JP3918373B2 - 座標読取装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、交番磁界発生手段から発生した交番磁界により、座標入力シートに敷設された複数の導線に発生した信号に基づいて上記交番磁界発生手段の位置座標を読み取る座標読取装置に関し、詳しくは、上記交番磁界の出力レベルが低下した場合であっても正確な位置座標を読取ることができる座標読取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記座標読取装置として、たとえば、図16に示すものが知られている(特開平5−165560号公報)。図16は、従来の座標読取装置の構成を示す説明図である。
図16に示す座標読取装置は、X座標を検出するためのX1〜Xmのセンスコイル(導線)およびY座標を検出するためのY1〜Ynのセンスコイル(導線)を有するタブレット(座標入力シート)91と、このタブレット91のセンスコイルを順次走査する走査回路92と、センスコイルに発生する誘導信号を検出して位置座標の演算を行う検出回路90とを備える。
【0003】
そして、交番磁界を発生するコイル101を有するペン(座標入力手段)100がタブレット91に接触すると、ペン100が接触した付近のセンスコイルには、コイル101から発生した交番磁界との磁気結合により誘導信号97が誘起され、その誘導信号97は、検出回路90に入力される。検出回路90に入力された誘導信号97は、増幅器93によって増幅され、検波回路94によって例えば振幅検波される。次にA/D変換回路95は、上記検波された誘導信号の振幅を計測し、その計測値をCPU96に出力する。そして、CPU96は、入力されたデジタル値に基づいてペン100の位置座標を演算する。たとえば、デジタル値と位置座標とを対応付けた位置座標テーブルを参照し、デジタル値に対応する位置座標を選択するという演算手法を用いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の座標読取装置は、位置座標テーブルを構成するデジタル値は予め設定された固定値であるため、ペン100の電池が消耗して交番磁界の出力レベルが低下すると、その出力レベルが低下した交番磁界によってセンスコイルに発生する誘導信号を検出し、その誘導信号の振幅値に対応する位置座標を選択してしまうので、位置座標の読取精度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、座標入力手段から発生する交番磁界の出力レベルが低下した場合であっても、座標入力手段の正確な位置座標を読取ることができる座標読取装置を実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段、作用および発明の効果】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1ないし請求項5に記載の発明では、交番磁界を発生する座標入力手段により座標を入力する座標入力面と、この座標入力面の下方に敷設された複数の導線とを有する座標入力シートと、前記座標入力手段から発生する交番磁界の強度に対応して、前記導線に発生する第1の信号レベルを検出する第1信号レベル検出手段と、この第1信号レベル検出手段により検出された前記第1の信号レベルに基づいて前記座標入力面上の座標入力手段の位置座標を読取る座標読取装置において、
前記交番磁界の強度に対応して、前記複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベルが、略同一となる第2の信号レベルを検出する第2信号レベル検出手段と、前記第1の信号レベルを、前記交番磁界の所定の強度に対応して、前記複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベルが、略同一となった基準信号レベルと、前記第2の信号レベルとの比に基づいて補正する第1信号レベル補正手段と、を備えたという技術的手段を用いる。
【0007】
第2信号レベル検出手段は、座標入力手段から発生する交番磁界の強度に対応して、座標入力面の下方に敷設された複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベルが、略同一となる第2の信号レベルを検出する。
つまり、複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベル差に基づいて座標入力手段の位置座標を検出する手法を用いる座標読取装置にあっては、2つの信号のレベル差が零、つまり同一の値になる位置の座標は2本の導線の中央であり、座標入力手段から出力される交番磁界の大きさに依存しない。
このため、上記条件を満たす出力が得られたとき、該信号の大きさは座標入力手段からの交番磁界の大きさによって決まる。
【0008】
また、第1信号レベル補正手段は、交番磁界の強度に対応して導線に発生する第1の信号レベルを、交番磁界の所定の強度に対応して、複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベルが、略同一となった基準信号レベルと、第2信号レベル検出手段によって検出された第2の信号レベルとの比に基づいて補正する。
つまり、基準信号レベルと第2の信号レベルとの比は、第2の信号レベルが基準信号レベルに対してどのくらい低下しているかを示すため、その比に基づいて第1の信号レベルの低下による位置座標の誤差を補正することにより、交番磁界の強度が低下した場合であっても、座標入力手段の正確な位置座標を読取ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の座標読取装置において、前記第1の信号レベルを記憶する第1信号レベル記憶手段を備え、前記第1信号レベル補正手段は、前記比に基づいて、前記第1信号レベル記憶手段に記憶された第1の信号レベルのうち、前記第2信号レベル検出手段が前記第2の信号レベルを検出する前における前記第1の信号レベルを、遡及して補正するという技術的手段を用いる。
【0010】
第1信号レベル記憶手段は、導線に発生する第1の信号レベルを記憶し、第1信号レベル補正手段は、基準信号レベルと第2の信号レベルとの比に基づいて、第1信号レベル記憶手段に記憶された第1の信号レベルのうち、第2信号レベル検出手段が第2の信号レベルを検出する前における第1の信号レベルを遡及して補正する。
つまり、第2信号レベル検出手段が第2の信号レベルを検出したときまでに第1信号レベル記憶手段に記憶されている第1の信号レベルを遡及して補正することができるため、過去に検出された第1の信号レベルが低下したものであっても正確な位置座標を読取ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の座標読取装置において、前記第1信号レベル補正手段は、前記信号レベルを前記位置座標に変換する変換手段を有し、該変換手段の内容は前記第2信号レベル検出手段により更新され、その更新動作後、所定時間内は前記更新を行わないようにしたタイマ手段を有するという技術的手段を用いる。
【0012】
つまり、多数の座標の入力を行っている場合、頻繁に隣接コイルの中心点を通過するので、第2信号レベル検出手段が動作することになるが、短時間では座標入力手段の交番磁界の大きさは検出座標に誤差を生じさせるほど変化しないので、変換手段の内容が設定されていても以前の内容と変わらないということになる。
【0013】
そこで、一度、第2信号レベル検出手段により第1信号レベル補正手段が有する変換手段の内容を設定したならば、タイマ手段により一定時間は第2信号レベル検出手段が動作しても変換手段の内容を更新し設定しない。そして一定時間が経過した後に、第2信号レベル検出手段が動作したならば前述したように第1信号レベル補正手段が有する変換手段の内容を更新し設定する。
すなわち、頻繁に変換手段の内容を更新設定することによる消費電力の増大を招くことなく、正確な位置座標の読取が可能になる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の座標読取装置において、前記座標入力手段は、その属性を示す属性情報を送信する属性情報送信手段を備え、前記第1信号レベル補正手段は、前記属性情報送信手段により送信された属性情報を認識するとともに、その認識された属性情報に基づいて前記第1の信号レベルを補正するという技術的手段を用いる。
【0015】
座標入力手段に備えられた属性情報送信手段は、座標入力手段の属性を示す属性情報を送信し、第1信号レベル補正手段は、属性情報送信手段により送信された属性情報を認識するとともに、その認識された属性情報に基づいて第1の信号レベルを補正する。
つまり、座標入力手段の属性には、たとえば後述する発明の実施の形態に記載するように、黒、赤、青など、使用するインクの色や、太字、細字など、ペン先の太さなどがある。そして、それらの属性の異なるペンを複数使用して筆記する場合、ペンごとに電池の消耗状態が異なる場合がある。たとえば、黒色のペンの使用頻度が最も高く、青色のペンの使用頻度が最も低い場合、黒色のペンの電池の消耗が最も早い。このような場合に、最も電圧が低下している黒色のペンによって筆記しているときに求めた比を青色のペンによって筆記しているときに検出される第1の信号レベルの補正に用いると、正確な補正を行うことができない可能性がある。
そこで、座標入力手段の属性に基づいて第1の信号レベルを補正するようにすれば、座標入力手段の属性が変わった場合であっても正確な補正を行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の座標読取装置において、前記第2の信号レベルが所定の値以下となった場合には、そのことを報知する報知手段を備えたという技術的手段を用いる。
【0017】
つまり、たとえば後述する発明の実施の形態に記載するように、座標入力手段たるペンに内蔵された電池が消耗すると、第2の信号レベルが低下するため、第2の信号レベルが所定の値以下となった場合に、電子黒板に備えられた電池切れ報知用LEDを点灯させたり、スピーカにより警告音を再生したりすることにより、電池切れを報知することができる。
なお、上記座標入力シートには、可撓性を有していないシート状または板状のもの、あるいは可撓性を有するシート状または板状のものを含む。
【0018】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、この発明に係る座標読取装置の第1実施形態について図を参照して説明する。
なお、以下に述べる各実施形態では、この発明に係る座標読取装置として、座標入力シート上に描かれる手書き文字や図形などを電気的に読み取る、いわゆる電子黒板を例に挙げて説明する。
[主要構成]
最初に、第1実施形態に係る電子黒板の主要構成について図1および図2を参照して説明する。
図1は、電子黒板の主要構成を示す外観斜視説明図であり、図2は、図1に示す電子黒板にパーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する)およびプリンタを接続した状態を示す説明図である。
【0019】
電子黒板1には、筆記パネル10と、筆記面21aに筆記を行うためのペン60と、筆記された軌跡およびその軌跡を示すデータを消去するためのイレーサ40とが備えられている。筆記パネル10には、枠状のフレーム11が備えられており、そのフレーム11には、筆記パネル本体20が組み込まれている。フレーム11の前面下端には、その下端に沿って板状の台12が前面に張り出す形で取り付けられている。台12の上面には、ペン60を収容するための断面半円形状の凹部12aが形成されており、その凹部12aの右側には、イレーサ40などを置くための平面部12bが形成されている。
【0020】
フレーム11の前面右側には、操作部30が設けられている。操作部30には、操作音や警告音などの音を再生するスピーカ31と、筆記面21aに筆記された内容を示すデータ(以下、筆記データと略称する)を記憶したページ数を7セグメントのLEDによって表示するページ数表示LED32と、押すごとに1ページずつ戻るページ戻りボタン33と、押すごとに1ページずつ送るページ送りボタン34と、記憶されている筆記データを押すごとに1ページずつ消去する消去ボタン35と、記憶されている筆記データをプリンタ200(図2)へ出力するために押すプリンタ出力ボタン36と、記憶されている筆記データをPC100(図2)へ出力するために押すPC出力ボタン37と、ペン60の電池切れを報知する電池切れ報知用LED39と、この電子黒板1を起動あるいは停止するために押す電源ボタン38とが設けられている。
【0021】
フレーム11の前面下部には、この電子黒板1の電源となる単2乾電池14aを4本収容するバッテリケース14が設けられており、そのバッテリケース14の前面には、蓋14bが開閉可能に取付けられている。バッテリケース14の右側には、スピーカ31のボリュームを調節するボリューム調節つまみ13cが設けられており、その右側には、コネクタ13b、13aが設けられている。図2に示すように、コネクタ13bには、プリンタ200と接続された接続ケーブル201のプラグ202が接続され、コネクタ13aには、PC100と接続された接続ケーブル101のプラグ102が接続される。
つまり、電子黒板1の筆記面21aに筆記された内容を示す筆記データをPC100へ出力し、PC100に備えられたモニタ103により、電子黒板1に筆記された内容を見ることができる。また、筆記データをプリンタ200へ出力し、電子黒板1に筆記された内容を印刷用紙203に印刷することもできる。
【0022】
また、フレーム11の裏面上端の両端部には、この電子黒板1を壁に掛けるための金具15、15が取付けられている。
この第1実施形態では、筆記面21aの高さH1は900mmであり、幅W1は600mmである。また、フレーム11および台12は、ポリプロピレンなどの合成樹脂により軽量に形成されており、電子黒板1の総重量は10kg以下である。
【0023】
[ネットワークの構成]
次に、電子黒板1と他の電子黒板1との間でデータの通信を行う場合のネットワークの構成について、それをブロックで示す図3を参照して説明する。
なお、ここでは、企業内において電子黒板1を備えた複数の部屋間、あるいは、企業間で通信を行う場合を例に挙げて説明する。
企業2内の部屋3には、電子黒板1と、この電子黒板1と接続されたPC100と、このPC100と接続されたLANボード103とが備えられており、部屋4には、電子黒板1と、この電子黒板1と接続されたPC100と、このPC100と接続されたモデム108とが備えられている。各部屋3に備えられたLANボード103は、LANケーブル104によりHUB105に接続されている。また、HUB105は、サーバ106に接続されており、サーバ106は、インターネット300を介して他の企業5に接続可能になっている。また、部屋4に備えられたモデム108は、電話回線109から公衆通信交換網301を介して他の企業5に接続可能になっている。
なお、図示しないが、他の企業5内には、企業2内と同様に、PCを介して通信可能な電子黒板1が備えられている。
【0024】
ここで、上記ネットワークにおけるデータの流れについて説明する。
ある部屋3に備えられた電子黒板1に記憶された筆記データは、PC100からLANボード103およびHUB105を介して指定された部屋3のPC100へ送信される。そして、そのデータを受信した者は、PC100に備えられたモニタ103に受信データを表示することにより(図2)、あるいは、受信データをPC100に接続されたプリンタ200により用紙203に印刷することにより(図2)、受信データの内容を見ることができる。
また、筆記データを、たとえばTIFF(Tag Image File Format)形式で電子メールに画像ファイルとして添付し、サーバ106からインターネット300を介して他の企業5へ送信することもできる。これにより、他の企業5は、企業2から送信された電子メールに添付されている画像ファイルをデコードすることにより、筆記データの内容を見ることができる。
【0025】
[筆記パネル本体20の構造]
次に、筆記パネル本体20の構造について図4を参照して説明する。
図4は、筆記パネル本体20の各構成部材を示す説明図である。
筆記パネル本体20は、筆記面21aを有する筆記シート21と、板状のパネル22と、センスコイル23が敷設された枠形状の取付パネル24と、板状のバックパネル25とを順に積層した構造である。
この実施形態では、筆記シート21は、貼り合わされたPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムにより厚さ0.1mmに形成されており、パネル22は、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)などにより厚さ3.0mmに形成されている。また、取付パネル24は、発泡スチロールなどの発泡樹脂製材料により厚さ40mmに形成されており、バックパネル25は、アルミニウムなどの導電性材料により厚さ1.0mmに形成されている。さらに、筆記パネル本体20の各端部を挾持するフレーム11の全体の厚さは50mmである。
【0026】
[センスコイル23の構成]
次に、センスコイル23の構成について図5を参照して説明する。
図5(A)は、図4に示すセンスコイル23の構成を一部を省略して示す説明図であり、図5(B)は、図5(A)に示すセンスコイル23の幅および重ねピッチを示す説明図である。
なお、以下の説明では、センスコイル23のうちX軸方向に配列されたセンスコイルをXコイルと称し、Y軸方向に配列されたセンスコイルをYコイルと称する。
図5(A)に示すように、X軸方向には、ペン60およびイレーサ40の(X,Y)座標のX座標を検出するためのX1〜XmのXコイルがm本配置されており、Y軸方向には、Y座標を検出するためのY1〜YnのYコイルがXコイルと直交してn本配置されている。XコイルおよびYコイルは、それぞれ略矩形状に形成されており、矩形部分の長辺の長さはそれぞれP2X,P2Yである。
【0027】
図5(B)に示すように、Xコイルは、それぞれ幅(矩形部分の短辺の長さ)P1に形成されており、隣接するXコイルは、P1/2のピッチでそれぞれ重ねられている。各Yコイルもそれぞれ幅P1に形成されており、隣接するYコイルは、P1/2のピッチでそれぞれ重ねられている。また、Xコイルの各端子23aは、Xコイル切替え回路50aに接続されており、Yコイルの各端子23bは、Yコイル切替え回路50bに接続されている(図9)。
この第1実施形態では、P1=50mmであり、P2X=680mmであり、P2Y=980mmである。また、m=22であり、n=33である。さらに、XコイルおよびYコイルは、共に表面に絶縁被膜層(たとえば、ニクロム層やエナメル層)を有する直径0.35mmの銅線により形成されている。
なお、図5(A)では、コイルの配置を分かり易くするために各コイルの辺が重ならないように描かれているが、実際には、たとえばXコイルX1の長辺部には各YコイルY1,Y2,Y3・・・の短辺部が重なって配置されている。また、端子23a,23bは、その間隔を最小にして構成されている。
【0028】
[位置座標テーブル]
次に、筆記面21a上のペン60の位置座標を検出するための位置座標テーブルについて図6および図7を参照して説明する。
図6(A)はXコイルX1〜X3の一部を示す説明図であり、図6(B)は図6(A)に示すXコイルX1〜X3に発生する電圧と幅方向の距離との関係を示すグラフであり、図6(C)は図6(A)に示すXコイルX1〜X3の相互に隣接するセンスコイル間の電圧差を示すグラフである。図7(A)は位置座標テーブルをグラフ化して示す説明図であり、図7(B)は位置座標テーブルの説明図であり、図7(C)は補正後の位置座標テーブルの説明図である。
【0029】
図6においてXコイルX1,X2,X3の中心線をそれぞれC1,C2,C3とし、XコイルX1,X2,X3に発生する電圧をそれぞれex1,ex2,ex3とする。図6(B)に示すように、電圧ex1〜ex3は、それぞれセンスコイルの中心C1〜C3において最大となり、端部に近づくにつれて小さくなる単峰性を示す。なお、各コイルは、自己のヌル点、すなわち電圧ex1〜ex3がそれぞれ0となる点が隣接するコイルの中心の外側となるようにP1/2で重ねられる。
ここで、コイルの幅P1は、コイルに発生する電圧が単峰性を示す限り広くしてもよい。また、ヌル点が隣接するコイルの中心の外側となる限り、重なり部分を狭く、すなわちP1/2より狭くしてもよい。これにより、広い面積をより少ないコイルで位置座標検出することが可能となる。
また、図6(C)に示すようにXコイルX1〜X3の相互に隣接するセンスコイル間の電圧差は、センスコイルの中心C1〜C3上にそれぞれ最大値を有し、センスコイルの中心とセンスコイルの長辺部分との中間点、つまり隣接するセンスコイルが重なった部分の中間点で零となるようなグラフとなる。
【0030】
たとえば、図6(C)において(ex1−ex2)を示すグラフの右半分(実線で示す部分)は、XコイルX1の中心C1から、XコイルX2が重ねられた部分の中間点Q1までの距離(重ねピッチの1/2、つまりP1/4)と(ex1−ex2)との関係を示す。今、仮にペン60が点Q2に存在する場合、(ex1−ex2)を検出すれば中心C1からQ2点までの距離ΔX1を検出できるため、Q2点のX座標を求めることができる。
この実施形態では、コイル幅P1が50mmであるから、P1/4=12.5mmである。たとえば、図6(C)において(ex1−ex2)の特性を示す部分(実線で描いた部分)を電圧差(ex1−ex2)を8bitのデジタルデータに変換すると、図7(A)に示すグラフを得る。このグラフをテーブル形式に変換すると、図7(B)に示す位置座標テーブル58aを得る。この位置座標テーブル58aは、ROM58(図9)などに記憶され、ペン60の位置座標の演算に用いられる。
【0031】
[ペン60の主要構成]
次に、ペン60の主要構成について図8を参照して説明する。
図8(A)は、ペン60の内部構造を示す説明図であり、図8(B)は、図8(A)に示すペン60の電気的構成を示す説明図である。
ペン60には円筒形状の胴体部61aと、この胴体部61aの後端に着脱可能に取付けられた蓋61cとが備えられている。胴体部61aの内部には、コイルL1と、矢印F2で示す方向へ取り出し可能なインクカートリッジ63と、このインクカートリッジ63に挿入されたペン先62と、コイルL1から交番磁界を発生させるための発振回路などが実装された回路基板69と、この回路基板69に電源を供給する電池70とが設けられている。
【0032】
また、インクカートリッジ63と回路基板69との間には、上記発振回路などへの電源の供給および遮断を行うための押しボタン式のスイッチ67が設けられている。スイッチ67は、ペン先62を筆記面21a(図1)に押し付け、インクカートリッジ63が矢印F1で示す方向へ移動するとONし、矢印F2で示す方向へ戻るとOFFする。つまり、ペン60によって筆記面21aに筆記を行うときにコイルL1から交番磁界が発生する。
図8(B)に示すように、回路基板69に実装された回路は、ペンの属性ごとに異なる発振周波数が設定されたCR発振回路69eと、このCR発振回路69eから発振された信号を搬送する搬送波を発振するLC発振回路69cと、このLC発振回路69cの発振周波数をCR発振回路69eの発振周波数によってFSK(Frequency Shift Keying)変調するFSK回路69dとから構成される。
たとえば、搬送周波数は410kHzであり、CR発振回路69eの発振周波数は黒色のペンの場合が4.1kHzである。
なお、イレーサ40には交番磁界を発生するコイル、発振回路および電池などが内蔵されている。
【0033】
[電子黒板1の電気的構成および主な制御内容]
次に、電子黒板1の電気的構成および主な制御内容について図9および図11を参照して説明する。
図9は電子黒板1の電気的構成をブロックで示す説明図であり、図11は図9に示すCPU56による主な制御内容を示すフローチャートである。
図9に示すように、電子黒板1に内蔵された制御装置50には、トランジスタなどのスイッチング素子(たとえば、MOS FET)により、XコイルをX1〜Xmまで順に切替えるXコイル切替え回路50aと、YコイルをY1〜Ynまで順に切替えるYコイル切替え回路50bとが備えられている。また、ROM58には、CPU56が実行する各種制御プログラムや位置座標テーブル58a(図7(B))などが記憶されている。
【0034】
図11に示すように、CPU56は、電源ボタン38(図1)が押されて電源がONしたことを検出すると(ステップ(以下、Sと略す)100)、ROM58に記憶されている制御プログラムや位置座標テーブル58aをRAM59のワークエリアにロードするなどの初期設定を行い(S200)、座標読取処理を行う(S300)。
[座標読取処理]
ここで座標読取処理について図10および図12を参照して説明する。
図10(A)は、相互に隣接するセンスコイルから検出した信号の電圧値が略同一である場合を示す説明図であり、図10(B)は、RAM59の記憶内容の一部を示す説明図であり、図10(C)は、スキャンによって各Xコイルから検出した検出値がコイル番号と対応付けてRAM59の一時記憶エリア59aに格納されている状態を示す説明図である。図12は、座標読取処理の流れを示すフローチャートである。
【0035】
最初に、この座標読取処理の特徴について説明する。
図7(B)に示す位置座標テーブル58aは、最大電圧を発生したセンスコイルと2番目に高い電圧を発生したセンスコイルとの電圧差DIFF(8bitのデジタル値)とセンスコイルの中心からの距離ΔXとを対応付けて構成されており、演算されたDIFFに対応するΔXなどを用いて位置座標の演算を行う。
しかし、DIFFは、ペン60から発生する交番磁界の強度が低下していない状態、つまりペン60の電池70が消耗していない状態で測定した固定値であるため、ペン60の電池70が消耗して交番磁界の強度が低下し、DIFFの値が小さくなると、それに対応する距離ΔXが大きくなってしまうので、演算した位置座標に誤差が生じる。
【0036】
そこで、ペン60の電池70が消耗していないときに、相互に隣接するセンスコイルから検出した電圧値が同じである場合のそのときの電圧値を基準値gとしてROM58に記憶しておき、ペン60を使用しているときに、上述したように、相互に隣接するセンスコイルから同じ電圧値が検出された場合のその検出値dと上記基準値gとの比rを用いて位置座標テーブル58aのDIFFを補正することにより、交番磁界の強度低下による位置座標の誤差を補正する。
たとえば、図10(A)に示す例では、ペン60の電池70が消耗していないときにXコイルをスキャンし、あるタイミングでXコイルX3およびX4から検出された電圧が略同一となったときのその電圧を基準値gに設定する。また、その後時間が経過し、あるタイミングでXコイルX5およびX6から検出された電圧が略同一となったときのその電圧を検出値dとし、比r=d/gを求め、その比rを用いてDIFFを補正する。
なお、相互に隣接するセンスコイルから同じ電圧値が検出される場合としては、たとえば図6(A)において、ペン60がXコイルX1およびX2が重なっている部分の中心線Q1上に存在するタイミングと、XコイルX1およびX2がスキャンされるタイミングとが一致した場合である。
【0037】
次に座標読取処理の流れについて図12を参照して説明する。
CPU56は、Xコイル切替え回路50aを動作させてXコイルのスキャンを行う(S302)。このとき、筆記面21a上に置かれたペン60から発生する交番磁界と、Xコイルとの磁気結合により各Xコイルに発生した信号は、増幅器50cによって増幅され、その増幅された信号は、バンドパスフィルタ50dによって不要な帯域が濾過され、振幅検波回路51によって振幅検波される。続いてその振幅検波された信号は、A/D変換回路52によって振幅、つまり電圧値に対応したデジタル信号に変換され、I/O回路53を介してCPU56に入力され、CPU56はペン60を検出したと判定する(S304:Yes)。
【0038】
CPU56は、XコイルX1〜Xmをスキャンして入力されたデジタル信号によって示される検出値(この発明に係る第1の信号レベル)e(1)〜e(m)を図10()に示すように、Xコイルのコイル番号と対応付けてRAM59の一時記憶エリア59a(図10(C))に順次格納して行く(S306)。
また、バンドパスフィルタ50dを通過した信号は、リミッタ回路54によって方形波パルスに成形され、FSK復調回路55は、リミッタ回路54から入力した方形波パルスに基づいてFSK復調を行い、そのFSK復調結果を示す値をI/O回路53を介してCPU56へ出力する。そして、CPU56は、FSK復調回路55から出力された値を読込み(S308)、その値に基づいてペン属性を判定する(S310)。
たとえば、黒色のペンを使用した場合のCR発振回路69eの発振周波数が4.1kHzの場合にFSK復調回路55から出力される値が245であるとすると、CPU56はFSK復調回路55から読込んだ値が245である場合に、ペン属性は黒色であると判定する。
【0039】
そしてCPU56は、RAM59に格納されている検出値の中で、相互に隣接するXコイルの検出値dが同じであるXコイルが存在するか否かを判定する(S314)。図10()に示す例では、コイル番号X5およびX6の検出値が共に同じ128であるため、Xコイルの検出値dが同じであるXコイルが存在すると判定し(S314:Yes)、RAM59のワークエリアにロードされている位置座標テーブル58aを破棄し、新たにROM58から位置座標テーブル58aをRAM59のワークエリアに再ロードし、S312において判定したペン属性と対応付けてワークエリアに格納する(S316)。たとえば、ペン属性が黒色である場合は、図10(B)に示すように、ワークエリアに再ロードされた位置座標テーブル58aは、黒色のペン専用の位置座標テーブルに設定される。
なお、古い位置座標テーブル58aを破棄するのは、補正された位置座標テーブルを再補正しないようにするためである。
【0040】
続いてCPU56は、S314において検出した検出値dと基準値(この発明に係る基準信号レベル)gとの比rを演算し(S318)、その比rをワークエリアに記憶されている位置座標テーブル58aのDIFFの各値に乗算する(S320)。
たとえば、基準値gが256であるとすると、図10(C)に示す例では、検出値dが128であるから、比r=d/g=128/256=0.5を位置座標テーブル58aの各DIFFに乗算し、図7(C)に示すように、各DIFFの値が約1/2に補正された新たな位置座標テーブル58bを得る。なお、図7(C)に示す各DIFFは、比rを乗算した結果を四捨五入してある。
【0041】
そしてCPU56は、以下の手順でX座標を演算する(S330)。
まず、一時記憶エリア59aに格納されている検出値e(1)〜e(m)の中で最大の検出値e(max)を選択し、その検出値e(max)を発生したXコイルのコイル番号(以下、maxと称する)をRAM59に記憶する。
たとえば、図6に示すように、ペン60は位置Q3に存在し、図6(B)に示すように、XコイルX1,X2,X3からそれぞれ電圧e1,e2,e3が検出されたとすると、最大の電圧値e2を選択し、その電圧値e2を発生したXコイルのコイル番号2をmaxとしてRAM59に記憶する。
そして、CPU56はe(max)の両隣の検出値e(max±1)のうち大きい方を決定し、その決定した検出値を発生したXコイルのコイル番号(以下、max2と称する)をRAM59に記憶する。
【0042】
図6に示す例では、e2の両隣の電圧値e3,e1のうち大きい方のe3を決定し、そのe3を発生したXコイルのコイル番号3をmax2としてRAM59に記憶する。
続いてCPU56は、RAM59に記憶されたコイル番号maxおよびmax2を比較して、コイル番号max2はコイル番号maxからX軸の+方向または−方向のどちらに存在しているかを判定する。そして、max2≧maxである場合は、変数SIDEを1に設定し、max2<maxである場合は、変数SIDEを−1に設定する。図6に示す例では、max=2でmax2=3であるから、max2>maxとなり、変数SIDEを1に設定する。
続いてCPU56は、
【0043】
DIFF=e(max)−e(max2)・・・(1)
【0044】
を演算し、その演算されたDIFFに最も近い位置座標をROM58に記憶されている位置座標テーブル58aから読出し、それをOFFSETとする。続いてCPU56は、
【0045】
X1=(P1/2)×max+OFFSET×SIDE・・・(2)
【0046】
を演算し、X座標X1を求める(S330)。ここで、(P1/2)×maxは、コイル番号maxの中心のX座標を示す。図6に示す例では、(2)式は、X=(P1/2)×2+(e2−e3)×1となり、位置Q3のX座標は、XコイルX2の中心線C2からX軸の+方向に(e2−e3)に対応する距離、たとえばΔX2離れた座標となる(S330)。
また、図10(C)に示す例では、XコイルX5およびX6が共に最大値の128であるため、DIFF=0となり、位置座標テーブル58aからΔX=12.5mmがOFFSETとして抽出される。また、XコイルX6をmaxとして選択した場合は、max2=5となるため、max>max2となるので変数SIDEは−1に設定される。
したがって、コイル幅P1=50mmとすると、12.5mm=P1/4であるから、X1=(P1/2)×6+12.5mm×(−1)=(P1/2)×6−P1/4となる(S330)。
つまり、X座標X1は、XコイルX5およびX6が重なった部分の中心点となる。
【0047】
そしてCPU56は、Yコイルのスキャンを実行し(S332)、各Yコイルの検出値をRAM59のYコイル用の位置座標格納エリアに格納する(S334)。続いてCPU56は、前述のS314〜S320と同じ処理を実行し(S338〜S344)、S338において同じ検出値dのYコイルが存在する場合は、RAM58のワークエリアに記憶されている位置座標テーブルを破棄してROM58からオリジナルの位置座標テーブルを再ロードし(S340)、S338において検出した検出値dと基準値gとの比rを演算し(S342)、S340において再ロードした位置座標テーブルの各DIFFに比rを乗算し(S344)、S330におけるX座標の演算と同じ手法を用いてY座標を演算する(S354)。
【0048】
ここで図11の説明に戻り、また、CPU56は、ページ戻りボタン33、ページ送りボタン34および消去ボタン35が押されたときに、記憶されている筆記データのページ単位での戻し、送り、あるいは消去などのページ処理を行う(S400)。さらに、CPU56は、操作部30に設けられた各種ボタン(図1)の操作により発生するスイッチング信号をI/F回路57(図9)を介して取り込み、RAM59に格納されている位置座標データを記憶するページをページ単位で送ったり、戻したり、あるいは位置座標データをページ単位で消去するなどのページ処理を実行する(S400)。また、CPU56は、RAM59に格納されている位置座標データのうち、目的のページの位置座標データを適当なフォーマットに変換してPC100やプリンタ200(図2)へ出力するデータ出力処理を実行する(S500)。
【0049】
さらに、CPU56は、各種ボタンが押された際に発生するスイッチング信号に基づいて音声回路31aを動作させてスピーカ31から「ピー」、「ピッ」などの操作音を発生する音声出力処理を実行する(S600)。またCPU56は、イレーサ40に内蔵されたコイルから発生する交番磁界によってXコイルおよびYコイルに発生する電圧に基づいてイレーサ40の払拭軌跡を演算し、その演算した払拭軌跡内の位置座標データをRAM59(図9)から消去するイレーサ処理を実行する(S700)。
【0050】
以上のように、第1実施形態の電子黒板1を使用すれば、ペン60の電池70が消耗し、交番磁界の強度が低下した場合であっても、その低下の程度に対応して位置座標テーブルを補正することができるため、ペン60の正確な位置座標を読取ることができる。
しかも、ペン属性ごとに専用の位置座標テーブルを作成し、補正を行うことができるため、ペンごとに電池70の消耗程度が異なる場合であっても、その消耗程度に対応した正確な位置座標を読取ることができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、この発明の第2実施形態について図13を参照して説明する。
この第2実施形態の電子黒板は、過去に読取られた位置座標を遡及して補正できることを特徴とする。
図13は、この第2実施形態の電子黒板に備えられたCPU56が実行する座標読取処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下の第2ないし第4実施形態では、座標読取処理以外のCPU56が実行する処理および他の構成は、前述の第1実施形態の電子黒板と同じであるため、その同じ部分の説明を省略し、座標読取処理の流れについてのみ説明する。また、第1実施形態の電子黒板と同じ構成については同一の符号を用いる。
【0052】
CPU56は、Xコイルをスキャンし(S302)、ペン60を検出すると(S304:Yes)、各Xコイルの検出値をRAM59の一時記憶エリア59aに記憶し(S306)、FSK復調回路55の値を読込み(S308)、ペン属性を判定する(S310)。続いてCPU56は、一時記憶エリア59aに記憶されている検出値の中で同じ検出値dを示す相互に隣接するXコイルが存在する場合は(S314:Yes)、位置座標テーブル58aをRAM59のワークエリアに再ロードし、ペン属性と対応付ける(S316)。続いてCPU56は、検出値dと基準値gとの比rを演算し(S318)、ワークエリアに記憶されている位置座標テーブル58aの各DIFFに比rを乗算する(S320)。
【0053】
続いてCPU56は、Yコイルのスキャンを行い(S332)、各Yコイルの検出値を一時記憶エリア59aに記憶し(S334)、上述したS314〜S320と同じ処理を実行し、位置座標テーブル58aを補正する(S338〜S344)。
そしてCPU56は、ペン60が筆記面21aから離れたことを検出し(S304:No)、一時記憶エリアにX座標またはY座標の検出値が記憶されている場合は(S356:Yes)、ワークエリアに記憶されている補正された位置座標テーブル58aを参照し、記憶されている検出値に対応するΔXを抽出し、そのΔXなどを用いて前述した手法によってXY座標を演算する(S358)。続いてCPU56は、演算されたXY座標をRAM59の確定エリア59b(図10(B))に移動する(S360)。
【0054】
以降、CPU56は、ペン60が筆記面21aに接触している間は、S302〜S344を実行して検出値の記憶および位置座標テーブル58aの補正を行い、ペン60が筆記面21aから離れたときにS356〜S360を実行してXY座標を演算するというサイクルを繰り返す。
以上のように、第2実施形態の電子黒板を使用すれば、補正された位置座標テーブルによって座標の演算を行う範囲を、隣接コイルで同一の値が検出される以前に入力された座標についても補正できるので正確な座標の読取を行うことができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、この発明の第3実施形態について図14を参照して説明する。
この第3施形態の電子黒板は、同一の検出値dが検出されても、以前の検出から所定時間が経過していない場合は位置座標テーブル58を更新しないことを特徴とする。
図14は、この第3実施形態の電子黒板に備えられたCPU56が実行する座標読取処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
CPU56は、Xコイルをスキャンし(S302)、ペン60を検出すると(S304:Yes)、各Xコイルの検出値をRAM59の一時記憶エリア59aに記憶し(S306)、FSK復調回路55の値を読込み(S308)、ペン属性を判定する(S310)。続いてCPU56は、タイマ(たとえばCPU56に内蔵されたタイマ)の計測時間Tが、予めROM58などに設定されている設定時間T1以上になっている場合は(S312:Yes)、一時記憶エリア59aに記憶されている検出値の中で同じ検出値dを示す相互に隣接するXコイルが存在するか否かを判定する(S314)。
続いてCPU56は、同じ検出値dを示す相互に隣接するXコイルが存在する場合は(S314:Yes)、位置座標テーブル58aをRAM59のワークエリアに再ロードし、ペン属性と対応付ける(S316)。続いてCPU56は、検出値dと基準値gとの比rを演算し(S318)、ワークエリアに記憶されている位置座標テーブル58aの各DIFFに比rを乗算する(S320)。
つまり、位置座標テーブル58aの内容は、第2信号レベル検出手段(S314)により検出されたペン60の出力に対応して更新される。
続いてCPU56は、タイマをリセットし(S322)、タイマをスタートし(S324)、X座標を演算する(S330)。
続いてCPU56は、Yコイルのスキャンを行い(S332)、Xコイルの検出値に対して実行したS306〜S330と同じ処理をYコイルの検出値に対して実行し、Y座標を演算する(S332〜S354)。
【0057】
以上のように、CPU56は一連の処理において一時記憶エリア59aに記憶されている検出値の中で同じ検出値dを示す相互に隣接するコイルが存在しても、タイマの値が所定の値T1以下である場合は、位置座標テーブル58aを再ロードして値を比rにより更新する動作は行わない。一方、タイマの値が所定の値T1以上になっている場合は、上述したような位置座標テーブル58aを更新する処理が行われ、再びタイマをリセットして再スタートさせる。
なお、この第3実施形態では設定時間T1は秒単位、分単位あるいは時間単位で設定することができる。また、一度位置座標テーブル58aを補正した場合は、電子黒板1の電源が遮断するまで同じ位置座標テーブル58aを使用するように構成することもできる。
【0058】
以上のように、第3実施形態の電子黒板を使用すれば、同じ検出値dのコイルが存在する場合であっても、時間T1が経過していない場合は、位置座標テーブルの更新を行わないように制限することができるため、位置座標テーブル58aを更新するために用いるCPUパワーの無駄な消費を防止できる。
【0059】
[第4実施形態]
次に、この発明の第4実施形態について図15を参照して説明する。
この第4施形態の電子黒板は、ペン60の電池70の電圧が低下したことを報知できることを特徴とする。
図15は、この第4実施形態の電子黒板に備えられたCPU56が実行する座標読取処理の流れを示すフローチャートである。なお、S302〜S320、S330〜S344およびS354は、第1実施形態と同じ処理であるため説明を省略する。
【0060】
CPU56は、位置座標テーブル58aを更新すると(S320)、S318において演算した比rが予めROM58などに設定されている設定値r1以下であるか否かを判定し(S326)、比rが設定値r1以下である場合は(S326:Yes)、ペン60の電池70が消耗していることを報知する(S328)。この第4実施形態では、電池切れ報知用LED39(図1)を点灯または点滅させる。なお、スピーカ31(図1)から「ピー」などの電子音を再生して報知する構成でもよい。
またCPU56は、Yコイルをスキャンした際に同じ検出値dのコイルの存在を検出し、位置座標テーブル58aを補正する場合でも、比rが設定値r1以下である場合は(S346:Yes)、電池消耗を報知する(S348)。
なお、この第4実施形態では、設定値r1は0.25≦r1≦0.5の範囲から選択して設定する。
【0061】
以上のように、第4実施形態の電子黒板を使用すれば、ペン60の電池70の電圧低下を報知することができるため、電圧が低下した状態でペン60を使用することによる位置座標の読取精度が低下するのを防止することができる。
なお、r/r1を演算し、その演算結果、つまり電池60の電圧に対応した表示を行うように構成することもできる。たとえば、電池切れ報知用LED39を複数設け、電池70の電圧に対応して段階的に表示したり、あるいは電池切れ報知用LED39の発光色を電圧に対応して変化したりするように構成する。
また、上記各実施形態におけるS314では、検出値が完全同一のコイルを検出する処理を説明したが、検出値の値が少し異なるだけである場合(たとえば検出精度以内の差である場合)には、略同一とみなして処理するように構成することもできる。
【0062】
ところで、ペン60がこの発明の座標入力手段に対応し、筆記面21aが座標入力面に対応し、センスコイル23が導線に対応し、取付パネル24が座標入力シートに対応し、電池切れ報知用LED39が報知手段に対応する。また、スイッチ67、LC発振回路69c、CR発振回路69e、FSK回路69dおよび電池70がこの発明の属性情報送信手段に対応する。
さらに、CPU56が実行するS302およびS332がこの発明の第1信号レベル検出手段として機能し、S314が第2信号レベル検出手段として機能し、S316〜S320およびS340〜S344が第1信号レベル補正手段として機能する。また、CPU56が実行するS320およびS344が、この発明の変換手段として機能し、S312、S322、S324、S336、S350およびS352がタイマ手段として機能する。さらに、CPU56が実行するS310が属性情報認識手段として機能し、S326、S328、S346およびS348が報知手段として機能する。なお、設定値r1が請求項5に記載の所定の値に対応する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施形態に係る電子黒板の主要構成を示す外観斜視説明図である。
【図2】 図1に示す電子黒板にPCおよびプリンタを接続した状態を示す説明図である。
【図3】 電子黒板1と他の電子黒板1との間でデータの通信を行う場合のネットワークの構成をブロックで示す説明図である。
【図4】 筆記パネル本体20の各構成部材を示す説明図である。
【図5】 図5(A)は図5に示すセンスコイル23の構成を一部を省略して示す説明図であり、図5(B)は図5(A)に示すセンスコイル23の幅および重ねピッチを示す説明図である。
【図6】 図6(A)はXコイルX1〜X3の一部を示す説明図であり、図6(B)は図6(A)に示すXコイルX1〜X3に発生する電圧と幅方向の距離との関係を示すグラフであり、図6(C)は図6(A)に示すXコイルX1〜X3の相互に隣接するセンスコイル間の電圧差を示すグラフである。
【図7】 図7(A)は位置座標テーブルをグラフ化して示す説明図であり、図7(B)は位置座標テーブルの説明図であり、図7(C)は補正後の位置座標テーブルの説明図である。
【図8】 図8(A)は、ペン60の内部構造を示す説明図であり、図8(B)は、図8(A)に示すペン60の電気的構成を示す説明図である。
【図9】 電子黒板1の電気的構成をブロックで示す説明図である。
【図10】 図10(A)は、相互に隣接するセンスコイルから検出した信号の電圧値が略同一である場合を示す説明図であり、図10(B)は、RAM59の記憶内容の一部を示す説明図であり、図10(C)は、スキャンによって各Xコイルから検出した検出値がコイル番号と対応付けてRAM59の一時記憶エリア59aに格納されている状態を示す説明図である。
【図11】 CPU56による主な制御内容を示すフローチャートである。
【図12】 第1実施形態における座標読取処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】 第2実施形態における座標読取処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】 第3実施形態における座標読取処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】 第4実施形態における座標読取処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】 従来の座標読取装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電子黒板(座標読取装置)
21a 筆記面(座標入力面)
23 センスコイル(導線)
24 取付パネル(座標入力シート)
30 操作部
56 CPU
58a 位置座標テーブル
60 ペン(座標入力手段)
39 電池切れ報知用LED(報知手段)

Claims (5)

  1. 交番磁界を発生する座標入力手段により座標を入力する座標入力面と、この座標入力面の下方に敷設された複数の導線とを有する座標入力シートと、
    前記座標入力手段から発生する交番磁界の強度に対応して、前記導線に発生する第1の信号レベルを検出する第1信号レベル検出手段と、
    この第1信号レベル検出手段により検出された前記第1の信号レベルに基づいて前記座標入力面上の座標入力手段の位置座標を読取る座標読取装置において、
    前記交番磁界の強度に対応して、前記複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベルが、略同一となる第2の信号レベルを検出する第2信号レベル検出手段と、
    前記第1の信号レベルを、前記交番磁界の所定の強度に対応して、前記複数の導線のうち相互に隣接する導線から検出される2つの信号のレベルが、略同一となった基準信号レベルと、前記第2の信号レベルとの比に基づいて補正する第1信号レベル補正手段と、
    を備えたことを特徴とする座標読取装置。
  2. 前記第1の信号レベルを記憶する第1信号レベル記憶手段を備え、
    前記第1信号レベル補正手段は、前記比に基づいて、前記第1信号レベル記憶手段に記憶された第1の信号レベルのうち、前記第2信号レベル検出手段が前記第2の信号レベルを検出する前における前記第1の信号レベルを、遡及して補正することを特徴とする請求項1に記載の座標読取装置。
  3. 前記第1信号レベル補正手段は、前記信号レベルを前記位置座標に変換する変換手段を有し、該変換手段の内容は前記第2信号レベル検出手段により更新され、その更新動作後、所定時間内は前記更新を行わないようにしたタイマ手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の座標読取装置。
  4. 前記座標入力手段は、その属性を示す属性情報を送信する属性情報送信手段を備え、
    前記第1信号レベル補正手段は、前記属性情報送信手段により送信された属性情報を認識するとともに、その認識された属性情報に基づいて前記第1の信号レベルを補正することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の座標読取装置。
  5. 前記第2の信号レベルが所定の値以下となった場合には、そのことを報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の座標読取装置。
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