JP3916780B2 - チルド流通における半調理食品の保存性向上法 - Google Patents
チルド流通における半調理食品の保存性向上法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えばチルド流通における半調理食品の保存性向上を図る食品保存性向上法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アブラナ科の植物である、ワサビ、ワサビ大根、カラシから抽出されるアリルカラシ油は、揮発性抗菌物質として知られており、この天然抽出物を食品の防カビ・防菌剤として適応させるため、今までに種々の研究がなされている。
【0003】
特に、アリルカラシ油が持つ特徴として、
(1) 刺激臭が強く食品にそのまま使用した場合、味や匂いに影響がでる。
(2) 揮発性であるので時間の経過と共に抗菌の効果が薄れる。
(3) 不安定であり、そのままの状態では、光、熱、空気、水等により分解されてしまう。
があるため、これらに重点を置いて研究が取り組まれてきた。
【0004】
例えば、特開平4−207179号公報に記載された発明は、常温で固形又はぺースト状の油溶性物質に保持させるものである。特開昭58−63348号公報に記載された発明は、ゼオライトに吸着させるものである。特開平2−109962号公報に記載された発明は、サクロデキストリンに包括させるものである。特公平6−87763号公報に記載された発明は、繊維状結晶構造を持つ粘土鉱物に含有させるものである。特開平8−12511号公報に記載された発明は、デンプンに混合させるものである。
【0005】
これらいずれの先行技術は、その使用方法において直接食品への接触を避け、アリルカラシ油の特徴である揮発性を利用するために様々な基材に包含・吸着、又は含浸させ、食品包装内での揮散を図り、徐放時間がなるべく長く継続するように工夫してその効果が十分持続するように試みている。
【0006】
この気相処理剤としての使用方法は、食品の置かれた環境雰囲気を抗菌性のある揮発性物質で充満させることにより、食品に対して非接触として、食品の味や匂いには影響を極力与えずに保存性の向上が図れる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれの先行技術も、製造方法が複雑であり、またアリルカラシ油の揮発性抗菌物質を環境雰囲気中に持続的、安定的に一定濃度で放出することが難しいため、防カビ・防菌の効果が低いものとなっている。また、この徐放コントロールが良好に行えないことが長時間の効果を望めない主な原因ともなっている。
【0008】
一方、アリルカラシ油の食品への直接接触による使用(例えば、含浸・塗布・噴霧等による)は、適用される食品の味・匂いによる品質への影響から、その取り扱いが困難であるため、実用化されていない。また、食品からの水分によるアルリカラシ油の分解が効果の低減をもたらすことからも、実用化されていないのが現状である。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑み、揮発性抗菌物質を直接食品に塗布しても刺激臭があまり残らず、喫食前の加熱により刺激臭を完全に消去できる濃度におさえ、尚かつ保存時には、揮発性抗菌物質の放出量を安定・継続的に放出することができ、徐放時間を長引かせ、防カビ・防菌効果を長時間効率的に行うことのできる食品保存性向上法を得ることを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本請求項1に記載された発明に係るチルド流通における半調理食品の保存性向上法は、常温で液体状の油脂とアリルカラシ油とを混合して食品保存性向上剤を調製し、
喫食時に開封して再加熱されるべきチルド流通における半調理麺の表面に、開封時の半調理麺表面の被膜から揮散するアリルカラシ油のガス濃度が 2.5ppm 〜 9.2ppm の範囲に収まるように前記食品保存性向上剤を塗布又は噴霧して該麺表面に被膜を形成させて密封するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明においては、常温で液体状の油脂とアリルカラシ油とを混合してなる食品保存性向上剤であるため、揮発性抗菌物質を直接食品に塗布しても刺激臭があまり残らない食品保存性向上剤を得ることができる。また、アリルカラシ油は液体状の油脂に分散されているため、含まれたアリルカラシ油の急激な揮散を妨げ、徐放性を調節してその防カビ・防菌の効果を長期的に持続するように働く。
【0015】
この食品保存性向上剤に含まれるアリルカラシ油は、前述の通り、ワサビ、ワサビ大根、カラシから抽出される天然抽出物である。尚、合成品では着香以外の用途に使用することを食品衛生法で禁じているため、天然のアリルカラシ油を使用する。
【0016】
また、本発明で使用する油脂は、食用で良く精製されたもので、常温で液状であり、凝固点がマイナスの温度帯に位置するものならばよい。好ましくは植物性油脂であり、例えば、菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、胡麻油、ベニバナ油等の単体又は混合油を用いることができる。
【0017】
これらの植物性油脂は、アリルカラシ油の添加時に加熱することなしに簡単な撹拌により容易に均一混合できる液体状のものであり、また食品に使用する際にもなんら加熱すること無しに使用できる液体状のものをいう。更には、これらの油脂の特徴としては、チルド流通の温度帯である0〜10℃においても固化しないものである。
【0018】
本発明では、好ましくは油脂中のアリルカラシ油の濃度が0.01wt%以上、2wt%以下である。これにより、喫食前の加熱により刺激臭を完全に消去できる濃度におさえることができ、尚且つ保存時には、揮発性抗菌物質の放出量を安定・継続的に放出することができ、徐放時間を長引かせ、防カビ・防菌効果を長時間効率的に行うことができる。
【0019】
濃度が0.01wt%を下回った場合、食品に塗布しても防カビ・防菌としての効力が弱く、目的とする保存期間が期待出来ず食品保存性向上剤としての目的が達成できないからである。また、濃度が2.00wt%を越えると、食品に塗布・噴霧等して食品表面に被膜を形成させた場合に、刺激臭が強くなりすぎて食品としての価値が失われてしまうからである。これら食品保存性向上剤の目的の達成及び食品の価値を失わない条件を十分に達成させるためには、より好ましくは、0.05wt%以上、1.00wt%以下とする。
【0020】
このようにして得られた食品保存性向上剤は、喫食時に再加熱される半調理食品表面に前記食品保存向上剤の被膜を形成させることにより、揮発性抗菌物質の放出量を安定・継続的に放出することができ、徐放時間を長引かせ、防カビ・防菌効果を長時間効率的に行うことができる。
【0021】
即ち、食品保存性向上剤を食品に塗布・噴霧等することにより、食品の表面上にアリルカラシ油を含んだ油脂で薄い被膜を形成させ、カビ・細菌の食品表面への直接接触による変敗を防ぐと共に、油脂から徐々に揮発して気相となったアリルカラシ油により食品の入った包装内部の環境をカビ・細菌の汚染から長期間保護することができる。
【0022】
このようにして液状油脂とアリルカラシ油を混合してなる食品保存性向上剤は、食品の表面上に付着することで液状油脂の特徴である粘性と被膜形成性により少量の添加でも、容易に食品の全面に広がり、表面に薄い被膜を形成する。尚、この被膜は、食品内部の水分が蒸発するのを遅らせる働きもある。従って、その食品保存性向上剤としての効果が高くなる。
【0023】
この食品保存性向上剤の具体的な半調理食品表面への被膜の形成方法としては、予め植物性油脂にアリルカラシ油を添加し均一に混合したものを用意しておき、食品が裸冷却され包袋に挿入されると同時に上部より包袋内にその混合液を十分拡散する方法、たとえば噴霧等で適量添加して密封する。
【0024】
また、トレー状、カップ状の容器内にこの半調理食品を入れる場合にも上記の方法で添加し容器上部を包装フィルムで密閉する。なお使用する包袋、包装フィルムの材質はエアーバリアー性の高いものが良い。例えば、ポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体のような酸素透過度が低い特徴を持った材質のものが良い。
【0025】
このようにして包袋内に密封した食品、例えばスパゲッティー、焼きそばの麺、うどん等の半調理麺は、食する時に開封し、その時点で多少のアリルカラシ油の刺激臭が残存していても加熱調理することで分解されてしまい、何ら問題無く食することができる。また、植物性油脂の使用により麺もほぐれ安く調理時の扱いも便利である。
【0026】
【実施例】
本実施例で使用するアリルカラシ油は、合成品では着香以外の用途に使用することを食品衛生法で禁じているため、天然のアリルカラシ油を使用した。天然品は、通常アブラナ科の植物である、ワサビ、ワサビ大根、カラシから抽出されるが、本発明では、カラシから抽出したアリルカラシ油を使用した。
【0027】
また、本実施例で使用する植物性油脂は、菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、胡麻油、ベニバナ油等、食用で良く精製されたもので、常温で液状であり、凝固点がマイナスの温度帯に位置するものならば問わず、それらの単体、または混合油を用いることができるが、アリルカラシ油の刺激臭を容易に認知できるように比較的香りの少ないコーン油、大豆油及び菜種油を用いた。
【0028】
実施例1
コーン油に0.2%の濃度となるようにアリルカラシ油を添加し混合して食品保存性向上剤を調製した。次にこの混合油を3ml、ゆでスパゲッティー麺150gの入った袋に入れて麺と混合し密封した。また、対照として混合油3mlの0.2%にあたる0.006mlのアリルカラシ油をゆでスパゲッティー麺150gの入った袋に入れて密封した。
【0029】
これらを10℃で保存し、パック内のアリルカラシ油のガス濃度をガスクロマトグラフで継時的に測定した(表1)。それと共に細菌検査も行った(表2)。結果を次の表1,表2に示す。表1及び表2に示す通り、本実施例のものは、18日経過後もガス濃度は4.0ppmあり、細菌検査結果も対象のものと比較して圧倒的に少ないものであった。尚、本実施例での9日経過後の食品テスト区及び対照において、調理中及び調理後の食品からはアリルカラシ油の刺激臭は認められなかった。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
実施例2
大豆油に2%の濃度となるようにアリルカラシ油を添加し混合して食品保存性向上剤を調製した。次にこの混合油0.5mlをさつま揚げに噴霧し密封した。また、対照として混合油0.5mlの2%にあたる0.01mlのアリルカラシ油をさつま揚げの入った袋に入れて密封した。
【0033】
これらを10℃で保存しパック内のアリルカラシ油のガス濃度をガスクロマトグラフで継時的に測定した(表3)。それと共に細菌検査も行った(表4)。結果を次の表3及び表4に示す。尚、本実施例での8日経過後の食品テスト区及び対照において、調理後の食品からはアリルカラシ油の刺激臭は認められなかったが、調理中の食品からアリルカラシ油の刺激臭が若干認められた。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
実施例3
菜種油に0.01%の濃度となるようにアリルカラシ油を添加し、混合した。次にこの混合油5mlを焼きうどん麺150gの入った袋に入れて麺に塗布し密閉する。また、対象として混合油5mlの0.01%に当たる0.5μlのアリルカラシ油を焼きうどん麺150gの入った袋に入れて密封した。
【0037】
これらを10℃で保存しパック内のアリルカラシ油のガス濃度をガスクロマトグラフで経時的に測定した(表5)。それと共に細菌検査を行った(表6)。結果を次の表5及び表6に示す。表5及び表6に示す通り、本実施例でのテスト区は、3日目までは充分な保存性効果を確認した。尚、本実施例での3日経過後の食品テスト区及び対照において、調理中及び調理後の食品からはアリルカラシ油の刺激臭は認められなかった。
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
実施例4
アリルカラシ油に関する刺激臭について、厳密性を期すため、ブラインド状態で、無作為の被験者からなる25名のパネラーを使って、官能テストを行った。コーン油に0.2%の濃度となるようにアリルカラシ油を添加し混合して食品保存性向上剤を調製し、この混合油を3ml、ゆでスパゲッティー麺150gの入った袋に入れて麺と混合し密封した食品を用意した。
【0041】
密封してから1日経過後このスパゲッティーを25人に試食してもらいその官能テストを実施した。この時の包袋内のアリルカラシ油のガス濃度をガスクロマトグラフで測定した値は9.2ppmであった、官能テストの結果を表7、表8に示す。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
以上の通り、本発明のアリルカラシ油と植物性油脂を混合する食品保存性向上剤は食品に直に使用しても刺激臭による食品の品質を損なわず、チルド温度条件下で長期の保存性効果が得られた。
【0045】
【発明の効果】
本発明は以上説明したとおり、揮発性抗菌物質を直接食品に塗布しても刺激臭があまり残らず、喫食前の加熱により刺激臭を完全に消去できる濃度におさえ、尚かつ保存時には、揮発性抗菌物質の放出量を安定・継続的に放出することができ、徐放時間を長引かせ、防カビ・防菌効果を長時間効率的に行うことのできる食品保存性向上法を得ることができるという効果がある。
Claims (1)
- 常温で液体状の油脂とアリルカラシ油とを混合して食品保存性向上剤を調製し、
喫食時に開封して再加熱されるべきチルド流通における半調理麺の表面に、開封時の半調理麺表面の被膜から揮散するアリルカラシ油のガス濃度が 2.5ppm 〜 9.2ppm の範囲に収まるように前記食品保存性向上剤を塗布又は噴霧して該麺表面に被膜を形成させて密封することを特徴とするチルド流通における半調理食品の保存性向上法。
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JP26601698A JP3916780B2 (ja) | 1998-09-21 | 1998-09-21 | チルド流通における半調理食品の保存性向上法 |
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