JP3919095B2 - マイクロハンド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオテクノロジー、医学、半導体集積回路の製造・検査など微細操作が必要な産業分野に利用でき、特に微小対象物の位置決め、移送、切断、接合などの微細操作を正確かつ容易に行い、あるいは精密位置決めを行う試料台機構などへの利用に適したマイクロハンドに関する。
【0002】
【従来の技術】
顕微鏡下の微細作業に適したマイクロマニピュレータとして1本の指片で微細操作を行う場合、例えば、特開平10−138177号公報に記載された3自由度マイクロマニピュレータがある。
【0003】
この従来技術は、顕微鏡下の微細作業では、互いに直交する3軸方向の並進3自由度の動作が主たる動作になるという点に着目して開発された3自由度マイクロマニピュレータであり、ベース部材とエンドエフェクタを結ぶ3つのリンク機構により、エンドエフェクタの3自由度の精密位置決め制御を実現するものである。
【0004】
また、リンク機構については、回転対偶,並進対偶を組み合わせて(Rは回転対偶、Pは並進対偶)、RRPP機構、RPRP機構、PRPR機構、RPPR機構などの4自由度のリンク機構を3つパラレルに配置することにより、エンドエフェクタに3自由度の動作を行なわせるようにし、また、回転対偶のヒンジ部や並進対偶の連結杆部の両端を薄肉形成して、回転対偶や並進対偶を可能にしている。
【0005】
この従来技術は、ヒンジ部等にボールジョイントなどを必要とせず、部品ひいては機構の簡略化を図り得る利点がある。ただし、マイクロマニピュレータのリンク機構を構成する柔軟構造物を、どのように製作して安価で且つ小形化を図れるかとか、その材質、および、駆動させる機構としてのアクチュエータ配設の具体的提案はされていない。
【0006】
本発明者らは、先に、特開平8−132363号(特許番号第2560262号)等において、小型で指の機能を果たす箸状の2本の指片(手先片)を備えたマイクロハンド機構(マニピュレータ)を提案している。この箸状の指片を備えたマイクロハンド機構は、光学顕微鏡下では数μm程度の微小物体を把持、持ち上げ、回転、移動、開放することを実現している。
【0007】
この従来技術は、6自由度の運動を制御する上部パラレルリンク機構と下部パラレルリンク機構とを2段に重ねて配置する。上部パラレルリンク機構は、2つの指片(第1指片、第2指片)のうちの一方を可動させて指片同士に微小な相対運動を生成させるものである。下部パラレルリンク機構は、第1指片と第2指片とを広い作業空間にある対象物に対して位置決めを行うものである。上部パラレルリンク機構は、それぞれの指片を有する2つのエンドエフェクタ(基体、支柱)を備える。このうち、一方のエンドエフェクタ(支柱)は他方のエンドエフェクタ(基体)に貫通状態で配置され、かつ中間ベースに固定されている。他方のエンドエフェクタ(基体)は、針先(指先)合わせ機構を有しかつ6本のリンク機構を介して中間ベースに接続される。各リンクには、ピエゾ圧電素子が組み込まれている。このピエゾ圧電素子により各リンクを伸縮可能とし、一方のエンドエフェクタ(基体)を微小変位させて、指片に箸的動作を行わせるものである。6本の各リンクに使用するピエゾ圧電素子は、1本指機構が三つであるのに対して、2本指機構では4倍の12になっている。
【0008】
ピエゾ圧電素子の数が多くなると制御するシステムが複雑になりコスト高となるので、さらに本発明者らは、特願2000−388700号において並進3自由度型の2本指マイクロハンド機構(マニピュレータ)を提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微小対象物を掴んで微細作業を正確にかつ容易に行うことができる、あるいは精密位置決めステージ機構などに適用して簡単で高精度な位置決めを行い得る2本指のマイクロハンド機構を提供することにある。特に、エンドエフェクタ、リンク機構、ベース部材の集約化を図ることで、今までにはない、小形にして高精度の機能を発揮できるマイクロハンドを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、基本的には、次のように構成する。
(1)マイクロハンドは、それぞれ指片を有する一対の端部(エンドエフェクタ)を備える。一方のエンドエフェクタは、他方のエンドエフェクタの内側に貫通状態で配置される。前記エンドエフェクタのうち少なくとも一つが3つのリンク機構を介して柱状のベースに連結される。前記3つのリンク機構は、板金加工或いはエッチング加工により一体成形され且つ変位が微小である場合に回転対偶と並進対偶とを備えるとみなせる板状のリンク機構である。3つのリンク機構の中央(頂部)が対応のエンドエフェクタの下面と結合し、エンドエフェクタ中心から三方に広がり途中から先端までが前記ベースの外側面に沿って延びる形状をなす。前記柱状のベースには、板状アームがベース上面の中心から前記リンク機構の方角に広がり且つ途中から先端までが前記ベースの外周に沿ってベース軸方向に延びる形状をなす。この板状アームは、前記リンク機構と結合或いは一体成形されている。前記ベースには前記各板状アームに力を与えて前記リンク機構を作動させるアクチュエータが配設されている。
(2)上記した両方のエンドエフェクタ(第1、第2のエンドエフェクタ)をそれぞれ3つのリンク機構により作動させる場合には、いずれも上記した板金加工或いはエッチング加工した板状成形体によるリンク機構を用い、しかも、第1、第2のエンドエフェクタを、それぞれのリンク機構を介して共通のベースに連結する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施例に係るマイクロハンド機構の斜視図、図2は、その分解斜視図、図3は第1実施例の一部省略縦断面図である。
【0013】
図1に示すマイクロハンド1は、単数或いは複数或いは他の形態のマイクロハンド(マニピュレータ要素)と組み合わせて使用されるものである。単数で使用する場合でも、以下に述べる構成によって、指片となるニードル4とニードル5が箸的な動作を行うことができ、微小対象物を微細動作で摘んだり移送することができる。
【0014】
マイクロハンド1は、図2により容易に理解されるように、柱状のベース2と、ニードル4を有する第1のエンドエフェクタ(例えば円柱体)3と、ニードル5を有する第2のエンドエフェクタ(環状体)14と、1組の3つのリンク機構6と、もう1組の3つのリンク機構7と、前記リンク機構6、7の一部となる6本の板状アーム8とを備える。
【0015】
エンドエフェクタ14は、内側にエンドエフェクタ3を貫通した状態で配置させるための穴140を有している。
【0016】
リンク機構6は、エンドエフェクタ3の下面にねじ止めされ、リンク機構7はエンドエフェクタ14の下面にねじ止めされる。板状アーム8はベース2の上面にねじ止めされる。
【0017】
図5にリンク機構6単品の斜視図を、図8にその一部を省略した(3つのリンク機構のうち2つを省略した)展開図を示す。図6にリンク機構7単品の斜視図を、図9にその一部を省略した(3つのリンク機構のうち2つを省略した)展開図を示す。図10に板状アーム8単品の一部を省略した展開図を示す。
【0018】
リンク機構6、7及び板状アーム8は、可撓性を有する薄板(例えば燐青銅などのばね材)を成形加工している。
【0019】
3つのリンク機構6は、一体成形され、図5に示すように頂部(可動プレート部)6aの中央部60から120度間隔で三方に広がり、途中から先端にかけた部分6bは、図5に示すように折曲げ角θが90度より幾分大きい角度で折り曲げられ、組立時にはベース2の外側面に沿った形となる(図1、図3)。この3つのリンク機構6の頂部中心にねじ穴61が設けられている。3つのリンク機構6は、ねじ穴61及びエンドエフェクタ3の下面中央に設けたねじ穴42(図3に示す)を介してねじ42を締め付けることで、エンドエフェクタ3の下面に取り付けられる。
【0020】
一方、もう1組の3つのリンク機構7は、一体成形され、図6に示すように、頂部(可動プレート部)7aの中央部70から120度間隔で三方に広がり、途中から先端にかけた部分7bは、上記同様に折曲げ角θが90度より幾分大きい角度で折り曲げられ、組立時にはベース2の外側面に沿った形となる(図1、図3)。この3つのリンク機構7の頂部中央70には、中心にエフェクタ3を貫通させるための穴71が設けられている。また、リンク機構7は、貫通穴71の近傍に取付け用のねじ穴72が配設され、ねじ穴72及びエンドエフェクタ14の下面中央に設けたねじ穴40(図3に示す)を介してねじ41を締め付けることで、3つのリンク機構7がエンドエフェクタ14の下面に取り付けられる。
【0021】
6本の板状アーム8は、一体成形され、図2に示すように、頂部(可動プレート部)8aの中央部80から60度間隔で6方に広がり、途中から先端にかけた部分8bは、折曲げ角θが90度より幾分大きい角度で折り曲げられ、組立時にはベース2の外側面に沿った形となる(図1、図3)。板状アーム8の頂部中心にねじ穴81が設けられている。6本の板状アーム8は、ねじ穴81及びベース2の上面中央に設けたねじ穴82を介してねじ83を締め付けることで、ベース2の上面に取り付けられる。
【0022】
マイクロハンド組立状態では、板状のリンク機構6、7の内側に板状アーム8が位置する。リンク機構6、7の一部(ベース2の外側面に沿った部分)6b、7bの内側に板状アーム8の一部8bが重ね合わせられる。そして、リンク機構6,7の先端に設けたねじ穴65、75と、板状アーム8の先端に設けたねじ穴85とにねじ90を通すことで、リンク機構6、7のそれぞれが板状アーム8と末端位置で結合される。なお、リンク機構6、7と板状アーム8を一体成形してもよい。
【0023】
この場合、リンク機構(上板)6と板状アーム(下板)8とは120°間隔で、リンク機構(上板)7と板状アーム(下板)8とは120°間隔で、かつリンク機構(上板)6と7とは60°角度がずれた状態で、各リンク機構6及び7が板状アーム8に結合している。
【0024】
このようにして、エンドエフェクタ3、14は、リンク機構6、7及び板状アーム8を介してベース2の上面に連結される。また、リンク機構6,7は、それぞれ3つのリンク機構の上半分になり、板状アーム8が3つのリンク機構の下半分になる。
【0025】
3つのリンク機構6、7は、いずれも回転対偶Rと並進対偶Pとを組み合わせた4自由度リンク機構で構成されており、このようにすることにより、それぞれのエンドエフェクタ3、14には並進3自由度の動作を与えるようにしてある。
【0026】
3つのリンク機構6、7は、展開状態では図8、図9に示すような3方に展開する形状を呈しているが、組立状態では、その中間位置6dでほぼ直角(90度よりやや大きい角度)に折り曲げられる。また、6つの板状アーム8は、展開状態では図10に示すような6方に展開する形状を呈している。組立状態では、その中間位置18dで上記同様にほぼ直角に折り曲げられる。
【0027】
板状アーム8については、図7に示すように、120度間隔で3本のアームを一体成形し、これを2組用いて、組同士を60度ずらして前記ベース2の上端面に取り付けてもよい。
【0028】
ここで、リンク機構6,7に形成される回転対偶Rと並進対偶Pの原理について、図12および図13を用いて説明する。
【0029】
図12(a)に示すように、一対の対偶部材19の間を薄肉部(くびれ部)23で連結することにより回転対偶Rを実現することができる。すなわち、図12(a)で示す円弧ヒンジは、変位が微小であれば、1自由度の回転対偶Rとみなすことができる。
【0030】
また、図12(b)に示すように、一対の平行な対偶部材(上下辺)20の両端を一対の連結杆部(左右辺)21によりそれぞれの薄肉部(くびれ部)22を介して連結すると、並進対偶Pを実現する柔軟構造物(平行四辺形リンク)を形成することができる。すなわち、図12(b)のような構造物は、変位が大きければ底辺のヒンジ(薄肉部)22を中心とした円軌道を描くが、微小変位内では1自由度の並進対偶Pとみなすことができる。
【0031】
3つのリンク機構を使用して3自由度のパラレルメカニズムを設計する際、これらの対偶R,Pを組み合わせることで並進3自由度動作を実現することができる。しかし、ヒンジの向きが最低でも2方向必要とされ、機構製作にあたっては、加工が困難となる。
【0032】
ここで、図13(a)に示すように薄板24にスリット25を打ち抜くことで、スリット25の両脇にヒンジ(幅狭部)23が形成され、容易に回転対偶Rを構成できる。また、図13(b)に示すように、1枚の薄板24に打ち抜きと曲げ加工を組み合わせることで、ヒンジ(くびれ部)22の向きを変更させ、容易に図12(b)に相当する並進対偶Pを実現させることができる。図13(b)においては、角孔30(コーナーに切り込みスリット28が付いたもの)と小スリット29(スリット28と幅方向に並んでいる)を打ち抜き加工し、及び側板部27を曲げ加工することにより、くびれ部22を形成しまたその向きを変えることができる。また、一対の側板部27は、一対の対偶26(図12の一対の対偶20に相当する)を連結する連結杆部(図12の連結杆部21に相当する)となるものである。
【0033】
本実施例では、図13(a)(b)に示すリンク要素(回転対偶R、並進対偶P)を組み合わせてリンク機構6、7を構成するものである。
【0034】
図2、図5〜図9に示すように、リンク機構6,7の各リンクアーム部6b,7bは、その長手方向の両端に幅方向のスリット100,101を形成し、符号6dで示す位置で折り曲げられる。これらのスリットにより実質、板幅の減らされた個所100´,101´がヒンジ部となって、計3個所の回転対偶R(図13(a)に相当するもの)が形成される。
【0035】
なお、スリットの形態は種々考えられ、実施例のものに限定されるものではない。
【0036】
板状アーム8では、図10に示すように6方に向けられた板状の各アーム部8′の長手方向の片端に幅方向のスリット18を形成し、各アーム部8´は8dで示す位置で折り曲げ形成される。
【0037】
リンク機構6と7では、リンクアーム部6b、7bの先端と折曲部(中間部)6d、7dとの間に、角穴10(角穴10はコーナーに幅方向に延びる切り欠きスリット10′が付いている)とスリット11とを形成する。切り欠き10′とスリット11は、図13(b)の符号28,29で示すスリットに相当し、スリット10′,スリット11間にヒンジ22が形成される。
【0038】
リンク機構6,7における、各リンクアーム部6b、7bの幅方向の左右には側板部12が形成される。この側板部12は、図8、図9の破線Hの位置で折り曲げられ、図12(b)の連結杆部27に相当するものである。切り欠きスリット10′は、折り曲げ線Hと交差するように延設されている。この側板部12の折り曲げによりヒンジ部22の向きを変えることができる。
【0039】
符号の13は、図13(b)の一対の対偶26に相当するものである。すなわち、一対の側板部(連結杆部)12および一対の対偶13により平行四辺形リンクを構成する。平行四辺形リンクは、微小変位内でみれば並進対偶Pとみなすことができる。
【0040】
上記構成により、各リンク機構6、7は、可撓性のある板材を成形加工して、三つの回転対偶Rと一つの並進対偶Pとを有することになる。図11には、本実施例に係る回転対偶Rと並進対偶Pとを組み合わせた模式図を示し、図11(a)が本実施例におけるリンク機構を側面からみた対偶メカニズム、図11(b)が正面からみた対偶メカニズムである。
【0041】
図2に示すように本実施例では、各リンク機構6,7が3つのRPRR機構を採用する。この機構を板状アーム(下板)8を介してピエゾ圧電素子90(図3)により押し上げることで、3つのリンク機構6,7の頂部(可動プレート)6a,7aに3軸3自由度の運動を与えることができる。
【0042】
次に本実施例の駆動機構を図8により説明する。
【0043】
図3に示すように、マイクロハンドの駆動源となるアクチェータ90は、例えばピエゾ圧電素子が用いられる。ピエゾ圧電素子90は、リンク機構6、7の数に合わせて6個用意される。ベース(筒体)2には、軸周りに60ー間隔でピエゾ圧電素子90が配設されている。
【0044】
すなわち、図2、図4に示すように、ベース2の外周面には各リンク機構6、7(リンクアーム6b、7b)の位置に対応して、アクチュエータの取付溝2aがベース上端から下端にかけて6本形成され、この溝2aにピエゾ圧電素子90が装着される。
【0045】
また、図4に示すように溝2aと併せて溝2aの奥の面とベース上面にかけてピエゾ圧電素子90のリード線引出し溝2cが形成されている。
【0046】
ピエゾ圧電素子90は、図3に示すように、その一端(上端)がベース上面に臨み、板状アーム8の頂部(可動プレート)8aの裏面に接触している。ピエゾ圧電素子90の他端(下端)は、底板2aに受け止められ、かつ、底板2aに設けたねじ31によりピエゾ圧電素子90に予圧が掛けられている。このようにして、圧電素子90の上端と板状アーム8の頂部8a裏面との接触面に、隙間を生じさせないような構造になっている。なお、ねじ31は粗動の針先合わせを行う目的としても使用する。
【0047】
すなわち、ニードル4とニードル5の針先の間隔を支持具36と移動台38で目測で合わせた後、次に光学顕微鏡下においてねじ31を回転させて粗動の位置合わせを行う。
【0048】
各組の3つリンク機構6、7に対応するそれぞれの3本のピエゾ圧電素子90を伸縮させたり、その伸縮度合いを制御信号に応じて個別に変化させることにより、板状アーム8の受け面Aを押して各対偶を駆動させることができるようになっている。
【0049】
本実施例のマイクロハンド1において、図11のRPRR機構を構成する3つ(1組)のリンク機構6は、ベース2とエンドエフェクタ3との間において、中心軸線の周りに120ーの間隔で対称型に配置される。もう1組のリンク機構(3つのリンク機構)7は、ベース2とエンドエフェクタ14との間において、中心軸線の周りに120ーの間隔で対称型に配置される。すなわち、計6個のリンク機構は、ベース2からみると中心線軸の周りに60°の間隔で対称型に配置される。
ピエゾ圧電素子61は、例えば積層型のものが使用される。
【0050】
符号の32,32′は、アクチュエータ90に電圧を供給するリード線である。アクチュエータ90として用いるピエゾ圧電素子は、応答が速く、微小変位と高出力が得られるものの、ヒステリシスが非常に大きく、駆動電圧のみによるオープンループ制御では、正確な位置決めを行うことが困難である。このため、変位量を測定してフィードバック制御することが望ましく、この場合には、特に、コンパクトな変位測定手段とサーボ駆動系が要求される。
【0051】
このような変位測定手段としては、アクチュエータ90の伸縮方向に歪みゲージを直接貼り付けて(図示は省略してある)、それら圧電素子のサーボ系としては、符号33に示すように計算機を用いたソフトウエアサーボや演算増幅器を用いたアナログサーボ等を採用することができる。
【0052】
サーボ系制御回路33の指令信号はリード線32、32′を介してアクチュエータ(圧電素子)90に送られる。
【0053】
リンク機構6,7に対応する各組の3つのアクチュエータ90を駆動制御して、リンク機構6、7との接触部である板状アーム8の受け面Aを押し、エンドエフェクタ3、4のいずれか一方或いは双方を必要に応じて所定量動作させることで、ニードル(指片4,5)を微細操作する。
【0054】
この場合、板状アーム8をアクチュエータ90により押し上げると、板状アーム8のてこ的な動作により該当のリンク機構6や7のリンクアーム6b(7b)が外開き動作を行う。
【0055】
マイクロハンドの微細操作は、歪ゲージからの各アクチュエータ90の変位量を検出し、この変位量からサーボ制御回路33がニードル(指片)4、5の現位置を算出し、これをフィードバックして所定の位置決め指令値と比較し、その偏差量がなくなるまでアクチュエータ90をサーボ駆動することにより行う。
【0056】
本実施例におけるマイクロハンドは、ニードル4,5のうちいずれか一方(例えばニードル5)のみを人指し指片的な動作を与えて、もう一方は親指的動作を与えて箸動作を実現させることができる。この場合には、ニードル5は回転(ひねり)、開閉、進退の微細動作が与えられ、ニードル4については進退の微細動作が主に与えられる。
【0057】
また、簡易な箸的動作を行う場合には、2組のリンク機構6,7のうち、一方の組のリンク機構だけをアクチュエータ90により駆動させるようにしてもよい。図14にその変形例(第2実施例)を示す。図14の符号において、既述した実施例と同一符号は同一或いは共通する構成要素を示す。
【0058】
図14の実施例では、1組(一方)の3つのリンク機構(例えばエンドエフェクタ14側のリンク機構7)のみを用いてエンドエフェクタ14のみを並進3自由度動作させるようにしたものである。エンドエフェクタ3については、ベース2の上面に固定する構造とした。エンドエフェクタ14の上面には、図示省略してあるが、図1に示すようなニードル5及び針合わせ調整機構36、37を有している。板状アーム8は、120度間隔で軸周りに3本配設したものを一体成形したものである。板状アーム8の頂部にはエンドエフェクタ3の貫通穴200が形成され、その周囲に板状アーム8をベース2上面に固着するためのねじ穴(図示省略)が配設されている。
【0059】
3つのリンク機構7と板状アーム8との結合態様は先に述べた実施例と同様の構成であるが、リンク機構7と板状アーム8をプレスにより一体成形することも可能である。
【0060】
本実施例においても、ニードル4,5を用いて微細な箸的動作を行うマイクロハンドを実現させることができる。
【0061】
なお、図1に示す3自由度のマイクロハンドは、一対(2本指)で構成したり、或いはその任意数を用いて、微小対象物の位置決め、ハンドリング、切断、接合などの微細作業に適用し、あるいは精密位置決めステージ機構などに利用することができる。
【0062】
本実施例によれば、マイクロハンドのリンク機構を、薄板を簡単なプレス打ち抜き及び曲げ加工により製作できるので、加工が容易である。したがって、製作コストを安価にすることができる。
【0063】
しかも、2つのエンドエフェクタは、中心を共有して内側と外側に配置することができ、且つ、エンドエフェクタとベースとを接続するリンク機構は、大部分がエンドエフェクタ下面に沿った部分と、ベースの外側面に沿った部分と、ベース上面に沿った部分とで構成できるので、部品の集約化を図り、従来のようにリンク機構の大部分がベース面上から上方に構築される構成を採用することがないので、高性能のマイクロハンドを小形化して実現することができる。
【0064】
また、作業領域の拡大を図る場合、小形化を維持して実現する方法としてリンク機構のテコ比を拡大する際、リンクアームを水平に広げずベースの外周で折り曲げ、かつ外周面に沿って延びる形状とすることで可能となる。
【0065】
したがって、本実施例によれば、小形化を維持しつつ作業領域の拡大を図ることで、顕微鏡などに容易に設置できるマイクロハンド機構を提供することができる。
【0066】
なお、本実施例では、アクチュエータ90をピエゾ圧電素子としたが、これに限定されるものではなく、その他にバイモルフ型の圧電素子などを用いることも可能である。例えば、リンクアーム6b、7bにバイモルフ型の圧電素子を張り付けてリンクを押し上げることでも動作可能である。
【0067】
図15は、本発明の第3実施例に係るマイクロハンドを示す斜視図である。
【0068】
本実施例は、マイクロハンドのモジュールを2段以上直列に接続する例である。ここでは、ハンドモジュール110と111とを2段直列に接続している。
【0069】
ハンドモジュール110の構成は、図1に示すマイクロハンド1の構造と同一であるので、その説明を省略する。本実施例では、ハンドモジュール110のベース2に、さらに中間可動要素(中間エフェクタ)14′が結合し、この中間エフェクタ14′が前記同様の1組(3つ)のリンク機構7′及び板状アーム8を介して次のベース2′に連結されている。このようにすることで、直列に複数のハンドモジュールを結合することができる。
【0070】
ハンドモジュール110は、指操作を行う手として機能し、次の段のハンドモジュール111は手首として機能し、さらにハンドモジュールを追加していけば肘的な機能もなすことができ、作業領域を拡大することができる。
【0071】
下部のハンドモジュール111のベース2′には溝51が設けられ、この溝に工具を通して図3のねじ31を廻し指片であるニードル4,5の粗動の先端合わせが行えるようになっている。
【0072】
図16及び図17は、本発明の第4実施例に係るマイクロハンドの上面図及びその部分正面図である。
【0073】
本実施例においても、その基本的構成は前述した実施例と同様であり、さらに次のような構造を付加した。
【0074】
一対のエンドエフェクタ3,14のうち、外側に位置するエンドエフェクタ14の一面に、複数のねじ式つまみ171を介して、傾きとその方向を任意に調整できる可動調整板172を取り付けた。
【0075】
具体的には、エンドエフェクタ14に120間隔で雄ねじ173を配設し、この雄ねじ173に環状の可動調整板172をスプリング174により支持されるようにして嵌合し、さらに各雄ねじ173に可動調整板171を押えるねじ式つまみ(雌ねじ)171を取付けた。このように構成すれば、各ねじ式つまみの操作量(移動量)により可動調整板172の傾きとその方向を任意に調整できる。
【0076】
可動調整板172には、針先合わせ機構36,37を介してニードル5が取付けられている。
【0077】
本実施例によれば、可動調整板172によってもニードル4,5の針先合わせを可能にする。
【0078】
なお、上記した各実施例の場合には、リンク機構6、7の製作については、プレスによる打ち抜き,折り曲げ加工のほかに、半導体を微細加工するエッチング(例えばフォトエッチング)技術を導入することも可能である。この場合には、リンク機構の材質はシリコンなどで構成される。
【0079】
本実施例の2本指機構の3自由度マイクロハンドによれば、微細作業では並進3自由度が主たる動作になるという特性を有効に利用し、3つのリンク機構でエンドエフェクタの3自由度の精密位置決め制御及び微小物体の把持、持ち上げ、回転、移動、開放を実現することができる。マイクロマシンの組立等の実現を図ることもできる。さらには、回転ジョイント、直動ジョイントの微小変位機構としても応用することができる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、エンドエフェクタ、リンク機構、ベース部材の集約化を図ることで、小形、低コストにして高精度の機能を発揮できるマイクロハンドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るマイクロハンドの斜視図。
【図2】上記マイクロハンドの分解斜視図。
【図3】上記マイクロハンドの一部を省略した縦断面図。
【図4】上記マイクロハンドに用いるベースの斜視図。
【図5】上記マイクロハンドに用いる第1のリンク機構の斜視図。
【図6】上記マイクロハンドに用いる第2のリンク機構の斜視図。
【図7】上記マイクロハンドに用いる板状アームの変形例を示す斜視図。
【図8】上記第1のリンク機構の一部省略展開図。
【図9】上記第2のリンク機構の一部省略展開図。
【図10】上記板状アームの一部省略展開図。
【図11】上記リンク機構の動作原理を示す説明図。
【図12】回転対偶Rと並進対偶Pとの要素を示す原理図。
【図13】本実施例に応用される回転対偶Rと並進対偶Pとの要素を示す原理図。
【図14】本発明の第2実施例に係るマイクロハンドの一部省略断面図。
【図15】本発明の第3実施例に係るマイクロハンドの斜視図。
【図16】本発明の第4実施例に係る上面図。
【図17】本発明の第4実施例に係る一部正面図。
【符号の説明】
1…マイクロマニピュレータ、2…ベース、3…エンドエフェクタ、4,5…指片(ニードル)、6、7…リンク機構、8…板状アーム、90…アクチュエータ。

Claims (10)

  1. それぞれ指片を有するマイクロハンドの一対の端部(以下、「エンドエフェクタ」と称する)を備え、一方のエンドエフェクタが他方のエンドエフェクタの内側に貫通状態で配置され、前記エンドエフェクタのうち少なくとも一つが3つのリンク機構を介して柱状のベースに連結され、
    前記3つのリンク機構は、板金加工或いはエッチング加工により一体成形され且つ変位が微小である場合に回転対偶と並進対偶とを備えるとみなせる板状のリンク機構であり、その頂部が対応のエンドエフェクタの下面と結合し、エンドエフェクタ中心から三方に広がり途中から先端までが前記ベースの外側面に沿って延びる形状をなし、
    前記柱状のベースには、板状アームがベース上面の中心から前記リンク機構の方角に広がり且つ途中から先端までが前記ベースの外周に沿ってベース軸方向に延びる形状をなし、この板状アームは、前記リンク機構と結合或いは一体成形されており、前記ベースには、前記各板状アームに力を与えて前記リンク機構を作動させるアクチュエータが配設されていることを特徴とするマイクロハンド。
  2. 記リンク機構は、可撓性を有するプレートに少なくとも曲げ加工と打ち抜き加工、或いはエッチング加工を施すことにより回転対偶と並進対偶を形成してなる板状のリンク機構である請求項1記載のマイクロハンド
  3. 記アクチュエータはピエゾ圧電素子よりなり、このピエゾ圧電素子が前記柱状ブロックに組み込まれている請求項1又は2記載のマイクロハンド。
  4. 前記一対のエンドエフェクタは、いずれも前記3つのリンク機構及び前記板状アームを介して共通のベースに連結され、前記板状アームは、前記リンク機構の合計数と配置に対応して60度間隔配置で計6本よりなり、これらの板状アームを一体成形して前記ベースの一端面に一括して取り付けられている請求項1記載のマイクロハンド。
  5. 前記一対のエンドエフェクタは、いずれも前記3つのリンク機構及び前記板状アームを介して共通のベースに接続され、前記板状アームは、前記リンク機構の合計数と配置に対応して120度間隔で3本のアームを一体成形したものが2組用いられ、これらの組同士が60度ずらして前記ベースの一端面に取り付けられている請求項1記載のマイクロハンド。
  6. 前記指片はニードル形状をなし、少なくとも前記エンドエフェクタの一つに指片同士の粗動の針先合わせ操作する第1の針先合わせ機構と、微小の針先合わせ操作する第2の針先合わせ機構とを備えている請求項1又は2記載のマイクロハンド。
  7. 前記ベースは柱状ブロックをなし、さらに前記ベースに中間可動要素(以下、「中間エフェクタ」と称する)が結合し、この中間エフェクタが前記同様の3つのリンク機構及び板状アームを介して次のベースに連結されている請求項1記載のマイクロハンド。
  8. 前記各リンク機構は、可撓性を有する板材を成形加工したものであり、前記エンドエフェクタの軸周り方向に幅を有する板状のリンクアーム部と、前記各リンクアーム部の長手方向の両端と中間の位置とにあって微小変位内であれば回転対偶とみなすことができるヒンジ部と、前記長手方向一端と中間部との間に位置し微小変位内であれば並進対偶とみなすことができるリンク要素と、が形成され、前記回転対偶となるヒンジ部は、前記リンクアーム部の幅方向にスリット或いは薄肉部を設けて形成され、前記並進対偶となるリンク要素は、平行四辺形リンク部により構成されている請求項1又は2記載のマイクロハンド。
  9. 前記アクチュエータは、ピエゾ圧電素子よりなり、このピエゾ圧電素子には予圧が掛けられ、この予圧が指片同士の粗動の針先合わせ操作する第1の針先合わせ機構を兼ねるように構成されている請求項1又は2記載のマイクロハンド。
  10. 前記一対のエンドエフェクタのうち外側に位置するエンドエフェクタの一面に複数のねじ式つまみを介して傾きとその方向を任意に調整できる可動調整板が取り付けられ、この可動調整板に一方の指片が装着されている請求項1又は2記載のマイクロハンド。
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