を十段階の中より導出する。
【0044】
この際、例えば、No.7の評価線より累積変動レベル値、騒音レベル値が大きい領域(右上側)の符号●印の対策前位置にあるとすると、このエンジン6は音質対策が必要であるとの評価が成される。
この評価結果により、例えば、点火時期の調整処理や、エンジン6の本体回りに遮蔽板を新設する等のエンジン6に対策が成され、ディーゼル騒音で時間的に変動する間欠音である、「ガラガラ音」や、「カリカリ音」の騒音の拡散が抑えられたとする。
【0045】
その上で、音質評価装置Mを再度用い、音質対策前と同一条件で再度エンジン6の累積変動レベルCFL(dB)と騒音レベルNL(dB(A))を算出し、評価手段4が音質評価処理マップを用い、対策後の累積変動レベルCFL(dB)と騒音レベルNL(dB(A))に相当する対策後の評価値を導出する。この結果、対策後の評価値が、例えば、No.7の評価線より累積変動レベル値、騒音レベル値が小さい領域(左下側)の符号○印の対策後位置に達したとすると、今回の対策が有効であったことが物理量である評価値によって的確に確認されたこととなる。
なお、図12には対策前のエンジンの変動レベル(dB)を破線で、対策後の変動レベル(dB)を実線でそれぞれ示しており、対策後に変動レベル(dB)が低下し、対策が適性であったことを推測できる。
【0046】
このように音質評価装置Mを用いたことにより、ヒトの聴感が時間遅れ反応するというヒトの聴覚機構に適合した評価値を導出できるので、ヒトの聴感でのフィーリングに合う音の質を定量化した評価値によって騒音を的確に確認できる。
上述のところにおいて、被試験体はエンジン6として説明したが、本発明はその他の各種エンジンはもとより、その他の産業機器の発する各種の騒音対策においても、累積変動レベル(dB)と騒音レベル(dB(A))を算出し、評価手段4が被試験体に応じ設定される図示しない音質評価処理マップを用い、物理量である評価値を算出し、騒音対策に有効に利用できる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明は、評価する音が時間的変動感を表す累積変動レベルと騒音絶対値とに分析して求められ、それら2つの物理量の大小に応じて評価手段が音質評価を行うことができる。
【0048】
請求項2の発明は、累積変動レベル算出手段が、変換手段と包絡線変換手段と一次遅れ系応答手段と変動レベル算出手段と変動レベル累積手段とからなるので、時間的変動感がヒトの聴感でのフィーリングに合うように確実に物理量化でき、音質評価を行うことのできる。
【0049】
請求項3の発明は、一次遅れ系処理を包絡線振幅上昇時の時定数よりも下降時の時定数が大となる定数で処理するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0050】
請求項4の発明は、累積変動レベルのオーバーオール値と騒音レベルのオーバーオール値とに基づいて騒音評価を行うので、音質を適正に物理量化し、音質評価を行うことができる。
【0051】
請求項5の方法発明は、評価する音を電気信号に変換してから騒音レベルを算出し、かつ電気信号から音の時間変動を計測し、同音の時間変動相当の音の強さの変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出し、騒音レベルと累積変動レベルとで音質評価を行うことができる。
【0052】
請求項6の方法発明は、音の時間変動から音の大きさを表す包絡線を求め、同包絡線から音の強さの包絡線を算出するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0053】
請求項7の方法発明は、音の大きさを表す包絡線から音の強さの包絡線を一次遅れ系の応答として処理するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【0054】
請求項8の発明は、音の強さの包絡線の一次遅れ処理を、その包絡線振幅上昇時の時定数よりも上記振幅の下降時の時定数が大となる定数で処理するので、ヒトの聴感に適合した累積変動レベルの算出に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての音質評価装置の概略構成図である。
【図2】図1の音質評価装置がエンジンの音圧波形を測定した際の音圧波形図である。
【図3】図1の音質評価装置がエンジンの音圧波形を周波数弁別した際の弁別後の音圧波形図である。
【図4】図1の音質評価装置が有する音圧の包絡線算出機能を説明する音圧波形図である。
【図5】図1の音質評価装置が図3の音圧波形に基き算出した音の強さの包絡線Ieiの波形図である。
【図6】図1の音質評価装置が有する音圧波形の時間遅れ処理機能を説明する音の強さの波形図である。
【図7】図1の音質評価装置が図5の音の強さの包絡線Ieiに基き算出した時間遅れ処理後の波形図である。
【図8】図1の音質評価装置が図7の時間遅れ処理後包絡線に基き算出の波形図を変動レベルFLiに変換した状態の変動レベル波形図である。
【図9】図1の音質評価装置が有する累積変動レベルの算出で採用されるヒトの周波数嗜好パターンを考慮したウェイトマップの特性線図である。
【図10】図1の音質評価装置が図8の音圧の包絡線に基き算出した累積変動レベルの値をバンド別に表した線図である。
【図11】図1の音質評価装置が用いるエンジン用の音質評価処理マップの特性線図である。
【図12】図1の音質評価装置を用いて騒音対策前と対策後にそれぞれ行った時間遅れ処理後包絡線に基き算出の変動レベル波形図の評価事例の説明図である。
【図13】ヒトの聴覚の各機能部毎の機能説明ブロック図である。
【符号の説明】
1 変換手段
2 データ記録部
3 累積変動レベル算出手段
4 騒音レベル算出手段
5 評価手段
7 マイクロホン
8 A/D変換器
11 包絡線変換手段
12 一次遅れ系応答手段
13 変動レベル算出手段
14 変動レベル累積手段
M エンジン音質評価装置
Claims (8)
- 評価する音の騒音レベルを計測する騒音レベル算出手段と、上記音の時間変動を計測し、同音の時間変動相当の音の強さの変動レベルを求め、同変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出した累積変動レベル算出手段と、予め設定された騒音レベルと累積変動レベルとの評価点の関係を示す評価手段とから構成されたことを特徴とする音質評価装置。
- 請求項1記載の音質評価装置において、
上記累積変動レベル算出手段は、上記音を電気信号に変換する変換手段と、上記変換手段からの電気信号を周波数バンド毎に分離して音圧時間信号を算出し、上記音圧時間信号を用いて音の強さを表す包絡線を抽出する包絡線変換手段と、上記包絡線を一次遅れ系の応答として処理する一次遅れ系応答手段と、上記一次遅れ系の応答として処理した音の強さの包絡線を対数表示処理した変動レベル算出手段と、上記変動レベル算出手段より算出された変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出する変動レベル累積手段とからなることを特徴とする音質評価装置。 - 請求項2記載の音質評価装置において、
上記一次遅れ系応答手段は、音の強さの上記包絡線の一次系遅れ処理を、その包絡線振幅上昇時の時定数よりも上記振幅の下降時の時定数が大となる定数で処理したことを特徴とする音質評価装置。 - 請求項1記載の音質評価装置において、
上記累積変動レベルのオーバーオール値と上記騒音レベルのオーバーオール値とに基づいて騒音評価を行うことを特徴とする音質評価装置。 - 評価する音を採取して電気信号に変換し、上記電気信号から騒音レベルを算出し、かつ上記電気信号から音の時間変動を計測し、同音の時間変動相当の音の強さの変動レベルのピーク差を合計して累積変動レベルを算出し、上記騒音レベルと上記累積変動レベルとで上記音の評価を行うことを特徴とする音質評価方法。
- 請求項5記載の音質評価方法において、
上記変動レベルを算出するステップは、上記音の時間変動から音の大きさを表す包絡線を求め、上記音の大きさを表す包絡線から上記音の強さの包絡線を算出するステップを有することを特徴とする音質評価方法。 - 請求項6記載の音質評価方法において、
上記変動レベルを算出するステップは、上記音の大きさを表す包絡線から上記音の強さの包絡線を一次遅れ系の応答として処理するステップを有することを特徴とする音質評価方法。 - 請求項7記載の音質評価方法において、
上記変動レベルを算出するステップは、音の強さの上記包絡線の一次遅れ処理を、その包絡線振幅上昇時の時定数よりも上記振幅の下降時の時定数が大となる定数で処理したことを特徴とする音質評価方法。
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