JP3918312B2 - 中空糸膜モジュール及びその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空糸膜モジュール及びその使用方法に関するものであり、詳しくは、複数の中空糸膜の片方の端部が接着固定された状態で開口され、もう片方の端部が接着固定されていない中空糸膜モジュールとその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
膜分離技術は、逆浸透膜や限外ろ過膜、精密ろ過膜を用いて、海水、かん水の脱塩、半導体洗浄用の超純水の製造、食品の分離または濃縮等のように高品位な水が必要とされる用途を中心に研究が進められてきた。しかし、最近では環境保全の観点から、廃水処理にも膜分離技術を適用しようとする研究が進められている。
【0003】
廃水処理では、多くの場合、沈殿による固液分離を伴うため、その代替として膜分離技術が実施できれば、高品位な処理水が得られるだけでなく、広大な沈殿池の省略あるいは縮小ができ、スペースメリットが非常に大きい。
【0004】
廃水処理では、活性汚泥と呼ばれる微生物により、廃水中の有機物を分解した後に、フロック化した汚泥と処理水を分離する活性汚泥処理プロセスが広く用いられている。
【0005】
この活性汚泥処理プロセスでは、処理効率を上げるために、活性汚泥を高濃度化すると、分解処理が進む一方で、後段の沈殿池において汚泥の沈降性不良を生じる場合があり、水質の悪化を防止するための管理作業が煩雑であった。
【0006】
この汚泥と処理水との固液分離に膜分離技術を利用することで、高濃度活性汚泥処理を行なった場合にも、水質の悪化を伴わず、更に沈殿池を省略でき非常に省スペースとなる。このような点から、高濃度(MLSS 約7,000〜20,000mg/l)活性汚泥混合液の固液分離用途に向けての膜分離技術の研究が行われている。
【0007】
ところで、分離膜には主に平膜、管状膜、中空糸膜等があり、使用される方式により適した分離膜モジュールが開発されている。
【0008】
高濃度の固液分離は分離膜モジュールに原水を循環供給し、膜面に付着する汚れを、循環流でかきとりながら分離するクロスフロー方式が行われており、この方式に合わせた平膜や管状膜モジュールが主として用いられてきた。
【0009】
しかし、この方式は高濃度の活性汚泥を分離膜モジュール内へ供給することが困難であることに加えて、膜面に付着する汚泥をかきとるために、常に膜面に原水を循環供給する必要があり、動力コストが高価であった。このため、再利用水など廃水処理の中でも一部の高度な処理を要する分野に使用は限定されていた。
【0010】
近年になり、槽体内に分離膜モジュールを浸漬してモジュールの透過側をポンプで吸引、あるいはサイホン等のように水位差を利用して処理水を得る、省エネルギーな浸漬タイプの分離膜モジュールの研究が行われている。活性汚泥処理では通常、好気性の微生物を飼育するための曝気が行われており、この浸漬タイプは膜面を曝気により槽体内に形成される旋回流を利用して、汚れをかきとりながら固液分離を行うことができ、非常に低コストで運転が可能である。
【0011】
平膜モジュールでは、特公平4−70958号公報に記載のような装置が試用されつつあるが、高濃度の活性汚泥を分離する際には、単位膜面積当りの処理水量を大きく取ると膜面に汚泥の付着が急速に進むため、大量処理には大きな膜面積が必要であった。
【0012】
一方、中空糸膜モジュールは平膜と比較して、単位容積当たりの膜面積を大きく取れ、コンパクトに大量処理が可能である。しかし、中空糸膜モジュールをし尿処理などの廃水処理用途に使用した際には、廃水中の非常に細かい繊維状屑(し渣)が、中空糸膜に絡み付くことが判明した。このし渣は大きなものは前処理などで除去可能であるが、前処理で除去しきれないような非常に小さなし渣が、中空糸膜に徐々に絡み、粗大化し、更にその上に汚泥が付着することが判明した。
【0013】
し渣は中空糸膜に一旦絡むと除去が困難であり、絡みが徐々に蓄積していき、それを核として、汚泥が付着していく。付着した汚泥は中空糸膜間を閉塞し、ろ過差圧が上昇させるだけでなく、中空糸膜の破断等も引き起こし、中空糸膜モジュールの活性汚泥中での使用を困難にしていた。
【0014】
そこで本発明者らは特願平9−297993号において、中空糸膜の先端部分が自由端で、この先端部から絡んだし渣を取り除き、廃水中でのし渣の絡みとその蓄積を防止できる中空糸膜モジュールを提案した。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
廃水処理用途、中でも廃水の再利用などを行なわない用途では、様々な処理技術についても、技術の低コスト化が常に要求されてきており、膜分離技術についても、安定して性能を発揮できることを前提に、分離膜モジュール自体のコスト、および運転コストがより低いことが望まれる。
【0016】
槽体内に分離膜モジュールを浸漬して、処理水を取出し、膜面に付着する汚れを曝気による旋回流によって除去する方法を取ることで、運転コストとの低減がはかれ、し渣の絡みを防止可能な中空糸膜モジュールにより、活性汚泥中での安定運転が可能となった。
【0017】
この中空糸膜モジュールは従来の製造方法では製作することができなかったが、本発明者らが鋭意検討を行った結果、特願平10−43614号/三段先端封止、特願平10−82977号/圧着先端封止、特願平10−131754号/熱水先端封止、特願平10−131755号/一列先端封止のような製造方法を提案している。従来の構造のモジュールにはなかった工程であり、中空糸膜モジュールの製造コストを上昇させていた。
【0018】
しかしながら、一般には、中空糸膜モジュールの内側と外側はオングストロームからミクロン単位の細孔を介して隔てられており、中空糸膜一本一本の先端部分が自由端である中空糸膜モジュールでは、先端を封止しなければ、処理対象原水が孔から漏れてくるため、中空糸膜モジュールとしての性能を発現できないことが多いと考えられていた。
【0019】
本発明においては、下水処理、廃水処理など様々な汚濁物質が含まれた処理対象水に適した中空糸膜モジュールおよびその使用方法、および該中空糸膜モジュールを安価かつ容易に作製する製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の本発明の目的は、「複数の中空糸膜の一方の端部が開口した状態で、接着固定部によって固定されているとともに、もう一方の中空糸膜の端部が固定されておらず、各々独立した自由端でかつ開口していることを特徴とする中空糸膜モジュール。」により基本的に達成される。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した中空糸膜モジュールの一例を図1に示す。
【0022】
図1において、1は中空糸膜であり、該中空糸膜1は一方の端部で開口した状態で接着固定部2により固定され、もう一方の中空糸膜の端部は、固定されておらず、各々独立した自由端でかつ中空糸膜側断面4にて開口しているものである。接着固定部2において中空糸膜1は開口し、集水部3、集水配管5を経て透過水が流出するようになっている。
【0023】
本発明のように中空糸膜1に内径レベルの孔があいていると、一般には処理対象原水が孔から漏れてくるため、中空糸膜モジュールとしての性能を発現できないことが多い。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、中空糸膜の場合は、中空糸膜が細いため、中空糸膜の内側の流動抵抗が大きく、中空糸膜の封止されていない自由端部から透過水の出口である中空糸膜の接着固定、開口部分までの透過水による圧力損失が非常に大きい。したがって、中空糸膜の自由端部が封止されていなくても原水がそのまま流れてくることはない。
【0024】
さらに、本発明のモジュールは、水中のゴミや濁質を除去することを目的としており、原水には比較的大きな固形物なども含まれていることが多い。したがって、中空糸膜の封止されていない自由端部もこれらの大きなゴミによってすぐに閉塞してしまうのである。その後、中空糸膜面では、精密濾過や限外濾過が行われ、中空糸膜の先端では、ケーク濾過が行われるという状態になり、良好な透過水質を得ることが可能になるのである。
【0025】
また、これに加えて、本発明の中空糸膜モジュールを作製するにあたり、接着固定されていない中空糸膜1の端部を封止しないことにより製造コストを大きく低減させることができる。
【0026】
中空糸膜の内径、外径としても特に制限されるものではないが、先に述べたように中空糸膜の流動抵抗をある程度大きくする必要性から考えると、中空糸膜の内径については細い方が好ましく、500μm以下の中空糸膜が適している。中空糸膜の長さとしては長くなれば膜面積が大きくなり、流動抵抗も増すため長い方が好ましく、全長が500mm以上の中空糸膜への適用が好ましい。
【0027】
さらに、本発明の効果を高める方法として、図2に例示するように中空糸膜の少なくとも一部分において中空糸膜の内側流路断面積を小さくした流路断面積縮小部6を設けておくことにより、その部分で原水中の比較的大きなゴミが蓄積しやすくなり、ケーク生成を促進させるため、透過水質の安定化を図ることができる。
【0028】
ここで、他の部分と比較して流路断面積が小さくなっている中空糸膜部分の形状としては特に限定されるものではなく、断面が円形でも楕円形でも長方形でも差し支えない。ただし、製造しやすい方法であることが好ましく、その点を考慮すると、形状については、扁平状や円状,楕円状にするのが実施しやすく好ましい。また、実施方法としても特に限定されるものではないが、圧力によって押しつぶす方法や熱を加えることによって変形させるのが簡便で好ましい。ただし、中空糸膜を押しつぶすにあたっては、中空糸膜を変形させやすい状態にすることが望ましく、封止部分の近傍を加熱したり、溶媒を含浸させて、変形を容易にする方法でも実施可能である。加熱する場合は、雰囲気温度を上げたり、高温のガスや液体を封止部分に接触させたり、前述した押しつぶすための装置であるロールプレスやハンマーなどを高温状態にする等の方法でも実施可能である。
【0029】
中空糸膜を押しつぶすにあたっては、どのような束状で行っても特に問題はないが、なるべく薄束状で行った方が均一につぶしやすい。また、前述したように中空糸膜を加熱するような場合は、中空糸膜同士が密着して離れにくくなる場合があるため、あまり高温に長時間さらすことは好ましくない。最も望ましい方法としては、予め中空糸膜をすだれ状に一列に配置してから端部を押しつぶすと中空糸膜同士の密着も防げてより確実な端部形状の製作が可能になる。
【0030】
中空糸膜の内側流路断面積を小さくする位置としては、制限されるものではないが、その効果からして、中空糸膜の自由端部からあまり離れていない方が望ましい。具体的には、中空糸膜自由端部からの距離が0〜20mmのところで断面積を小さくするとその部分から、接着固定端部までの部分が長くなり、中空糸膜本来の濾過性能を発現できるため非常に好ましい。
【0031】
一方、中空糸膜の一方の端部は開口した状態で、接着固定部2によって固定されている。これにより、一般に本発明の中空糸膜モジュールを外圧型で使用した場合に中空糸膜の内側を通る処理水を、接着固定部2の開口端面から取出すことができる。接着固定部での端部の開口には、中空糸膜の端部の中空糸膜間を接着材で充填した後に、接着固定部を切断し、開口する方法が一般的である。中空糸膜の端部の接着固定には、中空糸膜の端部を接着材に浸漬して、中空糸膜間に接着材を充填する静置法や、中空糸膜を回転させその遠心力により中空糸膜間に接着材を充填する遠心法などがあるが、いずれの方法でも製作可能であり、その方法は特に限定するものではない。
【0032】
ところで原水中の成分によっては、使用初期の透過水は、開口した中空糸膜が閉塞するまでは、完全なケーク濾過が行われないため、要求される透過水質によっては、所定の透過水質に達するまでは、透過水を原水側へ還流する方法を取ることが好ましい。これにより、水質が未達で原水の流出を防止できる。
【0033】
本発明の効果を十分に発揮可能な用途としては、主として高濃度の固液分離が目的である用途であり、水処理ではこれらの濃度をあらわす指標としてMLSSあるいはSSなどが用いられるが、濃度が5,000mg/l以上であれば好ましい。水処理においては活性汚泥含有原水の固液分離や凝集処理における凝集フロックの分離があげられ、原水の濁度が高い場合や浄水の活性炭処理等に用いることもできる。中でもし尿処理などの廃水処理に代表される、活性汚泥処理での汚泥と処理水との固液分離にこのモジュールを用いれば、高濃度活性汚泥処理を行なっても、従来の沈殿とは異なり、沈降性に左右されないため、処理効率を向上できるため、この用途で使用されることがより好ましい。しかし、これらの用途については特に限定するものではない。処理される液体から除去される粒子の粒径は、中空糸膜の内径より大きく、内側流路断面を小さくした場合には、その径よりも大きいこと、あるいは粘質を持つ粒子であっても発現でき、好ましい。しかしこれらについては特に限定するものではない。
【0034】
また、本発明において対象となる中空糸膜としては、具体的には高分子膜が好適で、均質中空糸膜、多孔質中空糸膜、複合中空糸膜などが挙げられるが、特に限定されるものではない。ただし、変形させる場合は、押しつぶして変形しなかったり、割れてしまうような中空糸膜には適用が困難である。本発明の適用に適した中空糸膜の具体例として、ポリアクリロニトリル多孔質中空糸膜、ポリイミド多孔質中空糸膜、ポリエーテルスルホン多孔質中空糸膜、ポリフェニレンスルフィドスルホン多孔質中空糸膜、ポリテトラフルオロエチレン多孔質中空糸膜、ポリプロピレン多孔質中空糸膜、ポリエチレン多孔質中空糸膜等の多孔質中空糸膜や、これら多孔質中空糸膜に機能層としては架橋型シリコーン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリルブタジエン、エチレンプロピレンラバー、ネオプレンゴム等のゴム状高分子を複合化した複合中空糸膜や架橋型シリコーンチューブなどの均質中空糸膜を挙げることができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0036】
実施例1
ポリアクリロニトリルを素材とする平均細孔径0.01μm、外径680μm、内径400μm、長さ800mmの多孔質中空糸膜800本を内幅150mm、内厚4mmのアクリル製の容器に挿入して、中空糸端部のポッティング部分にポッティング材が入り目詰まりを起こさないように、コロネート4403、ニッポラン4226(日本ポリウレタン社製、配合比53:47)により目止め接着した。次に、コロネート4403、KN−213(日本ポリウレタン社製、配合比54:46)を用いてポッティングを行った後、ポッティング固定部を切断し、中空糸膜内部を開口させた。さらに、開口させたポッティング部分に集水具を取り付け、中空糸膜全長750mm有効長さ700mmのモジュールを作製した。得られたモジュールを用いて、MLSS濃度約10,000mg/lの活性汚泥混合水を原水として濾過運転を行った。このときの濾過速度0.2m/dであった。運転開始10分後の透過水濁度を調べたが、濁度は0.1程度で、これまで通り良好な濾過性能を発揮した。
【0037】
実施例2
中空糸膜の自由端部から5mm〜10mmの距離にわたって押しつぶす他は、実施例1と同じ条件のモジュールを製作し、実施例2と同様の濾過試験を行った。運転開始10分後の透過水濁度を調べたが、濁度は0.0〜0.1程度で、これまで通り良好な濾過性能を発揮した。
【0038】
【発明の効果】
本発明において、複数の中空糸膜の片方の端部を接着固定しながら開口させ、開口部分から膜透過水を得る方式の中空糸分離膜モジュールにおいて、接着固定されていない中空糸膜端部が開口したことを特徴とする中空糸膜モジュールにより、下水処理、廃水処理など様々な汚濁物質が含まれた処理対象水に適した中空糸膜モジュールを安価かつ容易に作製することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る中空糸膜モジュールの一例を示す外観図である。
【図2】本発明に係る中空糸膜モジュールの他の一例を示す外観図である。
【符号の説明】
1:中空糸膜
2:接着固定部
3:集水部
4:中空糸膜側断面
5:集水配管
6:中空糸膜内側流路断面積縮小部
Claims (9)
- 複数の中空糸膜の一方の端部が開口した状態で接着固定部によって固定されているとともに、もう一方の中空糸膜の端部は固定されておらず、各々独立した自由端でかつ開口していることを特徴とする中空糸膜モジュール。
- 前記中空糸膜の内径が500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
- 前記中空糸膜の全長が500mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜モジュール。
- 前記中空糸膜の内側流路断面積が、中空糸膜の少なくとも一部分において、他の部分と比較して小さくなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
- 他の部分と比較して流路断面積が小さくなっている前記中空糸膜部分が扁平状になっていることを特徴とする請求項4に記載の中空糸膜モジュール。
- 前記請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを使用するにあたり、透過水質が所定値に達するまでの間は、透過水を原水側へ還流させることを特徴とする中空糸膜モジュールの使用方法。
- 前記中空糸膜モジュールをMLSSあるいはSS濃度が5,000mg/l以上で用いることを特徴とする請求項6に記載の中空糸膜モジュールの使用方法。
- 前記MLSSあるいはSSが活性汚泥または汚泥を主成分とすることを特徴とする請求項7に記載の中空糸膜モジュールの使用方法。
- 前記中空糸膜モジュールを廃水処理に用いることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の中空糸膜モジュールの使用方法。
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