JP3920138B2 - 捺染方法および捺染物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射性の捺染用インキにて布帛に印捺する捺染方法、および、この捺染方法によって印捺された捺染物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、店頭や道端に掲げられる幟旗などにあっては、夜間での視認性を高めるため、光を反射する性質を有する反射性捺染用インキにて印捺されている。この種の反射性捺染用インキには、一般的に、金属膜によって表面がコーティングされた無数のガラスビーズが含まれており、無数のガラスビーズが光を回帰反射するようになっている。ガラスビーズとしては、ガラスビーズ粒子間での乱反射を抑えて、反射光量を大きくすべく、粒子径が数十マイクロメータ程度のものが用いられ、これにより、反射性捺染用インキにあっては、良好な反射特性を達成しているのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反射性捺染用インキに含まれるガラスビーズの粒子径は、一般的な捺染用インキ(すなわち、顔料捺染色糊)の粒子径に比べ大きく、このため、この反射性捺染用インキを用いて印捺された布帛にあっては、被印捺面の表面が粗くなり、この被印捺面に汚れが付着し易くなるといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、反射性捺染インキを用いた場合であっても、布帛の被印捺面が汚れ難くできる捺染方法、および、この捺染方法を用いて印捺された捺染物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、カラーインキとバインダーとを混ぜ合わせ、顔料捺染色糊を生成する第1過程と、前記第1過程において生成された顔料捺染色糊に、金属膜が表面にコーティングされたガラス粒子を複数含有する反射材を混入し反射性捺染用インキを生成する第2過程と、前記反射性捺染用インキにて印捺された被印捺面に、撥水剤に帯電防止剤を混入して生成した帯電防止剤入撥水剤を浸み込ませる第3過程とを備える捺染方法を提供する。
【0006】
この捺染方法によれば、ガラスビーズを複数含んだ反射性捺染用インキにて印捺された被印捺面に、帯電防止剤入撥水剤が浸み込まされる。従って、この被印捺面が帯電することが防止されるため、被印捺面に塵などが付着することが防止されると共に、被印捺面に水滴が付き難くなっているため、水垢が残ることが防止され、被印捺面が汚れ難くなる。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明は、カラーインキとバインダーとからなる顔料捺染色糊と、金属膜が表面にコーティングされたガラス粒子を複数含有する反射材とが混ぜ合わさった反射性捺染用インキにて印捺され、当該印捺された被印捺面に、撥水剤と帯電防止剤とが混合してなる帯電防止剤入撥水剤が浸み込まされた捺染物を提供する。ここで、前記顔料捺染色糊にて印捺された被印捺面を更に有し、前記反射性捺染用インキにて印捺された面積は、当該顔料捺染色糊にて印捺された面積よりも小さいことが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1は、捺染物10を製造するための布帛への捺染工程を示すフローチャートである。同図に示すように、捺染工程にあっては、先ず、カラーインキと、バインダー(固着剤)とを混ぜ合わせ、攪拌して顔料捺染色糊を生成する(ステップS1)。次いで、この顔料捺染色糊に、反射材を混入し攪拌することで、反射性捺染用インキを生成する(ステップS2)。ここで、本実施形態では、バインダーに、大日本インキ株式会社製の「DEXCEL CLEAR 8300」を使用し、また、反射材に、REFLEC社製の反射材であり、径が40マイクロメータのガラスビーズが多数混入されたものを使用している。そして、約1リットルのバインダーに対して250グラム程度の反射材を混入して攪拌することにより、反射性捺染用インキを生成している。なお、ガラスビーズが混入されたものであれば、反射材としては、任意のものを使用可能であり、また、複数の互いに異なる反射材を混合して使用することも可能である。
【0010】
次いで、ステップS2において生成された反射性捺染用インキを用いて、模様や文字などを布帛上に形成するためのスクリーン捺染を行い(ステップS3)、そして、布帛の被印捺面を約130℃で熱乾燥する(ステップS4)。布帛としては、綿や麻などのセルロース系繊維からなる布帛の他、ポリエステルなどの合成繊維からなる布帛を用いることが可能である。ここで、印捺にあっては、被印捺面全体のうち、反射性捺染用インキを用いて印捺される面積は、反射材が混入されていない顔料捺染色糊にて印刷される面積よりも小さくするのが良い。例えば、図2に示すように、布帛に印捺される文字や図柄のうち、強調すべき文字100を印捺する場合にだけ、反射性捺染用インキを使用し、その他の図柄や文字を印捺する場合には、反射性を有しない顔料捺染色糊を使用する。このように、被印捺面全体において、反射性捺染用インキにて印捺される面積を小さくすることで、暗闇において被印捺面全体が反射により光ってしまうことを防止し、また、強調すべき文字や図柄をより効果的に識別することができるのである。
【0011】
次いで、捺染工程にあっては、撥水剤に帯電防止剤を混入し攪拌して、帯電防止剤入撥水剤を生成する(ステップS5)。本実施形態では、撥水剤に、共栄化学株式会社製の「ライトガードFR−520」を使用し、また、帯電防止剤に、共栄社化学株式会社製の「デスタットFN−313」を使用している。そして、1リットル(1000グラム)の水に対して、60グラムの撥水剤と、30グラムの帯電防止剤とを混入することにより、帯電防止剤入撥水剤を生成している。次に、この帯電防止剤入撥水剤に、ステップS3において印捺された布帛を浸した後に、この布帛をマングル(生地絞り機)にて絞ることにより、帯電防止剤入撥水剤を被印捺面に浸み込ませつつ、脱水する(ステップS6)。
【0012】
そして、最後に、ステップS6において、脱水した布帛を、遠赤外線熱処理乾燥機により、約110℃乃至120℃の範囲内で熱処理する(ステップS7)。以上の捺染工程を経て、布帛の表面に模様や図柄、文字などが印捺された捺染物10が完成する。
【0013】
本出願人は、上述した帯電防止剤入撥水剤加工の有無が防汚効果に及ぼす影響を調べるべく、次のような比較試験を行った。すなわち、上述の顔料捺染色糊にて印捺された被印捺面に帯電防止剤入撥水剤加工が施された捺染物(以下、「捺染物1」という)と、顔料捺染色糊によって印捺されただけの捺染物(以下、「捺染物2」という)とを、3ヶ月に渡り曝露した。そして、捺染物1および捺染物2と、曝露していない捺染物との色差を側色色差計にて測定した。図3は、その測定結果を示す図である。なお、この比較試験には、白色、青色、赤色および黄色の4色の顔料捺染色糊によって印捺された捺染物が用いられており、図3には、L*a*b*表色系における各色の色差が示されている。同図に示すように、捺染物1よりも捺染物2の方が、各色における色差が大きくなっており、このことは、捺染物2の色相が捺染物1の色相よりも大きく変化したことを意味している。すなわち、3ヶ月の曝露の結果、捺染物1の方が捺染物2よりも汚れが少ないことを意味し、帯電防止剤入撥水剤加工によって防汚効果が向上することが導かれる。
【0014】
この比較試験では、色差測定に測色色差計を用いることから、表面乱反射よる測定誤差をなくすべく、反射材が混入されていない顔料捺染色糊により印捺された捺染物を試験対象としているものの、反射性捺染用インキが捺染物1および捺染物2の印捺に用いられた場合には、防汚効果の差がより顕著になると考えられる。詳述すると、上述したように、反射性捺染用インキにて印捺された被印捺面は、表面が粗くなるため、埃や塵などが付き易くなるばかりか、水滴ができ易く水垢が付き易い。これに対して、帯電防止剤入撥水剤加工が被印捺面に施されている場合、帯電防止剤入撥水剤が被印捺面に浸み込んでいるため、被印捺面の帯電と水滴の付着とが防止され、これにより、反射性捺染用インキを用いても、被印捺面に埃が付着し難くなるとともに、水滴による水垢も付き難くなるのである。特に、布帛の材質がポリエステル系繊維である場合には、布帛が帯電し易いため、埃も布帛に付着し易くなるが、本実施形態によれば、帯電防止剤により、布帛の帯電が防止され、埃が付着し難くなるのである。
【0015】
なお、上述した捺染方法は、幟旗や暖簾など、屋外に掲げられるものに限らず、例えば、Tシャツなどの着衣や、寝具、カーテンなどの屋内にて使用される布帛に模様や文字を印捺する場合にも適用可能である。
特に、本発明に係る捺染方法は、テーブルクロスなどの食卓用の布帛を印捺する際に適用されるのが有効である。さらに詳述すると、反射性捺染用インキにて印捺された被印捺面に帯電防止剤入撥水剤加工が施されていない場合、こぼれた水やスープなどの液体が布帛の内部まで浸透する。そして、一旦、液体が布帛に浸透してしまうと、この液体により汚れた布帛の表面を拭き取る際に、ガラスビーズによる表面凹凸により、この汚れが拭き取り難くなってしまう。これに対して、本発明に係る捺染方法によれば、反射性捺染用インキにより印捺されていても、帯電防止剤入撥水剤加工が施されているため、撥水作用により、こぼれた液体が布帛の内部に浸透するのが防止されるから、液体を簡単に拭き取ることができ、これにより、布帛の表面が汚れるのを防止できるのである。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、反射性捺染インキを用いた場合であっても、布帛の被印捺面が汚れ難くできる捺染方法、および、この捺染方法を用いて印捺された捺染物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 布帛への捺染工程を示すフローチャートである。
【図2】 幟旗の一例を示す図である。
【図3】 帯電防止剤入撥水剤加工による防汚効果の比較試験結果を示す図である。
【符号の説明】
1、2、10・・・幟旗(捺染物)

Claims (3)

  1. カラーインキとバインダーとを混ぜ合わせ、顔料捺染色糊を生成する第1過程と、
    前記第1過程において生成された顔料捺染色糊に、金属膜が表面にコーティングされたガラス粒子を複数含有する反射材を混入し反射性捺染用インキを生成する第2過程と、
    前記反射性捺染用インキにて印捺された被印捺面に、撥水剤に帯電防止剤を混入して生成した帯電防止剤入撥水剤を浸み込ませる第3過程と
    を具備することを特徴とする捺染方法。
  2. カラーインキとバインダーとからなる顔料捺染色糊と、金属膜が表面にコーティングされたガラス粒子を複数含有する反射材とが混ぜ合わさった反射性捺染用インキにて印捺され、当該印捺された被印捺面に、撥水剤と帯電防止剤とが混合してなる帯電防止剤入撥水剤が浸み込まされた
    ことを特徴とする捺染物。
  3. 前記顔料捺染色糊にて印捺された被印捺面を更に有し、前記反射性捺染用インキにて印捺された面積は、当該顔料捺染色糊にて印捺された面積よりも小さい
    ことを特徴とする請求項2に記載の捺染物。
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