JP3915628B2 - 窒化アルミニウム溶射膜及びその製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム溶射膜及びその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置等に用いるヒーターの均熱板、プラズマ耐性部材、および放熱基板などに用いられる窒化アルミニウム溶射膜、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウムは、熱伝導がアルミナの10倍程度高い為、従来から半導体製造装置におけるヒーターの均熱板や放熱基板などに用いられている。また窒化アルミニウムは絶縁性でなおかつハロゲン系のプラズマに対して耐食性が高い為、半導体製造装置においてはプラズマ耐性部材としても用いられている(例えは特開平05−251365号公報)。
【0003】
窒化アルミニウムはこのように優れた特性を有する材料であるが、その製造に高温での焼結が必要なことから、金属や酸化物セラミックスの基材上に高純度で厚い窒化アルミニウムの膜を形成することは困難であった。
【0004】
金属やセラミックスの厚い膜を高速で成膜するには一般には溶射法が適しているが、窒化アルミニウムは融点付近(2150〜2200℃)で分解するため、窒化アルミニウム粉末を用いて溶射法で成膜することは困難であった。実際に、これまで報告されている高純度の窒化アルミニウムの膜は、スパッタ法、CVD法による薄膜だけであり、特開平8−69970号公報等には窒化アルミニウムは溶射では出来ないという記述もある。またスパッタ法やCVD法では高純度な膜は得られているが、これらの方法で得られる膜は薄い膜であり、耐久性が必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
一方、窒化アルミニウム膜を溶射法で得ようとする試みが全くなされていないわけではない。例えば、アルミニウム粉末を用いて窒素および水素をプラズマガスとした反応性大気圧プラズマ溶射で窒化アルミニウムを成膜することが試みられている(K.Kassabji et al.: The Intl. Thermal Spraying Conf. Cincinnati, Essen 2−6 May (1983) 82−84.)。しかし、当該報告には、窒化アルミニウムの生成は見られなかったと報告されている。
【0006】
また、アルミナやアルミニウム粉末を原料として用いた減圧プラズマ溶射を用いて成膜した溶射膜を、窒素雰囲気の電気炉中で加熱し、アルミナやアルミニウムを窒化することも報告されている(A.Ohmori et al.: Trans. JWRI, Vol.22, No.2 (1993) 227−232)。この方法では、1573Kで窒化アルミニウムの生成が報告されているが、生成した窒化アルミニウムの生成率が最大でも20モル%と低く、窒化アルミニウム溶射膜としては十分な膜とは言えなかった。特に、当該方法では、溶射膜の内部に窒化アルミニウムを生成するためには、溶射膜をポーラスにして窒素を膜の内部に導入することが必要であることが示されており、緻密な溶射膜は製造できないことが示唆されている。また当該方法では、溶射と焼成の工程が別々に必要であり、工程が煩雑であった。
【0007】
同様にアルミナ粉体とカーボン粉体との混合物を基材上に溶射することにより前記基材表面に溶射膜を形成したのち、溶射膜の表面にカーボン粉体を塗布しておいて窒素雰囲気中で熱処理し、溶射膜中のアルミナ成分を窒化アルミニウムに変化することも報告されている(同上文献および特許3059250号公報)。しかし、この場合でも得られる窒化アルミニウムの生成率は低く、窒化アルミニウム溶射膜としては十分な膜とは言えなかった。当該方法も先の方法と同様に工程が煩雑であることは言うまでもない。
【0008】
また最近、減圧高周波プラズマ溶射装置を用いて、アルミニウム粉末、チタン粉末、アルミニウムとチタン合金等をAr,N2,H2プラズマ中に投入し、室温ステンレス基材へ成膜した検討が報告されている(Journal of Thermal Spray Technology,Vol.9, No.1 (2000)83−89)。当該報告では窒化アルミニウムを極微量含む溶射膜が得られたことが報告されているが、当該報告においても窒化アルミニウムの生成量の多い膜を溶射法で製造する方法について示唆されるには至っていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明した様に、従来、窒化アルミニウムの溶射膜を得ようとした場合、窒化アルミニウムの生成率の小さい溶射膜しか得られず、窒化アルミニウムの生成率を上げようとすると多孔質の膜とするしかなかった上、仮に溶射膜を多孔質にしても窒化アルミニウムの生成率が不十分なものしか得られていなかった。
【0010】
本発明の目的は、アルミニウムの反応性プラズマ溶射の新規な方法を提案することにより、窒化アルミニウムの生成率の高い、窒化アルミニウムの緻密な溶射膜、及びその簡便な製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述のような現状に鑑み、鋭意検討を行った結果、窒素を含む熱プラズマを用い、該熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させながらアルミニウムをプラズマ溶射することにより、基材上に窒化アルミニウムの緻密な溶射膜が得られ、当該溶射膜中の窒化アルミニウム粒子のすきまにアルミニウムが残存しても、窒素を含む熱プラズマの高輝な部分を基材に接触することによってアルミニウムの窒化を進行させ、窒化アルミニウムの緻密な溶射膜が得られることを見出した。またその様な窒化アルミニウムの溶射膜は絶縁性及び/又は熱伝導性に優れることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。従来、アルミニウムの反応性溶射においてこの様な条件での窒化アルミニウムの成膜の検討はなされていなかった。
【0012】
本発明の窒化アルミニウム溶射膜について説明する。
【0013】
本発明の窒化アルミニウム溶射膜は溶射法によって成膜してなる厚い膜であり、従来のスパッタやCVDで得られる薄膜とは異なる物である。その膜厚は1μm以上3mm以下が好ましく、さらに100μm以上1mm以下であることが好ましい。1μmより薄い膜では摩耗等による耐久性に問題があり、一方3mm以上つけることは本発明の膜を用いる技術領域では一般的に要求されない上に、経済的でない。
【0014】
次に本発明の窒化アルミニウム溶射膜は窒化アルミニウムの膜であり、窒化アルミニウムの含有量は25モル%以上、100モル%以下であり、膜の絶縁性という観点からは特に40モル%以上さらに言えば90モル%以上100モル%以下であることが好ましい。従来報告されている溶射膜では窒化アルミニウムの含有量は多くても20モル%までであり、窒化アルミニウム膜としての特性を発揮するには十分でなかった。また本発明の溶射膜は、窒化アルミニウム以外の成分として考えられるものはアルミニウムだけで、塗布焼成膜に含まれ得る無機バインダー等の成分を含まない膜である。
【0015】
窒化アルミニウム溶射膜において窒化アルミニウムの含有量が高いことが好ましい理由としては、窒化アルミニウムを主に用いる領域では絶縁性と熱伝導性の両方の特性が必要な応用、例えばプラズマ耐性等の部品に使用できるからである。従来報告されている窒化アルミニウム中にアルミナを有する膜は絶縁性を有するが、アルミナの熱伝導性が低いために溶射膜の熱伝導性が小さく、十分な膜ではなかった。一方、本発明の溶射膜におけるアルミニウムを含有する溶射膜は、アルミニウム自体の熱伝導性も高いため、熱伝導性のみを必要する用途に利用可能である。一方、プラズマ耐性の向上等、熱伝導性と絶縁性を併せて必要な用途においては、窒化アルミニウムの含有量が高い溶射膜を用いることが出来る。本発明の溶射膜は、少なくとも窒化アルミニウムを25モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは90%以上100%以下の窒化アルミニウム溶射膜であり、熱伝導性のみを必要とする用途にも、熱伝導性と絶縁性の両方の必要な用途にも、選択して用いることが出来る。
【0016】
本発明の溶射膜の密度は特に限定されないが、空孔を有しない緻密な膜であることが好ましい。溶射法は緻密な膜を得るのに適した方法であり、本発明の方法で得られる緻密な膜は、従来の塗布焼成膜他に比べても優れた膜である。
【0017】
次に本発明の溶射膜の製造方法を説明する。
【0018】
図1、図2に示す本発明に用いられる装置の例により本発明の窒化アルミニウムを主体とする溶射膜の製造方法を説明する。
【0019】
本発明の方法は、熱プラズマを発生させる部位と基材を保持する部位を有する装置に基材を装着して成膜する。
【0020】
本発明の溶射の条件における圧力は特に限定せず、加圧、常圧、減圧で行うことができる。常圧の場合は、大気圧で行えば良いが、減圧で行う場合には、例えば図1における溶射容器をロータリーポンプ107により0.5Torr以下まで真空引きをした後、熱プラズマ源の石英管113保護のためのアルゴン等のシースガス108および窒素とアルゴン等のプラズマガス109を導入して20〜150Torrの圧力として成膜することが例示できる。
【0021】
図2に大気圧で溶射する方法を示す。大気圧で熱プラズマを発生させる部位と基材25を保持する部位を有する装置において、プラズマガスライン22より窒素と水素等のプラズマガスを導入し、カソード20とアノード21間に電圧をかける事により直流アークで熱プラズマ28を発生させることが出来る。
【0022】
本発明で用いる溶射膜を形成する基材は特に限定しないが、例えばステンレスや炭素鋼等の金属基材、グラファイト、石英、セラミックス等を図1の基材101として用いることが出来る。用いる基材は溶射膜との密着性を向上するために、表面をブラスト法等により粗した後、真空槽103内の基材ホルダー102に装着することが好ましい。
【0023】
次に本発明の溶射は、熱プラズマを利用する。熱プラズマの発生方法は限定しないが、例えば高周波、直流アーク、または交流アーク等によって生成することが可能である。図1には、高周波コイル110に高周波を印加して熱プラズマ104を発生させる方法を例示している。
【0024】
本発明の方法は、窒素を含む熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させながら溶射を行わなければならない。熱プラズマは中心部の高輝な部分とその周辺の低輝な部分で構成されており、その様子はサングラス越しの目視観察によって確認することが出来る。本発明では熱プラズマの高輝な部分が基材に接触する条件で溶射することにより、基材上の溶射膜の窒化を促進することができる。ここで言う熱プラズマの高輝な部分とは、上述の手段による気体放電で生成され、少なくとも部分的に電離した数千〜数万度の高温となったガス気流である。熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させるには、サングラス越しに熱プラズマの状態を観察しながら、プラズマ発生部位と基材保持部位の間隔を調整すれば良い。
【0025】
例えば図1の場合、熱プラズマ104の出口と基材101の距離(溶射距離)106を、基材ホルダー102の下部にあるスペーサ105により調整し、熱プラズマの高輝な部分が基材に触れる状態で溶射する。この様な状態を発現するためには図1の装置の場合では溶射距離106を10〜100mm程度とすることが好ましく、特に20mmから50mmとすることが好ましい。溶射距離を短くすることにより、熱プラズマの高輝な部分を十分に基材に触れさせることにより、アルミニウム成分の窒化を進めることが出来、尚且つ緻密な膜を得ることが出来る。
【0026】
図2に示した大気圧で熱プラズマを基材へ照射する場合も、熱プラズマの出口と基材25の距離(溶射距離)24を基材の移動により調整し、本発明の方法の特徴である基材へ熱プラズマの高輝な部分が接触する状態で溶射すれば良い。この場合は、溶射距離24を10〜50mm程度とすることが好ましく、特に20mmから40mmとすることが好ましい。溶射距離を短くすることにより、熱プラズマを十分に基材に触れさせることが出来、アルミニウム成分の窒化を進めることが出来、尚且つ緻密な膜が得られる。
【0027】
本発明の溶射における基材の位置は、熱プラズマが照射される位置、即ち溶射膜を形成する部分が熱プラズマの高輝な部分に接触する位置であれば良く、基材は固定されていても良いが、基材101を前後左右に移動させて、基材101全体に熱プラズマを照射し、均一に加熱、成膜することが好ましい。この基材の移動は、基材への成膜時に本発明の条件、即ち溶射部位に熱プラズマの高輝な部分が接触する条件であれば良く、例えば図1の溶射距離106で10〜100mmが維持できる範囲が例示できる。
【0028】
上述の様に、熱プラズマの高輝な部分が基材に接触する熱プラズマ発生源と基材の距離は、熱プラズマの発生方法等によって異なる。本発明では熱プラズマの高輝な部分が基材に接触していればよく、熱プラズマ発生源と基材の距離を限定するものではない。
【0029】
本発明では、アルミニウムを窒化するため、熱プラズマ中には窒素を含むことが必須である。前記熱プラズマを形成するガスとしては窒素にアルゴンなどのプラズマの安定性を高めるガスを加えてもよいが、特に水素を含むと、膜中のアルミニウム表面の酸化膜が取れて窒化しやすくなるため、好ましい。
【0030】
また基材の初期の温度は、高周波のパワーを調整し、一定時間加熱することで、溶射前の予熱温度を、400℃以上、基材の融点以下とすることが好ましい。
【0031】
本発明の方法は、窒素を含む熱プラズマ中にアルミニウムを投入することによって溶射膜を形成する。投入するアルミニウムの形状としては、粉末、ペレット、ワイヤー等が例示出来るが、特に粉末であることが好ましい。図1は、アルミニウムを粉末の形で供給する方法を例示している。粉末供給器111にキャリアガス112を導入し、アルミニウム粉末を供給し、窒素を含む熱プラズマ中に投入するが、アルミニウムの供給速度は均一であることが好ましい。
【0032】
本発明でアルミニウム粉末を用いる場合、粉末の粒径は小さい方が窒素を含む熱プラズマとの反応性が高い為に好ましい。一方、あまり粒径が小さいと流動性が悪く、粉末供給器を工夫しても供給が困難となるため、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。アルミニウム粉末の粒径は平均粒径で良く、その測定方法は一般的な光透過型の粒度分布測定装置等で測定することが出来る。
【0033】
本発明では窒素を含む熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させながら、例えば図1の方法では熱プラズマ104中にアルミニウム粉末を投入することにより基材上に窒化アルミニウムを主体とする溶射膜を形成するが、成膜中の基材表面で、熱プラズマの高輝な部分を接触させる部位の温度は、アルミニウムの融点以上、即ち660℃以上、窒化アルミニウムの分解温度以下、即ち2150℃以下であることが必須である。この様な温度とすることにより基材上でアルミニウムの溶融が進み、さらに基材を照射する窒素を含む熱プラズマの高輝な部分によって基材上のアルミニウムの窒化反応が進行し、緻密な窒化アルミニウムの溶射膜が堆積される。
【0034】
本発明では上述の溶射で得られた溶射膜に、引き続き窒素を含む熱プラズマの高輝な部分を接触させることにより、膜中の残存アルミニウムを溶融させながら窒化させ、特に窒化アルミニウム含有率の高い溶射膜を得ることが出来る。即ち上述した本発明の方法により得られた溶射膜に、窒素を含む熱プラズマの高輝な部分をアルミニウムを供給しないで基材に接触させることにより、特に窒化アルミニウム比率の高い、即ち残存アルミニウムのない溶射膜を得ることが出来る。ここで熱プラズマの照射された基材の温度は、上述と同様に、アルミニウムの融点以上、即ち660℃以上、窒化アルミニウムの分解温度以下、即ち2150℃以下であることが好ましい。
【0035】
溶射膜は、何層も繰り返し堆積することによって厚い膜を成膜することが一般的であるが、本発明の場合、例えば図1の方法では基材101を前後左右に振りながら基材全体に均一に成膜する際に、基材にまず本発明の条件で一層の溶射層を堆積し、次の層の溶射層を堆積する前に当該堆積層にアルミニウムを供給しない窒素を含む熱プラズマの照射を加え、一層目の膜中に残存するアルミニウムの溶融と窒化をさらに促進することができる。後は同様の操作を繰り返し、即ちアルミニウムを供給した熱プラズマとアルミニウムを供給しない熱プラズマの照射を交互に繰り返すことにより、窒化アルミニウムの含有率の極めて高い溶射膜を得ることが出来る。ここで、本発明の方法によって複数の溶射層を一度に堆積した後に、後からアルミニウムを供給しない熱プラズマで仕上げの照射をしても良いことは言うまでもない。
【0036】
【実施例】
本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
実施例1
図1に示す装置により窒化アルミニウム溶射膜を製造した。インコネルを基材101として表面をブラスト法により粗した後、真空槽103内の基材ホルダー102に装着した。溶射距離106は20mmとした。次にロータリーポンプ107により0.5Torr以下まで真空引きをした後、アルゴンのシースガス108を10L/分および窒素1.5L/分とアルゴン6L/分のプラズマガス109を導入して60Torrの圧力とし、高周波コイル110に4kWの電力の高周波を印加して熱プラズマを発生させた。20mm角の基材101は40mm/秒の速度で左右に動かし、2mm/秒の速度で上下に往復運動を繰り返し、基材101に均一に溶射膜を堆積させた。その際、窒素を含む熱プラズマ104の高輝な部分は基材に接触していた。基材を端から端まで移動することを4回繰り返すことで、溶射前の予熱温度を700℃とした。
【0038】
次に、粉末供給器111にアルゴンを1L/分の流量でキャリアガス112として導入し、アルミニウムの粉末を約1g/分で供給し、窒素を含む熱プラズマ中に投入した。アルミニウム粉末の平均粒径は3μmとし、粉末供給器111はテクノサーブ社製微粉末供給器を用いた。基材を端から端まで移動することを6回繰り返す間、アルミニウムの粉末を供給し、連続してアルミニウムの粉末の供給なしで熱プラズマの高輝な部分を照射しながら、基材を端から端まで1回移動させた。溶射及び熱プラズマ照射の間の基材の温度は1000℃であった。なお、予熱温度、終了直後の基材の温度は基材の裏面に接触させた熱電対114で測定した。
【0039】
溶射膜は、厚み0.2mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウムが74モル%含まれており、X線回折では窒化アルミニウムのピークにアルミニウムのピークが含まれていた。断面のSEM観察を行った結果、緻密な膜となっていた。
【0040】
得られた溶射膜を四探針法によって抵抗を測定したが、導電性は認められなかった。アルミニウムが残存するのに表面に導電性が認められない原因は、溶射膜表面に絶縁性の窒化アルミニウムが多いため、或いは表面において導電性のアルミニウムが不連続に存在するためと考えられた。またレーザー加熱オングストローム法(ULVAC Technical Journal No.51 (1999) 24−29)による熱伝導率測定では、溶射膜の熱伝導率は180W/mKであった。
【0041】
実施例2
窒素流量を2.5L/分とした以外、実施例1と同様の方法で溶射膜を作製した。窒素を含む熱プラズマの高輝な部分は基材に接触しており、溶射前の基材の予熱温度は750℃であり、溶射中の基材の温度は1050℃であった。
【0042】
溶射膜は、厚み0.2mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウムが100モル%であり、X線回折の結果からも完全に窒化アルミニウムであった。断面のSEM観察を行った結果、緻密な膜となっていた。
【0043】
得られた溶射膜を四探針法によって抵抗を測定したが、導電性は認められなかった。またレーザー加熱オングストローム法による熱伝導率測定では、溶射膜の熱伝導率は165W/mKであった。
【0044】
実施例3
基材を1回端から端まで移動するごとに粉末供給を停止して、熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させながら基材を1回端から端まで移動し、次にまた粉末を供給して基材を1回端から端まで移動することを繰り返す以外、実施例1と同様の方法で溶射膜を作製した。
【0045】
溶射膜は、厚み0.2mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウム94モル%含まれており、X線回折の結果ではほとんど窒化アルミニウムであった。断面のSEM観察を行った結果、緻密な膜となっていた。
【0046】
得られた溶射膜を四探針法によって抵抗を測定したが、導電性は認められなかった。またレーザー加熱オングストローム法による熱伝導率測定では、溶射膜の熱伝導率は165W/mKであった。
【0047】
実施例4
プラズマガスとしてさらに0.5L/分の流量の水素を添加した以外は、実施例1と同様の方法で溶射膜を作製した。
【0048】
溶射膜は、厚み0.2mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウムが91モル%含まれており、X線回折の結果ではほとんど窒化アルミニウムであった。断面のSEM観察を行った結果、緻密な膜となっていた。
【0049】
得られた溶射膜を四探針法によって抵抗を測定したが、導電性は認められなかった。またレーザー加熱オングストローム法による熱伝導率測定では、溶射膜の熱伝導率は170W/mKであった。
【0050】
実施例5
窒素流量を0.8L/分とした以外、実施例1と同様の方法で溶射膜を作製した。窒素を含む熱プラズマの高輝な部分は基材に到達しており、溶射前の基材の予熱温度は750℃であり、溶射中の基材の温度は1050℃であった。
【0051】
溶射膜は、厚み0.15mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウムが33モル%であり、X線回折では、アルミニウムのピークが窒化アルミニウムのピークよりやや大きかった。断面のSEM観察を行った結果、緻密な膜となっていた。
【0052】
得られた溶射膜を四探針法によって抵抗を測定したが、導電性は認められなかった。またレーザー加熱オングストローム法による熱伝導率測定では、溶射膜の熱伝導率は190W/mKであった。
【0053】
実施例6
図2に示す装置により窒化アルミニウムを主体とする溶射膜を製造した。石英を基材25として表面をブラスト法により粗した後、基材を装置に装着し、溶射距離24を35mmとした。次に窒素40L/分と水素10L/分のプラズマガスを導入して35kWの電力の電力を供給して熱プラズマを発生させた。100mm角の基材25を150mm/秒の速度で左右に動かし、4mm/秒の速度で上下の往復運動を繰り返して基材25に均一に溶射膜を堆積した。その際、窒素および水素を含む熱プラズマ28の高輝な部分は基材に到達していた。基材を端から端まで移動することを2回繰り返すことで、溶射前の予熱温度を750℃とした。
【0054】
次に、テクノサーブ社製微粉末供給器によりアルミニウムの粉末(平均粒径は3μm)を約3g/分で供給し、窒素および水素を含む熱プラズマ中に投入した。基材を端から端まで移動することを5回繰り返す間、粉末を供給し、連続して粉末の供給なしで熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させながら、基材を端から端まで1回移動させた。溶射及び熱プラズマ照射の間の基材の温度は1100℃であった。なお、予熱温度、終了直後の基材の温度は基材の裏面に接触させた熱電対29で測定した。
【0055】
溶射膜は、厚み0.1mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウムが100モル%含まれており、X線回折では完全に窒化アルミニウムであった。断面のSEM観察を行った結果、緻密な膜となっていた。
【0056】
得られた溶射膜を四探針法によって抵抗を測定したが、導電性は認められなかった。またレーザー加熱オングストローム法による熱伝導率測定では、溶射膜の熱伝導率は160W/mKであった。
【0057】
比較例1
溶射距離を190mmとした以外、実施例1と同様の方法で溶射膜を作製した。窒素を含む熱プラズマの高輝な部分は基材に到達しておらず、溶射前の基材の予熱温度は150℃であり、溶射時の基材の温度は250℃であった。
【0058】
溶射膜は、厚み0.1mmで、蛍光X線法により組成を分析したところ窒化アルミニウムが13モル%しか含まれず、さらに膜はポーラスで脆い状態であった。
【0059】
得られた溶射膜はポーラスであるため、レーザー加熱オングストローム法よる熱伝導率測定による熱伝導率は100W/mKであった。また四探針法による抵抗を測定では、ところどころで導電性が認められた。これは窒化アルミニウムの比率が低く、溶射膜の表面にも連続したアルミニウム層があるためと考えられた。
【0060】
【発明の効果】
本発明の窒化アルミニウム溶射膜及びその製造方法は、以下に示す効果を有する。
本発明の溶射膜は、熱伝導性の高い窒化アルミニウムとアルミニウムの混合膜であるために高い熱伝導性を有し、除熱用部品、放熱部品への応用に適する。
本発明の溶射膜は、窒化アルミニウムの比率が高くかつ緻密であるため、高い絶縁性と熱伝導性を両立し、プラズマ処理用部品、放熱部品への応用に適する。
本発明の溶射膜の製造方法は、溶射法だけで窒化アルミニウムを主体とする溶射膜が製造可能であるため、簡便な工程で容易に溶射膜の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における溶射膜を減圧で製造するための装置の一例を示す図である。
【図2】本発明における溶射膜を常圧で製造するための装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
101:基材
102:基材ホルダー
103:真空槽
104:熱プラズマ
105:スペーサ
106:溶射距離
107:ロータリーポンプ
108:シースガス
109:プラズマガス
110:高周波コイル
111:粉末供給器
112:キャリアガス
113:熱プラズマ源の石英管
114:熱電対
20:カソード
21:アノード
22:プラズマガスライン
23:粉末供給ライン
24:溶射距離
25:基材
26:溶射膜
27:直流電源
28:熱プラズマ
29:熱電対

Claims (4)

  1. 熱プラズマを発生させる部位と基材を保持する部位を有する装置において、窒素を含む熱プラズマの高輝な部分を基材に接触させながら、該熱プラズマ中にアルミニウムを投入することにより基材上に窒化アルミニウム溶射膜を形成する方法であって、基材表面の熱プラズマが照射された部位の温度がアルミニウムの融点以上窒化アルミニウムの分解温度以下であることを特徴とする窒化アルミニウム溶射膜の製造方法。
  2. 請求項の方法で得られた溶射膜に、窒素を含む熱プラズマの高輝な部分を基材に接触することにより溶射膜中のアルミニウムを溶融させながら窒化させることを特徴とする請求項に記載の窒化アルミニウム溶射膜の製造方法。
  3. 前記熱プラズマが窒素および水素を含むことを特徴とする請求項又は請求項に記載の窒化アルミニウム溶射膜の製造方法。
  4. 前記熱プラズマ中に投入するアルミニウムが粉末であり、当該粉末の粒径が0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の窒化アルミニウム溶射膜の製造方法。
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