JP3921269B2 - 養殖真珠貝用栄養物を用いた真珠貝の養殖方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、養殖真珠貝用栄養物を用いた真珠貝の養殖方法に関する。詳しくは、養殖真珠貝の成長を良好に維持し、真珠貝の斃死率を減少させ、精品率、珠の巻き、照りなどの真珠の品質の向上に優れた効果を発揮する、真珠貝の養殖方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、真珠養殖場では、真珠養殖用の貝、即ち、真珠貝がやせて衰弱し、貝柱が赤変して死んでいく異常な大量斃死が続いている。
この原因として、長年にわたる過密養殖による漁場の老化、不適切な作業体系、高水温、栄養となるプランクトンの不足、魚類養殖で使用された薬品の流入、人工孵化での近親交配による真珠貝の弱体化、ウィルス説などが指摘されているが、これらのうちのいずれが原因であるかは、今のところ不明である。
【0003】
被害は全国の真珠産地にまで広がっており、真珠養殖業者は多大な被害を被っている。この深刻な問題に対し、有効な解決手段は未だ全くない。そのため、早急な原因の究明と対策が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の欠点を解消し、養殖真珠貝の成長を良好に維持し、養殖真珠貝の斃死率を減少させ、精品率、珠の巻き、照りなどの真珠の品質の向上に優れた効果を発揮する、真珠貝の養殖方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスの真珠養殖への応用を研究中、養殖真珠貝を活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスを添加した海水槽中に1〜2ヶ月に1度約30分間、浸漬処理を行うことによって、真珠貝の成長の目安となる端先、足系、肉厚、肉重量、サイズなどの良好な成長を維持し、真珠貝の優劣の指標とされるグリコーゲン量を顕著に増大させることを知見した。また、本発明者は、上記浸漬処理を行うことによって、養殖真珠貝の斃死率を減少させ、珠揚げ後の真珠分析結果においても、精品率、珠の巻き(真珠層の巻きの状態)、照りなどの真珠の品質が非常に良好であることを知見した。
さらに、養殖場を増やして実施した試験でも、全く同様の結果を得た。
【0006】
このように、1〜2ヶ月に1度、かつ30分間程度の短時間の浸漬処理で、何故、このような効果が得られるのか、また、このような効果が活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス中の如何なる成分によるものであるかは明らかではないが、前記したように、養殖真珠貝は、密殖や高水温などの環境の変化、薬剤の流入、餌不足、病原菌の繁殖、さらには挿核作業などによって、相当なストレスを受けており、これが抵病力を低下させ、斃死につながっていると思われる。
【0007】
一方、ニンニク及び活性ビタミンB1 誘導体には、メタルチオネイン等のストレスに抵抗する物質を体内に誘導させてストレスを緩和させる可能性がある。さらに、活性ビタミンB1 誘導体は、吸収性が高く、体内代謝を促進する作用がある。貝肉の分析結果では、ビタミンB1 含量は、対照区に比べて、浸漬直後で3〜5倍、1ヶ月後においても1.5〜2倍の高値を維持し、さらに成長に必要なエネルギー源となるグリコーゲン量も、対照区に比べて顕著に増大していることが分かった。
【0008】
これらの観点から、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスを海水に添加し、これに真珠貝を浸漬させることによって、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス中の成分を有効に吸収させることができ、さらに、これらの成分は、長期間貝体内に貯留されることにより、相乗的或いは相加的に作用してストレスを緩和し、体内代謝を促進することにより、真珠貝の斃死の防止、成長促進などの効果をもたらしたものと推定される。また、成長に伴うエネルギー代謝の促進は、同時に成長に伴って形成される真珠層の成分となるCaの分泌量を高め、品質的に優れた真珠をつくることにも効果があったものと考えられる。
【0009】
本発明者は、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスに、養殖真珠貝の栄養物として優れた数々の作用を見出すと共に、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスが原料として、ビタミンと、食品として実績のあるニンニクのみを用いていることから、生体や環境への安全性の点についても全く問題ないことも見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1記載の本発明は、真珠貝を養殖するに当たり、養殖中に、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス又はエキス粉末を主成分とする、養殖真珠貝用栄養物の希釈液への真珠貝の浸漬処理を、少なくとも1度、5〜120分間施すことを特徴とする真珠貝の養殖方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
まず請求項1記載の本発明について説明すると、請求項1記載の本発明は、真珠貝の養殖方法に関し、真珠貝を養殖するに当たり、養殖中に、活性ビタミンB 1 誘導体含有ニンニクエキス又はエキス粉末を主成分とする、養殖真珠貝用栄養物の希釈液への真珠貝の浸漬処理を、少なくとも1度、5〜120分間施すことを特徴とするものである。
【0012】
このような請求項1記載の本発明の真珠貝の養殖方法の対象となる真珠貝としては、真珠を生ずることができ、養殖に使用されるものであれば、特に限定されない。そのような真珠貝の例としては、例えばアコヤガイ,シロチョウガイ,クロチョウガイなどの海産の斧足類などが挙げられる。さらに、このような海産種の他に、イケチョウガイなどの淡水産種をも対象とすることができる。
【0013】
また、真珠貝としては、核挿入前の稚母貝及び挿核貝のいずれをも、請求項1記載の本発明の真珠貝の養殖方法の対象とすることができる。
【0014】
請求項1記載の本発明の真珠貝の養殖方法に用いられる、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスの成分は、ビタミンB1 誘導体とニンニクであるが、このうち、活性ビタミンB1 誘導体は、吸収性が高く、体内代謝を促進する作用がある。このビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスは、活性ビタミンB1 誘導体とニンニクエキスとを混合することによって容易に調製される。
ここで、活性ビタミンB1 誘導体とは、優れた腸管吸収性及び組織移行性を示し、体内持続性が良く、かつ生体内で容易にチアミンに戻る誘導体を指す。具体的にはアリチアミン,チアミンプロピルジスルフィド,チアミンテトラヒドロフルフリルジスルフィドなどが挙げられる。
【0015】
上記した如く、請求項1記載の本発明に用いられる、養殖真珠貝用栄養物の主成分を構成するビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスは、活性ビタミンB1 誘導体とニンニクエキスとを混合することによって容易に調製することができる。
例えば、アリチアミン含有ニンニクエキスは、ビタミンB1 とニンニクエキスとを適当な条件下で共存させることによって、アリチアミンを生成せしめ、次いで、以下に例示する方法により、効率良くアリチアミン含有ニンニクエキスを得ることができる。
【0016】
生ニンニクを破砕、搾汁して得たニンニク搾汁液に、ビタミンB1 (塩酸チアミン)を、原料となる生ニンニク当たり0.1〜5.0%、好ましくは0.5〜3.0%添加し、pHを7.5〜9.0、好ましくはpH7.5〜8.5に調整した後、40〜70℃、好ましくは55〜65℃に加温し、5分間〜4時間、好ましくは30分間〜2時間反応させることにより、アリチアミン含有ニンニクエキス(液状物)を得ることができる。また、これを減圧下で濃縮乾燥してアリチアミン含有ニンニクエキス粉末を得ることができる。なお、アリチアミンは、ニンニク中のアリシンがビタミンB1 と反応することにより得られる活性型ビタミンB1 である。
【0017】
なお、反応終了後、生じた沈澱物を、濾過又は遠心沈澱で除去することにより、殆ど無臭に近いニンニクB1 エキス末(アリチアミン)が得られるが、この濾過又は遠心沈澱による沈澱物の除去の際には、必要に応じてセライト,パーライト等の濾過助剤や塩化カルシウム,塩化マグネシウム等の蛋白凝集剤を用いても良い。また、pH3〜5として蛋白を沈澱させて行っても良い。
【0018】
ここで、ビタミンB1 の添加量が、原料となるニンニク当たり0.1%未満であると、アリチアミンの生成量が不充分である。また、5.0%を超えて添加しても、アリチアミン生成量はそれ以上増加せず、添加する意味がない。また、反応のpH、処理温度、処理時間が、それぞれ示した下限値未満であると、アリチアミンの生成量が不充分であり、一方、上限値を超えると、ビタミンB1 の分解が発生することがある。
【0019】
請求項1記載の本発明においては、例えば、このようにして得られるアリチアミン含有ニンニクエキス(活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス)(液状物)をそのまま栄養物の主成分として用いることができるが、このエキスをさらに減圧下で濃縮乾燥して得られるアリチアミン含有ニンニクエキス(活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス)粉末を主成分として用いることもできる。
【0020】
請求項1記載の本発明において、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス中に占める活性ビタミンB1 誘導体の含量は、該ニンニクエキス固形分当たり、通常、0.4〜20%、好ましくは2〜12%である。
【0021】
請求項1記載の本発明に用いられる養殖真珠貝用栄養物は、上記の如き活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスを主成分とするものである。
請求項1記載の本発明に用いられる、養殖真珠貝用栄養物中における活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスの含有割合は、特に限定されないが、通常、50〜100%、好ましくは70〜100%であり、必要に応じて各種添加物を適宜配合することができる。
配合しうる添加物は、通常、真珠貝の養殖に使用されるものであれば、いずれでもよく、特に限定されないが、例えば安定剤,保存料,各種ビタミン,ミネラル,抗生物質,ホルモン剤,油脂,炭水化物,動物性又は植物性タンパク質,アミノ酸などを挙げることができる。
【0022】
また、請求項1記載の本発明に用いられる養殖真珠貝用栄養物は、上記の如き活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスを主成分とし、必要に応じて添加剤を配合したものであるが、さらにこれに乳糖、デキストリンなどの賦形剤を加えることにより、粉状,顆粒状,液状など所望の剤型として用いることができる。
【0023】
請求項1記載の本発明の養殖方法で用いられる、養殖真珠貝用栄養物の希釈用水としては、海産種の真珠貝の場合には海水であるが、淡水産種の真珠貝の場合には、淡水を使用することもできる。
【0024】
また、浸漬処理は、当該真珠貝の養殖中に少なくとも1度実施すれば良いが、定期的に数回実施することが好ましい。定期的に実施する場合の間隔としては、特に制限はないが、2〜3ヶ月に一度程度、特に1〜2か月に1度程度が最も好ましい。
【0025】
具体的な浸漬処理は、例えば上記に記載した如き活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスを主成分とする養殖真珠貝用栄養物を、海水等の希釈用水を入れたタンク(水槽)の中に溶解させ、これに真珠貝を浸漬させることにより行われる。
【0026】
請求項1記載の本発明の養殖方法において、活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキスを主成分とする養殖真珠貝用栄養物を海水等の希釈用水に溶解させる際の、該栄養物の希釈用水に対する添加量(濃度)は、浸漬処理時間などによって異なり、一義的に決定することは困難である。
【0027】
例えば、浸漬処理時間を30分間とした場合には、該栄養物の希釈用水に対する添加量(濃度)は、通常、0.05〜1.5%(固形分換算で0.0125〜0.375%)、好ましくは0.2〜0.7%(固形分換算で0.05〜0.175%)である。
この場合における該栄養物の添加量(濃度)が0.05%未満であると、添加効果が不充分であり、本発明の目的を達成することができない。一方、該栄養物を1.5%を超えて添加すると、真珠貝が弱ってしまうおそれがあるばかりか、添加量に見合うだけの効果を得ることができず、生産コストが高くなるため好ましくない。
【0028】
真珠貝の浸漬処理時間は、一般に5分間〜2時間の範囲内であるが、上記の添加量に応じて適宜選択する。即ち、栄養物の濃度が高いときには、短い浸漬処理時間で効果を得ることができ、逆に、栄養物の濃度が低いときには、浸漬処理を長時間行う必要がある。
【0029】
例えば、該栄養物の添加量(濃度)が0.5%の場合には、浸漬時間を5〜90分間、好ましくは10〜60分間の範囲とすることが好ましい。
この場合における浸漬処理時間が5分間未満では、栄養物としての添加効果が不充分であり、本発明の目的を達成することができない。一方、浸漬処理時間が90分間を超えると、真珠貝が弱ってしまうおそれがある。
【0030】
請求項1記載の本発明の養殖方法においては、通常の養殖方法で養殖されている真珠貝について、上記のような浸漬処理を少なくとも1度実施する。実施の浸漬処理間隔は、前記したように、1〜2か月に1度程度が適当である。浸漬処理終了後は、速やかに真珠貝を養殖場に戻すことが必要である。なお、養殖場における養殖条件は通常の養殖条件である。
【0031】
請求項1記載の本発明の養殖方法により、養殖真珠貝用栄養物の希釈液に浸漬された真珠貝は、栄養物中の活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス中の成分を有効に吸収する。
この結果、養殖真珠貝は、良好な成長を維持し、真珠貝の優劣の指標とされるグリコーゲン量を増大させると共に、養殖真珠貝の斃死率を減少させ、さらに精品率を改善し、珠の巻き、照りなどの品質が非常に優れた真珠をつくることができる。
【0032】
この点に関して述べると、前記したように、栄養物中の活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス中の成分は、長期間貝体内に貯留され、相乗的或いは相加的に作用してストレスを緩和し、体内代謝を促進することにより、真珠貝の斃死の防止、成長促進などの効果をもたらしたものと推定される。また、成長に伴うエネルギー代謝の促進は、同時に成長に伴って形成される真珠層の成分となるCaの分泌量を高め、品質的に優れた真珠をつくることにも効果があったものと考えられる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれら実施例によって制限されものではない。
【0034】
製造例1(アリチアミン含有ニンニクエキスの製造)
生ニンニク100kgを洗浄したものに、水50リットル(L)を加えて破砕し、搾汁した。搾汁液に塩酸チアミン2kgを添加し、NaOHでpH8とした後、60℃に2時間保持した。この反応液を冷却後、濾過し、アリチアミン含有ニンニクエキス約100kgを得た。
このアリチアミン含有ニンニクエキス(活性ビタミンB1 誘導体含有ニンニクエキス)を、以下の実施例1〜4において栄養物として使用した。
【0035】
製造例2(アリチアミン含有ニンニクエキス粉末の製造)
生ニンニク100kgを洗浄したものに、水50Lを加えて破砕し、搾汁した。搾汁液に塩酸チアミン2kgを添加し、NaOHでpH8とした後、60℃に2時間保持した。この反応液を冷却後、濾過し、減圧下で濃縮した後、スプレードライヤーで乾燥し、アリチアミン含有ニンニクエキス粉末約25kgを得た。
このアリチアミン含有ニンニクエキス粉末を、以下の実施例5において栄養物として使用した。
【0036】
実施例1
製造例1で得られた栄養物を、アリチアミン含有ニンニクエキス濃度が、それぞれ0%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%となるように海水に添加し、養殖真珠貝用栄養物の希釈液を調製した。
それぞれの希釈液に、アコヤガイ(母貝5〜6匁)を10個ずつ、30分間浸漬処理した後、取り出し、直ちに海中に1時間放置した。これを取揚げ、解体して、貝肉中のビタミンB1 含量を測定した。結果を第1表に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
第1表より、栄養物の濃度が高いほど、ビタミンB1 含量も高く、0%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%濃度の希釈液で浸漬処理した貝のビタミンB1 含量は、アリチアミン含有ニンニクエキス濃度にほぼ比例していることが分かった。但し、濃度2.0%の希釈液で浸漬処理した貝の中には、やや弱っているものが見受けられた。
これらの結果から、希釈液中の栄養物の濃度が1.5%以下であれば、これに真珠貝を30分間浸漬させることによって、真珠貝に栄養物中のビタミンB1 を有効に供給させることができることが分かった。
【0039】
実施例2
製造例1で得られた栄養物を、アリチアミン含有ニンニクエキス濃度が0.5%となるように海水に添加し、希釈液を調製した。
この希釈液を入れた海水槽中にアコヤガイ(母貝5〜6匁)100個を浸漬さし、浸漬開始してから5分、10分、20分、30分、60分、90分、120分経過後に、それぞれ貝を10個ずつ希釈液から取り出した。取り出した貝は、直ちに海中に1時間放置した後、解体して、貝肉中のビタミンB1 含量を測定した。結果を第2表に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
第2表より、浸漬処理時間が長いほど、真珠貝のビタミンB1 含量が増加することが分かった。中でも、浸漬処理時間60分までの場合、浸漬処理時間とビタミンB1 含量はほぼ比例関係を示していることが分かった。但し、120分間の浸漬処理時間の場合には、やや弱っている貝が見受けられた。
これらの結果から、希釈液中の栄養物の濃度が0.5%の場合には、浸漬処理時間を5〜90分間の範囲とすれば、真珠貝にビタミンB1 を有効に供給することができることが分かった。
【0042】
実施例3
製造例1で得られた栄養物3.2kgを、海水800Lを満たした水槽中に投入して、栄養物の濃度が0.4%の希釈液を調製した。
次に、アコヤガイ(母貝7〜8匁)8000個を用意した。浸漬処理前にこの中から20個を選び出し、ビタミンB1 含量を測定し、その平均値を求めた。その後、これら全てのアコヤガイを上記の希釈液に30分間浸漬処理した後、取り出し、取り出した貝は、速やかに養殖場に戻した。
上記浸漬処理後のアコヤガイを20個採取し、貝肉中に含まれているビタミンB1 含量を測定し、その平均値を求めた。
さらに、1ヶ月後に養殖場からアコヤガイ20個を採取し、解体して、貝肉中のビタミンB1 含量、グリコーゲン含量、貝の総重量、貝殻重量、生肉重量、カン晶体重量を測定し、その平均値を求めた。
なお、対照として、同じ養殖場で養殖されており、浸漬処理を施さなかったアコヤガイ20個を採取し、同様の測定を行い、その平均値を求めた。
これらの結果を第3表に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
第3表より、以下のことが分かった。
試験区における貝肉中のビタミンB1 含量は、浸漬処理前の0.10μg/g に対して、30分間の浸漬処理を行った直後には、約4倍の0.43μg/g にまで増加していた。そして、浸漬処理後1ヶ月を経過しても、0.21μg/g と、対照区(0.14μg/g )の約1.5倍量のビタミンB1 が含まれていた。
このことから、本発明の栄養物中にアコヤガイを浸漬処理することにより、アリチアミンが貝肉組織中に速やかに吸収されると共に、ビタミンB1 として長期間(少なくとも1ヶ月は)貯留されることが分かった。
【0045】
また、浸漬処理から1ヶ月経過後の貝肉中のグリコーゲン含量、貝の総重量、貝殻重量、生肉重量、カン晶体重量は、いずれも対照区と比較して試験区では有意に増加していることが分かった。本発明の栄養物中への浸漬処理により、このカン晶体が発達するのも大きな特徴である。なお、ここでカン晶体は、消化管中にあり、消化酵素を多量に含む半透明なゼラチン様棒状体で、消化酵素の供給主体である。カン晶体の大きい貝ほど、摂取した栄養素の消化・吸収能力が高く、グリコーゲン量と共に、貝の優劣の目安となるものである。
この結果から、本発明の栄養物中にアコヤガイを浸漬処理することにより、アリチアミンが貝肉組織中に速やかに吸収され、吸収されたビタミンB1 が、長期間貝体内に貯留されることにより、相乗的或いは相加的に作用して、体内代謝を促進することによって真珠貝の成長促進などの効果をもたらしたものと推定される。
【0046】
実施例4
挿核後の養生期間中に斃死、脱核したものを取り除いた後の挿核アコヤガイ(14〜16匁)6000個を用意し、3000個ずつ2群に分け、一方を試験区、他方を対照区とした。
試験区においては、製造例1で得られた栄養物を濃度0.4%となるように添加した1000L海水槽中において、挿核アコヤガイ3000個を30分間浸漬処理した後、取り出し、取り出した貝を速やかに養殖場に戻した。さらに、これらについて、2ヶ月後と4ヶ月後にも、同じ条件で浸漬処理を行った。
一方、対照区においては、挿核アコヤガイ3000個について、浸漬処理を行わずに、そのまま養殖場へ戻した。
【0047】
試験区、対照区ともに、挿核5ヶ月後に、それぞれから50個を採取し、グリコーゲン含量、総重量、貝殻重量、生肉重量、乾燥肉重量、カン晶体重量を測定し、その平均値を求めた。同時に、挿核5ヶ月経過時点での斃死数も調べた。これらの結果を第4表に示す。さらに、得られる真珠の珠の巻きや真珠層の形成状態について、目視により2段階(良好、不良)の評価を行った。
【0048】
【表4】
【0049】
第4表から次のことが分かった。
測定した全項目において、試験区は対照区に比べて有意に高くなっており、良好な成長を示した。
これらのことから、浸漬処理は、貝の成長を促進する効果をもたらすことがわかる。中でも、グリコーゲン量の差は、浸漬処理を施すことにより、優れた真珠貝を得ることができることを示している。
【0050】
また、試験区の斃死数(329個)は、対照区(526個)の60%程度であることから、浸漬処理は斃死率の低減効果をも有することが分かった。
さらに、試験区の貝から得られる真珠の珠の巻き、真珠層の形成状態も良好であって、不良数も少なかった。従って、浸漬処理により、エネルギー代謝促進と同時に真珠層を形成するCa分泌量も増加し、品質的に優れた真珠をつくることにも効果があることが分かった。
【0051】
実施例5
挿核後の養生期間中に斃死、脱核したものを取り除いた後の挿核アコヤガイ(14〜16匁)5400個を用意し、2700個ずつ2群に分け、一方を試験区、他方を対照区とした。
試験区においては、製造例2で得られたアリチアミン含有ニンニクエキス粉末を濃度が0.1%となるように添加した1000L海水槽中において、2700個の挿核アコヤガイを20分間浸漬処理した後、取り出し、取り出した貝を速やかに養殖場に戻した。さらに、これらについて、2ヶ月後にも、同じ条件で再度浸漬処理を行った。
一方、対照区においては、2700個の挿核アコヤガイについて浸漬処理を行わずに、そのまま養殖場へ戻した。
【0052】
試験区、対照区ともに、挿核3ヶ月後に、それぞれから50個ずつを採取し、グリコーゲン含量、総重量、貝殻重量、生肉重量、乾燥肉重量、カン晶体重量を測定し、その平均値を求めた。その結果を第5表に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
第5表から、以下のことが分かった。
実施例4と同様に実施例5においても、全測定項目において、試験区は、対照区に対して明らかに増加傾向を示していた。特に、真珠貝の優劣の指標となるグリコーゲン量は、顕著な増加を示した。また、端先、足系の成長も非常に良好であった。
これらのことから、浸漬処理にあたり、アリチアミン含有ニンニクエキス粉末を使用しても、アリチアミン含有ニンニクエキス(液状物)による浸漬処理と同様の効果を得ることができることが分かった。
【0055】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明に用いられる養殖真珠貝用栄養物は、養殖真珠貝に対して、ストレス緩和作用と体内代謝促進作用をもたらすものと推定される。
【0056】
このため、請求項1記載の本発明に用いられる養殖真珠貝用栄養物は、養殖真珠貝の成長を良好に維持し、養殖真珠貝の斃死率を減少させ、精品率、珠の巻き、照りなどの真珠の品質の向上に優れた効果を発揮する。
【0057】
それ故、請求項1記載の本発明の養殖方法によれば、養殖真珠貝に栄養物中の有効成分を有効に吸収させ、かつ、長期間貝体内に貯留させることができる。
従って、請求項1記載の本発明の養殖方法によれば、養殖中における真珠貝の成長を良好に維持し、養殖真珠貝の斃死率を減少させることができ、さらに、養殖中における養殖真珠貝の精品率、珠の巻き、照りなどの真珠の品質を向上させることができる。
Claims (1)
- 真珠貝を養殖するに当たり、養殖中に、活性ビタミンB 1 誘導体含有ニンニクエキス又はエキス粉末を主成分とする、養殖真珠貝用栄養物の希釈液への真珠貝の浸漬処理を、少なくとも1度、5〜120分間施すことを特徴とする真珠貝の養殖方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11417697A JP3921269B2 (ja) | 1997-04-17 | 1997-04-17 | 養殖真珠貝用栄養物を用いた真珠貝の養殖方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP11417697A JP3921269B2 (ja) | 1997-04-17 | 1997-04-17 | 養殖真珠貝用栄養物を用いた真珠貝の養殖方法 |
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