JP3915995B2 - 分子量分布の狭いスチレン系共重合体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、分子量分布の狭いスチレン系共重合体およびその製造方法に関するものであり、各種成形体及びそれらへの添加剤、各種情報記録材、各種コーティング材などとして有用に利用される。
従来より、付加重合としての重合形態を有するポリマーを製造するにあたり、分子量が制御され、かつ分子量分布が狭いポリマーを製造する場合、イオン重合法、配位重合法などの重合法が用いられており、付加重合を行う際に一般に採用されているが、ラジカル重合法によっては、分子量と分子量分布の制御されたポリマーを製造するのは困難とされてきた。そこで分子量及び分子量分布を制御するためには、下記の要件が必要であると考えられる。
[1]全ての重合開始剤が同時に重合反応を開始すること
[2]ポリマー生長末端が停止反応、連鎖移動反応などを起こさないこと
[3]開始剤由来でない重合(熱重合など)を起こさないこと
一般に、イオン重合法などにおいては、開始剤種の選択、反応系内の不純物の除去、低温での重合の実施により、上記の要件を満たすことを条件として、分子量及び分子量分布を制御することが可能である。しかしながら、通常のラジカル重合法では、全ての開始剤が同時に重合反応を開始しない(全ての開始剤が重合を開始するまでに要する時間が生長反応に要する時間と比較して充分に長い)、反応系内の不純物の除去を行っても停止反応、連鎖移動反応を抑制できない(生長ポリマー末端の、他の生長ポリマー末端との停止反応、連鎖移動反応を抑制できない)などの点で上記の要件を満たすことができなかった。
ところが、近年、分子量分布の狭いポリマーの製造方法が報告され関心を集めている。その製造方法として、例えば、Commonwealth Sci. & Ind. Org. の米国特許明細書4581429 号記載のラジカル重合性開始剤とニトロオキサイド系の安定なラジカル性化合物を組み合わせた特殊な開始剤系を用い、分子量分布の狭いポリマーを製造する方法が提案された。この方法では、ラジカル重合性開始剤が分解して生成した、モノマーを重合させる程度の活性を有する、つまり不安定なフリーラジカル(X・)と、ニトロオキサイド系化合物のようなモノマーを重合させる程度の活性を有しない、つまり安定なフリーラジカル(Y・)を反応させた開始剤系(X−Y)が使用される。この開始剤系は以下の式(1)に示すような平衡を持ち、式中の左辺の状態(ラジカルでない状態)ではモノマーを重合させる程度の活性を有しないが、右辺の状態でのX・はモノマー(M)を重合させる程度の活性を有するためモノマーを重合し、その後速やかに左辺の状態のようなモノマーを重合しない状態に戻るものである。
Figure 0003915995
前記式(1)において、X・とY・との反応が速いと、停止反応及び連鎖移動反応が起こらず、また全ての開始剤系が同程度のモノマー付加速度で下記式(2)に示す反応を繰り返すこととなり、全てのポリマーが同程度の分子量となり、つまり分子量分布の狭いポリマーが生成することになる。
Figure 0003915995
しかしながら、前述の先行特許記載の方法により得られる分子量分布の狭い(重量平均分子量/数平均分子量が1.5 以下)ポリマーはポリスチレンといったホモポリマーの場合のみであり、例えば、ポリマーのガラス転移温度や溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性の制御が困難であるという実用上の問題を有しており、また分子量分布の狭さを維持したままで、ニトリル基、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの官能基の導入が困難である、などの問題を有している。実際に、Commonwealth Sci. & Ind. Org. の米国特許明細書4581429号記載の実施例において、各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのホモオリゴマーやアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコオリゴマーでは、重量平均分子量/数平均分子量がいずれも1.7以上もあり、分子量分布が狭いとは言い難い。
なお本発明者らは以下の実験結果より、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの場合には上記反応式(1)および(2)におけるY・が2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシの場合にはM−Yの結合が解裂しないという知見を得ている。
[1]ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド、安定なフリーラジカル化合物として2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシを用い、アクリル酸エチルやアクリロニトリルなどの単独重合を重合温度125℃において行った場合、ポリマーは得られず、上記のM−Y結合の解裂が起こらないと推定された。
[2]ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド、安定なフリーラジカル化合物として2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシを用い、第一段目の反応としてスチレンの単独重合を重合温度125 ℃において行い、その後、反応系内にアクリル酸エチルを添加しブロック化を検討したところ、重合時間の経過に伴う重量平均分子量の増加分は初期にアクリル酸エステル単位30〜40個程度を付加したところで停止してしまうことを見いだした。これは、第一段目の反応後の分子鎖末端である(スチレン)−Y間の結合が熱的に解裂し、生成したポリマーラジカル末端にアクリル酸エチルが一回の解裂の際に30〜40個付加し、その後Y・が末端と再結合するが、(アクリル酸エチル)−Y間の結合が解裂しないため、重合がそこで停止してしまうことによると推定された。
これに対して、Xerox corp. の米国特許明細書5412047号によると、アクリル酸ブチルの分子量分布の狭いホモポリマーの製造方法に関する技術が開示されており、上記反応式(1)におけるY・を2,2,6,6-テトラメチル-1- ピペリジニルオキシ(以下TEMPO という)から4-オキソ-2,2,6,6- テトラメチル-1- ピペリジニルオキシ(以下4-oxo-TEMPO という)に変更することで(アクリル酸ブチル)−Yの結合を解裂し易くさせて上記の問題を解決している。しかしながら、前記明細書の実施例に示されているとおり、重合温度は165 ℃と高温であり、4-oxo-TEMPO がTEMPO よりも更に高価であるなどの問題点を有している。また、共重合を行わせるためにはモノマー種により開始剤の組み合わせをその度に最適化する必要があるなどの問題も有している。
本発明は、分子量分布の狭い共重合体を製造する際に、共重合によるTgや溶剤溶解性や相溶性の制御、官能基の導入および開始剤系の変更などを行うことなく重合して、分子量の狭い共重合体を得ることを課題をするものである。
前記課題を解決するため、本発明者らは、生長末端制御を鋭意追求し、前末端基効果を考慮した、ラジカル生長末端のラジカルとしての反応性(ラジカルとしての安定性)に注目することで解決する方法を見いだし、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、以下の要件を満足することを特徴とするスチレン系共重合体および安定なニトロオキサイド系ラジカル化合物/ラジカル重合用開始剤がモル比で0.9 〜1.3 の割合で混合・加熱して得られた化合物存在下で、スチレンおよび他の不飽和単量体を重合温度100 〜180 ℃の範囲においてラジカル重合を行い得られることを特徴とする前記スチレン系共重合体の製造方法である。
(1) ゲルパーミェーションクロマトグラフ法(以下GPCという)により測定されるポリスチレン換算分子量において、重量平均分子量が3000〜100000の範囲である。
(2) GPCにより測定されるポリスチレン換算分子量において、重量平均分子量/数平均分子量が1.1 〜1.3 の範囲である。
(3) 共重合体中に、スチレン及びスチレン誘導体を30〜99モル%およびその他の不飽和単量体の中から選ばれる1種または2種以上を1〜70モル%含む。
本発明者らは開始剤として過酸化ベンゾイル−TEMPO 系について、先行技術における重合機構を詳細に検討した結果、前述したように、重合を行うモノマーにより以下に示す式(3)の平衡における平衡定数(ka/kb )に違いがあり、スチレンを使用した際には、X−M・の状態が存在すると推定できるのに対して、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルを使用した場合にはM−Yの結合が極めて安定であり(M−Yの結合が解裂しにくく)、X−M・が生成しにくいため、目的とする重合形態では重合が進行しにくく、分子量分布の狭いポリマーは得られない。
Figure 0003915995
しかしながら、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルについて更に詳細に検討を行うと、スチレンと共重合させる場合については比較的高分子量であり、かつ、分子量分布が狭いコポリマーを得ることが可能であることを見いだした。この原因については本発明者らは以下のように推定している。例えば、スチレンとアクリル酸エステルの共重合について、生長末端は以下の4種が存在すると考えられる。
[1]−(スチレン)−(スチレン)−Y
[2]−(スチレン)−(アクリル酸エステル)−Y
[3]−(アクリル酸エステル)−(スチレン)−Y
[4]−(アクリル酸エステル)−(アクリル酸エステル)−Y
このうちの[1]、[3]については(スチレン)−Y間の結合の解離が起こり、分子量分布の狭いポリマーが得られる場合の生長末端と同一であり、目的とする重合形態で重合が進むと考えられる。これに対して[2]については本来は目的とする重合形態で重合が進まないと考えられるが、実際には分子量分布の狭いコポリマーが生成していることから、生長末端の一つ前のモノマーの影響(前末端効果)を受け、[1]、[3]と同様な重合形態で重合が進んだものと推定される。[4]については目的とする重合形態で重合が進まないので分子量分布を狭くすることは困難であるが、このような生長末端については、(末端スチレンポリマーラジカル数)/(全ラジカル数)>0.8を満たすような条件下で重合を行うことにより生成を回避できる。末端スチレンポリマーラジカル数及び全ラジカル数は、スチレン(ST)とアクリル酸エステル(EA)の共重合の場合、以下の式により得られる。
(末端スチレンポリマーラジカル数)=rST ・fST /k11
(全ラジカル数)=rST ・fST /k11 + rEA ・fEA /k22
(式中、rST, rEAはSTとEAの共重合の場合のそれぞれの反応性比、fST, fEAはそれぞれの仕込み量、k11, k22はそれぞれの単独重合速度定数を指す)
以上のことから、目的とする重合形態で重合を行うためには、−M−YのM−Y結合が解裂しやすいことが必要であるが、特に、前末端効果を考慮した末端のラジカルの生成のしやすさ及び解裂しにくい結合の生成の起こりにくさの2点が重要であり、上記の点を考慮した系においてのみ、分子量分布が狭い共重合体を得ることが可能になる。さらに本発明者らは、発明の詳細な説明の以下の各項について検討を重ね、本発明の目的である、分子量分布が狭く、ガラス転移温度、溶剤溶解性、他の樹脂との相溶性、官能基の導入といった従来の問題点の解決された、共重合体を極めて高いレベルにおいて満足し、同時に工業的実施にたえうる合理的な製造プロセスとして本発明に到達した。以下に各項について説明する。
以下の構成よりなる本発明は、従来の方法では得られなかった分子量分布の狭いスチレン系共重合体を得ることができ、その利用範囲が飛躍的に拡大するものであり、産業界に寄与すること大である。
(ポリマー分子量、分子量分布、組成)本発明における共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下、GPC)により測定されるポリスチレン換算分子量において重量平均分子量が3000〜100000の範囲である。3000未満の場合、成形体として用いた場合に力学強度が低い。一方100000を越えると、溶融粘度などが高く、成形体として用いる場合には作業性が悪く、また、添加剤として用いた場合には混和性が悪いので好ましくない。
本発明における共重合体は、GPCにより測定されるポリスチレン換算分子量において、重量平均分子量/数平均分子量が1.1 〜1.3 の範囲である。重量平均分子量/数平均分子量が1.3 を越えると、分子量分布が狭いことによる種々の特徴(力学物性の改善、耐熱性の改善、配向度の上昇など)が失われるので好ましくない。
本発明における共重合体の組成は、スチレン及びスチレン誘導体を30〜99モル%、好ましくは35〜99モル%、更に好ましくは40〜99モル%である。30モル%未満では、分子量分布が広くなるので好ましくない。
前記スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、p−ニトロスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。その他の本発明共重合体を構成する共重合成分である不飽和単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステル類、マレイン酸及びその無水物、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸モノエステル及びジエステル類、フマル酸、フマル酸ジブチルなどのフマル酸モノエステル及びジエステル類、イタコン酸及びイタコン酸モノエステル及びジエステル、シトラコン酸及びシトラコン酸エステル類、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルイソプロピルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、メタクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ジメチルイソプロピルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルエーテル類、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾールなどのビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、などを例示することができ、これらの中から一種または複数種を選んで用いることができる。上記の共重合成分を共重合することにより、ガラス転移温度、溶剤溶解性、他の樹脂との相溶性、各種官能基及びその量などを制御することができる。
ポリマー組成は前項において述べたように、モノマー反応性比、前末端基効果を考慮して決定する必要がある。例えば、共重合成分がスチレン及びスチレン誘導体と共重合性が悪い場合、重合の進行に伴い、残存のモノマー組成においてスチレン誘導体が30モル%未満になると、末端スチレンラジカル数の全ラジカル数に対する割合の低下に伴い、ラジカル生長末端部の結合の解裂が起こりにくくなり、分子量分布が広くなる場合がある。そのような意味から、常に残存モノマー組成には注意が必要であり、スチレン及びスチレン誘導体が30モル%未満にならないように、例えば、重合を行うモノマーを一括で反応系内に投入する場合は、仕込み組成がポリマー組成と一致する組成(アゼオトロピックな組成)であることが好ましく、一括で投入せず反応の進行と共にモノマーを添加する場合は、スチレン及びスチレン誘導体が30モル%未満にならないようにモノマーを添加する重合形態が望ましい。また、モノマーを重合の進行に伴い添加する場合には、添加するモノマー組成を徐々に変化させることで1本の分子鎖中で徐々にポリマー組成が変化するポリマーを得ることができる。逆に、添加するモノマー組成を大きく変化させることで、セグメント長の揃った、ブロックポリマーを得ることもできる。
更に、上記の重合実施後のラジカル生長末端部について検討を行った結果、以下の一般式(4)にも示すとおり、−M−Y結合は熱的に解裂しやすく、モノマーの重合を行うことができるが、この段階において反応系内のモノマー組成をスチレン及びスチレン誘導体が0〜30モル%になるようにモノマーを添加することで重合を停止させることができる。また、その際に二官能性ジアクリル酸エステルまたはジメタクリル酸エステルを反応系内に添加した場合、二官能のうちの一官能のみが反応した二官能性ジアクリル酸エステルまたはジメタクリル酸エステルが片末端に付加したポリマーが生成し、分子量分布の狭いマクロモノマーの合成に有用である。二官能性ジアクリル酸エステルまたはジメタクリル酸エステルとしては、各種二官能以上のアルコールのジアクリル酸エステルやジメタクリル酸エステルが挙げられ、例えば、エチレングリコールジアクリル酸エステル、ジエチレングリコールジアクリル酸エステル、トリエチレングリコールジアクリル酸エステル、グリセリンジアクリル酸エステル、ペンタエリスリトールジアクリル酸エステル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールジメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、グリセリンジメタクリル酸エステル、ペンタエリスリトールジメタクリル酸エステルなどを挙げることができる。この場合、アクリロイル基は単独重合速度が大きく、末端解裂時に数十個のモノマーが付加するため、片末端にアクリロイル基を1個のみ導入する場合は、系内の末端濃度、モノマー濃度、モノマー組成を勘案して反応を行うことが必要である。このマクロモノマーを通常のラジカル重合の手法を用い各種モノマーと共重合することにより側鎖長の揃った側鎖密度の高いグラフトポリマーやスターバーストポリマーを合成することが可能である。この共重合の際に使用できるモノマーは前記の汎用のモノマーが挙げることができる。
Figure 0003915995
(重合開始剤)本発明共重合体を得る際に用いられる、安定なニトロオキサイド系ラジカル化合物とラジカル重合用開始剤とから得られる化合物としては、特公平5−6537号公報に記載の化合物を用いることができ、ラジカル重合用開始剤として具体的には、ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが使用できる。また、反応時に併用して使用される安定なニトロオキサイド系ラジカル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシなどのニトロオキサイド化合物などが使用できる。本発明における重合開始剤と安定なニロトオキサイド系フリーラジカル化合物の配合比は、安定なフリーラジカル化合物/重合開始剤=0.9 〜1.3 (モル比)が好ましく、より好ましくは0.95〜1.25、更に好ましくは1.0 〜1.2 の範囲でである。0.9 未満では目的とする重合形態での重合反応と従来のラジカル重合反応が平衡して起きるため分子量分布がシャープにならず、1.3 を越えると重合開始までの時間が大幅に長くなり好ましくない。また、開始剤種により開始剤効率も違うことも勘案して比を決定することが必要である。なお安定なニトロオキサイド系ラジカル化合物とラジカル重合用開始剤とは、予め反応させて化合物を得ておいてもよいが、本発明共重合体を得る際に、反応系内に各々を配合してもよい。
(重合形態)本発明共重合体は、各種の重合方法、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などにより得ることができる。例えば、溶液重合方法を採用する場合に使用できる反応溶媒として、生成するポリマーを溶解する汎用の溶媒、例えば、芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類(環状エーテル類、グリコールエーテル類など)、をN−置換アミド類、アルコール類、カルボン酸類、アミン類などの有機溶剤を用いることができる。また懸濁重合及び乳化重合方法を採用する場合には、従来公知の界面活性剤、緩衝剤などの各種添加剤を添加することができる。なお前記重合温度は、100 〜180 ℃、好ましくは110 〜160 ℃、特に110 〜140 ℃が望ましい。
(利用形態)本発明共重合体は、成形体などとして単独で使用可能であるが、必要に応じて各種の添加剤を添加して、さらにその応用範囲を広げることができ、各種添加剤としては、フェノール類、クレゾール類、エポキシ類、イソシアネート類などの各種の硬化剤、顔料、染料などが挙げられる。また本発明共重合体は、各種樹脂への添加剤、特に強化剤としても利用可能である。添加される樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂など汎用の樹脂が挙げられる。さらに各種ポリマーアロイ用の相溶化剤や、相分離形成剤としても用いることができる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例中、単に部とあるのは重量部を表し、%とあるものは重量%を示す。各測定項目は以下の方法に従った。
(1)数平均分子量、重量平均分子量、重量平均分子量/数平均分子量:試料10mgをテトラヒドロフラン20ccに溶解し、GPC-LALLS 装置低角度光散乱高度計LS-8000 (東ソー株式会社製、テトラヒドロフラン溶媒、リファレンス:ポリスチレン)で測定した。また、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn )は、得られた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)から求めた。
(2)重合率:GPCにより検量線を作成し、残存モノマー量を測定して求めた。
(3)共重合組成の決定:13C-NMR により組成を決定した。
実施例1スチレン 7.12 ml、アクリロニトリル 2.49 ml、過酸化ベンゾイル 0.000336モル、TEMPO 0.000672モルを試験管に仕込み、減圧下において凍結・脱気を繰り返した後、封管し、125 ℃にて重合を実施した。スチレンの全モノマーに対するモル分率は、0.62である。各重合時間における、重合率及びポリマー中の各モノマー組成を求めた。結果を表1に示す。また、得られたポリマーの13C-NMR チャートを図1〜3に示す。
Figure 0003915995
実施例2スチレンの全モノマーに対するモル分率が0.49である以外は、実施例1と同様に重合を実施した。その結果を表2に示す。
Figure 0003915995
実施例3アクリロニトリルの代わりにアクリル酸エチルを用い、スチレンの全モノマーに対するモル分率が0.77である以外は、実施例1と同様に重合を実施した。その結果を表3に示す。
Figure 0003915995
実施例4アクリロニトリルの代わりにビニルカルバゾールを用い、スチレンの全モノマーに対するモル分率が0.79である以外は、実施例4と同様に重合を実施した。その結果を表4に示す。
Figure 0003915995
比較例1スチレン 7.12 ml、アクリロニトリル 2.49 ml、過酸化ベンゾイル 0.000336モルを試験管に仕込み、減圧下において凍結・脱気を繰り返した後、封管し、125 ℃にて重合を実施した。スチレンの全モノマーに対するモル分率は、0.62である。その後、重合を5時間継続しスチレン−アクリロニトリル共重合体を得た。数平均分子量13000 、重量平均分子量/数平均分子量 3.84 、重合率 81%、ポリマー中のSTモル分率 0.63 であった。
実施例5スチレン 7.12 ml、過酸化ベンゾイル 0.000336 モル、TEMPO 0.000672モルをガラス製反応器に仕込み、窒素置換した後、125 ℃にて重合を実施した。24時間反応を継続し、Mn 22000、Mw/Mn 1.18の分子量分布の狭い、片末端にTEMPO が結合したポリスチレンを得た。次に得られたポリスチレンをスチレン・アクリロニトリル混合モノマー中(混合モノマー中のスチレンモル分率 0.63 )に22重量%になるように溶解し、窒素雰囲気下で125 ℃に加熱し、重合を開始した。その後、各重合時間における、重合率及びポリマー中の各モノマー組成を求めた。その結果を表5に示す。なお5,10時間後のポリマーをウンデカンケトンに溶解したところ、室温では溶液が白濁し、昇温することで透明になるのが観察された。ポリスチレンはウンデカンケトンには可溶、スチレン−アクリロニトリルランダム共重合体は不溶であることから、上記のポリマーはスチレン−アクリロニトリルランダム共重合体セグメントとスチレン重合体セグメントが化学的に結合しており、ウンデカンケトン中でミセルを形成していることが示唆された。
Figure 0003915995
実施例6スチレン 7.12 ml、過酸化ベンゾイル 0.000336 モル、TEMPO 0.000672モルをガラス製反応器に仕込み、窒素置換した後、125 ℃にて重合を実施した。1時間反応を継続し、Mn 2000 、Mw/Mn 1.20の分子量分布の狭い、片末端にTEMPO が結合したポリスチレンを得た。次に反応系内にアクリロニトリル 2.49 mlを5時間かけて添加し反応を継続した。その際に、各重合時間における、重合率及びポリマー中の各モノマー組成を求めた。その結果を表6に示す。
Figure 0003915995
前記表6より明らかなように、重合の進行に伴い、ポリマー中のSTのモル分率は連続的に低下していることが判る。
実施例7スチレン 7.12 ml、アクリロニトリル 2.49 ml、過酸化ベンゾイル 0.000336モル、TEMPO 0.000672モルをガラス製反応器に仕込み、窒素置換した後、125 ℃にて重合を実施し、24時間反応を継続した。得られた共重合体はMn 22000、Mw/Mn 1.30であった。引き続き、反応系内にアクリル酸エチル 5.42 ml、エチレングリコールジメタクリレート5.42 ml を添加し、重合温度140 ℃で反応を5時間継続した。得られたポリマーはMn 25000、Mw/Mn 1.30であった。分子量の増加分は3000程度であり、各モノマーの重合率はアクリル酸エチルが40% 、エチレングリコールジメタクリレートが5%であることから、末端に平均2個程度のメタクリロイル基が導入されたマクロモノマーが生成していると推定された。
実施例8実施例7で得られたマクロモノマーをスチレンモノマーに溶解し、20重量%溶液にした後、過酸化ベンゾイルを0.01 mol/Lの濃度になるように添加し、窒素雰囲気下、80℃、5時間反応させ、グラフトポリマーを得た。得られたポリマーは、Mn 32000、Mw/Mn 3.65であった。
本発明は、分子量分布の狭いスチレン系共重合体およびその製造方法に関するものであり、各種成形体及びそれらへの添加剤、各種情報記録材、各種コーティング材などとして有用に利用される。
実施例1(重合時間:2時間)で得られた本発明スチレン系共重合体の13C−NMRチャートである。 実施例1(重合時間:5時間)で得られた本発明スチレン系共重合体の13C−NMRチャートである。 実施例1(重合時間:15時間)で得られた本発明スチレン系共重合体の13C−NMRチャートである。

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  1. 安定なニトロオキサイド系ラジカル化合物が有するラジカル量/ラジカル重合用開始剤から発生するラジカル量がモル比で0.9 〜1.3 の割合で混合・加熱して得られた化合物存在下で、スチレンおよび他の不飽和単量体を重合温度100 〜180 ℃の範囲においてラジカル重合を行い得られることを特徴とする、
    以下の要件を満足することを特徴とするスチレン系共重合体の製造方法。
    (1) ゲルパーミェーションクロマトグラフ法(以下GPCという)により測定されるポリスチレン換算分子量において、重量平均分子量が3000〜100000の範囲である。
    (2) GPCにより測定されるポリスチレン換算分子量において、重量平均分子量/数平均分子量が1.1 〜1.3 の範囲である。
    (3) 共重合体中に、スチレン及びスチレン誘導体を30〜99モル%およびその他の不飽和単量体の中から選ばれる1種または2種以上を1〜70モル%含む。
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