JP3921712B2 - デプシペプチド誘導体中間体およびその製造法 - Google Patents

デプシペプチド誘導体中間体およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆虫活性を有するデプシペプチド誘導体の新規な製造法に関し、詳細には、デプシペプチド誘導体の合成中間体を工業的に有利に製造することのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下記の化合物(I)の一例である下記の化合物(Ib)は動物及び人間の駆虫剤として優れた殺寄生虫活性をもつ下記のデプシペプチド誘導体(V)の合成中間体として公知であり、下記の化合物(Ib)を経由する下記のデプシペプチド誘導体(V)の製造方法の一つとしては、全合成による次のルートによる方法が知られている。(国際公開番号WO93/19053号公報)
従来法のル−ト:
Figure 0003921712
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の合成法では、高価なD−フェニルアラニンを出発原料としているため、コスト的により有利な工業的製造法が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コスト的により有利な製造方法を鋭意探求した結果、安価なL−フェニルアラニンを出発原料とする新規合成中間体を経由する合成法により、下記のデプシペプチド誘導体(V)の合成中間体である下記の目的化合物(I)をより安価に製造できる工業的な新規製造方法を提供するものである。
【0005】
本発明の目的化合物であるデプシペプチド誘導体の合成中間体(I)は、下記の一般式で表わされる。
Figure 0003921712
(式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基、R5はアミノ保護基,R6は水素または低級アルキル基を意味する。)
【0006】
本発明によれば、下記の化合物(II)またはその塩は、下記の化合物(III)またはその塩から下記の反応式で示される方法により製造することができる。
製造法1
Figure 0003921712
(式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、Xはハロゲン原子または式:−OSO23で示される基[R3は低級アルキル基またはアリ−ル基を意味する。]、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基を意味する。)
【0007】
さらに、本発明によれば、目的化合物(I)またはその塩は、上記の化合物(II)またはその塩から下記の反応式で示される方法により製造することができる。
製造法2
Figure 0003921712
(式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基、R5はアミノ保護基、R6は水素または低級アルキル基を意味する。)
【0008】
本発明によれば、L−フェニルアラニンから目的化合物(I)の一例である化合物(Ib)は、例えば下記の一連のルートで示される方法により製造することができる。
参考ルート
Figure 0003921712
【0009】
本明細書を通じてアミノ酸、ペプチド、保護基、縮合剤等は、この技術分野においては普通に使用されるIUPAC−IUB(生化学命名法委員会)による略号によって示すことにする。
さらにまた特に指示がなければ、アミノ酸及びそれらの残基がそのような略号によって示される場合には、L型配置の化合物及び残基を意味し、D型配置の化合物及び残基はD−なる記載によって示される。
この発明に用いる略語を以下に示す。
Boc:tert−ブトキシカルボニル
Bzl:ベンジル
MeLeu:メチルロイシン
p−MorPhLac:2−ヒドロキシ−3−(4−モルホリノフェニル)プロピオン酸[β−(p−モルホリノフェニル)乳酸]
Ms:メタンスルホニル
【0010】
本明細書の以上の記載および以下の記載において、本発明の範囲内に包含される種々の定義の好適な例と説明とを以下に詳細に説明する。
【0011】
「低級」とは、特に指示がなければ、炭素原子1〜6個、好ましくは1〜4個の範囲を意味する。
【0012】
好適な「低級アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等のような炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基が挙げられる。
【0013】
好適な「アリ−ル基」としては、例えばフェニル、ナフチル、低級アルキル置換フェニル(例えば、トリル、メシチル、クメニル、キシリル、ジエチルフェニル、ジイソプロピルフェニル、ジ−tert−ブチルフェニル等)等を挙げることができる。
【0014】
好適な「保護されたカルボキシル基」としては、「エステル化されたカルボキシル基」が下記のものであるようなエステル化されたカルボキシル基が挙げられる。
エステル化されたカルボキシル基のエステル部分の好適な例としては、適当な置換基を少なくとも1個有していてもよい低級アルキルエステルが挙げられる。その例として、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステル、ペンチルエステル、tert−ペンチルエステル、ヘキシルエステル等の低級アルキルエステル;例えばアセトキシメチルエステル、プロピオニルオキシメチルエステル、ブチリルオキシメチルエステル、バレリルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、ヘキサノイルオキシメチルエステル等の低級アルカノイルオキシ低級アルキルエステル;例えば2−ヨ−ドエチルエステル、2,2,2−トリクロロエチルエステル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルキルエステル;例えばビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;例えば、ベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、フェネチルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル、ビス(メトキシフェニル)メチルエステル、3,4−ジメトキシベンジルエステル、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルエステル等のような1またはそれ以上の置換基を有していてもよいアル(低級)アルキルエステル等のようなものが挙げられ、中でもさらに好ましくはベンジルエステルが良い。
保護されたカルボキシル基における保護基には、アミノ酸やペプチド化学の分野で通常使用されるカルボキシル基を一時的に保護する目的で用いられる保護基が含まれる。
【0015】
好適な「環状アミノ基」としては、ヘテロ原子として窒素原子を1個以上有する芳香環式または脂環式基であって、飽和または不飽和の、単環式または縮合多環式のいずれであってもよく、また、当該環内に更に一または二以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。さらに、この環状アミノ基はスピロ環式であっても橋かけ環式であってもよい。この環状アミノ基の構成原子数は特に限定されないが、例えば単環式の場合は3〜8員環であり、二環式の場合は7〜11員環である。
【0016】
かかる環状アミノ基の例としては、1−アゼチジニル基、ピロリジノ基、2−ピロリン−1−イル基、1−ピロリル基、ピペリジノ基、1,4−ジヒドロピリジン−1−イル基、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−1−イル基、ホモピペリジノ基などのヘテロ原子として窒素原子を1個含有する飽和または不飽和の単環式基、1−イミダゾリジニル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、1−トリアゾリル基、1−テトラゾリル基、1−ピペラジニル基、1−ホモピペラジニル基、1,2−ジヒドロピリダジン−1−イル基、1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、パーヒドロピリミジン−1−イル基、1,4−ジアザシクロヘプタン−1−イル基、などのヘテロ原子として窒素原子を2個以上含有する飽和または不飽和の単環式基、オキサゾリジン−3−イル基、2,3−ジヒドロイソオキサゾール−2−イル基、モルホリノ基などのヘテロ原子として窒素原子1〜3個と酸素原子1〜2個を含有する飽和または不飽和の単環式基、チアゾリジン−3−イル基、イソチアゾリン−2−イル基、チオモルホリノ基などのヘテロ原子として窒素原子1〜3個と硫黄原子1〜2個を含有する飽和または不飽和の単環式基、インドール−1−イル基、1,2−ジヒドロベンズイミダゾール−1−イル基、パーヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2−イル基などの縮合環式基、2−アザスピロ[4,5]デカン−2−イル基などのスピロ環式基、7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−7−イル基などの橋かけヘテロ環式基等が含まれる。
【0017】
「モノもしくはジ低級アルキルアミノ基」としては、アミノ基に例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、第三級ブチル基、第三級ペンチル基などの低級アルキル基が1または2個置換した基が挙げられ、その好適な例として、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基などが挙げられる。
【0018】
好適な「アミノ保護基」としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル等の低級アルカノイル基;例えばクロロアセチル、ブロモアセチル、ジクロロアセチル、トリフルオロアセチル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルカノイル基;例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、tert−ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等の低級アルコキシカルボニル基;カルバモイル基;例えばベンゾイル、トルオイル、ナフトイル等のアロイル基;例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル等のアル(低級)アルカノイル基;例えばフェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等のアリ−ルオキシカルボニル基;例えばフェノキシアセチル、フェノキシプロピオニル等のアリ−ルオキシ(低級)アルカノイル基;例えばフェニルグリオキシロイル、ナフチルグリオキシロイル等のアリ−ルグリオキシロイル基;例えばベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル等の、適当な置換基を有していてもよいアル(低級)アルコキシカルボニル基等のアシル基、例えばベンジリデン、ヒドロキシベンジリデン等の置換されたまたは非置換アル(低級)アルキリデン基;例えばベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチル等のモノ(またはジまたはトリ)フェニル(低級)アルキル基のようなアル(低級)アルキル基等が挙げられる。
上記アミノ保護基には、アミノ酸やペプチド化学の分野で通常使用されるアミノ基を一時的に保護する作用をもつ保護基が含まれる。
【0019】
好適な「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0020】
1,R2,R4,R6の特に好ましい実施態様は次の通りである。すなわちR1はメチル基、R2はベンジルオキシカルボニル基、R4はモルホリノ基、R6はメチル基である。
【0021】
化合物(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)の好適な塩類は、慣用の無毒性の塩すなわち各種塩基との塩ならびに酸付加塩を挙げることができる。より具体的には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩,セシウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩のような無機塩基との塩、有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン塩等)のような有機塩基との塩、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸付加塩または有機スルホン酸付加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等)、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸との塩(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)等が挙げられる。
【0022】
化合物(III)からの目的化合物(I)の製造法を次に詳細に説明する。
製造法1
化合物(II)またはその塩は、化合物(III)またはその塩の水酸基を低級アルキルスルホニルハライド、アリ−ルスルホニルハライド、低級アルキルスルホン酸無水物またはアリールスルホン酸無水物によるアシル化反応に付すことによって製造することができる。
【0023】
本反応は通常、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等)、ピリジンまたはその誘導体(例えば、ピコリン、ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン等)、N−(低級)アルキルモルホリン(例えば、N−メチルモルホリン等)、N,N−ジ(低級)アルキルベンジルアミン等のような無機または有機の塩基の存在下で行われる。
【0024】
反応は通常、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド等の慣用の溶媒、または反応に悪影響を及ぼさない任意の他の有機溶媒中で行われる。
使用する縮合剤または塩基が液体である場合には、それを溶媒として使用することもできる。
反応温度は特に限定されず、通常冷却下、室温または加熱下で反応は行われる。
【0025】
製造法2
目的化合物(I)またはその塩は、化合物(II)またはその塩を化合物(IV)またはその塩と反応させることによって製造することができる。
【0026】
本反応は通常、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等)、ピリジンまたはその誘導体(例えば、ピコリン、ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン等)、N−(低級)アルキルモルホリン(例えば、N−メチルモルホリン等)、N,N−ジ(低級)アルキルベンジルアミン等のような無機または有機の塩基の存在下で行われる。
【0027】
反応は通常、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド等の慣用の溶媒、または反応に悪影響を及ぼさない任意の他の有機溶媒中で行われる。
反応温度は特に限定されず、通常冷却下、室温または加熱下で反応は行われる。
【0028】
上記の各製造法で得られた化合物は、抽出、粉末化、再結晶、カラムクロマトグラフィ−、再晶出等の慣用の方法で単離、精製することができる。
【0029】
本発明により、動物及び人間の駆虫剤として優れた殺寄生虫活性をもつ化合物であるデプシペプチド誘導体(V)の合成中間体(I)の合成において、従来の出発原料である高価なD−フェニルアラニンではなく、安価なL−フェニルアラニンを出発原料とする新規合成中間体を経由して、従来よりも安価に製造することができる。従ってデプシペプチド誘導体(V)をより安価に合成できる工業的な新規製造方法を得ることができる。
以下、製造例および実施例に従って、この発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
製造例1
(S)−3−(4−アミノフェニル)−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(177.5g)のN,N−ジメチルホルムアミド(654ml)溶液に、室温で攪拌しながら炭酸ナトリウム(166.4g)、ヨウ化ナトリウム(98.1g)、ビス(2−クロロエチル)エ−テル(112.3g)を順に加え、85℃で6時間攪拌する。反応液を室温まで冷却した後、水(2.13l)に注ぎ、酢酸エチル(888ml)次いで酢酸エチル(533ml)で抽出する。得られた酢酸エチル層を合わせ、水(533ml)で3回、5%硫酸水素カリウム水溶液で3回順次洗浄し、硫酸水素カリウム水層は酢酸エチル(533ml)で再抽出する。酢酸エチル層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(533ml)で2回、飽和食塩水(533ml)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、活性炭で脱色する。有機溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン(2/3)を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにかけ、目的物を含む溶出画分を合わせ、溶媒を減圧留去して、(S)−2−ヒドロキシ−3−(4−モルホリノフェニル)プロピオン酸ベンジル(145g)を油状物として得る。
NMR(CDCl3,δ):2.66(1H,d),2.91(1H,dd),3.05(1H,dd),3.0−3.2(4H,m),3.8−4.0(4H,m),4.45(1H,ddd),5.18(2H,s),6.79(2H,d),7.05(2H,d),7.3−7.4(5H,m)
[α]23 D −69.6°(c1.00,CHCl3
【0031】
実施例1
(S)−2−ヒドロキシ−3−(4−モルホリノフェニル)プロピオン酸ベンジル(100.1g)のN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)溶液に、氷冷下で攪拌しながらトリエチルアミン(32.7g)を加え、メタンスルホニルクロリド(37.0g)を80分間かけて滴下する。同温度で2時間攪拌を続けたのちに再びトリエチルアミン(2.97g)を加え、メタンスルホニルクロリド(3.36g)を滴下する。同温度で1時間攪拌を続けたのち、反応液を酢酸エチル(500ml)に注ぎ、水(500ml)で2回、5%硫酸水素カリウム水溶液(300ml)で2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300ml)で2回、飽和食塩水(300ml)で1回順次洗浄する。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して Ms−L−p−MorPhLac−OBzl(120.2g)を油状物として得る。
NMR(CDCl3,δ):2.81(3H,s),3.0−3.3(6H,m),3.84(4H,t),5.1−5.3(3H,m),6.81(2H,d),7.09(2H,d),7.2−7.4(5H,m)
[α]23 D −35.8°(c1.00,CHCl3
【0032】
実施例2
Boc−MeLeu−OH(57.8g)のN,N−ジメチルホルムアミド(330ml)溶液に、室温で攪拌しながら炭酸セシウム(83.2g)を加え、1時間攪拌する。反応懸濁液にMs−L−p−MorPhLac−OBzl(98.4g)のN,N−ジメチルホルムアミド(82ml)溶液を加え、58〜63℃で5時間攪拌する。反応液をジイソプロピルエ−テル(1.64l)に注ぎ、水(1l)で2回、8%炭酸水素ナトリウム水溶液(1l)で2回、飽和食塩水(1l)で1回順次洗浄し、ジイソプロピルエ−テル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/n−ヘキサン(1/2)を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにかけ、目的物を含む溶出画分を合わせ、溶媒を減圧留去して、Boc−MeLeu−D−p−MorPhLac−OBzl(69.3g)を油状物として得る。
NMR(CDCl3,δ):0.90(6H,d),1.4−1.6(12H,m),2.63(s)及び2.66(s)(3H),2.98−3.2(6H,m),3.85(4H,t),4.6−4.7(m)及び4.9−5.3(m)(4H),6.80(2H,d),7.07(2H,d),7.2−7.4(5H,m)
【0033】
参考例1
水(3l)に室温で硫酸(175g)とL−p−ニトロフェニルアラニン
(300g)を加え、15分間攪拌する。次に氷冷下で攪拌しながら、亜硝酸ナトリウム(240g)の水(450ml)溶液を5.5時間かけて滴下し、さらに1.5時間攪拌を続ける。室温まで昇温しながら1夜静置し、再び氷冷下で攪拌しながら硫酸(88g)を加え、亜硝酸ナトリウム(120g)の水(220ml)溶液を4時間かけて滴下する。滴下終了後2.5時間攪拌を続け、室温まで昇温しながら1夜静置する。反応懸濁液を酢酸エチル(900ml)及び酢酸エチル(600ml)で抽出し、得られた酢酸エチルを合わせ、飽和食塩水(600ml)で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。吸引濾過後、濾液を全量が701gになるまで減圧濃縮し、n−ヘキサン(1l)を滴下する。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル/n−ヘキサンの1/4混液(500ml)で洗浄し、風乾して(S)−2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸(244g)を得る。
NMR(DMSO−d6,δ):2.94(1H,dd),3.13(1H,dd),4.25(1H,dd),7.53(2H,d),8.15(2H,d)
[α]23 D −24.1°(c1.00,MeOH)
【0034】
参考例2
(S)−2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸(230g)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.15l)溶液に、氷冷下で攪拌しながら炭酸カリウム(150.6g)を加え、臭化ベンジル(186.4g)を10分間かけて滴下する。室温まで昇温してさらに6時間攪拌を続けた後に水(1.3l)に注ぎ、酢酸エチル(1.15l)及び酢酸エチル(0.7l)で抽出する。得られた酢酸エチルを合わせ、10%食塩水(700ml)で3回、続いて飽和食塩水(700ml)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウム(115g)で乾燥する。次に全量が852gになるまで減圧濃縮し、n−ヘキサン(1.44l)を滴下する。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル/n−ヘキサンの1/2混液(900ml)で洗浄し、風乾して(S)−2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸ベンジル(262g)を得る。
NMR(CDCl3,δ):2.91(1H,dd),3.05(1H,dd),3.21(1H,dd),4.52(1H,ddd),5.19(2H,ABq),7.27(2H,d),7.2−7.4(5H,m),8.04(2H,d)
【0035】
参考例3
(S)−2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸ベンジル(237g)にメタノ−ル(474ml)、水(711ml)、還元鉄(220g)、硫酸アンモニウム鉄(II)6水和物(46.3g)を加え、75〜83℃で1時間攪拌する。反応液を50℃まで冷却し、酢酸エチル(1.19l)を加えて20〜25℃でさらに30分間攪拌した後に、セライトで濾過し、セライトを酢酸エチル(1l)で洗浄する。濾液と洗液を合わせ、飽和食塩水(700ml)で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次に全量が600gになるまで減圧濃縮し、n−ヘキサン(1.7l)を滴下する。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル/n−ヘキサンの1/5混液(480ml)で洗浄し、風乾して(S)−3−(4−アミノフェニル)−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(199g)を得る。
NMR(CDCl3,δ):2.85(1H,dd),2.6−3.6(3H,brs),3.00(1H,dd),4.38(1H,dd),5.15(2H,s),6.53(2H,d),6.90(2H,d),7.2−7.4(5H,m)
[α]23 D −69.4°(c1.00,CHCl3

Claims (7)

  1. 式:
    Figure 0003921712
    (式中、R1は低級アルキル基、フェニル基または低級アルキル置換フェニル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基を意味する。)で示される化合物またはその塩。
  2. 1がメチル基、R2がベンジルオキシカルボニル基であることを特徴とする請求項1記載の化合物またはその塩。
  3. 式:
    Figure 0003921712
    (式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基を意味する。)で示される化合物またはその塩を式:R1SO2X(式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、Xはハロゲン原子または式:−OSO23で示される基[R3は低級アルキル基またはアリ−ル基を意味する。
    ]を意味する。)で示される化合物と反応させて、式:
    Figure 0003921712
    (式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基を意味する。)で示される化合物またはその塩を得ることを特徴とするデプシペプチド誘導体中間体の製造法。
  4. 式:
    Figure 0003921712
    (式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基を意味する。)で示される化合物またはその塩を式:R1SO2X(式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、Xはハロゲン原子または式:−OSO23で示される基[R3は低級アルキル基またはアリ−ル基を意味する。]を意味する。)で示される化合物と反応させて、式:
    Figure 0003921712
    (式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基を意味する。)で示される化合物またはその塩を得ることを特徴とするデプシペプチド誘導体中間体の製造法。
  5. 式:
    Figure 0003921712
    (式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基を意味する。)で示される化合物またはその塩を式:R1SO2X(式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、Xはハロゲン原子または式:−OSO23で示される基[R3は低級アルキル基またはアリ−ル基を意味する。
    )を意味する。]で示される化合物と反応させて、式:
    Figure 0003921712
    (式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基を意味する。)で示される化合物またはその塩を得、次に該化合物またはその塩を式:
    Figure 0003921712
    (式中、R5はアミノ保護基,R6は水素または低級アルキル基を意味する。)で示される化合物またはその塩と反応させて、式:
    Figure 0003921712
    (式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R4はモノ若しくはジ低級アルキルアミノ基または環状アミノ基、R5はアミノ保護基,R6は水素または低級アルキル基を意味する。)で示される化合物またはその塩を得ることを特徴とするデプシペプチド誘導体中間体の製造法。
  6. 式:
    Figure 0003921712
    (式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基を意味する。)で示される化合物またはその塩を式:R1SO2X(式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、Xはハロゲン原子または式:−OSO23で示される基[R3は低級アルキル基またはアリ−ル基を意味する。]を意味する。)で示される化合物と反応させて、式:
    Figure 0003921712
    (式中、R1は低級アルキル基またはアリ−ル基、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基を意味する。)で示される化合物またはその塩を得、次に該化合物またはその塩を式:
    Figure 0003921712
    (式中、R5はアミノ保護基,R6は水素または低級アルキル基を意味する。)で示される化合物またはその塩と反応させて、式:
    Figure 0003921712
    (式中、R2はカルボキシル基または保護されたカルボキシル基、R5はアミノ保護基,R6は水素または低級アルキル基を意味する。)で示される化合物またはその塩を得ることを特徴とするデプシペプチド誘導体中間体の製造法。
  7. 6がメチル基であることを特徴とする請求項6記載のデプシペプチド誘導体中間体の製造法。
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