JP3919696B2 - ガスタービン吸気用フィルタユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービンプラントの空気圧縮機等に対する大気塵の付着を軽減することにより、発電出力の低下を防止し、長時間に亘り空気圧縮機等の洗浄、フィルタの交換を不要とするガスタービン吸気用フィルタユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に示す通り、ガスタービンaは運転時に外気bを吸入する。この外気bには微粉塵や雨水、ミスト、排気ガス中のカーボン微粒子、塩分粒子等の大気塵が浮遊しているので、このような大気塵がガスタービン内部の腐食、汚染の原因となると共に、特に空気圧縮機cに付着して空気圧縮機cの性能低下を生じさせ、発電出力を低下させるという問題がある。そこで大気塵の吸い込みを未然に防止するために、ガスタービンaの空気吸込口dには、空気から大気塵を機械的に分離除去して清浄化するための集塵装置(フィルタユニット)eが設置されている。このフィルタユニットeは、特開平5−106464号公報にも開示されるように、巻取式帯状ガラス繊維の濾材から成る粗フィルタfと、イオン交換繊維フィルタを折込型とした中性能フィルタgの2段式に構成されている。尚、図中hはガスタービンaのタービン部、iはガスタービンaによって駆動される発電機を示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のガスタービン吸気用フィルタユニットは、充分に大気塵を除去できないためガスタービンの発電出力の低下を生じさせ、また粉塵保持容量が小さいため年2〜3回の頻度でフィルタ交換が必要となる。このため、発電出力を低下させない高効率な吸気用フィルタユニットで年1回義務づけられているガスタービンの定期点検時にフィルタ交換ができる長寿命のガスタービン吸気用フィルタユニットの提案が望まれている。
【0004】
本発明のガスタービン吸気用フィルタユニットは、以上の課題を解決するために、防塵用フィルタを複数段設けて成るガスタービン吸気用フィルタユニットにおいて、防塵用フィルタを複数段設けて成るガスタービン吸気用フィルタユニットにおいて、前記防塵用フィルタのうち、最下流に濾過効率が粒径0.3μmの粒子に対して99.97%の箱型高性能フィルタを備え、前記箱型高性能フィルタの吸気方向の上流側に濾過効率が粒径0.3μmの粒子に対して10〜70%の箱型中性能フィルタを備え、前記箱型中性能フィルタの上流側に吹き流し型のプレフィルタを備えることを特徴とする
また、前記防塵用フィルタが吸気方向の上流側より、パネル型のデミスター、巻取帯状型あるいは吹流し型のプレフィルタ、箱型の中性能フィルタ、及び箱型の高性能フィルタの4段から成ることが好ましい。前記プレフィルタは吹流し型であってその濾材面積が2〜8m/台、前記中性能フィルタ及び高性能フィルタの各濾材面積は18〜35m/台であることが好ましい。
【0005】
前記パネル型のデミスターは、雨水の浸入を防止するためのものであり、従来種々公知のものがあるが、例えば動植物性繊維および合成繊維をスプリング状にカール加工して多くの小さな弾性体をつくり、これを結合剤で被覆結合したものを板状にして金枠内に封入したものが知られている。このデミスターは、一般には、厚みが10〜50mm、風速2m/sの時の濾過効率(JIS8種,比色法)が15〜60%、圧力損失が1〜10mmAqである。
前記のデミスターは圧力損失が小さく、即ち、通気抵抗が小さく、水滴に対して濾過効率が高いことが特徴で、また、汚れた場合に枠から外して洗浄することで再使用できる。もちろん、前記パネル型のデミスターとして雨水の浸入を屈折路で防ぐようにした屈折型の羽根式エリミネータ等も使用できる。
【0006】
前記プレフィルタとしては巻取帯状型かあるいは吹流し型を用いるわけであるが、巻取帯状型は図2に示す通り、ガラス繊維製濾材からなる帯状濾材10が吸気空気路11を遮るように張設されており、濾材10が巻き取られている送出用ロール12が上部に設置される一方、その送出用ロール12から取り出された濾材10を巻き取る巻取用ロール13が下部に設置されている。この巻取帯状型プレフィルタは、一般には、濾材材質がガラス繊維及びポリエステル繊維等を用いた不織布であり、濾材厚みが20〜70mm、平均繊維径が15〜60μmで、風速2.5m/sの時の圧力損失が4〜8mmAq、濾過効率(JIS15種,重量法)が60〜90%、粉塵保持容量が500〜1300g/m2である。
ただし、巻取帯状型は濾材の巻取り用駆動装置の保守メンテナンスが必要となるため完全なメンテナンスフリーとするには、濾材面積を広くした下記吹流し型が好ましい。
吹流し型は、図3乃至図5に示す通り、濾材20を多数の袋体21を連続させた形状とし、この濾材20をその開口部22に合わせて複数本の桟23を備えたヘッド部24を介して枠体25に螺子26で取り付けるものである。ただし、形態はこれに限定されるものでなく濾材面積を所望のものにできる袋状のものであればよい。この吹流し型プレフィルタは、一般には、濾材は厚みが10〜25mm、材質がポリエステル、アクリル等の有機繊維の乾式不織布、平均繊維径が20〜60μm、目付が300〜600g/m2、風速2.5m/sの時の圧力損失が2〜8mmAq、効率(JIS15種,重量法)が60〜90%で、この濾材を用いて濾材面積が2〜8m2/台、外形寸法がタテ592mm×ヨコ592mm×奥行き500mmの吹流し型プレフィルタとした。濾材面積が2m2/台未満の場合は所望のフィルタの寿命が得られず、濾材面積が8m2/台を越える場合は、圧力損失が高くなり好ましくない。従って、濾材面積は2〜8m2/台が好ましい。尚、このフィルタの性能は、風量50m3/分の時の圧力損失が2〜8mmAq、効率(JIS15種,重量法)が60〜90%、粉塵保持容量が1000〜4000g/台である。
【0007】
前記中性能フィルタと高性能フィルタは、図6及び図7に示す通り、濾材30を濾材面積を増加させるために吸気空気の流れ方向に対して凹凸となるようジグザク状に折り畳んでおり、それを箱型の枠体31にシール材32を介して組み込み、その折り曲げ間隔部にシートを波形に屈折したセパレータ33が挿入されている。
尚、図示の様に、セパレータ33の屈折の波高さを挿入方向後方端側の高さH1を挿入方向先端側の高さH2より大きくしてテーパー状に形成したいわゆる傾斜型セパレータを用いることにより、通常のセパレータの様に屈折の波高さを全長に亘り均等にしたものに比べてフィルタを多風量で高性能にすることができる。この中性能フィルタは、一般には、濾材は厚みが0.2〜1.0mm、材質がガラス繊維、有機繊維の単独あるいは混合の湿式不織布であり、平均繊維径が1.5〜5.0μm、目付が50〜100g/m、風速5.3cm/sの時の圧力損失が0.5〜6mmAq、効率(0.3μmDOP)が10〜70%で、セパレータは材質がアルミニウム、ステンレス等の金属箔、クラフト、合繊等の紙、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムで、該濾材をジグザクに折り畳みセパレータを間挿して濾材面積が18〜35m/台、外形寸法がタテ610mm×ヨコ610mm×奥行き290mmの中性能フィルタとした。濾材面積が18m/台未満では圧力損失は低くなるものの寿命は低下し、濾材面積が35m/台を越える場合はフィルタの圧力損失が高くなるという傾向がある。従って、濾材面積は18〜35m/台が好ましい。尚、このフィルタの性能は、風量50m/分の時の圧力損失が8〜25mmAq、効率(JIS11種,比色法)が60〜95%、粉塵保持容量が1000〜3000g/台である。
高性能フィルタは、一般には、濾材は厚みが0.2〜1.0mm、材質がガラス繊維の湿式不織布、平均繊維径が0.5〜2μm、風速5.3cm/sの時の圧力損失が5〜40mmAq、効率(0.3μmDOP)が99.97%で、セパレータは材質がアルミニウム、ステンレス等の金属箔、クラフト、合繊等の紙、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムで、該濾材をジグザクに折り畳みセパレータを間挿して濾材面積が18〜35m/台、外形寸法がタテ610mm×ヨコ610mm×奥行き290mmの高性能フィルタとした。濾材面積が18m/台未満では圧力損失が高くなり寿命も短くなり、35m/台を越える場合には濾材と濾材の間隔が保持しにくく折り込めないという問題がある。従って、濾材面積は18〜35m/台が好ましい。尚、このフィルタの性能は風量50m/分の時の圧力損失が15〜30mmAq、効率(0.3μmDOP)が99.97%、粉塵保持容量が1000〜3000g/台である。
【0008】
【作用】
防塵用フィルタを複数段設けて成るガスタービン吸気用フィルタユニットにおいて、前記防塵用フィルタのうち、最下流に濾過効率が粒径0.3μmの粒子に対して99.97%の箱型高性能フィルタを備え、前記箱型高性能フィルタの吸気方向の上流側に濾過効率が粒径0.3μmの粒子に対して10〜70%の箱型中性能フィルタを備え、前記箱型中性能フィルタの上流側に吹き流し型のプレフィルタを備えることにより、ガスタービンの使用開始時の圧力損失が高くなり、初期発電出力の低下がおこるものの、圧縮機が汚れないために1年間を通じてガスタービンの出力低下がおこらないことになる。これに対して、前記箱型高性能フィルタを最下流側に備えないものでは、使用開始時の圧力損失は低いために、初期に高いガスタービンの出力が得られるものの、1年間通して使用すると圧縮機が汚れるために発電出力が低下し始め、結果として前記した箱型高性能フィルタを備えたガスタービンの所定の出力を途中で下回ることになる。
また、パネル型デミスター、巻取帯状型あるいは吹流し型のプレフィルタ、箱型中性能フィルタ、箱型高性能フィルタを4段に組み合わせることにより、個々のフィルタが必要以上に圧力損失が突出しないようにバランスよく構成されるため、8000時間以上メンテナンス不要とできる。
プレフィルタは通常パネル形(平板状)のものでは、数カ月の寿命のものを、巻取帯状型や吹流し形にして濾材面積を増加し、粉塵保持容量を大きくした。
また、中性能フィルタへの負荷を軽減するための効率も得るようにした。中性能フィルタは高性能フィルタへの負荷を軽減するための効率を得ること、粉塵保持容量を大とすることで長寿命化を図るため濾材面積を増加した。
高性能フィルタは中性能フィルタからの通過粉塵により圧力損失が増大しないように濾材面積を多く折り込みかつ空気圧縮機の汚れ防止できるような効率を得るようにした。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に付き説明する。
図1は、本発明ガスタービン吸気用フィルタユニットの実施例を示すもので、図略のガスタービンの吸気用ダクトに連設したケーシング1内に、ガスタービンの連続運転にとって有害な塵埃等の有害物質を吸気空気中から除去するために、パネル型のデミスター2、巻取帯状型あるいは吹流し型のプレフィルタ3、箱型の中性能フィルタ4、及び箱型の高性能フィルタ5から成る4段式のフィルタユニット6を設けるようにした。
【0010】
デミスターは、サラン繊維(サランロック,登録商標)を金枠内に封入固定したもので、定格風速が2.5m/s、圧力損失が3mmAq、濾過効率(JIS8種,重量法)が28%で、寸法がタテ610mm×ヨコ610mm×厚さ35mmのものを、前記ケーシング1内に16個(4列4段)設置するようにした。
【0011】
プレフィルタとして巻取帯状型は、濾材は厚みが50mm、材質がガラス繊維、平均繊維径が流入側30μmで流出側が20μmの密度勾配であって、効率(JIS15種,重量法)が80%で、この濾材を用いたフィルタの性能は風速2.5m/sの時の圧力損失が6mmAq、粉塵保持容量が1000g/m2の自動巻取式で、外形寸法が1200mmのものを、前記ケーシング1内に2台設置するようにした。
また、吹流し型については、濾材は平均繊維径が35μmのポリエステル繊維を塩ビ系樹脂で結合して厚さ15mm、目付を300g/m2とし、風速2.5m/sの時の圧力損失が5mmAq、効率(JIS15種,重量法)が80%で、この濾材を6山折り畳み金枠で固定して、濾材面積が4m2/台、外形寸法がタテ592mm×ヨコ592mm×奥行き500mmのフィルタとした。このフィルタの性能は風量50m3/分の時の圧力損失が5mmAq、効率(JIS15種,重量法)が80%、粉塵保持容量が2800g/台で、前記ケーシング1内に16個(4列4段)設置するようにした。
【0012】
中性能フィルタは箱型で、濾材は厚みが0.3mm、平均繊維径が2μmのガラス繊維と有機繊維の混抄紙を目付60g/m2とし、風速2.5m/sの時の圧力損失が0.9mmAq、効率(0.3μmDOP)が15%で、この濾材を折り込み、アルミニウム箔の傾斜型セパレータを挿入したジグザグ状折込型(箱型)で、濾過面積が28m2/台、外形寸法がタテ610mm×ヨコ610mm×奥行き290mmのフィルタとした。このフィルタの性能は風量50m3/分の時の圧力損失が12mmAq、効率(JIS11種,比色法)が60%、粉塵保持容量が2700g/台で、前記ケーシング1内に16個(4列4段)設置するようにした。
【0013】
高性能フィルタは箱型で、濾材は厚みが0.4mm、平均繊維径が0.8μmのガラス繊維湿式不織布を目付70g/m2とし、風速5.3cm/sの時の圧力損失が28mmAq、効率(0.3μmDOP)が99.97%で、この濾材を折り込み、アルミニウム箔の傾斜型セパレータを挿入したジグザグ状折込型(箱型)で、濾過面積が28m2/台、外形寸法がタテ610mm×ヨコ610mm×奥行290mmのフィルタとした。このフィルタの性能は風量50m3/分の時の圧力損失が26mmAq、効率(0.3μmDOP)が99.97%、粉塵保持容量が1500g/台で、前記ケーシング1内に16個(4列4段)設置するようにした。
【0014】
前記プレフィルタとして巻取帯状型を用いたものを実施例1、吹流し型を用いたものを実施例2とし、更に、前記デミスターと高性能フィルタを用いずに前記巻取帯状型プレフィルタと箱型中性能フィルタのみで構成したものを従来例のガスタービン吸気用フィルタユニットとして構成し、これら吸気用フィルタユニットに外気を連続的に流し続け、その期間中のガスタービンの出力低下を試験した。
前記各フィルタユニットの構成を下記表1に、また試験結果を下記表2に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0003919696
【0016】
【表2】
Figure 0003919696
【0017】
前記表から明らかなように、特開平5−106464号公報に記載される様に、従来の巻取帯状型プレフィルタと箱型中性能フィルタの2段式では、長時間の使用においてはガスタービンの出力が10%程度低下する。またフィルタが目詰まりして寿命がくることにより年2〜3回フィルタ交換及び圧縮機の洗浄作業が必要となる。これに対して、本発明の実施例1は、パネル型デミスター、巻取帯状型プレフィルタ、箱型中性能フィルタ、箱型高性能フィルタの4段式の組合わせにより、長期間使用においてもほとんど出力低下がなかった。またフィルタ寿命も長くなりフィルタ交換は年1回ですみ圧縮機の洗浄の手間も省略できる。ただし、プレフィルタが巻取帯状型で自動のため、駆動部の保守点検が必要である。また、本発明の実施例2は、実施例1のプレフィルタを吹流し型に変えることで、ガスタービンの出力低下がなく、長時間(8000時間以上)メンテナンスフリーとなる。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のガスタービン吸気用フィルタユニットによれば、例えば法令による年1回の定期点検時のみのフィルタ交換ですむため、フィルタ交換及び圧縮機の洗浄等のメンテナンス作業が軽減される。また、HEPAフィルタ等の高性能フィルタを使用するため、大気塵の付着によるガスタービンの出力低下をおさえられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ガスタービン吸気用フィルタユニットの構成図
【図2】巻取帯状型のプレフィルタの部分切断正面図
【図3】吹流し型プレフィルタの濾材の側面図
【図4】前記濾材のヘッド部の正面図
【図5】前記吹流し型プレフィルタの平面図
【図6】箱型フィルタの斜視図
【図7】前記箱型フィルタの部分切断平面図
【図8】従来のガスタービン吸気用フィルタユニットの構成図
【符号の説明】
1 ケーシング
2 パネル型のデミスター
3 プレフィルタ
4 箱型中性能フィルタ
5 箱型高性能フィルタ
6 フィルタユニット

Claims (1)

  1. 防塵用フィルタを複数段設けて成るガスタービン吸気用フィルタユニットにおいて、前記防塵用フィルタのうち、最下流に濾過効率が粒径0.3μmの粒子に対して99.97%の箱型高性能フィルタを備え、前記箱型高性能フィルタの吸気方向の上流側に濾過効率が粒径0.3μmの粒子に対して10〜70%の箱型中性能フィルタを備え、前記箱型中性能フィルタの上流側に吹き流し型のプレフィルタを備えることを特徴とする吸気用フィルタユニット。
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