JP3916280B2 - 屈折率分布型レンズを用いた光ファイバコネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバを用いた光信号伝送技術に属するものであり、特に、マルチモードステップインデックス型の光ファイバ(以下、単に「SI型光ファイバ」と略す)を用いた光信号伝送において伝送可能な情報量を増大させるために用いられるモード入替え用光ファイバコネクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
SI型光ファイバは、光信号伝送の媒体として広く使用されている。SI型光ファイバを伝搬する光には多数のモードが存在する。従って、SI型光ファイバを用いた光信号伝送では、光ファイバ端面に対する入射角・出射角が大きい高次モードの光は光ファイバ端面への入射角・出射角が小さい低次モードの光より光ファイバ長手方向の伝搬速度が遅くなるので、モードによって光ファイバ長手方向の伝搬速度が異なるというモード分散の現象がある。これにより、入射端から入射した信号パルスは、出射端においては、低次モードの光と高次モードの光とが合成されることによりパルス形状が劣化する。このため、特に高い周波数の信号を伝送することができないという問題がある。
【0003】
伝送可能な信号の周波数範囲を伝送帯域といい、一般に伝送可能な上限周波数値で示す。伝送帯域が広いということは、一定時間に伝達可能な情報量を多くすることができるということである。
【0004】
SI型光ファイバを用いた光信号伝送では、既に述べた様に、モード分散による信号劣化が原因で伝送帯域が制限され、例えば100m伝送における典型的な値で数十MHz〜百数十MHzと低い。
【0005】
そこで、本発明は、SI型光ファイバを用いる光信号伝送の伝送帯域を大幅に改善し、伝達可能な情報量を増大させるのに使用される光学要素を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
ステップインデックス型の光ファイバを用いて光信号を伝送する際に光入射側の第1の光ファイバと光出射側の第2の光ファイバとの間に介在せしめられる光ファイバコネクタであって、
この光ファイバコネクタは、
前記第1の光ファイバの出射端及び前記第2の光ファイバの入射端と共通の光軸を持つように配置され、
中心軸からの距離rの関数で表される屈折率分布n(r)[0≦r≦r0]を持ち、該屈折率分布n(r)は前記rが0を越え且つr0未満である特定値rmにおいて極大値を有する上に凸の関数である、屈折率分布型円柱レンズ5の第1の端面及び第2の端面に、屈折率分布が中心軸からの距離Rの関数であって上に凸の滑らかな単調減少関数N(R)で表される第1の屈折率分布型円柱レンズ3及び第2の屈折率分布型円柱レンズ4をそれぞれ備えており、前記第1の屈折率分布型円柱レンズ3は前記第1の光ファイバの出射端から出射される光を前記屈折率分布型円柱レンズ5の第1の端面に導く機能を有し、前記第2の屈折率分布型円柱レンズ4は前記屈折率分布型円柱レンズ5の第2の端面から出射される光を前記第2の光ファイバの入射端に収束させて導く機能を有し、
前記第1の光ファイバから前記光軸に対して比較的大きな傾きをもって出射された高次モード光が前記第2の光ファイバへと前記光軸に対して比較的小さな傾きをもって低次モード光として入射され、且つ前記第1の光ファイバから前記光軸に対して比較的小さな傾きをもって出射された低次モード光が前記第2の光ファイバへと前記光軸に対して比較的大きな傾きをもって高次モード光として入射されるように構成されている、
ことを特徴とする、モード入替え機能を持つ光ファイバコネクタ、
が提供される。
【0007】
本発明の一態様においては、rm =r0 /2である。
【0008】
屈折率分布n(r)の好ましい態様は、例えば、rm =r0 /2でn(rm −r)=n(rm +r)を満たす上に凸の関数であり、具体的にはrm における屈折率をnm とした場合に
n(r)=rm −a(r−rm )2
の如き式で近似できる関数である。
【0010】
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
前記光ファイバコネクタにおいて、
前記第1の屈折率分布型円柱レンズ3の代わりに同様の機能を有する少なくとも1つの凸レンズを配置し、
前記第2の屈折率分布型円柱レンズ4の代わりに同様の機能を有する少なくとも1つの凸レンズを配置してなる、モード入替え機能を持つ光ファイバコネクタ、
が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
先ず、本発明のモード入替え機能を持つ光ファイバコネクタの使用される光信号伝送方法について説明する。図1はこの光信号伝送方法の一実施形態を示す模式的断面図であり、図2はその伝送路の全体を示す模式図である。
【0013】
以下において、説明の便宜上、低次モード光として光軸近傍の光を代表的に図示して説明し、高次モード光として光軸から最も遠い外周部(周辺部)近傍の光を代表的に図示して説明する。但し、本発明でいう低次モード光及び高次モード光は、これら図示されたもののみに限定されるものではないことはもちろんである。
【0014】
図1及び図2において、21は第1のSI型光ファイバであり、22は第2のSI型光ファイバであり、23はこれら2つの光ファイバ21,22を接続する光ファイバコネクタである。光ファイバ21はコア21aとクラッド21bとからなり、光ファイバ22はコア22aとクラッド22bとからなる。
【0015】
図2に示されているように、光信号は、光ファイバ21の一方の端部から入射され(IN)、光ファイバ21の他方の端部から出射して光ファイバコネクタ23の一方の端部に入射され、光ファイバコネクタ23の他方の端部から出射して光ファイバ22の一方の端部へと入射され、光ファイバ22の他方の端部から出射する(OUT)。
【0016】
図1を用いて更に詳細に説明する。光ファイバ21の一方の端面に同時に入射した低次モードの光(入射角が小さい光)Aと高次モードの光(入射角が大きい光)Bとは、光ファイバ21中を伝搬し、それぞれ光ファイバ21の他方の端面からA’,B’として出射する。この出射の際には、高次モード光B’は低次モード光A’に対して時間的遅れΔtを持つ。これらの光A’,B’は、光ファイバコネクタ23を経て光ファイバ22の一方の端面に入射する。
【0017】
本実施形態では、光ファイバコネクタ23において、入射時には低次モードであった光A’を高次モード光に変換して出射させ、入射時には高次モードであった光B’を低次モード光に変換して出射させる。かくして、光ファイバコネクタ23においてモード入替えがなされ、光ファイバ22の一方の端面には、光A’が高次モードとして且つ光B’が低次モードとして入射する。
【0018】
従って、光ファイバ22の一方の端面に時間的ずれΔtをもって入射した低次モード光B’と高次モード光A’とは、光ファイバ22中を伝搬し、光ファイバ22の他方の端面からB”,A”として出射する時には、光ファイバ22への入射時の時間的ずれΔtが解消され、低次モード光B”と高次モード光A”とはほぼ同時に出射する。これにより、モード分散が解消され、伝送帯域が改善される。
【0019】
光ファイバ21の長さと光ファイバ22の長さとは原理的には等しくとるべきであり、この場合に伝送帯域改善の効果は最大となるが、光ファイバ21の長さと光ファイバ22の長さとが若干異なっても充分な効果が認められる。例えば、光ファイバ21の長さと光ファイバ22の長さとが20%程度異なっていても、伝送帯域の低下は僅かである。また、光ファイバ21の長さと光ファイバ22の長さとの差が50%程度に拡大したとしても、本発明の伝送方法を使用しない場合の2倍程度の伝送帯域は得られ、明らかな効果が認められる。
【0020】
図3は以上のような光伝送方法に用いられる本発明の光ファイバコネクタ23の第1の実施形態を示す模式的断面図であり、図4はその概略斜視図である。
【0021】
本実施形態では、SI型光ファイバ21の出射端とSI型光ファイバ22の入射端とは同軸状に対向配置されている。これらの間において、光ファイバコネクタ23が同軸状に配置されている。光ファイバコネクタ23は2つの第1種の屈折率分布型円柱レンズ3,4とこれらの間に配置された1つの第2種の屈折率分布型円柱レンズ5とからなる。
【0022】
図5及び図6は以上のような円柱レンズ3,4,5の特性及び機能を説明するための概略図である。図5に示されているように、円柱レンズ3,4,5はいずれも、屈折率が中心軸Zからの距離r,Rの関数である。円柱レンズ3,4の屈折率分布をN(R)とし、円柱レンズ5の屈折率分布をn(r)とすると、これらの屈折率分布は、図6の様になっている。即ち、円柱レンズ3,4としては、たとえば、等倍結像素子としてのアレイに利用されているものが例示される。屈折率分布N(R)は、中心軸Z(光ファイバ21,22の光軸と合致する様にして配置される)の位置(即ちR=0)が最も屈折率が高く、半径Rが大きくなるにつれて次第に屈折率が小さくなる単調減少関数の形態をとる。この曲線は例えば2次曲線あるいは4次曲線で近似される。これに対して、本発明による円柱レンズ5の屈折率分布n(r)は、図6の実線に示すとおり、特定値rm で極大値をとる上に凸の曲線となる。円柱レンズ5の断面全体が有効に機能するためには、rm をr0 /2に等しくすることが望ましい。rm がr0 /2より小さいと半径が2rm を越える外周部が利用されなくなり、rm がr0 /2より大きいと半径が(2rm −r0 )より小さい内周部が利用されなくなり、無駄を生ずる。
【0023】
図3に示されている様に、光ファイバ21の出射端から出射した光は、円柱レンズ3を通って、円柱レンズ5の一端面に入射する。その際、光ファイバ21の出射端から出射した光はその出射角に対応した位置に収束され、高次モード光は破線で示されている様に円柱レンズ5の周辺部に入射し、一方、低次モード光は実線で示されている様に円柱レンズ5の中心部に入射する。円柱レンズ5の長さ並びに屈折率及びその分布を適正に設定することで、円柱レンズ5の一端面の周辺部に入射した高次モード光を他端面の中心部から出射させることができ、円柱レンズ5の一端面の中心部に入射した低次モード光を他端面の周辺部から出射させることができる。これらの出射光は、円柱レンズ4へと入射し、その入射位置に対応した角度の光に変換された上で、光ファイバ22の入射端へと入射する。即ち、円柱レンズ4は、円柱レンズ5の出射端面の外周部からの光を第2の光ファイバ22に高次モード光として入射させるとともに、円柱レンズ5の出射端面の中心部からの光を第2の光ファイバ22に低次モード光として入射させる。
【0024】
かくして、光ファイバ21から円柱レンズ3を通って円柱レンズ5の周辺部に入射した高次モード光は、円柱レンズ4を通って光ファイバ22へと入射する際には、光軸とのなす角度が小さくなっているので低次モード光として光ファイバ22へと導入され、一方、光ファイバ21から円柱レンズ3を通って円柱レンズ5の中心部に入射した低次モード光は、円柱レンズ4を通って光ファイバ22へと入射する際には、光軸とのなす角度が大きくなっているので高次モード光として光ファイバ22へと導入される。かくして、光ファイバコネクタ23により、低次モード光と高次モード光とが変換され(入替えられ)たことなる。
【0025】
円柱レンズ3,4を製造する方法としては、たとえば、有機重合体と単量体とからなる3種類以上の未硬化状混合物を同心円状に多層紡糸して、中心部から外周部に向かって屈折率が順次減少したファイバ状の未硬化物積層体を形成し、この積層体の各層間の屈折率分布が連続的に変化する様に隣接層間の成分の相互拡散を行いながら或は相互拡散を行った後に、積層体を硬化処理して屈折率分布型の光ファイバを得(前記特開平3−174105号公報参照)、これを適宜の長さに切断する方法が挙げられる。更に、ファイバを延伸して細径化することで、屈折率分布を調整することもできる。
【0026】
同様にして、本発明の円柱レンズ5を製造することができる。この場合には、多層紡糸の際に、中心部から外周部に向かって一旦屈折率が順次増加し続いて屈折率が順次減少する様にしたファイバ状の未硬化物積層体を形成し、この積層体の各層間の屈折率分布が連続的に変化する様に隣接層間の成分の相互拡散を行いながら或は相互拡散を行った後に、積層体を硬化処理すればよい。
【0027】
図7は本発明の光ファイバコネクタの第2の実施形態を示す模式的断面図であり、図8はその概略斜視図である。これらの図において、図1〜6におけると同様の機能を有する部材には同一の符号が付されている。
【0028】
本実施形態では、光ファイバコネクタ23は円柱レンズ5と、該円柱レンズ5への光入射側に配置された2つの凸レンズ9,10と円柱レンズ5の光出射側に配置された2つの凸レンズ11,12とからなる。凸レンズ9は光ファイバ21の出射端に取り付けられており、凸レンズ11は光ファイバ22の入射端に取り付けられており、これら凸レンズ9,11は同等のものである。また、凸レンズ10は円柱レンズ5の入射端に取り付けられており、凸レンズ12は円柱レンズ5の出射端に取り付けられており、これら凸レンズ10,12は同等のものである。
【0029】
本実施形態では、図3及び図4の実施形態の円柱レンズ3の機能を凸レンズ9,10に負担させており、図3及び図4の実施形態の円柱レンズ4の機能を凸レンズ11,12に負担させている。凸レンズ9,10を一体化し、凸レンズ11,12を一体化することもできる。
【0030】
本実施形態は図3及び図4の実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、光ファイバ伝送路の途中に本発明による特殊な屈折率分布型レンズを用いたモード入替え機能を有する光ファイバコネクタを介在させることによって、モード分散を抑制して伝送帯域を向上させ、伝達可能な情報量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光信号伝送方法の一実施形態を示す模式的断面図である。
【図2】図1の光信号伝送方法の伝送路の全体を示す模式図である。
【図3】本発明の光ファイバコネクタの実施形態を示す模式的断面図である。
【図4】図3の光ファイバコネクタの概略斜視図である。
【図5】本発明の光ファイバコネクタに使用される屈折率分布型円柱レンズの特性及び機能を説明するための概略図。
【図6】本発明の光ファイバコネクタに使用される屈折率分布型円柱レンズの特性及び機能を説明するための概略図。
【図7】本発明の光ファイバコネクタの実施形態を示す模式的断面図である。
【図8】図7の光ファイバコネクタの概略斜視図である。
【符号の説明】
3,4,5 屈折率分布型円柱レンズ
9,10,11,12 凸レンズ
21,22 光ファイバ
23 光ファイバコネクタ
Claims (3)
- ステップインデックス型の光ファイバを用いて光信号を伝送する際に光入射側の第1の光ファイバと光出射側の第2の光ファイバとの間に介在せしめられる光ファイバコネクタであって、
この光ファイバコネクタは、
前記第1の光ファイバの出射端及び前記第2の光ファイバの入射端と共通の光軸を持つように配置され、
中心軸からの距離rの関数で表される屈折率分布n(r)[0≦r≦r 0 ]を持ち、該屈折率分布n(r)は前記rが0を越え且つr 0 未満である特定値r m において極大値を有する上に凸の関数である、屈折率分布型円柱レンズ(5)の第1の端面及び第2の端面に、屈折率分布が中心軸からの距離Rの関数であって上に凸の滑らかな単調減少関数N(R)で表される第1の屈折率分布型円柱レンズ(3)及び第2の屈折率分布型円柱レンズ(4)をそれぞれ備えており、前記第1の屈折率分布型円柱レンズ(3)は前記第1の光ファイバの出射端から出射される光を前記屈折率分布型円柱レンズ(5)の第1の端面に導く機能を有し、前記第2の屈折率分布型円柱レンズ(4)は前記屈折率分布型円柱レンズ(5)の第2の端面から出射される光を前記第2の光ファイバの入射端に収束させて導く機能を有し、
前記第1の光ファイバから前記光軸に対して比較的大きな傾きをもって出射された高次モード光が前記第2の光ファイバへと前記光軸に対して比較的小さな傾きをもって低次モード光として入射され、且つ前記第1の光ファイバから前記光軸に対して比較的小さな傾きをもって出射された低次モード光が前記第2の光ファイバへと前記光軸に対して比較的大きな傾きをもって高次モード光として入射されるように構成されている、
ことを特徴とする、モード入替え機能を持つ光ファイバコネクタ。 - rm=r0/2である、請求項1に記載の光ファイバコネクタ。
- 請求項1または2において、
前記第1の屈折率分布型円柱レンズ(3)の代わりに同様の機能を有する少なくとも1つの凸レンズを配置し、
前記第2の屈折率分布型円柱レンズ(4)の代わりに同様の機能を有する少なくとも1つの凸レンズを配置してなる光ファイバコネクタ。
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