以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図8中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出孔(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、副走査方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3中の4−4線に沿う断面図)である。
記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が印字媒体送り方向と略直交する方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
図3に示すように、印字ヘッド50に備えられたノズル51(インク室ユニット53)は、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度を有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。
更に、図22(a)に図示する従来技術に係る印字ヘッド500では、列方向に沿って6個のノズルが一列に並べられたノズル列510は、図3に示す本発明に係る印字ヘッド50ではノズル51-11 、51-12 、51-13 から成るノズル列512と、ノズル51-14 、51-15 、51-16 から成るノズル列514とに分割され、更に、ノズル列512とノズル列514とは主走査方向に位相をずらして配置されている
即ち、6個のノズルから成る斜め方向に沿って配列されたノズル列510は副走査方向に各3個のノズルを備えたノズル列512及びノズル列514に2分割され、ノズル列512とノズル列514とは主走査方向に位相をずらして配置されている。なお、ノズル列512、514と主走査方向に配列された他のノズル列も同一構造を有している。
言い換えると、印字ヘッド50内のノズル51は、ノズル列512と主走査方向に平行な方向に並ぶ多数のノズル列で構成されるノズル群522とノズル列514と主走査方向に平行な方向に並ぶ多数のノズル列で構成されるノズル群524の2つのノズル群によって副走査方向に2分割され、一方のノズル群(例えば、ノズル群522)ともう一方のノズル群(例えば、ノズル群524)とは主走査方向に位相をずらして配置されている。
また、ノズル群522及びノズル群524が有するノズル51を主走査方向に投影した投影ノズル列ではノズル間ピッチが等間隔になるように、各ノズル群の主走査方向の位相が決められている。
なお、本例では、各ノズル群の中で斜め方向に配列された複数のノズルをノズル列と呼んでいる。また、例えば、図3のノズル列510のように、2つのノズル群に属するノズル列が打滴制御上1つのノズル列として機能するものもノズル列と呼ぶ。ノズル群510のノズルを所定の順序で駆動すると1サイクルの打滴 (1サイクルの吐出動作)を行うことができる。
なお、1サイクルの打滴とは、主走査方向に1列のドット列を形成する最小単位の打滴動作を言い、主走査方向と斜め方向に配列されたノズル列の全ノズルを所定の順序(タイミング)で駆動する態様がある。もちろん、該ノズル列内のノズルのうち一部ノズルが所定のタイミングでオフとなってもよい。
また、印字ヘッド50は、本流路55A、支流路55Bを含んだ共通流路55などを有するインク供給系を備えている。本流路55Aは千鳥でマトリックス状に配置されたインク室ユニット53を挟むように上下2列設けられ、たとえば主走査方向に沿うように配置されている。なお、図3に示す印字ヘッド50のノズル配置の詳細は後述する。
本流路55Aの左右端部には主供給口(図3には不図示、図6に符号108として図示)が形成され、この主供給口を介してインク供給系(図1のインク貯蔵/装填部14等)に連結される。図3に示す2本の本流路55Aは、各ノズル列512,514に共通の共通流路55Bに連通され、インク供給系から本流路55A、共通流路55Bを介して各圧力室52へインクが供給されている。
また、従来技術に説明した図24(b) に示した印字ヘッド500‘と同様に、印字ヘッド50は短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被印字媒体(記録紙16)の全幅に対応する長さとしてもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路(支流路)55Bと連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチP0 は(d× cosθ)/2となる。
即ち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP0 )で直線状に配列されているものとして説明する。
ここで、本発明に係る印字ヘッド50の標準的な規格は、従来技術に係る印字ヘッド500の標準的な規格と同一であり、その一例を挙げると、圧力室52のサイズは700μm ×700μm 、アクチュエータ58のサイズは500μm ×500μm 、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチP1 (同一タイミングで打滴を行うノズルのノズル間ピッチ)は0.846mm(=30npi )、副走査方向の打滴間隔は1mm、通常用いられるインク粘度は2cp〜3cpである。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数のドット列から成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数のドット列から成るラインを繰り返し行うことを副走査と定義する。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
上述した構造を有する印字ヘッド50をインクジェット記録装置10に取り付けるには、図6に示すヘッドASSY(アッセンブリ)100ごと取り付ける。即ち、印字ヘッド50をホルダ102にはめ込んだ後、アタッチメント104を挟み、連結板106にて固定する。
なお、符号108は、図3に示した本流路に連通される主供給口であり、符号110は、図1に示したインク貯蔵/装填部14等から成るインク供給系と主供給口108とを連通させるインク管路である。また、符号112は、主供給口108とインク管路110とをシールするインク漏れ防止用のゴムパッキンである。
なお、図示していないがアタッチメント104および連結板106は同図手前側にも取り付けられる。
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図7に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図7には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによって ノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
不図示のプログラム格納部には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、前記プログラム格納部は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
〔ノズル配置の説明〕
次に、本発明に係る印字ヘッド50のノズル配置について詳述する。
なお、図3及び図5に示したように、印字ヘッド50内の主走査方向に直交しない斜め方向に複数のノズルが配列された各ノズル列の構成は同一であり、ここでは、各ノズル列を代表してノズル列512,514を用いて説明する。
図9は、本発明に係る印字ヘッド50のノズル配置及び打滴タイミングを説明する図である。
図9に示すように、本発明に係る印字ヘッド50では、従来技術に係る印字ヘッド500における主走査方向に対して直交しない一定の角度θ’を有する斜めの列方向に6個のノズルを有するノズル列510が、3個のノズルを有する2つのノズル列(ノズル列512及びノズル列514)に分割され、ノズル列512とノズル列514とを主走査方向のノズル間ピッチPの1/2だけ主走査方向にずらして配置されている。
即ち、印字ヘッド50は、従来技術に係る印字ヘッド500における主走査方向に対して所定の傾き角度θ’を有するノズル列を主走査方向に複数並べたノズル群(吐出孔群に相当)が副走査方向に2分割され、このように副走査方向に2分割された各ノズル群522及びノズル群524は主走査方向のノズル間ピッチPの1/2だけ主走査方向に位相をずらして配置されるノズル(ノズル列)を備えている。
言い換えると、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向と所定の角度θをなす列方向に沿ってマトリクス状に配置されたノズル51は、副走査方向にn個のノズル群に分割され、各ノズル群は主走査方向に位相をずらして配置されている。
したがって、ノズル列512及びノズル列514を主走査方向に並ぶように投影すると、該ノズル列512,514を構成するノズル51-11〜51-16は主走査方向に沿って等間隔に並べられる。更に、ノズル51-11 とノズル51-12 との中間にノズル51-14 が配置され、ノズル51-12 とノズル51-13 との間にノズル51-15 が配置され、ノズル51-16 はノズル51-13 と主走査方向にP/2だけ離れたノズル51-15 の反対側に配置される。
なお、タイミングt1 〜タイミングt3 で打滴されたインク滴が記録紙16上で干渉しないように主走査方向のノズル間ピッチP(主走査方向に並ぶように投影された投影ノズル列のノズル間ピッチ)が決められる。
即ち、主走査方向に連続して形成されるドットのうち、1つおきに配置される2つのドット間距離は、これらの2つのドットが重ならない距離に設定されている。主走査方向のノズル間ピッチPは従来技術(図23)に示したノズル間ピッチP0 よりも大きな値(即ち、P>P0 )であると言える。
図9において、ノズル51を表す円内に示した数字は打滴タイミングを示し、タイミングt1 ではノズル51-11 、ノズル51-21 、ノズル51-31 (図9には不図示)、…、から打滴が行われる。次にタイミングt2 ではノズル51-12 、…、から打滴が行われる。更に、タイミングt3 〜タイミングt6 ではノズル51-13 、…、ノズル51-16 、ノズル51-26 、ノズル51-36 、…、の打滴が行われ、タイミングt1 〜タイミングt6 の1サイクルの打滴によって、主走査方向に1ラインのドット列を形成することができる。
ここで、タイミングt1 〜t3 で行われる打滴では、各タイミングで打滴されたインク滴は記録紙16上で他のインク滴と接触せずに、各打滴によるインク滴が単独でドットを形成する。
一方、タイミングt4 〜タイミングt6 では、打滴されたインク滴が着弾する際に、主走査方向に隣り合う両側の着弾位置には既にインク滴が打滴され、記録紙16上に先に着弾しているために、両隣のインク滴と接触するように着弾する。
即ち、タイミングt4 で打滴されたインク滴は、タイミングt1 及びタイミングt2 で打滴されたインク滴の間に着弾し、同様にタイミングt5 で打滴されたインク滴はタイミングt2 及びタイミングt3 で打滴されたインク滴の間に着弾し、タイミングt6 で打滴されたインク滴はタイミングt1 及びタイミングt3 で打滴されたインク滴の間に着弾する。
タイミングt4 〜タイミングt6 で打滴されたインク滴が先に着弾している両隣のインク滴に引き寄せられるので、タイミングt4 〜タイミングt6 で打滴されたインク滴は一方向に寄る現象が起こらず、タイミングt4 〜タイミングt6 で打滴されたインク滴によるドットは対称性を有し、一方向の凝集によって発生する筋むらを低減させることができる。
図26に示す従来技術では、インク滴501は単独で着弾し、インク滴506はインク滴511とインク滴505との間に着弾して両側から凝集の影響を受ける。その他のインク滴は既に着弾したインク滴によって一方向から凝集の影響を受ける。よってインク滴506付近では凝集条件の違いによる筋むらが発生していた。
本明細書では、図9にノズル配置を示す印字ヘッド50において、各ノズル群522,524が有するノズル列(512,514等)の主走査方向に隣接したノズル列同士の境目であり、且つ、副走査方向のノズル間ピッチが他と比べて大きくなるノズル間位置を折り返し位置Aと定義する。
即ち、図9に示すノズル配置では、ノズル51-11 とノズル51-23 との間(折り返し位置A−1)、ノズル51-14 とノズル51-26 との間(折り返し位置A−3)などが折り返し位置Aになる。
これらの折り返し位置Aにおけるインク滴間の着弾時間差(例えば、ノズル51-11 から打滴されるインク滴とノズル51-23 から打滴されるインク滴との着弾時間の差)は、同一ノズル列内の隣り合うノズル(例えば、ノズル51-11とノズル51-12やノズル51-12とノズル51-13など)から打滴インク滴間の着弾時間差と異なるために、先に着弾しているインク滴の記録紙16上に残存しているインク滴量が異なる。そのために、折り返し位置Aと折り返し位置以外の位置とでは凝集条件が変わるために、折り返し位置Aでは凝集による筋むらが発生してしまう。
図9において、折り返し位置A-1と折り返し位置A-3との間隔など、ノズル群522内の折り返し位置の間隔(折り返し位置間ピッチ)P2Bは、P2B=0.94mmであり、該折り返し位置に生じる凝集による筋むらの空間周波数は1.061lp/mm に相当し、図27に示した視認性曲線600によると、比較的視認されやすい空間周波数領域内にある。
但し、折り返し位置A-3と折り返し位置A-4との間隔など、ノズル群524内の折り返し位置の間隔P2Cもまた、P2C=0.94mmであり、ノズル列512の折り返し位置と同様に空間周波数1.061lp/mmを持つが、図9に示すように、折り返し位置A-1と折り返し位置A-4とは接近しているので、記録画像において視認される空間周波数は略1.061lp/mm として考えることができる。
これに対して、図10に示すノズル配置では、ノズル群522内の折り返し位置A-1とノズル群524内の折り返し位置A-3との間隔P2 が等間隔になるように、主走査方向に折り返し位置間ピッチの半ピッチ分だけ位相をずらしたノズル配置になっている。
よって、折り返し位置Aの実質的な周期はP2 =0.47mmとなり、この周期を持つ折り返し位置の空間周波数は2.13lp/mm となる。図27に示した視認性曲線600からも分かるように、図9に示したノズル配置と比較して、記録画像において濃度むらとして視認されにくい方向にシフトされたノズル配置が可能である。
なお、折り返し位置間ピッチP2 は折り返し周期を2.0lp/mm 以上とする態様が好ましく、折り返し周期を3.0lp/mm 以上にすると、更に、筋むらの視認性を大幅に低減させることができてより好ましい。
図10に示すような折り返し位置間ピッチP2が等間隔となるノズル配置を有する印字ヘッドでは、副走査方向のノズル群の数nは偶数となる。
〔着弾時間差についての説明〕
インクの種類や記録紙16の種類(メディア種)によっては、図9及び図10に示した折り返し位置間ピッチP2 の最適化に代わり、着弾時間差(打滴時間差)を最適化することで濃度むらの視認性を効果的に低減させることができる。即ち、隣接するドットを形成するインク滴の着弾時間差が、該印字ヘッド50の最大着弾時間差よりも小さくなるように、印字ヘッド50のノズル配置を決めるとよい。
図9に示すノズル配列を有する印字ヘッド50を用いて、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、隣り合うドットを形成するインク滴を打滴する2つのノズル間の着弾時間差が最大値δTmax1となるノズルの組み合わせには、タイミングt1 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル51-11 等)と、タイミングt6 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル51-26 等)と、の組み合わせが挙げられる。
この隣接ドットを形成するインク滴を打滴するノズルの組み合わせうち、該ノズル間の着弾時間差が最大値δTmax1となるノズルの組み合わせは、図9に示すノズル配置における着弾時間差が最大値δTmax2となるノズルの組み合わせとなっている。言い換えると、図9に示すノズル配置では、δTmax1=δTmax2の関係を満たし、副走査方向のノズル間距離が最大となるノズルを用いて主走査方向に隣り合うドットを形成する打滴を行うために、他の主走査方向に隣り合うドットを形成する打滴を行うノズルに比べて着弾時間差が大きくなり、記録紙16の種類やインクの種類によっては、この着弾時間差に起因する筋むらが記録画像に生じてしまう恐れがある。
図11(a) 、(b) に示すノズル配置では、図9に示したノズル配置に対して着弾時間差が最適化され、隣接ドットを形成するインク滴を打滴するノズルには、着弾時間差が最大値δTmxa2となるノズルの組み合わせと異なるノズルの組み合わせを用いるように、ノズル配置が決められている。
即ち、図11(a) 、(b) に示すノズル配列では、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、印字ヘッド50が有するノズルの着弾時間差がその最大値δTmax2になるノズルの組み合わせは、図9に示すノズル配列と同様に、タイミングt1 で打滴を行うノズル (例えば、ノズル51-11 等)と、タイミングt6 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル51-16 等)と、の組み合わせが挙げられる。
一方、隣り合うドットを形成するインク滴を打滴する2つのノズル間の着弾時間差が最大値δTmax1となるノズルの組み合わせには、タイミングt2 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル51-12 等)と、タイミングt6 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル51-16 等)と、の組み合わせが挙げられる。
よって、図11(a) 、(b) に示すノズル配列では、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合には、隣り合うドットを形成する打滴を行うノズルの隣接最大着弾時間差の最大値δTmax1と、該印字ヘッド50が有するノズルの最大着弾時間差の最大値δTmax2との関係が、δTmax1<δTmax2を満たしている。
即ち、印字ヘッド50内で副走査方向のノズル間距離が最大となる2つのノズル以外のノズルを用いて隣り合うドットを形成するインク滴が打滴されるので、他の主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴を打滴するノズル同士に比べて着弾時間差が大きく異なることがなくなり、極端な着弾時間差に起因する凝集によって生じる筋むらを抑制することが可能となる。
なお、図11(a) に示したノズル配列を有する印字ヘッド50を用いて、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴を打滴するノズルの着弾時間差が最小値δTmin1となるノズルの組み合わせには、タイミングt3 で打滴を行うノズルとタイミングt4 で打滴を行うノズル(例えば、51-23 とノズル51-14 の組み合わせ等)が挙げられる。
図11(b) に示すように、これらのノズルの副走査方向のノズル間距離は、印字ヘッド50内のノズルにおける副走査方向のノズル間距離の最小値Ptminと等しい距離に設定されている。
一方、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルの着弾時間差が最大値δTmax1となるノズル(例えば、ノズル51-23 とノズル51-16 等)の副走査方向のノズル間ピッチは4×Ptminに設定されている。このとき、着弾時間差の最小値δTmin1と着弾時間差の最大値δTmax1との関係はδTmin1/δTmax1=0.25となっている。
図11(c) に示したノズル配置を有する印字ヘッド50を用いて、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルの着弾時間差が最小値δTmin1となるノズルの組み合わせには、タイミングt3 で打滴を行うノズル(例えば、51-12 等)とタイミングt4 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル51-14 等)が挙げられる。
図11(c) に示すように、これらのノズルの副走査方向のノズル間距離は、印字ヘッド50内のノズルにおける副走査方向のノズル間距離の最小値Ptmin(例えば、ノズル51-11 とノズル51-12 との副走査方向にノズル間距離)に対して4×Ptminに設定されている。
また、主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルの着弾時間差が最大値δTmax1となるノズル(例えば、ノズル51-12 とノズル51-16 等)の副走査方向のノズル間ピッチは7×Ptminに設定されている。このとき、着弾時間差の最小値δTmin1と着弾時間差の最大値δTmax1との関係はδTmin1/δTmax1=0.57となっている。
図11(b) に示すノズル配置と図11(c) に示すノズル配置との凝集による筋むらを比較すると、隣り合うドットを形成するインク滴間の着弾時間差の比δTmin1/δTmax1が1に近い(着弾時間差の比のばらつきが少ない)図11(c) に示すノズル配置の方がより良好な傾向を示している。
特に、着弾時間差の比δTmin1/δTmax1が0.5を境界として凝集により生じる筋むらの視認性の傾向が変わることが実験より分かっており、δTmin1/δTmax1≧0.5の条件を満たす態様が好ましい。
即ち、ノズル群間の副走査方向の距離を最適化することで、隣り合う着弾位置に着弾するインク滴の着弾時間差のばらつきを少なくすることができ、凝集により生じる筋むらの視認性を抑制することができる。
本例では、3個のノズルを有するノズル列が主走査方向に沿って複数並べられたノズル群を備えた印字ヘッドを例示したが、ノズル列が有するノズル数は3個に限定されず、1つのノズル列に2個のノズルを備えてもよいし、3個以上のノズルを備えてもよい。また、本例には、同一ノズル配置を有するノズル群を主走査方向にずらして副走査方向に沿って複数配置したが、異なるノズル配置を有する複数のノズル群を副走査方向に沿って並べてもよい。上述した異なるノズル配置には、例えば、各ノズル群が有するノズル列に含まれるノズル数が異なる態様や、各ノズル群の副走査方向のノズル間ピッチが異なる態様などがある。
〔応用例〕
次に、本発明の応用例について説明する。
図12は、従来技術に係る主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に20個のノズル51を有するノズル列530を備えた印字ヘッド50”のノズル配置を示し、図13は図12に示したノズル配置と打滴タイミングとの関係を示している。なお、図13中図24と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図12に示すように、印字ヘッド50”では、主走査方向と直交しない斜め方向にノズル51-101、ノズル51-102、ノズル51-103、…、ノズル51-118、ノズル51-119、ノズル51-120の順に20個のノズルが1列に並べられたノズル列が主走査方向に複数並べられている。
また、主走査方向に隣り合うノズルのノズルピッチ(例えば、ノズル51-101とノズル51-201との間隔)P1 は0.846mmであり、主走査方向のノズルピッチP(例えば、ノズル51-101とノズル51-102との間隔)は0.042mmである。
なお、これ以外の印字ヘッド50”の規格は、従来技術等に示した標準的なマトリクスヘッドの規格が適用される。
図12に示すノズル配置を有する印字ヘッド50”では、図13に示すように、タイミングt1 でノズル51-101、ノズル51-201等から打滴を行い、タイミングt2 ではノズル51-102、ノズル51-202等から打滴を行う。同様にタイミングt3 ではノズル51-103等、タイミングt4 ではノズル51-104等、タイミングt5 ではノズル51-105等、タイミングt6 ではノズル51-106等、…、タイミングt18ではノズル51-118等、タイミングt19ではノズル51-119等、タイミングt20ではノズル51-120等から打滴が行われる。タイミングt20ではノズル51-120等から打滴が行われると、タイミングt1 に戻り、上述した打滴が繰り返し行われる。
上述したように1サイクルの打滴が行われると、記録紙16には主走査方向に連続して1ライン上に並ぶようにドット列が形成される。
図12に説明したノズル配置では、従来技術でも説明したように、着弾干渉によって折り返し位置A(例えば、ノズル51-120とノズル51-201との間の部分)で副走査方向の筋むらが発生することがある。
これは、折り返し位置Aに生じる着弾干渉の特異性によって濃度むら等の筋むらが発生し、更に、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチP1 が筋むらとして視認されやすい空間周波数を持っていることによる。
図12及び図13を用いて説明した従来技術の課題を解決するためのノズル配置を有する印字ヘッド500”を図14に示す。
図14に示すように、印字ヘッド500”が有するマトリクス配列されたノズルは副走査方向に4分割され、分割された各ブロック(ノズル群)542,544,546,548はそれぞれ主走査方向に位相をずらして配置されている。
これは、図12に示す印字ヘッド50”を副走査方向に4つのブロック(ノズル群542,544,546,548)に分割し、各ノズル群をそれぞれ主走査方向に位相をずらして配置したことと等価である。
このように図12に示す印字ヘッド50”を副走査方向に4分割し、各ノズル群をそれぞれ主走査方向に位相をずらして配置すると、ノズル51-105とノズル51-121との間、ノズル51-110とノズル51-126の間、ノズル51-115とノズル51-131との間、ノズル51-120とノズル51-136との間の4ヶ所に折り返し位置Aができ、折り返し位置Aにおける空間周波数を図12に示したノズル配列の4倍(高周波)にすることができる。したがって、折り返し位置Aにおける特異性を改善することができ、折り返し位置Aにおける筋むらの視認性を抑制することができる。
また、図14に示したノズル配置では、図10に示すように、折り返し位置間ピッチP2 が均一になるように各ノズル群542,544,546,548をそれぞれ主走査方向にずらして配置されている。
即ち、印字ヘッド500”は、上述したノズル群が副走査方向にn個(但し、nは2以上の整数であり、折り返し位置間ピッチを均等にする態様ではnは2以上の偶数)並べられ、各ノズル群はそれぞれ主走査方向に位相をずらして配置されている。より高解像度の画像を得るためには、n≧4である態様が好ましい。
また、主走査方向のノズル間ピッチP1 は主走査方向に隣り合うノズル間ピッチPがn分割された距離に等しくなる。これは、各ノズル群は主走査方向にP/nを単位とするシフト量で割り振られることと等価である。
なお、印字ヘッド500”内の各ノズル列の配置は同一であり、これらのノズル列を代表して、ノズル51-101〜ノズル51-120の20個のノズルからなるノズル列530を用いて説明することにする。
ノズル列530は、ノズル51-101〜ノズル51-105から成るノズル列532、ノズル51-106〜ノズル51-110から成るノズル列534、ノズル51-111〜ノズル51-115から成るノズル列536、ノズル51-116〜ノズル51-120から成るノズル列538から構成され、ノズル列532はノズル群542に属し、ノズル列534はノズル群544に属し、ノズル列536はノズル群546に属し、ノズル列538はノズル群548に属する。
ノズル51-101〜ノズル51-120を主走査方向に並ぶように投影されたノズル列において、ノズル51-101とノズル51-102との間にノズル51-109が配置されるようにノズル列532とノズル列534とを主走査方向に位相をずらして配置し、また、ノズル51-101とノズル51-109との間にノズル51-115が配置されるようにノズル列534とノズル列536とを主走査方向に位相をずらして配置し、更に、ノズル51-102とノズル51-109との間にノズル51-118が配置されるようにノズル列536とノズル列538とを主走査方向に位相をずらして配置した構造を有している。
即ち、各ノズル列532,534,536,538が有するノズル51-101 〜ノズル51-120を主走査方向に並ぶように投影した投影ノズル列において、同一ノズル群内の隣り合うノズルの間に、副走査方向に隣り合うノズル群のノズルが位置するように配置されている。例えば、上述した投影ノズル列において、ノズル群532に属するノズル51-101とノズル51-102との間には、ノズル群532と副走査方向に隣り合うノズル群534に属するノズル51-109が位置している。
図14に示したノズル配置では、主走査方向のノズル間ピッチ(同一ノズル群内で主走査方向に並ぶように投影したノズル列の隣接ノズル間ピッチ)P=0.169mm、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチP1 =0.846mm、折り返し位置間ピッチP2 =0.21mmとなっている。
図15には、図14に示したノズル配置と打滴タイミングとの関係を示す。
図15に示すように、タイミングt1 ではノズル51-101と主走査方向に並べられたノズルから打滴が行われ、タイミングt2 ではノズル51-102と主走査方向に並べられたノズルから打滴が行われる。このようにしてタイミングt3 〜タイミングt20では、ノズル51-103と主走査方向に並べられたノズルから順にノズル51-120と主走査方向に並べられたノズルまでの打滴が行われる。
図16には、ノズル群542、544、546、548が有するノズル列を主走査方向に並ぶように投影させた投影ノズル群542’544’、546’548’を示している。
図16には、各投影ノズル群の折り返し位置の両端にあるノズルうち一方のノズルを半円形、他のノズルを円形で示している。また、折り返し位置間ピッチP2 は均一であり、その値は0.212mmである。
上記の如く構成された印字ヘッド500”では、主走査方向と直交しない斜め方向にノズル51を並べたノズル列を副走査方向にn分割(但し、nは偶数)し、分割されたノズル列を主走査方向に位相をずらして配置するので、該折り返し位置Aに生じるインク滴の着弾干渉の特異性を改善することができる。
また、折り返し位置間ピッチP2 がほぼ等間隔になるように各ノズル列を配置すると、折り返し位置Aに生じる筋むらの視認性を改善することができる。
更に、各色に対応した印字ヘッドを備えた多色ヘッドでは、各色に対応したヘッド(ノズル群)の折り返し位置に本発明を適用すれは、一層のむら低減を図ることができる。
なお、本実施形態では、1つのノズル列内の全ノズルからインク滴を吐出させて主走査方向に1ラインのドット列を形成する態様を示したが、例えば、1つのノズル列の一部のノズルからインク滴を吐出させて主走査方向に1ラインのドット列を形成する場合には、形成されるドットの両端部では、隣り合うドットのうち一方のドットのみが形成されている状態でインク滴が着弾することがあり、この場合には、凝集によってインク滴が一方方向へ移動する現象が起こり得る。このような現象は画像の端部で起こることが多く、筋むらや濃度むらとして視認されにくい。
〔製造方法及び加工精度〕
次に、本実施形態に示した印字ヘッドの製造方法について説明する。
図17(a) は、単穴連続加工によって1列に5個のノズル51を形成する加工例を示す。単穴連続加工には、SUS(板厚t=80μm 、穴径D=30μm )のプレス加工やポリイミドのレーザ加工(板厚t=70μm 、穴径D=30μm )などが適用される。
単穴連続加工では、X−Yステージ上に被加工部材を固定し、NCデータ(加工される穴の位置情報を記録したデータ)に従って該X−Yステージ(以下、ステージと記載)を駆動させながら被加工部材の所定の位置に穴加工が施される。
図17(a) の矢印線に示したように、ステージをX方向に主走査方向に隣り合うノズル間ピッチP1 ずつ移動させながら、ノズル51-11 、ノズル51-21 、ノズル51-31 、…、ノズル51-1n の順に、図17(a) の右から左へ1ライン目の加工が行われる。1列目の加工が終わるとステージをY方向に副走査方向に並ぶように投影された副走査方向のノズル間ピッチ(以下、副走査方向のノズル間ピッチと記載)Ps だけ移動させて2列目の加工が行われる。
2列目の加工は1列目と逆方向に該X−YステージをX方向に主走査方向に隣り合うノズル間ピッチP1 ずつ移動させながら、ノズル51-2n 、…、ノズル51-21 の順に加工が行われる。
同様に3列目はノズル51-31 からノズル51-3n の順に、4列目はノズル51-4n からノズル51-41 の順に、5列目はノズル51-51 からノズル51-5n の順に加工が行われる。
上述した方法では、ステージのX方向の送り誤差が累積されることによって、折り返し位置のノズル間ピッチP2 には大きな誤差が生じてしまう。また、該ステージはY方向にも送り誤差を生じるが、これは打滴タイミングで補正が可能である。
レーザ加工では、温度ドリフト等によって出力変動が起こると折り返し位置での穴径差(穴径のばらつき)が非連続的に大きくなる。
図17に(b) には、複数の穴を同時に加工する加工例を示す。
多穴同時加工には、5穴用パンチ型を用いたSUSのプレス加工や5穴用エキシマレーザマスクを用いたポリイミドのレーザ加工などが適用される。
図17(b) に示すように、多穴同時加工では、型やマスクの精度がそのまま加工精度に影響する他に、型(マスク)200が回転ずれすると加工精度に大きな影響を及ぼす。
例えば、型200にΔαだけ回転ずれが発生すると、破線で示した符号200’のようになる。副走査方向のノズル間ピッチPs =1mm、回転方向の傾きΔα=25″の場合、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチの誤差ΔP2 は略0.5μm になりる。また、1列が20ノズルの場合には、回転方向に略5″傾くと(即ち、Δα=5″)、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチの誤差ΔP2 は略0.5μm になる。
したがって、型200がわずかに傾くことで、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチの誤差ΔP2 が大きくなってしまう。
なお、図示しないが、ニッケル電鋳を用いたノズルの一体形成では穴径のばらつきが大きく、歩留まりもあまりよくないために、上述したような仕上げ加工を行うことが好ましい。
このような加工上の問題は、折り返し位置Aにおける主走査方向に隣り合うノズル間ピッチP2 が等間隔になるように配置させることで改善可能である。更に、折り返し位置の主走査方向に隣り合うノズル間ピッチP2 を折り返し位置の空間周波数が2lp/mm 以上になるようにすると、比較的良好な品質となる。なお、折り返し位置の空間周波数は3lp/mm 以上になる態様がより好ましい。
また、従来技術の図22(a) に示したノズル配置でも、図18(a) に示すように、加工を分割すれば、加工位置ずれや加工穴径のばらつき等の加工のくせによる各ノズルの主走査方向のノズル間ピッチPの空間周波数が高周波になり、各ノズルの加工誤差による筋むらや濃度むらの視認性を下げることができる。
図18(a) に示す態様では、3穴同時加工を適用し、6個のノズルから成るノズル列を2回の加工で形成させる。即ち、ノズル列210はノズル列212とノズル列214に分割されて、2回の加工によって形成される。同様に、ノズル列220はノズル列222とノズル列224とに分割され、ノズル列230はノズル列232とノズル列234とに分割され、それぞれ2回の加工によって形成される。
上述した加工方法によってノズルを形成すると、6個のノズルから成るノズル列の分割部分及び折り返し位置における加工ばらつきによるドット位置の位置ずれなどが起こり得るが、空間周波数が高周波になっているために、各ノズルの加工誤差による筋むらや濃度むらの視認性を下げることができる。
図18(b) には、図18(a) に示したノズル配置を有する印字ヘッドから打滴されたインク滴によって形成されるドットを示している。
図18(b) では、各打滴タイミングで打滴されたインク滴によって形成されるドットを実線で示し、各打滴タイミングまでに打滴されたインク滴によって形成されているドットを一点破線で示している。
一方、図18(a) 、(b) に示す態様では、折り返し位置における着弾干渉の特異性によって生じるむらを改善する効果はあまり期待できないので、図19(a) に示すように、折り返し位置における主走査方向のノズルピッチP2 が等間隔になるようにノズル51が配置される。
また、図19(b) には、図19(a) に示したノズル配置を有する印字ヘッドから打滴されたインク滴によって形成されるドットを示している。
図19(b) では、各打滴タイミングで打滴されたインク滴によって形成されるドットを実線で示し、各打滴タイミングまでに打滴されたインク滴によって形成されているドットを一点破線で示している。
このように、1列のノズルの加工を分割し、更に、ノズル列を分割して位置調整を行うことで、精度及び歩留まりの向上が見込まれる。
更に、図4及び図14に示した分割されたマトリクス構造を、ほぼ形状が等しいヘッドブロック(例えば、図14のノズル群542、544、546、548を含んだヘッドブロック)として製造し、図20に示すように、4個のノズル群542〜548を有するヘッドブロック(印字ヘッド)560、562、564、566、568等を千鳥に配置して、長尺の印字ヘッド300を形成すると、長尺の一体構造のヘッドを製造する場合に比べて、加工が容易になると共に加工精度向上及び歩留まりの向上が見込まれる。
図20に示した印字ヘッド300では、特許文献3(特開2002−337320号公報)に示した調整機構やテストプリントも有効に機能する。また、離れた位置の着弾位置に打滴を行う場合(特に、最初のヘッドブロック)と、隣り合う着弾位置に打滴を行う場合(特に、後方のヘッドブロック)と、では着弾干渉が異なり、該着弾位置に形成されるドットの形状や濃度が異なる場合があるが、ドットの間を埋めるように打滴が行われるので、空間周波数が高く、むらとしての視認性は低い。また、ノズルの位置に応じた吐出制御を行ってもよい。
また、図20に示した印字ヘッド300では、図20の上側のヘッドブロック560、564、568の本流が連通され、上側本流310及び中間本流312が形成される。同様に、下側のヘッドブロック562、564の本流が連通され、下側本流314及び中間本流312が形成される。なお、上側のヘッドブロックと下側のヘッドブロックとの間に形成される中間本流312は、上側のヘッドブロックの下側の本流と下側のヘッドブロックの上側の本流とを共通化して形成されている。
したがって、図20に示すように、図3及び図14に示した本流路55Aを接続可能な形状に構成すると、より一層の小型化を図ることができる。また、図21に示すようにヘッドブロック単体でリーク試験を実施することもできる。
図21には、図20に示したヘッドブロック560等のリーク試験(気密性試験)装置400を示す。なお、図20に説明したヘッドブロック560、562等は同一構造を有しているので、ここではヘッドブロック560を用いて説明する。
本リーク試験装置400は、試験治具402にヘッドブロック560を収納し、ノズル51をゴム板等の密閉部材404によって密閉する。
また、ヘッドブロック560の両端部に設けられた支流端となる開口部の一方は、治具402内の管路406(破線で図示)に連通され、他方の支流端となる開口部は治具402に収納されることで密閉される。
このように試験治具402に収納されたヘッドブロック560を液体(純水等、印字ヘッド560を汚染する物質を含まない液体)408内に入れ、フロンガスなど、液体408に溶解しない気体を充填手段410によってヘッドブロック560内に充填し、液体408内に気体が出てくるか否かによって、ヘッドブロック560の気密性を試験することができる。
本実施形態では液滴の吐出ヘッドとしてインクジェット記録装置に用いられる印字ヘッドを例示したが、本発明は、ウエハやガラス基板、エポキシなどの基板類等の被吐出媒体上に液類(水、薬液、レジスト、処理液)を吐出させて画像、回路配線、加工パターンなどの形状を形成させる液吐出装置に用いられる吐出ヘッドにも適用可能である。
10…インクジェット記録装置、50,50’,50”,300,500,500’,500”…印字ヘッド、51…ノズル、510,512,514,532,534,536,538…ノズル列、522,524,542,544,546,548…ノズル群